カメラリンク規格の最新動向 -デジタルへの近道

カメラリンク規格の最新動向
−デジタルへの近道、デジタルメリットへの道−
株式会社シーアイエス
名雲 文男
本稿では、FAカメラの現在あるデジタルI/F規格をアナログI/F規格と比較しておさらいし、アナログ
I/FからデジタルI/Fへの移行を容易にする近道が何かを探る。次いで当社が国内大手カメラメーカ
各社と協議の上で提案した新規格案(電源供給機能を持つミニカメラリンク規格)
とその提案後の動
きを、最後にこの新規格で実現するユニークなFAカメラを紹介する。これはアナログI/Fカメラの性
能と機能を一段と超えた新しいカメラ群である。
1
2
半導体撮像技術、IT技術と粋を尽くしたマシンビジョン
まず、現在のFAカメラのデジタルI/F規格の概要をアナ
のフロントエンドであるFAカメラ
(Factory Automation用セ
ログI/F規格と比較して紹介する
(表1、2)
。この比較を通
ンサカメラ)
だが、その出力I/F(Interface)
は未だ大半がア
してデジタルのメリットを再確認し、加えてアナログ12pin
ナログである。高性能、高機能というメリットを持つデジタ
I/Fの遺伝子を最も強く受け継ぐデジタルI/Fはなにか、そ
ルI/Fへ移行するためには、アナログI/Fシステムで蓄積し
れを探してみたい。
たハードソフト両面の豊富な技術資産が容易に継承でき
ること、そしてなにかと問題の多いカメラのデジタルI/Fとコ
ンピュータの接続がアナログI/F並みに容易にできることが
2.1 アナログとデジタル、そのメリット
FAカメラ出力信号の主な業界規格は、大別して5種類が
必要条件であろう。その近道にはアナログI/Fとの類似性、
ある(表1)。表1の下段(計画)の欄は現在規格策定中
いわばその遺伝子をできるだけ多く受け継いだデジタルI/F
または将来実現が見込まれる規格である。
の出現が必要に思われる。
ここで本稿では、デジタル入出力規格であるカメラリン
ク規格の最新動向を紹介する。筆者はアナログI/Fの遺伝
さて最初にデジタルI/Fのメリットを見る
(表2)
。デジタ
ルI/Fは優れた点が多い一方、劣る点もあることが判る。
(1)伝送品質
子を最も強く受け継ぐデジタルI/Fがカメラリンクだと考
デジタルの理論上の長所はこの点にある。特に波形歪
え、その進化のために規格提案をし、その実現に努めてい
がない忠実な伝送品質は、画像計測の高精度化が進んで
る。本稿はそうした活動にからむちょっとホットなニュース
いる今、改めて見直されるべき重要な利点である。弱点
である。
の量子化雑音だが、これも8∼10bitの量子化があれば大
半の用途で支障はない。
(2)伝送帯域
これは実用上最も重要なメリットである。原理的には2
値伝送のデジタル伝送が劣るはずだが、実用上はデジタ
18 ︱April 2005
eizojoho industrial
表1 FAカメラのデジタルI/F
規格
無
2本
―
1組
40Mhz
(100Mhz)
デジタルI/F
2005.3
(?)
(計画)
―
●
1組
(480)
無
有
2本
IIDC
2000
―
●
2組
(800)
無
有
2本
Gig-E
AIA
2005.9
(予定)
―
●
無
有
ミニCL+電源
(仮称)
AIA
作業中
●
―
有
10Gig-E
(仮称)
AIA
?
