Q&A Novel Biomarkers for Acute Myocardial Infarction: Is MicroRNA the New Kid on the Block? Q&A 急性心筋梗塞の新規バイオマーカー:マイクロ RNA は新規候補になりえるか? 急性心筋梗塞(AMI) の早期発見は、心筋の更なる損傷を防ぎ、保護するための治療方針 を決定するのに非常に重要です。アメリカ心臓病学会のガイドラインでは AMI の診断基 準として、画像検査や心電図で MI の兆候または虚血のどちらかが認められ、健常者集 団(約 10%以下の不確かさ)と比較して、少なくとも 99%以上のトロポニンの増大や 減少がみられるとき、としています。ここ数年間で、クレアチニンキナーゼ MB 試験は、 トロポニン試験の新しい方法として確立されており、いまや高感度分析は心筋壊死の最 適な指針として認められています。確かに、改良された高感度トロポニン試験の分析感 度は、心筋損傷検出の閾値を低くし、pg/L オーダーの少量でも検出できるようにし、早 期診断を期待させるようなものです。感度のいい診断基準を得ることで、特異的な診断 にかかる費用を減らすことに成功しました。しかし、まだ高感度分析の課題として、も っと大きな健常人集団におけるトロポニンの定量が必要です。 これらの試験は、他の病 態生理学観点に基づく心筋細胞死も検出します。例えば、心筋症、心筋炎、腎不全、ま たうっ血性心不全や肺塞栓症があげられ、組織損傷機序の違いは区別されていません。 そのため、MI 重症度の違いを区別するには限界があります[例えば、ST 部分上昇心筋梗 塞(STEMI)と non-STEMI の区別]。したがって、臨床現場への高感度トロポニン試験の 導入は、急性胸痛を訴える患者を治療する臨床医に混乱を与えました。ゆえに、理想的 なバイオマーカーの特定に伴う、迅速で確実な AMI の発見はいまだに実現していません。 ここ数年間で、AMI の新しいバイオマーカー候補として、循環マイクロ RNAs (miRNAs)に注目が向けられています。miRNA は、一本鎖で、非翻訳領域の小さなリボ 核酸(長さは約 22 核酸ぐらい)で、タンパク質コードの遺伝子のイントロンに位置し、遺 伝子を不活化することでタンパク質合成を抑制します。最近の動物と臨床実験で miRNAs は、冠血管イベント発症後、血清中濃度の一過性上昇が認められることが示さ れています。近年の臨床データの爆発的な増加は、循環 miRNAs が診断だけでなく、生 存率とアテローム硬化性負荷を予測するのにも有用なことが示されています。特定の miRNA アイソフォームは、もっぱら AMI 発症後に循環しはじめ、高感度分析によると トロポニンが測定されるよりもすばやい放出が認められます。さらに、循環 miRNA は、 臨床的にも高感度で特異的な期間において、高感度トロポニン試験と同等の有用性をし めします。また、miRNA 試験は、心臓バイオマーカーと一緒にテストした時や、単独 の試験でも、診断能力の向上をしめします。加えて、独特な miRNA の痕跡パターンが 発見され、正確に非 STEMI 患者と STEMI 患者を区別できるようになりました。この 鑑別は、急性期の治療方針の決定にとても重要です。 この Q&A では、4 人の miRNA 専門家に質問しました。彼らは冠血管動脈疾患における、 AMI 確定試験での循環 miRNA の有用性に注目しており、この可能性に満ちた強力な新 しいツールに関する利点、適応、応用また限界にも焦点をあてています。 ■迅速で信頼感の高い AMI 診断のための理想のバイオマーカーは、いまだにないと思 いますか?今日使われている最も最適な MI 診断テストの問題点は、なんだと思います か? Katey Rayner: AMI の迅速かつ正確な試験の必要性は臨床現場で明ら かで、今日使われているトロポニン(また測定できる他の心筋酵素)は、 AMI の有無を正確に予測します。それに対して、安定性冠血管疾患と、 もっと重要な不安定性冠血管疾患の迅速で効果的なテストはまだあり ません。私の考えとしては、miRNAs は心筋酵素量に強く相関してお り、確かに AMI の発病を示しますが、miRNA に基づく測定は確定診 断には結びつかず、新たな情報を得ることはできないでしょう。一方 で、破裂の危険性がある不安定プラークを同定するマーカーは緊急性 が必要とされており、miRNA はこの測定に有用かもしれません。 