COPT通信37 市民オンブズパーソン栃木 2005 年 7 月 31 日発行 Citizen OnbudzPersons 号 Tochigi 北海道・東北市民オンブズマンネットワーク新潟例会報告 談合はなくすことができるか。 パーソン栃木事務局長 秋 元 照 夫 2005 年 6 月 11 日、12 日 に 北 海 道・ 東 北 市 民オンブズマンネットワークが新潟市で行われた。 初日目は「新潟市官製談合問題の真相に迫る」と いうテーマの市民フォーラムであった。2003 年 9 月に新潟市発注の下水道管きょ工事及び汚水管布 設工事並びに建築一式工事の入札に関し、公正取 引委員会の立入調査、新潟地検の強制調査を受け て、市職員が競争入札妨害罪で起訴された事件で ある。なお、排除勧告を受けた 113 社中、新潟市 内の「御三家」と大手ゼネコンを含む 87 社が不応 諾のため、審判中である。今年の 1 月宇都宮市建 設談合事件との大きな違いは、市職員が起訴され ているかどうかである。 新潟市人事課課長補佐と契約課課長補佐の 2 名 が参加され、新潟市の取り組みについて報告がな された。 (同フォーラムへ宇都宮市契約課課長の出 席を求めたが断られた。 ) オンブズマンからは全国市民オンブズマン連絡 会議代表幹事の大川弁護士が、長野県の入札制度 改革やアメリカの入札制度を交えながら下記の談 合防止策を提言した。 1. 一般競争入札の対象範囲の拡大 2. 地域要件の原則的廃止 3. 最低制限価格制度の撤廃 4. 談合情報処理のあり方 新潟市の入札制度改革には、地域要件撤廃が織 り込まれていない。宇都宮市においても電子入札 制度を導入しているが、宇都宮市内の業者だけに しか適用させていない。この点について、宇都宮 市契約課課長に問い質したところ、 「業者との関係 もあるのでそれはできない。 」と明言されていた。 ここに政官業癒着の構図が見てとれる。談合をや めれば天下りはなくなり、業者はその見返りは要 求しなくなるのである。先日、内部告発の電話が 入った。県土木部の元幹部の話である。今は退職 しているがいまだ実権を握って采配を振るってい るというのである。職員はなぜそれに従うのかと お金が動くのかと問い直すと、彼曰く「人事すな わち出世」がすべてだ!と言い切っていた。この 話には信憑性はあると感じた。 さて、2 日目は、オンブズマンの作戦会議である。 今回は国発注の鋼鉄製橋梁工事 47 社の談合事件が メインであった。この事件は日本道路公団へと飛 び火し、公団副総裁の逮捕まで進展してきている 事件である。 東京高等検察庁は 5 月 26 日「K 会」や「A 会」 と呼ぶ 2 つの組織で常任幹事や副幹事を務めて いた 8 社とその他 3 社を合わせた計 11 社の幹部 を逮捕した。公取委が刑事告発の対象としたのは、 国交省の関東、東北、北陸の各地方整備局が 03、 04 年度にかけて発注した鋼橋工事。合計 128 件、 約 605 億円分の工事で談合があったとされた。 道路法では、国道に架かる橋のある都道府県は、 工事費の 1/3 を負担することになっているので、 ここに注目し検討した結果、3 つの地方整備局の 入札調書を開示請求し、1/3 を負担している県は 知事に損害賠償を請求するように、オンブズマン は監査請求をすること決めた。また、同時に同年 の各県発注の橋梁工事の入札調書を開示請求し状 況を調査することも決めた。 現在調査中であるが、途中報告をすると、03 年度関東地方整備局発注は 6 件あり、落札価格 660,800 千円、平均落札率 96.2%、摘発業者が 4 件落札しており、栃木県内の工事はなかった。04 年度は 18 件 2,122,900 千円、平均落札率 94.2%、 摘発業者が 14 件落札していた。そのうち栃木県内 の工事は 2 件あり、 2 件とも摘発業者が落札していた。 