テレメ協ニュース 2011年新年号 目 次 ■ バルク残量監視による配送の合理化について 福山 強志 ・・ 2頁 小林 俊一 ・・ 6頁 洋 ・・11頁 孝明 ・・14頁 ■ 最近のスマートメータの動向と展望 ■ 集中監視システム新バージョン標準化研究部会報告 谷合 ■ 集中監視システム新バージョン環境整備部会報告 畠内 ■ 協議会行事の報告・お知らせ ・・17頁 ・・・テレメータリングを社会インフラに・・・ NPO テレメータリング推進協議会 1 バルク残量監視による配送の合理化について 福山 強志 * 1.概要 私共、コーアガスグループは、1955年の創業以来、LPガス、都市ガス、簡易ガスなどの供給と 発展に努めてまいりました。現在では、LPガス40,000戸、簡易ガス10,000戸と弊社出資 による南日本ガス14,000戸への都市ガス供給を行っており、今年度は55周年の節目の年として、 「感謝の気持ちでGo、Go、キャンペーン」を展開中であります。当社は、創業からのたゆまぬ研究開 発による高度な技術力により、国内外の特許取得件数は28件におよんでいます。 また、このような技術を積極的に諸外国に普及するために、1997年に全米LPガス協会(NPG A)へ加盟、2004年には世界LPガス連盟(WLPGA)に加盟しました。その他国内有力企業へ も、技術供与を行っています。 また、一昨年ブラジル最大のガス会社で、世界で10指のウルトラガス(本社:サンパウロ)と技術 提携を締結し、積極的に技術交流を行っており、昨年はウルトラガスの事業開発部長が来社し、当社の バルク残量監視システムを紹介しました。 当社では、残量監視システムの導入を4~5年前から検討していましたが、 「石油ガス販売事業者構造 改善支援事業」の補助金交付の決定を受けて、バルク貯槽で供給している需要家を対象に、残量を集中 監視することで、配送の効率化(輸送距離及び回数の削減、係る人件費など)並びに安定供給を図るこ とを目的に、東芝メーターテクノ株式会社はじめ各メーカーの協力を得ながら、システムの構築を行い ました。 2.システムの概要 当システムは、バルク貯槽に設置した液面計と電話回線により、共同センターである㈱ティジー情報 ネットワークで常時監視し、当社に設置したIPセンターにそのデーターが転送され、さらに当社のパ ソコン端末に導入された「バルク配送効率化ソフト」により毎日のバルクローリーの配車計画を組み立 てるシステムです(次ページ概要図)。 618 基(平成22年12月末現在) ■システムを導入したバルク貯槽設置数 共同センターへの通信機器の内訳 P M U - 5 ・・・・・・・380 基 共通型 NCU ・・・・・・・141 基 P M U - 8 ・・・・・・・ 23 基 無 線 子 機 ・・・・・・・141 基 F O M A 液面計の内訳 超 音 波 ・・・・・・ 17 基 液 面 計 ・・・・・・・290 基 連続式液面計+レベルコンバーター 2 ・・・・328 基 バルク残量監視システムの概要 連続残量監視システム ・超音波式液面計 ・連続式液面計+レベルコンバーター 需 要 家 先 バルク貯槽 周期にてバルクの残量(%)デー タと、随時残量警告(20%・40%) がNCU経由でIPセンターへ送信 される NCU ・PHS ・一般回線 ・FOMA 電話回線網 TG情報ネットワーク IPセンター 残量警告でパトライト が点灯し警告を出す 専用線網 緊急残量情報はメール送信 本社IPセンター 毎日、IPセンターよりバルク の残量データをバルク配送 効率化システムに取り込む 社内ネットワーク 本社 川内 国分 バルク配送効率化システム ・各需要家の日常の消費パターンを把握 ・バルクの残量40%を予測し配送計画を立てる (グラフ) (配送予定) (配車計画) 3 3.システムの設置事例 写真-1 貯槽プロテクター内 写真-2 通信設備等設置位置 PMU-8、特小無線親機 超音波液面計,特小無線子機 貯槽に超音波液面計を取付け、超音 特小無線親機と PMU-8 を接続。 波液面計の情報を特小無線子機から PMU-8 によりセンターで情報を受信 特小無線親機へ送信する。 する。 写真-4 通信設備等設置位置 PMU-5、レベルコンバーター(マルチ) レベルコンバーターと PMU-5 を接 写真-3 貯槽プロテクター内 続。 