Article from SEMICONDUCTOR MAGAZINE

SEMIの最近の活動から
年初来の世界経済の低迷により悪戦苦闘してきた半導体業界でありますが、加えて9月
11日に米国で発生した同時多発テロは世界全体を震撼させ、人々の生活を根本的に変え
たとも言われており、我々業界にも一層深刻な影響をもたらしております。さまざまな
不安定要素が現出し、将来の展望が極めて困難になったことが、業界の混迷に一層拍車を
かけているといえますが、こうした時にあってこそ我々SEMIは、国際工業会として果た
すべき役割につき深く思いを致し、業界に貢献して参らねばならないと存じております。
今年のセミコン台湾は、直前にテロ発生という異常事態を受けての開催となりましたが、
加えて超スロ−台風16号の直撃を受け、セミコン史上初めてとなる、展示会初日である
9月17日の開催が中止されました。このため陳水扁大統領の臨席を予定していた開会
式も中止となりましたが、2日目よりは開催にこぎつけ、3日目には幸い天候も回復し、新
竹地区からも多くの来場者をお迎えでき、一応の成果を上げることができました。
10月16・17日開催のセミコン・サウスウエストは、これまたテロへの反撃が開始された
直後となりましたが、米国半導体産業の拠点の一つであるオースチンに、規模こそ例年に
比べ減少したものの、熱心なご出展社とご来場者に参加いただき、現状ではベストの展示
会となったと存じます。
さてSEMIジャパンでは、11月のハワイ国際トレード・パートナーズ会議に引き続き、12
月5日よりいよいよ最大のイベントであるセミコン・ジャパンの開催を迎えます。21世
紀初めてとなる今年のセミコン・ジャパンは、奇しくも25周年を迎えるところとなり、ま
たセミコン・ジャパン最大の併催行事であるSEMIテクノロジー・シンポジウムも今年20
周年を迎え、いろいろな意味で記念すべき、そして長く記憶されるであろう展示会となり
ます。
目下の世界の半導体業界は、現状からの一日も早い回復と明日への新たなる飛躍を目指
し、あらゆる面での革新的な努力が続けられています。この業界の不屈の意志と決意を
象徴するかのごとく、今年のセミコン・ジャパンは、未曾有の好況を謳歌した昨年を上回
る1,600社を超えるご出展社をお迎えし、昨年同様イベントホールを含む幕張メッセ全
会場を、最新の技術を駆使した装置材料で埋め尽くして開催させていただくことになり
ました。これもひとえに、四半世紀の長きに亘りこのセミコン・ジャパンに暖かいご支援
と力強いご協力を賜って参りました多くの皆様方のお陰でございまして、ここに衷心よ
り感謝申し上げる次第であります。
開催前日の12月4日には、独立行政法人 産業技術総合研究所理事長 吉川弘之氏をはじ
めとする各界よりの第一人者をお迎えしての特別記念講演会、初日12月5日には、セ
ミコン・ジャパン25回連続ご出展社表彰式、恒例のプレジデント・レセプションでは第二
回井上 EHS賞授賞式等、25周年を記念する多彩な特別プログラムを多数ご用意して
おります。例年の技術・市場セミナー、スタンダード会議等も一層充実した内容で皆様を
お待ち致しております。
ご多忙とは存じますが、是非ともこの記念すべきセミコン・ジャパン 2001にお出かけい
ただき、業界の低迷を一気に吹き飛ばし、新たなる未来の半導体産業構築に向け皆様方の
お力を結集していただきたいと存じます。
今年も残り僅かとなりましたが、皆様のますますのご健勝と一日も早い景気回復、そして
2002年が良い年であることを心より祈念致しております。
SEMIジャパン
代表 内田 傳之助
Contribution Article
半導体技術の高い壁克服のための共創に向けて
株式会社 半導体先端テクノロジーズ 代表取締役専務 森野 明彦
半導体業界、装置・材料業界にとって未曾有の厳しい状況が続
このような状況の中で、本年4月、
く中で、新しいミレニアムの最初の年も終わりを迎えようとして
研究開発プロジェクト あすか
います。ここで、半導体先端技術の共同開発を進めている立場
がスタートしました。本プロジェ
から一言申し上げたいと思います。
クトは 5ヵ 年 計 画 で、100nm 70nm SoC(System-on-a-Chip)を実現するための基盤技術として
半世紀余り前におけるトランジスタの発明以来、半導体デバイ
の、デバイス・プロセス技術、ならびに設計技術の共同開発
ス、半導体技術の目覚しい発展は、数多くの新システム、サービ
を行うもので、前者をSeleteが後者をSTARCが担当します。
スの実現を可能にし、はかり知れない貢献を社会に与えて来ま
Seleteは13の企業から5年間の合計で700億円の拠出を受け研
した。
「LSIは産業の米」とは工業化社会における半導体デバイ
究開発を進めます。国費を投じて建設中の、つくばスーパーク