また、栃木県発注の工事では、03 年度は 18 件 あり、すべて摘発業者が落札しており、落札価格 1,586,350 千円、落札率 94.9%であった。04 年度 は 11 件あり、これもすべて摘発業者が落札してお り、落札価格 3,862,620 千円、落札率 93.3%であっ た。 この調査結果は、9 月に別府で開催される全国 大会で発表されるが、テレビや新聞等で騒がれて いる事件が我々の身近にあり、パーソン栃木とし ても黙っている訳にはいかないところまできてい る。 1 きる道路の新設、改築、維持、修繕等の管理と災害復旧」と 栃木県道路公社に対する補助金 支出の違法性のもう一つの根拠 している。 同法 30 条 2 項は「県は道路の災害復旧に要する経費の一 部を補助することができる。」としている。 米 田 軍 平 つまり、補助金は、の災害復旧の経費だけに出せるのであっ て、無制限に出せるものではありません。 1 税金を食いつぶす道路公社 道路公社が、災害復旧以外に金を必要とする場合はどうす 県道路公社は「親方日の丸」の経営をしている。県から るのか。資金調達方法として、足利銀行と道路公社間で、お の補助金(税金)で、採算の見込みのない無駄な道路をつ 金の借入についての契約をしており、県がそれを保証する契 くり、赤字になると、殆ど無制限に税金が投入される。こ 約書を取り交わしています。 んな「うまい話」はなかろう。平成 14 年 6 月には約 5 億 整理すると、災害復旧については補助金が出せる。新しい 3,000 万円、平成 15 年 7 月にも約 5 億 2,800 万円の税金 道路の建設や維持管理は料金で賄い、不足する場合は銀行か が投入されている。毎年ほぼ同額の補助金が出されている ら借り入れて賄え。その保証を県がする。ということになっ のである。 ています。 パーソン栃木は、平成 15 年 2 月、これら補助金の差止 仮に、県が道路公社に代わって借金を返済した場合、県は めを求めて住民訴訟を提起した。 道路公社に求償権を持ちます。 道路公社は、独立採算が求められる団体です。補助金に頼 2 裁判では、何が争われているか。 らせてはならないし、県も災害復旧以外に補助金を出しては 無用・無駄な道路づくりや、管理・乱脈経営と談合等、 なりません。経営努力によって賄うべきで、どうしても不足 多岐にわたる問題にメスを入れている。 する場合は、銀行から借り入れればよいのです。県が「おん 秋元事務局長は、膨大な資料を開示請求によって入手 ぶにだっこ」してはならないし、道路公社も「親方日の丸」 し、不明な点の釈明を求めて道路公社に足を運んだ。事務 であってはならないのです。 局長は、その都度、道路公社職員(上から下まで)の経営 これまで、県は道路公社に対して、無制限に税金を投入し に対する無知と経営感覚のなさ、資料の不整備にあきれ顔 てきた。そのため、道路公社は、殿様商法を続け、経営感覚 で帰ってきた。パーソン 6 月例会で「天王山を迎えた裁判 も経営努力もしない無用の長物となってしまった。 私達の主張は、法律の趣旨を徹底し、災害復旧以外は補助 闘争」としたのも、税金の無駄使いとするパーソンの主張 金を出さず、自らの責任で経営をしろというものです。 と、それを合理化する県との対立が、激しく浮きぼりになっ てきたからである。 法律に基づかない補助金支出は違法である。これが、もう 一つの争点であり、 3 補助金支出違法性のもう一つの根拠 まさに闘いは佳境に入ったといえる。 道路公社法 21 条は、道路公社の業務を「料金を徴収で ベルンとストラスブール印象記 浅 野 政 一 欧州に旅行する機会があってその最初と最後に立寄った都市がベルン(人口約 13 万人)とス トラスブール(人口約 25 万人)でした。今、話題の電車を含め感じたことを記してみます。 先ずベルン。スイスの市民生活の一端を垣間見ただけですが日本はすっかりアメリカ的な消費 文化に染まっているなと感じさせられました。