document09_B.pdf

公立はこだて未来大学 2011 年度 システム情報科学実習
グループ報告書
Future University Hakodate 2011 System Information Science Practice
Group Report
プロジェクト名
地域に根ざした数理科学教育
Project Name
Supports for regional education in mathematical science
グループ名
グループ B
Group Name
Group B
プロジェクト番号/Project No.
9-B
プロジェクトリーダ/Project Leader
1009241
Aiko Hanada
花田愛子
グループリーダ/Group Leader
1009189
Syohei Kino
木野翔平
グループメンバ/Group Member
1009189
木野翔平
Shouhei Kino
1009006
數原綾華
Ayaka Kazuhara
1009061
吉田一博
Kazuhiro Yoshida
1009188
小野寺裕毅
Yuuki Onodera
指導教員
高村博之 上野嘉夫
田中健一郎
Advisor
Hiroyuki Takamura Yoshio Uwano Kenichiro Tanaka
提出日
2012 年 1 月 18 日
Date of Submission
January 18, 2012
概要
ここ数年での日本の中学生の「理数離れ」が、様々な調査機関によって明らかにされている。
その根本的な対策が提示されていないため、個々の具体的事例から解決策を模索することは重
要である。本グループでは、特に数学に焦点を当て、知識の体系的な獲得が数学嫌いの減少を
助けることを示すことを目標とする。具体的には、数学の抽象化が始まる中学生を対象に、学
習指導要領に囚われない教育プログラムを、中大連携教育の中で講義形式と e-learning ソフト
を用いて提案する。また、その効果を確かめる実験授業を行った結果も併せて報告する。
キーワード
理数離れ, 中大連携教育
(※文責: 吉田一博)
-i-
Abstract
In recent several years, “Risuu-banare” (It means standing away from mathematical
sciences) among junior high school students in Japan has been observed by various
research agencies. There is no definitive solution of this matter. Therefore it is very
meaningful to find it in actual situations. The target of our group is to show that
the systematic acquirement of the knowledge in mathematics helps them to be anti“Suugaku-banare”. Particularly, we propose an education program for junior high
school students who are obliged to take the first contact with abstract mathematics.
Such a program is independent of any course in school, and will be able to achieve in
the joint teaching between junior high school and university. This report includes a
result of our experiment and e-learning system.
Keyword
Risuu-banare, The joint teaching between junior high school and university
(※文責: 數原綾華)
- ii -
目次
第1章
グループの年間活動の背景
1
1.1
前年度グループ B の成果
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1.2
現在の学校教育における問題点 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1.3
活動の概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
到達目標
3
第2章
2.1
本プロジェクトにおける目的
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
2.2
具体的な手順・課題設定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
2.3
第3章
2.2.1
前期の活動について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
2.2.2
後期の活動について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
課題の割り当て . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
2.3.1
前期の課題の割り当て . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
2.3.2
後期の課題の割り当て . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
課題解決のプロセスの概要
5
3.1
前期の活動について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
3.2
後期の活動について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
課題解決のプロセスの詳細
7
第4章
4.1
各人の課題の概要とプロジェクト内における位置づけ
. . . . . . . . . . . . . . .
7
4.2
担当課題解決過程の詳細 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
4.3
第5章
4.2.1
木野翔平 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
4.2.2
數原綾華 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
14
4.2.3
吉田一博 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
18
4.2.4
小野寺裕毅 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
21
担当課題と他の課題の連携内容 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
26
4.3.1
木野翔平 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
26
4.3.2
數原綾華 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
27
4.3.3
吉田一博 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
28
4.3.4
小野寺裕毅 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
28
結果
30
5.1
プロジェクトの結果 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
30
5.2
成果の評価 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
31
5.3
担当分担課題の評価 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
31
5.3.1
木野翔平 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
31
5.3.2
數原綾華 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
33
5.3.3
吉田一博 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
34
5.3.4
小野寺裕毅 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
35
- iii -
第6章
今後の課題と展望
37
付録 A
未来祭
38
付録 B
アカデミックリンク
39
参考文献
41
- iv -
Supports for regional education in mathematical science
第1章
グループの年間活動の背景
ここ数年での日本の中学生の「理数離れ」が、様々な調査機関によって明らかにされている。そ
の根本的な対策が提示されていないため、個々の具体的事例から解決策を模索することは重要であ
る。本グループでは、特に数学に焦点を当て、目標として知識の体系的な獲得が数学嫌いの減少を
助けることとした。具体的には、前期では数学の抽象化が始まる中学生を対象に、学習指導要領に
囚われない教育プログラムを中大連携教育の中で実現可能な形で提案した。後期は、提案した教育
プログラムを用いて e-learning ソフトを開発した。また、教育プログラムと e-learning ソフトの
効果を確かめる実験授業を行った結果も併せて報告する。
(※文責: 吉田一博)
1.1
前年度グループ B の成果
前年度のグループ B では、ゆとり教育による学習時間の減少による知識の分断化を解消し、対
象学年を中学生とした。目的を中学生が持っている教育項目間を合理的に融合させた学習支援教材
および総合型授業プランの開発を行ったとされている。具体的な授業プランの題材として「級数の
収束・発散」が選択された。中学生の知識でもわかるように、収束する様子を面積の考え方えを取
り入れ数学の対象の可視化や、不等式の考えを使って量の比較が行われた。開発した授業プランの
成果を確かめるために,中学 1 年生 4 名を本校に招き、2 回に分けて実験授業を行ったとされてい
る。その結果、中学の知識と、本来は大学で学習する内容との繋がりを生徒が見出したため、目標
を達成することができたと評価できる授業プランが作成された。このように前年度は大学で学ぶ内
容を題材にして授業プランを開発している。
(※文責: 吉田一博)
1.2
現在の学校教育における問題点
現在の学校教育の問題点として知識の体系的な獲得が難しくなっているが挙げられる。それを表
すように、[3] より大学に至っても知識の分断化による弊害が起きている。数 II の初等的な事項と
数 III の初等的な事項を組み合わせた問題、具体的には等比数列の極限の問題の公比が三角関数に