スの貢献の姿を端的に表現したものですが、IT社会を迎え、半
リーンルーム産学官連携研究棟(独立行政法人 産業技術総合研
導体デバイスに対する期待がますます高くなっています。そこ
究所の所有)が来年3月に完成するのを待って、これを借用して
では、「半導体デバイスは個人のパートナー」という側面も重要
研究開発を進める予定です。これに先立って本年10月、Selete
なものと考えられます。それらの多様なニーズに応えるために
つくば分室(NEC筑波研究所内のクリーンルームを借用)を開設
も、たゆまない技術開発の必要性が高いと考えます。
しここに300mm装置を搬入して、highκ新材料開発を本格的に
一方において、半導体技術の高度化に伴う研究開発投資の急増
開始しました。同時にSelete戸塚に300mm装置を搬入してlowκ
は深刻な問題であり、共同開発によってその効率化を目指す必
新材料開発を本格的に開始しました。
要があります。当社は、1996年2月、半導体技術共同開発の推進
上述のように、研究開発対象が従来に比してはるかに困難なも
を目的として設立され、最初の5年間は300mmウェーハ対応装
のであり作業量も膨大であることから、Seleteと装置・材料業界
置・材料の共同評価を主たる業務として活動してまいりました。
とが開発の早い段階から緊密な連携関係を持つことが有効では
この間、SEMIならびにSEMI会員各位にはいろいろな面でご協
ないかと考えます。このような連携活動が成功するか否かは
力を戴くとともに効果的な連携を進めることができました。こ
双方にとってWin-Winの関係が構築できるかどうかにかかって
こに厚くお礼申し上げます。連携の成果のほんの一例として、自
います。
動搬送装置オンライン通信制御仕様の一本化やFOUPとロード
Seleteとしては、
ポートの動作互換性の向上があります。これらはInternational
① デバイス側としてのニーズ(仕様、時期)の提示
SEMATECH、SEMI、装置・材料メーカ各位とSeleteとの協力
② デバイス・プロセス研究開発成果から得られた知見
の賜物と考えています。
③ プロセス開発のインフラとしての300mm装置から成る一貫
現在半導体技術は100nmノード対応ないしその先の技術の研
ライン (あすか研究ライン)
究開発を真剣に進めるべき時期にあります。そこには、従来の
等で貢献できると考えています。
半導体技術開発では考えられなかった高難度の内容が含まれ
Seleteは従来から、装置・材料業界との間でいくつかの共同開発
ております。すなわち、トランジスタのゲート絶縁膜としての
を進めてきました。たとえば、リソグラフフィ関係では、露光シ
高誘電率(highκ)新材料の開発実用化、多層配線構造の層間絶
ステム、レジスト、マスクの各分野でその内容に応じた共同開
縁膜としての低誘電率(lowκ)新材料の開発実用化、微細寸法に
発があります。レジストについては露光実験機を早期に入手し
対応し適切なCoO(Cost of Ownership)を実現するリソグラフィ、
これをインフラとして共同開発を進め、マスクについてはレテ
マスク技術等がその代表的なものです。たとえばhighκ新材料
ィクル検査、修正装置関連技術開発の分野での共同開発によっ
を例に取った場合、トランジスタの発明以来ゲート絶縁膜とし
て、130nm対応の競争力ある装置が開発されたことの例があり
て一貫して採用されてきたSiO2を全く新規な材料に代えるもの
ます。今後のSeleteの技術開発においてもより広い分野におい
であり、多様な要求項目を全て満足する最適材料を選定しこれ
て装置・材料業界殿との間でWin-Winベースの効果的な連携を
を実用化することは想像をはるかに超える作業です。当然のこ
お願いしたいと考えています。
ととしてこれらの開発実用化には膨大な研究開発投資とリソー
終わりになりましたが、SEMIならびにSEMI会員の皆様の今
スが必要です。
後のますますのご発展を祈念しています。
11-12, 2001
1
SEMICON Japan 2001
セミコン・ジャパン 2001 「輝けSEMICON!! 未来へ向けて新たな挑戦」
−12月5日(水)〜7日(金)、25周年を迎えていよいよ開催―
セミコン・ジャパン 2001の開催が迫り、事務局は最後の調整に
ご期待ください。
入っております。
さて、厳しい状況下ではございますが、幸いにも10月末現在、
半導体を取り巻く環境は絶好調であった昨年に比べると、文字
ご出展社数は昨年をやや上回り1,623社(昨年比1.6%増)、ご出展
通りの様変わりで、極めて厳しい状況にあります。このような時
小間数は昨年とほぼ同規模の4,336小間(昨年比1.3%減)、出展国
期にもかかわらず、ご出展いただいた各社に対し、本誌面を借り
数28ヵ国 (昨年25ヵ国)を数え、結果的に、昨年とほぼ同規模の
