健康支援 第15巻2号 7- 14,2013 大学生武道部員におけるストレス対処力(SOC)とその関連要因 浅沼 徹1)、武田 文2)、朴峠 周子3)、門間 貴史1)、香田 泰子1)4)、藤原 愛子1)、 木田 春代1)、増地 克之2)、岡田 弘隆2)、酒井 利信2)、香田 郡秀2) Sense of coherence(SOC)and its related factors among martial arts practitioners in the university students Tohru ASANUMA1), Fumi TAKEDA2), Shuko HOTOGE3), Takafumi MONMA1), Yasuko KOHDA1)4), Aiko FUJIHARA1), Haruyo KIDA1), Katsuyuki MASUCHI2), Hirotaka OKADA2), Toshinobu SAKAI2), Kunihide KOHDA2) Abstract This study examined the level of sense of coherence(SOC)among university students who practiced martial arts, and identified the associations between SOC and the beginning age of martial arts, psychosocial traits(social skills, social support, and interdependent construal of self). The data from 84 members of Judo or Kendo team was collected in the survey with an anonymous self-reported questionnaire at a university. The findings showed that:(1)the mean SOC score was 55.7(SD10.1), which suggested that the SOC level of students who practiced martial arts might be higher than that of general students at university:(2)SOC level was related to beginning martial arts in childhood, having high social skills, and having weak interdependent construal of self. Keywords : university students, martial arts, sense of coherence(SOC), psychosocial traits 1)筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻 Doctoral program in Human Care Science, Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba 2)筑波大学体育系 Faculty of Health and Sport Sciences, University of Tsukuba 3)人間総合科学大学人間科学部人間科学科 Department of Human Arts and Sciences, Faculty of Human Sciences, University of Human Arts and Sciences 4)筑波技術大学 Tsukuba University of Technology 浅沼 徹 〒305-8577 茨城県つくば市天王台1-1-1 総合研究棟D Laboratory of Advanced Research D, 1-1-1 Tennoudai, Tsukuba, Ibaraki, 305-8577 電話(Tel) :029-853-3996 電子メール(E-mail) :tohru_asnm@yahoo.co.jp 7 健康支援 第15巻2号 7- 14,2013 Ⅰ.はじめに 内閣府 いることを報告したのみである。 によれば、2007年度から2011年度まで毎年 ところで、柔道・剣道実践者とアメフト実践者とを比 の生徒・学生の自殺者数のうち、大学生が半数以上を占 較検討した研究から、前者は後者に比べて心身を鍛えて めている。大学生は、親元から離れて一人暮らしを始め 自己を鍛練する志向を持つ者の割合が高いこと12) が報 るといった生活環境の変化に伴うストレスにより、抑う 告されている。柔道と剣道は、用具の使用や対戦相手と つや孤独感といったメンタルヘルスの不調が起こりやす の間合いといった競技形態の違いはあるが、いずれも心 いことが指摘されており 、大学生のメンタルヘルスの 身の鍛練や、対戦相手への礼儀を身に付け品位を高める 維持・増進は重要課題といえる。 ことを重んじる武道種目13,14)である。 メンタルヘルスの維持・増進については近年、危険要 健康生成理論によれば、人生経験の中でも「一貫性の 因(risk factor)の軽減・除去による疾病予防とともに、 経験」や「結果形成への参与の経験」が、SOC形成の 健康を維持増進する要因(salutary factor)の促進が重 上で重要とされている7)。柔道や剣道における正座・黙 要視されるようになり、その要因の一つとして、 「首尾一 想・礼といった所作の繰り返しは、ルールや規律が明確 貫感覚 (Sense of coherence: SOC)」 が注目されている。 である「一貫性の経験」に、また実践の蓄積は競技力を SOCは、ストレスフルな出来事や状況に直面させられな 向上させ試合での「結果形成への参与の経験」につなが がらも、それらに上手く対処して心身健康を維持させ、 ることが考えられる。これらの点から、スポーツ競技の さらにそれらを成長や発達の糧に変えていく「ストレス 中でも武道の実践がSOCを高める可能性が推測される。 対処力」あるいは「健康保持力」とされている。 