なったものや、対数関数になった問題に対する新入生の正答率が 3 割を切っているという事象が確
認されている。
(※文責: 吉田一博)
1.3
活動の概要
1.2 節で示した問題の発生の原因は、大学以前に問題があると考えられる。そこで、中学から高
校の教科書を精査したところ、特にその出現の唐突感が否めない高校 3 年で学習する分数関数の単
Group Report of 2011 SISP
-1-
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
元が題材として適切であると考えた。分数関数は本質的に中学 1 年で学習する反比例と平行移動の
段階で教育可能な内容であるとわかった。そこで、これらの単元の知識を体系的に獲得できるよう
な教育プログラムを提案した。その提案した教育プログラムをもとに e-learning ソフトを開発し
た。そして、これらの教育プログラムと e-learning ソフトの有効性を確かめる実験授業を行った。
(※文責: 吉田一博)
Group Report of 2011 SISP
-2-
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
第2章
到達目標
本プロジェクトにおける目的
2.1
1.3 説を受けて、具体的な実現方法を提案する。その際教育プログラムは、学習者が自ら知識を
束ねることで知識を体系的に使えることに気づいてもらえるようになっていることが重要である。
そこで、本グループの目的は授業という枠にはまらない中学生向けの分数関数の教育プログラムの
開発である。到達目標は、中学生が「反比例のグラフが平行移動すると、分数関数のグラフが得ら
れる」と認識することができることとする。
(※文責: 小野寺裕毅)
具体的な手順・課題設定
2.2
2.2.1
前期の活動について
1. 題材の決定
単元間の構造を把握するために教科書分析を題材を分数関数とした。
2. 対象学年の決定
対象学年を中学 2 年生とした。
3. 方法の決定
2 種類の教育プログラムを考案し、平行移動の様子を可視化した。
4. 教材の作成
透明なシートにグラフを描き、それを動かすことで、グラフが平行移動する様子を表現し
た。さらに教科書分析を重ね中学 2 年生に対して適切な表現を使用した教材を作成した。
5. 実験授業
中学 2 年生を受講者とした、2 種類の教育プログラムに関する実験授業を実施した。
6. 評価と改善
アンケートによる評価を行った。改善すべき点として、時間超過やぎこちなさの解消という
点が挙げられた。
2.2.2
後期の活動について
1. 題材の決定
前期の改善点の実行のため、e-learning 化した教材を作成することとした。
2. 方法の決定
2 種類の教育プログラムの内 1 つを選定した。平行移動の様子の可視化に加え、座標点の描
写によりグラフが作成される様子を表現した。
3. 教材の作成
反比例と平行移動の可視化とプログラミングの容易さから ActionScript3.0 や Adobe
Group Report of 2011 SISP
-3-
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
Illustrator を採用した。
4. 評価実験
中学 2 年生 6 人に e-learning ソフトに関する評価実験を実施した。受講者の内 3 人が前期
実験授業経験者であった。
5. 評価と改善
前期実験授業経験者によって教材の改善の具合を調査、また経験者と未経験者での比較を
行った。インタビューによる評価を行い、操作性に対する不満が挙げられた。
(※文責: 數原綾華)
2.3
課題の割り当て
各人の得意分野及び関連性を基準に以下のように割り当てた。
2.3.1
前期の課題の割り当て
• 木野翔平 方法 2 の分数関数や反比例の教育プログラムについてのデザイン作成
• 數原綾華 方法 1 の分数関数や反比例の教育プログラムについてのデザイン作成
• 吉田一博 方法 1 の分数関数や反比例の問題作成
• 小野寺裕毅 方法 2 の分数関数や反比例の問題作成
2.3.2
後期の課題の割り当て
• 木野翔平 作成した e-learning ソフトのデザインの作成とプログラミング
• 數原綾華 作成した e-learning ソフトのデザインの作成とプログラミング
• 吉田一博 作成した e-learning ソフトのプログラミング
• 小野寺裕毅 作成した e-learning ソフトのプログラミング
(※文責: 小野寺裕毅)
Group Report of 2011 SISP
-4-
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
第3章
課題解決のプロセスの概要
今期のプロジェクト学習において本グループは、学習指導要領に囚われない教育プログラムを中
大連携教育の中で実現できる形で提案することを課題とした。その課題の達成に向け、具体的な手
順を立てその中での課題を設定したのが、2.2 節である。本章では 2.2 節で具体化した各課題を解
決するプロセスの概要を、各々記す。
3.1
前期の活動について
• 題材の決定
分数関数が数学
の教科書の最初の項目で唐突に書かれていることに着目し、教材に使用
する題材を決定した。
• 対象学年の決定
反比例と平行移動の単元は、中学 1 年生では未習である。そのため、どちらの単元も学習済
みである中学 2 年生を対象とした。
• 方法の決定
教材を作成するにあたり 2 つの方法が挙った。方法 1 は数学が日常では使われていないと
考えている中学生の関心を惹くために実社会で遭遇するような反比例と分数関数の問題を作
成した。目標を達成できるように反比例と分数関数の比較を容易にする方法として両グラフ
の可視化を行った。方法 2 は中学生が理解しやすい問題設定にするため、中学校の教科書
を参考にして分数関数の問題を作成した。反比例と分数関数のグラフの比較を容易にするた
め、方法 1 と同様にグラフの可視化を行った。平行移動とグラフの可視化は、透明なシート
に描かれた曲線と普通紙または透明なシートに描かれた曲線を重ね合わせて比較することで
表現した。
• 教材の作成・教材のデザイン
平行移動の様子の可視化は、方法 1 では基となるグラフは普通紙に書き平行移動したグラフ
は透明なシートに描いた。方法 2 では全てのグラフを透明なシートに描いた。また、実験授
業の練習の際や文章問題の作成の際に中学 2 年生が未習の単元、表現が無いようにするため
教科書分析を重ねて行った。
• 実験授業
方法 1 と方法 2 とで教室を分け、中学 2 年生二人ずつに各々の方法で作成した教材を用い
た授業を行った。学生は講師役と補助役で分担を行い、主に講師役の学生は中学生に教示を
行った。実験授業の様子はビデオカメラを使用して録画し、後に分析を行った。また、各々
の授業風景を撮影するための撮影役をAグループの学生に依頼した。
• アンケート実施及び解析、改善点の発見
Group Report of 2011 SISP
-5-
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
アンケートの内容は「反比例、平行移動、分数関数の間にある関係性に気づくことができた
か」、
「ある単元とある単元の知識を束ねて使うことで新たな未知の知識に辿り着くという意
識が芽生えたか」という点にポイントを絞り選定、作成した。更に 3.1.5 で録画したビデオ
の記録を併せたところ講師役が教示を行うといった形の授業では時間がとてもかかるという
ことと、学生の想定していた受講者の理解度と実際の理解度に差が生じていたことによるぎ
こちなさといった改善すべき点が挙げられた。しかし、アンケートで選定したポイントに関
してはアンケート回答とビデオでの記録から方法 1、方法 2 どちらに関しても達成できた。
3.2
後期の活動について
• 題材の決定
3.1 で挙げられた改善点を解消するため、受講時間の短縮とぎこちなさの軽減を図った教材
作成を行った。そこで、前期で用いた題材を e-learning 化することとした。
• 方法の決定
e-learning 化を行うにあたり、本グループでは教科書での表現を用いている方法 1 を採用し
た。e-learning 化の内容は、講師非依存型の学習のために反比例と平行移動、分数関数の性
質を順に確認するためのストーリーを作成し、教科書にはない座標点が曲線になる様子を可
視化した。
• 教材の作成・教材のデザイン
ActionScript3.0 や Adobe Illustrator を用いて、パソコンを操作した経験がある人が直感
的に操作できるようなインタフェースの設計をした。
• 実験授業
受講者には 1 人 1 つのパソコンで実験を行ってもらい、学生は全員補助役となり操作性に関
する質問のみ答えるようにした。また、実験中の様子は前期の実験授業と同様にビデオカメ
ラを用いて記録した。
• 評価
e-learning の評価のため、受講者にインタビューを行った。インタビューの内容は前期のア
ンケートと同様に「反比例、平行移動、分数関数の間にある関係性に気づくことができた
か」、
「ある単元とある単元の知識を束ねて使うことで新たな未知の知識に辿り着くという意
識が芽生えたか」という点にポイントを絞った。これら 2 点に関してはインタビューから得
た発言より、達成できたと考えられた。しかし、e-learning ソフトの操作性に関する点で改
善すべき点が挙げられた。
(※文責: 數原綾華)
Group Report of 2011 SISP
-6-
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
第4章
課題解決のプロセスの詳細
課題解決のプロセスの詳細学習指導要領に囚われない教育プログラムを中大連携教育の中で実現
できる形で提案するという本グループの課題を達成するため、各人は詳細にどのような課題を担当
し、どう解決したのかを以下に記す。
4.1
各人の課題の概要とプロジェクト内における位置づけ
木野翔平の担当課題は以下のとおりである。
5月
教材を作る上での対象の選択、教材作成のための題材探し
6月
教材の問題作成、実験授業の実施
7月
中間発表の準備、中間報告書の作成
10 月 方法の選択、ソフトのストーリー作成、素材作り、プログラミング
11 月 プログラミング、アカデミックリンクの準備、評価実験の準備と実施
12 月 最終発表の準備、報告書の作成
數原綾華の担当課題は以下のとおりである。
5月
教材を作る上での対象の選択、教材作成のための題材探し
6月
教材の問題作成、実験授業の実施
7月
中間発表の準備、中間報告書の作成
10 月 方法の選択、ソフトのストーリー作成、素材作り、プログラミング
11 月 プログラミング、アカデミックリンクの準備、評価実験の準備と実施
12 月 最終発表の準備、報告書の作成
吉田一博の担当課題は以下のとおりである。
5月
教材を作る上での対象の選択、教材作成のための題材探し
6月
教材の問題作成、実験授業の実施
7月
中間発表の準備、中間報告書の作成
10 月 方法の選択、ソフトのストーリー作成、素材作り、プログラミング
11 月 プログラミング、アカデミックリンクの準備、評価実験の準備と実施
12 月 最終発表の準備、報告書の作成
小野寺裕毅の担当課題は以下のとおりである。
5月
教材を作る上での対象の選択、教材作成のための題材探し
6月
教材の問題作成、実験授業の実施
7月
中間発表の準備、中間報告書の作成