Stephanie Dimmeler: AMI の早期の高感度検出のための信頼度の高 いバイオマーカーはすでにあり(高感度トロポニン分析)、私は循環 miRANs が日常の検査にトロポニンより向いているとは思いません。 おそらく miRNAs の放出はトロポニンより早い段階で起こります (AMI の早期検出に役立つでしょう)が、まだ明確になっていません。 George A. Calin: MI の多くのマーカーの診断特異性の欠落は、ひとつ の問題点です。一方で、いくつかの miRNAs は組織特異的な発現を示 し(例えば、miR-133 ファミリ―)、特異的マーカーの同定を行なえる ような高発現部位があるため、心筋壊死の早期段階のマーカーとして 使用できます。また、もし miRNA に関連しない新たなマーカーは高 特異的なものとして同定されたならば、miRNA 発現のようなマーカ ーと一緒に測定することで MI の予測が可能になるかもしれません。 Thomas Thum: 一般的に、近年の MI 検出法の感度と特異性を越える ことは、特に高感度トロポニンと比較したとき、難しいと思います。 しかし、新たなバイオマーカーが非常に便利な場面はいくつかあり、 例えば、たこつぼ型心筋症や様々な型の心筋炎のような他の心筋障害 を伴う心疾患の検出です(従来のバイオマーカーの上昇も認められます)。 ■なぜ、翻訳 miRNA の循環器系への臨床適応に大きな注目が集まっているのでしょう か? Katey Rayner:循環器系疾患の治療に miRNA に基づいた方法を用いることへの期待の高 まりは、抗 miRNA 標的化の指針の急速な発展によるものです。ここ 5 年間で、 miRNAs はほ乳類でも発見され、“アンタゴ mir”は人ではない霊長類で miR-122 阻害 と血清中総コレステロール値を効果的に下げるために使われ、抗 miR-122 の臨床試験適 応への大きな一歩となりました。miRNA の生態理解は、阻害剤技術の発展に対して大 きな遅れをとっていると言えますが、多くの研究室が循環器系疾患における特異的な miRNAs の法則を立証しており、臨床試験に適応できるような発見をしています。一回 につき一遺伝子または一分子を標的化したような方法( つまり低分子や薬理学的なものに 基づいたもの)とは異なり、miRNA に基づく治療は、同時にいくつかの遺伝子に作用す ることで全体の反応を調節し、効能終了が遅くなり、効果の持続が期待できます。 Stephanie Dimmeler: miRNAs は遺伝子の発現ネットワークを変化させ、おおきく病気 を制御しています。さらに、薬理的低分子阻害剤は miRNAs の標的になり、治療方針の 決定テストを簡単に行なえるようにするでしょう。一般的に miRNA 阻害剤は、近年の フェーズ II 試験(肝炎治療)で安全に使用されています。そのため、miRNA 阻害剤は循環 器系疾患でも有用になるかもしれませんね。 George A. Calin: miRNA は、いままで研究され、測定された疾患における生態反応のど んな過程でも含まれています。だから、いまだ未解決の臨床的な問題、例えば治療反応 性を予測するための答えとなるような、miRNAs に基づく新しい治療方法を確立させる のに、ほかの新しいバイオマーカーも同様に、おおきな努力とその蓄積が捧げられてい ます。近年発表されたタイプⅠ型 C 型ウイルス感染の慢性肝炎患者における、 miravirsen(抗 miR-122、高親和性肝 miRNA アンタゴニスト)のフェーズ II では、ウイ ルス耐性を引き起こすことなく容量依存的に肝 C ウイルス RNA 量の減少を示し、確か に新しい治療法を予感させるような結果でした。 Thomas Thum:このような爆発的な注目は、近年の診断から治療に結びつける方法の発 展のなかでみられます。miRNA 標的は、とても魅力的な治療標的に分類されており、 たくさんの疾患動物モデルの研究で、miRNA のおおきな可能性が示唆されています。 確実に、近い将来、私たちはヒトにおける miRNA の臨床試験を目にするでしょう。 ■miRNA にたくさんの型が発見されてきています。循環 miRNAs の異なる型の発見で 心筋障害の影響が発見されましたが、どのような厳密な方針が、バイオマーカーとして の有用性を決定するために必要であり、どのタイプの miRNAs がそれらの基準をみたす と思いますか? Katey Rayner: MI のバイオマーカーとして miRNA を考えるとき、最も重要な指針は、 miRNA はさまざまな病変の結果として血清や細胞外間隙には見つけられるものではな いということです。