PMU-5 により、センターで情報を受 連続式液面計 信する。 フロート型連続式液面計とレベルコ ンバーターを配線にて接続。 4 4.システム導入による今後の展望 LPG業界においては、オール電化の台頭や少子高齢化による人口減少等により、家庭用の需要増は 大変厳しい状況にあります。しかしながら、昨年「エネルギー基本計画」の全面的な見直しが行われ、 LPガスは、化石燃料の中で比較的CO2の排出量が少ないクリーンなガス体エネルギーとの位置付け がなされ、石油代替エネルギーとして民生用への普及拡大が期待されています。また、日本LPガス協 会長も、今年のスローガンは「LPガスが築く未来への架け橋 ~ 低炭素社会への新たなスタート」 と年頭挨拶されました。当社も本システムを有効に活用して、バルク需要家への安定供給と効率的な配 送を確立して、LPガスの需要拡大に努めてまいります。 具体的には、残量監視システム導入前は、バルク充てん担当者がバルク供給先のバルク貯槽の残量を 過去のガス消費量から推測して、翌月の配送計画を決定しておりました。このような方法で配送を行い ますと、どうしても安定供給を重視した計画を立てますので、バルク貯槽の残量が平均40~50%の 時点で、充てんを実施しているのが現状でありました。今回のシステム導入後は、充填時の残量目標を 平均30%として、バルクローリーの効率的な運転を図り、配送コストの低減化と、CO2の排出削減 により地球温暖化防止に貢献してまいります。 * ㈱ コーアガス日本 システム管理部 5 課長補佐 最近のスマートメータの動向と展望 -海外の動向― 小林 俊一 * はじめに 最近の産業界では、スマートメータ、スマートグリッドという言葉がいたるところに散見される。 地球温暖化対策として、エネルギーの効率運用、低炭素社会構築など、その実現に向けたソリュー ションとしてこのスマートメータの役割に大きな期待感が寄せられているゆえんである。 スマートグリッドを構成する設備(機器)のうち、電力供給側と一般需要家との接点に設置される 電力量計は、スマートメータと呼ばれ、これまでの計器のイメージを大きく変える、高機能な端末機 器、スマートメータシステムのキーコンポーネントとしての地位を担うことになった。 最近の国内外の動きを集約して、スマートメータを鳥瞰して記述する。 1.スマートメータとは 海外特に欧州においては、計器が室内に設置され、検針は需要家が自己申告するしくみをとって いるため、盗電や不正があとをたたず、供給側は正規料金を徴収できない状況が慢性化していた。 電力販売の当初から、供給側は前納を勧めており、プリペイド計器が準備されていた。特に最近 は、メモリチップを内蔵したカードを用いて、先払いの料金を記憶させ、カードを計器に内蔵した リーダで読み込んで、払った分に対応した電力を供給する形が普及していた。この IC カードをスマ ートカードと呼ぶ。 このカードの機能自体が計器に内蔵され、更なる機能を付け加えた上で、新しい多機能計器を生 み出し、これをスマートメータと呼ぶことにした。 スマートは賢い、高機能などの意味があり、このスマートメータという言葉が定着し普及した。 2.スマートメータの機能 スマートメータの呼び名は、①電力量の計測 ②遠隔開閉器 ③双方向通信(自動検針)の機能 を併せ持つ電力量計に与えられ、世界中で普及・拡大されることになった。 イタリアエネル社のスマートメータ 6 3.スマートメータ各部分の機能 スマートメータの各部分の機能を以下に説明する。 3-1.電力量計部 電力量を計測する部分で、電力の売買に対応するため双方向の計量が必要である。 ①電力量計量値 現在値・計量確定値・30分値 n 日分、5分値、15分値、60分値などの記憶・出力。 ②トランスデューサ機能 電圧出力、電流出力、周波数出力、電力出力(総合・相別)、高調波検出 ③異常値検出 停電、瞬停、フリッカ、欠相、電線接続状態監視 ④計器情報 ID 番号、契約内容(低格電流、時間帯)、検定有効期間 ⑤ガス・水道メータ計量値一次記憶 中には、無効電力量計測・最大需用電力(デマンド)の機能を併せ持っている計器もある。 3-2.開閉器部分 通信によって遠隔開閉が可能。海外では特定の時間帯に、電力停止をすることで電力料金を割引 く契約があり、このときに利用する。