「巻頭言」 女性活用は、企業のイノベーションのリトマス試験紙 特定非営利活動法人 ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク(J Win)理事長 (人材研究会 委員長) 内永 ゆか子 ダイバーシティという言葉が日本で聞かれるようになって久しいが、そもそも何のためにダイバー シティ、女性の活用をするのであろうか。企業人は本当に腹落ちしているのだろうか。 私がこのダイバーシティや女性活用の課題に取り組んでいる目的は「女性のため」や「人材のた め」ではなく、「企業のため」である。 グローバル化が進み、ビジネスのスピードが非常に早い中で新しいビジネスモデルを作らないと リーダーシップが取れないという状況になってきている事を既に感度のよい企業は分かっている。世 界のビジネスモデルが変化している中で、違った発想をうまく使っていかないと企業はイノベーショ ン出来ないと気づいている。IBMは業績が厳しい時、企業変革における重要戦略としてダイバーシ ティを取り入れた。日産はルノーと一緒になり、違う発想が入ってきて復活した。 過去の成功体験の人達ばかりでなく女性、外国人、若者、シニア等、今まで「あうん」の呼吸、モ ノカルチャーに入れてもらえなかった人達をうまく使って、全く違う発想をしていこうというのが今 の世界の動きだと思う。その最初のブレークスルーが女性である。女性の活用は、企業のイノベー ションの「リトマス試験紙」だと考えている。 ダボスのワールドエコノミックフォーラムの男女平等指数ランキングで日本の順位が2011年・98位、 2012年・101位、2013年・105位と年々下がってきている。これは、世界中の他の国の方が、これらの 問題に対して日本より早く進んできているからである。 日本では、入社時に非常に優秀であった女性でもなかなか出世できないケースが多く見受けられる。 これには私は三つの問題があると考えている。 一つ目は、上司に女性管理職のロールモデルがいないこと。 二つ目は、仕事と育児、家事の両立の問題。特に日本の場合には長時間労働があり、それに合わせ ようと思うと問題が大きい。 三つ目は、前述のモノカルチャーがずっと育てて作ってきた「あうん」の呼吸である。 この三つの問題を解決出来れば、日本企業における女性の活用は飛躍的に改善されていくと考える。 他方、女性の側にも問題があると考えている。 一つ目は「よどみちゃん」の問題。在宅勤務もするし、時短もとる、長期の育休もとる、取れる権 利は皆とってもキャリアは望まない女性の存在である。二つ目は「くれない族」の問題。あれやって くれない、これやってくれないと自発的に解決をせずに、すぐに他へ解決を求める女性である。アメ リカでは、出産後三ヶ月で職場復帰をする女性が多い。長くても半年間である。企業の制度として育 休がなく自分の休暇を使って休みをとるケースも多い。また、先日J−Winの女性80名程でロンドン に視察に行った際に彼女達が見つけたことは、イギリスにおける女性活用の問題点と日本のそれとは 殆ど一緒だということだった。違うのは、イギリスの女性は自発的に解決に向けて取り組む姿勢があ るということであり、その意識に大きな差が見受けられる。 働く上では様々な乗り越えるべき問題はあるが、働く女性には、やはりキャリアを目指して欲しい。 キャリアを積んでいくことには成功、失敗がある。そこを諦めずに取り組んでいくことが自分の人生 を豊かにし、自己表現を果たすことなのではないだろうか。 企業活力 1 産業 日本経済再生に向 政策 けて 経営戦略・産業政策委員会 経営戦略・産業政策委員会は、平成25年10月23日(水)に太田 克彦(新日鐵住金株式会社 代表取締役副社長)委員長の進行により開催されました。 菅原 郁郎経済産業政策局長から「日本経済再生に向けて」に関する説明があり、参加者による 活発な意見交換が行われました。 写真左から太田委員長・菅原局長 経営戦略・産業政策委員会様子 ご出席者名簿 委 員 長: 太田 克彦 新日鐵住金㈱ 代表取締役副社長 菅原 郁郎 経済産業政策局長 新居 泰人 企業行動課長 桑田 憲吾 ㈱損害保険ジャパン 執行役員 企画開発部長 小寺 洋一 中国電力㈱ 経営企画部門 専任部長 岡信 愼一 東北電力㈱ 常務取締役 企画部長 平井 敏文 日産自動車㈱ 執行役員 若林 邦広 ㈱日立製作所 渉外本部 副本部長 顧 問: 委 員 代 理: 清成 忠男 法政大学 学事顧問 髙橋 宏 東京都港湾審議会 会長 竹本 裕士 アステラス製薬㈱ 渉外部 部長 乃万 一隆 四国電力㈱ 東京支社 業務課 課長 前田 一郎 東レ㈱ 経営企画室 参事 駒 源喜 トヨタ自動車㈱ 渉外部 担当課長 経済産業省: 委 員: 水野 雄氏 旭化成㈱ 常務執行役員 大賀 正一 ソニー㈱ 渉外部 統括部長 2 企業活力 (企業名・役職名は当時、企業名五十音順 敬称略) 産業 政策 日本経済再生に向けて 「三本の矢」によって、日本経済は Ⅰ 回復の兆し ○規制改革のための新たな枠組みの創設 企業の技術力や創意工夫を生かした、新たな規制改革 の道筋を創設。 規制改革会議や国家戦略特区の取組と連携し、骨太の 規制改革を推進。 企業版特区(企業実証特例制度)(通称) ①企業が規制の特例措置を提案。 ②事業・規制所管両大臣が協議し、特例措置を創設。 ③安全性確保に係る措置を含む事業計画の認定を通じ、 規制を緩和。その事業を通じ、安全性を検証。 グレーゾーン解消制度(通称) ①企業が事業計画の適法性の確認を申請。 ②事業所管大臣を通じ、規制所管大臣に照会し確認。 ③安心して、事業を実施することが可能。 Ⅱ 成長戦略の実現・実行 ①「税制改正は年末に決める」という従来のスケジュー ルを前倒して、これまでにない大胆な設備投資減税等 を10月1日に決定。 ②いわゆる「企業版特区」など、規制改革のための新た デフレ脱却に向けた経済の 好循環の実現 Ⅲ ①賃金の動向 ○一般労働者の名目賃金は低下 な枠組みの創設を盛り込んだ「産業競争力強化法案」 一般労働者の給与は2000年代を通じて低下、リーマ を臨時国会に提出。 ンショック後の2009年に大きく落ち込み、その後も ③12月上旬には、5兆円規模の新たな経済対策を策定。 低迷。一方、パートタイム労働者の給与は緩やかな ④12月までに復興特別法人税の前倒し廃止について結論 がら概ね上昇傾向にある。 を得るとともに、法人実効税率の引下げについても早 ただし、一般労働者の年間給与は482万円、パート 期に検討を開始。 タイム労働者の年間給与は117万円と約4倍の格差。 ○産業競争力強化法案 ○労働生産性と実質賃金がかい離するのは日本のみ 欧米では、労働生産性の上昇に伴って実質賃金も増 加。 企業活力 3 産業 政策 日本経済再生に向けて ○名目賃金の伸び率が物価の伸び率を下回るのは日本の み 物価安定目標を設定するなどして2%程度の物価安 定に向けて取り組んでいる国々では、名目賃金上昇 率が物価上昇率と同水準あるいはそれを上回る傾向。 ②設備投資の動向 ○足下の設備投資はなお低水準 民間設備投資は、リーマンショック前の水準から約 1割減少。 足下で持ち直しの動きがみられるものの、なお低水 準。 他方、我が国は、労働生産性が伸びていたにもかか わらず、実質賃金は減少。 ○設備年齢の上昇 設備の老朽化を示す資本ストックの「加齢年数」は、 製造業・非製造業ともに上昇基調。 4 企業活力 産業 政策 設備投資が低迷した結果、設備の加齢が進み、労働 ③賃金、設備投資低迷の背景 生産性が伸び悩む一因に。 ○バブル崩壊後は、債務圧縮が賃金・投資の増加を抑制 バブル崩壊以降、債務圧縮に努めた結果、我が国大 企業の有利子負債比率は過去60年間で最低水準。 債務返済は2000年代半ばには収束したが、資金余剰 の雇用者への還元は進まず、設備投資の伸びも弱い。 ○期待成長率の低下が設備投資を抑制 デフレの長期化によりデフレマインドが定着、期待 成長率が低下したことから、企業は設備投資を抑制。 ○海外設備投資比率は急上昇 これまで世界GDPに占める日本のシェアの低下に 伴って推移してきた海外設備投資比率は、リーマン ショック後に一時的に落ち込んだ後、急速に上昇。 円高等を背景に、我が国企業は国内の設備投資を抑 制する一方、海外投資を積極化。 ○交易条件が悪化し、所得が国外に流出 原材料の仕入価格上昇分の販売価格への転嫁が進ま ず、交易条件(輸出物価/輸入物価)が悪化。 交易損失(交易条件の悪化に伴う所得の減少額)が 拡大し、資源国等への所得移転が継続。国内に還元 されるべき所得が海外に流出し、賃金を引き下げて いる。 ○我が国の交易損失は欧米と比べても大きい ○海外現地法人売上高の増加と比べ、輸出の増加は弱い 足下では輸出金額の増加が続いているものの、リー マンショック前の水準からは2割減少。他方、海外 現地法人の売上高はリーマンショック前の水準を上 回り、大幅に増加。 国内投資を抑制した一方で海外投資比率を高めた結 果、輸出が現地生産に振り替わっている可能性。 企業活力 5 産業 政策 日本経済再生に向けて ④経済の好循環と財政健全化 ○景気回復局面でも賃金への波及は弱く、好循環が実現 せず 欧米では、企業利益の増加→賃金増加→消費拡大→ 更なる企業利益の増加という好循環が実現。 日本では、企業利益の増加が賃金増加に結びつかず、 企業利益も早期に腰折れ。 ○消費の持続的な増加には賃金増加が必要 昨年末からの消費の増加は、主に先行きの景気回復 期待などを背景とする消費性向(所得のうち消費に まわる割合)の上昇によるもの。可処分所得の増加 ○パート比率の上昇が平均給与を下押し は限定的。 パートタイム労働者の比率は上昇が続いており、足 期待やマインド改善による消費の増加を持続的なも 下では29%台前半となっている。 のとし、経済の好循環を実現するためには、企業部 一般労働者とパートタイム労働者の賃金には4倍の 門の改善が賃金に波及することが必要不可欠。 格差があるため、パート比率の上昇は平均給与総額 の伸びを前年比ベースで▲0.5∼▲0.7%程度押し下 げている。 6 企業活力 ○賃上げに関する中小企業の反応①(東京商工会議所 中小企業アンケートより) 産業 政策 中小企業等の賃金に関するアンケート 調査結果 ●調査概要(東京商工会議所が調査を実施) ・調査目的:東京23区内の中小企業等の賃金・雇 用の状況について把握するため ・調査期間:平成25年8月19日∼9月13日 ・調査対象:東京商工会議所会員企業を中心とし た中小企業等 ・調査方法:事務局員による聴き取りおよびFAX 等 ・回 答 数:2,628社 1.基本給の引上げ 「毎月支給の基本給を上げた」企業は約3割(29.7%) あった。 従業員数21人以上の中小企業では約5割(49.8%)が 基本給を上げている。 ○賃上げに関する中小企業の反応②(東京商工会議所 中小企業アンケートより) 2.賃金総額の増加 35.3%の企業で賃金総額が増加(前年同期比)した。 増加の要因としては、「毎月支給の基本給を上げ た」(64.1%)、「一時金(賞与)を増額した」 (37.0%)など、従業員にとって収入増となる「賃上 ○経済の好循環は財政健全化にも寄与 げ」が約8割(77.8%)を占めた。 経済成長は税収増を通じて財政再建に貢献。経済再生 賃金総額の増加率については、約5割(46%)の企業 と財政健全化の好循環を実現する必要。 が5%以上の増加率となった。 ○法人実効税率に対する企業の意識(帝国データバンク 調査) 法人課税の実効税率に対する企業の意識調査 ●調査概要(帝国データバンクが調査を実施) ・調査期間:平成25年9月17日∼9月30日 ・調査対象:全国2万2733社 ・回 答 数:1万826社(回答率47.6%) 法人実効税率が引き下げられた場合の使い道として、 約半数の企業が積極的な投資に充てると回答。 