特集 多様化するデジタル印刷ビジネスに新しい 価値を届ける「VersantTM 2100 Press」 "VersantTM 2100 Press" Offering New Values for the Expanding Digital Printing Business 要 旨 【キーワード】 富士ゼロックスは2000年に本格的なオンデマン デジタル印刷、コストパフォーマンス、高生産 ドデジタル印刷機としてColor DocuTech 60を導 性、高精細再現、高安定画質、高信頼性、用紙 入し、デジタル印刷機のリーディング企業として市場 汎用性、コンパクト をけん引してきた。 しかしながら、印刷物のデジタル化に伴い、多くの 企業がデジタル印刷機の市場へ参入し、競争が激化し ている。富士ゼロックスはこの競争環境の中で、多く のお客様が高いコストパフォーマンスの商品を要望 していることに着目し、ハイエンドデジタル印刷機の 性能を普及機レベルのサイズと価格で実現するため の技術を導入した、新開発のプリントエンジン VersantTM 2100 Pressと、新開発のコントローラー GX Print Server を 発 売 し た 。 本 稿 で は 、 こ の VersantTM 2100 PressおよびGX Print Serverに 搭載されている主要技術について紹介する。 Abstract 【Keywords】 digital printing, cost-effective, high productivity, high definition, stable image quality, high reliability, media support, small size 執筆者 鈴木 孝義(Takayoshi Suzuki)*1 織田 康弘(Yasuhiro Oda)*2 佐々木 俊徳(Toshinori Sasaki)*2 黒川 和範(Kazunori Kurokawa)*3 *1 *2 *3 商品開発本部 第一商品開発部 ( Product Development & Program Management I, Product Development Group) デバイス開発本部 第一マーキングプラットフォーム開発部 (Marking Platform Development I, Device Development Group) コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム 第一開発部 (Controller Platform Development I, Controller Development Group) 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 In 2000, Fuji Xerox released the Color DocuTech 60 —a print-on-demand digital press intended for graphic customers — and has since led the digital printer market. As materials printed by digital printers have become popular, many companies entered the digital printer market, resulting in intensified competition. In such a situation, Fuji Xerox focused on a point of customer demand for high cost-effective products, and launched a new print engine (VersantTM 2100 Press) and a new controller (GX Print Server), both of which introduce technologies for realizing the performance of high-end digital printers at the size and price of an entry model. This paper introduces the major technologies used in the VersantTM 2100 Press and GX Print Server. 1 特集 多様化するデジタル印刷ビジネスに新しい価値を届ける「VersantTM 2100 Press」 高速画像処理・伝送技術、高速高解像コントロー 1. はじめに 1.1 ラー技術を搭載している。以降各技術について デジタル印刷機の本格的普及 紹介していく。 2008年のリーマンショック以降、印刷物の 多品種・少量化が急激に進むとともに、デジタ ル印刷機の性能や品質も向上したため、デジタ ル印刷が本格的に普及してきた。