自動販売機が殆ど見かけない、派手な街頭広告が 無い、ホテルの石鹸なども使い終わるまで補充されない、可成り暑いのに電車、バス多くの店鋪 で冷房さえ行っていない。三ツ星ホテルで暑くても冷房無しです。ビジネスマンもスーツを着て いる人は少なく、一般はノーネクタイで薄着です。若い女性は胸開き臍だしスタイルが多く、最 初はよく耐えているなと思いましたが、夏の環境に省エネで素直に順応しているようです。日本 のようにがんがん冷房している様子はありません。また約 13 万人の都市ですが市内交通はバス、 トラム、トロリーバスでネットワークされています(写真 1)。電車で新しくできた郊外の終点 2 「Zentrum Paul Klee」(今まで Bern 美 術館に有った Klee の絵の他に追加を含 めて新築されたもので丁度オープンし たところでした)まで乗りましたが乳 母車も乗れるし、高齢者にもやさしい 方式が定着しています。 次はストラスブール。ここは昨年オン ブズパーソンの皆さんが LRT 視察で訪れ たところですね。ベルンとストラスブー ルは何か似ています。両都市とも周囲を それぞれアーレ川、イル川と川に囲ま れ、その内側に旧市街、プチット・フラ ンスという世界遺産を持っているし、ま たトラム/ LRT と低床型バスが市民の足 写真 1 ベルンのトラムとトロリーバス になっているところなど。 興味深かったのは乗車前切符購入と無改札システ ム、それと運賃の割引がきめ細かく設定されている ことです。日本の改札システム(自動化が進んでい ますが)と利用者にとってどちらが便利なのだろう か。欧州式の方が人間的な気がしますが、通勤時の 乗降人数が圧倒的に多い日本では改札無しはメリッ トあると思いますが検札が困難という事もあるのだ ろうか。運賃は券売機で区分を選んで(写真 2)購 入し、日付けを乗る時に打刻する方式。私たちは 2 人~ 5 人までの 24HR 家族券 4.3EUR(¥600)を購入 して終点から終点まで乗り廻しました(写真 3) 。 また、自動車の都心への乗入れ抑制策が講じら 写真 2 自動券売機(コインしか使えない)でチケット購入 れているようなので、調べてみたら下図のような制 御が行われているとのことです(図 1・南総一郎氏のサイト http://eurotram.web.infoseek. co.jp/str/str2.htm による)。 これらの都市で LRT が成功している基盤に自動車抑制と公共交通ネットワークが重要な役割を占 めています。宇都宮の諸施設は全て、美術館から高齢者向け施設まで自動車に依るアクセス前提で 作られています。LRT と併行してこの公共交通システムの構築が重要であると感じた次第です。 写真 3 路線 A 終点で折り返すストラスブールの LRT 図 1 ストラスブールの自動車抑制策(南総一郎氏のサイトより) 3 り、水中でヘビトンボ、カワゲラ、トビケラの 幼虫を捕らえたりして楽しいひとときを過ごし た。 11 時半頃にダムサイト予定地の広場に帰着。 観察会のまとめをしている頃、日弁連公害対策・ 環境保全委員会の一行が到着した。日弁連の一 行は早朝に関西、名古屋方面を出発し、宇都 宮駅からは大木弁護士が同行し、バスをチャー ターして南摩に入ったとのこと。大きなオニグ ルミの木陰で観察会と日弁連の一行は一緒に持 参の弁当を食べた後、ダムサイト直下の室瀬地 区の住民である広田さんが、建設省・公団主催 の「思川開発事業検討会」にはじめて参加し た 2001 年当時の状況を報告した。室瀬の住民 はダムの計画後、実に 30 年以上も経ってはじ めて公団から説明があったという。洪水吐きが 右岸、左岸と変わるたびに移転戸数がかわり、 翻弄されてきた。当初、検討会は中身のないも のと考え参加要請を断っていたが、第 2 回の検 討会までは事業に反対を唱える委員も何名かい ることを新聞報道で知り、第 3 回から参加する ことにした。