Object Force の 概 要 (藤岡智和 2004.06.17) 1 WWⅡ以降における米国戦略思想の変遷 (1) 全 般 WWⅡ後最初の米国戦略の基本は「大量報復戦略」であった。 この戦略では米国及びその同盟国に対する攻撃には、戦略核兵器の大量使用による報復で対抗するとしていたが、朝鮮戦争、イ ン ドシナ戦争、ベルリン封鎖のいずれでも戦略核兵器の使用はできず、この戦略は全く機能しなかったことから、限定核戦論が 台頭し 、更に通常兵力だけで成り立つ戦略へと移行していった。 冷戦間の米国は朝鮮半島や東南アジアを舞台とする戦いを繰り返していたが、戦略思想を決める舞台は常に東西ドイツ国境を挟 む 中部ヨーロッパ正面であり、当時圧倒的に優勢であった東側の機甲戦力による攻撃をいかにして止めるかの戦い方が全ての基 本であ った。 米陸軍の戦略教義を記したマニュアルである「FM100-5 Operations」は、戦後度々改訂されてきたので、ここに戦略思想の変化 と 、兵器システムに対するユーザ要求の変化を見ることができる。 (2) Fallback : 1950年代初期 この時代ではワルシャワ機構軍の進撃を、東西ドイツ国境から独仏国境までの縦深と核兵器を利用した阻止火力で阻止し、独仏 国 境を最終阻止線とする戦略が考えられていた。 優勢な機甲部隊の進撃を縦深で逐次減殺しながら阻止するとするこの考え方は、戦術的には定石である。 しかしながらこの戦い方は、西ドイツにとって戦術核兵器使用をも含む戦場になるだけで何のメリットもないものであり、西ド イ ツからの強い反発を受けていた。 (3) Trip Wire : 1960年代中期 Fallbackのジレンマを解決するため、最終阻止線を東西ドイツ国境としたのがこの考え方である。 優勢な敵の機甲部隊を現在の接触線から入れないとする戦術的な矛盾を解決するため、米軍は FLOT (Front Line of Own Troops: 彼我接触線) から東ドイツ、ポーランドの一部を含む敵方深くへ核による阻止火力に期待した。 (4) Active Defense : 1970年代中期 「FM100-5 Operations」には改訂の都度サブタイトルが付いていた。 1978年版のFM100-5のサブタイトルは「Active Defense」と 付けられていたため、この戦略思想を「Active Defense」と呼ぶようになった。 Active Defense の大きな特色は、非核通常戦力で Trip Wire が目指した東西ドイツ国境での阻止を成り立たせる作戦であり、 こ れを成り立たせるために FLOT における濃密な対戦車火力の構築を大きな柱にしている。 この構想を成り立たせるために、まず AH-1 ヒュイコブラが採用された。 AH-1 はそもそもベトナム戦争で UH-1 の掩護用と して 、エンジン、ロータその他の構成品を UH-1 からとって急遽作られた攻撃ヘリであったが、Active Defense ではこれに対戦 車ミサイ ル TOW を搭載した対戦車ヘリとして採用した。 この他にも Active Defense は A-10 攻撃機をはじめとする各種兵器開発の原動力となり、空地が一体となる対戦車戦闘という 新 しい空地戦様相を打ち立てた。 (5) Airland Battle : 1980年代末期 1982年版 FM100-5 のサブタイトルは同じ Active Defense であったが、その内容から Airland Battle と呼ばれた。 そもそも機甲部隊が、長期間、長距離の攻撃には適さない戦車を使って、その衝力を持続しつつ攻撃を行えるのは、挺隊攻撃と い う戦法を取るからである。 挺隊攻撃ではまず第1挺隊中隊の戦車群が攻撃を開始し、第1挺隊中隊の衝力が落ちる前に第2挺隊中隊が第1挺隊中隊と入れ 替 わって(超越して)攻撃を継続する。 第2挺隊中隊の攻撃衝力が落ちる段階で第1挺隊大隊の攻撃は終了で、第2挺隊大隊がこれを超越して同様の攻撃を繰り返す。 第1挺隊連隊の攻撃が終了し第2挺隊連隊が投入されれば第1挺隊師団の攻撃は終了である。 東側の優勢な機甲集団の攻撃衝力を減殺するために、敵の第2挺隊師団を火力で制圧しようとするのが Airland Battle の基本 的 な考え方であった。 ソ連機甲師団の縦深は一般的に 30~ 40km、軍団の縦深は 100kmであるため、第2挺隊師団は第1挺隊師団の後方即ち 50km~ 100 kmを追随して来ている。 