6Q-10 インタフェースエージェント間の知識共有による ドキュメント管理

6Q-10 インタフェースエージェント間の知識共有による
ドキュメント管理システムの実現
水谷篤志 水口卓也 大囿忠親 新谷虎松
名古屋工業大学知能情報システム学科
E-mail: atsushi@ics.nitech.ac.jp
1 はじめに
近年の計算機やネットワークの普及に伴い,グル
ープでの作業におけるドキュメントの管理が重要に
なってきている.ここでドキュメントは電子化され
た情報を指す.また,今まで個人に蓄えられていた
情報や知識をグループ全体のものとしてとらえて活
用するために,グループ知識ベースやノウハウ共有
システムが研究されている.
本論文では筆者らの研究室で行った情報の取得に
関するアンケートの結果を紹介し,そこから得られ
た問題点を解決するために開発した,インタフェー
スエージェント間の知識共有によるドキュメント管
理システムの概要を示す.
1.1 研究室における情報管理
今回,研究室における情報の取得に関する問題点
を明確にするためアンケートを行った.始めに,研
究室において知りたいと思った情報はどんなものか
という問いに対して,多かった解答を順に挙げる
と,計算機やアプリケーションの設定方法,トラブ
ルの対処方法,論文の体裁や書き方,研究室行事の
日程であった.次に知りたい情報をどうやって得よ
うとしたか,という問いに対して,研究室内の人に
直接聞く,文献等で調べる,W ebで調べる,の順で
解答を得た.ここで直接人に聞くという解答が多い
のにも関わらず,人に聞く勇気がなくて聞けなかっ
たという解答もあった.さらに,直接人に聞いて
も,質問がうまく相手に伝わらなかったり,相手の
解答を理解できなかったなどの,人と人とのコミュ
ニケーションに関する問題も指摘されていた.
以上のようなアンケートの結果,人に直接聞くの
が負担であること,人間間で知識を共有することが
困難である傾向があることがわかった.そこで本研
An Implementation of Document Management System
using Knowledge-Sharing among Interface Agents.
Atsushi Mizutani, Takuya Mizuguti, Ozono Tadatika,
Toramatsu Shintani, Nagoya Institute of Technology, Dept.
of Intelligence and Computer Science, Gokiso, Showa-ku,
Nagoya, 466-8555, JAPAN.
究では,研究室における多様な情報を複数のインタ
フェースエージェントが管理し,インタフェースエ
ージェント間でドキュメントに関する知識共有を行
うことによって情報の連携を可能にするドキュメン
ト管理システムを実現する.
本論文では,ドキュメント管理システムを構成す
る各エージェントの機能と,それらのエージェント
がどのように連携するのかを中心に述べる.
1.2 ドキュメント管理システムの概要
ドキュメント管理システムは研究室内の情報を管
理する複数のツールによって構成されている.これ
は新たな情報を扱うツールの追加を容易にし,シス
テムの拡張性を高めるためである.情報管理ツール
にはソフトウェアのアーカイブ管理ツール,W ebに
研究室の成果を登録するための論文管理ツール,研
究室内の文献やマシンに割り振るIPアドレスなどを
管理するリソース管理ツールなどがある.個々のツ
ールで管理されている複数の異なった情報を連携さ
せるために,各ツールごとにラッパーとしてインタ
フェースエージェントが用意されている.このエー
ジェントを情報管理エージェントと呼ぶ.情報管理
ファイルフォーマット
管理エージェント
スケジュール管理
エージェント
知識交換
論文管理
エージェント
ユーザインタフェース
エージェント
ユーザインタフェース
エージェント
共有知識
ユーザ
ユーザ
図1: システム構成図
エージェントは情報に関する知識を他のエージェン
トと交換することによって,ユーザに有益な情報を
提供する.また,研究室内の各ユーザにもインタフ
ェースエージェントが用意されている.これをユー
ザインタフェースエージェントと呼ぶ.図1にシス
テム構成図を示す.
2 インタフェースエージェントに基づくド
キュメント管理
ドキュメント管理システムは複数のインタフェー
スエージェントによって構成される.本章では実現
したインタフェースエージェントのいくつかを説明
する.