また、2012 年のdrupa *1 2. マーキング技術 2.1 マーキング技術概要 では、B2デジタル印刷機が各社か コンパクトでありながら高生産性、高安定画 ら発表され、オフセット印刷機からデジタル印 質、高信頼性、高い用紙汎用性を獲得するため 刷機への移行が加速されつつある。このような に、マーキング技術全体に抜本的な見直しを 背景の中で、カットシートのデジタル印刷機は、 行った。すべてのマーキングサブシステムにつ オフセット枚葉機を代替するB2機と、デジタル いて新規技術を導入し高い次元ですり合わせ設 印刷を前提としたA3機に二分されてきた。これ 計を行い、お客様からの要求にお応えする高い によって、A3機は従来のハイエンドデジタル印 パフォーマンスを実現している。 刷機並みの生産性を持ちながらも低価格化が進 み、普及機並みの価格で販売されるようになっ てきている。 2.1.1 高生産・高信頼ドラムユニット ドラムユニットの高生産性、高信頼性を達成 富士ゼロックスはB3幅や長尺の用紙に対応 するため、新たに材料設計を行い、高速・高生 し、高い耐久性を持つiGenシリーズ、A3ノビ 産性、および耐摩耗性能を向上させた新規感光 幅ながら、多色印刷の付加価値を提供し、薄コー 体を導入した。また、帯電ロールについても、 ト紙への適用範囲を広げたColor Pressシリー ハイエンドユースを担保する高安定画質、高信 ズなど、ハイエンドデジタル印刷機でオフセッ 頼性の観点で新規設計を行い、表面抵抗均一化 ト印刷のデジタル印刷化を促進してきたが、近 および表面形状制御により画質向上、トナー/ 年の低価格なA3機というお客様のニーズに対 外添粒子などの耐汚染性改善を実現している。 応するため、新開発のプリントエンジン また、帯電ロールクリーナーの経時変形の影響 Versant TM 2100 Pressと、新開発のコント を受けにくい軸受け構成や、清掃シーケンスな ロ ー ラ ー GX Print Server を 発 売 し た 。 どを導入し画質維持を確保した。クリーニング Versant TM 2100 Pressはハイエンドデジタ ブレードは、Color 1000 Pressで採用した積 ル印刷機の半分以下の体積、質量ながら、毎分 層タイプのブレードを採用し、高信頼性を確保 100枚(A4)の生産性、高精細かつ安定した した。 画質、薄コート紙から厚紙までの幅広い用紙へ 現像ユニットについては、高安定画質を得る の対応など、高いコストパフォーマンスを実現 ため、複数の解析モデルを組み合わせたシミュ している。 レーション検討により、現像ロールと供給オー ガー形状の最適化設計を行い、安定したトナー 1.2 TM Versant 2100 Pressの高いコス トパフォーマンスを支える技術 コンパクトなサイズの中で、高生産性、高精 細再現、高安定画質、高い用紙汎用性を実現す るために、Versant TM 供給を実現した。また、高速化と高密度レイア ウトに伴う現像器の温度上昇を抑制するため、 現像器の発熱部であるトリマー部と軸受け部に、 機外エアをダイレクトに当てて冷却する方式を 2100 Pressでは高生 採用した。オーガー駆動ギアを機外エア導入 産・高信頼ドラム/現像技術、高速小型定着・ ファンとして構成、エア流路をエンジン内空気 用紙冷却技術、高速小型転写技術、高速高精度 と独立させ、現像器の温度上昇を、毎分100枚 用紙位置制御技術、画像検出補正技術、高解像 (A4)生産時においても、Color C75 Press 同等レベルに抑え、安定した稼働性能を実現し *1 2 4年に一度ドイツで開催される国際印刷総合見本市 た(図1)。 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 特集 多様化するデジタル印刷ビジネスに新しい価値を届ける「VersantTM 2100 Press」 内の用紙との接触面がフラットとなり、用紙と ギアファン 定着ベルトが密着するニップ幅を十分に確保す ることが可能となった(図3)。これにより、用 紙に対する圧力が一定となり、用紙への変形ス トリマー トレスが軽減されるため、コート紙で発生しや 機外エア すいブリスター(用紙が過熱されて発生する水 導入エア 蒸気の気泡による画質欠損)が軽減し、さらに、 オーガー 封筒搬送時のストレスも最小限に抑えられるた め、封筒のシワが軽減され、さらなる用紙汎用 性の向上を実現している。 図1 2.2 2.2.1 現像ユニット Developer unit 高速小型定着・用紙冷却技術 小型ベルトロール定着技術 2.2.2 小型用紙冷却技術 用紙冷却技術は、定着器により高温で加熱、 搬送されてきた用紙を冷却する技術であり、用 印刷市場では、オフィス用途よりも広範囲の 紙カールや用紙波打ちを抑制し、安定した用紙 坪量の用紙に対応できる汎用性と高速高画質化 走行を可能にするとともに、排出用紙積載時の TM 2100 Pressは、 用紙同士の貼り付きをなくし、後処理工程の効 Color 1000 Pressで採用したカラーデジタル 率化を実現している。