企業活力 7 企業 税制 民間投資活性化等のための経済産 業関係 税制改正の概要について と経済産業関係 平成26年度税 制改正のポイントについて 税制委員会 税制委員会は、平成25年10月17日(木)及び平成26年2月7日(金)に、住吉 克之委員長(東 京電力㈱)及び廣澤 孝夫委員長代理((一財)企業活力研究所)の司会進行により開催されま した。新居 泰人企業行動課長から「民間投資活性化等のための経済産業関係 税制改正の概要」 (10月17日委員会)、「平成26年度税制改正について」(2月7日委員会)のご説明があり、参加 者による活発な意見交換が行われました。 ご出席者名簿 (10月17日開催委員会)○ ( 2月 7日開催委員会)● 委 員 長: ○ 住吉 克之 東京電力㈱ 常務執行役 経済産業省: ○●新居 泰人 経済産業省 経済産業政策局 企業行動課 課長 委 員: ○●吉田 弘之 キヤノン㈱ 渉外本部 渉外部 担当部長 ○●合間 篤史 新日鐵住金㈱ 財務部 上席主幹 ○●加藤 辰雄 住友化学㈱ 経理室(税務グループ) 部長 ○●秋元 茂樹 東京ガス㈱ 経理部長 ●肥田 敬 トヨタ自動車㈱ 渉外部 担当課長 ○●小畑 良晴 (一社)日本経団連 経済基盤本部 主幹 ○ 平尾 幸男 (一社)日本貿易会 総務グループ 担当部長 ○●恩田 幸敏 パナソニック㈱ 渉外本部 経理グループ グループマネージャー ○●川崎 直行 ㈱日立製作所 財務統括本部 タックスアカウンティングセンタ長 ○●加藤 建治 (公社)リース事業協会 総務部長代理 委 員 代 理: ○ 林 毅 川崎重工業㈱ 財務本部 経理部 税務会計課長 写真左から住吉委員長・新居課長(10 月 17 日) ○●畠 義昌 コスモ石油㈱ 税務グループ長 ○●佐藤 政広 石油連盟 企画部 財務グループ長 ○ 是永 浩利 ソニー㈱ 総合管理部門 経理1部 統括部長 ○●原 剛 太平洋セメント㈱ 経理部 経理グループ ○ 飯塚 弘樹 トヨタ自動車㈱ 渉外部 第一渉外室 税財政グループ ○●常間地 力 日本電気㈱ 経理部 主計室 (企業名・役職名は当時、企業名五十音順・敬称略) 民間投資活性化等のための経済産業関係 税制改正の概要(10/17開催) Ⅰ 民間投資の促進 民間投資の促進 ○生産性向上を促す設備等投資促進税制の創設(法人 税・所得税・法人住民税・事業税) 先端設備導入、生産ラインやオペレーションの刷 法律上の計画認定を要しない簡便な手続き。産業競 争力強化法の施行日から前倒し適用。 ⇒本税制等の措置を活用し、今後3年間で、設備投 資を、リーマンショック前の年間70兆円に回復さ せる。 新・改善のための設備投資を、即時償却又は5%税 額控除という、異次元の優遇措置で支援。 製造業のみならず、物流・流通サービス業をはじめ とする非製造業も活用可能。 8 企業活力 ○中小企業投資促進税制の拡充・延長(法人税・所得 税・法人住民税・事業税) 中小企業の生産性向上に向けた設備投資(ソフトウ 企業 税制 エア組込型装置を含む)を即時償却や税額控除で支 援。 税額控除を利用可能な法人を拡大(従来:資本金 3,000万円まで→改正:1億円まで)。 Ⅱ 事業再編の促進 事業再編の促進 ○事業再編を促進するための税制措置の創設(法人税・ 法人住民税・事業税) 資本金3000万円までの法人に対して税額控除割合を グローバル競争で勝ち抜く企業の創出、新事業の拡 上乗せ(従来:7%→改正:10%)。 大を後押しするため、事業の切り出し・統合を行う 企業に対して、出融資額の7割を限度として損失準 ○中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算 備金を積み立て、損金算入できる制度を創設。 入の特例の延長(法人税・所得税・法人住民税・事業 我が国産業の過当競争・過剰供給構造を解消し、収 税) 益力の飛躍的な向上に向けた取組を後押し。 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(少 額特例)は、取得価額30万円未満の全ての減価償却 資産(建物、機械装置、器具備品、工具、ソフトウ ○産業競争力強化法に基づく事業再編や中小企業の事業 再生に係る登録免許税の軽減措置の創設 エア等)を対象に、全額即時損金算入を認める措置。 産業競争力強化法の認定を受けて、事業再編や中小 年間約43万社もの中小企業が利用。 企業の事業再生を行う場合、会社の設立・不動産の 中小企業におけるパソコン、経理事務ソフトウエア 取得等について、現行制度と同等に登録免許税の負 など少額減価償却資産の投資の促進等を図るため、 担を軽減する。 平成25年度末とされていた適用期限を2年間延長。 (WindowsXP のサポート期限が切れることに伴う (例) 会社設立又は増資の場合、資本金額の 0.7% → 0.35% 中小企業のパソコン、ソフトウエア等の入替えニー 会社分割による不動産の所有権の移転登記 ズにも対応。 ) 2.0%→ 0.4% (注) 産業競争力強化法の施行の日から適用。平成 ○研究開発税制の拡充・延長(法人税・所得税・法人住 民税) 27 年度末までの措置。 (注) 併せて、産業競争力強化法において、中小機 「研究開発費をGDP比で世界一位に復活」すべく、 構の債務保証等の金融支援や、会社法の特例 研究開発税制(増加型)について、試験研究費の増 措置等の支援措置も講ずる。 加割合に応じて税額控除割合が高くなる仕組み(最 大30%まで)に改組。 Ⅲ ベンチャー投資の促進 ベンチャー投資の促進 ○企業のベンチャー投資促進税制の創設(法人税・法人 住民税・事業税) 事業拡張期にあるベンチャー企業への投資を活性化 するため、ベンチャーファンドに対して出資する企 業が、出資額の8割を限度として損失準備金を積み 立て、損金算入できる制度を創設。 本税制措置により、事業会社からベンチャーファン ドへの投資を促進し、資金供給能力や経営支援ノウ ハウを持つベンチャーファンドによるベンチャー企 業への支援を活性化。 ○産業競争力強化法に基づく創業に係る登録免許税の軽 減措置の創設(登録免許税) 企業活力 9 企業 税制 民間投資活性化等のための経済産業関係 税制改正の概要につい てと経済産業関係 平成 26 年度税制改正のポイントについて 日本再興戦略における「開業率米英並み(約 10%)」目標実現(現在4.5%)に向け、国・地方 自治体・民間の連携による創業希望者の掘起こし・ 支援のため、創業者に身近な市区町村を中心とした、 Ⅴ 検討事項 検討事項 ○復興特別法人税の前倒し廃止についての検討 【民間投資活性化等のための税制改正大綱(平成 25 年 経営ノウハウ提供・資金調達支援などのワンストッ 10 月 1 日)(抄)】 プ支援スキームを創設(創業支援事業計画)。 「足元の経済成長を賃金上昇につなげることを前提に、 創業支援事業計画の認定を受けた市区町村内におい 復興特別法人税の一年前倒しでの廃止について検討す て、当該市区町村等による一定の支援を受けた創業 る。その検討にあたっては、税収の動向などを見極め 者が、株式会社の設立の登記を行う際にかかる登録 て復興特別法人税に代わる復興財源を確保すること、 免許税を半減する措置を創設。 国民の理解、なかでも被災地の方々の十分な理解を得 ること、及び復興特別法人税の廃止を確実に賃金上昇 企業収益が賃金上昇・ Ⅳ 雇用拡大につながる好循環の実現 ○所得拡大促進税制の見直し・拡充(法人税・所得税・ 法人住民税) につなげられる方策と見通しを確認すること等を踏ま えたうえで、12月中に結論を得る。」 ○法人実効税率の在り方に関する速やかな検討開始 【民間投資活性化等のための税制改正大綱(平成 25 年 給与等の支給額を増加させた場合、増加額の10%を税 10 月 1 日)(抄)】 額控除する制度(法人税額10%(中小企業等は20%) 「法人課税については、企業の国際競争力や立地競争 を限度)。 力の強化のため、国・地方を合わせた表面税率である 本税制を、企業にとってより使いやすいものとし、計 法人実効税率を引き下げるべきとの意見がある。我が 画的・段階的な賃上げを支援する観点から、その要件 国が直面する産業構造や事業環境の変化の中で、法人 を緩和するとともに、適用期限を2年間延長する(平 実効税率引下げが雇用や国内投資に確実につながって 成29年度末まで)。 いくのか、その政策効果を検証する必要がある。 表面税率を引き下げる場合には、税制の健全化を勘 案し、ヨーロッパ諸国でも行われたように政策減税の 大幅な見直しなどによる課税ベースの拡大や、他税目 での増収策による財源確保を図る必要がある。 こうした点を踏まえつつ、法人実効税率の在り方に ついて、今後、速やかに検討を開始することとす る。」 ○車体課税の抜本的見直し(自動車重量税・自動車取得 税・自動車税) 【民間投資活性化等のための税制改正大綱(平成 25 年 10 月 1 日)(抄)】 「自動車取得税及び自動車重量税については、経済情 勢に配慮する観点から、消費税率引上げの前後におけ る駆け込み需要及び反動減の緩和も視野に入れ、税制 抜本改革法第7条第1号カに基づき、国及び地方を通じ た関連税制の在り方の見直しを行い、安定的な財源を 確保した上で、地方財政にも配慮しつつ、簡素化、負 担の軽減、グリーン化を図る観点から、見直しを行 10 企業活力 企業 税制 う。」 ては、固定資産税が基礎的自治体である市町村を支え る安定した基幹税であることを踏まえ、政策目的とそ ○償却資産に係る固定資産税の見直し(固定資産税) 【民間投資活性化のための税制改正大綱(平成 25 年 10 月 1 日) (抄) 】 の効果、補助金等他の政策手段との関係、市町村財政 への配慮、実務上の問題点など幅広い観点から、引き 続き検討する。」 「固定資産税の償却資産課税に関する税制措置につい 経済産業関係 平成26年度税制改正のポイント(平成25年12月) (2/7開催) Ⅰ 車体課税の見直し 車体課税の見直し 経済の「好循環」・持続的な経済 成長の実現 Ⅱ ○自動車取得税の段階的引下げ・廃止、エコカー減税の 拡充(地方税) ○復興特別法人税の 1 年前倒し廃止(国税) 消費税 8 %時点で自動車取得税の税率を引下げ(登 足元の企業収益を賃金上昇につなげるきっかけとす 録車 5 %→ 3 %、軽自動車 3 %→ 2 %) 、消費税 10 % る。 法 人 実 効 税 率 を 約 2.4 % 引 下 げ。(38.01 % → 時点で廃止。 35.64 %) エコカー減税を拡充する。 【検討】法人実効税率の引下げ(国税・地方税) 大綱の「基本的考え方」において、わが国経済の競 ○自動車重量税のエコカー減税の拡充・経年車重課強化 争力の向上、法人実効税率を引き下げる環境作りの (国税) 重要性、法人実効税率引下げと企業行動の関係など を踏まえつつ、検討を進める旨明記。 ○自動車税のグリーン化特例の拡充・経年車重課強化(地 今後、早期に国際水準まで引き下げることを目指し、 方税) 検討を加速する。 【検討】償却資産に係る固定資産税の見直し(地方税) ○軽自動車税の見直し(地方税) 大綱の検討事項に「新たな投資による地域経済の活 平成 27 年度以降に取得した新車について税率を 1.5 性化の効果(…)など幅広い観点から、引き続き検 倍に(自家用乗用車以外は 1.25 倍) 。平成 28 年度分 討する」旨位置づけ。 から経年車重課を行い、併せて軽課についても検討 を行う。 二輪車については、平成 27 年度から税率を引き上 げる。 雇用を支える地域経済・中小企業の 活性化 Ⅲ 【延長・拡充】交際費課税の特例措置(国税) ○消費税 10 %時点での自動車税の見直し(地方税) 中小法人の交際費の 800 万円まで 100 %損金算入で 自動車税に取得時の課税として環境性能割を導入。 きる措置を延長する。(2 年間) 自動車税(排気量割)のグリーン化特例は、対象を 全法人で、交際費(飲食費に限る)の 50 %を損金 重点化した上で軽課を強化。 算入できる措置を創設。