産業医科大学呼吸器・胸部外科だより 当科における肺癌最新治療の報告: 広報誌季刊号 2014第3号 小型肺病変に対してバーチャル気管支鏡ナビゲーションを利用した術前 気管支鏡下マーキング(Virtual Assisted Lung Mapping: VAL-MAP) はじめに: VAL-MAPがなぜ必要か? 近年、CTなど画像検索が比較的容易に行われるようになっており、小型肺病変が発 見されやすくなっています。それらの中には当然肺癌の可能性もおおいにあります。通 常は経過観察をしますが、まれながら急速に増大し切除不能となることも経験します。 患者さんの中には肺癌かもしれない病変であれば早期に切除してほしい、と望まれる 方が多くいます。そういったneedsに応えるべく登場したのがVAL-MAPであります。問 題となるのはCTでかろうじて捉えられる程度の腫瘍であり、手術中に触知不能な病変 である点です。触知不能な病変を如何に手術で切除するか、これを解決してくれるのが VAL-MAPという新技術です。代替toolとしてはVATS markerによる切除が行われてま すが、気胸・空気塞栓など致死的な合併症が報告されており、注意が必要です。 小型肺癌に対する従来の方法の問題点 従来はVATSマーカーという、金属と糸を肺内に打ち込み、目 印とする方法をとってましたが、①空気塞栓(0.2~0.4%:致死的 合併症となるうる)、②気胸などのリスクがあり、危険性が高い と考えられてます。VAL-MAPは逆にそういった合併症がおこり にくく、重篤な合併症はアレルギーのみと報告されてます。 VAL-MAPとはなにか? Virtual Assisted Lung Mappingの略であり、バーチャル気管支鏡のナビゲーションシステム(=CTで気管支の情報 を再構成し、気管支鏡の画像とCT画像を連動させ、気管支と腫瘍の位置を示すシステム)を用いて、腫瘍の近傍に 色素を散布してmarkingを行い、手術でmarkingをみながら腫瘍を切除していく方法です。簡単にいうと ①事前に画像で腫瘍の位置を把握・どこを目印とするか決定⇒②気管支鏡で色素をまいて目印をつける⇒③CTで 目印の位置を確認し3DCTでmarkingの位置を確認する⇒④手術で目印通りに腫瘍を切除する、4つの工程から なってます。以下に具体的な方法を図で示します。 ②気管支鏡で色素(インジゴカルミン)をまいて目印をつける ①腫瘍の位置を確認・バーチャル内視鏡で マーキング部位を決定する ④手術で腫瘍を切除する。 ③CTでマーキングの位置を確認し、 3DCT でmapをつくる 症例: 40歳台 男性 現病歴: 腎細胞がんの既往があり、フォローアップCTで右上葉にスリガラス陰影pure GGO(8×7mm)を認めた。 縫合後の肺動脈 二年間経過観察されたが、大きさの増大はなかったが、手術を希望された。 左主気管支切離後 左上葉 マーキング 形成前の主気管支 左下葉枝切離後 梢 S3にpure GGO(8×7mm) マッピング 手術: 術式: 胸腔鏡下右上葉部分切除 病理診断: 高分化腺癌, 十分な切除 marginがとれている VAL-MAPという新技術は京都大学呼吸器外科教室の佐藤雅昭先生が開発し、現在臨床試験中であり ます。当科にも佐藤先生が直接指導しに来て頂き、技術を学び実践しております。臨床試験に参加する 形で現在当科でおこなっております。症例を重ねるごとにマッピングが正確に行えるようになってます。 当科におけるVAL-MAPの実績 当科におけるVAL-MAPのスタッフ • 2014年5月〜10月現在で16症例17病変 • マーキング後の切除成功率は100%です。 • 合併症はありません。(アレルギー、喘息など 合併症はありません。(アレルギー、喘息などの 報告があります。) の報告があります。) • 術式はすべて部分切除のみです。 ⇒このような小さな病変を持ち、手術を希 望される患者さんがおりましたら紹介頂き たいと思います。みなさんの御紹介の上、 我々の診療が成り立っており、今後も何卒 我々の診療が成り立っており、今後も何 よろしくお願い申し上げます。 卒よろしくお願い申し上げます。 内視鏡室: 朝からマッピ ングさせても らってます 3D作成頂 いている技 師さんです 2014 日本呼吸器外科学会総会の参加報告 第67回日本胸部外科学会総会@福岡 & 悪性胸膜中皮腫研究会~Walter Weder先生の講義~@産業医科大学 胸部外科学会 ビデオセッションでは3例発表を行いました。なかでも平井文子先生が発表した「自家肺静脈を用い て肺動脈再建を行った上葉肺癌の1例」は会場の先生方から斬新でかつ有用性が高い技術とお褒 めの言葉を頂き、全国にアピールすることができました。 また田中教授が悪性胸膜中皮腫の招請講演の座長をつとめられました。こちらは大変好評でした。 “自家肺静脈をもちいて肺動脈再建を行った上葉肺癌の1例j” 平井 文子, 他 “頸部~縦隔脂肪肉腫の術後再発に対して咽頭・喉頭・頸部食道摘出+縦隔郭清+遊離空腸再建+縦隔気管孔造設+大網充填術を 施行した1例” 竹中 賢,他 “P/Dと肺切除により肉眼的完全切除した悪性胸膜中皮腫の1例” 篠原 周一 他 “Multimodality therapy for malignant pleural mesothelioma” 悪性胸膜中皮腫研究会 座長 田中文啓 欧州呼吸器外科の権威であるWalter Weder先生を招聘し、産業医科大学病院内で悪性胸膜中 皮腫について講義を行って頂きました。当科より岡先生と米田先生が英語で発表を致しました。 Weder先生と英語でdiscussionを行い、堂々と発表されておりました。 “Case of malignant pleural mesothelioma: Macroscopic complete resection with extended P/D ” “Blood Tests in Malignant Pleural Mesothelioma (MPM) ” ,米田和恵, 他 “Multimodality therapy for malignant pleural mesothelioma” Walter Wader 岡壮一, 他 ~Walter Weder先生の略歴~ 1982年チューリッヒ大学でレジデントとして外科研修。 1988年ワシントン大学での肺移植研究を行った。 1990年チューリッヒ大学に戻る。 1992年チューリッヒ大学でスイス初の肺移植に成功する。 1994年世界で初めて胸腔鏡下肺容積減量手術(LVRS) を成功させた。 以後も、進行肺癌治療、肺移植、悪性胸膜中皮腫の分 野では欧州医学会のトップランナーとして中心的な役割 を果たしていた。 2003年チューリッヒ大学胸部外科教授となる。 Walter Weder先生と田中文啓先生 所属学会は欧州呼吸器学会(ERS)、国際肺癌学会 (IASLC)、欧州臓器移植学会(ESOT)、欧州胸部外科学会 (ESTS)、欧州癌学会(ESMO)、胸部外科学会(STS)、アメ リカ胸部外科学会(AATS)、国際心肺移植学会(ISHLT)、 欧州外科学会(ESA)など多くの評議員、会長をされてい る。著作論文は300本以上あり、欧州でNumber oneの呼 吸器外科医のひとりである。 ~懇親会にて~ 懇親会ではWeder先生に普段はきくことができないような 話や質問をさせて頂きました。Weder先生から手術ビデ オに関するコメントや欧州呼吸器外科の実情、肺移植の 苦労話など様々な貴重な話を聞かせて頂きました。 今後はweder先生のチューリッヒ大学と連携をとり、将来 的には人材交流など行っていく話を頂きました!大変刺 激になり、今後は当教室も国際的に通用する医療を行っ ていこうと、励みになりました。 懇親会にて 火 当科外来表 2014年6月〜 木 午前 専門分野等 午後 午前 午後 産業医科大学病院 紹介、初診、 紹介、初診、 再診(予約) 再診(予約) 再診 再診 田中文啓 宗知子 岡壮一 平井文子 竹中賢 桑田泰治 気管、肺、 縦隔 田中文啓 宗知子 平井文子 岡壮一 竹中賢 黒田耕志 桑田泰治 体表、一般 岡壮一 黒田耕志 岡壮一 桑田泰治 乳腺、胸壁 永田好香 田嶋裕子 永田好香 田嶋裕子 永田好香 田嶋裕子 産業医科大学若松病院 火 木 午前 午前 紹介、初診 再診(予約) 紹介、初診 再診(予約) 気管 肺 縦隔 桑田泰治 黒田耕志 乳腺 胸壁 桑田泰治 黒田耕志 専門分野 等 【紹介の仕方について】 NO 時間外 NO 当院に電話連絡の上、当直 医に相談して下さい。 TEL: 093‐603‐1611 ■代表093-761-0090 ■内線6050 ■外来医長:黒田耕志 緊急患者 YES YES 宗知子 ■直通093-691-7320 ■内線3211 ■診療科長:田中文啓 ■副診療科長:宗 知子 ■外来医長:竹中 賢 ■病棟医長:竹中 賢 ■医局長:宗 知子 当院医療連携室に電話にて紹介受診連絡 をして下さい。 TEL: 093‐691‐7666 当科外来に連絡の上、外来担当 医に相談して下さい。 TEL: 093‐691‐7320 【当科医局員外来派遣病院】 ※呼吸器・胸部疾患において、下記病院外来でも当科医局員が外来紹介患者対応をさせて頂きます。 産業医科大学若松病院、済生会八幡総合病院 、正和なみき病院、正和中央病院、新中間病院、牧山中央病院、 大平メディカルケア病院、西尾病院、浜崎病院、中井病院、八幡慈恵病院、おんが病院 産業医科大学第2外科 〒807‐8555 福岡県北九州市八幡西区医生ヶ丘 1‐1 TEL (093) 603‐1611 / FAX (093) 692‐4004 E‐mail : j‐2geka@mbox.med.uoeh‐u.ac.jp HP : http://www.kitakyusyu‐gan.jp/
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