次に、SOCのもう一つの関連要因とされる心理社会的 大学生のSOCとメンタルヘルスとの関連について、 特性について、大学生を対象とした先行研究からみてみ SOCが 高 い 者 は 低 い 者 と 比 べ て 主 観 的 健 康 度 が 高 ると、医療系大学の1~4年生において、同学年や教 く4, 5)、日頃のストレスの程度が低いこと4)、不機嫌・ 員・サークルメンバー等と良好な関係にあると自覚し 怒り感情や抑うつ・不安感情といったストレス反応を抑 ている者はそうでない者よりもSOCが高いこと15)、都内 制すること が実証されており、青少年のメンタルヘ の国・私立大学の1・2年生において、サポートネット ルスの維持・増進の上で、SOCを向上させるアプローチ ワークが多い者ほどSOCが高いこと16)、看護系大学の1 が有効であると考えられる。 年生において、他者からの評価を気にしない者はそうで SOCの関連要因については、Antonovskyの健康生成 ない者よりSOCが高いこと17) が報告されている。した モデル7) では、成人初期(20代)までの人生経験およ がって、大学生におけるSOCの高さは、対人関係を円滑 び心理社会的特性(ソーシャルサポート・社会的紐帯・ に進める「ソーシャルスキル」が高いことや、周囲の人々 社会との関係・自我アイデンティティなど)が挙げられ から支えられているという「ソーシャルサポート」が良 ている。 好であること、自我アイデンティティの一つである、他 これらのうち、まず人生経験について大学生を対象と 者からの評価を懸念し自己を抑制して周囲との親和を図 した先行研究からみてみると、わが国の1大学1年生に ろうとする「相互協調的自己観」が弱いことと関係する 1) 2) 3) 6) おいて、運動・スポーツ経験年数の長さがSOCの高さと 可能性が示唆されている。 関連していること8)、フィンランドのpolytechnic(科学 以上のことから、大学生における運動・スポーツの経 技術専門学校)に在籍する18 ~ 36歳において、週に3回 験、また、スポーツの各種競技でも武道の経験がSOCを 以上の身体活動を行っている者は月に1回以下の者より 高める可能性が推察される。しかし武道実践者を対象と もSOCが高いこと9)、トルコの大学生において、歩行や した実証研究は極めて少なく、心理社会的特性との関連 階段の使用、家庭や学校・趣味などを含めた身体活動の 性についても明らかにされていない。そこで本研究で 総合的な多さとSOCの高さが関連していること が報告 は、柔道および剣道を実践している大学生のSOCの状況 されており、人生経験の中でもとりわけ運動・スポーツ を明らかにするとともに、武道開始年齢や心理社会的特 活動が大学生のSOCと関連する可能性が示唆されている。 性との関連を検討することにした。 10) しかし、運動・スポーツの競技別に検討した実証研究 Ⅱ.対象および方法 はほとんど見当たらない。正木ら11) が大学生男子柔道 1.調査対象 部員を対象とした研究から、体重区分やレギュラーであ るかどうか、柔道を始めたきっかけ、および始めた時期 茨城県内の某大学柔道部および剣道部に所属する1~ (学校区分)はSOCと関連がなく、SOCは健康の自己評 4年生の全部員92名を対象とした。対象者は武道開始以 価およびストレスの自己評価とそれぞれ単独で関連して 来、調査時点まで継続して実践しており、柔道部員の約 8 健康支援 第15巻2号 7- 14,2013 8割、剣道部員の約6割がスポーツ推薦による入学者で 1~4点を付与し、15項目の合計得点を算出した。した ある。柔道部員の15%程度が国際大会、また20%程度が がって得点範囲は15 ~ 60点であり、合計得点が高いほ 全国大会に、剣道部員の60%程度が全国大会に、それぞ ど周囲からのサポートが良好であることを表す。本対象 れ入賞している。回収数92部のうち、回答が完全であっ 者におけるクロンバックのα係数は.92であった。 た84名(有効回答率91.3%)を分析対象とした。 ③相互協調的自己観 2.調査方法 高田の文化的自己観を測定する尺度22) のうち相互協 2011年6月上旬に、無記名自記式の調査票を用いて調 調的自己観尺度を用いた。本尺度は大学生を含め広く一 査を実施した。各部の稽古終了後、某大学柔道場・剣道 般に使用されている。10項目について、 「全くあてはまら 場にて調査票を配布した。調査票は、回答後に対象者本 ない」~「ぴったりあてはまる」の7件法で尋ね、それ 人によって糊付けできる封筒に入れて提出してもらった。 ぞれに1~7点を付与し、10項目の合計得点を算出し 3.調査項目 た。したがって得点範囲は10 ~ 70点であり、合計得点 調査票は、1)属性、2)武道開始年齢、3)SOC、 が高いほど相互協調的自己観が強いことを表す。本対象 4)心理社会的特性(①ソーシャルスキル、②ソーシャ 者におけるクロンバックのα係数は.69であった。 ルサポート、③相互協調的自己観)に関する項目で構成 4.倫理的配慮 した。SOC尺度および各心理社会的特性の尺度の妥当性 調査に先立ち、筑波大学人間総合科学研究科研究倫理 は先行研究 委員会の承認を受け(承認日:2011年5月25日) 、某大 により確認されている。 18-22) 1)属性 学柔道部および剣道部の顧問教員の同意を得た。対象者 性別・学年・現在実施している武道種目(柔道・剣道) に対しては、調査票のフェイスシートに研究の主旨説明 について、それぞれ尋ねた。 およびプライバシーの保護、本人の自由意思の尊重、回 2)武道開始年齢 答拒否および回答自体の中断が可能であること、調査票 現在実践している武道種目を始めた年齢を尋ねた。 の提出をもって調査協力に同意とみなす旨を明記すると 3)SOC ともに、調査員が口頭で説明した。 Antonovskyが 開 発 し、 山 崎 ら が 翻 訳 し た 日 本 語 版 5.分析方法 SOC短縮版尺度 を用いた。本尺度は大学生を含め広 まず、SOC得点と属性、武道開始年齢、各心理社会的 く一般に使用されている。13項目について7件法で尋ね、 特性得点との関連性について単変量解析により検討し それぞれに1~7点 (逆転項目については逆に7~1点) た。ここで有意な関連がみられた変数について、相互に を付与し、13項目の合計得点を算出した。したがって得 強い相関のないことを確認した上で、これらを独立変数 点範囲は13 ~ 91点であり、合計得点が高いほどSOCが とし、性別・学年を統制変数として投入し、SOC得点を 高いことを表す。本対象者におけるクロンバックのα係 従属変数とする重回帰分析 (ステップワイズ法) を行った。 数は.78であった。 分析の際、武道開始年齢は「6歳以下」 「7歳以上」で 4)心理社会的特性 2群化した。