日本では、異動処理や停止停解装置として利用する方向。 3-3.通信部 通信については、いろいろな種類のメディアがあり、それぞれのユーザによっていろいろなも のが選択されている。 選択されている通信メディアは大別すると無線と配電線搬送(PLC)に大別されている。 無線 無線は、マルチホップで他の計器を経由しながらセンターへデータを送る。 基本的には、モバイル用に利用されるのが最適と思われるが、電力量計はモバイルではなく固 定の発信源であり、環境の変化への対応などでおのずと限界があり、これにどう対処するかが課題 となっている。 GPRS(一般携帯無線)、Zig-Bee、ZWAVE、WiMax,M-bus またガスや水道のメータは、電源供給がなくバッテリー駆動で長期使用可能なものとならざる を得ず、無線の低消費電力化が求められている。 配電線搬送(PLC) 以前は PLC はデータ速度が遅く、送信容量も少ないにもかかわらずコスト高という欠点があり なかなか普及しなかった。しかし最近の技術進歩に伴って、トランス越え技術が確立し見直され ている。 PRIME G3 TWACS 7 4.スマートメータのシステム 4-1.システムの概要 スマートメータのシステムは、最新のものは計器の付加価値システムとして AMI(Advanced Meter Infrastructure)と呼ばれる。 これはスマートメータで計測されたデータを基軸にしたシステムであり、これまでのいわゆる 積算値だけではなく、30分値を収集しこれを利用して効率向上をはかっていくことを特長とし ている。 電力会社側では、①検針業務の自動化、②広範囲の送配電機器の監視・制御(スマートグリッ ド)、③電力潮流の監視・制御、④電力会社の業務効率改善などを目的にしている。また需要家側 では、①需要家サービスとしての情報提供、②家電機器の監視・制御、③デマンド監視・制御、 ④効率的な電力使用のコンサルティングサービス、支援などを目的にしている。 4-2.システム構成 イタリアのエネル社のスマートメータシステムの例を紹介する。 スマートメータのデータは、数千軒のデータが配電線搬送で、コンセントレータに集められる。 コンセントレータは、高圧/低圧変換用のトランス(一般的には地中化、日本では柱状)ごとに 設置されている。ここでデータが記憶されるとともに配電線搬送から携帯無線(GPRS)にメディ ア変換してセンターサーバーに送られ、データ加工がされるとともに、さまざまな用途に利用さ れる。 5.海外のスマートメータ導入状況 EU 諸国は、政府間合意のもと2020年までに家庭用スマートメータを全軒導入する方向であ る。その中で、イタリア(エネル)、スウェーデン(バッテンフォール) 、フィンランド(フォー タム)、オランダ(NUON) 、イギリス(セントリカ、EDF エナジー)などで既に積極的にスマー トメータ導入が図られている。 またドイツ(EON)、フランス(EDF)では自動検針を目的にスマートメータ導入に着手してい る。EU 諸国は、盗電が社会問題にまで発展している点、電力不足解消のための需要抑制等の重要課 題解決に、スマートメータシステムの効果を大いに期待している。また電力自由化が拡大し ている中、業務効率向上にも期待が高まっている。 一方アメリカでは、ペンシルベニア(PPL) 、カリフォルニア(PG&E,SCE)などが積極的にス マートメータを導入している。 慢性的な停電に悩まされている中、デマンドレスポンスによる省エネルギーの推進、電力会社 の業務効率改善、ホームオートメーション(HAN)の拡大などに期待が高まっている。 8 6.欧米のスマートメータ導入目的 欧米におけるスマートメータの導入目的をまとめて以下に示す。 スマートメータ導入目的 電力業務効率化 具体的導入効果 ホームエリアネットワーク 容 不正(料金徴収ロス)回避 1回/1月の確実な検針 検針業務省力化 契約変更手続きの迅速化 設備形成効率化 設備ロス低減 停電情報把握と即時復旧 需要化サービス向上 遠隔操作による供給遮断 不払い消費者漸減 DSM,デマントレスポンス 見える化による省エネ による省エネ 内 料金、CO2表示 多様な料金設定による省エネ TOU CPPなど インセンティブによる省エネ 料金キャッシュバック 遠隔操作による省エネ 特定負荷遮断 家電の遠隔制御による効率化 高付加価値サービス 7.