この戦車集団を長射程ミサイルと精密誘導対戦車子弾により攻撃しようと、当時 DARPA で研究をしていた Assault Breaker / Pave Mover 計画を、それぞれ ATACMS / JSTARS として装備化させた。 MLRS も Airland Battle を代表する兵器であり、この戦略思想のもとで多くの長距離情報取得手段や、対戦車誘導子弾の搭載 が可 能な長距離ミサイルが装備化された。 これらの兵器が後に中部ヨーロッパ以外の戦場であるペルシャ湾岸やバルカン半島において活躍することになった。 この意味 で 湾岸やユーゴでの空地戦様相は、Airland Battle 構想によってもたらされたと言える。 ところで、米陸軍は敵の第2挺隊師団に影響を及ぼそうとする情報手段や火力システムを、陸軍の第1線師団に持たせるわけに は いかなかった。 師団は自分と対峙する敵の第1挺隊師団を阻止するのが精一杯であり、現在は脅威を及ぼしていないその後方にいる部隊を攻撃 す る能力も必要もないからである。 そこで Airland Battle 構想では、これらの情報手段や火力システムを師団の上級組織で ある「 軍団」に持たせることにした。 当時の軍団は戦時にのみ編成される組織であって、平時には司令部しか置いていない組織であった。 そこで軍団を平時からの 組 織に改め、軍団の編成標準を作成し、作戦基本部隊を師団から軍団へ格上げした。 新しい軍団は複数の師団をはじめ、戦車連隊、砲兵旅団、防空砲兵旅団などで構成された。 軍団防空砲兵旅団はそれまでは防 空 砲兵の編成にない組織で、こののち米陸軍防空砲兵は師団防空砲兵大隊と軍団防空砲兵旅団という2つの編成の体制と、それ ぞれの 装備体系を持つこととなった。 (6) 冷戦終結後 ア 世界同時2戦域対処政策 冷戦終了後米国は世界で同時に2つの戦域で発生する事態に対処しうる能力を維持する政策を取っている。 これは明 らかに朝鮮 半島と中東地域を意識したものと見られるが、この政策はWWⅡ後初めて主戦場を中部ヨーロッパ以外の地域 に想定したことに意味が ある。 更に米軍は、ヨーロッパ戦場の様に、平時から強大な部隊を常駐させ、そのうえ予め予想される作戦地域に、緊急時に 米本土から 来援する地上部隊用の装備を備蓄しての戦いと違い、湾岸戦争時のように、事態緊迫後に米本土等から部隊 と装備と補給品を、海路 、空路輸送して行う作戦になるため、当然部隊の装備の質にも大きな影響を及ぼすことになっ た。 イ Force 21 と RMA 冷戦終結後米国では60万の常備陸軍を46万に縮小した。 その対策として1992年に提唱されたのが Force 21 構想で、規模の縮小をセンサ技術とディジタル技術による IT 化で 埋めようとす るものであった。 防弾繊維の戦闘服を着用した歩兵の兵士に、コンピュータや無線機を持たせ、Integrated Helmet Assembly でマンマ シンインター フェスを行わせる "Land Warrior" も、この構想の一環であった。 Force 21 は Army Vision 2010 に発展し、更に全軍規模の RMA (Revolution in Military Affairs) へと進化した。 ウ Objective Force 構想の確立 冷戦終了後、新たな世界戦略を模索していた米陸軍は、その後の湾岸戦争、バルカン半島での戦争の経験から、新たな 戦略構想を樹立 し、1999年10月12日に「陸軍の将来構想」として発表した。 これが "Objective Force" 構想であ 構想であ る。 Objective Force 構想は、陸軍参謀総長 Shinseki大将(写真)によって強力に押し進められ、2001年6月には陸軍の運 用基本マニュア ルである FM-3.0 Operations の改訂版を発刊した。 Objective Force 構想の基本的な考え方は、世界中のいかなる地域で発生するいかなる形態の戦争にも適切に対応可能 な陸軍を目指し 、これに応じて陸軍の情報システム、武器技術、プラットフォームの設計を再構築しようとするもので ある。 この構想では機甲師団等の重装備部隊から軽歩兵師団までの部隊を、ハイテク技術を駆使した装輪装甲車を中心とした 部隊 "Medium Brigade" に改編し、十分な航空基地のない地域にも、部隊をC-130級の輸送機で展開できるようにする。 これにより、旅団は96時間 以内に世界中のいかなる場所にも展開できることを目指している。 冷戦後の局地紛争介入には陸軍の主力である重師団は重すぎ、かといって軽歩兵師団では脆弱であることから提案され た、装輪装甲車 化され装軌車を持たない旅団構想である。 