て、事務局一同、厚く御礼申し上げます。さらに、本年は25周年
展示会を開催できる見通しとなっております。ご出展各社には、
という記念すべき開催であり、また今世紀最初のセミコン・ジャ
この不況をさらなる発展に向けての基盤作りの期間と捉え、こ
パンということで、記念開催にふさわしい、活気溢れたものにす
れをバネに継続的な情報発信への大きな意欲がうかがえます。
べく準備中でございます。
その一端ともいうべき、半導体製造装置・部品材料関連の新製品
セミコン・ジャパンの今年の特記事項は、ADSL(Asymmetrical
情報が得られる
「出展社セミナー」
の予定を以下にご紹介致します。
Digital Subscriber Line)の爆発的普及とFTTH(Fiber To The
また、今年は皆様に少しでも快適にお過ごしいただけるよう、横
Home)の開始やブルーツースの製品化に見られるブロードバンド
浜から幕張までのバスの運行等、諸々のサービス向上を図ります。
の進展、そして0.1μmに向けての進展です。
できるだけ多くの来場者に来ていただくべく、プロモーション
300mmウェーハー技術の進展、0.1μm技術の実用化に向けて
にも力を入れております。
の進展、ミニファブやミニラインと呼ばれるコスト低減策、後工
どうか一人でも多くのお客様にご来場いただきたく、お願い申
程では広帯域通信、 広帯域LSIに対応したテスト技術、 携帯・モ
し上げる次第です。
バイル化に向けた小型化・低消費電力への対応、環境対応の鉛フ
なお、セミコン・ジャパンに関するご質問・お問い合わせは、SEMI
リー技術等を視野に入れた最新の技術が展示されます。どうぞ
ジャパン展示会部(Tel:03-3222-6022)までご連絡ください。
出展社セミナー時間割
12/5
(水)
12/6
(木)
12/7
(金)
10:30-11:20
㈱アルバック
イーヴィグループジャパン㈱
㈱ランドマークテクノロジー
11:30-12:20
アシストジャパン㈱
センサレージャパン㈱
インフィコン㈱
12:30-13:20
三菱化工機㈱
日本オーリンブラス㈱
伯東㈱
13:30-14:20
コヒレント・ジャパン㈱
ジャパンゴアテックス㈱
ODVA日本ベンダー協議会
14:30-15:20
㈱リガク
㈱リガク
㈱リガク
15:30-16:20
Eco Physics AG
(英弘精機㈱) 日本電子㈱
セミナールーム I
日本電子㈱
12/5
(水)
12/6
(木)
12/7
(金)
㈱アルバック
日本テセラ㈱
日本エドワーズ㈱
11:30-12:20
エバンスアナリティカルグループ
エバンスアナリティカルグループ
テュフ ラインランド ジャパン㈱
12:30-13:20
フエスト㈱
高千穂商事㈱
横河電機㈱M&M事業部半導体ソリューションセンター
13:30-14:20
㈱ソルトン
日曹エンジニアリング㈱
アイシン精機㈱
14:30-15:20
カール・ズース・ジャパン㈱(ズース・マイクロテック㈱) 日曹エンジニアリング㈱
レクロイ
・ジャパン㈱
15:30-16:20
CC-Link協会
NOK㈱
セミナールーム III
12/5
(水)
12/6
(木)
12/7
(金)
10:30-11:20
クレノートン㈱
㈱トクヤマ
㈱トクヤマ
11:30-12:20
ニューメリカル テクノロジーズ インク
ニューメリカル テクノロジーズ インク
ニューメリカル テクノロジーズ インク
12:30-13:20
セキテクノトロン㈱
セキテクノトロン㈱
リソテックジャパン㈱
13:30-14:20
大同エアプロダクツ・エレクトロニクス㈱
大塚電子㈱
日本分析工業㈱
14:30-15:20
セミツール・ジャパン㈱
セキテクノトロン㈱
㈱島津製作所
15:30-16:20
セミツール・ジャパン㈱
神鋼パンテツク㈱
㈱島津製作所
12/5
(水)
12/6
(木)
12/7
(金)
10:30-11:20
SEC/N
武蔵エンジニアリング㈱
㈱ガードナー
11:30-12:20
伯東インフォメーション・テクノロジー(株)
㈱フジミインコーポレーテッド
日本ビーコ㈱
12:30-13:20
オムロン㈱
ニッタ㈱
オムロン㈱
13:30-14:20
日本パイオニクス㈱
日本パイオニクス㈱
日本パイオニクス㈱
14:30-15:20
住友スリーエム㈱
㈱安川電機
日本アレックス㈱
15:30-16:20
横河電機㈱M&M事業部半導体ソリューションセンター
住友スリーエム㈱
横河電機㈱プロダクト環境機器センタPMK部
セミナールーム II
10:30-11:20
セミナールーム IV
㈱エルミックシステム
*スケジュールは変更される場合があります。
2
2001, 11-12
Article from SEMICONDUCTOR MAGAZINE
M&Aは終わった − さて次は?