さらに、冷却装置通過後 印刷機向け「ベルトロール定着器」の持つ用紙 には用紙上のトナーは完全に固まっているため、 汎用性と高速高画質化を継承したまま極限まで 用紙走行経路上の用紙ガイド、切り替えゲート、 小型化した新規定着技術を採用した(図2)。坪 搬送ロールなどによる画像への傷、光沢筋など が求められる。Versant 2 量52~300g/m の広範囲の用紙で毎分100 枚(A4)という高い生産性を確保している。 また、新開発の定着パッドにより定着ニップ の画像欠陥を防止している。 従来の用紙冷却装置では、数多くのファンを 用いるファン方式が採用されているが、当社で は、独自技術であるベルト接触方式をColor 1000 Pressから採用している。この方式は 約67% 小型化 ファン方式と比較し、冷却効率が高く小型化で きるメリットがある。VersantTM 2100 Press で採用した用紙冷却装置はレイアウトの最適設 計により、冷却長を従来商品よりも大幅に短縮 Color 1000 Press定着器 図2 Versant 2100 Press定着器 小型ベルトロール定着器 Compact belt-roll fusing unit しつつ、毎分100枚(A4)に対して十分な冷 却性能を確保している(図4)。 約60% 小型化 z z V2100P C1000P 定着の様子をご覧いただけます。 図3 定着パッド技術 Fusing pad technology 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 図4 小型用紙冷却装置 Compact paper-cooling unit 3 特集 多様化するデジタル印刷ビジネスに新しい価値を届ける「VersantTM 2100 Press」 稼働している様子をご覧いただけます。 図5 2.3 新規2次転写技術 New second transfer technology 高速小型転写技術 VersantTM 2100 Pressは薄紙汎用性を向 上させるために、図5に示すような低コストで 図6 高速適性のあるBTR(Bias Transfer Roll)を 採用した新規2次転写技術を開発した。 Gate Aligner構成 Configuration of Gate Aligner VersantTM 2100 Pressでは、リードゲート 当社ではColor C75 PressでもBTR技術を に対し用紙を搬送方向に押しつけるスキュー補 採用しているが、市場要求である薄コート紙に 正技術「Gate Aligner」を新たに採用した(図 対応できない。一方、Color 1000 Pressは 6) 。この技術ではリードゲートへ用紙を押しつ 55gsmの薄コート紙まで対応可能だが、高価で ける力を可変できるニップ圧調整機構を導入し、 大型なBTB(Bias Transfer Belt)技術を用い 用紙に応じた最適な押しつけ力を与えることで ており、Versant TM 2100 Pressでの採用が難 しいため、新規のBTR技術を開発した。 その特長は転写部排出後の用紙の安定した搬 送であり、BTR径の最適化により薄紙を剥離し、 補正精度を高めている。同時に、ニップを解除 しているロールに駆動力を与え用紙搬送抵抗を 軽減する制御を行い、補正精度と搬送性をさら に高めている。 転写部からの用紙表裏の剥離位置と排出角度を 本技術の採用により、屈曲用紙経路において BTRとBUR(Back Up Roll)で制御すること も安定して用紙搬送およびスキュー補正を行う で、用紙への静電気力の影響を大幅に抑制して ことが可能となり、Aligner部の機体サイズの約 いる。また、高速化により発生する画像欠陥に 55%削減を実現した。さらに、薄紙から超厚紙 対し、転写前からニップ領域の圧力を制御した。 まで、幅広い坪量の用紙でスキュー補正可能と これらにより、小型・低コストの高速2次転写 なり、用紙汎用性が向上している。 技術を実現し、薄紙汎用性を大幅に改善した。 4. 画像検出補正技術 3. 高速高精度用紙位置制御技術 VersantTM 2100 Pressでは、プリント画質の Color 1000 Pressでは、斜め送りロール 維持およびマシンのダウンタイム低減のため、 (Crossed Roll)で用紙をサイドガイドに突き 印刷機内部でテストチャート全面を読み取って 当 て る ス キ ュ ー 補 正 技 術 「 Crossed Roll 調整機構を制御するインライン画像センサーを Aligner」を採用している。この技術はサイドガ 標準で装備し(図7)、オペレーター作業を自動 イドに突き当てながら搬送するため、用紙搬送 化した。Color 1000 Pressでは照明にXe蛍光 の安定性に影響を与えるとともに、用紙が屈曲 ランプを用いたが1)、VersantTM 2100 Press 部にまたがる用紙経路では搬送抵抗がスキュー ではLED照明を新規に開発し、消費電力とラン 補正精度に大きく影響する。