―
●
無
規格団体
要
10m
要
小
2000
USB2.0
IEEE1394.b
(IIDC/1394.b)
小
大
2000
AIA
フレームグラバ
必要ケーブル数
有
●
コネクタサイズ
電源供給機能
有無
2,200
2000
最大ケーブル長
トリガ入力機能
有無
4組
伝送帯域
Mbps(Mhz)
―
信号線数
●
パケット伝送
1本
直接接続
有
JEITA
(EIAJ)
カメラリンク
ミニカメラリンク
(ミニCL)
有
制定(年)
アナログ12pinI/F
(新EIAJ規格)
規格団体
カメラ
インタフェイス
信号伝送
900
2組(Tx)
(1,000)
4組
2,200
(10,000)
2組(Tx)
小
不要
4.5m
小
不要
2本
100m
小
不要
有
1本
10m
小
要
有
2本
小
不要
※
JEITA(Japan Electronics and Information Technology Industries Association:電子情報技術産業会)
EIAJ(Electronic Industries Association of Japan:日本電子機械工業会)→JEITAへ移行
AIA(Automated Imaging Association)
IIDC(Instrumentation and Industrial Camera)
帯域比較:MHzとMbps 1画素データ10bit相当のアナログ信号帯域100MHzはデジタル1,000Mbpsにあたる。
ただし、FAカメラは光学的にサブナイキストサンプリング系であって、出力信号帯域=画素レートである。
アナログ12pinI/Fの帯域 ( )はケーブル内の同軸線(10m)の帯域を指す(-6.5dB@100Mhz)
( )無しは現存するカメラ帯域の上限から推測した値である
デジタルI/Fの伝送帯域( )は全帯域をさす ( )無しは実効帯域をさす
※不要:IEEE1394.bでは比較的安価なI/Fボードを用いることが多い
表2 FAカメラI/F アナログvsデジタル
メリットの比較
類似性の比較
伝送品質
信号帯域
パケット伝送
トリガ入力機能
カメラ接続に
必要なケーブル数
〇
〇
1本
YES
―
YES
1本
デジタル
I/F
●
●
△
〇
△
〇
〇
×
▲
2本
×
〇
▲
2本
〇
〇
●=優 ○=良 △=可 ▲=劣 ×=不可
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システムの類似性
(ハード/ソフト
直接伝送
〇
フレームグラバ
カメラ接続に
必要なケーブル数
〇
●
カメラリンク
その他
△
電源供給機能
〇
システム
トリガ入力機能
〇
信号伝送
RAWデータ伝送
●
原理的な帯域
△
8bit∼
△
∼7bit
ランダム雑音
アナログI/F
12pinI/F
波形歪、忠実度
カメラ
インタフェイス
実用上の帯域
(1ケーブルあたり)
実用上の帯域
(1信号線あたり
量子化雑音
機能
必要 類似
―
YES
NO
2本
不要
※
―
※IEEE1394.bでは比較的安価な
I/Fボードを用いることが多い
April 2005︱19
※
※※
表3 カメラリンク の伝送容量、フレームレート
(fps
出力信号
)対画素数
RAWデータ
白黒
画素数
カラー
RGBカラー
※※※
VGA
300K 画素
700fps
700fps
200fps
UXGA
2M画素
100fps
100fps
30fps
ルがはるかに広帯域である。デジタル通信技術と半導体
※Base Configuration
※※fps=frame/sec:1画素データを8bitとする
※※※RAWデータカラー:本文中※1参照
②コンピュータへの接続がハード、ソフト両面でアナログ
技術の発展に支えられて、デジタル伝送は1信号線あたり
I/F並みに容易なこと。
の帯域をアナログと同等にまで挽回した。加えて並列伝
⇒デジタルI/Fとコンピュータとの接続は必ずしも容易で
