「期待通り」の投資成果を実現している企業は僅か 3

2004 年 3 月 9 日
報道関係各位
アビーム コンサルティング株式会社
国内大手企業 125 社の IT 投資意識調査
∼「期待通り」の投資成果を実現している企業は僅か 3 割 ∼
アビーム コンサルティング調べ
大手コンサルティング会社のアビーム コンサルティング株式会社(以下:アビーム コンサル
ティング、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:西岡一正、旧デロイト トーマツ コンサル
ティング/ブラクストン)は、IT 投資の現状と成功の条件を探るために、東証一部上場企業を
中心とする国内大手企業、約 1,500 社の経営企画部門長、並びに IT 部門長に対し、詳細なアン
ケート調査を実施し 125 社から有効回答を得ました。
※ 【回答企業のプロファイル】従業員数 10,000 以上:22%、5,000 人∼10,000 人:10%、3,000 人∼5,000 人:15%、
1,000 人∼3,000 人:31%、1,000 人未満:22%。業種
製造:60%、金融:12%、流通:11%、運輸・通信・サー
ビス・エネルギー:9%、建設:7%。【調査期間】2003 年 10 月∼12 月。
■IT 投資効果を「期待通り」とした企業は僅か 3 割
過去 3 年間に行った IT 投資の成果については、全体として「期待以上」だったとした企業は
皆無、「期待通り」と回答した企業も全体の3割にとどまりました。また、IT 投資の成果を目
的別に見ると、「企業収益の向上」、「開発から上市までの時間短縮」、「新規顧客の開拓」な
どの項目では 2 割を下回っており、充分な成果をあげているとは言えません。さらに、長年に
わたって IT を活用し取り組まれてきた「業務の合理化」や「意思決定の迅速化」といった項目
でさえも、「期待通り」とした企業は 3 割程度にとどまっています。
図 1:IT 投資の成果に対する評価
■継続的な IT 投資にもかかわらず、期待通りの成果が実現されていない
IT 投資から期待通りの成果が得られていないとする回答が多いにもかかわらず、同業他社と
比べ、自社の IT 投資が「かなり積極的」である、あるいは「やや積極的である」と感じている
企業が半数近くを占めています。また 3 年前に比べ、売上高に対する IT 予算の比率が、「大幅
に上昇した」、「やや上昇した」、「横ばい」と回答した企業は合わせて約 8 割に上ります。
このことから、多くの企業が IT 投資を継続的に行なっているにもかかわらず、期待通りの成果
が実現できていないことがうかがえます。
図 2:IT 投資に対する姿勢
同業他社との比較
IT 予算対売上高比の対3年前比較
■IT 投資で成果を上げている企業は企業業績も好調
今回の調査結果では、IT 投資で成果を上げている企業は、概ね企業業績も好調であることが
確認されました。こうした傾向は、特に、大企業において顕著です。回答企業を売上高 1,000
億円以上と 1,000 億円未満に分けて、それぞれのグループで IT 投資の成功度が高い企業と低い
企業の利益率を比較したところ、売上高 1,000 億円以上の企業では IT 成功度上位企業の利益率
は下位企業と比べて顕著に高いことが分かります。一方、売上高が 1,000 億円未満の企業では、
利益率に同様の格差は見られませんでした。企業規模が小さい場合には、IT 投資成功度以外の
要因が企業業績に与える影響が大きいためと推測されます。
※
IT 投資成功度の詳細は調査レポート、7 ページをご参照下さい。
図 3:IT 投資成功度上位企業と下位企業の業績比較
■企業のポジショニングにより成功要因は異なる
回答企業 125 社を、過去 3 年間の「売上成長」と「業界内の地位」という 2 つの軸で、①「成
長・トップ」企業群(売上が伸びており、業界トップまたはトップに準じる位置にある企業)、
②「成長・チャレンジ」企業群(売上は伸びているが、トップから引き離されている企業)、③
「成熟・トップ」企業群(売上は伸び悩むが、業界トップまたはトップに準じる位置にある企業)、
④「成熟・チャレンジ」企業群(売上は伸び悩み、業界トップに水をあけられている企業)の 4
つのグループに分類し、IT 投資の成功パターンを探りました。
≪各グループ共通の特徴≫
投資の実行を管理できる体制、投資案件の発案に際してのユーザー部門との協議を除けば、各
グループの成功度上位企業に共通する特徴はほとんどありません。この2点は、どのグループに
