エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ

PRESS RELEASE
2015/11/30
エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
2016
年
1
月
16
日(土)‒
3
月
21
日(月・休)
国立国際美術館
左上:オルラン
《これが私の身体・・・、これが私のソフトウェア・・・》
1993/2007年
国立国際美術館蔵
© ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2015
C0844
左下:ローリー・トビー・エディソン
《トレーシー・ブラックストーン&デビー・ノトキン》
1994年
国立国際美術館蔵 © Laurie Toby Edison
右:マーク・クイン《美女と野獣》
2005 年
国立国際美術館蔵 © Marc Quinn
撮影:福永一夫
エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
開催趣旨
エッケ・ホモ ̶ 「この人を見よ」といった意味のラテン語です。新約聖書の一場面、罪に
問われるイエス・キリストを指さし、この言葉は発せられました。紫の衣を身にまとい、い
ばらの冠をかぶるイエス。むちに打たれ、血にまみれるその男への判決は、愚かな民衆にゆ
だねられています。結局は磔刑に処せられることになるイエスの、受難をあらわす主題とし
て、エッケ・ホモは、美術作品においてもたびたび取り上げられてきました。
人間を描き、そこに宗教的ないし倫理的な教訓をこめ、人間のあるべき姿を提示する。こう
した試みは、エッケ・ホモの主題に限らず、西洋美術の歴史の中で幾度もくり返されていま
す。いや、人間をどう描くか、人間の本質にどう迫るか、といった問題意識は、洋の東西、
古今の別なく共有される、美術の主要課題であるといえるでしょう。ただし、二度の世界大
戦を経たいま、人間の描写と教訓的なメッセージとが一直線に結ばれることは、ほとんどあ
りません。あるべき人間像がそもそも不確かな中で、現代の芸術家たちに課せられているの
は、むしろ人間の在り方を根本から問い直すことでした。
さまざまな社会的矛盾、不合理に直面する中で生みだされる現代美術の人間像。本展は、当
館所蔵の作品を中心とした 50 作家 100 点あまりの作品によって、第二次世界大戦以後の人間
描写の展開を振り返ります。ときに死体や犯罪を、ときに裂ける皮膚やその下に隠された内
臓を、ときに輪郭の定まらない曖昧な亡霊を描きだす現代の人間像は、安易な感情移入を許
すものではありません。なんらかの教訓を受けとる手前で立ち止まり、それ以上でも以下で
もないイメージをただじっと見据えることから、人間存在の問い直しは始まります。̶ 現代
の人間像を、見よ。
本展の見どころ
■ 当館が近年購入したアルベルト・ジャコメッティの絵画作品《男》
(1956 年)を公開しま
す。ジャコメッティの油彩作品を所蔵する美術館は国内では当館のみです。
■ ジャン・フォートリエの《人質の頭部》(1944 年
けぼの村物語》
(1953 年
国立国際美術館蔵)、山下菊二の《あ
東京国立近代美術館蔵)といった戦中戦後の虐げられた人間像
から、アンディ・ウォーホルの「マリリン」シリーズ(1967 年
国立国際美術館蔵)や
ゲリハルト・リヒターによるイメージによる人間像、さらにはポスト・ヒューマンを予感
させる田口和奈や小谷元彦による作品など、20 世紀後半以降の人間像の全てを見せます。
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エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
開催情報
展覧会名
エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
英 語 名 Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
会
期
2016 年 1 月 16 日(土)─ 3 月 21 日(月・休)
会
場
国立国際美術館
地下 3 階展示室(〒530-0005 大阪市北区中之島 4-2-55)
開館時間
10:00 ─ 17:00
休 館 日
月曜日(ただし、3 月 21 日(月・休)は開館)
主
催
国立国際美術館、朝日新聞社
協
賛
ダイキン工業現代美術振興財団
観 覧 料
個人:一般 900 円
※金曜日は 19:00 まで(入場は閉館の 30 分前まで)
大学生 500 円 / 団体:一般 600 円
大学生 250 円
団体は 20 名以上
高校生以下・18 歳未満、心身に障害のある方とその付添者 1 名無料(証明できるものをご提
示願います)
本料金で「竹岡雄二
台座から空間へ」「コレクション 2」もご覧いただけます
同時開催の展覧会
1 月 16 日(土)─ 3 月 21 日(月・休)
「竹岡雄二
台座から空間へ」、「コレクション 2」
次回の展覧会
4 月 5 日(火)─6 月 19 日(日)
「森村泰昌:自画像の美術史/『わたし』が『私』と出会うとき」、「田中一光ポスター展」、
「コレクション 1」
一般のお客様からのお問い合わせ先
URL
国立国際美術館
TEL: 06-6447-4680(代表)
http://www.nmao.go.jp/
交通アクセス
京阪電車中之島線「渡辺橋駅」(2 番出口)から南西へ徒歩約 5 分
地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」(3 番出口)から西へ徒歩約 10 分
JR大阪環状線「福島駅」、東西線「新福島駅」(2 番出口)から南へ徒歩約 10 分
阪神電車「福島駅」(3 番出口)から南へ徒歩約 10 分
当館には専用駐車場はありません。ご来館は電車・バス等をご利用ください
