A Protection Scheme with Double Optical Trees in Active

社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE.
アクティブ光アクセスネットワークにおける
2 系統の光ツリーによるプロテクション方式
佐藤 丈博†
芦沢 國正†
徳橋 和将†
石井 大介†
岡本 聡†
山中 直明†
† 慶應義塾大学理工学部情報工学科
〒 223–8522 横浜市港北区日吉 3–14–1
E-mail: †t-sato@yamanaka.ics.keio.ac.jp
あらまし
我々は,PON (Passive Optical Network) に代わる次世代光アクセスネットワークとして,収容加入者数
の増加と伝送距離の伸長を目的とした,光スイッチを用いる新たなアクティブ型光アクセスネットワーク ActiON
(Active Optical Network) を提案している.本研究では,ActiON の信頼性向上手法として,2 系統の ActiON の相互
接続によるプロテクション方式を提案し,稼働率および設備コストについて評価を行った.
キーワード
光アクセスネットワーク,GE-PON,IEEE802.3av,稼動率,プロテクション
A Protection Scheme with Double Optical Trees
in Active Optical Access Network
Takehiro SATO† , Kunitaka ASHIZAWA† , Kazumasa TOKUHASHI† , Daisuke ISHII† , Satoru
OKAMOTO† , and Naoaki YAMANAKA†
† Dept. of Information and Computer Science, Faculty of Science and Technology, Keio University
3-14-1 Hiyoshi, Kohoku, Yokohama, 223-8522 Japan
E-mail: †t-sato@yamanaka.ics.keio.ac.jp
Abstract We study a novel optical access network with active optical switches, called ActiON (Active Optical
Network), as a next generation access network to replace PON (Passive Optical Network). In this paper, we focus
on the reliability of optical access networks and propose a protection scheme for ActiON by connecting two ActiON
trees. Finally we discuss the availability and the component cost of the proposed architecture.
Key words Optical Access Network, GE-PON, IEEE802.3av, Availability, Protection
1. ま え が き
(IEEE 802.3av) [1] の標準化が 2009 年 9 月に完了し,今後の
実用化が予想される.PON の利点として,安価なパッシブデ
現在の FTTH (Fiber To The Home) では,PON (Passive
バイスである光スプリッタを用いるため,低コスト,電源不要
Optical Network) と呼ばれるパッシブ型の光アクセスネット
であることが挙げられる.一方で,光スプリッタで光パワーが
ワークが用いられる.図 1 に PON のアーキテクチャを示す.
分岐するため,OLT の収容可能加入者数の増加や,OLT-ONU
PON は局側装置である OLT (Optical Line Terminal),加入
間の伝送距離の伸長が困難などの欠点をもつ.また,OLT か
者側装置である ONU (Optical Network Unit),光スプリッタ
ら送信されたすべての光信号が各 ONU に伝送されるため,加
から構成される.1 台の OLT が複数の ONU を収容するツリー
入者間の回線秘匿性に関して原理的限界がある.
型トポロジにより,専用線に対して経済的なアクセスネット
我々は PON における諸問題を解決するため,アクティブ
ワークを実現する.現在広く利用される GE-PON (Gigabit
型の新たな光アクセスネットワーク ActiON (Active Optical
Ethernet-PON) では,Ethernet フレームをデータ伝送に使用
Network) を提案している [2,3].図 2 に ActiON のアーキテク
し,通信速度 1Gbps,最大収容加入者数 32,最大伝送距離 20km
チャを示す.ActiON は PON と同様に OLT を頂点としたツ
を想定する.また,10Gbps の通信速度を実現する 10GE-PON
リー型トポロジをとり,光スプリッタの代わりに光スイッチを
—1—
表1
OLT
Trunk Fiber
Splitter
ONU1
ONU2
ONU3
Downstream: 1490 nm
Upstream: 1310 nm
OLT
Optical Switch
Unavailability
OLT
0.00009
Optical Fiber Cable (/km)
0.0000048
Splitter
0.00000144
WDM Coupler
0.0000144
High-Speed Optical Switch (1:128) 0.00006
図 1 PON のアーキテクチャ
Trunk Fiber
各コンポーネントの不稼働率
Component
ONU
ONU1
ONU2
ONU3
Downstream: 1490 nm
Upstream: 1310 nm
0.00003
ている.また,SOHO (Small Office / Home Office) などの小
規模事業者においては,経済的理由から専用線の代わりに安価
な PON を用いて業務取引を行うことが考えられる.以上のよ
うな状況下では,経路上において障害が発生した際に,サービ
ス断により加入者が大きな損失を被る可能性がある.したがっ
図 2 ActiON のアーキテクチャ
Down
て,光アクセスネットワークにおいて,コンポーネントの冗長
化により稼働率を高める手法を検討する必要がある.PON に
おいてはコンポーネントの二重化によるプロテクション方式が
WDM Coupler
ITU-T 勧告 G.983 シリーズ [5] で勧告されており,さらに費用
対効果の良い方式について様々な検討が行われている [6-8].本
High-Speed
Optical Switch
Up
論文では,ActiON の特長である加入者数の増加,伝送距離の
伸長を可能としながら,高い信頼性を達成可能な ActiON のプ
図 3 ActiON の光スイッチ部
ロテクション方式を提案する.不稼働率および設備コストにつ
いて性能評価を行い,提案方式の有効性を示す.