中央値が6、平均値が7.1であり、また中 ①ソーシャルスキル 央値を基準とする2通りの群別(カットオフポイント5 菊 池 のKiSS-18(Kikuchi’ s Scale of Social Skills:18 歳あるいは6歳)のうち、6歳のほうが両群同数に近く items)尺度 を用いた。本尺度は大学生を含め広く一 なるためである。さらに競技スポーツを開始する適切な 般に使用されている。18項目について、 「いつもそうでな 年齢として、発達心理学的観点からは小学校低学年期の い」~「いつもそうだ」の5件法で尋ね、それぞれに1 6~7歳が一つの基準とされ、これ以前に競技スポーツ ~5点を付与し、18項目の合計得点を算出した。した を始めることは子どもの精神健康への影響上好ましくな がって得点範囲は18 ~ 90点であり、合計得点が高いほ いとされている23)。 どソーシャルスキルが高いことを示す。本対象者におけ 全ての統計解析にはIBM SPSS Statistics 18.0を用い、 るクロンバックのα係数は.83であった。 有意水準は5%とした。 20) 18,19) ②ソーシャルサポート Ⅲ.結果 和田のソーシャルサポート尺度21) を用いた。本尺度 源を限定せず周囲からどれくらいサポートが得られてい 1.対象者の属性・SOC得点・各心理社会的特性 得点および武道開始年齢 るかを測定するものである。15項目について「あてはま まず、対象者の属性を表1に示す。対象者全体でみる らない」~「あてはまる」の4件法で尋ね、それぞれに と、性別は、男性61名(72.6%)であり、女性に比べて は大学生を対象として作成された尺度であり、サポート 9 健康支援 第15巻2号 7- 14,2013 男性が多かった。学年については、各学年に顕著な偏り したところ、武道開始年齢が「6歳以下」群は「7歳以 はなかった。武道種目別の性別および学年別割合に有意 上」群よりSOC得点が有意に高かった(表4) 。また、 差は認められなかった。 SOC得点と各心理社会的特性得点との関連を検討したと 次 に、SOC得 点・ 各 心 理 社 会 的 特 性 得 点 お よ び 武 ころ、ソーシャルスキル得点との間に有意な正の相関 道 開 始 年 齢 を 表 2 に 示 す。 本 対 象 のSOC得 点 平 均 値 が、相互協調的自己観得点との間に有意な負の相関が認 ソ(性 ー=(シ 表 表 1 1は55.7(SD10.1) 対象 対者 象の 者属 の、 性 属 n 8nャ 4=)8ル4ス ) キル得点平均値は ソ性 ー (シ ル 表 表 1 161.1(SD8.6) 対象 対者 象の 者、 属 の 属 性 nャ =( 8 n 4=サ )8ポ 4ー ) ト 得 点 平 均 値 は53.4 められた(表5)。 上記の単変量解析においてSOC得点と有意な関連がみ 表 表 表 表 表 1 表 1 表 1 表 1 1対 象 対者 象 の 者属 の性 属 (性 n =( 8n 4=)8 4 ) (SD6.8) 、相互協調的自己観得点平均値は49.8(SD6.4) 1であった。武道開始年齢の平均値は7.1(SD2.5) 対象 対者 象の 者属 の性 属 (性 n =( 8n 4=)8 4 ) 、中央 1 対 象 対 者 象 の 者 属 の 性 属 ( 性 n 1対 象 対者 象の 者属 の性 属 (性 n= =(( 8 8n n4 4= =))8 84 4 )) られた変数(武道開始年齢については、 「6歳以下」群を 表 表 表 表 表 2 表 2 表 2 表 2 2S O S CO得 C点 得お 点よ おび よ各 び心 各理 心社 理会 社的 会特 的性 特得 性点 得・ 点武 ・道 武開 道始 開年 始齢 年齢 2S O S C O 得 C 点 得 お 点 よ お び よ 各 び 心 各 理 心 社 理 会 社 的 会 特 的 性 特 得 性 点 得 ・ 点 武 ・ 道 武 開 道 始 開 年 始 齢 年齢 性別の比較 : Fisherの直接確率法 表点 3・ 属道 性開 別始 に年 み齢 た SOC 得 点 2 び 2 S O S C O 得 C 点 得 お 点 よ お よ 各 び 心 各 理 心 社 理 会 社 的 会 特 的 性 特 得 性 得 点 武 ・ 武 道 開 始 年 学年の比較 : χ 検定 2S OS CO得 C点 得お 点よ お び よ各 び心 各理 心社 理会 社的 会特 的性 特得 性点 得・ 点武 ・道 武開 道始 開年 始齢 年齢 齢 「0」 「7歳以上」群を「1」でダミーコーディング)を 、 全体 全体 柔道部員 柔道部員 値は6.0、範囲は3~ 14歳であった。 剣道部員 剣道部員 独立変数、性別・学年を統制変数として投入し、SOC得 検定検定 全体 全体 柔道部員 柔道部員 剣道部員 剣道部員 (n=84) (n=84) (n=36) (n=36) (n=48) (n=48) 点を従属変数とする重回帰分析を行った。その結果、武 2.SOC得点と各変数との関連 検定検定 (n=84) (n=84) (n=36) (n=36) (n=48) (n=48) 全体 全体 柔道部員 柔道部員 剣道部員 剣道部員 性別性別 SOC得点と属性との関連を検討した結果、性別・学 道開始年齢(β=-.213, 検定検定 p<.05)、ソーシャルスキル得点 全体 全体 柔道部員 柔道部員 剣道部員 剣道部員 性別性別 (n=84) (n=84) (n=36) (n=36) (n=48) (n=48) 検定 検定 男性 男性 61 (72.6%) 61 (72.6%) 25 (69.4%) 25 (69.4%) 36 (75.0%) 36 (75.0%) 年・武道種目のいずれも有意な関連を認めなかった(表 (β=.334, p<.01) 、および相互協調的自己観得点(β= p=.572 p=.572 全体 全体 柔道部員 柔道部員 剣道部員 剣道部員 (n=36) (n=36) (n=48) (n=48) 性別性別 男性女性 男性 23 61(n=84) (72.6%) 61(n=84) (72.6%) 25 (69.4%) 25 (69.4%) 12 36 (75.0%) 36 (75.0%) 全体 全体 柔道部員 柔道部員 剣道部員 剣道部員 検定 検定 女性 (27.4%) 23 (27.4%) 11 (30.6%) 11 (30.6%) (25.0%) 12 (25.0%) p=.572 p=.572 検定 検定 3) 。 