(2 年間) 幅広い関係者の意見を聴取しつつ、平成 27 年度改 正で結論を得る。 ※中小法人は現行措置との選択適用可。 【新設】中心市街地活性化のための税制措置(国税) 中心市街地活性化法の改正にあわせ、中心市街地活 性化の核となる民間事業について、建物等の割増償 却や土地・建物の取得時に係る登録免許税の軽減措 企業活力 11 企業 税制 民間投資活性化等のための経済産業関係 税制改正の概要につい てと経済産業関係 平成 26 年度税制改正のポイントについて 置を創設する。 (法人税:1 年間、登免税:2 年間) 【検討】小規模事業者の振興を図る税制措置(国税) 我が国へのヒト・モノ・カネの呼び 込み Ⅴ 大綱の検討事項に「小規模企業等に係る税制のあり 方については(…)幅広い観点から検討する」旨記 【延長】アジア拠点化のための税制措置(国税) 載。今後、小規模企業振興基本法の制定を踏まえ、 海外からの投資を呼び込み、我が国をアジアの中核 その振興を図る観点から、検討を進める。 拠点にするため、アジア拠点化推進法の認定を受け たグローバル企業への税の優遇措置を延長する。 (所 得税:2 年間、法人税:1 年間) エネルギー安定供給・資源の戦略的 Ⅳ 確保 【新設】石油精製過程での非製品ガスの石油石炭税の還 付制度(国税) 石油精製業の経営基盤・国際競争力を強化するため、 「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例 商品価値が無く、販売できないガス(非製品ガス) 措置を講じているが、この税収はエネルギー起源 に係る石油石炭税の還付制度を創設する。 (3 年間) CO2 排出抑制のための諸施策の実施のための財源と 【延長】海外投資等損失準備金制度(国税) して活用することとなっている。」 海外で行う探鉱・開発事業の損失に備えた準備金の 「森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関す 積立てを認める措置を延長する。 (2 年間) る財源の確保について、財政面での対応、森林整備 【延長】再生可能エネルギー発電設備に係る固定資産税 の課税標準の特例措置(地方税) 固定価格買取制度の認定を受けた太陽光、風力等の 再エネ発電設備に係る固定資産税の軽減措置を延長 する。 (2 年間) 12 地球温暖化対策のための税 【大綱の検討事項(抜粋)】 Ⅵ 企業活力 等に要する費用を国民全体で負担する措置等、新た な仕組みについて専門の検討チームを設置し早急に 総合的な検討を行う。」 企業 法制 集団訴訟法案、独占禁止 法改正についてと産業競 争力強化法について 企業法制委員会 企業法制委員会は、平成25年11月7日(木)及び平成26年1月16日(木)に開催されました。11 月7日の委員会では「集団訴訟法案、独占禁止法改正について」をテーマに、一般社団法人 日本 経済団体連合会 経済基盤本部長の阿部 泰久委員にご説明いただきました。また、1月16日の委 員会では「産業競争力強化法について」をテーマに、経済産業省 産業再生課長の吉本 豊氏をお 迎えし開催致しました。 両委員会は、川田 順一委員長(JXホールディングス株式会社)の司会により進められ、それ ぞれご説明があった後、参加者を交えて活発な意見交換が行われました。 写真左から、川田委員長、吉本課長、三浦課長 ご出席者名簿(11 月 7 日開催委員会)○ (1 月 16 日開催委員会)● 委 員 長: ○●川田 順一 JX ホールディングス㈱ 取締役 常務執行役員 経済産業省: 阿部委員 ○●水上 悦朗 パナソニック㈱ リーガル本部 東京法務室 室長 ○ 土井 淳 ㈱日立製作所 法務本部長 ○ 松永 秋彦 三井化学㈱ 法務部長 ●西村 博司 三菱重工業㈱ 総務法務部 調査役 ●藤田 和久 三菱商事㈱ 法務部長 委員代理: ○●三浦 聡 経済産業政策局 産業組織課 課長 ●田井中伸介 キヤノン㈱ 法務統括センター 副所長 ●豊田 原 経済産業政策局 産業組織課 課長補佐 ○ 八卷 優 経済産業政策局 産業組織課 課長補佐 ○ 小島 康 キヤノン㈱ 法務統括センター 渉外法務課 課長 ○ 山下 淳二 ㈱神戸製鋼所 法務部 担当部長 ●高木 智也 ㈱神戸製鋼所 法務部 次長(東京グループ長) ○●梶元孝太郎 経済産業政策局 産業組織課 課長補佐 ○●山内 達夫 経済産業政策局 産業組織課 課長補佐 ○●田中 幸仁 経済産業政策局 産業組織課 係長 ●吉本 豊 経済産業政策局 産業再生課 課長 ○ 西田 英範 経済産業政策局 競争環境整備室 室長補佐 委 員 : ○●沖村 一徳 アステラス製薬㈱ 執行役員 法務・コンプライアンス部長 ●古本 省三 新日鐵住金㈱ 法務部 部長 ○●佐成 実 東京ガス㈱ 総務部 法務室長 ●山本 芳郎 東レ㈱ 法務部長 ●永長 勉 日産自動車㈱ 法務室 主担 ○●阿部 泰久 (一社)日本経済団体連合会 経済基盤本部長 ●森 雄祐 四国電力㈱ 東京支社 総務課 ○ 杉田 義明 ㈱損害保険ジャパン 文書法務部 法務グループ 課長 ●星 敬一郎 ㈱損害保険ジャパン 文書法務部 法務グループ 担当課長 ○ 長谷川 聡 中部電力㈱ 法務部 課長 ○ 峯澤 幸久 トヨタ自動車㈱ 法務部 国内法務室 室長 ●須藤 充教 トヨタ自動車㈱ 法務部 国内法務室 グループ長 ○ 鈴木 裕子 富士通㈱ 法務本部 ビジネス法務部 マネージャー ●遠山 興平 富士通㈱ 法務本部 ビジネス法務部 マネージャー ●清水 正智 三井化学㈱ 法務部 第 1 チームリーダー ○ 早部 光明 三菱商事㈱ 法務部 機械チームリーダー (企業名・役職名は当時・企業名五十音順・敬称略) 企業活力 13 企業 法制 集団訴訟法案、独占禁止法改正についてと産業競争力強化法につ いて 集団訴訟法案について(11/7 開催) 1 検討の経過と経団連の対応 2009年 消費者庁・消費者委員会設置 2013年4月19日 「消費者の財産的被害の集団的な回復 のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」(以 下、集団訴訟法案)閣議決定 *消費者庁・消費者委員会設置関連三法 附則 (注 2013年12月4日 成立) 法施行(2009年9月)後三年を目途として、「加害 者の財産の隠匿又は散逸の防止に関する制度を含め 多数の消費者に被害を生じさせた者の不当な収益を 2 制度の仕組み(二段階型) 3 経団連の懸念に対する消費者庁の回答 はく奪し、被害者を救済するための制度について検 討を加え、必要な措置を講ずる」こととされた。 2012年8月 消費者庁より制度案公表・パブリックコメ ント実施 ←経団連 経済法規委員会 消費者法部会としてコメ ント提出 主なポイント ・相当多数の対象消費者からの授権を要件とすること ・リコール事案の対象からの除外 ・精神的損害の対象からの除外 2013年3月25日 日米欧7経済団体(*)で、制度導入 に十分慎重な検討を求める旨の共同提言公表。 (*:経団連・日本商工会議所・経済同友会・在日米 国商工会議所・アメリカ商工会議所法改革機構・欧州 ビジネス協会・BUSINESSEUROPE) 主な懸念点 消費者庁の回答 評価 第一段階目の訴えの提起前 ・「相当多数」の消費者に被害が生じていることを特定適 ・相当多数の消費者に被害が生じていることの立証と当該 に、一定の対象消費者から 格消費者団体は訴訟要件として立証する必要がある。 消費者がこの制度による救済を求めていることの確認と 授権を得るべき。 ・被害者の存在の裏付け調査なしに提訴した場合は、特定 は同義ではない。 適格消費者団体が行政監督の対象となることを監督指針 ・監督指針による対応では不十分であり、実際に相当の対 に明記する。 象消費者から授権を得ることを法律に明文化しない限 り、濫訴のおそれは残る。 共通性・支配性・多数性に ・共通性・支配性・多数性について法律で具体的に定義す ・共通性・支配性・多数性といった訴訟要件について、法 ついて、より具体的に定義 ることは困難。 律でより具体的に明示することが必要である。 すべき。 ・共通性・多数性を満たさないにもかかわらず、なお訴え ・事後的な行政監督では、訴訟要件を満たさないような提 が提起された場合には、特定適格消費者団体が行政監督 訴の未然防止の効果は小さい。 の対象となることを監督指針で明記する。 事 業 者 が 自 主 的 に 製 品 回 ・リコールの態様は様々であり、法律で一律に規定するの ・監督指針による対応では不十分。 収・交換・修理や代金返還 は不可能。原告となる特定適格消費者団体が行政の監督 ・たとえば自主的に修理・交換などの対応をして大多数の を行っている場合は、本制 対象であることから、監督指針で示す方が濫訴防止のた 顧客が満足していても、一部の消費者が代金返還や瑕疵 度の対象とならないことを めには効果的。 担保に基づく損害賠償にこだわることで集団訴訟が提起 明確化すべき(瑕疵担保責 ・消費者の被害が填補された結果、対象消費者が「相当多 される可能性は残る。 任事案を訴訟対象から除外 数」でなくなった場合には、多数性の要件を欠くことを ・事業者が自主的に対応をしている場合には、本制度に基 すべき) 逐条解説等で示す。 づく訴えを提起できないことを法律に明記すべき。 ・瑕疵担保事案一般について訴訟対象から除外すること は、消費者団体等からの反対が想定され困難。 第 一 段 階 の 訴 訟 手 数 料 ・不当な目的による訴えの提起がされることがないよう、 ・一律・低額の訴訟手数料とすることは第一段階で団体に (13000円)を改めるべ 団体に対する監督指針を策定する。 よる被害額に基づく仮差押えを認めていることと矛盾。 き。 ・一段階目において、提訴者である団体に経済的利益が存 在しない以上、非財産的請求として訴訟手数料を算定す るのが妥当。 14 企業活力 企業 法制 4 経団連の対応 1.法案について ○既存の民事訴訟制度では救済が困難な少額かつ多数の 人の間に生じている消費者被害について、迅速かつ効 率的に救済をする制度を設けることの重要性は理解 ○本年3月自民党内での検討の結果、施行前に締結され 1.代金返還や修理・交換などの自主的な対応をしてい る場合に訴えを提起されることを懸念 →企業が自主的な対応をしている場合には訴えを提起で きないことを解釈や運用で担保すべき。 2.実際に、相当多数の消費者が被害の救済を求めてい ないにもかかわらず、特定適格消費者団体が恣意的に 訴えを提起することを懸念。 た契約に関する請求については制度の適用をしない →特定適格消費者団体は訴えを提起する前に、 一定数(100 (遡及適用しない)旨が明文規定で設けられることと 名) の対象となる消費者から授権を得ることを規定すべき。 なったことは評価。 3.多数に生じている消費者被害を効率的に救済すると 2.法案の懸念点と要望 いう制度の目的から、共通性・支配性・多数性(相当 ○法案について依然として以下のような懸念点が残され 多数)について、運用指針(ガイドライン)等でより ていることから、解釈や運用での対応を求める。 具体的に定義すべき。 独占禁止法改正 ―審判制度の廃止―(11/7 開催) 競争法にも国際化が求められている ・経済のグローバル化、国際競争の激化に伴い、競争 法・政策のグローバル化も進展している。 審査手続の適正化 ・海外では当然に認められているような被調査者の基本 的な防御権が認められていない。(下図参照) ・適正手続の保障についての見直しは、審判制度廃止 を内容とする改正法案が昨年国会に提出されたが、未 だに成立していない。早期に成立させるべき。(注: 2013年12月7日成立) ・一方、執行面については、近時の改正で強化されてい る。 ・現在、国会提出中の改正法案の附則において、同法案 審判制度の廃止 ・命令を下した公取委が不服申立手続を担うことから、 公平性・中立性に問題がある。 