用いて複数の ONU を収容する.光スイッチは同期メッセージ
の送信により常に OLT と同期し,OLT の指示に従い放路の切
2. 前 提 条 件
り替えを行う.図 3 に光スイッチ部の詳細なアーキテクチャを
2. 1 コンポーネントの不稼働率および設備コスト
示す.光スイッチには 10nsec 以下で放路切替が可能な PLZT
本論文では不稼働率の性能評価において,表 1 に示す値を使
(Plomb Lanthanum Zirconate Titanate) 光スイッチの使用を
用した.不稼働率はシステムあるいはコンポーネントが利用不
予定している [4].下り通信と上り通信で独立した帯域割り当て
可能な状態にある時間の割合であり,1 から稼働率を引いたも
を実現するため,1 系統の ActiON につき 2 台の光スイッチを
のに等しい.本論文では [9] を参考に各コンポーネントの不稼働
設置する.ActiON では,データ送信に先立ち光スイッチの切
率を設定した.また,設備コストは,OLT :光ファイバケーブ
り替え動作を予約し,電気信号への変換を介さずに OLT-ONU
ル (/km) : 光スプリッタ : WDM カプラ : 光スイッチ (1:128)
間でデータ通信を行う.OLT は固定長のスロットと呼ばれる時
: ONU = 150 : 0.5 : 1 : 2 : 150 : 5 とした.
間単位で ONU に帯域を割り当て,複数のスロットから構成さ
2. 2 光アクセスネットワークの不稼働率および設備コスト
れる周期単位で光スイッチの制御を行う.ActiON ではスイッ
本論文では,光アクセスネットワークを構成する各コンポー
チングにより任意の ONU にのみデータの伝送を行うことが可
ネントがネットワーク全体におよぼす影響を考慮に入れるた
能であり,加入者間の回線秘匿性を改善可能である.また,原
め,各コンポーネントの不稼働率に対し,障害発生時に影響を
理的に光パワーの分岐による損失がなくなるため,収容加入者
受ける ONU の割合で重み付けを行った [10].光アクセスネッ
数の増加および伝送距離の伸長が可能となる.ターゲットとし
トワークの不稼働率 U(weighted) は,OLT-ONU 間のコンポー
て,10GE-PON と互換性を保ちつつ,最大収容加入者数 128,
ネント i の不稼働率を Ui ,重みを αi として
∏
最大伝送距離 40km を目指している.一方で,アクティブデバ
イスである光スイッチを用いることにより電源が必要となる点
U(weighted) = 1−
i
αi (1−Ui ) ≈
∑
αi U i
(Ui ≪ 1)
(1)
i
や,全 ONU へのブロードキャスト送信が不可能などの課題が
ある.
αi =
本論文では,ActiON における信頼性向上のためのプロテク
ション方式について研究を行った.現在,PON の普及および
広帯域化に伴い,多様なサービスが PON を介して加入者に提
供されている.一般家庭においては,IP 電話や地上デジタル
放送の再送信,あるいはインターネットバンキングなどのサー
ビスが提供され,PON のライフラインとしての重要性が増し
(i の障害により通信不能となる ONU 数)
(ネットワーク全体の ONU 数)
(2)
で表す.