武道種目によるSOC得点の有意差が認められなかっ -.203, p<.05)がSOC得点と単独で有意な関連を持つこ (n=84) (n=84) (n=36) (n=36) (n=48) (n=48) 性別 性別 女性 女性 23 (27.4%) 23 (27.4%) 11 (30.6%) 11 (30.6%) 12 (25.0%) 12 (25.0%) 男性 男性 61 (72.6%) 61 (72.6%) 25 (69.4%) 25 (69.4%) 36 (75.0%) 36 (75.0%) (n=84) (n=84) (n=36) (n=36) (n=48) (n=48) 学年学年 p=.572 p=.572 たため、柔道部員と剣道部員を一括して分析を進めるこ とが示された(表6) 。すなわち、武道開始年齢が6歳 性別 性別 男性 男性 61 (26.2%) (72.6%) 61 (26.2%) (72.6%) 259 (30.6%) (69.4%) 25 (69.4%) 36 (75.0%) 36 (75.0%) 学年 女性 女性 23 (27.4%) 23 (27.4%) 11 11 12 性別学年 性別 1年生 1年生 22 22 (25.0%) 9 (30.6%) (25.0%) 12 13 (25.0%) (27.1%) 13 (25.0%) (27.1%) p=.572 p=.572 とにした。 以下の者、ソーシャルスキルが高い者、相互協調的自己 2 男性 男性 61 (72.6%) 61 (72.6%) 25 (69.4%) 25 (69.4%) 36 (75.0%) 36 (75.0%) 女性 女性 23 (27.4%) 23 (27.4%) 11 11 (30.6%) 12 (25.0%) 1年生 22 (25.0%) 99 (25.0%) 13 (27.1%) 13 学年学年 2年生 2年生 27 (32.1%) 27 (32.1%) (25.0%) (25.0%) 18 (25.0%) (37.5%) 18 (37.5%) 男性1年生 男性 22 61 (26.2%) (72.6%) 61 (26.2%) (72.6%) 2599 (30.6%) (69.4%) 25 (69.4%) 12 36 (75.0%) 36 (27.1%) (75.0%) χ2p=.572 (3)=4.526 χ p=.572 (3)=4.526 表 女性 1 対 象 者 の 属 性 ( n = 8 4 ) 2p=.572 2p=.572 次に、SOC得点と武道開始年齢との関連について検討 観が弱い者ほど、ストレス対処力が高いことが示された。 女性 23 (27.4%) 23 (27.4%) 11 (30.6%) 11 (30.6%) 12 (25.0%) 12 (25.0%) 学年学年 2年生 2年生 27 (32.1%) 27 (32.1%) 9 (25.0%) 9 (25.0%) 18 (37.5%) 18 (37.5%) 1年生 1年生 22 (26.2%) 22 (26.2%) 13 (27.1%) 13 (27.1%) χ (3)=4.526 χ (3)=4.526 女性 女性 23 (27.4%) 23 (27.4%) 11 (30.6%) 11 (30.6%) 12 (25.0%) 12 (25.0%) p=.210 p=.210 3年生 3年生 14 (38.9%) 14 (38.9%) 9 (18.8%) 9 (18.8%) 2 2 学年 学年 1年生 1年生 22 (26.2%) 22 (26.2%) 9 (25.0%) 9 (25.0%) 13 (27.1%) 13 (27.1%) p=.210 p=.210 2年生 2年生 27 (32.1%) 27 (32.1%) 9 (25.0%) 9 (25.0%) 18 (37.5%) 18 (37.5%) 3年生 3年生 23 (27.4%) 23 (27.4%) 14 (38.9%) 14 (38.9%) 9 (18.8%) 9 (18.8%) χ (3)=4.526 χ (3)=4.526 学年学年 4年生 4年生 12 (14.3%) 12 (14.3%) 4 (11.1%) 4 (11.1%) 8 (16.7%) 8 (16.7%) 2 2 1年生 1年生 22 (26.2%) 22 (26.2%) 13 (27.1%) 13 (27.1%) 2年生 2年生 27 (32.1%) 27 (32.1%) 9 (25.0%) 9 (25.0%) 18 (37.5%) 18 (37.5%) χ (3)=4.526 χ (3)=4.526 p=.210 p=.210 4年生 4年生 12 (11.1%) (11.1%) (16.7%) (16.7%) 3年生 3年生 23 (27.4%) 23 (27.4%) 1449 (38.9%) 1449 (38.9%) 1年生 1年生 12 22 (14.3%) (26.2%) 22 (14.3%) (26.2%) (25.0%) (25.0%) 1398 (18.8%) (27.1%) 1398 (18.8%) (27.1%) 表1 対象者の属性(n=84) 2 2 2年生 2年生 27 (32.1%) 27 (32.1%) 9 (25.0%) 9 (25.0%) 18 (37.5%) 18 (37.5%) 2 2 p=.210 p=.210 χ (3)=4.526 χ 3年生 3年生 23 (27.4%) 23 (27.4%) 1449 (38.9%) 1449 (38.9%) 4年生 4年生 12 (11.1%) (11.1%) (16.7%) (16.7%) χ (3)=4.526 2年生 2年生 12 27 (14.3%) (32.1%) 27 (14.3%) (32.1%) (25.0%) (25.0%) 1898 (18.8%) (37.5%) 1898 (18.8%) (37.5%) 性別の比較 : Fisherの直接確率法 性別の比較 : Fisherの直接確率法 χ (3)=4.526 (3)=4.526 全体 柔道部員 剣道部員 p=.210 p=.210 3年生 3年生 23 (27.4%) 23 (27.4%) 14 (38.9%) 14 (38.9%) 9 (18.8%) 9 (18.8%) 2 2 12 4年生 4年生 (14.3%) 12 (14.3%) 4 (11.1%) 4 (11.1%) 8 (16.7%) 8 (16.7%) 性別の比較 : Fisherの直接確率法 性別の比較 : Fisherの直接確率法 検定 p=.210 p=.210 3年生 3年生 23 (27.4%) 23 (27.4%) 14 (38.9%) 14 (38.9%) 9 (18.8%) 9 (18.8%) 学年の比較 : χ 学年の比較 : χ 検定検定 2 2 12 (14.3%) (n=84) 4 (11.1%) (n=36) (n=48) 