2.1 インタフェースエージェント
(1)論文管理エージェント
研究室の成果である論文の情報をW ebに登録し,
それを管理するエージェント.ユーザはエージェン
トが指定する書式に従って論文情報を書く.論文情
報には著者名,タイトルなどがある.ユーザは論文
情報をE-m ailで論文登録エージェントに送信する.
論文登録エージェントは受信した論文情報を解析
し,H T M L ファイルに情報を追加する.E-m ailに研
究室の標準であるPD Fフォーマットの論文が添付さ
れていたら,そのファイルを特定の場所に置き,
H T M L ファイルにはそこへのリンクを記しておく.
(2)ファイルフォーマット管理エージェント
研究室で扱うファイルフォーマットに関する知識
を持ったエージェント.このエージェントはファイ
ルのフォーマット変換の方法を知っている.
(3)スケジュール管理エージェント
研究室内のスケジュールを管理するエージェン
ト.スケジュールを登録,削除,参照したいユーザ
は制約スクリプト言語の書式に従って書かれたema
ilをスケジュール管理エージェントに送信する.
e-m ailを受信したスケジュール管理エージェントは
スクリプトを解釈し,実行する.また,制約スクリ
プト言語によって会合などのスケジューリングを行
うことができる[1].
(4)ユーザインタフェースエージェント
研究室内の各ユーザごとに割り当てられるエージ
ェント.ユーザインタフェースエージェントには,
情報管理エージェントへの入力,またはそこからの
出力に柔軟性を持たせる,または複数の情報管理ツ
ールをユーザに意識させずに利用させるといったイ
ンタフェースとしての側面がある.また,システム
に対するユーザの好みを反映させる役割もある.
2.2 知識共有に基づくインタフェースエー
ジェントの連携
インタフェースエージェントはメッセージ通信に
よって互いに通信し,K Q M L を用いて知識を交換す
る[2].以下に複数のインタフェースエージェントが
連携して,ユーザに論文を登録させる例を挙げる.
スケジュール管理エージェントは過去のスケジュ
ールから学会の論文締め切り日が近いことを知り,
そのことをユーザインタフェースエージェントに通
知する.通知されたユーザインタフェースエージェ
ントはユーザに,ユーザにとっての論文締め切り日
を訪ね,その締め切り日をスケジュール管理エージ
ェントに折り返し通知する.次にスケジュール管理
エージェントは事前に論文管理エージェントから論
文締め切りが分かったら通知してくれるように依頼
されていたので,論文締め切りを通知する.ユーザ
が論文を投稿し終わったら,論文管理エージェント
はユーザインタフェースエージェントに論文を登録
するように催促する.その際,論文管理エージェン
トはユーザがファイルフォーマットの変換に困らな
いように,ユーザインタフェースエージェントにフ
ァイルフォーマット管理エージェントを紹介する.
ユーザはユーザインタフェースエージェント,ファ
イルフォーマット管理エージェント,文献管理エー
ジェントを通して論文登録を完了する.以上がイン
タフェースエージェントの連携の例である.
3.おわりに
本研究では,インタフェースエージェント間で知
識を共有することによって,エージェントが管理し
ている情報を活用するドキュメント管理システムを
実現した.本稿では研究室内の情報を管理するイン
タフェースエージェントの機能,また知識共有に基
づくインタフェースエージェント連携の例を示し
た.今後の課題として,情報管理エージェントが用
いる知識をシステム実装時にプログラマが追加し
た.情報管理エージェントへの知識の追加をエージ
ェントが支援するような枠組みを現在検討中であ
る.
参考文献
[1] 鶴田拓生,新谷虎松,“制約スクリプト言語に
基づくグループスケジュール管理エージェントの
実現”,情報処理学会第57回全国大会,1998.
[2]水口卓也,水谷篤志,大囿忠親,新谷虎松,“イ
ンタフェースエージェントによる知識共有アーキ
テクチャにつて”,情報処理学会第57回全国大 会,1998
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