送が容易なデジタルI/Fは信号線数を増やすことで、ケー
はない。
ブル当たりでより高速な伝送レートを実現している。たと
えば、カメラリンク
(Base Configuration)
では信号線4組を利用
ここで、表2(メリットの比較)
を見ていただきたい。そこ
して2.2Gbpsを、IEEE1394.bとGig-Eも2組でそれぞれ
にアナログ12pinI/Fとカメラリンクの間に強い類似性が見
800Mbps、1Gbpsを可能にしている
(表1、信号線数と伝
出せる。両者の類似性はその他のデジタルI/Fとは一線を
送帯域)
。なお、カメラリンクで伝送できる最大のフレーム
画す。本質的な違いは前者がいわば物理層だけのリアル
レートは、VGAでおよそ700fps(白黒)
、UXGAならおよそ
タイムの直接伝送であり、後者が信号伝送制御にソフトが
100fpsであって、他のすべてのI/F規格を寄せ付けない高速
介在するパケット伝送ということだ。だから、両者の間にリ
アルタイムのトリガ入力の可否や、コンピュータとの接続で
走査を実現できる
(表3)
。
のフレームグラバの要不要という差がでる。
(3)機能
※1
ここではRAWデータ伝送 が重要である。これで伝送効
カメラリンクはアナログと同様のフレームグラバを必要
率のよいカラーカメラが実現できる。デジタルが離散的伝送
とするが、その分コンピュータへの接続がアナログと同等
系だからできることで、アナログI/Fにはない大きな利点である。
(4)
デジタルI/Fの短所
現存するデジタルI/Fには、カメラの接続に複数のケーブ
に容易になる。システムもハードソフト両面でほとんど違
いなく構成できる。すなわち、カメラリンクはアナログへの
近道、そのふたつの要件を満たすということになる。
ルが必要という実用上大きな短所がある
(表1、必要ケー
しかし、まだひとつ問題が残っている。カメラ接続に必
ブル数)
。電源供給機能かトリガ入力機能のいずれかに別
要なケーブル数だか、アナログは1本でよいのに対し、カ
ケーブルが必要なためである
(表1)。一方のアナログ
メラリンクは他のデジタルI/Fと同様に2本が必要である。
12pinI/Fでは単一ケーブル内にその両機能を備えており、
システムを組む上でこの違いは難題である。
単一ケーブル接続が可能である。
この問題に、当社はその解決の実績があった。特定ユー
ザ向けの閉じたシステムながら、それまで別ケーブルで
2.2 アナログからデジタルへ、その近道
前節にて性能と機能など多くの点でデジタル伝送がア
ナログ伝送に勝ることがわかった。それでは優れたデジタ
供給していた電源をカメラリンク経由で供給した実績で
ある。
一方、筆者らは成立間近の新規格、カメラリンク
(ミニ
ルシステムへ移行するためにどのような近道があるのか。
CL規格)の小型コネクタに着目していた。この小型コネク
もちろん、価格の問題は避けて通れないが、技術的には
タと実績のある電源供給方式をあわせてオープンな環境
次の2点が重要である。
下で使える小型カメラ用デジタルI/F業界規格を作り、ア
①アナログシステムとハード、ソフト両面で同等なシステム
ナログからデジタルへの近道に仕立てたいと考えた。そ
が構築可能なこと。
の思いが昨年のAIAカメラリンク委員会への新規格提案
⇒その結果、アナログシステムで蓄積した技術資産を
につながる。
有効に活用できる。
※1
RAWデータとは単板カラー撮像素子からの生の信号をいう。具体的にはGR/BGの点順次信号を指す。
その伝送帯域はRGB並列信号の1/3である。
20 ︱April 2005
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表4 カメラリンク仕様のコネクタサイズ
型名
W(mm)
H(mm)
D(mm)
カメラ筐体サイズ(mm)
カメラリンク
MDR-26
39.7
12.9
32.5
標準筐体:44×29×71
ミニCL
SDR-
24.4
9.0
29Cubic:29×29×29
MDRコネクタは標準的なカメラ筐体に適合するが、29mm
