20 00 年 7月 3日 「SOHO社会」を実現するための10の提言 財団 法人 社 会経 済生 産 性本 部 SO HO 社 会研 究会 1.提言の基本的視点 「SOHO社会」の到来 今 日、 わ が国 は情 報 技術 革命 の ただ 中に ある 。資 源 多消 費型 の 工業 社会 に か わり 、持 続 可能 な「 知 識社 会」 の 本格 的な 到来 が目 前 にあ る。 終 身雇 用に 代 表 され る日 本 的経 営も 変 容を 迫ら れ 、重 層的 な分 業構 造 から オー プ ン・ ネッ ト ワ ーク によ る 水平 的協 業 関係 を中 心 とし た産 業組 織に 転 換し つつ あ る。 こ のよ う に変 化を 遂 げて いく 社 会に おい て、 どの よ うに して ゆ とり と活 力 を 高め てい く こと がで き るか 。そ れ は、 垂直 統合 的な 集 権的 シス テ ムか ら、 自 律 分散 的な 協 調シ ステ ム へ転 換す る こと によ って 可能 と なろ う。 そ れに よっ て 、 多様 な情 報 の新 たな 結 びつ きが 生 まれ 、新 時代 の価 値 や市 場が 創 造さ れて い く もの と考 え られ る。 こ うし た 社会 シス テ ムの 転換 を 背景 とし て、 SO H O( スモ ー ルオ フィ ス ・ ホー ムオ フ ィス )が 期 待と 注目 を 集め てい る。 SO H Oは 、イ ン ター ネッ ト を ビジ ネス の 場、 市場 と して 活用 す るこ とに よっ て、 知 的価 値を 創 造す る担 い 手 であ る。 し かも 、個 人 や小 規模 の 人数 によ る取 組み な がら 、効 率 的か つ効 果 的 に創 業・ 操 業を 行っ て いる 事業 形 態、 ライ フス タイ ル でも ある 。 イ ンタ ー ネッ トの 広 がり は、 個 人を 生か した 形の 新 しい 働き 方 を生 み出 し つ つあ る。 こ れま で大 手 ・中 堅企 業 の中 で雇 用労 働者 と して 働い て きた 者や 、 重 層的 な下 請 け分 業体 制 の下 で専 門 サー ビス を提 供し て きた 事業 者 に変 化が 表 れ てき てい る 。自 らの 情 報や 知識 、 技術 など の知 的資 産 を直 接市 場 に展 開し 、 S OH Oと し て創 業・ 操 業す るこ と を選 択す る者 が増 え てき てい る ので ある 。 S OH O のよ うな 事 業形 態、 ラ イフ スタ イル は、 男 性や 女性 、 更に は年 齢 を 1 問わ ず急 速 に広 がり 、 支持 を集 め てい る。 それ は、 S OH Oが ゆ とり ある 活 気 に満 ちた 働 き方 を実 現 する もの だ から であ る。 こ のよ う に、 SO H Oを 通じ て 表れ る新 しい 働き 方 や生 活の あ り方 が、 新 時 代の 社会 の 姿と なる か もし れな い 。そ うで ある とす れ ば、 われ わ れは 21 世 紀 にき たる 知 識社 会ビ ジ ョン の一 つ を「 SO HO 社会 」 と名 付け る こと がで き る ので はな い だろ うか 。 SOHOの発展基盤 S OH O は、 新し い 価値 を生 み だし てい ると いう 意 味で 、既 に 、経 済活 動 に おい て量 的 にも 質的 に も重 要な 役 割を 担っ てい る。 し かし 、そ の こと に対 す る 世間 一般 の 認識 は低 く 、S OH O の経 済的 、社 会的 地 位は 、ま だ 必ず しも 高 く ない 。ま た 、S OH O がよ り一 層 活躍 して いく ため の 社会 的基 盤 の整 備も 立 ち 後れ てい る と言 わざ る を得 ない 。 S OH O は、 小規 模 であ るこ と に特 徴が あり 、そ の こと によ る 脆弱 性が 指 摘 され てい る 。し かし 、 その 反面 、 小規 模だ から こそ の 柔軟 性や 機 動力 とい っ た メリ ット に も着 目す べ きで ある 。 