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第62回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集 (2015 東海大学 湘南キャンパス)
強誘電体プローブデータストレージ用
PZT 薄膜媒体の表面層の XPS 測定
X-ray Photoelectron Spectroscopic Study on PZT Thin Film Recording Media
for Ferroelectric Probe Data Storage
○
東北大通研
RIEC Tohoku Univ.,
平永 良臣,陳 一桐,長 康雄
○
Yoshiomi Hiranaga, Yitong Chen, Yasuo Cho
E-mail: hiranaga@riec.tohoku.ac.jp
【はじめに】強誘電体プローブデータストレージは
[1] K. Tanaka and Y. Cho, Appl. Phys. Lett. 97, 092901
2
(2010).
1 Tbit/inch を超える記録密度での書き込みを可能と
する次世代の記録方式として有望な記録方式である.
[2] Y. Hiranaga and Y. Cho, Jpn. J. Appl. Phys. 52,
09KA08 (2013).
筆者らの研究グループでは LiTaO3 単結晶を記録媒体
として用い,記録密度 4 Tbit/inch2 のデータ記録が行
えることを報告してきた.[1] 一方,本方式の実用化
を目指す上では,薄膜記録媒体の開発が必須である.
(a) as-deposited
そこで現在は,大きな非線形誘電率を有しており,
目し,提案方式における記録媒体への応用に関する
検討を行っている.[2] 前回の講演会においてイオン
ビームの照射による表面層の除去が,良好な記録媒
体の作製に有効であることを報告した.今回は表面
Pb 4f5/2
Intensity (arb. unit)
高速な記録再生が行えると期待される PZT 薄膜に着
Pb 4f7/2
層の起源をより詳細に調べるために X 線光電子分光
法(XPS)による測定を行ったので,これを報告する.
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【実験と結果】PZT 薄膜は SrRuO3/SrTiO3 基板上に
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RF スパッタ法によって作製した.この薄膜に対し,
142 140 138 136
Binding Energy (eV)
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134
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表面層を除去するために,電子サイクロトロン
(ECR)型イオン銃を用い,アルゴン・酸素混合ガ
(b) after ion beam irradiation
(Ar + O2)
Pb 4f7/2
ームの照射処理を行った.
この薄膜の Pb 4f に対する XPS スペクトルを Fig. 1
に示す.イオンビーム照射前の薄膜においては,
Pb 4f7/2 = 137.3 eV のピークの他に 137.8 eV にもピー
クが存在しており,2 種類の状態の異なる鉛が混在し
Intensity (arb. unit)
スをイオン化ガスとして加速電圧 300 V でイオンビ
Pb 4f5/2
ていることが分かった.137.8 eV のピークはイオン
ビーム照射後の薄膜ではほぼ消失したことから,こ
のピークはペロブスカイト格子内の鉛とは異なる状
態のものであり,かつ表面近傍にのみ偏在したもの
148
であることが分かる.アルゴンのみをイオン化ガス
としてイオンビーム照射を行った際によく見られる
鉛の還元は,アルゴン・酸素混合ガスにおける処理
では見受けられず,良質な表面が得られたものと考
えられる.
【謝辞】本研究の一部は科学研究費補助金基盤研究 S
(23226008)の補助を受けています.
© 2015年 応用物理学会
05-271
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142 140 138 136
Binding Energy (eV)
Fig. 1 XPS spectra of PZT films (a) before and
(b) after ion beam irradiation with ionized gas
of Ar+O2.