属する企業であっても、IT 投資を成功させるために必要なことといえます。
図 4:各グループにより成功パターンは異なる
≪各グループ固有の特徴≫
成長・トップ群:IT に関するリーダーシップ、ユーザー部門との関係、IT 戦略、投資判断、実
行・運用という全ての項目において、成功度上位企業と下位企業との間に明確な差が存在します。
成功度上位企業では、投資プロセスがサイクルとして滞りなく回っているといえます。さらに、
現状に安住せず、「最善」な投資プロセスを目指して、プロセスを継続的に改善するという姿勢
が見られます。
成長・チャレンジ群:CIO・IT 部門長の経営計画への関与、投資案件発案に際しての IT 部門と
利用部門との十分な協議という項目で、成功度上位企業と下位企業の差が顕著です。また、将来
を見越した IT ニーズのすり合わせ、IT 戦略の策定でも差があります。逆に、CIO の選任や全
社 IT 企画組織の設置といった組織・体制では、むしろ下位企業のほうが進んでいます。成長・
チャレンジ群の場合、IT 投資を成功させるためには、組織・体制の整備よりも、経営と一体と
なった IT 戦略を策定し、実施することが重要といえるでしょう。
成熟・トップ群:全社 IT 企画組織の設置、CIO・IT 部門長の経営計画への関与、案件発案に際
してのユーザー部門との協議、IT 戦略の策定といった項目での差が顕著です。成熟・トップ群
の場合、事業の大きな伸びは期待できず、コスト重視の戦略が成功につながりやすいと考えられ
ます。上位企業と下位企業の差がついている項目は、いずれも、部門ごとの重複投資を排除し、
全社的な観点から IT への経営資源配分を行う上で有効と考えられるものばかりです。成熟・ト
ップ群では、IT 投資を最適化できるようなプロセスを確立できていることが、IT 投資を成功に
導く上で重要といえるでしょう。
成熟・チャレンジ群:成功度上位企業と下位企業の間で明確な差がある項目は少数ですが、IT
投資に積極的、事前評価の定量化の2項目では差が顕著です。成熟・チャレンジ群は、他のグル
ープと比べて規模、成長力ともに見劣りするため、IT に対しても消極的な姿勢になるのはやむ
をえません。だからこそ、IT 投資に対して経営資源を確保するとともに、事前評価の定量化で
投資効果を厳しく追求することが、上位企業と下位企業を分けているといえるでしょう。
以上から、各グループの成功度上位企業に共通する項目は限られ、企業の成長力や業界内での地
位といった位置付けにより、上位企業と下位企業を区別する特徴は大きく異なることが分かりま
す。IT 投資で期待どおりの成果を得るためには、自社の位置付けを見極めた上で、自社に最適
な IT 投資プロセスを確立することが求められています。
今回の調査結果に関し、調査を担当したアビームリサーチのディレクター:木村公昭は、「IT 投資で期
待どおりの成果を上げている企業が3割というのは予想以上に低い数字である。IT の投資対効果を疑
問視する声が出るのも無理ないが、IT 投資で成果を上げている企業が確実に存在することも事実であ
る。IT 投資で成果を上げるために、ともすれば、CIO の選任や ITROI などの指標の導入に関心が向か
いやすいが、それだけでは問題の解決にはならない。自社の位置付けによって成功のポイントは異なり、
自社に合った投資プロセスを確立することが重要であることを企業は再認識すべきであろう」と、コメント
しています。
アビーム コンサルティング株式会社
(旧デロイト トーマツ コンサルティング/ブラクストン)について
アビーム コンサルティングは、アジア、北米を中心とした海外ネットワークを通じ、それぞれ
の国や地域に即したグローバル・サービスを提供している総合マネジメントコンサルティングフ
ァームです。戦略、BPR、IT、組織・人事、アウトソーシングなどの専門知識と、豊富な経
験を持つ約 2000 名のコンサルタントを有し、金融、製造、流通、エネルギー、情報通信、公共
などの分野を担う企業、組織に対し幅広いコンサルティングサービスを提供しています。年間連
結売上高(2003 年 5 月期)は 305 億円
本件に関するお問い合せ先
アビーム コンサルティング株式会社
マーケティング部 広報グループ 高橋、西田
住所:〒105-0003 東京都港区西新橋 1-2-9 日比谷セントラルビル
電話:03-3501-8355(部門代表) FAX:03-3501-8240 E-mail:japan@abeam.com