成立の後に審査手続の見直しの議論が始められること とされている。 審査手続の適正化に関する中立的な 検討の場の早期設置 【改正法案 附則第 16 条】 政府は、公正取引委員会が事件について必要な調査を行 う手続について、我が国における他の行政手続との整合 性を確保しつつ、事件関係人が十分な防御を行うことを 確保する観点から検討を行い、この法律の公布後一年を 目途に結論を得て、必要があると認めるときは、所要の 措置を講ずるものとすること。 ⇒検討の場を早期に設けるとともに、検討の中立性・公 平性を担保するため、公取委以外の場で行うものとし、 メンバー構成も注意すべき 企業活力 15 企業 法制 集団訴訟法案、独占禁止法改正についてと産業競争力強化法につ いて 産業競争力強化法について(1/16 開催) 日本再興戦略と産業競争力強化法の関係 法律の狙い 1.日本再興戦略を、政府一丸となって強力に実行する ための体制を確立 2.「規制改革」や「新陳代謝の促進」など分野横断的 な新たな制度を整備 (5年間)を定め、政府全体で計画的取組を進める (1)実行体制を確立。 ○分野横断的措置として、(2)規制改革推進のための 新たな制度、(3)産業の新陳代謝の促進を図るため の制度を創設。 ○加えて(4)その他の産業競争力強化関連施策を推進 (日本再興戦略に則って競争力強化のために行われる 関連施策の特例を規定 等)。 規制改革の推進 ○企業の技術力や創意工夫を生かした、新たな規制改革 の道筋を創設。 ○規制改革会議や国家戦略特区の取組と連携し、骨太の 規制改革を推進。 企業実証特例制度(通称) ①企業が規制の特例措置を提案。 産業競争力強化法の概要 ○日本再興戦略の実行を図るため、「集中実施期間」 16 企業活力 ②事業・規制所管両大臣が協議し、特例措置を創設。 ③安全性確保に係る措置を含む事業計画の認定を通じ、 規制を緩和。その事業を通じ、安全性を検証。 企業 法制 例:物流用電動アシスト自転車の公道走行実証 物流用途において、重い荷物を引くための構造を有 する、現行よりもアシスト力の大きい電動アシスト 自転車の活用を可能とする。 →過度なアシストを抑制する装置による安全性確保 等を条件とし、物流業における女性・高齢者の活躍 を支援 グレーゾーン解消制度(通称) ①企業が事業計画の適法性の確認を申請。 ②事業所管大臣を通じ、規制所管大臣に照会し確認。 ③安心して、事業を実施することが可能。 (2)事業再編の促進 例:医師が出す運動・栄養に関する指示書に基づき、 ―国内での過当競争、国際競争力が低下― 生活習慣病等に罹患していない者に対し、健康の維 ・北米、欧州、アジア等では1つの事業部門に1社のみ存 持・増進を目的として、民間事業者が、それらの指 在するのに対し、我が国では1つの事業部門に複数の 導を実施 事業者が乱立。事業統合による国際競争力強化が急務。 →民間の取組を通じ、多様なサービスを提供 産業の新陳代謝の促進 (1)ベンチャー投資の促進 ―開業率は低迷― ○事業再編を促進し、世界市場や新規事業へのチャレン ジを支援。 ○5年間の時限措置とし、企業が、早期かつ大胆に決断 することを支援。 ・日本の開業率・廃業率は欧米と比較して低調。企業の 新陳代謝が進んでおらず、成功例も少ない。 ・リーマンショックにより、事業会社等からベンチャー ファンドへの資金供給が大きく減少。 ○ベンチャーファンドへの資金供給は、リーマンショッ ク前に比べ約7割減少(1,620億円→491億円)。ベン チャー企業の成長のためには、事業会社等からベン ○産業競争力強化法の認定を受けた企業が、グローバル チャーファンドへの資金供給を拡大することが必要。 競争の勝ち抜き、新事業の拡大を目指して事業の切り ○そのため、「産業競争力強化法」に基づいて、ベン 出し・統合を行う際、大胆な税制措置(損失準備金制 チャー企業に対する経営支援能力の高いベンチャー 度)を適用し支援。 ファンドを認定し、認定ベンチャーファンドを通じた 資金供給について税制優遇措置を講じる。 ○具体的には、認定ベンチャーファンドに対して出資す る企業が、出資額の8割を限度として損失準備金を積 み立て、損金算入できる制度を創設し、ベンチャー投 資を促進する。 企業活力 17 企業 法制 集団訴訟法案、独占禁止法改正についてと産業競争力強化法につ いて 特定事業再編における事業構造の変更の類型 事業再編計画の概要 ・以下のいずれかによる、事業の全部又は一部の構造の ・①合併や事業の譲り受けなどの事業構造の変更を行い、 変更を行う再編が特定事業再編の対象となる。 ・完全子会社とは、事業者がその設立の日から引き続き 発行済株式の全部を有する株式会社である。 かつ、②新商品開発や生産・販売の効率化等の前向き な取組を行うことにより、生産性の相当程度の向上を 目指す計画である。 事業再編計画と特定事業再編計画の要件 (3)先端設備投資の促進 設備投資の喚起 ―過小投資による競争力低下と賃金デフレ― リース手法を用いた先端設備投資の促進 ○設備投資促進のために、10月の与党税制改正大綱に盛 り込まれた設備投資減税に加え、リース手法を用いた 先端設備投資支援等も措置。 ○この措置により、財務に過度な負担をかけずに先端設 備を対象とした設備投資を促進。 18 企業活力 企業 法制 生産性向上を促す設備等投資促進税制の創設 ○先端設備導入、生産ラインやオペレーションの刷新・ 改善のための設備投資を、即時償却又は5%税額控除 という、異次元の優遇措置で支援。 ○製造業のみならず、物流・流通サービス業をはじめと する非製造業も活用可能。 ○法律上の計画認定を要しない簡便な手続き。産業競争 地域中小企業の創業・再生支援 地域中小企業の創業・事業再生の支援強化 (1)「開業率米英並み(約10%)」目標実現(現在 4.5%)のため、民間ノウハウを活用したワンス トップ創業支援体制を創業者の身近に整備。市区町 力強化法の施行日から前倒し適用。 村が民間の創業支援事業者と連携して、創業前から ⇒本税制等の措置を活用し、今後3年間で、設備投資 創業後まで一貫して支援する取組に対し、国も関係 を、リーマンショック前の年間70兆円に回復させる。 省庁が連携して全面的にサポート。 (2)金融円滑化法利用事業者のうち、約5∼6万社の経 営改善・事業再生は喫緊の課題。このため、①中小 企業再生支援全国本部の機能拡充による再生支援体 制の強化、②経営改善・事業再生計画を実行する際 の資金調達を円滑化する保証制度の創設により、中 小企業・小規模事業者の経営改善・事業再生を徹底 支援。 中小企業投資促進税制の拡充・延長 ○中小企業の生産性向上に向けた設備投資(ソフトウエ ア組込型装置を含む)を即時償却や税額控除で支援。 ○税額控除を利用可能な法人を拡大(従来:資本金 3,000万円まで→改正:1億円まで)。 ○資本金3000万円までの法人に対して税額控除割合を 上乗せ(従来:7%→改正:10%) 企業活力 19 業種 日本経済の現状と 動向 先行きについて 業種別動向分析委員会 業種別動向分析委員会は、平成25年12月18日(水)に、経済産業省 経済産業政策局 調査課 片岡 隆一課長をお迎えし、「日本経済の現状と先行き」をテーマにご説明をいただきました。そ の後、委員から各業界の経済動向、概況などについて活発な意見交換が行われました。 ご出席者名簿 経済産業省: 片岡 隆一 経済産業省 経済産業政策局 調査課長 脊戸 雄功 (一社)日本鉄鋼連盟 国際協力・調査本部 国内調査グループ リーダー 松井 勇巳 (一社)日本貿易会 理事・調査グループ 部長 (企業名・役職名は当時・企業名五十音順・敬称略) 出 席 委 員: 笠原 隆男 石油化学工業協会 業務部 兼 企画部 担当部長 杉原 克 日本化学繊維協会 理事 斎藤 俊 日本製紙連合会 常務理事 代 理 出 席: 佐藤 政広 石油連盟 企画部 財務グループ長 熊谷 隆弘 (一社)日本ガス協会 企画部 計画グループ マネジャー 持田 弘喜 (一社)日本自動車工業会 総務統括部 企画調査担当 調査役 片岡課長 『日本経済の現状と先行き』(講演資料抜粋) 1.11月・月例経済報告における基調判断 2.景気・GDP ・13年11月の月例経済報告における景気の総括判断は ・13年7−9月期の四半期GDP速報(2次QE)では実質 「景気は、緩やかに回復しつつある」となった。先行 及び名目ともにプラス成長。輸出が減少し、外需がマ きについては、輸出が持ち直し、各種政策の効果が発 イナスに寄与したものの公共投資の大幅な増加をはじ 現するなかで、企業収益の改善が家計所得や投資の傾 め、個人消費、住宅投資及び民間在庫の増加により、 向が続き、景気回復の動きが確かなものとなることが 内需のプラスの寄与が上回り、4四半期連続のプラス 期待される。ただし、海外景気の下振れが、引き続き 成長。 我が国の景気を下押しするリスクとなっている。 ・世界の景気は、弱い回復が続いているものの、底堅さ もみられる。 ・内閣府年央試算(平成25年8月2日)は、13年度が、実 質+2.8%程度、名目+2.6%程度、14年度は実質+ 1.0%程度、名目+3.1%程度としている。個人消費は ・先行きについては、当面、弱い回復が続くものの、次 緩やかな増加が続き、企業収益が改善する中で、設備 第に底堅さを増すことが期待される。ただし、アメリ 投資の回復が見込まれるなど、民需主導の景気回復が カの政策動向による影響、中国やその他新興国経済の 進むと見込まれる。消費者物価(総合)は、日本銀行 先行き、欧州政府債務問題等に留意する必要がある。 の「量的・質的金融緩和」の効果に加え、景気回復が 進むこと等により、5年ぶりに上昇すると見込まれる。 先行きのリスクとしては、欧州の政府債務問題、アメ 20 企業活力 業種 動向 リカの政策動向、中国経済の先行き等の海外経済の動 向に加え、金融資本市場の動向、電力供給の制約等が あることに留意する必要がある。 開となっている。 ・長期金利は、2012年に入り概ね1%を挟む展開で推移 していたが、日銀の追加緩和策や欧米の経済状況の悪 化を受けて金利水準は低下。日銀新体制による追加金 3.生産・設備投資・経常利益 融緩和でさらに金利低下が進み、4月5日には史上最低 ・13年10月の鉱工業生産は、前月比(季節調整済)+ 金利となる0.315%を一時記録。5月以降、円安・株高 1.0%と2ヶ月連続の上昇。前年同月比+5.4%と、2ヶ を受けた金利は上昇に転じ、国債の需要動向や、米国 月連続の上昇。 のQE3縮小観測に伴う米金利の動向等を受けて乱高下 ・法人企業統計における13年7−9月期の設備投資は、全 規模全産業で前年同期比+1.5%(2四半期連続増加)。 経常利益は全規模全産業で前年同期比+24.1%と、7 四半期連続の増益。 ・企業の景況感を示す景況判断指数(BSI)(13年10− した。足下、長期金利は落ち着きを取り戻し0.6%台 後半で推移している。 ・原油価格は、13年1月以降は、中東の地政学リスクに よる株価上昇と在庫水準増加による価格下落を続けな がら、1バレル90ドル∼100ドルの間を推移していたが、 12月期)は、大企業は4期連続で改善(前期よりプラ 7月エジプトの政局混迷を背景に、WTIは約1年2ヶ月 ス幅は縮小)。製造業では「化学工業」「生産用機械 ぶりに100ドルを突破。また、シリア情勢悪化により9 器具製造業」など、非製造業では「卸売業」、「サー 月には110ドルを突破した。足下はWTIとブレント及 ビス業」などが上昇に寄与。中小企業の▲0.1は調査 びドバイの価格差が拡大。 開始以降で最高。 ・内閣府・財務省は「企業マインドの改善が続いている ことが確認できた」とコメント。 ・穀物先物価格は、天候不順による穀物在庫率の低下、 先進国の金融緩和による投機マネーの流入もあり、上 昇傾向にあった。さらに12年中頃には米国中西部での ・上場企業の決算(4∼9月期累計)は、前年比で増収増 作況懸念により相場は急上昇した。