欧米のスマートメータ導入効果 欧米におけるスマートメータ導入の効果を以下にまとめる。 ① 実際の使用量に即した課金が可能 ② 多様な料金制度の導入が可能 ③ 契約内容変更に際して手続きの簡素化実現 ④ デマンドコントロールによる省エネの実現 ⑤ 不正防止(計器改竄が不可能) ⑥ ユーティリティー計器一括検針 ⑦ スマートグリッドのキーコンポ ⅰ)検針が自己申告によるものから自動検針化されることによって、計器の計量値を収集して使 用量の特定が可能となり、実際の使用量にもとづく料金徴収がはかれる。 ⅱ)デマンドレスポンスとして、TOU(Time Of Use)時間帯別料金や CPP(Critical Peak Pricing)特定時間帯の追加課金とそれ以外の大幅割引などが導入されている。 ⅲ)イギリスでは、スマートメータと電力会社のセンターサーバとで双方向通信サービスを実施 して、人手を介さない契約変更等の手続きを実現、簡素化・効率向上を図っている。 ⅳ)海外ではスマートメータの内蔵開閉器を遠隔制御して、直接制御による負荷抑制を図ってい る。 また 30 分値のグラフ化、電気使用量の料金表示など見える化のサービスを展開している。 ⅴ)自動検針と計器に組み込まれている不正防止機能によって、計器およびデータ改ざんを防止し、 9 適正な取引を可能としている。 ⅵ)電気・ガス・水道・熱量など生活インフラ計器データの一括検針を実施してサービスおよび 業務効率の向上に努めている。 ⅶ)スマートグリッドシステムのキーコンポーネントとして、データの供給・システムの監視・ 制御を担っている。 とくに今後増加が見込まれる再生エネルギー発生装置や電気自動車の充電システムなどに対 する監視・制御に期待が大きい。 先端技術を活用した次世代高効率電力網 電力網 電力インフラと通信インフラの融合 通信網 PCS PCS スマートグリッドシステム 8.まとめ 欧米で導入が始まったスマートメータ、スマートグリッドは急速な拡大を見せている。現状の 日本の環境を鑑みると、欧米ほど差し迫った課題は少ないが、今後の日本の将来を考えると、欧米 をお手本に日本にあった最適なスマートメータシステムの構築が望まれる。 *東光東芝メーターシステムズ(株) 技術部 10 部長 集中監視システム新バージョン標準化研究部会報告 谷合 洋 * はじめに 当協議会では、2010 年 1 月のテレメ協ニュースに報告したとおり、テレメ協会員以外らもメンバー を募集し、標準化研究部会(以下、「研究部会」という)を構成し、2009 年 11 月より集中監視システム 新バージョン(以下、「新バージョン」という)の検討・標準化を実施しています。このたび、2010 年 11 月の第 11 回研究部会の開催をもって、標準化作業をひととおり完了しましたので、以下のとおり ご報告します。 1.新バージョンの概要と標準化のメリット 新バージョンは、多様なアクセス網に接続できる NCU 端末、多段中継無線端末、次世代インター フェース付メーターから構成される次世代メータリングシステムであり、LP ガス・都市ガス・水道 ・電気の各メーターや各種燃焼機器等と NCU や 950MHz 帯特定小電力無線を利用した多段中継無線端 末を接続し、遠隔検針、警報受信、遠隔制御等のサービスを提供することによりエネルギー利用のよ り一層の安全性と利便性を高めることのできるシステムです。 なお、新バージョンの標準化のメリットとしては、NCU(または中継無線端末)~メーター等機器 間の通信インターフェースを標準化して統一することと特定小電力無線区間について世界的に利用さ れている無線部品を採用することができ、NCU 等の価格低減が期待でき、テレメータリングの普及促 進が実現できること、NCU(または中継無線端末)~メーター等機器間の通信の高速化に伴う低消費 電力化により多様なサービスを実現できることがあります。 2. 新バージョンの検討・標準化体制とスケジュール 研究部会のリーダーは NTT テレコン㈱、サブリーダーはパナソニック㈱が担当し、富士電機システ ムズ㈱、東光東芝メーターシステムズ㈱、東京ガス㈱、東邦ガス㈱、大阪ガス㈱が研究部会事務局と なり詳細仕様の検討を行いました。