10 月 方法の選択、ソフトのストーリー作成、素材作り、プログラミング
11 月 プログラミング、アカデミックリンクの準備、評価実験の準備と実施
12 月 最終発表の準備、報告書の作成
Group Report of 2011 SISP
-7-
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
(※文責: 小野寺裕毅)
担当課題解決過程の詳細
4.2
4.2.1
5月
木野翔平
中学校と高校のそれぞれ 3 年分の教科書を用いて、どこにどのような知識が使われている
か、どの知識を持っていればどこまでのことが理解できるか、といった点に注意しながら分
析を行った。分析結果から題材として分数関数を選んだ。これは、数学
の教科書に分数関
数についての項目が唐突に出てきていたため着目した。また、分数関数の基本的な性質は、
中学 2 年生までで学ぶ反比例と平行移動であることも教科書分析で分かった。ここで、教科
書を分析する技術を習得した。
題材の決定後、具体的な題材のストーリーを展開した。ストーリーの作成段階で 2 つの方
法が考えられ、2 つの班に分かれて具体的に考えていくことにした。2 つの方法とは、1 つ
は教科書の流れに沿った方法で、具体例から一般的な内容にしていく方法であり、もう 1 つ
はその逆の方法で、一般化された内容を細分化していく方法である。この内、報告者は一般
化された内容を細分化していく方法を考えることを担当した。ここでは、教育プログラムが
どういったシチュエーションで行われるのか、などの点に注意した。
6月
5 月に引き続き、ストーリーの展開を行い、その後教育プログラムの作成にとりかかった。
ストーリーの展開は、問題を 3 つ考える場面から始まることにした。この 3 つの問題は、そ
れぞれ反比例、横へ平行移動した分数関数、縦へ平行移動した分数関数の順番で受講者に考
えてもらった。これにより、まず始めに学んだことのある反比例の問題を考えることにより
反比例について復習し、その後学んだことの無い分数関数の問題を考える。この分数関数の
問題は、始めの反比例の問題と類似しているため、問題を考えている内に、類似性に気づく
だろうと考えた。また、実際にグラフを描画する際に、透明なシートに描くようにした。こ
れは、3 つの問題からグラフを描き、それらを重ね合わせることで類似性に気づくことがで
きると考えたからである。この類似性に気づくことが出来るプログラムを平行移動のビジュ
アル化と呼んでいる。
教材の作成を行い、その中でデザインを主に担当した。特に、始めの 3 つの問題は Adobe
Illustrator で作成したり、透明なシートに座標軸を書いたりした。また、6 月 24 日に評価
実験を行うことを決め、対象を中学 2 年生とした。そのため、教科書を参考にしながら中学
2 年生の知っている知識のみでプログラムを作成するよう気をつけた。ここで、対象を理解
する必要性を学び、その技術を身に付けた。プログラム作成後、実験授業を行った。
実験授業では、実験前にビデオカメラの準備や設置を行った。実験中は、講師役の補助を
担当し、他にカメラマンも担当した。実験後に、あらかじめ作成しておいたアンケートを行
い、その後撮っておいたビデオのダビングを行った。
Group Report of 2011 SISP
-8-
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
7月
実験中の中学生の発言や、実験後のアンケートの集計を行った。ここで、アンケートから得
られない重要なこともあるということを学び、実験中の行動を注意深く観察し、目標と照ら
し合わせて情報を解釈・抽出する技術を身に付けた。その後、中間発表や報告書の作成を行
い、発表時の言葉使いや Tex の使い方などの技術を身に付けた。
中間発表の資料作成ではスライドの作成を行い、方法 1、方法 2 を言葉でなくダイヤグラ
ム (図 4.1、図 4.2) として表した。言葉から連想できる図形を考え、Adobe Illustrator で作
成した。具体的なダイヤグラムは、方法 1 は反比例と平行移動の知識から分数関数まで「積
み重ねていく」という方法であったため、ブロックを積み重ねるイメージのものを考案し
た。また、方法 2 は分数関数を「分解」して反比例と平行移動という知識に帰着させる方法
であったため、矢印によって分解された図を考案した。スライドの順番は、筋が通るように
意識して作成した。
図 4.1 方法 1
図 4.2 方法 2
Group Report of 2011 SISP
-9-
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
10 月 後期のスケジュール確認と、e-learning 化するための検討を行った。後期の日程からコス
トを考え、前期で作成した教育プログラムを e-learning 化することにした。さらに、前期に
作成した教育プログラムでは方法が 2 つあったが、方法 1 のみを e-learning 化することに
した。方法 1 を採用するに当たり、前期の評価実験の結果をもう一度確認し、方法 2 より方
法 1 の方が中学生にとって理解しやすいという結論を導いた。また、実験結果より分かった
方法 1 の修正点を加えながら、ソフトのストーリーを考えた。前期の結果から平行移動のビ
ジュアル化は必ず盛り込み、他にソフトの利点を踏まえて、グラフが曲線になる様子を連続
的に見えるようにすることも新しく考えた。こうして、ストーリーは画面遷移図として作成
した。また、前期の教材とは異なり、講師役を設けずに、非講師依存型の教材とすることに
した。
ストーリーの作成後は e-learning ソフトの開発に移行した。ストーリーの作成では、9 月
に比べてソフトの具体的な仕様の検討に入った。例えば、教材では表の作成や方程式を考え
る場面があり、選択項目を用意してマウスでのクリックにより項目を変える操作にするなど
を考えた。また、講師がいないため被験者が問題の意味が分からない状況になった場合を想
定して、ヒントを用意することにした。これは、全てのヒントを用意するのではなく、問題
の方程式を考える際のヒントに制限し、あくまで被験者自信で考えることを優先した。ス
トーリーが出来上がった段階で、画面の素材を作成する班と開発班に分け作業するようにし
た。素材の作成は情報デザインコースのメンバーで行った方が効率的と考え、このような班
分けにした。この班分けにより筆者は画面の素材作成を担当したが、Adobe Flash を扱った
ことのあるメンバーが筆者のみであったため、開発班と知識等の共有も兼ねての作業となっ
た。素材作成班での作業では、Adobe Illustrator を用いて画面を切り替えるためのボタン
や黒板 (図 4.3) のイラスト等を作成した。素材の作成後、それらをまとめて Illusrator の中
で画面遷移図を作成した。この画面遷移図では、ストーリーの前半部分を担当し作成した。
素材作成と画面遷移図の作成が終わった段階で、開発班と一緒になり開発作業に入った。開
発する際に、ストーリーの前半部分を担当することにした。スタート画面から作成し始め、
ユーザが問題に対して考える場面の入力の実装を行った。入力の場面では、マウスでの選択
式入力であったため、選択できる数値を決める必要があった。選択できる数値を 5 種類、有
効桁数 2 桁で用意し、それぞれ問題の方程式の x に整数値を代入して求められるものとし
た。具体的には、例えば最初の問題であれば方程式 y = 5 /x であるため、1 から 5 までの
整数値を代入して求められる値、5.00、2.50、1.67、1.25、1.00 の 5 つを選択しとして用意
した。入力ボタンは 2 つ用意し、上ボタンとしたボタンで、上ボタンを押すと数値が増え下
ボタンを押すと数値が減るように実装した。
Group Report of 2011 SISP
- 10 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 4.3
黒板
11 月 10 月に引き続き開発を続けていたが、ここで特に担当したのは平面座標への点のプロット
である。この部分は、中学生でなくてもマウスの操作でミスすることは十分考えられたた
め、ミスしても修正できるようにすることが求められた。具体的には、座標平面上の交点を
クリックすることで点がプロットされ、そのプロットされた点をもう一度クリックすると消
える、という処理を実装した。ある程度出来上がった段階で教員に見ていただきアドバイス
をもらったところ、入力の仕方はキーボードからの入力もあるべきだ、という指摘を受けた
ため、キーボードからの入力を受け付ける処理を実装することにした。(図 4.4) 上ボタンや
下ボタンを押すことで選択する方式を、キーボード入力にすることで、より受講者自信で考
えることができるようになる。この利点を活かすため、項目に合った数字の入力を求めるよ
うに変更した。有効数字 2 桁という仕様は変更し、数字が間違っていなければ有効桁数を
気にしないことにした。入力スペースを十分に活用するため、入力する数字によってフォン
トサイズを変更するように工夫した。具体的には、整数値 5 であればフォントサイズは 28、
少数値 1.67 であればフォントサイズは 20 のようにした。正解すれば丸、間違えば罰印が付
加されるのは変えなかった。また、ソフトを実行する環境によってフォントが表示されない
という問題を防ぐため、ソフトにフォントを埋め込むという処理を施した。これにより、実
行環境にフォントが無くてもソフトにフォントの情報があるため、そのソフトのみ実行中に
埋め込んだフォントで表示することができる。また、グラフが曲線になる様子のビジュアル
化では、曲線の形に近くなっていく様子と表を一致させなければいけないという指摘も受け
たため、その実装も行った。(図 4.5、図 4.6、図 4.7) 点が増えていくにつれ、表の値も増え
ていかなければいけないため、グラフにおける点の位置のずれや表の計算ミスを何度も確認
しながらの作業となった。
こうした作業を 11 月 12 日のアカデミックリンクまでに終わらせ、作成したソフトをア
カデミックリンクで発表した。アカデミックリンクではポスターセッションでの発表を担当
した。ブースの近くに来た人に声をかけたり、興味を持って見ている人に説明をするなどし
た。何回も説明しているうちに、e-learning ソフトの修正点や改善点、また、プロジェクト
の意義も明確になった。アカデミックリンクでは、e-learning ソフトのイラスト等の出来が
良いという評価を頂いた。
アカデミックリンクでの発表を参考に、後日評価実験を行った。評価実験では、被験者全
員分の PC やビデオカメラの準備を担当した。前期にも評価実験を行っていたため、比較的
余裕を持って準備を行うことができた。実験中は実験の説明と、ソフトの操作に対する説明
への回答、カメラマンを担当した。実験後には被験者全員にインタビューを行い、後日ビデ
Group Report of 2011 SISP
- 11 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
オカメラや写真等を用いて実験のまとめを行った。この実験結果をから、被験者全員が反比
例と平行移動を合わせると分数関数になることを見出していたため、実験の目的を達成でき
たと判断した。
図 4.4
入力画面
図 4.5 曲線の描かれる様子 1
Group Report of 2011 SISP