4年生 4年生 12 44 (11.1%) 88 (16.7%) 性別の比較 : Fisherの直接確率法 性別の比較 : Fisherの直接確率法 学年の比較 : χ 学年の比較 : χ 検定 検定 4年生 4年生 12 (14.3%) 12 (14.3%) (14.3%) 4 (11.1%) (11.1%) 88 (16.7%) (16.7%) (16.7%) 2 性別 2 検定 性別の比較 : Fisherの直接確率法 性別の比較 : Fisherの直接確率法 学年の比較 : χ 学年の比較 : χ 検定 2 2 性別の比較 : Fisherの直接確率法 性別の比較 : Fisherの直接確率法 男性 61 (72.6%) 25 (69.4%) 36 (75.0%) 学年の比較 : χ 学年の比較 : χ 検定 検定 性別の比較 : Fisherの直接確率法 性別の比較 : Fisherの直接確率法 p=.572 2 2 女性 23 (27.4%) 11 (30.6%) 12 (25.0%) 2 検定 2 検定 学年の比較 : χ 学年の比較 : χ 学年の比較 : χ 学年の比較 : χ 検定検定 学年 1年生 22 (26.2%) 9 (25.0%) 13 (27.1%) 2 2年生 27 (32.1%) 9 (25.0%) 18 (37.5%) χ (3)=4.526 3年生 23 (27.4%) 14性 (38.9%) 表 表 2 2S O S CO得 C点 得 お 点よ おび よ各 び心 各 理 心社 理会 社的 会特 的 特 得 性点 得・ 点武 ・9 道 武(18.8%) 開 道始 開年 始齢 年 齢 p=.210 表 表 2 2S O S CO得 C点 得 お 点よ おび よ各 び心 各 理 心社 理会 社的 会特 的4性 特 得 性点 得・ 点武 ・8 道 武(16.7%) 開 道始 開年 始齢 年齢 4年生 12 (14.3%) (11.1%) (SD) (SD) 平均値 平均値 (SD) (SD) 平均値 平均値 表2 SOC得点および各心理社会的特性得点・ 表3 属性別にみたSOC得点 (SD) 平均値 平均値 SOC SOC 55.755.7 ( 10.1) ((SD) 10.1) 武道開始年齢 平均値 平均値 SOCSOC 55.7 55.7 ((SD) 10.1) ((SD) 10.1) 平均値 (SD) 検定 (SD) (SD) 平均値 平均値 SOC SOC 55.7 55.7 ( 10.1) ( 10.1) (SD) (SD) 性別 平均値 平均値 ソーシャルスキル ソーシャルスキル 61.161.1 ( 8.6) ( 8.6) SOCソーシャルスキル SOC 55.7 (( 10.1) (( 10.1) ソーシャルスキル 61.155.7 61.1 8.6) 8.6) 男性 (n=61) 55.9 ( 10.2) SOC SOC 55.7 55.7 ( 10.1) ( 10.1) p=.755 女性 (n=23) 55.1 ( 10.2) t= .314 ソーシャルスキル ソーシャルスキル 61.155.7 61.1 8.6) 8.6) SOCソーシャルサポート SOC 55.7 ( 10.1) ( 10.1) ソーシャルサポート 53.4 53.4 6.8) 6.8) ソーシャルスキル ソーシャルスキル 61.153.4 61.1 8.6) 8.6) ソーシャルサポート ソーシャルサポート 53.4 ( 6.8) ( 6.8) 学年 表 2 S O C 得 点 お よ 61.1 び各 心 8.6) 理社 会 的 特 性1年生 得 点(n=22) ・ 武 道 開 始 58.1 年 齢( 10.8) ソーシャルスキル ソーシャルスキル 61.1 8.6) ソーシャルサポート ソーシャルサポート 53.4 (( 6.8) (( 6.8) ソーシャルスキル ソーシャルスキル 61.1 61.1 8.6) 8.6) 相互協調的自己観 相互協調的自己観 49.853.4 49.8 6.4) 6.4) ソーシャルサポート ソーシャルサポート 53.4 (( 6.8) (( 6.8) 2年生 (n=27) 51.7 ( 9.1) 相互協調的自己観 相互協調的自己観 49.853.4 49.8 6.4) 6.4) ソーシャルサポート ソーシャルサポート 53.4 53.4 ( 6.8) ( 6.8) 3年生 (n=23) 58.7 ( 10.1) 相互協調的自己観 相互協調的自己観 49.8 49.8 6.4) 6.4) ソーシャルサポート ソーシャルサポート 53.4 ( 2.5) 6.8) ( 2.5) 6.8) 武道開始年齢 武道開始年齢 7.153.4 7.1 4年生 (n=12) 54.3 ( 9.2) F=2.658 p=.052 相互協調的自己観 相互協調的自己観 49.8 6.4) 6.4) 武道開始年齢 武道開始年齢 7.149.8 7.1 ( 6.0 2.5) ( 2.5) 6.0 中央値 中央値 (SD) 平均値 武道種目 相互協調的自己観 相互協調的自己観 49.8 49.8 ( 6.4) ( 6.4) 6.0 6.0 中央値 中央値 武道開始年齢 武道開始年齢 7.13-14 7.1 (3-14 2.5) ( 2.5) range range 相互協調的自己観 相互協調的自己観 49.8 49.8 6.4) 6.4) 柔道部 (n=36) 57.4 ( 8.7) 武道開始年齢 武道開始年齢 7.13-14 7.1 (3-14 2.5) ( 2.5) range range 6.0 6.0 中央値 中央値 剣道部 (n=48) 54.3 ( 11.0) t=1.410 p=.162 SOC 55.7 ( 10.1) 6.0 6.0 武道開始年齢 武道開始年齢 7.1 7.1 ((3-14 2.5) (( 2.5) 中央値 中央値 range range 武道開始年齢 武道開始年齢 7.13-14 7.1 2.5) 2.5) 性別間・武道種目間の比較 : 対応のないt検定 6.0 6.0 3-14 中央値 中央値 range range 6.03-14 6.0 中央値 中央値 3-14 3-14 range range ソーシャルスキル 61.1 ( 8.6) 学年間の比較 : 一元配置分散分析 3-14 3-14 range range ソーシャルサポート 53.4 ( 6.8) 相互協調的自己観 49.8 ( 6.4) 18 18 10 表 3 健康支援 第15巻2号 7- 14,2013 Ⅳ.