心身に障害のある方で、車で来館される場合は、当館北側の有料駐車場をご利用ください
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エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
出品作家
ジャン・フォートリエ
鶴岡政男
ジャン・デュビュッフェ
浜田知明
アルベルト・ジャコメッティ
山下菊二
フランシス・ベーコン
桂川寛
ヨーゼフ・ボイス
芥川(間所)紗織
ユゼフ・シャイナ
尾藤豊
ジョージ・シーガル
池田龍雄
アンディ・ウォーホル
吉仲太造
ゲルハルト・リヒター
村岡三郎
ゲオルク・バゼリッツ
靉嘔
ジャン=ピエール・レイノー
中村宏
ブライス・ボーネン
石井茂雄
ローリー・トビー・エディソン
工藤哲巳
ポール・マッカーシー
荒川修作
ヨルク・インメンドルフ
木下晋
オルラン
石内都
ミリアム・カーン
北山善夫
ミロスワフ・バウカ
森村泰昌
トーマス・ルフ
小林孝亘
ミヒャエル・ボレマンス
内藤礼
マーク・クイン
オノデラユキ
フィオナ・タン
西尾康之
孫原&彭禹(スン・ユエン&ポン・ユー)
北野謙
島袋道浩
小谷元彦
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エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
各章の構成
1.日常の悲惨
美術における人間の描写は、とりわけ第二次世界大戦以後、深刻な問題として立ち現れ
てきました。戦争犯罪や大量虐殺の事実を知る私たちには、犯罪や死、直視しがたい現
実をも含んだ、新しい人間像を模索することが求められています。理性や同情や博愛と
いった概念には還元されない人間の在り方とは、いかなるものか。最初のセクションで
は、悪や死を虚飾なく描き出し、教訓的な意味づけを回避しようとする、そんな人間描
写の可能性を探ります。
2.肉体のリアル
虚実の境が曖昧になっていく 20 世紀後半、今ここにいる「私」自身もまた、現実感を失
うことになります。もしかしたら自分がこの世界とつながっていないのかもしれない。
そうした不安を解消するべく、肉体のリアリティを取り戻す試みが、様々に展開されま
した。このセクションでは、虚ろな自己を虚ろなまま、外堀から埋めていくようにアイ
デンティティを模索する表現や、自己を形づくる皮膚、さらにはその下に隠された内臓
や体液を主題とする表現に焦点を当てます。
3.不在の肖像
描きだす主体としての人間と、描きだされる客体としての人間、そのいずれもが現代に
おいては捉えがたいものとなっています。20 世紀後半は、主体と客体という関係に疑問
を投げかけ、乗り越えようとする時代でもありました。その試みは、未完結で断片的な
像を提示し、鑑賞者自身に人間のありうる姿(もしくは、あるべき姿)を想像させるか
たちをとることになるでしょう。本展は最後に、主客を乗り越えた先に立ち現れる、い
わば予兆としての人間描写を紹介します。
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エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
作品紹介
鶴岡政男《重い手》1949 年
東京都現代美術館蔵
鶴岡政男は、自作をとおして、たえず「人間とは何か」を問い
続けた。本作品は、東京上野の地下道を歩く路上生活者に想を
得た、「外界の圧力に耐えている人間像」。戦後の不条理な現実
を、理想化することなく描いた作品である。
© Hiroko Yoshida
山下菊二《あけぼの村物語》1953 年
東京国立近代美術館蔵
山下菊二は、時事的・社会的なテーマを取り
上げ、作品をつうじて、人々に問題提起をす
る。本作品は、1952 年に山梨県でおこった「曙
村事件」を取材し、制作したもの。事件をめ
ぐる 4 つの出来事が、順不同に、1 つの画面
に圧縮されている。
ゲルハルト・リヒター《エリザベート》1965 年
東京都現代美術館蔵
本作品は、雑誌のある 1 ページを部分的に切り取り、絵に描い
たものである。通俗的な写真記事を拡大してそっくりそのまま
描き写しながら、さらにその絵をぼかすことで、画像を読まれ
るものから見られるものへと変換している。
© Gerhard Richter 2016
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エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
オルラン《これが私の身体・・・、これが私のソ
フトウェア・・・》1993/2007 年
国立国際美術館蔵
1990 年から 1993 年まで、9 回にわたり実施した
整形手術パフォーマンスのうちのひとつ。そのパ
フォーマンスでは、「自身を彫刻することによっ
て自己を新しく作り直す」こと、生まれつきの変
© ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2015
C0844
更不可能な存在ではなく、たえず違う存在になり
続けること、そして、「それにより社会との衝突
を起こす」ことが目指されている。
ローリー・トビー・エディソン
《トレーシー・
ブラックストーン&デビー・ノトキン》1994 年
国立国際美術館蔵
「ヌード」とは、男にとっての理想的な女性像で
あった。そんな、抑圧的な「ヌード」に対し、写
真家ローリー・トビー・エディソンは、太った女
性の「裸体」を提示する。親しい間柄の写真家と
© Laurie Toby Edison
モデル、しばしばモデルの自宅で撮影されるその
作品からは、「くつろいで、確信に満ちて、美し
い女性」の姿が浮かび上がってくるだろう。
マーク・クイン《美女と野獣》2005 年
国立国際美術館蔵
マーク・クインは、1964 年、イギリス生まれの彫刻家。ワッ
クスで造形した少女像の表面には、凍結乾燥させた動物の血液