穀物全体の生産量 益の企業の割合が50%を超えた。円高効果に加え、北 は、前年度より増加して消費量を上回り、期末在庫は 米の好調な自動車販売やスマホの市場拡大等により、 上昇する見通し。足下は下落基調。 業績を改善した企業が多い。その他、電気機器では構 造改革効果、素材では原料高による売上向上昇の効果 5.家計消費・住宅投資等 もみられる。 ・13年10月の実質消費支出(二人以上の世帯)は、前年 同月比+0.9%(名目ベースは+2.3%)となり、2ヶ月 4.為替・金利・株・商品市場 連続の増加となった。前月比(季節調整値)では、実 ・リーマンショック以降、2009年後半にかけて急激な円 質+0.0%の横ばいとなった。項目別で見ると、主な 高が進展。2010年に入り、世界的な景気回復の流れか 増加要因は、新車販売や一部消費税増税前の駆込みが ら円安傾向で推移する場面もあったが、米国景気の先 始まり「自動車等関係費」が好調だった「交通・通 行き懸念、欧州財政懸念に加え、2011年3月の東日本 信」(寄与度+1.26%)や、同じく一部駆込みが始 大震災の影響により再び円高が進んだ。その後も、世 まった「設備修繕・維持」などの「住居」(+ 界経済の減速懸念等で、対ドル・対ユーロで円高基調 0.52%)。 となり、10月に円は対ドルで再高値を更新(終値 75.83円)。しかし12年暮れ頃より新政権への政策期 ・13年10月の消費総合指数は、実質季節調整済108.5、 前月比▲0.2%の下落となった。 待や日銀による積極的な金融緩和に加え、景気回復の 兆しが見られ始めた米国経済や小康状態の欧州経済に 6.雇用・賃金・物価 も支えられ一転して円安基調が強まった。米金融緩和 ・13年10月の完全失業率(季節調整値)は、前月と同水 縮小をめぐる思惑等を背景に買戻しが入る場面も見ら 準となり4.0%。13年10月の有効求人倍率(季節調整 れたが、好調な米経済指標等を背景にリスクオンムー 値)は、前月の0.03ポイント改善し0.98倍。リーマン ドが強まり、足下では再び1ドル=100円台に乗せる展 ショック前の07年12月以来、5年10ヶ月ぶりの高水準。 企業活力 21 業種 動向 日本経済の現状と先行きについて ・13年10月(速報)の現金給与総額(一人当たり賃金) +2,505億円)となり、赤字幅を縮小。 は、前年同月比0.1%増加(4ヶ月ぶり)。13年夏ボー 8.海外経済(世界・米国・欧州・中国等) ナス(夏季賞与)は、前年比0.3%の増加。 ・13年10月の消費者物価指数(全国、生鮮食品を除く総 ・IMF・世界経済見通し(10月8日)によれば、13年の 合)は、前年同月比+0.9%(前月:同+0.7%)と5ヶ 世界の実質GDP成長率は2.9%、14年は3.6%となる見 月連続でプラス。 通し。前回(本年7月)見通しから13年は▲0.3%、14 ・内閣府試算の10月「生鮮食品、石油製品及びその他特 年は▲0.2%、下方修正。 殊要因除く総合」(いわゆる「コアコア」)は、季調 ・世界経済は2014年、2015年に力強さを増すが、回復ス 済前期比で+0.3%(前月:同▲0.1%)と上昇。前年 ピードは依然として緩慢。OECD全体の見通しは前回 同月比は+0.3%(前月:同0.0%)と上昇。 (5月)見通しからほぼ変化ないが、新興国について は下方修正。供給サイドの制約や米国の金融政策転換 7.経常収支・貿易収支 観測による金融市場のタイト化等が背景。新興国経済 ・13年10月の経常収支(原数値)は▲1,279億円と9ヶ月 の弱さが先進国経済にも影響するおそれ。今後のリス ぶりに赤字に転落。季調値では▲593億円季節調整値 クとしては、ユーロ圏の銀行セクターや日本の財政の としては2ヶ月連続の赤字となった。 脆弱性、米国のT a p e r i n gによる各国市場の動揺、 ・貿易収支(季調値)は、▲1兆982億円の赤字(前月差 2014年初の米国の債務上限引上げの頓挫等。 9.経済政策パッケージ・三本の矢 骨太の方針 22 企業活力 産業 人材 雇用・人材政策の最近の 動きと今後の進め方につ いて 雇用・人材開発委員会 雇用・人材開発委員会は、平成25年11月21日(木)に平山喜三委員長(山九株式会社 代表取 締役 専務取締役)の司会進行により開催されました。委員会では、経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 奈須野 太参事官から、「雇用・人材政策の最近の動きと今後の進め方」につい てご説明があった後、参加者による活発な意見交換が行われました。 写真左から平山委員長、奈須野参事官 委員会の様子 ご出席者名簿 福田 里香 パナソニック㈱ 渉外本部 人事総務グループ 委員長: 田宮 直彦 ㈱日立製作所 人財統括本部 人事教育部長 平山 喜三 山九㈱ 代表取締役 専務取締役 経済産業省: 奈須野 太 経済産業政策局 参事官(産業人材政策担当) 委 員: マネージャー 法原 弘明 富士ゼロックス㈱ 人事部 人事グループ マネジャー 豊嶋 玲子 (一財)貿易研修センター 人材育成部 プログラムオフィサー 安田 啓一 本田技研工業㈱ 人事部 グローバル人材開発センター 所長 秋元 潤 ㈱ IHI 人事部 人材開発グループ 部長 委員代理: 永良 哉 ㈱神戸製鋼所 人事労政部長 福井 克久 大阪ガス㈱ 東京支社 副支社長 齋藤 豊 昭和電工㈱ 総務・人事部長 三村 賢治 JX日鉱日石エネルギー㈱ 人事部 勤労グループ 髙島 正人 トヨタ自動車㈱ 東京総務部 人事室長 マネージャー 高橋 弘行 (一社)日本経済団体連合会 労働政策本部 本部長 武部 浩充 中国電力㈱ 東京支社 総務担当副長 尾崎 陽二 (公財)日本生産性本部 ワークライフ部長 増 千原 陽一 日本電気㈱ 人事部長 誉昭 東京ガス㈱ 人事部 人材開発室 課長 (企業名・役職名は当時、委員名五十音順、敬称略) 企業活力 23 企業 活力 COP19及び最 近の地 球 温暖化対策をめぐる動向に ついて 企業活力委員会・企業活力政策研究会 企業活力委員会(企業活力政策研究会合同開催)は、平成25年12月9日(月)に「COP19及び 最近の地球温暖化対策をめぐる動向について」をテーマに、経済産業省 産業技術環境局 審議官 (環境問題担当) 三田 紀之氏をお迎えし開催致しました。 委員会は、渡壁 誠委員長(日本電気株式会社)の司会により進められ、経済産業省からご説明 があった後、参加者を交えて活発な意見交換が行われました。 ご出席者名簿 委 員 長: 渡壁 誠 日本電気㈱ 理事 兼 政策調査部長 講 師: 三田 紀之 経済産業省 産業技術環境局 審議官(環境問題担当) ご出席者: 中出 朋彦 ㈱ IHI 総務部 渉外グループ 課長 今堀 勝 アステラス製薬㈱ 上席執行役員 渉外部長 松尾 一哉 大阪ガス㈱ 東京支社 支社長 有山 房徳 川崎重工業㈱ 企画本部 副本部長 兼 新事業企画部長 増田耕太郎 (一財)国際貿易投資研究所 事務局長・総務部長 有路 正 JFE スチール㈱ 総務部 総務室 課長 藤川 優 ㈱資生堂 秘書室 課長 環 彰 四国電力㈱ 東京支社 技術課 課長 山村 茂之 スズキ㈱ 東京支店長 笠原 隆男 石油化学工業協会 業務部 兼 企画部 担当部長 吉崎 修 ソニー㈱ 渉外部門 渉外部 国内政策渉外課 係長 丸山 達哉 東京ガス㈱ 総合企画部 経営管理グループ マネージャー 竹澤 俊光 東燃ゼネラル石油㈱ 広報渉外本部 渉外部 課長 田村 領 東北電力㈱ 東京支社 総務課 写真右から、渡壁委員長、三田審議官 駒崎 源喜 トヨタ自動車㈱ 渉外部 担当課長 仙洞田雅彦 トヨタ自動車㈱ 渉外部 担当課長 若林 邦広 ㈱日立製作所 渉外本部 副本部長 山城 徹 三菱重工業㈱ 社長室 調査役 友田 啓介 三菱商事㈱ グローバル渉外部 渉外企画チーム 次長 企業名・役職名は当時、企業名五十音順、敬称略 COP19及び最近の地球温暖化対策をめぐる動向について(講演資料抜粋) COP19の日程 COP19の日程 ・11月11日(月)∼11月23日(土)にかけて、ポーラン COP19 決定の主な概要① 2020 年以降の将来枠組み ド・ワルシャワで開催(議長:コロレツ環境大臣)。 背景とCOP19での議論の状況 195カ国・地域の代表が参加。 ●2020年以降の将来枠組みについて、遅くとも2015年内 ・日本政府からは、石原環境大臣以下、片瀬産業技術環 に交渉を妥結することを決定済(COP17)。 境局長(経済産業省)、香川地球規模課題審議官(外 今回のCOP19では、①将来枠組みの在り方、②約束 務省)、関地球環境局長(環境省)他が参加。 草案の提示時期等を中心に議論された。 ・当初の予定を1日延長し、23日(土)夜に終了。 24 企業活力 ①将来枠組みの在り方 企業 活力 米国:先進国・途上国を問わず、全ての国がそれぞれの に努めることを決定。また、COP18の際に開かれた 事情に応じた自主的な約束草案を提示し、その後 CMP8(第8回京都議定書締約国会議)では、京都議 で国際的な協議(情報共有が目的)を行う仕組み 定書第2約束期間で削減義務を負う国に対して、2014 とすることを主張。 年に削減目標を再検討(revisit)すること、野心を向 EU:米国提案に原則的には賛同しつつも、国際的な協 議を踏まえて、2℃目標達成に向けて、各国が約 束草案を更に野心的なものに修正する仕組みとす ることを主張。 途上国:「先進国は総量削減目標、途上国は削減行動」 上するために閣僚級ラウンドテーブルを開催すること 等を決定。 ●COP19では、多くの途上国が先進国に対して、将来 枠組みの議論を進める前提として2020年の削減目標の 野心向上を要求。 という差異化の維持、適応や資金支援等とのバラ ●また、一部の途上国は、①カンクン合意に基づく自主 ンスを重視(一部の途上国は、知的財産権の緩和 的な排出削減目標を持つ先進国に対して、京都議定書 等も要求)。また、島嶼国等は、自主的な約束で 第2約束期間への参加国と同様に2014年に削減目標を は不十分と主張。 再検討すること、②先進国が資金支援や技術移転等に ②約束草案の提示時期 ついても野心を向上させること、を要求。 米国:2015年第一四半期とすべき旨を主張。 EU:2014年中を主張。 途上国:提示時期そのものについては、さほど強い主張は せず。但し、約束草案の作成に対する支援を要求。 COP19での決定事項 ●先進国の2020年の削減目標の再検討および、途上国の 削減行動の実施と深掘りを求める旨を決定。 ●カンクン合意に基づく削減目標を持つ先進国に対して COP19での決定事項 は、再検討の期限・手続は明示されず。(※)京都議 ●全ての国の参加を再確認するとともに、先ずは各国が 定書第2約束期間で削減義務を負う国は、CMP8決定 自主的に約束草案(intended nationally determined に従った2014年内の検討(4月末までに野心向上に関 contribution)を提出する方式について、初めて合意。 する意見書を提出、6月の閣僚級ラウンドテーブルで また、約束草案の作成に当たって途上国を支援するこ の議論等)が義務。 とも併せて決定。 (但し、各国が約束草案を提出した後の協議プロセス ●途上国の野心向上を可能とするため、資金・技術等の 支援を強化することも併せて決定。 については、具体的な議論は進展せず。) ●合意された具体的なスケジュールは以下のとおり。 ・COP20(2014年12月:リマ)までに、各国の約束 草案に盛り込むべき情報を特定。 ・交渉期限であるCOP21(2015年12月:パリ)より COP19 決定の主な概要③ 資金支援、ロス&ダメージ 資金支援 十分に先立って、全ての国に約束草案を提示するこ ●COP19では、途上国が、2020年までに年間1000億ド とを招請。また、準備が整った国に対して、2015年 ルの資金支援を達成するという長期目標(COP15で 第一四半期までに約束案を提示することを招請。 