考察 属 性 別 に み た SOC 得 点 平均値 (SD) 性別 検定 男性 (n=61) 55.9 ( 10.2) 一方で、本対象と同じ大学における体育専攻学生に p=.755 女性 (n=23) 55.1 ( 10.2) ついて、29項目7件法のSOC尺度を用いた先行研究 t= .314 26) 1.本対象の武道開始年齢とストレス対処力の状況 学年 本対象の武道開始年齢は3~ 14歳(平均値7.1, SD2.5) によれば、SOC得点平均値は126.1であり、関東圏内の 1年生 (n=22) 58.1 ( 10.8) 6) であった。武道実施の場として、地域道場と中学~大学 、都内の国・ 2年生 (n=27) 51.7 ( 9.1) 国・私立大学生および大学院生(116.6) 16) の部活動が挙げられるが、本対象集団の半数以上は小学 3年生 (n=23) 58.7 ( 10.1) 私立3大学の1・2年生(117.6) 、公立2大学の1~ 27) 生以下で柔道・剣道を開始していることから、多くは地 のいずれと比べても有意に高い(い 4年生 (n=12) 54.3 ( 9.2) 3年生(114.5) F=2.658 p=.052 武道種目 域道場で武道を始めたと考えられる。 ずれもp<.01)。このことは、本調査対象の大学における 柔道部 (n=36) 57.4 ( 8.7) 本成績では、柔道部員と剣道部員のSOC得点に有意差 体育専攻学生のSOCレベルが、他大学の一般学生よりも 剣道部 (n=48) 54.3 ( 11.0) 高い可能性を示唆している。 t=1.410 p=.162 を認めなかった。したがって、両者のSOCレベルは同等 性別間・武道種目間の比較 : 対応のないt検定 である可能性が示唆された。 そこでさらに、本対象のSOCレベルと、本対象と同じ 学年間の比較 : 一元配置分散分析 26) また、本対象におけるSOC得点平均値(55.7)を、 大学における体育専攻学生 のそれを、得点率で比較 本 研 究 と 同 じ13項 目 7 件 法 のSOC尺 度 を 用 い た 先 行 してみると(本研究と先行研究26) でのSOC得点範囲が 知見 と 比 較 す る と、大学文系・理系学部 1~ 4年 生 異なるため、それぞれについて満点(本研究:91点、 (47.1)24)、医療系大学1~4年生(48.1)25)のいずれよ 先行研究26):203点)に対する得点率を算出) 、前者が りも、本成績のほうが有意に高いことから(いずれも 61.2%、後者が62.1%であった。したがって、厳密な比較 p<.01)、大学生武道部員のSOCレベルは一般大学生に比 はできないものの、武道部員と体育専攻学生のSOCはほ べて高い可能性が示唆された。 ぼ同水準であると思われる。 表 4 C性 得得 点点 と の 相 関 係 数 5 武 S O道 C開 得始 点年 と齢 各別 心に 理み 社た 会S 的O特 表 5 SOC 得 点 と 各 心 理 社 会 的 特 性 得 点 と の 相 関 係 数 表 5 SOC 得 点 と 各 心 理 社 会 的 特 性 得 点 と の 相 関 係 数 表4 武道開始年齢別にみたSOC得点 平均値 (SD) 検定 ソーシャル ソーシャル 相互協調的 武道開始年齢 ソーシャル ソーシャル 相互協調的 スキル サポート 自己観 ソーシャル 相互協調的 6歳以下 (n=49) ソーシャル 58.1 ( 10.7) スキル サポート 自己観 スキル サポート 自己観 7歳以上 (n=35) .406 52.2 ( 8.3) p=.008 SOC得点 *** .206 t=2.718 -.278 * 対応のないt検定 SOC得点 .406 *** .206 -.278 * 表 SOC得点 5 S O C 得 点.406 と 各*** 心 理 社 会 .206 的特性得点 との* 相関係数 -.278 Pearsonの積率相関係数 *:p<.05 , ***:p<.001 Pearsonの積率相関係数 *:p<.05 , ***:p<.001 Pearsonの積率相関係数 *:p<.05 , ***:p<.001 表5 SOC得点と各心理社会的特性得点との相関係数 SOC得点 ソーシャル スキル ソーシャル サポート .406 *** .206 相互協調的 自己観 -.278 * 表 6 SOC 得 点 に 関 す る 重 回 帰 分 析 Pearsonの積率相関係数 表 6 S O C 得 点 に 関 す る 重 回 帰 分 析 *:p<.05 , ***:p<.001 表 6 SOC 得 点 に 関 す る 重 回 帰 分 析 表6 SOC得点に関する重回帰分析 β値 p値 β値 p値 β値 p値 ※ -.213 .033 武道開始年齢 ※ -.213 .033 武道開始年齢 ※ -.213 .033 武道開始年齢 ソーシャルスキル .334 表 6 SOC 得 点 に 関 す る 重 回 帰 .001 分19 析 ソーシャルスキル .334 .001 ソーシャルスキル .334 .042 .001 相互協調的自己観 -.203 相互協調的自己観 -.203 .042 相互協調的自己観 -.203 .042 2 F(3,80)=9.047 p<.001 調整済みR 値=.225 β値 p値 2 F(3,80)=9.047 p<.001 調整済みR 値=.225 ※ 武道開始年齢:6歳以下を「0」、7歳以上を「1」とした 2 F(3,80)=9.047 p<.001 調整済みR 値=.225 ※ 武道開始年齢:6歳以下を「0」、7歳以上を「1」とした ※ 性別、学年を統制変数として投入した -.213 .033 武道開始年齢 ※ 武道開始年齢:6歳以下を「0」、7歳以上を「1」とした 性別、学年を統制変数として投入した 変数選択はステップワイズ法による 性別、学年を統制変数として投入した 変数選択はステップワイズ法による .334 .001 ソーシャルスキル 変数選択はステップワイズ法による 11 相互協調的自己観 2 調整済みR 値=.225 -.203 .042 F(3,80)=9.047 p<.001 健康支援 第15巻2号 7- 14,2013 以上のことから、本調査対象の武道部員におけるSOC レス対処力が向上し、その後の精神健康に好ましい影響 レベルは、一般大学生よりも高い可能性が示された。一 をもたらす可能性を示唆している。 方で、本調査対象と同じ大学における体育専攻学生の また一方で、本成績は大学1年生におけるスポーツ経 SOCレベルも、一般大学生より高く、本成績とほぼ同水 験年数の長さとSOCの高さが関連するという先行知見8) 準にあると思われた。