−SEMI機関紙「SEMICONDUCTOR MAGAZINE」記事より−
本稿は、「SEMICONDUCTOR MAGAZINE」10月号に掲載された
求めていた資本設備顧客へのドアをAdvanced Energyが開いて
「After the M&A - Now What?」の翻訳です。同誌の購読お申し
くれたと語った。しかしカリフォルニア州サンノゼのNoahは、
込みについては本稿末をご参照ください。
期待していた技術援助が得られないことに驚かされた。彼らは
熱電式チラーの開発を進め、エッチャ中のウェーハ温度制御で
プロダクト・ポートフォリオを膨らませたり、新しい市場に参入
標準的なコンプレッサ式チラーを置き換えようとしていたのだ。
をしようという場合、おそらくは企業買収が一番の早道であろ
「自分達で次世代製品の準備を開始しなければならなかった」と
う。理由は明白だ。開発コストはうなぎ上りであり、設計はどん
Riderは語った。
どん複雑になり技術者は不足している。しかし、一緒になること
で競争を飛び越えようという決定は、長いプロセスの第一段階
この誤りが生じたのは、Advanced Energyが親会社の過度の干
にすぎない。細部にわたるデュー・ディリジェンス調査(買収す
渉は新しい子会社を圧倒してしまうと信じていたからだ。「私
る企業に対する事前調査)に汗を流し、その後に合併企業を統合
たちが間違いを犯したのだとすれば、それは子会社に深く関与
するうまいバランスを見つけることは、乗り越えられないもの
しなかったことにある」と、Advanced Energyの事業開発担当上
ではないにしても、まったく別のチャレンジである。
級副社長のJoe Monkowskiは言った。
「企業買収がすんだら、そ
の企業はそれまでうまくやっていた通りに続けてくれ、助けが
Advanced Energy Industries社によるNoah Holdings社の買
必用なら申し出てくると考えていたのだ」
。Noahは最終的には
収を見てみよう。Noahは、チップ製造中の温度制御をするソリ
それを行った。Advanced Energyにリソース提供を求め、コロラ
ッドステートシステムのメーカであり、今年の初めになされた
ド州フォートコリンズの本社から6人の技術者を配属してもら
親会社の改革に貢献した。買収にあたり双方が望んだものは最
ったのだ。これにより熱電チラーの開発が実現した。Ryderは
終的には満たされたが、両社は早い時期から障害を乗り越える
今ではエッチャがNoahの最大市場となったと言う。
必要があった。それはAdvanced EnergyのNoahやその他の買
収した企業に対する自由競争主義の方針であった。
■ 必用とされる気配り
Advanced Energyは、Noahのジレンマに対して比較的シンプ
Advanced EnergyとNoahは、合併にあたっては、その事前、最中、
ルな解決を見つけることができたが、この衝突によって同社は
事後に両社のニーズをコミュニケーションする必要があること
目を覚まし、より大きなステップを踏み出した。数ヶ月前に、同
を承知してはいた。しかし、考え通りにいくことはまれである。
社はリストラを行い、経営チームをそれぞれに備えた複数の正
単に買収すれば発展できるわけではない。重要な計画、リソース
式なビジネス・ユニットをつくったのだ。これは、新しい子会社
の投入、そして実行の努力を最大限推し進める必要があるのだ。
たちがスムーズに営業するために必用な気配りを確実に受けら
れるようにする構想だ。また、これが同社の主力製品ラインだけ
Advanced Energyは、半導体やフラット・パネル・ディスプレイ
でないイメージを強化することにも役立った。
「Advanced
等の薄膜デバイス生産に使用する電力制御製品のメーカである
Energyは新しい企業となり、電源メーカよりもずっと大きなも
が、Noahを昨年4,200万ドルの株式取引で買収することにより、
のとなったと認識している」とMonkowskiは言った。
プロダクト・ポートフォリオの穴を埋めることをもくろんでい
た。一方のNoahは当時30人ほどのずっと小規模の企業であり、
多角化の誘惑は、不況下でのクッションを企業が求める場合に
確固たる足がかりを市場にもっている企業の大きな販売力と熟
特に強まる。しかし、合併や企業買収による拡大はいつも油断な
練した技術者による梃入れを期待していた。今になって、どち
らず、事業がつまづくような市場へ企業を導くかもしれない。実
らの企業もAdvanced Energyが取り引き締結後にあまりにも無
際、少なからずの企業が教訓を学んでいる:多角化には限界があ
干渉であったと認めている。
るのだ。Advanced EnergyはNoahを買収することで、プロダ
クト・ポートフォリオと企業イメージを拡大することができた
Advanced Energyの子会社となったNoah Precisionの販売・マ