また 、S OH Oは 自 立し た働 き 方、 ライ フ ス タイ ルで あ ると いえ る が、 この こ とは 責任 と権 限に 対 して 明確 な 意識 を持 つ こ とに つな が る。 この 点 は、 信用 ・ 信頼 の絆 を基 本に し た社 会を 考 えて いく 上 で の重 要な 要 件で あり 、 SO HO の 発展 がそ の実 現に 寄 与す るも の とい えよ う 。 多 様な 知 的資 源を も った SO H Oが 、相 互に 協業 し なが ら、 新 たな 価値 の 創 造や 未知 の 市場 の開 拓 へと 果敢 に チャ レン ジで きる 環 境を 整え て いく こと は 、 国全 体と し ての 課題 で ある 。そ の ため にも 政府 は、 高 度情 報化 の 推進 、新 産 業 の振 興、 雇 用対 策な ど 、現 在急 務 とな って いる 諸施 策 の展 開に あ たり 、も っ と SO HO を 意識 し、 政 策の 中に 明 確な 位置 付け を持 た せて いく べ きで ある 。 し かし な がら 、S O HO の発 展 のた めに は、 SO H Oみ ずか ら の主 体的 な 取 組み が不 可 欠で ある 。 イン ター ネ ット を基 盤と し、 情 報技 術の 発 達に より 伸 張 した SO H Oで ある が 、速 度を 増 す情 報技 術の 革新 に 対応 する た めに は、 知 識 や技 術の よ り一 層の 研 鑽、 事業 の 高度 化や その 展開 力 の強 化に 継 続し て取 り 組 まな けれ ば なら ない 。 その ため に は、 SO HO どう し が、 自立 と 連帯 の立 場 に たっ て、 個 々の 能力 を 相互 接続 し 、こ れを 最大 限に 発 揮す るた め のオ ープ ン ・ ネッ トワ ー クを 広げ て いく こと が 重要 であ る。 2 「SOHO社会」実現へのアクションプランに向けて 以 上の よ うな 問題 意 識に たっ て 、S OH O事 業者 と SO HO 研 究者 とで 構 成 する 本研 究 会は 、S O HO の発 展 ・成 長を 期す るた め 、必 要な 政 策の メニ ュ ー を1 0の 提 言と して 提 案す る。 (1)SOHOの優位 性を発揮させ、その脆 弱性 を克 服するために [提 言1]SOHOディレクトリー(電 子基 本 台 帳)の構築 [提 言2]ビジネス力向 上のためのコラボレーション・ツールの開 発 [提 言3]仕 事能 力の評価と信 頼性 向上 の仕 組みの確立 (2)SOHO事 業資 金の円 滑な供給と知的 財 産 権の確 立のために [提 言4]SOHOの信 用 情報データベースの構築 [提 言5]「SOHO BANK」創設も含めたSOHO向け金 融サービスの開 発 [提 言6]知 的財 産権 の保 護・評価 ・流 通の仕組みの確 立 (3)SOHOの取引 市場 を整 備するために [提 言7]標 準約 款の整備と電 子認 証システムの創 設 [提 言8]安 価で簡便 なトラブル解 決システムの構築 [提 言9]SOHOエージェントの仲 介ルールの確立 (4)政 府が総合 的にSOHO支 援政 策を展開 するために [提 言10]SOHO統 計の整備とSOHOを支 援する「サイバー政 府」の実 現 政 府は 、 SO HO 諸 団体 と協 力 し、 これ らの 提言 を アク ショ ン プラ ンと し て 早急 に実 施 に移 すこ と を求 める 。 3 2. 「SOHO社会」を実現するための10の提言 (1) SOHOの優位性を発揮させ、その脆弱性を克服するために S OH O は、 それ ぞ れ専 門と す る分 野の 知識 やス キ ルを もっ て 、情 報技 術 を 活用 しな が ら新 たな 事 業領 域を 開 拓す る個 人ま たは 小 規模 事業 者 であ る。 一 般 に、 機動 力 とコ スト パ フォ ーマ ン スが 高い ばか りで な く、 個性 や 感性 によ っ て 独創 性や 創 造性 の高 い 商品 ・サ ー ビス を提 供で きる の が共 通点 と いえ る。 