- 12 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 4.6
曲線の描かれる様子 2
図 4.7
曲線の描かれる様子 3
12 月 最終発表の制作と発表、最終報告書の作成を行った。最終発表の制作では、ポスターの
制作を行い、レイアウトだけでなく、英語の表記も考えた。ポスターは、前期に作成して
いたものを書き換える形となったが、やったことを人目で分かるように真ん中に方法 1 を
e-learning 化したことを描いた。(図 4.8) その周りに、教育プログラムの特徴である平行移
動のビジュアル化や、e-learning ソフトの特徴であるグラフの定義についての図を載せた。
ポスターの作成では英語も載せることを想定して、英語の文章を考える前に英語の表記の部
分を空けた状態でレイアウトを行った。
また、最終発表では後半の発表を担当した。出来る限り聴講者に声が通るように、聴講者
の方を向いて話すように意識した。
(※文責: 木野翔平)
Group Report of 2011 SISP
- 13 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 4.8
4.2.2
5月
ポスター
數原綾華
提案する教育プログラムのテーマを捜すため、中学1年生、中学 2 年生、中学3年生の数学
の教科書と数学 I、数学 II、数学 III の教科書分析を行った。教科書分析は、各単元の間にど
のような性質、関係があるかという点や出現に唐突感のある単元は無いかという点に注目し
て行った。その際、本グループで注目したのは分数関数という単元であった。その後、候補
に挙げたテーマに関してメンバー全員で話し合い、分数関数はテーマとして最適かを判断し
た。分数関数は数学
の教科書の中で出現し高校3年生で習う。しかし、分数関数の性質に
関しては反比例と平行移動の知識があれば理解できるのではないかという意見が出た。その
ため、今期の教育プログラムのテーマを分数関数に決定した。その際、教科書の分析を行う
ための技術を習得した
6月
実験授業に使用する教材を作成した。數原は方法 1 についての教材を作成した。作成した教
材は方程式を立てるための文章問題、グラフを描くための座標平面、グラフの値を記入する
ための表である。文章問題に関しては、受講者に分数関数と反比例について身近に感じても
らう為に日常の中で分数関数や反比例を用いて計算する場面を考慮して作成した。また、問
題の内容をつかみやすいように図での表記を増やした。さらに色を多く使用するなど視覚的
に受講者が嫌悪感を抱かないような 仕様とした。
座標平面は、普通紙に描いたものとOHP用紙に描かれたものとを作成した。OHP用紙は
透明であるので、普通紙に描かれた座標平面とOHP用紙に描かれた座標平面を重ね合わせ
ることで双曲線が平行移動する様子を可視化できるように設計した。座標平面の作成では、
細かく座標点を取れるように実践を繰り返し、適度な座標軸となるようにした。ただし、文
章問題の内容や座標平面の仕様の決定などを受けた上での作成であった。
グラフの記入用紙は座標平面に双曲線を描く際に反比例や分数関数の方程式から算出するた
め作成した。その際、グラフを記入する欄のみで無くメモや計算などができるような欄も作
成した。
その後、これらの教材を用いて実験授業を行った。実験授業の事前に中学生の集中力が継続
する時間を考慮して綿密なタイムスケジュールを立て、それに沿って授業を行った。また、
実際の実験授業では中学生が未習の単元や表現を一切用いることなく説明することが前提で
Group Report of 2011 SISP
- 14 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
あったため教科書研究を重ね、表現の統一を行った。數原は実験授業の際は講師役を担っ
た。教示の際には、受講者から明確な質問があるまではヒントや説明をしないように心がけ
た。以上の課題を解決する上で、中学生にもわかるような言い方や中学の思考を想定して教
材を作るという技術を習得した。
7月
中間発表用のポスターを作成した。ポスター作成には Adobe Illustrator を使用し、教員か
らのアドバイスを受けダイアグラムを多用するように心がけた。方法 1 と方法 2 の内容を
ダイアグラムにした。方法 1 は「反比例と平行移動の性質を復習してからこれらを利用して
分数関数の性質を見出す」というもであり、方法 2 は「分数関数を分解して見ることによ
り、反比例と平行移動の性質を見出す」というものであった。そのため、方法 1 と方法 2 で
は反比例と平行移動と分数関数の関係を各々の言葉通りに矢印を用いて繋げることでそれぞ
れの特徴を表現した(図 4.9、図 4.10)
。以上の課題を解決する上で、キーワードをわかりや
すくダイアグラム化する技術と Adobe Illustrator の技術を習得した。
図 4.9 方法 1 のダイアグラム
図 4.10
Group Report of 2011 SISP
方法 2 のダイアグラム
- 15 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 4.11 方法 1 のダイアグラム (変更後)
図 4.12 方法 2 のダイアグラム (変更後)
10 月 今後作成する教材として e-learning ソフトにすることした。その上 e-learning ソフトの中
で使用するアイコンなどのビジュアルをデザインした。その際、対象学年が中学 2 年生の女
子であることに配慮した。具体的には、色彩を多様化しかわいらしいキャラクターを出現さ
せて解説を行うことで少しでも中学生の興味を失わないようにした (図 4.15)。また、ボタ
ンやアイコンなどはパソコンの操作やパソコンを利用した経験がある人ならば直感的に操作
をすることができるように陰影をつけるなどの考慮をして作成した (図 4.16)。これらの課
題を解決する上で、Adobe Illustrator の技術と対象者に合わせた画面デザインの方法につ
いて習得した。
その後、e-learning ソフトの画面遷移図を作成し各画面に合わせて個人が担当することとし
た。數原が担当したのは、反比例、平行移動、分数関数間の性質と各々の関係性について確
認する「まとめのページ」である。「まとめのページ」では反比例の双曲線がどのように平
行移動すると分数関数の双曲線と重なるのかという内容を踏まえた上で具体的な平行移動の
様子を入力するというものである。これらの課題を解決する上で、Action Script3.0 を使用
した FLASH 作成についての技術を習得した。
Group Report of 2011 SISP
- 16 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
11 月 アカデミックリンクに、作成した e-learning ソフトを展示した際、挙げられた改善点に操
作の説明を増やすというものがあった。そのため、數原は数字の入力やグラフの作成などの
操作を説明する「操作説明」のページを作成し、加えた。「操作説明」のページは、全編ア
ニメーションを使用した。アニメーション内で使用したアイコンなども數原が作成した。そ
の際、Action Script3.0 をアニメーションの中で使用する技術を習得した。
評価実験の準備として、數原は評価方法についての選定と決定を行った。受講者が 10 人以
下であることを踏まえてユーザーテスト [8] を参考に行うこととした。また、事後インタ
ビューで尋ねる質問項目についての選定と決定も行った。事後インタビューでは、前期の実
験授業と同様に「反比例、平行移動、分数関数の間にある関係性に気づくことができたか」、
「ある単元とある単元の知識を束ねて使うことで新たな未知の知識に辿り着くという意識が
芽生えたか」という点にポイントを絞った。その際、ユーザビリティの評価手法 [8] につい
ての知識を習得した。
12 月 最終発表の準備として、発表スライドの作成を行った。発表スライドはダイアグラムに加
えてアニメーションも使用して、重要な点は観覧者の注意を惹き付けるよう考慮して作成し
た (図 4.13、図 4.14)。方法 1 と方法 2 を表現するダイアグラムに関して、前期に作成した
ダイアグラム(図 4.9、図 4.10)を再度デザインし直した。新しいダイアグラムは、方法 1
と方法 2 共に共通の図形を使用するが並べ方を変えることによって異質なものであることを
表現した(図 4.11、図 4.12)。これらの課題を解決する上で、内容のまとめ方とダイアグラ
ムの効率的な使用の仕方についての技術、知識を習得した。
図 4.13 発表スライドで用いた表現の例 1
(※文責: 數原綾華)
Group Report of 2011 SISP
- 17 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 4.14 発表スライドで用いた表現の例 2
図 4.15
デザインしたキャラクターとスタート画面
図 4.16 陰影をつけたボタンの例
4.2.3
5月
吉田一博
教育プログラムを作成するするための題材探しを行った。方法として中学から高校の教科書
(図 4.17) の分析を行うことにした。そこで、高校の教科書である数学 を見ると分数関数
について最初に書かれているが、これは中学生でも理解ができる内容であると結論づけた。
何故ならば、中学生が知っている反比例のグラフを平行移動することで分数関数のグラフを
Group Report of 2011 SISP
- 18 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
得られるからである。故に、教育プログラムの題材を分数関数と決定した。
図 4.17
6月
使用した教科書
5 月で決めた教育プログラムを実験授業で実施できるものとした。報告者は実験授業で使う
問題作成と反比例のグラフと分数関数のグラフの関係の可視化を行うための作業に取り掛
かった。前者では、日常で使うような反比例や分数関数の問題を中学校の教科書を参考に作
成した。具体的には、教科書内で記述している水の増減の問題や距離と時間の関係した問題
を使うというものである。さらに、問題文の記述はできるだけ教科書に沿った内容とした。
当然のことだが、中学生が学習していない専門用語を使用することは中学生が理解できず授
業の進行を遅らせる結果となる。従って、教科書を熟読することで使用可能な専門用語の選
定を行った。以上のことに注意して中学生が問題を見て、数学が日常で使うという実感をし
てもらえるようにした。後者では、可視化について説明する。授業内では、図のように座標
平面が描かれた透明なシートに反比例のグラフを、同じく座標平面が描かれた普通紙に分数
関数のグラフを描くという授業になっている。(図 4.18、図 4.19) 従って、報告者は透明の
シートと普通紙に座標平面を描くことにした。メモリをつけることで小さな数字が座標に
あったとしても座標平面に描けるようにした。
図 4.18 透明なシート
Group Report of 2011 SISP
- 19 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 4.19
7月
普通紙
中間報告書の作成を担当し、主に概要や教育プログラムに関する詳細について記述した。教
育プログラムについては、視覚化を図ったという点を重視して書くことで中学生が分数関数