決定)に向けた中期目標(2016年までに年間700億ド ル)の設定や、GCF(緑の気候基金)への具体的拠 COP19 決定の主な概要② 2020 年の削減目標の向上 出時期・金額を書き込むことを主張。 ●COP19では以下のとおり決定。 ・長期目標については、気候資金拡大のための戦略に 背景とCOP19での議論の状況 関する隔年の報告を先進国に求めること、隔年の閣 ●COP17では、2020年以降の将来枠組みに関する検討 僚級対話を開催すること等を決定。中期目標額は盛 の開始に加えて、2020年の削減目標に関する野心向上 り込まれず。 企業活力 25 企業 活力 COP19 及び最近の地球温暖化対策をめぐる動向について ・GCFについては、先進国に対し、GCFが効果的に 運営されるよう、初期資金動員のプロセスの準備を 2020年度の温室効果ガス削減目標 2020年度の温室効果ガス削減目標 COP20までの間に行う上で、野心的で時宜を得た ○11月15日の地球温暖化対策推進本部にて、1990年比▲ 貢献をすることを求める旨決定。具体的拠出時期・ 25%に代わる新たな削減目標として、以下の内容を石 金額は盛り込まれず。 原環境大臣から報告。国際登録することについて、本 部員の理解を得た。 気候変動による損失と被害(ロス&ダメージ) ●COP19では、多くの途上国(G77+中国)は、適応 の分野だけで捉えるには限界があるとして、新た な国際メカニズムの設立を主張。また、島嶼国連合 【25%に代わる新たな削減目標】 ○現時点で、国際的にコミットできる2020年度の温室効 果ガス削減目標は、2005年度比で3.8%減とする。 【新目標の性格】 (AOSIS)は、ロス&ダメージの国際メカニズムに ○原子力発電の活用のあり方を含めたエネルギー政策及 は、適応基金とは別の資金源から資金提供を受ける必 びエネルギーミックスが検討中であることを踏まえ、 要があると主張。 原子力発電による温室効果ガスの削減効果を含めずに ●COP19では以下のとおり決定。 ・ロス&ダメージに関して、COP22で見直すことを 前提に、既存枠組み(COP16で設立した「カンク ン適応枠組み」)の下に「ワルシャワ国際メカニズ ム」を設置することを決定。 設定した現時点での目標。 ○今後、エネルギー政策やエネルギーミックスの検討の 進展を踏まえて見直し、確定的な目標を設定する。 【既存の目標との比較】 ○本目標は、現政権が掲げる経済成長を遂げつつも、世 ・具体的には、条約下の既存組織の代表により構成さ 界最高水準の省エネを更に進め、再エネ導入を含めた れる執行委員会の設置(暫定措置:正式な委員会の 電力の排出原単位の改善、フロン対策の強化、二国間 構成・手続きはCOP20で決定)、情報提供・対話 オフセット・クレジット制度、森林吸収源の活用など、 等の機能の確保、他機関との連携等を決定。 最大限の努力によって実現を目指す野心的な目標。 ○単純には比較できないものの、いわゆる京都目標等既 2015年までの主要スケジュール 2015年までの主要スケジュール 2014年 存の目標と原発の削減効果を見込まずに比較した場合、 本目標は足下で進展してきた省エネ等の効果を踏まえ た相当程度良い数字。 3月:ADP追加セッション(事務レベル) (参考) 6月:閣僚級対話、SB/ADP(事務レベル) 一定の前提を置いて、原発の削減効果を見込まずに 9月:気候変動に関する首脳会議(国連総会の前日) 比較した場合、1997年策定のいわゆる京都目標(2008 10月:IPCC第5次統合報告書公表 ∼2012年)は2005年比で+4.0%、2009年策定の中期 (秋に欧州委員任期満了、米国中間選挙) 目標(2020年)は2005年比で+2.1%。 12月(COP20):各国の約束草案(※)に盛り込むべ き情報を確定、交渉テキストの要素を検討 2015年 5月:交渉テキストを準備 12月(COP21):将来枠組みに関する交渉期限 ※COP21より十分に先立って、各国の自主的な約束草 【今後の手続】 ○気候変動枠組条約事務局に登録している25%削減目標 を撤回し、上記の性格を有する目標であることを条件 として、3.8%削減目標を登録する。 案について、全ての国に提示することを招請すること 「攻めの地球温暖化外交戦略」 (Actions for Cool Earth(ACE))概要 を決定。また、準備が整った国に対しては、2015年第 理念 一四半期までの提出を招請。 ・気候システムの温暖化については、疑う余地がない。 (IPCC 第5次評価報告書) ・クールアース50から6年。日本は、「美しい星」実現 26 企業活力 企業 活力 のため、東日本大震災及び原発事故を乗り越えつつ ・「2050年世界半減,先進国80%削減」の目標実現に向 技術革新及び普及の先頭に立ち、国際的なパートナー け、今こそ具体的なアクションが必要。日本は「エー シップを強化し、国際社会をリードする。 ス」として、その努力の先頭に立つ。 環境エネルギー技術の開発・普及に よる温室効果ガス削減への貢献 目標達成に貢献する。 ・本計画に記載された技術が世界中で開発・普及されれ ば、2050年世界半減に必要な量の約8割の削減が可能。 ・日本は、優れた環境エネルギー技術を、短中期、中長 ・研究開発を着実に進めるため、2020年度までの国地方 期と切れ目なく開発を進め、世界に普及することによ の基礎的財政収支黒字化を前提としつつ、官民併せ5 り、2050年までに世界全体で温室効果ガスを半減する 年間で1100億ドルの投資を目指す。 企業活力 27 企業 活力 COP19 及び最近の地球温暖化対策をめぐる動向について JCMに関する進展 JCMに関する進展 JCM署名国会合を開催(11月21日) 各国のCOP閣僚ステートメントでJCMに対する期待を 表明(仮訳) ■モンゴル ■日本とJCM導入に署名した8カ国の代表が一堂に会し、 “CDMの実施が困難な状況で、モンゴルは他の解決策 JCMプロジェクト形成を精力的に推進していくこと に注目しており、その一つがJCM。モンゴルは、本年 を確認。 1月に日本との間で、最初にJCMの二国間文書に署名し ■各国から、JCMを活用した優れた低炭素技術の移転 や投資の促進に対して高い期待が表明された。 ■各国の参加者 た。我々は、JCMを、低炭素型先進技術の移転を通じ、 温室効果ガス排出削減だけでなく、環境汚染物質の減 少や、途上国の持続可能な開発を目指すメカニズムで ・日本 石原環境大臣 あると見ている。途上国にとっては、国内の環境改善や ・インドネシア ウィットラー大臣・気候変動担当 汚染物質の減少と経済成長促進の両立のため、高効率な 大統領特使 低炭素型技術の移転が極めて重要である。これこそが、 ・エチオピア チャウィチャ環境森林大臣 JCMのようなメカニズムの本質的な目的であり、そう ・ベトナム ハー天然資源環境省副大臣 した取組の着実な実施が、各国の持続可能な開発を軌道 ・モンゴル トルガグリーン開発環境省副大臣 に乗せる後押しになると考える。” ・バングラデシュ チャウデュリー環境森林省次官 ■ベトナム ・ケニア コーディア環境鉱物資源省次官 “ベトナムは、国際的な支援を得ながら、温室効果ガ ・モルディブ アブドラ環境エネルギー省気候変 スの2010年比8∼10%削減、GDP当たりエネルギー消費 動局長 ・ラオス ルアングシャイサナ天然資源環境 省災害気候変動局長 量の毎年1∼1.5%削減、エネルギー起源温室効果ガスの BaU*比10∼20%削減を目指す。この目標の達成には、 CDM、REDD+、NAMA、JCM、その他国内の取組を 活用していく。” *BaU:Business as Usual(何も対策を行わなかっ た場合の排出量) 事務レベルでの協議の実施 ■既署名国との間で、JCMプロジェクトの円滑な実施 に向けて、意見交換を実施。また、JCM未署名の国 にも制度の概要を説明。 28 企業活力 体と心 経済産業省 経済産業政策局 企業会計室長 (Director, Corporate Accounting, Disclosure and CSR Policy Office, METI) 福本 拓也 最初の親不知を抜いたのは、確か 15 年前だった。 「少し黒くなってますね。ひどくなると大変ですよ」 「もともと必要ない歯で すからね」とその歯医者がきっとこれまで何百回と言ってきた言葉に流されて、 上の奥歯を抜いた。それは「必要ない歯」というレッテルに抵抗するかのよう に立派な歯だった。自分の体の一部を気軽な気持ちで失ってしまった。小さな 後悔が残った。英語では「Wisdom Tooth(知恵の歯) 」と言うそうで、それ ならもう少し考えたかも知れない。 その後、残った親不知には、常に冷たい言葉が浴びせられてきた。「虫歯に なりやすいですよ」「もともと必要ない歯ですからね(やっぱり!)」。それ ならば抜いた方が良いかと聞くと「難しい歯ですから、神経に触れると麻痺が 残る覚悟で」云々。こんなに嫌われた上に、去り際にも迷惑をかけるなんて。あの時の立派な歯を思い出しな がら、何度となく訪れた機会をやり過ごしてきた。 そして昨年末。最近通い始めた歯医者で「私は抜きません。抜くなら毎日何十本もやっているプロを紹介し ます」という言葉に背中を押され、師走の気分もあって、残る二本の親不知を同時に抜くことになった。 行ったその日にすぐ抜けると聞いていたが、紹介された大学病院に行くと最低三ヶ月待ちとのこと。15年越 しの覚悟を決めた身としては拍子抜けだ。そんな気持ちが伝わったのか、受付医の顔色が変わった。「研修医 で良ければ来週早々にできます」とのこと。迷っていると「一人前の歯医者になるには誰もがこの道を通りま す」。道理ですね。「教育機関として若者を育てることも使命なんです」。そうでしたね。「私も横で何かあれ ばサポートします」。何かあれば、ですか。自分の事でなければ、何の違和感もないセリフ。技能を伝承し、 経験を積まなければ若者は成長しない。人材育成の基本である。 そして私は研修医の訓練台となることを決意した。 しかし、私の親不知は、研修医にやすやすと抜かせるような歯ではなかった。結局、件の指導医がリードし ながら、全てのプロセスが私の上で実況中継された。「ほら見て、ここは危なかっただろ」そうだったんです ね。「歯を割って折るしかない」割るんですね。「割れてるかな。割れてないとまずいな」そしたらどうするの でしょう。「抜くぞ。ぴきっとなる点を探して慎重に回す」「ああっ。強く引っ張ると神経が」だから慎重に回 すんだって! 昔の哲学者が言っていたはず。人の人格は尊重され、単なる手段ではなく目的として扱われなければならな い。私は、完全に一人の若者の技能習得の手段となった自分を客観的に眺めていた。 バラバラになった歯は無事に抜けた。その歯は既に自分の一部ではなく、単に物体であった。若者は私に尋 ねた。「これ記念に持って帰りますか」。「むしろ君に記念に持って帰ってほしい」。そんな言葉を飲み込み、 麻酔が切れて襲ってきた痛みと戦いながら、冬の家路を急いだ。 企業活力 29 産業 研究 「先進国型製造業」に関する セミナー開催報告 先進国型製造業としての日本企業の方向性 ∼知財マネージメントが主役になる時代の登場∼ 当研究所では、平成25年10月22日(火)、東京大学政策ビジョン研究センター シニア・リ サーチャー 小川 紘一先生をお迎えして、「先進国型製造業」に関するセミナーを開催いたしま した。 我が国製造業は、先進国市場の低迷、新興国市場等の拡大など、グローバル市場構造が大きく変 化するとともに、新興国等企業の台頭をはじめとする国際競争が激化する中にあり、我が国におけ る企業活動が高コストなこともあって厳しい状況に直面しており、今後さらに発展していくために はどのようにあるべきかが問われています。 