Medium Brigade は、装輪装甲車装備であっても敵の重師団にも対抗できる能力を付与しようとするものである。 ま た、空輸に使用 する輸送機も、整備されていない滑走路に降りられる C-130 に大きく期待している。 例えば、開発中の MEADS は、開発当初から C-130 による空輸ができる能力が要求されているが、 それまで C-5A か C-17 でしか空輸できなかった Patriot にも、ミディアム旅団に随伴できるように C-130 による Ro-Ro (Roll-on Rollout) での空輸能力を付与しようとする計画が進行している。 このように Object Force構想は、冷戦終結に伴う Air Land Battle構想の終焉後約10年間の混迷を経て米陸軍が到達 した、戦略思想 から、戦術ドクトリン、装備構想に至るまで一貫した新たな構想と言うことができる。 この Objective Force 構想を支える装備開発計画が、Future Combat System と Objective Force Warrior である。 2 Objective Force 構想 (1) Objective Force の基本的な考え方 ア 編成の考え方 Objectve Force の編成は、以下のような階層で構成される。 ┏━━━━━━━━━┓ ┏━━━━━━━┓ ┏━━━━━━━━━━━━┓ ┏━━━━━━━━━━┓ ┃Unit of Employment┣━┫Unit of Action┣━┫Maneuver Unit of Action ┣━┫Small Tactical Unit ┃ ┗━━━━━━━━━┛ ┗━━━━━━━┛ ┗━━━━━━━━━━━━┛ ┗━━━━━━━━━━┛ (軍団、師団級) (旅団級) (混成大隊級) Unit of Employment (UE) : UE は諸職種混成部隊の基本単位で、統合作戦においては Joint Task Force の司令部を構成する能力を持つ。 また 連合作戦遂行能力 を持ち、長射程の火力、航空戦力、C4ISR、の能力を保有する。 Unit of Action (UA) : UA は Object Force における戦闘の単位部隊である。 UA 旅団は4~6個の Maneuver Unit of Action 大隊で構成さ れる。 Maneuver Unit of Action (MUA) : MUA は諸職種混成の最小部隊で、決戦においては敵に近接戦闘を挑み、火力と機動によりこれを撃破する。 Small Tactical Unit (STU) : STU は MUA を構成する各単一職種部隊である。 イ 戦略レベルでの考え方 陸軍は軍事行動を通じて、国民、政府及び外国軍隊との橋渡しの役割を負う。 また、他の国家機関も合わせた陸上作 戦 に関する戦略的計画能力をもって統合軍機関としての活動を行う。 一例として、ボスニアへの駐留は同国の安定と、外交、経済及び情報といった各機関への効果的な寄与をもたらしてい る。 一方、国内において陸軍は国民と固い絆で結ばれ、敵性国家に対する国家意思の象徴となる。 ウ 作戦レベルの考え方 Objective Force は以下のような司令部を構成して、作戦の指揮を行う。 JTF (Joint JTF (Joint Task Force) JFLCC (Joint (Joint Force Component Commands) JFLCC ASCC ASCC (Army Service Component Commands) 作戦部隊は偵察監視及び情報管理を通じて敵に対する情報の優越を図り、迅速な状況判断に必要な情報を指揮官に提供 する。 このた め Objective Force は、司令部部隊間、部隊相互間、更に統合軍、政府機関及び多国籍軍との間に広域 C4ISR を確保すると共に、イン ターオペラビリティの強化を図る。 これに合わせて、諸計画作成及び作戦遂行におけるの調整、情報システムの連接を更に強化する。 作戦の実施においては、統合部隊や連合軍の一部として空地作戦を同時かつ継続的に遂行する。 作戦開始と共に部隊 は戦略的機動を 実施し、あらゆる困難を克服しつつ前線地域に進出する。 重要正面への早期進出は敵を抑止し、事前 に戦争を防止し得る。 仮に敵の抑止に失敗した場合でも部隊は強力な作戦を遂行し、迅速かつ圧倒的に敵の接近を阻止すると共に、敵部隊の 核心を攻撃しこ れを撃破する。 