を認識できる方法を明確にした。
10 月 後期の活動について新しい題材の選定を行うか、前期で作成した教育プログラムを発展さ
せていくかの二択にしぼった。その結果、新しく題材を選定して教育プログラムを作成して
いる時間がないと判断し、前期の教育プログラムの発展を考えることにした。前期の教育プ
ログラムの発展として e-learnig 化を行うことにした。(図 4.20)e-leraning 化によって、前
期に作成した教育プログラムと比べると授業時間の短縮や講師に依らない学習がみこめるか
らである。教育プログラムを作成するためにまずは、作成する e-learning ソフトのストー
リーを考えることにした。そこで、前期で作成した方法 1 をストーリーに盛り込むことにし
た。何故ならば、前期で作成した 2 つの教育プログラムについて実験授業した結果、方法 1
を用いた方がより知識の体系化を意識付けることが可能であるという結論が得られたからで
ある。
次に、実際に e-learning 化するにあたってプログラミングを行う必要があるが、言語を
actionscript3.0 とした。この言語は、1 年生で学習した C 言語と文法が似ているため書き
やすいのと C 言語と違い、画像とプログラムの連動が容易である点で採用している。
最後に、作成したストーリーをプログラムで表現するため、それぞれの場面の担当を決め
た。報告者は反比例のグラフがどれだけ平行移動すれば分数関数のグラフと合致するかを視
覚的に表現する場面を担当した。(図 4.20) 工夫として上下左右へ動くボタンを作成し反比
例のグラフを移動させて平行移動の様子がわかるようにした。
11 月 10 月に引き続き担当している箇所のプログラムの作成を行った。プログラムが完成した後
も、デバッグを行うことでバグを減らすようにした。E-learning 化したプログラムについて
中学生 6 人に実験授業を行ってもらった。中学生 6 人の内前期の実験授業経験者が 3 名、未
経験者 3 名となっており、それらに差があるかどうかを調べることにした。実験授業を行う
前に各々の役割を分担することにした。役割として被験者がプログラムのバグや操作方法に
関する質問にだけ答える授業の補助役か実験授業後のインタビューを行う役割があり、報告
者は前者を担当した。実験授業後にインタビューから分かることを分析した。結果として操
作性に問題があることがわかったが、反比例のグラフが平行移動することで分数関数のグラ
Group Report of 2011 SISP
- 20 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
フになるという意見がみられ、当初の目標を達成することができたといえる。
図 4.20 e-leaning 化した場面
図 4.21
視覚化した場面
12 月 最終発表の準備を行った。報告者は発表を 2 回担当することになったため、本番に向けて
発表練習を多くこなした。具体的には、声を大きくする、はっきりとしたものの言い方をす
るように心がけた。グループ報告書では、後期で行った e-learning 化について詳しく書くこ
とにした。
(※文責: 吉田一博)
4.2.4
5月
小野寺裕毅
教育プログラムの題材を選定するため、中学数学や高校数学の教科書研究を行い単元間のつ
ながりを認識してもらえるような題材を探した。そして、メンバー全員でいくつか候補を出
し合った。出された候補のうち分数関数が数学 III の教科書の一番最初で学習しており唐突
Group Report of 2011 SISP
- 21 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
感が否めなかった。さらに分数関数は使っている知識が中学生で学ぶ反比例と平行移動であ
り、反比例は分数関数の特殊な形であるといえる。そのため、中学生にとって分数関数が一
番単元間のつながりを認識しやすいと考え、題材を分数関数とした。また、実験授業の流れ
も考えた。
6月
実験授業で使う教材を作成した。(図 4.23、図 4.24) 受講者が中学生だったので、中学生で
も分かるような問題設定にするため中学校の教科書の反比例の分野の問題を参考に問題を作
り中学生が取り掛かりやすいようにした。他にも反比例のグラフの動きが目で見て分かるよ
うに透明なシートを使うなどの工夫をした。また、中学生が飽きずに楽しく受講できるよ
う、グラフを書いた透明なシートを実際に手で動かしてグラフとグラフがどう違うのか、ど
れくらい移動したものなのか分かるようにした。さらに、教材を大きく作り一人でやる個人
作業ではなく共同で作業できるようにした。そして、その教材を使い実験授業を行った。
実験授業では、報告者は教示者として授業を進めた。受講者が比例や反比例、平行移動な
どの内容をまだ理解していなかったので途中でそれらの内容の解説も行いながら臨機応変に
授業を行った。
(図 4.22)
図 4.22
Group Report of 2011 SISP
作業の様子
- 22 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 4.23 作成した教材
図 4.24
7月
実験授業の様子
中間発表用のポスターの作成、グループ報告書の作成を行った。ポスター、報告書の作成の
ときにメンバー全員でプロジェクトの背景や目的などを再確認した。報告者は中間発表の発
表者を担当していたため、プロジェクト内でアドバイスなどをもらいどのように発表したら
分かりやすいか考えながら発表練習を行った。中間発表当日は多くの人が来ていたがきちん
と発表することができた。(図 4.25) また、報告書を作成する際、TEX の技術を習得した。
Group Report of 2011 SISP
- 23 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 4.25 中間発表の様子
10 月 後期の活動として新しい題材を探すか、前期の題材で引き続き活動を行うか意見を出し合
い、メンバーで話し合いを行った。後期の活動時間を考えると新しい題材で初めから行うの
は厳しいと判断し、前期で作成した教材を e-learning 化することにした。前期で作成した教
材には 2 つの方法があったが、今回は方法 1 のみを e-learning 化することにした。その理
由として、方法 1 は中学生が慣れた表現を採用しており、単元間のつながりを理解しやすい
という点が挙げられる。さらに、e-learning 化することで実験時間の短縮など前期の実験授
業の課題の解決にもつながる。また、後期の活動のスケジューリングも行った。その際スケ
ジューリングの技術を習得した。作成する e-learning ソフトをどのような流れにするか話
し合いストーリーを作成した。前期に作成した教材の方法 1 と方法 2 のうち、中学生が慣れ
た表現を採用している方法 1 を e-learning ソフト化することにした。開発言語は C 言語の
文法と似ていて比較的易しい actionscript3.0 を使用する。
Flash でソフトを作るため、Flash の本などを読み Flash や actionscript3.0 の勉強をし、
技術を習得した。そして、作成したストーリーを見ながらそれぞれどの場面を担当するか割
り振りを行った。その中で、報告者は解答の入力フォームや選択肢の作成を担当した。担当
した場面ではどのような処理にするかアルゴリズムを考え、ストーリーと考えたアルゴリズ
ムに従い、ボタンを押したときの処理やボタンを押したときに選択肢の数字が変わる処理な
どのプログラミングを行った。
e-learning ソフトの開発と同時に未来祭の準備も行った。未来祭当日は前期の実験授業で使
用した方法 1 と方法 2 の両方の教材と中間発表のポスターを展示した。(図 4.26) ポスター
と教材を実際に見てもらいながら前期までどのような活動を行って、これからどのような活
動を行っていくか説明をした。
Group Report of 2011 SISP
- 24 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 4.26 未来祭の様子
11 月 10 月同様に e-learning ソフトのプログラミングを行った。担当した選択肢の正誤判定をす
る処理のアルゴリズムを考えた。(図 4.28) この選択肢の正誤判定の処理やボタンを押した
後の処理などはどこの場面でも共通することなのでプログラムを共有した。このことによ
り、他のメンバーが作ったプログラムでもどのような処理をしているプログラムか見てわか
るようになった。報告者は自分が担当した場面のプログラミングを終えた後、メンバーそれ
ぞれが作成した場面のプログラムのドッキングを行った。ドッキングの際に小さなミスで多
くのバグが発生した。この発生したバグのデバッグをし、完全ではないがソフトがある程度
動くようにした。また、アカデミックリンクに参加するためその準備も行った。アカデミッ
クリンクでは作成した e-learning ソフトを展示し、実際に使ってもらいながら説明をした。
多くの人にソフトを使ってもらい、「戻るボタンをつけた方がよい」、「操作説明をしている
場面を作成した方がよい」などの意見やアドバイスをもらったが、教育に目を向けているこ
と、実際にソフトウェアを作り実践していること、グラフが平行移動している様子をビジュ
アル化したことなどを高く評価され賞を受賞することができた。
作成した e-learning ソフトの評価を行うため、前期の実験授業経験者を含めた 6 人の中
学生を対象に評価実験を行った。(図 4.27) 中学生に実際にソフトを使ってもらい、実験後
には事後インタビューをした。事後インタビューでは「反比例と平行移動と分数関数の関係
性に気づけたか」、「既に知っている知識を合わせることで新しい知識になることがわかった
か」などの質問をした。それ以外にも受講者が作成した e-learning ソフトを使ってみてどの
ように思ったのか知るために思ったことを自由に発言できる時間も設けた。そして、得られ
た回答と評価実験の様子を撮影したビデオをチェックし、分析を行った。
12 月 最終発表のポスターやスライドを作成するためメンバー全員で意義や目的、目標などの再
確認をした。報告者は最終発表での発表を担当していたのでスライドやポスターを見なが
ら、必ず伝えなければならないことなどを挙げていき、どのように発表したら伝わりやすい
発表になるか考えた。その後プロジェクト内で最終発表の発表練習を行い、先生やメンバー
からアドバイスをもらった。また、最終発表の後は TEX を用いて最終報告書の作成も行っ
た。
Group Report of 2011 SISP
- 25 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 4.27 評実験の様子
図 4.28 作成した場面
(※文責: 小野寺裕毅)
担当課題と他の課題の連携内容
4.3
本節では、各人が担当した課題と他メンバーの課題が、どのような点で連携されているかを記す。
4.3.1
木野翔平
前期 教育プログラムの作成を行ったが、これは作成する問題に依存する。問題の文章表現が中学
生にとって難しいと思われる箇所は、図を用いて視覚的に伝わるよう工夫した。また、問題
を解くのに時間がかかる箇所では、受講者が記入できる欄を設け、そうでない箇所では、単