また,設備コストについては,ONU1 台あたりに換算した上
で評価を行った.ONU1 台あたりの設備コスト C は,
C=
(全コンポーネントの設備コストの総和)
(ネットワーク全体の ONU 数)
(3)
で表す.
—2—
Primary Path
Backup Path
Splitter
ONU1
ONU2
OLT
ONU3
(a) Type A
ONU1
OLT
ONU2
OLT’
ONU3
(Spare)
(b) Type B
図 5 10GE-PON の不稼働率
ONU1
ONU1’ (Spare)
OLT
ONU2
ONU2’ (Spare)
OLT’
ONU3
ONU3’ (Spare)
(Spare)
(c) Type C
ONU1
ONU1’ (Spare)
OLT
ONU2
ONU2’ (Spare)
OLT’
ONU3
ONU3’ (Spare)
(Spare)
(d) Type D
図 4 ITU-T G.983 による PON プロテクション
図 6 10GE-PON の ONU1 台あたり設備コスト
3. PON におけるプロテクション
A から Type D の順に不稼働率が減少し,信頼性の高いネット
3. 1 コンポーネントの不稼働率に対する考察
備系のコンポーネントの設置によりネットワークの設備コスト
表 1 より,OLT,光スイッチなどのアクティブデバイスは,
が増大する.加入者は必要とする稼働率と許容可能な設備コス
ワークの構築が可能である.しかし,トレードオフとして,予
光スプリッタなどのパッシブデバイスと比較して不稼働率が高
トから,適切なレベルのプロテクション方式を選択する必要が
いことが分かる.光ファイバケーブルはパッシブデバイスであ
ある.
るが,長距離化した場合に不稼働率が高くなる.また,PON に
3. 3 費用対効果の良い PON プロテクション
おいては,OLT,幹線ファイバ,光スプリッタなど,全 ONU
PON プロテクションにおいて設備コストを削減する方法の
で共有するコンポーネントで障害が発生した場合,全加入者
1 つとして,予備系のコンポーネントを複数の PON に対して
が一斉にサービス断に陥る.以上の理由から,PON では OLT
1 台設置する方式が提案されている.例として,Type H と呼
および幹線ファイバを優先的に冗長化する必要があると考えら
ばれるプロテクション方式が挙げられる [6].図 7 に本方式の
れる.
アーキテクチャを示す.本方式では複数の PON に対して 1 台
3. 2 ITU-T 勧告によるプロテクション
の割合で予備系の OLT を設置し,光スイッチを介して各 PON
ITU-T 勧告 G.983 シリーズ [5] では,予備系の設置により
の光スプリッタに接続する.任意の PON において OLT ある
系の一部あるいは全体の二重化を行う PON プロテクション方
いは幹線ファイバに障害が発生した場合,光スイッチの切り替
式を提案している.本勧告では二重化区間に応じて,Type A,
えを行うことで,配下の ONU を予備系の OLT が収容する.
B,C,D の 4 種類のプロテクション方式を規定している.図 4
ITU-T 勧告によるプロテクション方式,および Type H の欠
に各プロテクション方式のアーキテクチャを示す.Type A で
点として,通常時に予備系の OLT が使用されないことが挙げ
は幹線ファイバ,Type B では OLT および幹線ファイバを二
られる.予備系専用の OLT の設置は,帯域利用効率および基
重化の対象とする.Type C および Type D では,光スプリッ
地局における設置面積の点で問題がある.また,予備系の OLT
タ,支線ファイバ,ONU を含めた,PON 全体を二重化する.
は通常時にコールドスタンバイ状態であり,障害の発生が検出
ITU-T 勧告によるプロテクション方式を 10GE-PON に適
されてから起動するため,通信回復時間が長くなることが予想
用した場合の不稼働率を図 5 に,設備コストを図 6 に示す.
OLT-ONU 間の光ファイバケーブルの距離は 20km とし,その
される.