両者はいずれもハイレベルなス と類似していることから、競技種目に関わらずスポーツ ポーツ競技者集団であり、したがって、ハイレベルな 活動全般における経験の長さがSOCと関連する可能性も スポーツ競技を実践している大学生は一般大学生よりも ある。他方で、大学生男子柔道部員のSOCと柔道開始時 SOCレベルが高いという可能性も考えられる。今後さら 期は関係がないという先行知見11) もみられる。これに に、競技レベルの異なる他大学の武道部員においても実 ついては、本研究では柔道部員だけでなく剣道部員も併 証検討を重ねる必要がある。 せて分析していること、また本研究では柔道・剣道を開 2.大学生武道部員におけるストレス対処力の関連 要因 始した年齢を中央値である6歳と7歳に分けたのに対 大学生武道部員におけるストレス対処力の関連要因に 学校以前・小学校・中学校・高校・大学)に分けて一元 ついて検討した結果、武道開始年齢、ソーシャルスキ 配置分散分析により検討しており、分析方法の違いによ ル、相互協調的自己観とそれぞれ単独で関連していた。 ることも考えられる。このように、スポーツ経験の長さ まず、武道開始年齢について考察する。本研究では、 とSOCとの関連については異論がみられるため、今後さ 6歳以下と7歳以上に2群化して検討したところ、武道 らに検討が必要である。 開始年齢が6歳以下の者は7歳以上の者よりSOCが高 次に、ソーシャルスキルについて考察する。ソーシャ かった。 ルスキルとは、 「対人関係を円滑にするスキルで、相手か し、先行研究11)では柔道を開始した時期を学校区分(小 SOCの形成・発達の上では、 「一貫性の経験」 「結果形成 ら肯定的な反応をもらうことができ、相手の否定的な反 への参与の経験」 、また幼少期における人間関係や社 応を避けることのできるようなスキル」であり、具体的 会環境が重要とされている28)。柔道や剣道の道場は、 「心 には、周りの人たちとの間でトラブルが起きてもそれを 身鍛錬の場であり、規律と礼儀作法を守り、静粛・清 上手に処理できる、自分の感情や気持ちを素直に表現で 潔・安全を旨とし、厳粛な環境の維持に努める」場とさ きる、といった自信の強さを表している20)。ソーシャル れる 。そこでは正座・黙想・礼といった作法や、基本 スキルの高い者は社会生活の中で対人関係を良好に保て 動作を入念に教え込む型稽古、実際に相手と対峙して技 るため周囲からのサポートなどを得やすく、またSOC理 を掛け合う組手・乱取などを経験する。 論によれば、それらを動員してストレッサーにうまく対 したがって、幼少期に武道を開始してルールや規律が 処することでSOCが強化される。本成績はSOC理論と一 明確で価値観を共有できる「一貫性の経験」を積んだこ 致しており、したがって、武道の稽古や試合場面におい と、また稽古を継続することで競技力が向上し試合での て、仲間と積極的にコミュニケーションを図ることので 「結果形成への参与の経験」がもたらされたこと、さら きる雰囲気を作ること等がストレス対処力の向上に効果 7) 29) に師範や共に厳しい稽古に励む仲間といった人間関係が 的であると考えられた。 構築されたことが、SOCの向上につながった可能性が推 さらに、相互協調的自己観について考察する。相互協 察される。 調的自己観は、人が自分をどう思っているのかを気にし ところで、子どもが競技スポーツを開始する適切な時 たり、自分の所属集団の仲間と意見が対立することを回 期については、発達心理学的観点から6~7歳の小学校 避したりするような対人不安や他者依存的な性格の強さ 低学年期が一つの基準とされており、これ以前の幼少期 を表している22)。相互協調的自己観が強い者は弱い者と は競争と勝利の強調による心理的ストレスを受けやすく 比べて相対的幸福感が低く、抑うつレベルが高いとされ 精神健康を阻害されやすいことから、小学校低学年以前 ている30)。本江ら17)の看護学生を対象とした研究によれ での開始は望ましくないとされている23)。しかしながら ば、他者からの評価を気にしないことがSOCの高さと関 本成績によれば、6歳以下で柔道・剣道を始めた大学生 連しており、本知見と整合する結果と言える。 は、7歳以上で始めた者よりもSOCレベルが高かった。 本研究は、大学生柔道・剣道部員を対象に、ストレス このことは、競争や勝利を強調する競技スポーツ一般と 対処力の状況を明らかにし、またSOCと武道を始めた時 は異なり、武道には、心身の鍛練や対戦相手への礼儀を 期および心理社会的特性との関連について検討した初め 身に付け品位を高めることを重んじる 特質があるこ ての研究であるが、以下のような限界と課題が考えられ とから、むしろ幼少期に開始し継続実践することでスト る。第一に、本対象は一大学の柔道および剣道部員で競 13,14) 12 健康支援 第15巻2号 7- 14,2013 技レベルの高い集団であるため、今後は他のスポーツ種 連,ヒューマン・ケア研究,2009;10(1) :23-33. 目実践者との比較や競技レベルの異なる集団での検討が 7)山崎喜比古,ストレス対処能力SOCとは,山崎喜比 必要である。第二に、本研究は横断研究であり、武道経 古,戸ヶ里泰典,坂野純子編,ストレス対処能力 験とストレス対処力との因果関係については明らかでな SOC,東京:有信堂高文社,2008:3-24. いため、今後は縦断研究により因果関係を検討する必要 8)園部豊,續木智彦,西條修光,大学入学時における がある。第三に、武道実践における経験内容、師範およ 過去の運動・スポーツ経験が首尾一貫感覚(SOC) び仲間との関係性、道場・師範の方針等を詳細に取り上 および健康度に及ぼす影響,学校保健研究,2012; げ、ストレス対処力との関連性を検討する必要がある。 53:527-532. 日本武道協議会が提唱する「武道憲章」29) では、武 9)Kuuppelomäki M, Utriainen P, A 3 year follow-up 道の目的として「武技による心身の鍛練を通じて人格を study of health care students’ sense of coherence 磨き、識見(正しい物事を見極める目あるいは能力)を and related smoking, drinking and physical exer- 高める」ことがあげられている。こうした特質をもつ武 cise factors, International Journal of Nursing Stud- 道とストレス対処力との関連について、今後さらに検討 ies, 2003;40:383-388. を加えたい。 