しかし自治体の首長の選挙があっ たりして入れ替わったメンバーもあり、第 3 回 の検討会では事務局がうんざりするほど延々と 事業概要を説明し、聞きくたびれて議論の時 間がほとんどなかったこと、まったく意見を述 べない委員もあったこと、多くの人々に計り知 れない影響を及ぼし、かつ貴重な自然をこわす 事業、その上巨費を投じる事業を検討するのに こんなやり方で良いのかと憤りを感じたこと 等々。そして現在では、住民訴訟と板荷地区の 取水反対運動を「最後の砦」と考えていること を切々と訴えた。 広田さんの報告の後、質疑応答が行われた。 1 時半ころ、日弁連の一行は次の目的地足尾を 目指して出発し、観察会の一行は次回の観察会 を秋に行うことを約して散会。 南摩川流域 ってどんなところ? ∼ダム建設予定地で自然観察会∼ 葛 谷 理 子 (思川開発事業を考える流域の会・ムダなダムをストップさせる栃木の会) 南摩ダム(思川開発事業)の話が持ち上がっ てから 40 年。計画は何度も変更されたが、な お進行中である。ダム建設予定地の南摩川周辺 には、どのような自然があるのだろうか。「思 川開発事業を考える流域の会」と「ムダなダム をストップさせる栃木の会」が共催で、7 月 31 日 ( 日 ) に、はじめて自然観察会を開催した。 またこの観察会に合わせ、日弁連の公害対策・ 環境保全委員会の現地視察会もおこなわれたの で、そのようすも併せて報告したい。 当日は天候にも恵まれ、会員・非会員・夏休 み中の子ども達も含め参加者は 17 名。9 時に上 南摩地区の室瀬に集合した後、粟沢入口まで車 で移動した。本日の観察会のフィールドは、南 摩地区の沢の一つである粟沢。水没家屋の補償 交渉もおわり、住民は新天地を求めて移転した ため、6 戸あった粟沢集落の建物はすべて取り 壊されていた。敷地の入口と思われる位置に張 られた黄色いロープと、栽培植物が目に付くた め、 「ここに人家があった」と辛うじてわかる。 沢に沿った小道を、植物は阿部良司さん(森 と水のネットワーク)、野鳥は高松健比古さん (野鳥の会) 、昆虫は葛谷健さん(昆虫愛好会) の説明を聞きながら歩いた。真夏という季節は 自然観察には不向きということではあったが、 野鳥では竹林の梢(ソングスポット)でさえず るホオジロや、コチャバネセセリを捕らえたム シヒキアブ、黄色の花が咲くトモエソウや梨の 原種と言われるヤマナシの大木等々が観察でき た。水のない南摩川とはいうものの、大雨の 後でいつもより増水している沢に入って涼んだ 編集後記 日本道路公団の官製談合がようやく裁かれようとしています。いまだに談合を必要悪と見るむきもありますが、価格を 不当に高く設定して一部業者(そして場合により発注元職員までも)が利益を維持し、そのつけはすべて納税者が負担さ せられることを考えれば許されないことは明らかでしょう。品質の維持のためなどと言いますが、公共にかかわらない場 面では日夜熾烈な競争をしながら品質維持をすることが当然とされていることを考えれば全く理由になりません。これを 機にそもそも談合などやりようがない制度を構築してもらいたいものです。 (わ) 【訴訟情報】高根沢公金違法支出訴訟8月25日(木)午前10時宇都宮地裁 / ダム訴訟(県関係)9月8日(木)午前10時宇 都宮地裁 / ダム訴訟(市関係)9月21日(水)午後1時15分宇都宮地裁 / 道路公社訴訟9月22日(木)午前10時宇都 宮地裁 COPT通信 37号 2005年7月31日発行 発行 市民オンブズパーソン栃木 事務局 〒321-0139 栃木県宇都宮市若松原3-14-2 秋元照夫税理士事務所内 (TEL) 028-655-6611 (FAX) 028-655-4333 (URL) http://www.t-person.net/ (Email) info@t-person.net 4
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