が、多角化の狙いは必ずしも成功していない。Advanced Energy
ーケティング担当副社長であるDoug Ryderは、Noahが長い間
は4年前の1,600万ドルのTower Electronics買収後に、集中す
11-12, 2001
3
Article from SEMICONDUCTOR MAGAZINE
ることについて教訓を学ぶこととなった。Towerはカスタム電
買収の機が熟していると思われる企業の技術を製品売り上げに
源を通信や医療等の市場向けに製造していた。しかし、このよう
素早く転換できるか、これはデュー・ディリジェンス調査によっ
な拡散した市場へ参入してもうまくいかないことが判明した。
て今まで以上に検討しなければならない。チップ産業の短縮す
Advanced Energyはこのビジネス・ユニットを解散し、今なお対
る製品寿命がこの問題に拍車をかけている、と多くの企業が言
価を支払いつづけている。第2四半期でのTowerのための負担
っている。一例として、CymerのACX買収では、製品サイクル
額は360万ドルであった。
の挑戦があった。これを乗り越えるかどうかは、「科学志向」の
マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠をおくACXと、もっと
別の例では、こうした問題は回避された。エキシマ・レーザのサ
製品の市場投入に、そしてそのスピードに重きをおくCymerと
プライヤCymerが、動作制御のサプライヤACXを企業買収した
の企業文化の融合にかかっていた、とDidierは言った。
場合である。Cymerは今年2,130万ドルの株式取引が完了する
以前に、これ以外に組合わせると補いとなる製品ラインを持つ
San Diegoに本拠をおくCymerがACXの技術をどれだけ速く
たくさんの企業を考慮から外した、とCymerの社長兼CEOの
売上げに転換できるかが、ACXに対するデュー・ディリジェンス
Pascal Didierは言った。こうした企業の製品ラインは、医療、工
調査での焦点であった、とDidierは言った。半導体のフード・チ
業、光学、半導体に向けられており、Cymerの好みからするとあ
ェインにあるほかの企業も技術を売上げに転換する問題をデュ
まりにごた混ぜであった。
「ひとつ当社が気づいたことは、企業
ー・ディリジェンス調査で以前より重視している。
「5年前には、
統合の過程でもっとも難しい部分はおそらく、他の何よりも企
多くの企業では合併した後になって経営陣が社員に、1四半期か
業文化の同化だということだ」とDidierは言った。Cymerが
2四半期先に合併相手が製品戦略を説明しに来ると伝えたもの
買収を検討したいくつかの企業は、Cymer文化をあまりにも希
だ。最近の企業買収を見ると、買収発表の時点で経営陣は製品戦
薄になるまで広げてしまうと思われたと彼は言った。この可能
略の骨子を公表するようになった」とDidierは、Novellusの
性は、その企業がもたらすいかなる技術的利益よりも重要であ
GaSonics買収や、Mattson TechnologyのSteag Electronics買
り、製品の市場投入努力を遅延させかねない。
収を例にとって述べた。
■ 技術的知識を売上げに転換する
現在のところ、Cymerよりもビジネス・プロセスが形式的でなか
だれもが企業統合の戦いにまつわる物語をもっているらしい。
ったACXは、統合についての条件をいくつか熟慮しているとこ
Asyst Technologiesの会長兼CEOのMihir Parikhは、失敗に終
ろである。
「組織のプロセス志向が強まると、動きが遅くなり情
わったProconicsの買収を回想した。この自動搬送システムのサ
報が隠されてしまうという恐れをいだいていたが、実際にはそ
プライヤを、Asystはおよそ5年前に約1,000万ドルで買収した。
の逆であった」とACXの創立者でジェネラル・マネージャの
市場需要は高騰したが、それはProconicsが対応の準備を整える
Ken Lazarusは言った。
前のことであったとParikhは言った。
「とほうもない誤りだっ
た。最初の9ヶ月か1年の間には大成功に見えたのだが」と
ParikhはProconics買収について言った。Asystはどんな教訓
を学んだのか? 相手企業の経営チームについて、自社と同じよう
に知ること。次に、彼らが製品を量産ベースでどれだけ速く市場
投入でき、その一方で片目を次世代の製品に向けられるかの判
断をすることだ。
ParikhはProconicsについて言う「強力なリーダがいたためし
はなく、製品も未熟だった。それは知っていたが、適任者を雇え
ば乗り越えられると思っていたのだ。これには時間がかかる。3
年か4年だが、市場はそんなに長くは待ってくれない。事業は開
始され、1年間でゼロから3,000万ドルまでになり、そして失敗し
た。製品は万全でなく、サポートができず、あらゆる種類の顧客
との問題があった。アイディアはよかったのだが、実行はお粗末