10)Öztekin C, Tezer E, The role of sense of coherence and physical activity in positive and negative af- Ⅴ.まとめ fect of Turkish adolescents, Adolescence, 2009;44 大学生武道部員(柔道部・剣道部)84名を対象に、ス (174) :421-432. トレス対処力(SOC) の状況および関連要因を検討した。 11)正木嘉美,細川伸二,篠原信一,男子柔道選手にお 本対象におけるSOC得点平均値は55.7(SD10.1)であり、 けるSOC(Sense of Coherence)に関する一考察, 一般大学生より高い可能性が示唆された。SOCの高さ 天理大学学報,2010;224:1-13. は、武道を幼少期に開始したこと、ソーシャルスキルが 12)村田直樹,武道とスポーツ,田中守,藤堂良明,東 高いこと、相互協調的自己観が弱いことと関連していた。 憲一,村田直樹著,武道を知る,東京:不昧堂出 附記 版,2000:39-44. 本研究の調査にご協力頂きました某大学体育会柔道 13)村 田直樹,柔道の歴史,田中守,藤堂良明,東憲 部・剣道部員の皆様に心より感謝申し上げます。なお本 一,村田直樹著,武道を知る,東京:不昧堂出版, 研究の一部は、第13回日本健康支援学会年次学術集会 2000:50-58. (2012)において発表した。 14)東憲一,剣道の歴史,田中守,藤堂良明,東憲一, 村 田 直 樹 著, 武 道 を 知 る, 東 京: 不 昧 堂 出 版, 文献 2000:58-68. 1)内 閣 府, 子 ど も・ 若 者 白 書( 旧 青 少 年 白 書 ) , 15)岸田秀樹,足利学,首尾一貫感覚(SOC)測定に基 http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/hakusho.html. づく医療系教育論の試み―医療系学生生活における (平成25年2月13日アクセス可能) ストレス一般抵抗資源(GRRs)の検索,藍野大学 2)堀 匠,島津明人,大学新入生のソーシャルスキル 紀要,2009;23:35-46. が,入学後の友人サポート,抑うつ,孤独感に及ぼ 16)木村知香子,山崎喜比古,石川ひろの 他,大学生 す影響,ストレス科学,2005;19(4) :245-253. のSense of Coherence(首尾一貫感覚,SOC)とそ 3)山崎喜比古,ストレス対処力(sense of coherence) の関連要因の検討.日本健康教育学会誌.2001;9: の概念と定義,看護研究,2009;42 (7) :479-490. 37-48. 4)落合龍史,大東俊一,青木清,大学生におけるSOC 17)本 江 朝 美, 高 橋 ゆ か り, 古 市 清 美, 看 護 学 生 の 及びライフスタイルと主観的健康感との関係,心身 Sense of Coherenceと自己および他者に対する意識 健康科学,2011;7(2) :91-96. との関連,上武大学看護学部紀要,2011;6(2): 5)v on Bothmer MI, Fridlund B, Self-rated health 1-8. among university students in relation to sense of 18)Antonovsky A著,山崎喜比古,吉井清子監訳,健 coherence and other personality traits, Scandina- 康の謎を解く ストレス対処と健康保持のメカニズ vian Journal of Caring Sciences, 2003;17:347-357. ム,東京:有信堂高文社,2001:221-225. 6)藤里紘子,小玉正博,首尾一貫感覚(Sense of Co- 19)戸ヶ里泰典,SOCはどのように測ることができるの herence)とストレス反応,および対処方略との関 か,山崎喜比古,戸ヶ里泰典,坂野純子編,ストレ 13 健康支援 第15巻2号 7- 14,2013 ス対処能力SOC,東京:有信堂高文社,2008:2538. 20)菊 池章夫,Kiss-18の構成,菊池章夫編,社会的ス キルを測る:Kiss-18ハンドブック,東京:川島書 店,2007:23-36. 21)和田実,鄭暁斉,郭小蘭,日本と中国の大学生のス トレスとその対処行動―質問項目の作成―,東京学 芸大学紀要1部門,1993;44:247-246. 22)高 田利武,相互独立的-相互協調的自己観尺度に 就いて,奈良大学総合研究所所報,2000;8:145163. 23)Passer MW, Wilson BJ, 西野明訳,スポーツを始 める適切な時期:動機づけ的,情動的,認知的要 因,Smoll F, Smith R編著,市村操一,杉山佳生, 山本裕二監訳,ジュニアスポーツの心理学,東京: 大修館書店,2008:1-14. 24)山 本武志,阿部愛美,福代亜矢子,北池正,中学 校・高校時代の友人関係が大学生のストレス対処 能力SOCに与える影響,Campus health,2010;47 (2):174-180. 25)岸田秀樹,足利学,都市勤労者型自殺予防のための 地域的資源の探索に向けて―医療系大学生の首尾一 貫感覚(SOC)と地域的連帯との関係についてのプ レテストに基づいて―,藍野大学紀要,2009;23: 28-33. 26)細川麻,中学・高校の運動部活動とストレス対処能 力に関する検討―体育専攻とその他専攻大学生の比 較分析―,筑波大学体育専門学群卒業論文,2007. 27)岩 﨑眞和,五十嵐透子,大学生におけるsense of coherenceとアタッチメント・スタイルおよび知覚 されたソーシャル・サポートの関連,教育実践学論 集,2011;12:71-81. 28)戸ヶ里泰典,SOCの形成要因,山崎喜比古,戸ヶ里 泰典,坂野純子編,ストレス対処能力SOC,東京: 有信堂高文社,2008:39-53. 29)日本武道協議会,http://www.nipponbudokan.or.jp/ shinkoujigyou/kenshou.html.( 平 成25年 2 月13日ア クセス可能) 30)黒田祐二,有年恵一,桜井茂男,大学生の親友関係 における関係性高揚と精神的健康との関係―相互協 調的―相互独立的自己観を踏まえた検討―,教育心 理学研究,2004;52:24-32. 14
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