こうした中で、製造業のグローバリゼーションの進展、途上国や先進国における製造業の比較優 位などを踏まえて、我が国ものづくり産業が「先進国型製造業」として発展していくための目指す べき方向性について、知財マネージメントに力点を置きながら、具体事例を盛り込みつつ、ご講演 いただきました。 当日は、企業担当者、業界関係者、政府関係者、シンクタンク・マスコミ関係者など約50名が参 加し、大変活気あるセミナーとなりました。 小川紘一先生 セミナーの様子 【実施概要】 日 時:平成25年10月22日(火) 15:00∼17:00 場 所:一般財団法人 企業活力研究所 大会議室 概 要: 1.基調講演 15:10∼16:40 小川 紘一先生 先進国型製造業としての日本企業の方向性 ∼知財マネージメントが主役になる時代の登場∼ 2.質疑応答 16:40∼17:00 セミナーの様子 【小川 紘一先生 プロフィール】 工学博士。1973年、富士通研究所入社。研究部長を経 ら東京大学総括プロジェクト機構 知的資産経営総括寄 て、富士通のビジネス部門へ移籍。事業部長、理事を経 付講座 特任教授を経て2012年から東大大学院経済研究 て、2004年から東京大学大学院経済研究科ものづくり経 科ものづくり経営研究センター 特任研究員。2013年4 営研究センター特任研究員、上海の復旦大学 月より現職。 Information Science学科教授(2008年まで)。2008年か 主な研究領域は、国際標準化戦略、知財戦略、競争戦 30 企業活力 産業 研究 略など。行政関係は、内閣官房「国際化戦略タスク フォース」委員、経済産業省「産業構造審議会・情報経 済分科会」および「産業構造審議会・研究開発小委員 (得意)産業である ・製造業は、我が国経済を守る確固たる産業基盤で ある 会」委員などを歴任。 著書は、『国際標準化と事業戦略』(白桃書房)、 『東京大学知的資産経営総括寄付講座シリーズ第1巻第2 巻』(共著、同上)『オープン&クローズ戦略 日本企 業再興の条件』(翔泳社)など多数。 2.100年に一度の産業構造転換 *ソフトウエア・リッチ型製造業の興隆 ・グローバライゼーションの進展と伴に、20世紀後 半から全世界的に第三の産業構造大転換が起きた ○マイクロプロセッサー、製品内部のオープンモ 【講演内容要旨 ∼セミナー開催案内より∼】 ジュール化 日本のモノづくりは、1990年代の後半から歴史的転換 ○人工的な論理体系(ソフトウエア)の産業化 期に立ちました。その背後にあるのが製品設計にソフト ○技術モジュールが自由自在に結合し「技術の大 ウエアが深く介在するソフトウエア・リッチ型産業の興 隆です。ここから技術、知財、ヒト、そしてモノづくり さえも瞬時に国境を超える製造業のグローバリゼーショ 爆発」 *1980年代のアメリカの対応 ・1980年代アメリカは競争力強化のために産業政策 ンが進み、競争ルールが一変しました。 を転換:独禁法の大幅緩和(1981)、国家共同研 本講演では、上記の経済環境で日本企業が直面する課 究法制定(1984) 題を、欧米企業やアジア企業と比較しながら分析し、 ・その過程で、デジタル型産業がビジネス・エコシ 「先進国が自らの手で生み出す新規技術を企業の付加価 ステム型へ転換。技術伝播をコントロールする知 値と国の雇用成長に結びつけるには、オープン&クロー 財マネージメントが生まれる ズの考え方に立った知財マネージメントが必要になっ た」と主張します。多くの事例を挙げてこの主張を裏付 けます。 古き良き日の日本型モノづくりをそのまま21世紀に再 現してはなりません。国内に残すべきマザー機能も、製 品設計や工場中心のモノづくりではなく、グローバル市 場におけるビジネスモデル構築や知財マネージメントを 含めた統合型のマザー機能でなければなりません。これ が「先進国型製造業としての日本企業の方向性」です。 《基調講演》 先進国型製造業としての日本企業の方向性 ∼知財マネージメントが主役になる時代の登場∼ ・フルセット統合型の経済合理性が、オープン化・ 分業化の大潮流によって崩壊する *2000年代の日本の現状 ・1980年代のモノづくり思想をそのまま踏襲し、特 許の数を競って、結局、技術伝播を加速した ・技術・知財・人・モノづくりさえも瞬時に国境を 超えるが、打つ手なし ・日本は液晶やDVDなどの技術開発・商品化・市 場開拓を主導し頑張った、しかし… 3.途上国の比較優位と製造業 *東アジア諸国は技術伝播を前提にしたトータル・ビ ジネスコスト引き下げ政策推進 ・技術が伝播/漏洩してクロスライセンス型になる 以下、講演資料からの抜粋 と、国のビジネス制度設計(特区・税制なども駆 (注)詳しい内容につきましては、『オープン&クロー 使してビジネスコストを下げる政策イノベーショ ズ戦略 日本企業再興の条件』(翔泳社、平成26年2 ンの追及)や企業のオーバーヘッドなどが、企業 月)などをご参照ください。 の国際競争力や国の産業競争力の決定要因となる 1.日本の国際貿易からみた製造業の位置付け *製造業の競争力が日本経済を支える ・製造業は、貿易収支で輸出の95%を担う比較優位 4.先進国の比較優位と製造業 *Open & Closeの知財マネージメント ・1980年代、アメリカは知財政策を競争力強化の方 企業活力 31 産業 研究 「先進国型製造業」に関するセミナー開催報告 向へ転換(徹底したプロパテント政策。ソフトウ ・ソフトウエア・リッチな製品は、必然的にビジネ エア(コンピュータプログラム)に著作権を認め ス・エコシステム型の産業構造となる。これを受 る、など) けて、Open & Closeの知財マネージメントが必 ・コア技術を守りながら大量普及と高収益を同時実 須となる 現させるOpen & Closeの知財マネージメント思 想を生み出した。そのポイントは… ○企業(自社)と市場(調達、顧客)の境界部分 を設計する ○知財を①自社(コア領域)へ集中させる、同時 に②コア領域と他社技術をつなぐ境界領域へ集 中させる ○コア領域から市場に向かう市場支配の仕組みを 構築する(市場支配の強力な“伸びゆく手”を 形成する) ・Open & Closeの事例 アップル・インテル・ボッシュ・米国のロボッ ト産業・米国の航空機産業 *ソフトウエアがイノベーションをリード(製造業が 方向性 *まだ競争優位を持つハードウエアの価値をソフトウ エアで10倍へ ・日本は超精密部品や機能材料など、技術伝播し難 い領域でなら強い ・他にもコアとなる強い技術領域がまだまだ数多く 残っている *この価値をOpen & Closeの知財マネージメントで 守る ・自社のコア領域から市場をコントロールする“伸 び行く手”を形成し、技術格差を使って新興国の 成長を取り込む仕掛けを作る。これをグローバル ソフトウエア・リッチ型へ転換) 市場で安定的に維持する知財マネージメントで守 ・製品設計は、構想力・感性・アイデアが製品コン る セプト設計に直結する。これをソフトウエア・プ ログラミングで具体化する *軍師の育成 ・コア技術領域を更に強化するだけでなく、モノづ ・製品イノベーションは、ハードウエアのモノづく くりを競争力に直結させる仕掛けづくり及び、こ りでなく、技術進化が非常に速いソフトウエア側 れを担う軍師型人材や軍師型人材チームを育成し が主役となる(付加価値がハードウエアからソフ よう トウエアに移る) 32 5.製造業のグローバライゼイションの中の日本企業の 企業活力 産業 CDGMラウンドテーブ 人材 ルセミナー レポート 平成 25 年 7 月よりスタートした第 15 期 CDGM ラウンドテーブルセミナーは、平成 25 年 12 月に 最終回を迎えました。 12 月 14 日に行われた最終回のセミナーでは、参加した各チームから半年間の総括について発表 が行われ、指導講師の吉田耕作先生(カリフォルニア州立大学名誉教授)による講評がなされました。 第15期CDGMラウンドテーブルセミナー結果報告 今期5チームの活動結果は次の通りです。 意識が変化し、自ら確認をするようになったものと考え られ、今回の活動での対策は見送りとしました。トラブ 〈チーム 1〉 ルに関しては、アンケートの回答を原因別に分類しまし 2つに分かれた拠点からそれぞれ代表者が集まって参 た。その結果、「情報共有不足」、「情報不備」の原因 加しているチームで、コミュニケーションをテーマに活 が80%であることがわかりました。この結果を受けて、 動を行いました。「なぜ、職場グループ内コミュニケー 対策案として連絡シートの導入を考えました。今期の活 ションが上手くいかないのか?」という問題に対して、 動の中では、この連絡シートを作成するところまで行い 原因をあげました。原因は、正社員と再雇用者間のもの、 ました。そして、社内での連絡シートの活用案内、運用 上下関係のもの、チーム内外のもの、個人的なものに分 開始予定日の計画を組み今期の活動を終えました。 けることが出来ました。その中から、上下関係のものに 今後、連絡シートが活用されることにより、情報がつ あげられた「連絡事項が速やかに伝わらない」という原 たわらないことによるトラブルが減ることが期待できる 因について、活動を進めていくことにしました。まずは、 ものと思われます。 連絡事項に関してどのような状態であるかを知るため、 職場の管理職以外の人たちにアンケートを採ることとし 〈チーム 2〉 ました。上司のメールの確認はしているか、上司のメー 社内教育に携わる部署から参加のチームです。会議室 ルで不明な点は確認しているか、ミーティングの頻度、 の運営効率をテーマに活動を行いました。予約システム 情報が伝わらないことによるトラブルはあるのか、など 上会議室が予約されているのに実際は使用されていない を調べました。その結果、上司のメールの不明点の確認 状況を目にすることがあり、ミーティングをしたいとき をしていないというものが21%と比較的多くでましたの に、上手く会議室を使用できず困っていることから、こ で、こちらの原因をさらに探る必要性があるのではない のテーマにしました。そこで「なぜ、会議室の運営効率 かと考えました。また、情報が伝わらないことによるト が悪いのか?」についてその原因をあげました。原因は、 ラブルも38%が「あった」と回答していることから、こ 予約システムを利用する利用者の意識によるもの、会議 ちらもどのようなトラブルがあり何が原因なのかを再度 室の仕様によるもの、予約システムの使い勝手によるも 確認することにしました。確認のために2回目のアン の、予約システム運営上のルールによるものに分かれま ケートを行いました。2回目のアンケートでは、上司の した。原因の中で、様々ある利用者の意識から対策が出 メールの不明点に対する確認をしていないという人は、 来そうなものと、予約システム運営上のルールに着目し 3%と減っていました。トラブルに対しての回答は、 活動を進めることにしました。利用者の意識に関しては、 「あった」とする人が35%とほとんど変化はありません 予約状況と実際の使用状況を確認し、もし、予約されて でした。上司のメールの不明点の確認は、1回目のアン いて使用していない場合ヒアリングを行うことにしまし ケートで設問に入れることにより、アンケート参加者の た。ヒアリングの結果は、「時間に幅を持たせて予約し 企業活力 33 産業 人材 CDGM ラウンドテーブルセミナー レポート ているから」「不確定の予定で予約したから」「中止や いのかを調べ、意識への影響を調べました。その結果、 時間変更の処理を行わなかったから」という理由が多く 品目コードにミスが一番多いことが解りました。続いて、 原因の80%をしめていました。一方、会議室の運営ルー 発注書番号、配送先住所となりました。今回は、受注書 ルに関しては、まず、4拠点それぞれの会議室運営の 類に入力しているものすべてを対象にミスを確認しまし ルールがどうなっているかを比較してみることにしまし たが、その中でもお客様への影響の高い項目を重点的に た。