つまり、心筋イベントの診断につかわれる miRNA は、肝疾患、腎 不全、糖尿病などの合併症の患者では検出されるべきものではないのです。miRNA に 基づく診断テストを煩雑にするような、いくつかの合併症に苦しむたくさんの冠動脈疾 患の患者で、この指針は特に重要になります。最近では、さらなる大規模集団でのテス トが必要ですが、miR-1/133 と miR-208b は、AMI 患者と健康な対照集団を見分ける正 確性と感度で、一歩先を行っています。 Stephanie Dimmeler:最終結論をだすには、まだ早すぎます。私たちの最近の測定法と 正規化したプロトコールは理想からほど遠く、測定手順の向上は、miRNA をバイオマ ーカーとして確立するのにとても役立つでしょう。有用性を定義するような指針はほか のバイオマーカーとおおきな違いはなく、単純に広範囲のテスト(結果を確証するような) を大規模臨床試験で行なう必要があります。 George A. Calin: ホルモン作用として循環 miRNA 活性がみられるように、ひとつの重 要な実用的な意義は、健常人でさまざまな発現が広く認められることです。つまり、循 環 RNAs の“通常”濃度は、年齢、性別、生理学的事象(例えば初潮や妊娠)など人によ っておおきく異なり、また、環境温度やストレスなどのさまざまな“外因的な”因子に 影響されます。この観点からの実用的な意義は、どの研究でも健常人とがん患者からの さまざまタイプの体液の miRNAs 発現を比較している点であり、年齢、性別、人種など を“一組にする”研究デザインでは、少なくとも患者の 2 倍の人数の対象群をおくこと が重要です。このような場合、健常人での有り余る発現多様性も評価可能で、疾患グル ープ(この場合 AMI)との比較は、より意義のあるものになり、独立したグループでも再 現性があるものになるでしょう。miRNA をマーカーとして使用するのにもっとも良い 点は、心筋組織での排他的な発現であり、次世代シークエンス発現プロファイルがこの ような miRNAs の同定に役立つでしょう。 Thomas Thum: まず重要な点は、結果の正規化です。本物の王道の正規化基準はまだな く、“安定した循環”miRNA は知られていません。ほとんどの研究者は、miRANs の 対照群をおおきく増やすことで正規化しています。あるひとつの miRNA が、従来の MI バイオマーカーよりもいいものだとは、私は思いません。しかし、miRNA マーカー、 たとえば心筋細胞障害、炎症、または血管内皮細胞や繊維芽細胞の変化などに特異的な miRNAs を組み合わせることで、MI イベントで起こっていることの何かを示し、治療 に変化がうまれるかもしれません。 ■循環 miRNA レベルの決定メカニズムに関する身体的な状態や刺激にたいする反応に ついての論文では、いくつかの議論があげられています。この議論に焦点をしぼって、 生理的な因子として何が知られているかを説明していただけますか?心筋障害が引き金 になるのでしょうか、それとも怪我それ自体が要因で放出されるのでしょうか? Katey Rayner: ある刺激の反応としてタンパク複合体とともに、エキソソームや微小胞 などの細胞から活発に分泌されている miRNAs の例はたくさんあります。アポトーシス 小体にも miRNAs は含まれていますが、これら miRNAs が特異的にアポトーシス小体 に入っているかどうかはまだわかっていません。パラクリン分泌で、近くのまたは離れ た細胞のメッセンジャーとして miRNAs が働いていることは、おおいにありえますが、 詳しいメカニズムはまだ不明です。MI の場合、miRNAs が心筋障害の損傷細胞のシグ ナルとして分泌されている可能性は十分に考えられ、おそらく損傷部では遊走する前駆 細胞、または炎症細胞が検出されるでしょう。このような miRNAs がバイオマーカーと して使われるとき、この過程が特異的か非特異的かはそれほど重要ではありません。最 も重要なことは MI を予測できることです。メカニズム的に、ある miRNAs が損傷で反 応変化を起こすとすれば、miRNA または代替治療法を利用することで、治療効果に影 響を与えるかもしれません。 Stephanie Dimmeler: 一般的に、miRNAs は異なる共存するメカニズムによって放出さ れますが、いくつかの miRNAs には優先的な経路があるようです。