予備系専用の OLT が不要な方法として,2 系統以上の PON
うち支線は 2km とした.また,ONU 数は 32 台とした.Type
—3—
Splitter
Optical Switch
ONU1-1
ONU1-2
ONU1-3
OLT2
ONU2-1
ONU2-2
ONU2-3
OLT2
ONU2-1
ONU2-2
ONU2-3
OLTN
ONUN-1
ONUN-2
ONUN-3
OLT’
(Spare)
Splitter
n:2n
㵺
OLT1
㵺
OLT1
ONU1-1
ONU1-2
ONU1-3
OLT3
ONU3-1
ONU3-2
ONU3-3
OLT4
ONU4-1
ONU4-2
ONU4-3
Optical Switch
図9
図 7 Type H [6]
Optical Switch
Splitter
OLT1
ONU1-1
ONU1-2
ONU1-3
OLT2
ONU2-1
ONU2-2
ONU2-3
複数系統を接続する PON プロテクション [8]
図 8 2 系統を接続する PON プロテクション [7]
を相互に接続し,障害発生時に 1 台の OLT が複数系統分の
ONU を収容するプロテクション方式が提案されている.
図 8 に,光スプリッタおよび光スイッチを用いて 2 系統の
PON を接続するプロテクション方式を示す [7].本方式は,OLT
図 10 ActiON の不稼働率
で発生した障害にのみ対応可能である.障害が発生していない
状態では,2 台の OLT は配下の ONU を半分ずつ収容し,独
立した 2 系統の PON として動作する.一方の OLT に障害が
発生した場合,光スイッチを切り替え,他方の OLT が全ての
ONU を収容する.
また,図 9 に,大規模な光スイッチを用いて複数の PON を
接続するプロテクション方式を示す [8].任意の OLT に障害が
発生した場合,正常な OLT の中で配下の ONU への割り当て
帯域が最も小さいものが,ONU を代わりに収容する.幹線ファ
イバは PON ごとに二重化し,幹線ファイバ切断時には光スイッ
チの放路を予備ファイバに切り替えることで通信を回復する.
図 8,図 9 のプロテクション方式の利点として,予備系の
OLT を排除することで設備コストを削減可能であることが挙げ
られる.一方,欠点としては,複数系統の PON を常にまとめ
て制御する必要が挙げられる.また,障害発生時には,OLT の
収容 ONU 数の増加により,加入者あたりの帯域の減少,DBA
(Dynamic Bandwidth Allocation) における OLT の負荷の増
大が考えられる.
4. ActiON におけるプロテクション
用した場合を選択する.
Type B をアクティブ型の光アクセスネットワークに適用し
た場合,以下の 2 点の問題がある.1 点目は,光スイッチの使
用に関する問題である.表 1 より,アクティブデバイスである
光スイッチは,パッシブデバイスである光スプリッタと比較し
て不稼働率が高いことが分かる.一方,Type B で規定される
二重化範囲は OLT と幹線ファイバのみであり,光スイッチは
含まれない.ITU-T 勧告によるプロテクション方式を ActiON
に適用した場合の不稼働率を図 10 に,設備コストを図 11 に示
す.OLT-ONU 間の光ファイバケーブルの距離は 40km とし,
そのうち支線は 2km とした.また,ONU 数は 128 台とした.
Type B を ActiON に適用した場合,10GE-PON と比較して
稼働率の改善が小さく,ターゲットである稼働率 99.999%を達
成不可能である.そこで,本研究では,OLT,幹線ファイバに
加え,光スイッチの冗長化を行うことにより,稼働率の改善を
図る.2 点目は,予備系専用の OLT の設置に関する問題であ
る.前述の通り,Type B では予備系の OLT を通常時に有効
利用することが不可能である.そこで,本研究では,図 8 に示
した方式を参考に,2 系統の ActiON の接続により予備系専用
4. 1 ターゲットの設定
本研究では,固定電話回線ネットワークに要求される稼働率
99.999%(ファイブナイン)をターゲットとし,ActiON に対
するプロテクション方式の設計を行う [11].稼働率 99.999%は
図 5 における不稼働率 10−5 にあたる.したがって,本研究の
開始点として,10GE-PON に Type B のプロテクションを適
の OLT の排除を図る.