高精度に補正を行 プ点灯待ち時間の低減および長寿命を実現した。 うためには用紙長さ以上のストレートな搬送経 照明要素であるLEDアレイ光源では、LED素 路を必要とし、機体のサイズの大型化につな 子ごとの分光特性ばらつきにより、スキャン方 がっていた。 向に色むらが発生するが、校正機構に搭載した 4 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 特集 多様化するデジタル印刷ビジネスに新しい価値を届ける「VersantTM 2100 Press」 カラーCCD 結像レンズ Print Server の 画 像 デ ー タ に 対 し て 、 画像処理回路 VersantTM 2100 Pressに搭載した新規開発 の画像処理ASICで印刷機に最適な画像処理を 実施し、高品質の文字・線画、滑らかな階調性 Air Flow のイメージ画像の印刷を実現している。 LED 照明 ユニット LEDアレー 画像処理ASICは、滑らかな階調再現とハイラ イト・シャドウの再現性を向上させる10bit階 テストチャート ライトガイド 調補正技術やHQデジタルスクリーン技術、高 色むら校正機構 図7 品質の文字・線画を実現するデジタルスムージ LED照明インライン画像センサー LED illumination inline image sensor ング技術、高精度の画像位置制御を実現するデ ジ タ ル 画 像 位 置 制 御 技 術 ( IReCT : Image 基準板を読み取って、都度補正処理を行うこと Registration Control Technology)などイ で解決した。さらに新開発のライトガイドでは、 メージパスの一連の画像処理をリアルタイムで 線光源の不感帯 *2 を用いた光学設計により、深 1) 処理し、2400dpiの画像信号を出力する。出力 い照明深度を実現した 。これら新技術により、 された画像信号は面発光型半導体レーザー LED照明でも、プロダクション機に求められる VCSELを光源としたROS(Raster Output インライン画像センサーの読み取り性能を確保 Scanner画像書き込み部)により、2400dpi した。 の高解像度で高速印字を行う(図8)。 機能面では、従来の画質調整に加え、専用の 高速シリアル伝送技術は、ギガヘルツ帯の高 モードにて画質診断用のチャートを出力し、点や 周 波 回 路 実 装 技 術 に よ り 、 8.5Gbps 筋などの欠陥を検出する機能を加えた。このデー (4.25Gbps×2チャンネル)/colorという大 タを活用して不良部材の推定が可能となった。 幅に高速化した伝送速度を実現し、GX Print ServerからVersantTM 2100 Press本体に、 リアル(非圧縮)1200dpi x 1200dpi x 10bit 5. 高解像高速画像処理・伝送技術 の画像信号の伝送を可能にし、高画質化を実現 2100 Pressは、高速高画質化の した。VersantTM 2100 Pressでは、デジタル ために、イメージング技術、デジタル画像処理 印刷機に最適な送信4チャンネル、受信1チャン 技術を刷新している。新規開発の高速シリアル ネル/2colorの非対称伝送を採用し、2本ケー 伝送技術は、GX Print Serverでビットマップ ブルの構成で、効率的な伝送と確実なデータ送 Versant TM 化された大容量データを、高速にVersant TM 2100 Press本体に伝送することが可能である。 受信を可能にしている(図9)。 生産財であるデジタル印刷機はシステムの信 1200dpi x 1200dpi x 10bitでRIP(Raster 頼性確保が重要であり、ギガヘルツ帯のシリア Image Processor)処理されたGX ル伝送信号品質を保証する基板回路設計、信号 図8 *2 イメージパス構成図 Image path architecture 線光源の不感帯 線光源の入射角を45°近傍に保ったときに、光源の深度 方向の変化に対して、照射位置の面照度が不変となる領域 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 5 特集 多様化するデジタル印刷ビジネスに新しい価値を届ける「VersantTM 2100 Press」 作成された色)の色変換処理など正確な処理の 高速シリアル 伝送ケーブル ために、特定の処理はRIP後のラスターデータ で実施する必要がある。しかしながら、ラスター データの処理は、RIP解像度に依存したデータ サイズになり、最も負荷がかかる部分である。 高速シリアル伝送 高周波回路/プロトコル部 このため、ラスターデータに代わる、RIP解像 度に依存しない中間データフォーマットを開発 新規画像処理 ASIC した。