私たちの研究では、 小胞に含まれた miRNAs は、他の経路から分泌される miRNAs より優先されることが 示されています。しかし少ないですが、たんぱく結合した miRNAs [例えば、argonaute (Ago 2)]やリポプロテイン結合 miRNAs も検出されています。生理学的な長距離コミュ ニケーション機能のような本来の機能は、まだ不明で、vivo での研究をするのは難しい です。 George A. Calin: ホルモン作用として循環 miRNA をみたとき、注目すべき点が 2 つあ ります。1つは分泌段階で、エキソソーム、微小包体やアポトーシス体の中に miRNAs は存在し、Ago2 たんぱく質や HDL 複合体による分泌も同様で、いくつかのメカニズム の結果、miRNAs は分泌されます。すべてこれらの分泌様式は非常に安定した体循環 miRNA を形成し、そのためとても測定しやすく、利用すべき点です。2つめは、エフ ェクター細胞への作用様式です。その作用様式とは“従来の”反応メカニズム、つまり 配列相補性を介した mRNA の標的化であり、mRNA 分解または翻訳の阻害によって、 どちらもたんぱく発現の減少につながります。予想だにしなかった新しいメカニズムと して、miRNAs がガン細胞の Toll 様受容体やアルツハイマー病の直接のアゴニストの役 割が近年同定されています。このようなメカニズムは、様々な循環器系疾患の患者でも 高い確率でみられるでしょう。 Thomas Thum: たくさんの miRNA は安定化した Ago2 複合体にすでに結合しており、 虚血などの結果、細胞膜が破壊されたのちに、この安定型で放出されます。加えて、ア ポトーシス体や小さなエキソソームなどから miRNA は盛んに分泌されています。循環 miRNAs は他の標的細胞に取り込まれ、生理的な作用(ホルモンのような)をしめし、結 果として、パラクリン様活性を示します。興味深いことなのですが、詳細メカニズムを 知るために、まだたくさんの追加研究が必要となります。 ■新しい MI バイオマーカーとして、急性または慢性疾患の患者の管理の診断ツールに miRNAs を使用すべきだと思いますか?トロポニンのように、近年の診断基準を miRNA が満たすと思いますか? Katey Rayner:ほとんどの miRNA は AMI 患者のトロポニン濃度と、とても強い相関が あります。miR-208b はトロポニン T よりも血漿中に早く現れているエビデンスがいく つかありますが、まだ結論はでていません。もし特定の miRNAs の発現が心筋酵素より も早いのならば、そのような miRNAs の使用(単独、またはいくつか合わせるほうが多 い)は強力なものになるでしょう。しかしすでに述べたように、本当の循環 miRNA バイ オマーカーの能力は、MI が起こる前に、安定型または不安定型冠状動脈疾患の検出また は診断することができることです。この能力は現在の臨床現場では欠落しています。 Stephanie Dimmeler: 循環 miRNAs は、近年の有効なバイオマーカーでは十分に行えな い、階層化と病態の危険度予測に有用かもしれません。例えば、不安定プラークの患者 の同定で、このような患者は、破裂と MI のおそれが高く、高感度トロポニンでは陰性 になります。 George A. Calin: 一つの側面として、心疾患を含めたどのようなタイプの急性や慢性疾 患の血漿で miRNAs の定量が重要なのかが、まだ十分に認められていないということが 言えます。miRNAs の濃度はホルモンとして機能するには、それぞれ特定の濃度が必要 であり、特異的な発現パターンをもって私たちは生まれてきました。そのため、 miRNAs の血漿濃度の測定は、個人の遺伝的な要因も示すものも含んでおり、単純で簡 単な測定によって治療反応性を予測するようなものになるでしょう。 Thomas Thum: miRNA による診断の利益は、特に慢性疾患において、大きなものにな ると思います。心臓に焦点を当てると、心不全や合併症のさまざまな形態ごとの診断に それぞれ miRNAs の特定のパターンが発見されるでしょう。循環 miRNAs のパターン は、例えば進行型心筋内繊維症のような慢性心不全で、心臓内で今まさに起こっている 生体イベントについて教えてくれます。さらに、循環 miRNAs の予後診断力はすでに研 究されています。将来的に、もっと大きな患者コホートでの結果を目にすることになり、 実際の臨床現場で循環器系疾患において miRNAs 利用に対する答えがでてくることにな るでしょう。 ■miRNAs は AMI 患者の血漿で目覚ましく、独占的に増加することが報告されていま す。miRNAs 濃度は臨床現場で定量的または定性的に解釈される機会が増えるべきでし ょうか、またなぜですか?健常人集団と患者集団の上限カットオフ値と基準範囲は、結 果を評価するのに有用でしょうか? Katey Rayner: 最終的に、MI のバイオマーカーとして使われる前に、すべての miRNA の“正常値”濃度の幅は、大規模集団で経験的に定める必要があります。そのためには 標準化された手順で行われるべきで、たくさんの団体で検証が必要とされており、“ベ ッドサイド”試験の形が理想的です。できあがるまでは、miRNA 濃度の正常、非正常 の判断は不可能です。さらに、心筋特異的 miRNA(miR-208 のような)は理想的であり、 血漿中の miRNA の存在有無が組織障害や病態に依存的であっても、不明瞭な部分は減 るでしょう。 Stephanie Dimmeler:日常的に臨床で使うには、カットオフ値を明確にし、日々の変動 に対応できるような定量法が必要です。現在の技術は、現存のサンプルコホートの測定 は可能ですが、標準化にはまだ至っていません。定量に組み換え miRNAs を使用したり、 PCR 測定による規格化に miRNAs のスパイクを使ったりすることは、循環 miRNAs の ベッドサイド測定を行なうためには不十分です。 George A. Calin: 濃度は定量的に測定されるべきで、健常人集団と患者集団の基準範囲 も設定が必要です。非常に高感度な法である定量的逆転写 PCR で、miRNAs は健康集 団の特異的な条件下で検出されるでしょう。(例えば、過酷なトレーニング後、運動選手 は“偽性 AMI”血漿 miRNAs を示すでしょうか、またその濃度はどれくらいでしょう か? Thomas Thum: miRNAs が臨床検査薬として使用されるとしたら、基準の限界を設けな ければなりませんが、PCR 基盤の検出システムを使っても難しいでしょう。ほかの検査 室でも比較可能なような基準はさらに難しいでしょう。しかし、半定量的な方法ならば 可能です。基準範囲は、健常人集団だけでなく、患者個々でも必要となってきます。 ■どの最先端の技術が miRNA 測定に使われているのでしょうか?主要な分析に関する 問題点や限界はなんですか?至急または至急ではない臨床現場で、信頼できる miRNA 測定のために、どの技術を向上させる必要があるでしょうか?ポイントオブケアは現実 的だと思いますか? Katey Rayner:最近では、miRNA のもっとも迅速な測定法は、定量 PCR です。遺伝的 な物質の測定(miRNA )による診断基準の発展は Nanostring 社によるもので、最近では 24 時間以上測定にかかることもあり、MI の診断の理想にはそぐいませんが、より慢性 的病態の状態把握に適すでしょう。CYP2C19 対立遺伝子の個々の遺伝子系の判定(冠動 脈イノベーションでの抗血小板治療の方針決定に役立つ)に、ポイントオブケアで“迅速 な遺伝子”テストが最近使われており、ベッドサイドでの迅速な miRNA 濃度の測定は 現実的であることを示しています。確かに、遺伝子型判定に使われている技術と miRNA 検出に大きな違いはなく、想像するより早く現実になると思います。 Stephanie Dimmeler: まだでしょう。最近では、ほとんどの検査室で PCR 基盤の技術 が使われていますが、ほかの技術も同様に使えます。PCR は非常に高感度ですが、標準 化が難しいです。ほかの技術は、再現性を得るのと標準化がより簡便になっています。 しかし、感度は下がります。この分野はまだ新しく、もっと発展させることが必要で、 また可能でしょう。 George A. Calin: CLIA 認証の検査室で使われているような探索医療の技術としては、特 異性があり、実行しやすく、再現性があり、また低コストの定量逆転写 PCR です。欠点 のひとつは、多数の独立したセットサンプルを使えるような、便利な規格化されたもの を見つけるのが難しい点です。代替案として、均一に同程度の質でサンプル評価ができ る非ヒト miRNAs のスパイクを使うことですが、あまり例としては一般的な方法ではあ りません。ほかの代替法としては、費用はかかりますが、より強力な small-RNA シーク エンスであり、今まで報告されてなかったような新しい miRNAs を同定することができ ます。 