さ ら に、 SO H Oは 、相 互 に連 携・ 協 業す るこ とに よっ て その 能力 を 最大 限に 発 揮 する ネッ ト ワー ク力 の 高さ に優 位 性が ある 。 反面、SOHOが小規模であることから生ずるデメリットや事業遂行上の 種々 の制 約 が存 在す る こと も事 実 であ る。 例え ば、 仕 事を 安定 的 に確 保す る た めの 営業 力 が弱 く 、情 報 収集 力も 弱 いこ と が多 い 。ま た 、単独 の SO HO で は、 一度 にこ な せる 仕事 の 能力 は限 ら れて しま うほ か、 大 企業 や中 堅 企業 との 取 引 にお いて は 、規 模の 小 ささ ゆえ に 交渉 上の ポジ ショ ン が弱 くな り がち とな る 。 そ うし た SO HO の 優位 性を 伸 ばし 、脆 弱性 を克 服 する ため に は、 単に 集 団 的な 取組 み を進 める だ けで は必 ず しも 効果 を期 待で き ない 。そ こ で、 SO H O の主 体性 を 生か すこ と がで きる よ う、 共益 的か つオ ー プン なビ ジ ネス ・プ ラ ッ トフ ォー ム の構 築に 向 けて 基盤 と なる 仕組 みを 提案 す る。 [提 言1] SOHOディレクトリー(電子基本台帳)の構築 S OH O 事業 者の ス キル や業 歴 ・キ ャリ ア等 を登 録 し、 公開 す る電 子基 本 台 帳的 なシ ス テム を構 築 する 。こ の よう なS OH Oデ ィ レク トリ ー は、 SO H O のた めの 様 々な ビジ ネ ス・ プラ ッ トフ ォー ムを 構築 す るた めの 社 会的 な基 盤 と なる もの で ある 。 現 に日 本 SO HO 協 会が 、こ う した シス テム の開 発 に取 組ん で いる が、 そ の 構築 によ り 、初 めて ど のよ うな S OH O事 業者 が存 在 する のか と いう 情報 が 公 開さ れる 。 これ によ っ て、 SO H Oの もつ 能力 が相 互 に結 び付 け られ 、コ ラ ボ レー ショ ン によ る様 々 な事 業の 立 ち上 げを 促進 する こ とが 可能 に なる 。 同 時に 、 SO HO に 仕事 を発 注 する 企業 とS OH O を結 び付 け るマ ッチ ン グ の仕 組み を 早急 に整 備 する 必要 が ある 。そ のこ とに よ って 、S O HO の不 足 す 4 る営 業力 を 補完 する こ とも 期待 さ れ、S O HO 市場 の 拡大 に寄 与 する。た だし 、 仕事 の受 発 注の マッ チ ング につ い ては 、S OH Oが 事 業者 性と と もに 労働 者 性 をも って い るこ とか ら 、そ の労 働 者性 の保 護に つい て 法的 な側 面 も含 め慎 重 な 検討 が不 可 欠で ある 。 [提言2]ビジネス力向上のためのコラボレーション・ツールの開発 S OH O のビ ジネ ス 力を 向上 さ せる ため に、 We b 上で 案件 ご との 共同 作 業 にお ける 業 務プ ロセ ス の生 産性 を 向上 させ るた めの シ ステ ム、 つ まり コラ ボ ー エー ショ ン ・ツ ール を 開発 する 。 これ を、 上の SO H Oデ ィレ ク トリ ーと 連 動 させ るこ と によ り、 多 様な SO H Oの 能力 をネ ット ワ ーク によ り 集め 、連 携 さ せる こと が 可能 にな る 。 具 体的 に は、 協業 プ ロジ ェク ト の進 行管 理や 業務 管 理を 行う 電 子手 帳的 な シ ステ ムの 構 築を 提案 す る。 これ に よっ て、 知識 共有 を 図り 、効 果 的な 働き 方 を 確立 し、 顧 客価 値を 高 める こと が でき る。 こう した シ ステ ムの 活 用は 、個 々 の SO HO が 、小 規模 で あり なが ら も、 市場 にお いて 競 争優 位を 確 保す るこ と に つな がる 。 [提 言3] 仕事能力 の評価 と信頼性向上 の仕組みの確立 企 業や 他 のS OH O 事業 者が 安 心し てS OH Oに 仕 事を 依頼 す るた めに は 、 SO HO の 提供 する 商 品・ サー ビ スの 質に つい ての 情 報が 不可 欠 であ る。 そ の 際、 SO H Oの 仕事 能 力を 評価 す るこ とが 求め られ る が、 それ が SO HO ワ ー カー 個々 人 の格 付け に なら ない よ う留 意す る必 要が あ る。 そ こで 、 例え ばコ ン クー ルや コ ンテ スト の開 催あ る いは 業績 の 表彰 等、 S O HO の仕 事 の成 果や 作 品を 第三 者 が審 査す る機 会を 拡 充す るこ と を提 案す る 。 受賞 実績 や 作品 を、 上 のデ ィレ ク トリ ーに 記載 する こ とで 、S O HO のも つ ス キル の透 明 性が 高ま る とと もに 、 SO HO 自身 にと っ ても スキ ル 向上 への イ ン セン ティ ブ にな る。 ま た、 官 公需 の発 注 に際 して は 、コ ンペ 等に より 他 の条 件が 同 一で あれ ば 、 SO HO 事 業者 また は SO HO 事 業者 のコ ンソ ーシ ア ムに 優先 発 注す る等 、 政 府や 地方 公 共団 体は 、 市場 にお け るS OH Oの 信頼 性 や社 会的 認 知の 向上 に 一 定の 役割 を 果た さな け れば なら な い。 5 (2) SOHO事業資金の円滑な供給と知的財産権の確立のために S OH O は、 一般 に 、設 備投 資 など 創業 にあ たっ て の大 きな 資 金を 必要 と し ない のが 特 徴で ある が 、そ の操 業 にあ たっ ては 一定 の 運転 資金 が 必要 とな る 。 例え ば、 比 較的 規模 の 大き な仕 事 ある いは 納期 や決 済 期間 が長 い 仕事 を行 う 場 合に は、 S OH Oの 資 金繰 りは 実 務上 かな り厳 しい 状 況に ある 。 し かし な がら 、既 存 の金 融シ ス テム は、 SO HO 事 業者 の資 金 ニー ズに 適 切 に対 応し て いな いた め 、S OH O が必 要と する とき に 迅速 かつ 簡 便な 審査 手 続 き、 適正 な 利率 で資 金 を供 給で き てい ない 状況 にあ る 。そ のた め 、優 れた 企 画 や技 術力 が あっ ても 、 資金 確保 が でき ない ため に事 業 化で きな い こと も少 な く ない 。 そ こで 、 SO HO に 対し 事業 資 金を 円滑 に供 給で き るよ うに す るた めの 基 盤 整備 とS O HO 向け 金 融サ ービ ス の開 発に 加え て、 知 的財 産権 の 確立 の方 向 に つい て提 案 する 。 [提 言4] SOHOの信用情報 データベースの構築 S OH O に金 融サ ー ビス が十 分 に供 給さ れな い最 大 の原 因は 、 SO HO の 与 信審 査情 報 の不 足に あ る。 そこ で 、S OH Oに 迅速 か つ適 正な 利 率で 資金 が 供 給さ れる よ うに する た め、 SO H O事 業者 のた めの 信 用情 報デ ー タベ ース を 開 発す る。 そ の場 合、 先 に提 案し た SO HO ディ レク ト リー を基 盤 とし たシ ス テ ムと する こ とが 効果 的 であ る。 S OH O 事業 者が こ のデ ータ ベ ース にあ らか じめ 自 らの 信用 情 報を 登録 ・ 更 新し 、必 要に 応 じて 金融 機 関が これ を参 照 する こと が でき るシ ス テム があ れ ば、 SO HO 事 業者 は融 資 の申 し込 み が簡 便と なり 、金 融 機関 も与 信 審査 の迅 速 化 と省 力化 を 行う こと が 可能 にな る 。 ま た、 従 来の 中小 企 業向 けの 信 用保 証制 度を 拡張 し て、 個人 事 業者 も利 用 で きる よう な 信用 保証 制 度を 検討 す る。 [提 言5] 「SOHO BANK」創設も含めたSOHO向け金融サービスの開発 既 存の 金 融機 関は 、 SO HO が 必要 とす るよ うな 小 口の 事業 資 金を 迅速 か つ 簡便 な手 続 きで 供給 す るサ ービ ス を提 供で きて いな い 。そ の背 景 には 、中 小 企 6 業融 資に お いて 、貸 出 資金 の低 利 調達 がで きて いな い こと 、あ る いは 担保 だ け でな く事 業 リス クに 応 じた 貸出 利 率設 定が でき てい な いこ とな ど が指 摘さ れ る。 この ため 、 アメ リカ で 普及 して い るよ うな 、社 債等 に よる 資金 の 低利 調達 を 背 景と して 、 比較 的低 利 で小 口の 事 業資 金を 融資 する よ うな ファ イ ナン ス・ サ ー ビス を整 備 する 。 金 融市 場 の規 制緩 和 によ って 、 様々 な新 しい 金融 サ ービ スが 生 まれ つつ あ る が、 既存 の 金融 機関 が SO HO に 対し 金融 サー ビス を 適切 に供 給 でき ない こ と も考 えら れ る。 その 場 合に は、 近 年拡 大し つつ ある イ ンタ ーネ ッ トを 通じ た オ ンラ イン ・ バン クサ ー ビス を活 用 した 新業 態、 いわ ば 「S OH O B AN K 」 の創 設を 図 る。 [提 言6] 知的財産権の保護・評価・流通 の仕組 みの確立 今 後、 S OH Oは 知 識社 会に お ける 知的 資産 の創 造 にお いて 主 要な 役割 が 期 待さ れる が 、そ の発 展 のた めに 、 著作 権や 技術 資産 等 に対 する 知 的財 産権 の 保 護、 評価 の 仕組 みを 確 立す る。 さ らに 、そ の権 利を 取 引す る市 場 の整 備や そ の 価値 を担 保 とし た融 資 手法 を開 発 する 。 こ の面 で は、 従来 、 ベン チャ ー キャ ピタ ル等 ハイ テ ク・ ベン チ ャー 企業 を 対 象と する 直 接投 資に お いて 検討 さ れて きた こと が参 考 にな る。 例 えば 、ビ ジ ネ スモ デル 特 許、 著作 権 、商 標、 意 匠な どの 担保 評価 手 法の 検討 に よっ て、 資 金 供給 を多 様 化す るこ と がで きる 。 7 (3) SOHOの取引市場を整備するために S OH O の取 引関 係 には 、大 企 業や 中堅 企業 との 垂 直的 な取 引 関係 とS O H O事 業者 相 互の 水平 的 な取 引関 係 がみ られ る。 いず れ の場 合に も 、契 約関 係 が あい まい な ケー スが 少 なく ない 。 また 、S OH Oは 、 小規 模で あ るこ とも あ っ て、 事業 活 動全 般に お いて リス ク 管理 が十 分で なく 、 いっ たん ト ラブ ルが 発 生 した 場合 に も的 確に 対 処す る能 力 には 限界 があ る。 ま た、個々 の SO HO に 仕事 の仲 介 を行 う仲 介機 関「 S OH Oエ ー ジェ ント 」 も登 場し て いる 。こ れ らに は、 企 業、 公益 法人 、任 意 の団 体や グ ルー プ等 多 様 な形 態が み られ る。 S OH Oエ ー ジェ ント は、 発注 者 のニ ーズ と SO HO の ス キル やサ ー ビス をマ ッ チン グさ せ ると いう 重要 な機 能 を果 たし て いる が、 仕 事 の仲 介に あ たっ ての ル ール が確 立 され てい ると はい え ない 。 そ こで 、 以下 では 、 契約 上の ト ラブ ルの 予防 対策 と トラ ブル が 発生 した と き の解 決の 仕 組み 、さ ら には 仕事 の 仲介 ルー ルの 確立 を 提案 する 。 [提 言7] 標準約款 の整備 と電子認証システムの創設 S OH O は、 一般 に 、仕 事上 の 取引 関係 にお いて 、 書面 によ る 契約 を取 り 交 わす こと が 少な いと い われ てい る 。そ のた め、 トラ ブ ルを 防止 す るた めに は 、 書面 によ る 契約 手続 き を徹 底し な けれ ばな らな い。 