に図を用いた解説にした。こうした教材のデザインが出来ていないと、実際に作りこむこと
ができないため、デザインを専門として学んでいる木野が担当することにした。こうするこ
とで、実際の作業は小野寺との分担になったが、作成作業にスムーズに入ることができた。
Group Report of 2011 SISP
- 26 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
後期
e-learning ソフトを作成するにあたり、画面の素材作成はインタフェースとして成り立たな
くたるため、開発班との連携に繋がっている。出来る限り早く素材を作成することが目標と
なった。素材作成班の中でも作業を分担していたが、両方合わせて一つのソフトの画面とな
るので、そちらとも連携している。また、各種ボタンに関しては、素材作成班の中でも交換
しながら画面の設計をしていたため、自分のみ分かるものであっても意味が無かった。問題
が起きたときのために、作り方を保存しておいたり、それを基とした別の素材を作るなどし
て対処した。素材作成班の中では、どちらかが遅れても開発側に影響を及ぼすこととなるた
め、作業の進捗を合わせた。 開発班の作業をするようになってからは、ストーリー全体を
メンバー全員で分担して作成していた。特に木野は最初の段階を担当していたため、担当箇
所が出来上がらないとデバッグへの影響もあり、連携していた。キーボードからの入力の受
付に関しては、実装後に必要となる箇所すべてに応用しなければならなかったため、この作
業も連携していた。
(※文責: 木野翔平)
4.3.2
前期
數原綾華
教材のデザインと作成を行った。教育プログラムの方法 1 に関する教材の作成は吉田と共に
行った。主に、吉田の考えた問題や仕様を教材として作成する役を担った。ただし、文章問
題の内容に関しては互いに議論した上で決定した。文章問題作成の際は、まず數原が分数関
数や反比例を用いた計算が活かされる例を考え、その後具体的な数字や単位の設定を吉田が
行った。座標平面を作成する際、吉田と作業を分担し座標平面の教材は吉田が行い、數原は
当日のタイムスケジュールの作成を行った。
実験授業の際には、數原は講師役を担い吉田は補助役を担った。數原が受講者に説明したヒ
ントの内、不備があると思う点や補足すべき点がある場合に説明するようにして、吉田が數
原の課題を補助することとした。
中間発表で使用するポスターを作成する際には、木野が作成したダイアグラムと數原が作成
したダイアグラムを互いに共有して使用した。また、ポスター内部で使用した表現はスライ
ド内でも使用し、その逆も行うなどの共有を常に行った。
後期
e-learning ソフト内で使用するアイコンなどのデザインと作成、最終発表のスライドの作成
を行った。アイコンのデザインは木野と分担をして行い、數原と木野が作成したデータは全
員と共有してそれぞれが e-learning ソフトの画面を作成する際使用できるようにした。作
成した e-learning ソフトの画面は、小野寺が數原を含め全員の分を一つの e-learning ソフ
トとして編集した。また、画面を作成する際に不明な点などは木野や吉田に相談し教授を受
けた。評価実験の際の評価方法について、數原が選定し決定した手法は当日は小野寺が行っ
た。その上で評価方法についてまとめて全員と共有を行った。
最終発表で使用する発表スライドは、ポスターを作成していた木野と使用するダイアグラ
ムや表現を確認し合い作成した。また、細部の表現に関しては吉田と相談をして作成にあ
たった。
(※文責: 數原綾華)
Group Report of 2011 SISP
- 27 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
4.3.3
吉田一博
前期 教育プログラムの効果的な題材の選定と実験授業のシナリオ作成を課題とした。プログラム
として中学生が知っている反比例のグラフから分数関数のグラフを得るという内容とした。
これは、知識を体系化させるという目標にそくしている。さらに、中学生が理解しやすい問
題と授業内容を考える。問題として中学の教科書から改変したものを選び、受講者がすぐに
回答できるように作成した。また授業内容として可視化を考え、知識の体系化を意識できる
ようにした。今回、問題の作成に時間が掛かってしまっては教材のデザインの作成の時間が
無くなるため、できるだけ迅速に作成した。
実験授業では講師役の補助を担当した。主に、受講者が問題を解けなかったときにヒントを
与える。
後期 他のメンバーと連携した箇所は 2 つある。一つは、e-leaning ソフトを作成するためのプロ
グラミングを行ったときである。これに関する連携として、各自で場面ごとにプログラムを
作成するというものである。このとき前と後の場面と整合性を保つためにこまめにお互いの
場面を見せ合うことにした。また、プログラミングで行き詰っている箇所があれば、メン
バーに相談することで解決することにした。
もう一つは、実験授業である。各々で受講者の様子を確認し、メンバーが答えられないとき
や意見があったら他のメンバーと相談するようにした。ここで報告者は、受講者のメモを記
録として残しておくことを進言した。
(※文責: 吉田一博)
4.3.4
小野寺裕毅
前期 考案した教育プログラムの方法 1 の教材は数原と吉田が作成し、方法 2 は小野寺と木野が作
成した。その中でも小野寺は教材で使用する問題の作成を担当した。方法 2 は分数関数の問
題を最初に出すため、教材の導入の問題が分かりやすく中学生に難しいという印象を与えな
い問題にする必要があると考えた。そのため、中学校の教科書に出てくる反比例の問題を参
考に導入の問題を作成した。木野は主に教材のデザインや、グラフを描くための座標平面の
作成を担当し、中学生が飽きないようにするため教材を大きくして共同で作業できるように
することや、問題の文章表現が難しいところでは図を用いて視覚的に伝わるようにするなど
の工夫をした。 実験授業の際は小野寺がメインの教示者を務め、木野が教示者の補佐を務
めた。受講者の中学生が比例や反比例などの知識が曖昧であったため、途中で解説の時間を
設けるなど臨機応変に対応した。木野と時間配分や次に何をするか確認するなどの連携をと
り円滑に実験授業を進めることができた。実験授業後はアンケートをとり、木野とともに撮
影していたビデオをみるなど分析を行った。 中間発表のスライド作りの際はスライドとポ
スターで使っている表現を合わせるなど、お互いに共有すべきことを共有できているか頻繁
に確認する作業をした。中間発表本番では発表者として発表を行った。
後期 前期に作成した教材の方法 1 を e-learning 化することになり、開発言語は C 言語と文法
Group Report of 2011 SISP
- 28 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
が似ていて比較的容易であるという理由で actionscript3.0 とすることにした。そのため、
actionscript3.0 と Flash を扱ったことのない小野寺と吉田は e-learning ソフトを作るにあ
たって本やウェブサイトを見ながら actionscript3.0 と Flash の勉強を行った。小野寺と吉
田が actionscript3.0 と Flash の勉強を行っている間に木野と数原は e-learning ソフトの中
で使うボタンなどのアイコンのビジュアルのデザインを Adobe Illustrator を用いて行っ
た。また、中学生の興味を失わないようにするため、解説を行う先生役としてかわいらしい
キャラクターを登場させることにした。そのキャラクターのデザインは数原が行った。その
後、木野と数原が作成したアイコンなどをメンバー全員で共有した。e-learning ソフトを作
る際、e-learning ソフトのどこの場面を担当するか割り振りを行った。小野寺はボタンを押
した後の処理や選択肢の作成、ボタンを押すことで選択肢の数字が変わる処理のプログラミ
ングを担当した。ボタンを押した後などの処理は他の場面でも使うためこの処理のプログラ
ムはメンバー全員で共有した。個人でプログラムを作成している間も e-learning ソフトの
仕様などについてメンバーで何度も確認し、e-learning ソフトの仕様を統一させた。これら
の小野寺が担当した処理のプログラミングを行ったあと、他のメンバーが作成した場面のプ
ログラムのドッキングし 1 つの e-learning ソフトとして編集した。また、編集する際に不明
な点などは他のメンバーに相談し解決した。 評価実験の際の評価方法については数原が選
定し決定した。評価実験の後の事後インタビューは小野寺が担当し、事後インタビューでは
「反比例と平行移動と分数関数の関係性に気づけたか」、「既に知っている知識を合わせるこ
とで新しい知識になることがわかったか」などの質問をすることで前期の実験授業の経験者
と未経験者の比較をした。その後、得られた回答と評価実験の様子を撮影したビデオをメン
バー全員でチェックし分析を行った。
(※文責: 小野寺裕毅)
Group Report of 2011 SISP
- 29 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
第 5 章 結果
課題解決のプロセスの詳細学習指導要領に囚われない教育プログラムを中大連携教育の中で実
現できる形で提案するという本グループの課題を達成するため、各人は詳細にどのような課題を担
当し、どう解決したのかを以下に記す。
5.1
プロジェクトの結果
反比例と平行移動の知識を束ねて分数関数に繋げるという題材で、教育プログラムを 2 つ考案し
た。それらを以下に示す。方法 1 社会における具体例を挙げ、その後反比例と平行移動について
学習し、2 つの知識を分数関数という新しい知識に繋げる方法 2 始めに分数関数について考え、
その後分数関数を分解し、反比例と平行移動という既 知の知識に帰着させる
前期 以上の 2 つの教育プログラムの効果を評価するため、プリントを用いた教材を作成し、評価
を行った。作成した教材の特徴をそれぞれ以下に示す。
方法 1
一番最初に具体例をいくつか提示しながらの雑談をする。これは、社会の中から異なる
ジャンルの具体例を挙げることで、これから学ぶことの意義を明確にすることができる。そ
の後反比例と分数関数の問題を考えながらそれぞれについてのグラフを透明なシートに作成
する。作成したグラフそれぞれ重ね合わせることによって、反比例と分数関数の類似性を見
つける。最後に、その類似性が平行移動であることを知る。
方法 2
始めに分数関数についての問題を考え、その後、反比例の問題を考える。こうすること
で、分数関数は中学生が習っていない単元であるが、反比例の問題を考えることで方程式や
グラフの類似性に気づく。より類似性に気づきやすいように、グラフは透明なシートに描
き、それぞれのグラフを重ねて見ることも行った。これにより、平行移動の様子を直接見る
ことが出来る。また、中学 2 年生はグラフの平行移動について学んでいないため、その講義
も含めた。
効果の評価には、作成した教材を中学生 4 人に実践することで行った。学生はそれぞれ講
師役と補助役に別れ、講師役がリードして教材を用いた実験的な授業を行った。実験授業で
は、方法 1 に比べ方法 2 の方が時間が長くかかってしまった。実験終了後に受講者にアン
ケートを実施し、その結果を以下に示す。
質問:今回の教材の目的は何だと思いますか?