が塗布されている。「純真と腐敗の共存、あるいは子供から大
人への転換点にある少女」が本作品の主題である。
© Marc Quinn
撮影:福永一夫
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エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
小谷元彦《ターミナル・インパクト》2014 年
個人蔵
《ターミナル・インパクト》とは、義足を装着し
た足先が歩行時に受ける衝撃のこと。小谷元彦
は、身体の欠損とその補足という問題を、彫刻に
おける断片性の美という問題に重ね合わせつつ、
映像インスタレーションとして提示する。
© Motohiko ODANI
© Motohiko ODANI
撮影:表恒匡
提供:山本現代
アルベルト・ジャコメッティ《男》1956 年
国立国際美術館蔵
アルベルト・ジャコメッティにとって重要なのは、モデルを見
えるままに描くことだった。本作品は、弟ディエゴを描いたと
推定されるもの。たえず移り変わる印象に忠実であるため、く
りかえし修正される男の輪郭線は、認識しがたいまでにぶれて
いる。
© Alberto Giacometti Estate / JASPAR in Japan, 2015
C0844
ミヒャエル・ボレマンス《Automat (3)》
2008 年
国立国際美術館蔵
生身でありながら、脚が描かれず、まるでトルソのような女性
の身体。1963 年、ベルギーに生まれたミヒャエル・ボレマンス
の手がける作品は、写実的な描写、シンプルな構図でありなが
ら、非現実的で謎めいた雰囲気を特徴とする。
© Michaël Borremans / Courtesy of Zeno X Gallery,
Antwerp and Gallery Koyanagi, Tokyo
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エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
オ ノ デ ラ ユ キ 《 古 着 の ポ ー ト レ ー ト No.52 》
1997 年
国立国際美術館蔵
「古着のポートレート」は、1994 年から 1997 年
にかけて撮影された全 52 点から成る、初期の代
表作。フランスの美術家クリスチャン・ボルタン
ス キ ー が 1993 年 に パ リ で 開 催 し た 個 展
「Dispersion(離散)」で展示された古着を撮影して
いる。シャツの下の部分が見えないようにトリミ
ングされ、グレーの空に浮かぶその写真は、持ち
主の記憶が封印された肖像だといえよう。
© Yuki Onodera
北野謙《『our face: Asia』より
ラム教徒 38 人を重ねた肖像(女)
ンドネシア
マルク州
ラマダン明けの礼拝に来たイス
No.1
2009 年 9 月 20 日
イ
アンボン市》2010 年
国立国際美術館蔵
「our face project」は特定の集団に属する人びとの肖像を重ね
合わせたシリーズ作品。 1枚の印画紙に、人数分の異なるネガ
フィルムを1枚ずつ焼き付けることによって、たったひとつの
「わたしたちの顔」が浮かび上がる。北野はこのシリーズのた
めに、1999年以来アジア11か国で5000を超える人びとを撮影し
© Ken Kitano
てきた。
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エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
関連イヴェント
ギャラリー・トーク
1 月 23 日(土)、2 月 6 日(土)各日とも 14:00∼
会場:国立国際美術館
地下 3 階展示室
参加無料(要観覧券)
当日 13:30 から聴講用ワイヤレス受信機を貸し出します(先着 90 名)
アーティスト・トーク
3 月 5 日(土)14:00∼
講師:小谷元彦(美術家・彫刻家・本展出品作家)
会場:国立国際美術館
参加無料
地下 1 階講堂
定員 130 名
当日 10:00 から整理券を配布します
ダイキン工業現代美術振興財団
創立 20 周年記念公演
「わが父、ジャコメッティ」
3 月 19 日(土)、20 日(日)
劇団:悪魔のしるし
出演:木口敬三、危口統之、大谷ひかる、他
会場:国立国際美術館
地下 1 階講堂
主催:国立国際美術館、ダイキン工業現代美術振興財団
後援:朝日新聞社
参加有料(チケット制)
チケットの販売方法については、詳しいことが決まり次第、国立国際美術館ホームページ
(http://www.nmao.go.jp/)に掲載します
トーク・セッション
3 月 21 日(月・休)14:00∼
講師:危口統之(悪魔のしるし主宰・演出家)、長谷川新(インディペンデントキュレーター)予定
会場:国立国際美術館
参加無料
地下 1 階講堂
定員 130 名
当日 10:00 から整理券を配布します
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エッケ・ホモ
現代の人間像を見よ
Ecce Homo: The Human Images in Contemporary Art
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オルラン《これが私の身体・・・、これが私のソフトウェア・・・》
アルベルト・ジャコメッティ《男》
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冬木明里
TEL: 06-6447-4671(直通)
展覧会担当 福元崇志、中井康之
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FAX: 06-6447-4698(学芸課)