だった」
。
4
世界の半導体M & A 取引きの数
2001, 11-12
Article from SEMICONDUCTOR MAGAZINE
■ スポットライトをあびるI P
いうことであり、彼らにとっては、当社は最近まで普通とは違っ
半導体食物連鎖の中で企業統合を担当するエグゼクティブたち
て見えたのかもしれない。実際には、当社は0.13のモバイルプロ
は、デュー・ディリジェンス調査において知的財産所有権の分野
セッサを現在出荷中である」とHighは先月発言している。
が今まで以上に精査されていると言う。IPを詳細に調べること
の必要性を強調したのが、数年前のIntelによるある企業に対す
■ 買うのはレンタルしてから
るデュー・ディリジェンス調査であった。この会社では重要なIP
統合担当マネージャの多くが、非公式の買収に先立った提携が、
がひとりの中間レベルの技術者に支配されていることが分かっ
スムーズで永続的な合併への道を開いてくれると述べている。
たのだ。
例としてACXのLazarusは、Cymerとの合併が完了する前に、
半年以上にわたり両社間でマーケティング協定を結んだ。
「デ
「私たちには、この技術者との雇用契約のなかに埋もれた形で、
ュー・ディリジェンスのある部分はこれにより処理された」と彼
会社の全てのIPへのアクセスが許されていたとしか思えなかっ
は述べた。
た」とIntel Capitalの経営担当副社長Kirby Dyessは述べた。
「他ならぬこのケースでは、経営及び財務において大きな変化
同様に、Asystが日本のロボット・システム・サプライヤである
があったために、誰もが重要なIPの実際の所有権がどこにある
MECSの「信頼を勝ち得る」ことができたのも、ある程度は約1
のか見失ってしまったのだ」
。この発見は相手企業にとっても驚
年かけて2段階の買収を行ったおかげであるとAsystのParikh
きであったとIntelの統合活動を監督するDyessは言った。彼女
は、外国企業による日本企業の一般的な法人所有に言及して述
は問題の企業を特定することは辞退した。結局、別の会社が買収
べた。ParikhはMECS事業が昨年約1億ドルに成長したと言
することに落ち着いたためである。
った。
「何年にもわたり、当社は日本の顧客と強い関係を築いて
きた。これが米国と日本のチームの間にこれほどまでの信頼を
広く公表された高額の企業買収で、いまだに注目を浴びている
築くために大いに役立った」とParikhは言った。
「一旦、信頼が
のが、ASM LithographyによるSilicon Valley Group買収であ
築かれれば、関係は永続的なものとなる」
。
る。この企業買収は最終的に米国政府の検閲を通過したが、ウォ
ールストリートでは、この取り引きをどう捉えたらよいか迷っ
調査会社VLSI Researchのアナリスト、Risto Puhakkaは、信頼
ているアナリストもいる。
と懸命の努力が鍵となる要素だと付け加えた。
「私たちの見る
ところでは、経営者が問題を解決してくれる特効薬となること
「シニカルな生粋のニューヨーカーなら、露天商で箱に入ったビ
はあまりない。普通、彼らは問題の発生源である」とPuhakka
デオカメラを買ってはいけないと分かっている。箱の中にはビ
は言った。
「二つの組織を統合し、スムーズに働くようにするの
デオ撮影などできもしないレンガが1個入っているかもしれな
は大変難しいことだ。混乱は3ヶ月から1年続くのが普通だ」
。
いからだ。しかし、たくさんの外国からの旅行者が毎年これに引
っかかる。半導体製造装置の世界では、この「外国からの旅行者」
著者紹介:Allan Richterは、Semiconductor Magazine誌の編集主
がASM Lithographyで、露天商が売っている空っぽの箱が
幹である。連絡先はarichter@semi.org。
Silicon Valley Groupだ」
。これはBear Stearnsの半導体装置ア
ナリストであるRobert Maireが8月の調査で、SVGがIntelか
ら1億ドルの注文をキャンセルされたことを暴いた報告に続け
て書いたノートである。
「キャンセルは何の不思議もない。SGV
のステッパの納期遅延がインテルの0.13ミクロン技術を当惑す
るほど遅延させたからだ」とMaireはこのノートで述べている。
「これはIntelがCAPEXをカットする予兆とは見ていない。単
にSVGを切り捨てたのである」
。
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ことを予めご容赦お願いします。宛先変更の場合も、上記と同様
は誇張されていると報告をしている。また、Intelのスポークスマ
に手続きを行ってください。
ンのHoward Highは、IntelとSVGの断絶を否定した。
「純然
たる事実は、Intelが0.13ミクロン技術では世界で最初だったと