国内において陸軍は本土防衛を主任務とするため、州及び政府機関との連携関係を元に、本土防衛作戦の実施環境を構 築する。 この ため、防護と抑止、事態対処管理と初期対処訓練の実施など、陸軍の責任事項の遂行する。 エ 戦術レベルの考え方 Objective Force では、戦いの究極の段階を近接戦闘と位置付け、その成功のために UA はスタンドオフ火力、卓越し た機動で STU を 決戦場面に運用し勝利する。 Objective Force 主たる狙いは、現有の重装備部隊及び軽装備部隊の特性を生かし、一種類の部隊で、重装備部隊並の 火力、速度、混 成部隊としての特性を維持しつつ、軽装備部隊の特性である多様性、展開の容易性、高い下車近接戦闘 能力を保持しようとする事にある 。 このため、旅団、大隊は "Quality of Firsts" 即ち、 ・see first ・understand first ・act first ・finish decisively を原則として戦いを遂行する。 see first 敵部隊の発見、識別、追随に優越するため、先端技術を駆使して地上、空中、宇宙に配置したセンサで画期的な ISR (Intelligence, Surveillance, Reconnaissance) を行う。 その上で、統合された共通敵情図 COP (Common Operational Picture) を作成し、各級指揮官が情報を共有する。 understand first 各級指揮官は、COP の情報をもとに知識、経験、戦術的な感性を生かして、速やかに計画を立案する。 act first 大隊は、重要な時期と場所において敵と接触できるように速やかに行動する。 敵との接触後も機動とスタンドオフ火 力を駆使して戦 術的優位を確保する。 この間も継続的に所望の情報を確保して、敵に優越した機動、火力発揮につとめる。 finish decisively STU 及びその隷下部隊は、好機を捕らえて突撃を行い、敵に反撃の時間を与えることなく速やかに態勢を整え、戦果拡 張及び次の戦闘 に移行する。 (2) Objective Force の具備すべき能力、特性 ア Responsive(即応性) 即応性には、時間、距離、機動力の要素を含む。 事態に即応して部隊を展開できる能力を保持し続けることにより、 危機を未然に防 止できる。 Objective Force では、部隊の編成を今までより小規模にする事により展開が容易にし、しかも従来以上の能力を持た せる。 また、整備された空港や港湾を必要としない新型の輸送機や、浅水域を高速で航行できる輸送艦を整備して、戦略輸送 能力の向上を目 指す。 イ Deployable(展開の容易性) 陸軍は作戦地域への急速な展開能力の保持し、世界中のいずれの地域にも、旅団は発令後96時間以内に、師団は120時 間以内に、5個師 団が30日以内に展開できることを最終目標としている。 このため Object Force は C-130 や浅水域を超高速で航行できる輸送艦、高性能 VTOL機などの各種輸送手段で輸送で きる部隊である必 要がある。 ウ Agile(敏捷性) 機敏性とは、主導性と速度であると言える。 状況及び与えられた任務の変化に適応する対応力を精神的、物理的の両面で保持することで、例えば待機或いは支援任 務にある部隊が 速やかに戦闘加入でき、また速やかに元の状態に戻れることが要求される。 機敏な行動に適した編成、高速機動を可能にする移動手段、流動的な作戦環境に適合した部隊指揮をするための教育を 受けた指揮官、 情報の優越を獲得する C4ISR が、敏捷性を確保するため必須である。 オ Lethal(致命的打撃力) Object Force 部隊は、新たに開発する装備により、火力、機動、統率力、防護力及び情報などの戦闘力で、現在の重 装備部隊に勝る成 果を得ることができる。 Objective Force では、全ての部隊に至る C4ISR により、無駄な攻撃を避け、敵の核心を衝いた作戦を行う。 また これまでより小口 径の火器で長射程から正確に攻撃ができ、弾薬等に搭載する誘導装置は目標を確実に敵部隊を破壊す る。 早い作戦速度と継続的な圧迫は、敵戦闘力の再編成及び新たな作戦遂行を阻止することができるため、Objective Force は敵の対応を 圧倒する速度で作戦を遂行する。 機動打撃作戦では地上火力、各種攻撃機及び ISR システムを連携させ、その集中効果により敵の指揮統制系、防空シ ステム、地対地ミ サイル、火砲などの主要戦力を破壊し、敵の機動、増援及び相互支援を無力化する。 