す でに 、 日本 SO H Oセ ンタ ー 等の SO HO 支援 機 関や 一部 の 事業 者が 、 各 種の 契約 フ ォー ム類 を 無償 ・有 償 で提 供し 始め てい る 。そ こで 、 これ らに 加 え て、 SO H Oの 取引 内 容や 取引 形 態に 応じ た「 標準 約 款」 を早 急 に整 備し 、 広 く公 開・ 提 供し てい く 。 さ らに 、 イン ター ネ ット 等を 活 用し 、簡 易に かつ 電 子的 に契 約 書を 第三 者 が 認証 する 「 電子 認証 シ ステ ム」 を 構築 し、 これ を、 S OH O事 業 者が 安価 に 利 用で きる 仕 組み を整 備 する 。 [提 言8] 安価 で簡便なトラブル解決システムの構築 契 約内 容 の明 確化 に もか かわ ら ず、 その 取引 ある い は知 的所 有 権の 取扱 い な どを めぐ っ ての トラ ブ ルや 紛争 が 生じ た場 合に は、 そ の解 決や 処 理を 的確 に 行 うこ とが 必 要で ある 。 SO HO 事 業者 が望 んで いる の は、 トラ ブ ルや 紛争 に つ 8 いて 相談 で き、 問題 を 迅速 に解 決 する ため に安 価か つ 簡便 に利 用 でき るサ ー ビ スに ほか な らな い。 こ のた め、 S OH Oの 取引 をめ ぐ るト ラブ ル に的 確に 対 応 する ため 、 裁判 外に お いて 、公 的 機関 など 第三 者に よ る相 談や 問 題解 決の た め の仲 裁サ ー ビス 機関 を 創設 する 。 先 の標 準 約款 にお い て、 トラ ブ ルの 発生 時に こう し た機 関の サ ービ スを 利 用 する こと を 約定 する こ とに よっ て 、そ の周 知・ 普及 を 進め る。 ま た、 これ ら の サー ビス の 利用 費用 を 保険 制度 で 保障 する 。 ネ ット ビ ジネ ス分 野 にお いて は 、法 制度 の確 立が 後 手に 回る 傾 向が ある 。 同 分野 のベ ン チャ ー企 業 等に より 構 成さ れる 全国 デジ タ ル・ オー プ ン・ ネッ ト ワ ーク 事業 協 同組 合が 、 業界 関係 者 、弁 護士 等に より 民 間ベ ース で 第三 者機 関 の 創設 を計 画 して いる こ とも 注目 す べき であ る。 [提言9] SOHOエージェントの仲介ルールの確立 S OH O エー ジェ ン トは 、大 規 模な 仕事 を複 数の S OH Oに 分 散し て発 注 す るこ とで S OH Oの 量 的な 対応 能 力を 補完 し、 ある い は様 々な 専 門能 力を も つ SO HO を 組織 しプ ロ ジェ クト 全 体を プロ デュ ース す るも のも 生 まれ てき て い る。 それ ら は、 プロ ジ ェク ト全 体 の品 質や 納期 を管 理 し、 SO H Oの 営業 お よ びマ ネジ メ ント 機能 を サポ ート し てい る。 こ のよ う にS OH O の発 展・ 成 長の ため に重 要な 役 割を 果た す エー ジェ ン ト であ るが 、 その 仲介 ル ール が確 立 して いる とは いえ な い。 した が って、「 業界 」 とし ての 取 引ス タン ダ ード を早 急 に整 備し て、 それ を 発注 側・ 受 注側 双方 に 徹 底す るこ と によ り透 明 かつ 公正 な 取引 のル ール の定 着 を図 る。 あ わせ て、 仕 事 の仲 介業 務 を担 当す る 者の 資質 の 向上 を図 る。 さ らに 、 SO HO の 立場 に立 っ て仕 事の 仲介 を行 う エー ジェ ン トを 育成 す る ため の公 的 な支 援・ 援 助策 の整 備 を図 る。 9 (4)政府が総合的にSOHO支援政策を展開するために 「 SO H O社 会」の基 盤づ く りの 視点 か ら、雇用 労働 か ら自 己雇 用へ の 変化 、 仕事 の場 や 空間 の変 化 、情 報技 術 の高 度化 等に 対応 す べく 、社 会 シス テム の 多 面的 、総 合 的な 見直 し が求 めら れ る。 