方法 1 の受講者の回答:中学校と小学校の数学で高校の勉強ができちゃう。
方法 2 の受講者の回答:反比例が発展した問題だった。
以上の結果により、2 つの方法による教育プログラムは、どちらも効果的であることが分
かった。
後期 前期の結果を基に、方法 1 を e-learning ソフトにした。方法 1 の方が方法 2 よりも中学生
にとって理解しやすい内容であったためである。e-learning ソフトへの入力はキーボードと
Group Report of 2011 SISP
- 30 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
マウスで行い、キーボードからの入力も数字のみであったため、比較的難しい入力を避ける
ようにした。平行移動のビジュアル化に加え、グラフが曲線になる様子を段階を踏んで連続
的に見ることができる場面を用意した。
この e-learning ソフトを用いて受講者 1 人につき 1 台の PC を当てた。また、前期の実
験授業経験者が 3 名、未経験者が 3 名で合わせて 6 名で評価実験を行った。これにより、前
期からの改善具合の評価と、e-learning ソフトとしての評価を行うことができる。実験終了
後に受講者にインタビューを実施し、その結果を以下に示す。
回答 1:座標点の集合が曲線になる様子が分かりやすかった。
回答 2:反比例を基本として分数関数に発展していった。
以上から、前期に考案した教育プログラムは e-learning ソフトにしても効果的であり、その
利点も活かしてグラフについて学ぶこともできた。
(※文責: 木野翔平)
5.2
成果の評価
前期 作成した 2 つの教育プログラムにより、総合的に実験授業の受講者は、単元間の繋が
りを意識することができた。これは実験授業中の発言、及び実験授業後に行ったアン
ケート調査により判断した。受講者が単元間の繋がりを意識できた要因として、繋がり
を可視化したことが挙げられる。当初の予定通り、繋がりの可視化によって受講者は反
比例と分数関数の類似性に気づくことができていた。結果として、本グループの目標が
達成されたことから、課題は解決されたと評価した。
後期 前期で考案した教育プログラムを e-learning 化しても、実験授業の受講者は、単元間
の繋がりを意識することができた。これは実験授業中の発言、及び実験授業後に行った
アンケート調査により判断した。本教材は講師に依存しない学習をサポートするもので
あるため、受講者が自ら考え理解することが出来たと言える。また、数学の対象の可視
化の中で、グラフが曲線になる様子を作成し、受講者から高評価を得た。結果として、
本グループの目標が達成されたことから、課題は解決されたと評価した。
(※文責: 數原綾華)
5.3
担当分担課題の評価
4.2 節で挙げた各人が担当した課題についての自己評価を行った。その内容を以下に記す。
5.3.1
木野翔平
教科書分析から題材の決定
中学 1 年生の知識で高校 3 年生の内容の一部が分かってしま
うという題材は、単なる単元間を繋げただけでなく、学年を横断する題材となった。こ
れにより、中学生が本来この時期に触れることのない高校の内容の一部が分かるため、
この題材を行う意義が明確であったと考えられる。
Group Report of 2011 SISP
- 31 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
ストーリーの展開
教科書上では、既に習っている知識であっても、理解できていない生徒
もいるため、そのような生徒に対する配慮も考える必要があった。評価実験を行った結
果から、想定していた時間より長くかかってしまった箇所もあったが、あらかじめ配慮
を用意しておいたため、スムーズに進行した部分もあった。より幅広い生徒像を想定す
ることも考えられる。
教育プログラムの作成
中学生を対象としているため、中学生が理解できる言葉や文字を使
用してプログラムの作成を行った。中学生がプログラムを使用した際、何を行うべきか
分かっていた。特に、透明なシートを活用した反比例と分数関数の類似性を視覚化した
プログラムにおいて、重ねるということに気づいており、実際に重ね合わせた際も理解
できていた。
実験授業の実施まとめ
まとめ実験授業の最中は、メインの教示者の補佐として、次に何を
すべきかを伝えるなどした。メインの教示者が一人であったため、実験授業に一貫性が
持て、受講者も同一のことをやっているという感覚になっていたと考えられる。
方法の決定
題材は前期と同様、分数関数とした。前期は教育プログラムを 2 つ考案した
が、この内片方の方法 1 を採用することにした。これは、前期の実験授業から、方法 1
の方が中学生にとって理解しやすい内容であることが分かったからである。後期の残り
の日数等を考慮した上での判断として、方法 1 のみを採用したことが妥当といえる。
e-learning 化 前期の実験授業の実施時間がかかり過ぎたことや、実験授業のぎこちなさ
を解消するため、教材を e-learning 化することにした。このとき、開発環境をメンバー
のスキルを考え、比較的容易にインタラクティブなソフトを開発できる Adobe Flash
(ActionScript3.0)を選んだ。Adobe Flash は GUI ツールを用いてソフトを作成でき
るため、開発環境として Adobe Flash を選んだことは妥当といえる。また、C 言語や
Java など、大学で学んできたプログラミングの知識やスキルを活かす場として、十分
であると考える。
ストーリーの作成
前期の実験授業から分かったことや方法 1 の修正点などを加え、ストー
リーを考え直した。この作業は、前期の実験結果から得た情報を基に、教育プログラム
をブラッシュアップになっている。そのため、前期に方法 1 を考えた 2 人が前期実験
授業の様子を話しながら、まとめる作業をした。まとめる作業は画面遷移図として作成
し、その際画面のレイアウトを担当した。これらの課題は、情報デザインを専攻してい
るためスムーズに行うことが出来た。
e-learning ソフトの作成 始めに、画面に必要な素材作りを Adobe Illustrator や PhotoShop を用いて作成した。例えば、画面を切り替えるためのボタンや問題等を載せる
ための黒板のイラスト等を作成した。素材が出来た後、Adobe Flash を用いてソフト
の開発を行った。この際、ActionScript3.0 によるプログラミングも行い、慣れていな
いメンバーに対し ActionScript3.0 の書き方等を共有したりもした。 上記に関して、
アカデミックリンクでイラストについて良い評価を受けることが出来たため、Adobe
Group Report of 2011 SISP
- 32 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
Illustrator を用いた素材作成は良く出来たといえる。また、ActionScript3.0 によるプ
ログラミングも、バグが多発してしまったが、うまく修正し評価実験を行うことができ
たため、よかったといえる。
実験授業の実施
実施の前に、被験者 6 人分の PC や電卓、ビデオカメラ等の準備を行っ
た。被験者の邪魔にならないように、ビデオカメラの位置を調整したり、被験者の座る
位置にも気を遣った。実験中は、実験に関する説明や、ソフトの操作に関する質問に回
答する役目を担った。その際、ソフト内容に関しては被験者自信に考えてもらうことを
注意した。実験終了後に、被験者全員にインタビューを行い、本教育プログラムの目的
が達成されたか、などを検証した。実験授業によって目的達成を検証することができた
ため、一連の課題において良かったといえる。
(※文責: 木野翔平)
5.3.2
數原綾華
教科書分析から題材の決定
分数関数を用いて教育プログラムを作成したことは、実験授業
の様子やアンケート結果などから適切な選択であったと言える。また、教科書分析にお
いて、応用された問題中に使用される知識は何かということに絞って分析したことは、
結果的に自分自身が知識を組み合わせることで新しい知識を獲得できる様子を体感でき
たため、よかった。
教育プログラムの作成 文章問題において、実際に使用した中学生は挿入した図から文章の
内容を捉えられていた。そのため、工夫した点において上手くできたと判断する。座標
平面において、実験授業では中学生の理解度から急遽座標軸の仕様変更を余儀なくされ
た。これは、 シュミレーションの不足より起きた事態である。そのため、今回作成した
座標平面は適当なものではなかった。
教育プログラムに関する実験授業の実施
実験授業では、受講者に対して教材の使用説明や
内容の教示を行った。受講者の反応に合わせて臨機応変に対応することができた。受
講者からは「わかりやすかった」との感想をもらうことができたため、授業の実施はス
ムーズにできたと判断する。
e-learning ソフトのデザインと開発 e-learning ソフトのデザインを対象が中学 2 年生の
女子であることを踏まえて製作した点について、実験後の受講者から「かわいらしい」
といった旨の発言があったことから、興味を惹くために有効であった。e-learning ソフ
トを開発する際に画面遷移図を詳細に作成したことによって、その後の画面作成タスク
の分担やどのような仕様の画面を作成すべきかといったことが容易に想像しやすくなっ
た。よって、画面遷移図の作成が重要であることを実感することができた。開発した画
面について、複雑なプログラミングとなったため、ある特殊な状況下で e-learning ソフ
トを再生するとバグが生じるようになってしまった。この点は、解決方法が未だわか
らず自己の勉強不足を感じてしまう結果となった。「操作説明」のアニメーションに関
しては、操作説明自体を読み飛ばしてしまう受講者が多かった。また、実験後のインタ
Group Report of 2011 SISP
- 33 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
ビューから「操作説明を見るのは面倒くさかった」といった旨の発言が見られた。その
ため、操作の説明を単調に流すのみにとどまらず受講者自らが操作する画面を加えるな
どの工夫をすべきであったと判断した。
評価方法の決定
e-learning ソフトの評価方法を受講者のインタビューから行うこととした
点について、インタビュアーが臨機応変な対応を行えた点から評価を行うために有意義
な発言を得ることができた。そのため、評価方法の決定は正しかったと判断した。
最終発表のスライド作成
ダイアグラムを多用したことにより、最終発表の際発表者が変
わっても内容を捉えやすく原稿の暗記をしなくとも全員が同じ内容、言い回しの説明を
することができた。また、評価シートのコメントからも「スライドが見やすかった」と
いった旨のコメントが寄せられたことから、発表スライドに関しては考慮した点が活か
されたと判断した。
(※文責: 數原綾華)
5.3.3
吉田一博
教科書分析から題材の選定
分数関数という題材は中学生にとって理解しやすい内容である
とアンケートの結果からわかった。よって、適切な題材選びを行うことで知識の体系化
を認識できるという当初の目標を達成することができた。
教育プログラムの作成
視覚化を行うことで確かに知識の体系化には繋がったものの、その
目標を達成するまでに時間がかかってしまったことが課題となった。今後は問題数を減
らしたり、問題の難易度を下げたりする必要がある。
実験授業の実施 (前期) 補助役として参加したが、受講者が行き詰っている際にヒントを
与えるのが遅かったのが問題であった。今回は問題が解けるということが目標ではない
ので、行き詰っている様子が伺えたらヒントを積極的に出し行きたい。
e-learning ソフトの開発 今回、報告者が担当したのはプログラミング作成である。具体
的には反比例のグラフと分数関数のグラフの関係性を明らかにするようなプログラムを
作成した。その結果として、中学生が目標を達成できるような仕掛けになったというこ