これはオブジェクト(テキスト、図形、 イメージ)単位にエッジ情報と色情報を持つラ スタライズしないデータ形式であり、ラスター 図9 画像処理ASICと高速シリアル伝送基板 Image processing ASIC and high-speed serial communication board データの1/100程度までデータ量を削減して いる。あわせて、特色処理、インポジションお よびウォーターマーク処理、オーバープリント 波形制御技術、信号品質のモデリング/シミュ 警告および特色警告処理など、従来ラスター レーション技術などの高周波回路実装技術、さ データに対して行っていた処理を中間データ らに、デジタル印刷機に最適な通信プロトコル フォーマット上で行う技術を開発し、高速な処 を独自開発し、エラー検知/訂正機能、診断機 理を実現した。さらに、同一ジョブ内で複数回 能を搭載することにより、伝送システムの信頼 参照されるフォームやイメージをキャッシュす 性を向上させている。 ることにより、大幅なデータ量削減、およびRIP 処理時間の短縮を実現している。 6. 高速高画質コントローラー技術 6.1 GX Print Serverの狙い 6.3 RIPアクセラレーターボード DRP 印刷の制作工程のフルデジタル化が進んでお ( Dynamic Reconfigurable Processor)はRISC CPUと動的再構成可能な り、デジタル印刷機に対する高速化と高画質化 演算器アレイを1チップに集積したLSIであり、 の要求は高まっている。しかしながら、高画質 ソフトウェア処理を柔軟にハードウェア回路と 化のためにRIPの解像度を2倍にすると、処理 して実装できる特長を持つ。今回、新DRPチッ データ量は4倍となり、従来方式のRIP処理では プを搭載したRIPアクセラレーターボードを新 高速と高画質を両立させることが困難であった。 規に開発し、ハードウェアレベルでの高速画像 この問題を解決するために、新たに中間データ 処理を実現した。これまでのソフトウェア処理 フォーマットとRIPアクセラレーターボード、 で負荷の高かった色校正を行うための そして3Dキャリブレーション技術を開発した。 CMYK-CMYK色変換処理、3Dキャリブレー これらの技術により、GX Print Serverは従来 ション処理、ユーザー調整カーブ、シャープネ 方式に比べ2倍から10倍のRIP速度を実現し、 ス調整などの画像処理については、ソフトウェ TM 2100 ア処理に比較して5倍から10倍の高速化が図 Press の 1200dpi x 1200dpi x 10bit 、 られ、画像処理のリアルタイム性を確保した(図 100ppmの印刷機性能を発揮させることが可 10)。また、このRIPアクセラレーターボード 能になった。また、ユーザーインターフェイス の枚数増減によって画像処理性能のスケーラビ を一新し、シンプルで直感的な操作と、カスタ リティが図られ、柔軟なシステム構築を可能に マイズによる利便性の向上を可能にしている。 した。 画 像 劣 化 さ せ る こ と な く Versant 6.2 中間データフォーマット 特色(CMYKの組み合わせだけでは再現でき ない色を表すために調合された、インキなどで 6 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 特集 多様化するデジタル印刷ビジネスに新しい価値を届ける「VersantTM 2100 Press」 処理データ量 従 来 R I P 処 理 600×600dpi 約128MB(A3) ビデオ データ ラスターデータ CPSI/APPE ラスタライズ RGB/CMYK補正 色補正 (オーバープリント/特色) 可逆圧縮 I/F IOT伝送 キャリブ レーション UAC等 IOT I/F Card 500MB超(A3) ラスターデータ ➊ ビデオデータ 処理 データ量 新 R I P 処 理 1,200×1,200dpi ➌ 超高速I/F IOT伝送 高速化技術 ➊中間データフォーマット ➋RIPアクセラレーターボード ➌高速シリアル伝送技術 中間データ フォーマット CPSI/APPE 色補正 (オーバープリント/特色) RGB補正 ➋ CMYK-CMYK変換 3Dキャリブレーション UAC等 RIPアクセラレーター ボード ソフトウェア処理 IOT I/F Card ハードウェア処理 図10 RIP高速化技術 High-speed RIP technology 6.4 簡単操作で高精度なキャリブレー ション 7. おわりに 従来のキャリブレーションは単色の色調整で 以上説明してきたVersantTM 2100 Press あったため、混合色までは十分に調整しきれな の高生産性、高精細再現、高安定画質、用紙汎 いことがあった。そこで、3次元LUT(Look Up 用性をコンパクトなサイズの中で実現するため Table)によりCMY混合色の色調整を行う3D に適用した技術を表1に示す。 キャリブレーション技術を開発した。さらに、 VersantTM 2100 Pressはこれらの技術に フィードバックによる精度追い込み機能も用意 加え、GX Print Serverまで含めたENERGY し、高精度で安定した色調整を可能とした。 