4. 2 提案方式の概要
図 12 に提案する ActiON プロテクション方式のアーキテク
チャを示す.本アーキテクチャでは,同じ基地局に属する 2 系
統の ActiON を光スイッチ部において相互接続する.具体的に
は,図 13 に示すように,出力ポート数が通常の ActiON の 2
—4—
ONU1-1
Optical Switch
Trunk Fiber
ONU1-2
OLT1
ONU1-3
OLT2
ONU2-1
ONU2-2
ONU2-3
(a) ㅢᏱᤨ䈱േ૞
ONU1-1
Optical Switch
Trunk Fiber
ONU1-2
ONU1-3
OLT1
Failure
図 11 ActiON の ONU1 台あたり設備コスト
OLT2
ONU2-1
ONU2-2
ONU1-1
Trunk Fiber
Optical Switch
ONU2-3
ONU1-2
OLT1
ONU1-3
OLT2
ONU2-1
(b) 㓚ኂ⊒↢ᤨ䈱േ૞
図 14
Splitter
図 12
提案方式の動作
ONU2-2
2,ONU2-3 とデータ通信を行い,独立した 2 系統の ActiON
ONU2-3
として動作する.
提案方式のアーキテクチャ
続いて,障害が発生した場合の通信回復方法について述べる.
2 系統の ActiON のうち一方において,OLT,幹線ファイバ,
Down
WDM Coupler
光スイッチのいずれかに障害が発生した場合を想定する.
最初に,基地局側において障害の発生を検出する必要がある.
OLT において障害が発生した場合,当該 OLT を収容する基地
High-Speed
Optical Switch
局において障害の発生を検出する.幹線ファイバあるいは光ス
Up
図 13 提案方式の光スイッチ部
イッチにおいて障害が発生した場合,配下の複数の ONU から
のメッセージが一斉に断絶するため,OLT において障害の発
生を検出することが可能である.
倍となる光スイッチを用い,半分の出力ポートをプロテクショ
ン用に割り当てる.プロテクション用の出力ポートと,他方の
光スイッチから延びる支線ファイバを,スプリッタを用いて接
続する.各 OLT から延びる幹線ファイバは別々の経路を通り
光スイッチ部において再び近接するように敷設することで,同
時にファイバ切断が発生する確率を低減する.
本提案方式の利点として,OLT,幹線ファイバ,光スイッチ
の 3 点のコンポーネントを冗長化可能であり,全加入者が一斉
にサービス断に陥る確率を低減可能であることが挙げられる.
また,本提案方式では通常時に 2 台の OLT が常に稼働してい
るため,障害発生時には,ONU への帯域割り当て方式を変更
し通常時と同様に光スイッチの制御を行うだけで,短時間で障
害回復が可能と考えられる.
4. 3 提案方式の動作
図 14 に提案する ActiON プロテクション方式の具体的な動
作を示す.
障害が発生していない状態では,図 14(a) に示すように,2 台
の OLT は実線で示す光ファイバケーブルで接続された ONU の
みを収容する.OLT は配下の光スイッチに対して,図 13 の実
線で示す出力ポートのみに放路を向ける制御を行う.OLT1 は
ONU1-1,ONU1-2,ONU1-3 と,OLT2 は ONU2-1,ONU2-
続いて,障害が発生したコンポーネントの下流に位置する
ONU の通信を回復する.2 系統の ActiON のうち一方の系統
において障害を検出した場合,他方の系統の OLT は配下の光
スイッチに対して,図 13 の破線を含めたすべての出力ポートに
放路を向ける制御を行う.そして,障害により通信不能に陥っ
た ONU を代わりに収容する.すなわち,図 14(b) に示すよう
に,通常時の 2 倍の ONU を収容する大規模な ActiON とし
て動作する.以上の手順で,障害発生時に ONU の通信を回復
する.
4. 4 提案方式の性能評価
本性能評価では,図 10 および図 11 と同様に,OLT-ONU
間の光ファイバケーブルの距離は 40km とし,そのうち支線は
2km とした.また,ONU 数は ActiON 1 系統あたり 128 台と
した.提案方式では 2 系統の ActiON を接続するため,ONU
数は 256 台とした.1:256 の光スイッチの不稼働率および設備
コストは,光スイッチを構成する 1:2 のエレメントの数に比例
すると仮定し,2. 1 節の前提条件をもとに設定した.
4. 4. 1 不 稼 働 率
提案方式および ITU-T 勧告によるプロテクション方式を
ActiON に適用した場合の不稼働率を,図 15 に示す.提案方
式では,ActiON に Type B のプロテクションを適用した場合
と比較して稼働率を大きく改善し,ターゲットとする稼働率
—5—
を保持しつつ設備コストを抑制する方法について検討する必要
がある.