立方サイズの小型カメラ
(当社ではこれを29Cubicと呼んで
いる)
には大きすぎる。そこで、小型のミニCL規格のコネクタ
が不可欠になる。ミニCL規格はこのほかにフレームグラバ
ボード上に3コネクタの並列実装が可能になる利点もある。
またこの規格ではケーブルの細線化も図られている。
3.2 新たな提案「電源供給型ミニCL」規格
デジタルへの近道作り
ここからは、
“もうひとつのホットなニュース”について解
説したい。つまり、電源供給型ミニCLという新規格の内輪
話、筆者からみればアナログからデジタルへ、その近道作
りの話題である。
写真1
ミニCL規格とカメラリンク両コネクタの比較
(左)
ミニCL規格、
(右)
カメラリンク規格
ミニCL規格に電源供給機能を盛り込んで、ケーブルの1
本化が実現すればデジタルへの近道がまた一歩縮まる。
さらに小型で、なおかつ高速で、そしてカラー、というカメ
3
2004年9月、独シュツットガルトで開催されたAIAカメラリ
ラのメリットが実現する。その具体例は次節に譲るが、とも
あれ数々のメリットが生まれることになる。
では、カメラリンクI/Fに電源供給機能を盛り込む具体
ンク委員会では、カメラリンク用小型化コネクタの新規格
策とはなにか。我々の提案を表5の第一の案に示す。なん
(ミニCL規格)の審議が終盤を迎えていたが、筆者らは派
のことはない、普段使わない制御線を電源線に流用する
生規格として、これに電源供給機能を盛り込むことを提案
だけである。
した
(仮称「電源供給型ミニCL」規格)。その提案は事前
カメラリンク上のカメラ制御線4組のうち、2組を12V電源
に国内大手カメラメーカ各社のご審議とご賛同を頂いたも
供給に振り替える。供給する電力も小型カメラに限定して
のであった。AIAの委員会は大変好意的にその主旨の受
信号線で生じる電圧降下を最小限にとどめる。これなら既
け入れを決議した。以下、この新規格提案の内容とその
存のカメラもボードも共に最小の変更で済む。4組の制御
後の経過を紹介する。
線を2組に削減しても通常の用途で影響の無いことはご賛
同頂いた大手カメラメーカ各社の審議で確認されている。
3.1 ミニCL規格
以上が新提案、電源供給型ミニCL規格の概要である。
ミニCL規格、実はちょうど今、その成立が決定、との電
ついで後日談になるが、電源供給機能を盛り込む具体
話が米国から飛び込んできた。未確認情報だが本稿校
策として第二の案が持ち上がった。その案とはインナー
正の最終段階でのホットニュースである。
シールドを利用して5V電源を供給するというもので、海外
この規格の特長はコネクタの小型化にある。その小型
のボードメーカを中心に支持されている。支持の理由は電
コネクタ(SDR/3M社)
と現行のカメラリンクコネクタ
源供給の有無というふたつの規格が1本化され、対応する
(MDR/3M社)のサイズを表4に、また、カメラへの実装例
ボードの機種数を削減できることだという。この方法はイ
を写真1に示す。
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ンナーシールド間の絶縁信頼性を確認する必要があるも
April 2005︱21
表5 電源供給機能を備える「電源供給型ミニCL」規格(仮称)2案の概要
電源電圧
第一の案
第二の案
12V
5V
給電線
(カメラ側ピン配列)
+
CC3+(24pin)、CC4+(12pin)
インナーシールド
−
CC3−(11pin)、CC4−(25pin)
(1pin、13pin、14pin、26pin)
コネクタメカ形状による差別化
供給電源の過電流保護回路
誤接続対策
CC3、CC4:コンピュータからカメラへの制御信号線。4組中の2組にあたる。
左上:アナログ12pinI/F
右上:ミニCL
左下:電源供給型ミニCL
写真2 29Cubicカメラのケーブル比較
のの、十分検討に値する案と思われる。
両案それぞれに、カメラとボード各メーカにとって利害に