11-12, 2001
ご不明な点はSEMIジャパン浦田までお問合せください。
(turata@semi.org)
5
Essay
色々な出会い
レーザーテック株式会社 代表取締役常務 渡壁 弥一郎
東横線綱島駅から歩いて約15分の所に現在の勤務先であるレー
野手は瞬時にその位置
ザーテック(株)がある。すぐ近くを新幹線が走っており、東京か
(野手は打った球の角
らの下りで新横浜の手前右手にレーザーテックの大きな看板が
度、速さ、方向を何かの
見える。40年の歴史を持った半導体/ 液晶用検査装置およびレ
尺度で計って動いてい
ーザー顕微鏡を柱としたメーカである。三菱電機を退職してレ
るのである)に動いて
ーザーテックに勤めて2年が経過し、漸く会社にも慣れてきたと
いることについて真剣に考えたことはなかったのだが、マイケ
ころである。現在通勤は電車を使っている。比較的朝早く家を
ルを見ていると動物の能力の大きさ/深さに改めて感動してしま
出るようにしているが朝の通勤時に結構楽しく、色々な発見をす
うことがある。科学的解明にはかなり難しい領域ではあるが、
ることがある。特に綱島駅から住宅街を通って会社までの15分
微細化を主体とした有機分子やDNAを用いたナノテクノロジ
は、色々な人との出会いがあって人生を感じさせることがある。
ー分野への展開が今後必要となるだろう。
毎日駅に向かって歩いてくる通勤、通学の人達の1日のスター
トを見るのが興味深い。7時30分頃に綱島に降りて会社に向か
短い通勤時間だが、時々歩きながら自分の人生を振り返ること
って歩いていると、毎日同じ顔ぶれの人達と会うことになる。
もある。自分の研究開発に対する考え方や物の考え方の基礎に
必ず足早に歩いてくる背の高い30歳前後のOL、競歩でもやれ
なった出来事が過去にあった。1976年通産省、NTT、国内半導体
ばかなり良いタイムを出すのではないだろうか。もう少し早く
メーカ5社(日電、東芝、三菱、日立、富士通)の間で超LSI技術研究
起きればもっとゆっくりできるのにと思うが、そうはいかないの
組合が設立され、16K、64KDRAMの共同開発が行われた。私は
だろう。いつもネクタイを短かく絞めた色黒な営業マンらしい
その下部組織であるCDL(コンピュータ総合研究所:三菱/日立/
男性。結構大きな旅行用の手提げバッグを右手に持って小走り
富士通)の本部研究部(日立武蔵)でマスクの研究開発を行った。他
に駅に向かっている姿を見かけることがある。海外出張が多い
社の方との共同研究は当然初めてであり、何も分からないまま
のかもしれない。毎日乳母車に2歳位の子供を乗せて駅に向か
にスタートしたが、自分の研究姿勢の基盤がここで形成された
っている本当に真面目そうなサラリーマン風の男性。奥さんは
と思っている。日立から私同様CDLに派遣されていたN氏の
どうしているのだろうか。偶然その男性がマンションから子供
影響は私にとって大きなものであった。ある時マスクのプロセ
を抱いて出てくるところを見たことがあるが、やはり奥さんはい
ス開発の中で非常に良いプロセス条件が見つかり得意満面にN
なかった。他人事とはいえ何故か心配になってしまう。こんな
氏に報告した。しかし、N氏は 渡壁さんこれはだめですよ 材
つまらないことを考えている間に会社に着いてしまうこともあ
料の選定が良くないしプロセスが複雑で実用化できないと手厳
るが、時々ほのぼのとした光景に出会うことがある。家を出る
しいものだった。もっと手に入りやすい材料の選択と安定した
時にいつも猫に語りかけている50歳後半位の年配の男性がい
プロセス条件を見出すことが必要だと教えられた。当たり前の
る。 もう家に入りなさい と言っているのだがお腹を上に向
ことではあるが、素直で使いやすく安価な技術を作り上げる開
けじゃれている猫を何度も何度も撫でてやっている姿はほのぼ
発プログラムを最初からつくるべきであったのだ。この時私は
のとしたものがあり見ていて楽しい。私の大阪の家にも猫がお
33歳、N氏は40歳の後半だったと思うが、N氏のお陰でその後
り、名前はマイケル、10年以上前に息子が生まれたての子猫を拾
の開発姿勢、事業展開、人生に対する考え方の基礎が形成された
ってきてやむなく飼った雑種である。どこから見ても上品さは
と思っている。現在リソグラフィで必須な位相シフトの一種で
ないが何故か可愛い。私は現在単身で横浜に住んでおり、たま
あるHT(ハーフトーン)マスクの材料であるMoSiは半導体ゲー
に大阪に帰るためかマイケルは私を避ける態度を示す。相性が
ト材料として当たり前のように使われているもので、それをマ
よくないのかもしれないが、食事の時だけそばに座って私を何
スクに適用した単純な発想であった。既にi線、KrFで標準化さ
とも言えない目で見つめている。オスではあるが見つめられる
れておりArFへの展開も考えられている。勿論ブランクスメー
と弱いたちなので毎回ハムをやってしまう。いつもマイケルに
カとの共同開発で仕上げたものであるが、HT材料としては非常