とは、インタビューの結果からわかった。やはり、ボタンを押すだけでグラフが動くと
いう単純明快な仕掛けが成功に繋がったのだと分析する。
実験授業の実施 (後期) またしても補助役での参加であった。しかし、役割が異なってお
り、受講者が問題を解けずに行き詰っていたとしても教えないことになった。かわり
に、受講者が PC に関して初心者であることを想定して操作に関する質問を行った際に
は答えるというものである。結果として、受講者の質問に対して報告者は適切に答える
ことができたので役割を果たすことができた。しかし、プログラムのバグや操作性に関
する指摘が多かったのでプログラムについては改善する余地があるといえる。
Group Report of 2011 SISP
- 34 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
(※文責: 吉田一博)
5.3.4
小野寺裕毅
教科書分析から題材の選定
教育プログラムの題材を決定するため、中学や高校の教科書
分析を行った。数 III の一番初めに突然分数関数が出てきており、唐突感があるため分
数関数を題材とした。分数関数は、中学 1 年生で学ぶ反比例と平行移動の知識を組み合
わせることで高校 3 年生で学ぶ分数関数の知識を見出せるというものであった。これ
は学年横断型の題材で、本来中学生が学ぶ内容ではない。しかし、この題材は単元間・
学年間の知識の関係性を知る良い機会となると考えられる。
実験授業のストーリー展開
まず最初に四角形の縦の長さと横の長さに制限をつけた分数
関数の導入の問題を考えてもらい、式やグラフの形を予想する。その後導入の問題の縦
の長さの制限をゆるくし、解除した問題の式をグラフを予想する。次に縦の長さと横の
長さの制限を完全に解除した問題を考え、反比例の式とグラフを書く。最終的に反比例
と分数関数のグラフを透明なシートに描き比較し、どれくらい平行移動したものか調
べ、平行移動したときに分数関数の式がどのように変わるのかを知るという流れになっ
ている。 今回の教育プログラムで使う知識は反比例と平行移動という中学 1 年で既
に学習している内容であったが、反比例と平行移動の知識を前提条件とせず、まだ理解
出来ていない生徒もいると考えた。実験授業をスムーズに進めるため、そのような生徒
に対し、既に学習した内容の簡単な解説を加えるという配慮を行うことにした。そのた
め、数学が得意な生徒から苦手な生徒まで幅広い生徒を対象にすることができる。
実験授業の教材作成 中学生を対象としているため、問題の設定や文章を分かりやすいも
のにした。しかし、分数関数はまだ学習していない内容であるため問題の文章の意味が
分かりにくいことも考えられる。そのため、問題の文章が難しいと思われる問題には図
を用いて視覚的に問題をより分かりやすくするという工夫をした。中学生に反比例のグ
ラフが平行移動して分数関数になる様子などを視覚的にわかってもらえるように、反比
例のグラフと分数関数のグラフが描かれた透明なシートを用いて反比例のグラフと分数
関数のグラフを重ね合わせるということを行った。これによって中学生は分数関数は反
比例が平行移動したものだということに気付け、単元間・学年間のつながりを認識する
ことができた。
実験授業の実施
実験授業では教示者として授業を進めていった。受講者の中学生が反比
例と平行移動の内容を分かっていなかったようだったので、反比例と平行移動の復習に
時間を割き、本題である分数関数の内容にスムーズに入れるようにした。授業補佐の人
と連携をとり、時間配分や授業の進め方について話し合い授業の方向性を確認した。こ
のようにそのときの状況に合わせて臨機応変に対応することができ円滑に授業を進めら
れ終わらせることができた。また、最後まで 1 人が授業を担当したため、授業内容に一
貫性を持たせることができた。 実験授業の後にアンケートをとり、授業を撮影したビ
デオをチェックし分析と反省を行った。その結果中学生が反比例と平行移動の類似性に
Group Report of 2011 SISP
- 35 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
気付くことができ単元間・学年間のつながりを認識してもらうことができた。しかし、
授業時間が長すぎたことや、単純作業が多く中学生が飽きてしまったなどの反省点も
あった。
後期の活動内容の決定
後期の活動内容として前期と違う新しい題材で活動をするか、前期
の内容をもっと発展させるか話し合いを行った。後期の活動時間を考えてあまり時間
がなかったため、前期に作成した教育プログラムの反省点や課題を踏まえて前期のソ
フトを e-learning ソフトにすることにした。e-learning ソフトにすることで時間の短縮
にもつながり、また数学の対象を可視化することができるなどのメリットがある。 e-learning ソフトを作成するにあたり、前期提案した教育プログラムの方法 1 か方法 2
のどちらかの選択を行った。そこで、中学生が慣れた表現を採用しており、単元間の
「つながり」を意識しやすいというメリットがある 方法 1 を e-learning 化することにし
た。
ストーリーの作成
方法 1 を選択したが、前期の反省点や課題を考慮しストーリーを考え直
すことにした。方法 1 を担当した二人が前期の実験授業の様子などをまとめた。それに
従い練り直したストーリーを画面遷移図として模造紙に書いた。小野寺は画面遷移図を
見ながらどのような処理にすればよいか考え、他のメンバーは画面のレイアウトなどを
決めた。
e-learning ソフトの作成 C 言語と文法が似ていて扱ったことがなくても比較的容易に扱
えるという理由で開発言語を actionscript3.0 とし Flash でソフトを作成することにし
た。actionscript3.0、Flash ともに扱ったことがなかったので、本やウェブページを見
て勉強をした。その間に他のメンバーが e-learning ソフトの中で使用するアイコンな
どのデザインを行った。ボタンを押した後の処理や選択肢の場面の作成を担当し、プロ
グラミングを行った。その後他のメンバーがそれぞれが作成した場面をドッキングし、
1 つのソフトにした。
評価実験
評価実験は中学 2 年生 6 名を対象に行い、実際に e-learning ソフトを使っても
らった。実験中はソフトの操作やバグが起こったときの対応をした。また、分析のため
実験中の様子をビデオで撮影した。評価実験の後は事後インタビューを担当した。事後
インタビューでは e-learning ソフトの操作性や反比例と分数関数の類似性について質
問をし、前期の実験授業の経験者と未経験者の比較を行った。
(※文責: 小野寺裕毅)
Group Report of 2011 SISP
- 36 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
第6章
前期
今後の課題と展望
中間発表、最終発表の両方において、被験者の数が少ないという意見と、そのた
めに量的なデータの収集ができていないという意見もあった。実際、前期・後期の
両方で行った実験授業では、中学生 4∼6 人という少人数であった。質的なデータ
のみでなく、量的なデータを得るために、被験者の数を増やすことが課題である。
また、後期行った e-learning 化で発生したバグの修正や、ネットワークを利用した
メールやチャット機能を備えることも課題である。
後期
過去行われてきた本プロジェクトでも、中学校と大学が連携した教育を実現する
ことは出来なかった。今年度もまた、それを実現することができなかった。しかし
今年度は、前期に分数関数を題材とした教育プログラムを 2 つ考案し、その効果を
プリント教材で評価した。後期では e-learning ソフトを作成し、その効果評価し
て、前期・後期どちらも目標を達成することができた。これは、中学校との連携に
大きく貢献する内容であるといえる。従って、今年度作成した教育プログラムだけ
でなく過去の作品も合わせて、今後中大連携教育を実現することを展望として考え
ている。
(※文責: 吉田一博)
Group Report of 2011 SISP
- 37 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
付録 A
未来祭
本プロジェクトは 10 月に行われた未来祭に出展した。未来祭の前日にメンバーで会場
設営を行い、どのように配置したら A グループと B グループの両方が見やすいか考え
た。試行錯誤を重ねた結果 A グループと B グループの展示物の中央に全体のポスター
を配置し、その両隣に各グループのポスターを配置することにした。
未来祭当日 A グループはおもしろ算数クラブで使用した教材やドット絵の展示をし、
B グループは実験授業で使用した教材と、実験授業の様子のスライドショーを流した。
来場者の中には小さい子どもなども多くきたので A グループの教材を実際にやっても
らったりした。(図 A.1) 一般の方だけでなく他大学の学生も来ており、幅広い人たちに
自分たちの活動について知ってもらうことができた。
図 A.1
教材をやっている様子
(※文責: 吉田一博)
Group Report of 2011 SISP
- 38 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
付録 B アカデミックリンク
本プロジェクトは 11 月に行われたはこだて高等教育機関合同研究発表会(アカデミッ
クリンク)に参加し、ポスターセッション形式でプロジェクトの目的や成果などをの詳
しく説明した。ポスターのほかに作成した e-learning ソフトを実際に使ってもらいな
がら説明を行った。 多くの人がブースを訪れ、他大学の先生方から e-learning ソフト
について、”戻るボタンをつけた方がよい”などの課題や改善点を指摘され今後の課題
や早急に改善すべき点などが見つかった。しかし、多くの人に興味・関心をもってもら
うことができ・教育に目を向けていること・実際にソフトウェアを作り実践しているこ
と・グラフが平行移動している様子をビジュアル化したことなどを高く評価され、賞を
受賞した。(図 B.1)
図 B.1 説明の様子
Group Report of 2011 SISP
- 39 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
図 B.2 FM いるか賞
(※文責: 吉田一博)
Group Report of 2011 SISP
- 40 -
Group Number 9-B
Supports for regional education in mathematical science
参考文献
[1] IEA 国際数学・理科教育動向調査の 2007 年調査. http://www.nier.go.jp/
timss/2007/gaiyou2007.pdf
[2] 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会(第 4 期第 3 回)議事録・配付資
料[資料 7]小・中学校の授業時数に関する基礎資料−文部科学 http://www.mext.
go.jp/b_menu/shingi/chukyo/ chukyo3/siryo/07061432/005/001.htm
[3] 必修科目『解析学 I』の I∼L クラスの実施状況、公立はこだて未来大学、2011 年
すぎやまよししげ
[4] 杉山吉茂,ほか.新しい数学 1.東京書籍株式会社 2009 年
すぎやまよししげ
[5] 杉山吉茂,ほか.新しい数学 2.東京書籍株式会社 2009 年
すぎやまよししげ
[6] 杉山吉茂,ほか.新しい数学 3.東京書籍株式会社 2009 年
おかもとかずお
[7] 岡本和夫,ほか.数学 .実教出版株式会社 2008 年 [8] ユーザビリティの評価手法 http://www.usability.gr.jp/whatis/methods/
Group Report of 2011 SISP
- 41 -
Group Number 9-B