食い違いはあるが、今後の協議でこれらの案をベースにし
たよりよい規格の実現を目指すことになる。なお米国で開
・さらなる高速走査が実現する
・29CubicサイズのFAカラーカメラが実現する
・アナログからデジタルへの近道ができる
(1)
ケーブル1本化
催される次回のAIAカメラリンク委員会の前に、国内でも
これはカメラのデジタルI/F規格ではじめての快挙にな
カメラ、ボードそしてケーブルのメーカ各社が集って情報交
る。そのほかのデジタルI/F規格(パケット型伝送型)
で、こ
換を行うことを予定している。
れにリアルタイム信号のトリガ入力機能を追加することが
むずかしい現状を考えれば、このメリットは格別に大きい。
写真2にアナログ12pinI/F、ミニCLおよび電源供給型ミ
4
ニCL、各I/Fの29Cubicへの実装例を示す。29Cubicカメラ
4.1 電源供給型ミニCL規格カメラ(仮称)と
そのメリット
電源供給機能付の電源供給型ミニCL規格で実現する
新しいFAカメラの具体例を紹介する。
電源供給型ミニCL規格はデジタルへの近道を提供する
とともに、デジタルのメリットがふんだんに実現する。FA
カメラの具体的なメリットは以下の通りである。
・ケーブル1本化が実現する
・さらなる小型化が実現する
22 ︱April 2005
(写真2右上)
では2本ケーブルのコネクタはカメラ本体と
同等以上の空間を占めるので小型の価値が減少する。結
束された2本ケーブルは小型カメラの動きを阻害する恐れ
もある。これでアナログ12pinI/Fカメラに置き換わりうるか
どうか、1本ケーブルのカメラリンクとともに市場のご判断
を待つことになろう。
(2)
さらなる小型化
電源供給型ミニCL規格ができれば実質的なカメラの奥
行きが大幅に短縮される。
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写真3を見ていただきたい。左端のカメラは薄型のミニ
(4)
ピクセルクロックの統一
CLコネクタを横置きに配置した例である。このカメラのコ
当カメラではシリーズ内でピクセルクロックの統一を
ネクタを含めた奥行きはストレート型にくらべておよそ半分
図っている。クロックが統一されれば、受けのデジタルシ
近く、33mmも短くなる。アナログ12pinI/Fに比べても同
ステムはハードの変更なしに画素数の異なるカメラを自由
様である。ケーブルまで含めればこの効果は絶大である。
に選択できる。シリーズ内でのピクセルクロック統一とは
電源供給ケーブルが必要ならミニCLコネクタの横置き効
当社のデジタルのメリットを活かす、時代先取りの技術提
果が死んでしまうことはいうまでもない。
案である。
(3)
さらなる高速化
(5)29Cubicサイズのカラーカメラ
当社はCCDの高速カメラを得意技としているが、広帯
表6の一連のカメラ群は白黒カメラばかりではない。
域のミニCL I/Fができてその得意技に磨きがかかった。
29Cubicという小型サイズのカラーカメラがはじめて実現で
表6はその一例である。29Cubicサイズで『4倍速』小型カ
きた。単板カラー撮像方式RAWデータカラー出力である。
これにはデジタル出力ならではの画素単位(離散信号)
メラシリーズができたし、標準型筐体の『6倍速』のカメラ
シリーズも実現した。
『2倍速』のアナログ12pinI/Fに比べ、
の伝送機能が活きた。また、6倍速の標準筐体カメラでは
さらに2倍、3倍の高速撮像の実現だが、デジタルI/Fの広
RAWデータと切り替えてRGBの3信号を並列出力する機
帯域がこうして活かされている。
能も開発済である。ちなみに、UXGAでRGB出力30fpsと
いう高速走査は広帯域のカメラリンクの性能を限界まで
利用している
(表3)
。なお、RAWデータ出力も、またRGB
並列出力もともにアナログ12pinI/Fカメラでは実現不可能
であることはいうまでもない。
(6)
デジタルへの近道
このカメラならアナログ29Cubicカメラとハード、ソフト