研究部会のメンバーは、会員に限ることなく広く募集した結果、 平成 22 年 11 月現在、登録されているメンバーは、60 社 93 名となりました。2009 年 11 月より 2010 年 11 月まで原則毎月合計 11 回の研究部会を開催し、出席者は延 702 名に亘りました。 3.標準化の主な成果 (1)仕様書の制定 研究部会の成果として、以下の 5 つの仕様書を制定しました。 Ver.1.3 ①U バス(次世代通信ライン)仕様書 11 Ver.1.1 ②メーター通信機能仕様書 ③U バス(次世代通信ライン)対応 NCU 仕様書 Ver.1.2 ④U バスエア(多段中継無線)通信仕様 Ver1.1 ⑤U バスエア(多段中継無線)機能仕様書 Ver1.1 さらに、上記各仕様書等に対する Q&A について、合計 170 件を整理しました。 また、成果の一例として多段中継無線機の特定小電力区間において大幅な低消費電力化を実現す る技術である「ビーコン方式」について図-1 に示します。 図-1 ビーコン方式 (2)総務省事業の受託 2010 年 6 月には【総務省 平成 21 年度第二次補正予算「ネットワーク統合制御システム標準 化等推進事業」および「環境負荷軽減型地域 ICT システム基盤整備事業」に係る公募】に応募し、< 超低消費電力型メータリング通信システム仕様標準化と検証環境構築>として受託することとなりま した。これに関連して、平成 22 年 8 月 4 日(水) には、情報通信審議会情報通信政策部会「通信・放 送の融合・連携環境における標準化政策に関する検討委員会」 (第 15 回)にて本標準化の活動内容を 報告しました。 さらに、平成 22 年 11 月 19 日(水)には、同委員会(第 16 回) にて、東京ガス㈱様や富士電機システ ムズ㈱様が中心となって推進している本標準化成果についての IEEE802.15.4e/g での活動状況につい て報告しました。 12 4.今後の予定 仕様書を検討していく中で、都市ガスと LP ガスでは、前者は集合住宅が多い都市部中心であるの に対し、後者は戸建住宅の多い郊外中心であり親機あたりの子機収容台数や工事方法等に違いがあ ることから、これらに対応できる仕様を追加する必要がある旨の意見がありました。具体的には、 当初提案のメッシュ方式だけでなく、クラスターツリー方式も実現できるように仕様追加すること とした(図-2 参照)ほか、ネットワーク構成無線機台数を当初提案の最大 50 台から最大 240 台へ拡大 することとしました。これらの課題については、今年度中に研究部会事務局で検討し、来年度早々 にも再度研究部会を招集して関連の仕様書を改定することとしています。 図-2 メッシュネットワークとクラスターツリーネットワーク 5.おわりに 研究部会ならびに当協議会会員の皆様の多大なご支援により集中監視システム新バージョンの標準化 を実現することができました。 この成果が、LP ガス、都市ガス、水道、電力等の業界で共通的に利用できるテレメータリングシステ ムとして大いに普及拡大できるよう残された課題等を解決していく所存ですので、引き続き当協議会会 員の皆様のご指導を頂きますようよろしくお願いします。 * 集中監視システム新バージョン検討・標準化研究部会事務局 (NTTテレコン㈱ 技術開発部長) 13 集中監視システム新バージョンの標準化環境整備部会報告 畠内 孝明 * はじめに 当協議会では、ガス利用の安全性と利用者の利便性を高め、低炭素社会のために CO2 削減に貢献する 次世代テレータリングインフラとして「集中監視システム新バージョン」(以下、「新バージョン」と言 う)の検討と標準化を推進しています。また、標準化と並行して新バージョンを利用していただくため の周辺環境を整備するために部会を構成して検討を進めています。 集中監視システム新バージョン環境整備部会(以下、 「環境整備部会」と言う)の目的は、新バージョ ンの普及を促進し安心して御利用いただけるための環境を整備することであり、2010 年 6 月から検討を 進めています。 安心して使えるための環境とは、標準化によってメーターや関連機器、通信ユニットのインターフェ ースを統一し利用者がオープンな機器を採用するうえで、機器の相互接続性、サービスに必要な性能が 保証されている、設置後に問題が起こらないなどであると考えています。