STAR®対応や、Color Universal Design認証 これらの処理はすべてインライン画像センサー などを獲得するとともに、第11回エコプロダク で実施可能であり、高価な測色器を使わずに、 ツ大賞、経済産業大臣賞を受賞した。VersantTM 短時間かつ容易な調整作業が可能である。 2100 Pressはドライトナーを採用する普及型 のカットシートデジタル印刷機の次世代機とし て大幅なコストパフォーマンスの向上を実現し 表1 番号 1 Versant 2100 Pressを支える技術と効用 Technology incorporated into Versant 2100 Press and the effects 技術内容 高速小型定着・ 用紙冷却技術 2 高速小型転写技術 3 高速高精度用紙 位置制御技術 新たなデジタル印刷市場の創造・普及拡大に貢 高精細 用紙 高生産性 高安定性 再現 汎用性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 献していく所存である。 8. 商標について z Versantは、米国ゼロックス社の登録商標ま たは商標です。 4 画像検出補正技術 ○ 高解像高速画像処理・ 5 伝送技術 ○ ○ ○ 高速高画質 コントローラー技術 ○ ○ ○ 6 た。環境と人に優しいデジタル印刷機として、 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 z ENERGY STARはアメリカ環境保護庁の登 録商標です。 7 特集 多様化するデジタル印刷ビジネスに新しい価値を届ける「VersantTM 2100 Press」 z その他掲載されている商品名、会社名は、一 般に各社の商号、登録商標または商標です。 9. 参考文献 1) 伊藤昌夫, 伊本善弥, 石井昭, 武部佳文, 風 間敏之; “Color 1000 Press向けインライ ン 画 像 セ ン サ の 開 発 ”, Conference Japan 予 Imaging 稿 集 , pp.123-126, (2011). 筆者紹介 鈴木 孝義 商品開発本部 第一商品開発部に所属 専門分野:商品開発推進、電気工学 織田 康弘 デバイス開発本部 第一マーキングプラットフォーム開発部に所属 専門分野:マーキングシステム設計 佐々木 俊徳 デバイス開発本部 第一マーキングプラットフォーム開発部に所属 専門分野:定着技術、定着システム開発 岩岡 一浩 デバイス開発本部 次世代マーキングプラットフォーム開発部に所属 専門分野:Production領域のマーキング技術開発 風間 敏之 デバイス開発本部 イメージングプラットフォーム開発部に所属 専門分野:画像処理システム/レジストレーション設計 北川原 淳志 デバイス開発本部 イメージングプラットフォーム開発部に所属 専門分野:イメージング・アーキテクチャー設計、画像工学 黒川 和範 コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム第一開発部 に所属 専門分野:システム設計 大槻 直人 富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社に所属 専門分野:用紙搬送設計 8 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 「富士ゼロックス テクニカルレポート」は SkyDesk Media Switch に対応しています。 SkyDesk Media Switchは画像認識技術を使ったクロスメディアサービスです。 スマートフォン/タブレットで紙から簡単に動画 などのマルチメディアコンテンツを再生できます。 (日本語のみ対応しています。Available only in Japanese) 画像認識 1.撮影する 画像検索サーバー コンテンツサーバー 2.送信 画像認識アプリの ダウンロード 画像、動画、音声、Web、 ソーシャルメディア、 マップ等 3.コンテンツ表示 企画→制作→活用→分析、 そしてまた企画というサイクルを効率的に実践し、改善していくために必要なツールをオールインワンで ご提供します。 管理ツール 企画 ログ分析のフィードバック結果をもとに、 クロ スメディアの活用アイデア検討に お役立てください。 企画 制作 ウェブブラウザ上で動作し、 紙面にマー クを付け、 印刷データを出力するツールで簡単 にコンテンツと紐づいた紙面を作成できます。 ◀印刷物を配布 検索サーバー、 スマートフォンアプリ ログ分析 コンテンツへのアクセス履歴をリポートでき、 分析結果のフィードバックが可能。 分析 活用 コンテンツ閲覧に必要なスマートフォンアプリ (iOS、Android) と画像検索サーバーも 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