謝
辞
本発表内容は,総務省が進めるフォトニックネットワークに関
する研究の一環である,(独) 情報通信研究機構の委託研究「集
積化アクティブ光アクセスシステムの研究開発」の成果である.
また,グローバル COE プログラム「アクセス空間支援基盤技
術の高度国際連携 GCOE C-12)」および科研費 19360178(B)
の助成を受けたものである.
文
図 15
図 16
提案方式の不稼働率
提案方式の ONU1 台あたり設備コスト
99.999%以上を達成可能である.また,10GE-PON に Type B
を適用した場合(図 5)と比較して,2 倍の距離で高い稼働率
を実現可能である.
4. 4. 2 設備コスト
提案方式および ITU-T 勧告によるプロテクション方式を
ActiON に適用した場合の ONU1 台あたりの設備コストを,図
16 に示す.提案方式では,ActiON に Type B のプロテクショ
ンを適用した場合と比較して設備コストが約 24%増加する.ま
た,10GE-PON に Type B を適用した場合(図 6)とほぼ同等
の設備コストを実現可能である.これは,ActiON は PON と
比較して収容可能な ONU 数が多く,光スイッチの大規模化に
よるコスト増を多人数で分割可能であるためと考えられる.
5. む す び
アクティブ型光アクセスネットワーク ActiON は,光スイッ
献
[1] IEEE 802.3av 10G-EPON Task Force, “Part 3: Carrier
Sense Multiple Access withCollision Detection (CSMA/CD)
Access Methodand Physical Layer Specifications,” IEEE
P802.3av/D3.4, 2009.
[2] 徳橋和将, 菊田洸, 石井大介, 荒川豊, 岡本聡, 山中直明, “アク
ティブ光スイッチを用いた光アクセス網の一検討,” 電子情報通
信学会技術研究報告, vol.108, no.183, PN2008-22, pp.49-54,
2008.
[3] 芦沢國正, 徳橋和将, 菊田洸, 石井大介, 荒川豊, 岡本聡, 山中直明,
“アクティブ光アクセスネットワークにおける TCP スループッ
トを考慮したパラメータ設計および動的スロット割当,” 電子情報
通信学会技術研究報告, vol.108, no.476, PN2008-85, pp.7-12,
2009.
[4] エピフォトニクス株式会社,
http://epiphotonics.com/index jp.html.
[5] ITU-T recommendation G.983.1, “Broadband optical access
systems based on Passive Optical Networks (PON),” 1998.
[6] Dexiang John Xu, Wei Yen and Elton Ho, “Proposal of
a New Protection Mechanism for ATM PON Interface,”
IEEE International Conference on Communications, vol.7,
pp.2160-2165, 2001.
[7] 小原一歩, 堀内幸夫, “予備系を必要としない PON 冗長方式,”
電子情報通信学会技術研究報告, vol.108, no.309, OCS2008-97,
pp.71-74, 2008.
[8] W. T. P’ng, S. Khatun, S. Shaari and M. K. Abdullah,
“A Novel Protection Scheme for Ethernet PON FTTH Access Network,” IEEE International Conference on Networks,
vol.1, pp.487-490, 2005.
[9] An Vu Tran, Chang-Joon Chae and Rodney S. Tucker,
“Ethernet PON or WDM PON:A Comparison of Cost and
Reliability,” Tencon 2005, session 2C-11.3, IEEE Region 10,
2005.
[10] Liqian Wang, Xue Chen, “Network Reliability Modeling
and Analysis of Passive Optical Networks,” WRI International Conference on Communications and Mobile Computing, cmc, vol.2, pp.466-470, 2009.
[11] シスコシステムズ株式会社, “Technology ネットワークのアッ
プタイムを向上させるために,” PACKET 日本版, 2002 年春号,
pp.26-29, 2002.
チによるスイッチング技術を用いることで,最大収容加入者数
の増加,最大伝送距離の伸長および加入者間セキュリティの向
上を可能にする.本論文では光アクセスネットワークの高信頼
化に着目し,ActiON に適した新たなプロテクション手法を提
案した.稼働率および設備コストについて評価を行い,提案方
式では ActiON に従来の Type B プロテクションを適用した場
合と比較して稼働率を大きく改善し,稼働率 99.999%以上を達
成可能であることを示した.
今後の課題としては,提案方式について,同レベルの稼働率
—6—