上に あげ た各 提 言に つい て は、 SO H O 自ら はも と より 、関 係 業界 を含 め た民 間ベ ース での 主 体的 な取 組 みが 前提 で あ るが 、政 府 とし ても 一 定の 支援 ・ 援助 を行 うべ きで あ る。 そ の際 、S OH Oの 場 合に は 、ビジ ネス サ ポー トの 他 に 、キ ャリ ア サポ ート 、 ライ フサ ポ ート も不 可 欠で ある こ とに も留 意し なけ れ ばな らな い 。例 えば 、 地 域に おけ る SO HO 支 援の 総合 サ ービ ス・ ステ ーシ ョ ンと して 、 全国 にネ ッ ト ワー クを も つ郵 便局 な ど公 共施 設 を利 用す る。 また 、 デジ タル ・ ディ バイ ド の 予防 ・解 消 や情 報リ テ ラシ ー向 上 を図 る。 さら に、 S OH O事 業 者を 念頭 に お いた 税制 や 社会 保障 制 度の 見直 し 、あ るい は敗 者復 活 が可 能な セ ーフ ティ ー ネ ット を整 備 する 。ま た 、在 宅ワ ー カー に焦 点を あて た 対策 を進 め る。 これ ら の 課題 につ い ても 早急 に 検討 しな け れば なら ない 。 こ こで は 、最 も急 が れる 課題 と して 、以 下の 施策 の 実現 を提 案 する 。 [提 言10] SOHO統計の整備とSOHOを支援する「サイバー政府」の実現 S OH O の課 題を 把 握し て的 確 な政 策を 展開 する た めに は、 ま ずS OH O の 事業 ・経 営 状況 等の 実 態把 握が 不 可欠 であ る。 とく に 、S OH O 市場 を適 正 に 機能 させ 拡 大さ せる た めに 、S O HO の提 供す るサ ー ビス 内容 と その 取引 価 格 の動 向等 に つい て、 客 観的 な統 計 の収 集、 公開 を図 る 。 S OH O 事業 者に は いわ ゆる 「 業界 団体 」が 未成 熟 なこ とも あ って 、政 府 や 地方 公共 団 体が 行う 各 種の 政策 や 事業 等、 SO HO に とっ て有 用 な情 報が 、 十 分周 知さ れ てい ない の が実 情で あ る。 この ため 新規 開 業や 経営 支 援あ るい は 公 開入 札の 情 報等 SO H Oに 関わ る 行政 情報 に対 して 、 SO HO が ワン スト ッ プ でア クセ ス でき るW e bサ イト 、 つま り「 サイ バー 政 府」 を開 設 する 。 ま た、 S OH O事 業 者が 、仕 事 の契 約や 金融 サー ビ スを 受け る 際に 不可 欠 と なる 印鑑 証 明や 納税 証 明な ど、 各 種公 的証 明書 の電 子 的な 交付 、 認証 を行 う シ ステ ムを 早 急に 研究 、 導入 する 。 10 200 0年 6月末 現在 SOHO社会研究会 委員 長 金谷 貞 夫 作新 学院 大 学 地 域 発展 学部 教 授 委 河西 保 夫 SO HO ギ ルド 代 表 神谷 隆 之 日本 労働 研 究機 構 勤労 者生 活 研究 担当 (テ レワ ー キン グ研 究 会) 高橋 徳 行 国民 生活 金 融公 庫総 合 研究 所 上席 主任 研 究員 長坂 俊 成 慶應 義塾 大 学S FC 研 究所 所 員 平井 弘 大 知力 工夫 乃 交易 社 代表 藤倉 潤一 郎 全国デジタル・オープン・ネットワーク事業協同組合 代表理事 増山 弘 之 リン ク総 研 常務 取 締役 北浦 正 行 社会 経済 生 産性 本部 社 会労 働 部長 尾崎 陽 二 社会 経済 生 産性 本部 社 会労 働 部担 当長 齋藤 奈 保 社会 経済 生 産性 本部 社 会労 働 部 幹 員 事 〔 事 務 局 〕 財団 法人 社 会経 済生 産 性本 部 社会 労働 部 担当 : 尾崎 、齋 藤 Tel.03-3409-1122 Fax.03-3409-1007 E-mail:N.Saito@jpc-sed.or.jp 11
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