Thomas Thum: もっとも使われている技術は、miRNAs をリアルタイムで測定するよう なものです。ほかにはマイクロアレイ検出を含む技術や数珠つなぎになった技術があり、 蛍光活性細胞分類技術として使われています。miRNAs の POCT は開発されるでしょう が(2 時間)、うえで述べたように、これは慢性疾患の診断でより威力を発揮するでしょう。 ■AMI に対する循環 miRNAs 試験は、5 年以内に現実になると思いますか?もしそうで なければ、miRNAs テストの理解でなにが一番の問題なのでしょうか? Katey Rayner: 循環miRNAがAMI診断テストに広く使われるようになるには、今日使わ れているものより改良され、またより早く(また、たぶんより安く)する必要があります。 あるmiRNAは今後トロポニン測定より、より価値あるものになるかもしれません。たく さんのmiRNAパネルは、心筋マーカー測定に確かな根拠を与え、より測定が簡便になる ことでしょう。反対に、もし不安定性冠動脈疾患を予測できるような一つのmiRNAや miRNAのパネルが同定できるのならば、臨床現場で、直接的な治療に結びつくほど、と ても重要なものになります。これからの話が現実になるためには、それぞれの循環 miRNAで基準化と商業的な利用法を模索する中で、"正常値"の範囲を経験的に設定する 必要があります。確かに、1時間以下の迅速な伝達、素早い結果が得られるポイント・オ ブ・ケアテストでmiRNAは有用です。もし、これらの指針が出来上がった時、循環 miRNAは急性及び慢性冠動脈疾患の診断で大きな力を示し、調節不全miRNAを標的にし た新しい治療法が確立するかもしれません。 Stephanie Dimmeler: AMI のようなものではなく、他の疾患で有用かもしれません。主 な問題は素早く感度よく、しかし安定した基準化された方法の確立で、そのような方法 が日常の現場で使われるでしょう。さらに、測定に影響する交絡因子を同定するような テストをしなければなりません。 George A. Calin: 臨床現場での発達したシークエンス技術のおかげで、もっと多くの miRNAs が数年以内に同定されるでしょう。そのため、これからの 5 年間で、miRNAs は急性及び安定した疾患で、予後予測因子として発見されていくでしょう。もっとも重 要な点は、慢性疾患の予後診断で、miRNAs はここ 5 年間のうちに、現実的に使われる ようになるでしょう。 (訳者 Footnotes 9 Nonstandard abbreviations: AMI, acute myocardial infarction; 姚 肇瑾) STEMI, ST-segment elevation myocardial infarction; miRNA, microRNA; Ago2, argonaute 2. Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the published article. Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the author disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of interest: Employment or Leadership: E.P. Diamandis, Clinical Chemistry, AACC. Consultant or Advisory Role: S. Dimmeler, MiRagen. Stock Ownership: None declared. Honoraria: None declared. Research Funding: S. Dimmeler, Deutsche Forschungsgemeinshaft (SFB834 B1). Expert Testimony: None declared. Patents: None declared. Received for publication October 17, 2013. Accepted for publication October 22, 2013. © 2014 The American Association for Clinical Chemistry
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