このために環境整備部会では 主に以降にご紹介する内容を検討し、また相互接続性検証装置や運用シミュレーターなどの試験環境を 構築しています。※ ※ 通信仕様の標準化、相互接続性検証装置、運用シミュレーターの開発は総務省からの受託事業に より推進しています。 1.新バージョン運用方法の立案 新バージョンを採用した機器が市場においてトラブルを招かないための運用方法を検討しています。 運用方法は主に三つのスキームからなります。 「利用スキーム」 新バージョンのうち「U バスエア(多段中継無線)仕様書」は一部企業の知的財産権を含んでおり、 新バージョンを利用する上での権利不行使保障とそのための利用条件の検討を進めています。 「資源管理スキーム」 新バージョンを採用した機器やアプリケーションを識別するコードやアドレスは、市場で重複しな いように一元的に管理されることが望まれます。このような資源を管理するための手順やルールの検 討をしています 「機器認証スキーム」 新バージョンを採用した機器が仕様書に適合しており、相互に接続可能であることを試験し認証す る仕組みを検討しています。本スキームによって利用者の確認試験を軽減することができます。 14 2.相互接続性検証装置(テストベッド)の開発 相互接続性試験装置(以下、 「テストベッド」と言う)は、新バージョンを採用した機器が仕様に規 定された通信手順を有しており、電気的特性を満たしていることを試験するための装置です。 テストベッドによる試験は下記の内容です。 ① 次世代通信インターフェース(U バス)の検証 ② U バスエア(多段中継無線)無線物理層試験 ③ U バスエア(多段中継無線)通信手順の検証 U バス(有線)と U バスエア(無線)を独立に試験できるため、その双方または一方を持った機器の 試験を行うことができます。 図-1にテストベッドのシステム構成を示します。 テストベッドは U バスを試験するための U バステスター、DUT(試料:試験対象)と通信して U バス エアの通信手順を確認するための GM(基準器)、U バスエアの無線電波を測定するための電波測定装置 からなります。全体を制御するテストベッドプラットファームは、DUT、GM、電波測定装置をコントロ ールしながら自動的に一連の試験を実施し、試験結果と合否を出力することができます。 現在はテストベッドを弊社事業所(日野市)に設置して開発と試験を行っていますが、今後は新バ ージョン採用者が利用しやすい環境と運用方法を整備し、皆様にご利用いただけるように努めてまい ります。 図-1 テストベッドのシステム構成 テストベッドプラットフォーム (パソコンソフトウェア) Uバステスター DUT(試料) デバイダ 電波測定装置 GM(規準器) シールドBOX 減衰器 フィルタ 減衰器 15 シールドBOX GM(基準器) シールドBOX 3.運用シミュレーターの開発 運用シミュレーターは、想定するシステムをパソコン上に構築しシステムの振る舞いをシミュレー ションするためのツールです。U バスエアは無線通信のため、周辺の障害物の移動によって発生する 電波の揺らぎによって通信状態が動的に変化します。設置する環境条件の多様性やサービス毎に要求 される通信性能に対して、新バージョンによって提供されるシステムが効果的であることを事前に検 証します。図-2に運用シミュレーターの画面例を示します。 図-2 運用シミュレーターの画面例(イメージ) パソコンの画面上で U バスエア機器を配置すると、U バスエア機器間の距離から無線通信が可能な機 器を自動的に接続し通信システムを構成します。都市設置、郊外設置などの条件をもとに、通信性能 や干渉、電池消耗などをシミュレーションして結果をグラフ表示することができます。 おわりに 環境整備部会では、2010 年 6 月より毎月 1 回の会合によって新バージョンの周辺環境の整備を進め てまいりました。運用方法の検討、相互接続試験装置、運用シミュレーターの開発とも 2011 年 3 月ま でに成果を取りまとめる予定になっています。しかしながら各々不十分な点も多く、また現行のメー ターやシステムをどのように移行していくかなどの課題もあります。 4 月以降は集中監視システム新バージョン運営委員会にて、引続き検討と整備を進めてまいります。 