有無人機は長射程火力のセンサーとして運用する。 陸軍の各種航空機は統合作戦地域での攻撃目標の探知、攻撃の集 中、攻撃結果の 評価及び夜間射撃の統制等に有効性を発揮する。 市街地での戦闘はますます増加の傾向にあり、これを避けることは困難な状況にあるため、敵が市街地に塹壕を構築し たり建造物を利 用したりしているために効果的な攻撃が行えない場合には、正確な火力と諸職種連合による強襲で、敵 戦力の分断と戦闘力の壊滅を図る。 カ Survivable(生存性) Objective Force では、車両に乗った場合、乗っていない場合のいずれにおいても、兵員の個々に至るまで、最大限の 防護機能を付与 する。 兵員の個人装備と車両等の装備は軽量化を図ると共に、敵の直射火器に対する生存性を強化するため、複合材等を活用 する。 車両等 は非発見性、通信電子信号の削減及び砲迫からの防護を図ると共に、長距離からの目標捕捉と早期火力 発揮により、自らの安全を図る。 また、車両及び航空機等には敵の空地からの通常精密兵器による攻撃を防止するため、最新の早期警戒機能を持たせ る。 キ Sustainable(持続性) Objective Force は打撃効果を向上させることにより弾薬重量を削減する事などにより、補給業務や備蓄を削減する。 これにより戦 場での機能を損なうことなく補給品や装備品を迅速に推進し、戦闘支援を行える。 このため編成装備 で、信頼性の高いシステムと、シ ャシー、修理部品、燃料、弾薬等の共用化による整備の効率性を求めている。 部隊には、原則として中~高程度の作戦戦闘規模で3日間、その他の場合は7日間、補給を受けることなく戦力を保持で きることが求め られている。 (3) Objective Force への移行 計画では米陸軍は全ての部隊を新体制へ移行するが、全ての部隊を移行させるのには30年かかると見て おり、2030年の完全 移行までのプロセスを「移行計画」として作り上げた。 この中で移行までの暫定部隊として、8個旅団の IBCT (Interim Brigade Combat Team) が編成されることになっている 。 IBCT は Object Force の実験部隊ではなく、あくまでも実戦部隊である。 "Objective Force" への移行計画 その間に一方で Objective Force を目指した研究開発を進め、2010年に初の Objective Force 部隊を IOC (Initial Operational Capability) にし、その後既存の部隊(Legacy Force)及び IBCT を順次 Objective Force 部隊に改編して行こ うという計画である。 3 Future Combat System (1) FCS とは 冷戦後に多発している局地紛争介入には、従来の陸軍の主力である重師団は重すぎ、かといって軽歩兵師団では脆弱である ことから Objective Force 構想では機甲師団等の重装備部隊から軽歩兵師団までの部隊を、ハイテク技術を駆使した装輪装甲 車を中心とした部 隊に改編し、十分な航空基地のない地域にも、部隊をC-130級の輸送機で展開できるようにする。 この Objective Force 構想を支える装備開発計画が、兵器システムである Future Combat System と、 歩兵用個人装具シ ステム Objective Force Warrior である。 (2) FCS の主要構成品 FCS は MGV (Manned Ground Vehicle)、UAV (Unmanned Air Vehicle)、UGV (Unmanned Ground Vehicle) で構成される。 ・MGV UoA の装備する MGV の種類と数量は以下の通りとなる。 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━┳━━━━━┓ ┃ 車 種 名 ┃限定 IOC時┃ 最終時点 ┃ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━┫ ┃Mounted combat system ┃ 20 ┃ 80 ┃ ┃Infantry carrier vehicle ┃ 28 ┃ 84 ┃ ┃NLOS-Mortar ┃ 8 ┃ 24 ┃ ┃NLOS-Cannon ┃ 6 ┃ 18 ┃ ┃Command and control vehicle ┃ 24 ┃ 49 ┃ ┃Reconnaissance and Surveillance Vehicle ┃ 10 ┃ 30 ┃ ┃Medical vehicle ┃ 9 ┃ 29 ┃ ┃Maintenance and Recovery Vehicle ┃当面はHEMTレッカを使用┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┻━━━━━┻━━━━━┛ MGV を装輪にするか装軌とするかの決定はまだ行われていない。 ・UAV UoA には約200機の UAV を配備するが、 UAV は、装備する部隊の規模により 以下の4種類に区分される。 ・Class Ⅰ: 108機 (小隊レベル) ・Class Ⅱ: 36機 (中隊レベル、行動半径 30km) ・Class Ⅲ/Ⅳa:48機 (大隊レベル、行動半径 40km) ・Class Ⅳb: 8機 (旅団レベル、行動半径400km) ・UGV UoA が装備する UGV は、"Combat Robots" と "Soldier Robots" に大別され、その数量は ・武装車両 × 31 ・輸送車両 × 54 となる。 Combat Robots として開発されるのは、5~6tの UGV である ARV (Armed Reconnaissance Vehicle ) であり、Soldier Robots には輸 送車両型、攻撃車両型、地雷原処理型の3タイプがある2.5tの MULE (Multi-Purpose Utility Logistic and Equipment) と、親ロ ボットから発進する子ロボットである Marsupial がある。 (3) FCS の開発計画 米陸軍は2002年3月に、FCS Block 1 開発の Concept and Technology Development Phase について、、LSI (Lead System Integrater) に Boeing、SAIC 両社の共同チームを選定した。 Boeing/SAIC は陸軍車両の経験はないが、C4ISR ネットワー クに組み込まれる次世代 システムということで、一連の軽量車両の開発を手がけることになった。 FCS Block 1 の今後の計画は以下の通りである。 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 3月:システム固定 7月:製造開始決定 6月:初号機引き渡し 6月:部隊への初配備 1月:IOT&E 9月:IOC 4 Object Force Warrior (1) Land Warror Land Warrior 計画は、21世紀の戦場において、小火器とハイテク装備を結合させようとする構想で、1991年に陸軍の研究 チームの提言 により開始された。 Land Warrior の開発は BlockⅠ~Ⅲ に区分され、BlockⅠの運用試験は 2003年1月から、装備化は 2004年以降、Block Ⅱ は2005~ 2008年に装備化を予定、合計で48,000セットの導入を計画している。 Block Ⅲ の開発は 2007年に開始する予定である。 計画の優先順は、① Lethality、② Survivability、③ Command and Control となっており、計画では、2001年~2014年の 間に $2B をかけて 45,000セットを調達しようというものであった。 Land Warrior は、以下のサブシステムで構成される。 ・Weapon ・Weapon Subsystem ・Integrated Integrated Helmet Assembly Subsystem (IHAS) ・ ・Protective ・Protective Clothing and Individual Equipment Subsystem ・Computer ・Computer / Radio Subsystem (CRS) ・Land ・Land Warrior Software Subsystem (2) Object Force Warrior OFW は Land Warrior 計画を更に発展させた画期的なもので、実質的には Land Warrior Block Ⅲ である。 LSI (Lead Sysem Integrator) 契約の RFP は、2002年3月に発簡され、2003年にGD社が契約を受注した。 OFW の技術検証は2006年、装備化は2008年に予定されている。
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