すると、チームメンバーが所属する拠点の会議室運 チェックできるように、さらにどの入力項目が取引先や 営には、「鍵の管理がない」、「リマインドメールがな コストに影響力が高いのかを確認し、再度入力ミスの状 い」、「運用ルールが明示されていない」、「ペナル 況をチェックしました。これらのチェック活動により、 ティーがない」ということが解りました。この結果に対 入力後のチェックがさらにチェック漏れを起こすことは する対策として、運用ルールを追加し、それを会議室管 なくなりましたが、入力ミスは減少できませんでした。 理部門から告知してもらうこととし、併せて啓蒙活動と 統一されていないチェック方法については、各課から してポスターを会議室に貼り運用ルールの徹底を行って 代表者を集め委員会を立ち上げました。この委員会によ もらうようにしました。追加された運用ルールは、予約 り、入力後のチェックを人的ではなく、システム上で行 開始時間を15分経過し未使用の場合は予約が自動的に えるようにシステムの精度をあげる検討しました。将来 キャンセルとなる、「15分ペナルティールール」という 的には、判断をしなくても正しく処理が行えるようにで ものです。このような活動の結果、当初86.5%だった予 きることを目的として活動を行いました。今回の活動で 約稼働率は、94.9%になりました。また、「不確定の予 は、システムのチェックをどのように変更するかの案を 定で予約」した人はいなくなりました。稼働率に対して 検討したところまででした。今後、委員会の活動により、 残された課題としては、上司の代理で予約したときの未 現在の個人のスキルに頼ったチェックを行う状態から、 使用時の予約変更がされていないことや、予約時間より 将来的には、だれでもチェックを行える状態に活動を進 も早く終わったときの予約変更がされていないことがあ める予定です。 りました。今後もさらに啓蒙活動を進めていく予定とし、 定期的な調査を会議室管理部門に働きかけることにしま した。 〈チーム 4〉 組織のさまざまな部門から集まった方々のチームです。 システムの問題をテーマに活動を行いました。ここでシ 〈チーム 3〉 ステムといっているのは、共有で使用しているサーバー 受注業務支援を行う部署から参加のチームです。受注 内のことです。そこで「なぜシステムは使いづらいの ミスをテーマに活動を行いました。「なぜ、受注ミスが か?」について原因をあげました。原因は、社内ポータ 無くならないのか?」について原因をあげたところ、注 ルサイトの仕様についてのもの、サーバー内の共有ドラ 文書の仕様や運営状況によるもの、ルールによるもの、 イブでの運用ルールによるもの、サーバーの容量による 受注を取り巻く様々な制約条件によるもの、受注業務に もの、検索などアクセス方法によるもの、削除ルールに 関わるツールによるもの、受注業務に携わる個人のスキ よるものに分かれました。まずは、どのくらい共有ドラ ルによるもの、受注業務に携わる個人の意識によるもの イブが使用されているのか各メンバーの所属する部門で に分かれました。これら原因の中から、業務に関わる 調べました。それと、アンケートを作成して、社内ポー ツールで統一されていないチェック方法について検討し タルサイトと共有ドライブについてどのように使われて ていくことと、受注業務に携わる人の意識を改善するこ いて、どのようなものに困っているのかを探ることとし とにしました。 ました。アンケート結果に対しては、社内ポータルサイ 受注ミスのデータとして、入力時のミス、入力チェッ トに関しては、管轄部署に提案を行うこととし、共有ド ク後のチェック漏れをなくすことを目標として活動を進 ライブについて対策を行うことにしました。共有ドライ めました。意識の改善に対しては、チェックシートを活 ブに対するアンケート結果によると、使い勝手の悪い原 用して、ミスの起こる箇所をチェックすることにしまし 因は、「階層が多くて検索に時間がかかるから」「似た た。入力ミスをチェックしてどのようなものにミスが多 ような名前のファイルがたくさんあるから」「容量が足 34 企業活力 産業 人材 りなくなり、仕事が止まってしまうことがあるから」 うに、会議の前に検討事項の依頼や、連絡事項を入れら 「自分が削除してよいファイルか判断できないから」 れるようなフォームを作成し、活用しました。この結果、 「ファイルの保存先に迷うから」となりました。そこで、 会議では、報告にかける時間を40分から10分に削減する チームメンバーの中の1つの部門の共有ドライブに対し ことができました。また、事前に検討内容を知らせるこ て対策を行いながら、フォルダ作成ルール、階層ルール、 とにより、参加者が自分の意見を準備して会議に臨むこ 削除ルールを作成していくことにしました。まずは、階 とができるようになりました。このことにより、会議が 層ルールを基本3階層として、第一階層のフォルダの項 審議に重点を置いたものとなり、参加者が会議内容に対 目を決定することから始めました。これにより、第一階 して、充実していると感じることができるようになりま 層は、今までそれぞれ必要なときに作っていたフォルダ した。 が増え続けていた状態から、決定項目フォルダ以外作成 今後は、今回の活動で作成したフォームを他の会議で されないようになり、第一階層のフォルダ数を減らし見 も活用し、有意義な会議と感じられるものを増やしてい やすくすることが出来ました。さらに、フォルダ作成 く予定です。 ルールを決定し、そのルールに従いフォルダ作成をおこ なうようにしました。このルールは、階層ごとの名前の 毎回のセミナーでは、吉田先生からの講義のほか、各 付け方を明確にしました。削除ルールについては、削除 チームより経過発表が行われ、発表に対しては他の参加 期限の案内を行うことや、残すファイルを入れるフォル 者から鋭い質問や意見、アドバイスが出されていました。 ダを設置し管理することを盛り込みました。そして、そ 通常では見られない、他の会社の問題や解決方法を見る の他の部門でもこのルールに従って整理を行いました。 ことにより、共感したり、励ましあったりしながら、多 その結果、1つの部門では、5.60GBから5.47GBに容量を くの気づきをされていたようです。このようなセミナー 減らすことができました。 形式の中で、お互いが学びあえたことを喜ぶ声も多くい 活動はここまでですが、今後は、整理が進み使い勝手 ただきました。 のよいものとなることが予想されます。 最終回のセミナー後は打ち上げパーティーが開催さ 〈チーム 5〉 れ、その中で吉田先生から各参加者に段位が授与されま 工場の各部門から集まったチームです。会議時間の問 した。また、受講生同士が交流を図りつつ、半年間の労 題をテーマに活動を行いました。「なぜ会議時間を有効 をねぎらいました。 に使えないのか?」について原因をあげたところ、会議 の目的によるもの、会議の時間に関するもの、会議の運 営に関するもの、会議の段取りに関するもの、会議の行 われ方に関するものに分かれました。そこで、定期的に 行われる4つの会議に対してのアンケートを行いました。 その結果、会議時間が長いという意見が多く出ました。 また、事前に会議の趣旨を知らせたり、報告事項を知ら せたりして、会議では検討や審議に重点をおいてすすめ たらどうかという意見が出ました。このような結果を受 けて、週1回行われる工場ミーティングで対策を実施し てみることにしました。アンケートの意見ででていたよ 第 15 期 CDGM ラウンドテーブルセミナーの様子 企業活力 35 産業 人材 CDGM ラウンドテーブルセミナー レポート 第16期CDGMラウンドテーブルセミナー経過報告 現在行われている第16期CDGMラウンドテーブルセ 回も様々なテーマがあげられると思いますが、解決すべ ミナーは、平成26年1月11日(土)にスタートいたしま き課題を捉え、半年間かけて具体的な改善策に取り組み、 した。今期は5チーム28名のご参加をいただきました。 成果を上げていくものと期待されます。。 現在は、各チームが職場の問題をあげて、その中からど の問題について活動を行うのかを検討しているところで す。今期も、参加されているチームは、業種の違う会社 ですが、あがってくる問題は、共通する部分も多く、興 味深く他の会社のチームの発表を聞かれていました。今 36 企業活力 CDGM ラウンドテーブルセミナーのお問い合わせ先 (一財)企業活力研究所 担当 関口・須藤 TEL 03 3503 7671 E-mail cdgm@bpf-f.or.jp 研究所便り コ ラ ム 平成25年度研究交流事業について 企画研究部 調査役 上岡 隆 平成25年度の研究交流事業は「環境・エネルギー研究会」「企業経営研究会」「国際経済研究会」「産業技術研究 会」「製造産業研究会」の5つの研究会を開催しており、7月まで全11回の開催予定のうち2月で折り返し地点を通過 しました。昨年9月の第1回オリエンテーション・顔合わせ以降、フレンドリーな雰囲気で開催されていますが、回を 重ねるごとにメンバーの皆様はすっかり顔なじみとなり、毎回活発な議論を展開しています。話はそれますが、天気 予報の台風の進路や大雪の予想日などは「研究会とかぶらないように!」とハラハラしながら見ています。この点で も、今年度は幸いにも悪天候に振り回されることなく順調に進んでいます。 各研究会は産業人、学者、研究者、メディア、行政官と多様な分野の専門家で構成されており、研究会の内容とし ては、持ち回りで各回1∼2名によるプレゼンを行った後、それに対する質疑・意見などの討議を行います。 プレゼンテーマは、我が国の科学技術開発の抱える課題、製造業の進むべき方向性といった大きなテーマや最新の 業界動向の解説、企業内で担当している業務分野の解説、中にはプレス発表されてからまだ日が浅い自社新技術の詳 細な紹介などもあり、毎回毎回興味深いものばかりです。これらのプレゼンに対して、素朴な質問、専門的な質問を 始め様々な知見の紹介や意見の開陳など、聞いていてもまさに談論風発、真剣で熱い議論が繰り広げられます。この 研究会はオフレコで、メンバーはもちろん対外的に話せる範囲内で議論しているのですが、それでも時には、突っ込 んだ内容の発言もあってびっくりすることもあります。こうして2時間ほどの予定時間はいつもあっという間に過ぎ てしまいます。話し足りないときには、皆様連れ立って2次会へ流れることも多いようです。 私自身はこのように広い分野の皆様とお付き合いさせていただくのは初めての経験で、研究会のプレゼン内容や議 論はとても新鮮であり、毎回大きな刺激を受けています。3月以降もますます興味深いプレゼンが続きます。そして 熱を帯びた議論も期待されます。 編 集 後 記 少し前になりますが、冬季オリンピックについて、触れさせていただきます。日本のメダル数もさることながら選 手それぞれの奮闘ぶりにとても心を打たれたオリンピックでした。特に浅田真央選手のフリーが終わって見せた涙に 感激し、涙された方も多いのではないでしょうか。涙の後のやり遂げた感溢れる笑顔も最高で、メダル以上の輝きを 与えてくれたと思います。ジャンプ・高梨沙羅選手は、オリンピックの雰囲気に少し飲まれてしまったのか、悔しい 結果に終わりましたが、その後のワールドカップでは気持ちを切り替えて優勝するところに精神力の強さを改めて感 じました。まだまだ 17 歳、先が楽しみです。 冬季オリンピックではその他にも日本人女性の大活躍が目立ちました。今号の巻頭言では J − Win 理事長の内永 ゆか子様に、まさにその「女性の活用、ダイバーシティ」をテーマに、コラムでは経済産業省 企業会計室長の福本 拓也様に「体と心」というテーマでご執筆いただいております。大変興味深い内容となっておりますので是非ご覧下 さい。 (小西 広晃) 企業活力 37
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