新バージョンを安心して御利用いただくための環境を整備すべく、今後も環境整備部会委員、運営委 員会委員の皆様のご協力ならびに当協議会の皆様のご指導を頂きたくよろしくお願いいたします。 * 集中監視システム新バージョン標準化環境整備部会事務局 (富士電機システムズ㈱) 16 協議会行事の報告・お知らせ等 11/30 集中監視システム新バージョン検討・標準化委員会開催 ・第11回新バージョン検討・標準化委員部会(最終回) ・第 12/8 4回新通信仕様環境整備部会 場 所:尚友会館 時 間:13:30~17:00 定例研究会を開催(出席28名) テーマ:スマートメータの現況について 12/8 講 師:東光東芝メーターシステムズ 技術部 部長 場 所:バリュー貸し会議室「新橋」 時 間:13:30~14:45 理事会を開催 場 所:新橋住友ビル 時 間:15:00~17:00 忘年会を開催 12/14 場 所:新橋 「新橋亭」 時 間:17:30~ 編集委員を会開催 テーマ:2011年新年号について 12/13 場 所:当協議会 時 間:15:00~17:00 第6回スマートハウス研究会 テーマ:第7回スマートメーター制度検討会の報告 12/22 講 師:日本LPガス協会 場 所:エルピーガス協会 時 間:10:00~12:00 集中監視システム新バージョン検討・標準化委員会開催 ・第5回新通信仕様環境整備部会 1/25 場 所:尚友会館 時 間:13:30~17:00 第7回スマートハウス研究会 テーマ:① 第8回スマートメーター制度検討会の報告 ② LPガスアイランド構想について 1/26 場 所:エルピーガス協会 時 間:10:00~12:00 第7回見守り共同サービス検討委員会を開催 17 小林俊一氏 1/26 場 所:当協議会 時 間:13:30~ 集中監視システム新バージョン検討・標準化委員会を開催 ・第6回新通信仕様環境整備部会 2/23 3/22 4/27 場 所:尚友会館 時 間:13:30~15:00 理事会を開催 場 所:新橋住友ビル 時 間:15:00~17:00 集中監視システム新バージョン検討・標準化事業(総務省補助金事業)の成果発表会 場 所:航空会館 時 間:13:00~17:00 総会を開催 場 所:商工会館 時 間:15:00~18:00 ■編集後記 あけましておめでとうございます。 昨年は当協議会の名称変更、直江前理事長から薦田新理事長への交代、阿部前専務理事のアクシデ ントなど様々な出来事があり、事務局のテンヤワンヤの状況により会員の皆様には多大なご迷惑をお かけしましたことをお詫び申し上げます。事務局の土屋が阿部の業務を引き継いで皆様にご迷惑をか けないよう頑張っております。 さて、年が明けて福祉施設などに匿名でランドセルなどを贈る「伊達直人」現象の報道が連日のよ うにされ、全国的にこの現象が拡がっています。この連鎖現象で、日本人が、はにかみ、はじらいの 民族で名前を伏せて善意の行動することを好む遺伝子を持っていた・・ということあらためて再認識 させられたような気がしました。どこかで、だれかが喜んでくれているということをこっそりと遠く から見ている・・という状況を想定した時、皆様はどうお感じになるでしょうか? 【閑話休題】本年は当協議会2年目の年、総務省補助案件の「ネットワーク統合制御システム標準 化等推進事業」(集中監視システム新バージョンの検討・標準化)について3月完了目途に全力を注 ぐほか、日本のテレメータリングの更なる発展に寄与できる事業を行っていきたいと事務局一同意気 込んでおります。 本年も会員皆様のご指導、ご協力をいただけるよう、よろしくお願い申し上げます。 (小坂) 18 会報名: テレメ協ニュース 2011 年新年号(2011 年 1 月28日発行) 発 行: NPO 法人 テレメータリング推進協議会 (旧 〒105-0001 発行人 薦田康久 LP ガス IT 推進協議会) 東京都港区虎ノ門 2-6-13 三木虎ノ門ビル 電話 03-3591-9686 FAX03-6240-4664 URL:http://www.teleme-r.or.jp E-mail:info@teleme-r.or.jp 19
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