両面とも大きな変更なしに容易に置き換わる。外形はも
ちろん29Cubicサイズであり、ケーブルも1本。アナログと
同等のフレームグラバを用いればコンピュータとの接続も
またアプリケーションソフトもほとんど流用できる。これで
アナログI/Fカメラで蓄積した技術資産をそっくり有効活用
できるシステムになる。ケーブルを流れる信号がアナログ
写真3
29Cubicカメラへの各種規格コネクタ実装例
左から電源供給型ミニCL規格 横型とストレー
ト型そしてアナログ12pinI/F
かデジタルか、残る違いはそれだけだが、使う側にはそん
なことは無関係だ。
表6 ミニCLで実現される新しいFAカメラシリーズ
筐体サイズ
I/F
アナログ
12pin
走査速度
VGA
XGA
SXGA
UXGA
出力信号
60fps
30fps
15fps
15fps
白黒
25MHz
30MHz
28MHz
36MHz
2倍速
29mm
60fps
白黒
2倍速
Cubic
ミニCL
25MHz
および
120fps
48fps
RAW データカラー
25fps
20fps
白黒
38fps
30fps
白黒
4倍速
電源供給型
44×29×71
49MHz
ミニCL
(標準型筐体)
RAW データカラー
6倍速
72MHz
RAW /RGB(切替)
(株)シーアイエス ラインアップ表より
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April 2005︱23
4.2 アナログからデジタルへ、その道のり
ミニCL規格を、04年9月AIAカメラ委員会に提案した。小型
電源供給型ミニCL規格はデジタルへの近道だと再三述
カメラに接続するケーブルの1本化という趣旨は同委員会か
べているが、その道には障害物もある。価格と規格化の
ら好意的に受け入れられて、検討作業のテーブルに乗った。
時期がそれである。
カメラリンクシステムの価格は高いとされているが、これ
電源供給型ミニCL規格は、第一にアナログからデジタ
ルへの近道を提供する。アナログカメラで蓄積した技術
は量産効果が出れば解決する。しかし、ニワトリと卵の問
資産をハード、ソフト両面で生かしたまま容易にデジタル
題を防ぐために、筆者らは早期に普及価格を実現するよう、
への移行を可能にする。
ボードやケーブルメーカ各社とともに努力中である。実際、
あるグラバボードではすでにアナログ相当の価格を実現さ
せているし、当社のカメラも同様の方針で動いている。
一方規格成立の時期だが、ミニCL規格が05年3月に成
加えて数々のデジタル化のメリットが提供できる。当社
の29mm立方サイズのカメラ
(29Cubic)
では、アナログ比
で、奥行き半減、2倍の高速化、さらにはじめてのカラー化
を実現できる。
立したならば、続いて電源供給型ミニCL規格化作業が本
デジタルへの近道、そしてデジタルメリットの実現、その
格化する。それでもその成立には少々時間がかかるであ
ふたつの役割を担ったミニCLに電源供給機能を持たせる
ろう。それが待てないという場合には、特定の閉じた用途
カメラは技術的にはいつでも実用化可能である。そのカメ
というユーザのご了解があるなら、規格にこだわらない現
ラ、ボードそしてケーブルなどの普及価格化への努力もは
実的な対応が考えられる。いずれにせよ、技術的には今
じまった。ミニカメラリンク+電源供給機能を用いたカメ
やスタンバイ状態である。
ラシステム、その登場はマシンビジョンの領域にダイナミッ
クな前進をもたらすものと期待される。
5
当社は国内大手カメラメーカ各社との協議とご賛同とを得
て、電源供給機能を持つミニカメラリンク規格=電源供給型
24 ︱April 2005
☆株式会社シーアイエス
TEL.0426-64-5535 FAX.0426-64-5710
F.nagumo@ciscorp.co.jp http://www.ciscorp.co.jp/
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