引っ付きまわされている女房は、この時だけは解放されて喜んで
に素直な選択ができたと思っている。
いる。このマイケルを観察していると感心することが沢山ある。
材料メーカー、装置メーカーとの共同研究についても振り返っ
それは動きの敏捷さと正確さである。自分の何倍もある高さの
てみた。現在企業間のアライアンス、共同研究が多く行われてい
狭い棚に飛び乗ることがあるが、棚の上に置いてある置き物は
るが、成功している例は意外に少ない。ほとんどの場合、各社間
全く倒されていない。飛び乗る瞬間少し間があり距離を計って
のカルチャーの違いとかギブアンドテイクの原則が守れていな
いるようにも思えるが、全く不思議である。人間の運動神経も
いとか相互に技術の出し惜しみをするとかの些細なことが原因
似たものがある。私は野球をやっていたが、打った球に対して
である。1976年の超LSI技術研究組合の成功は豊富な資金と明
6
2001, 11-12
Essay / FPD Activity
確なターゲットがあったこともあ
るが、各社間のハードルが今のよ
世界半導体のシェア
(%)
うに高くなくフランクな技術交流
60
ができたことがその原因ではない
50
だろうか。彼等とは今でも会社を
超えた付き合いができている。こ
出典:Dataquest1999
40
れは私にとって大きな財産だと思
30
っている。アライアンスの成功は、
20
何故アライアンスをするのかの基
本原則の理解と前線でのリーダー
10
の資質でほとんど決まるのではな
いだろうか。さらに私の体験では、
78
82
86
90
94
98
02 年
アライアンスを成功させるためには相手との信頼関係をいかに築
むしろ講和が終わった雑談の中で何人かに質問があったことが
くかも重要な要素だと思っている。
非常に印象に残っている。貴方方は人生を振り返ってみて自分
に何点あげますかと言うのが質問であった。20〜30点が多かっ
自分の人生について採点をしたことを思い出した。以前女房と
た記憶があるが、私は60点ですねと答え、 それは良い点ですね
一緒に比叡山延暦寺に千日回峰行で有名な光永覚道氏の話を聞
と言われたことを覚えている。優でも良でもないが可は取れて
きに行ったことがある。昭和59年3月、12年の籠山行が始まり
いるのではないかと思い、即答したと記憶している。銀メダルを
平成8年3月に千日回峰行が終わった。伝教大師最澄が世に役
取って自分を誉めてあげたいと言ったマラソン選手や金が取れ
立つ僧侶育成のために定めたもので、12年の間比叡山の結界か
ずに悔しさを全面に出していた水泳選手がいたが、100点に近い
ら一歩も出ずに学問に専念するという厳しい修行である。千日
点数を自分に与えたのではないだろうか。今の自分、トータル
回峰行は比叡山内を巡拝する自分のための行(自利行)で、以後は
な自分に対して私の身近にいる友人、同僚はいったい何点と評
人のための祈願をする修行をすると言う。凡人の私には気の遠
価するのだろうか、興味のあるところである。
くなる話で、自分にどれだけ参考になったかは疑問ではあった。
温故知新 成るか?
LG PHILIPS LCD, SENIOR ADVISER
■
小倉 浩一
っている 1m/1.2 m用のラインを見たり、更には見え隠れし始め
どっと笑うて…
私は新潟の生まれで、佐渡おけさや相川音頭などに慣れ親しん
た、畳一枚!?ものを思うに、あの笑声が何だったのか、今日いま、
で育ちましたが、液晶で、よく引き合いに出すのは
佐渡へ佐渡
如何にも、余りにも空ろに響くのです。先が読めているが…しか
へと、草木もなびく… と、 ドット笑ろうて、立つ浪風の… で
し、今はここまでと言った議論とは違い、全てが笑いであり、同
す。前者は、掘り尽くされ栄華のあとを、辛うじて留める金山で
時に不安でもあったのです。
すが、後者は、不覚にも弱い弓を海に落し、敵に拾われるを恥じ
代々、何人もの社長に仕えたという人は多いと思いますが、私は
た義経が慌てるのを笑った故事です。10インチ液晶PCが主流
T社で長年そうした後、所詮は液晶という、お釈迦様の手の平の
にならんかという頃でしたが、T社の役員会では、新基板による
上ですが、日本IBMに始まり、ホシデン、PHILIPS、LGEと主君
第2世代設備の提案が論議されていました。枚葉は如何なもの
を渡り歩き、裏切り者の歴史みたいな足跡を残して来てしまい
か?とか、10インチ型の専用高速製造機であるべきとか、量産技
ました。途中で2期ほど、東芝精機(現・東芝メカトロニクス)を勤
術の経験や背景をお持ちのトップの意見が交わされ、さてと、私
め、製造設備分野を経験して、知見を得ました。この度、SEMI加
見を求められた時「将来は、畳一枚くらいの基板から、多数沢山
藤様から、それらの経験から得た、合弁にまつわる本音とか、今
採れるようになるでしょう……」 どっと 沸き上がる笑い声に、
後など、書いて見ないかとのお話があったのが本稿の経緯です。
弓を拾うべくもなかったのです。4インチ型液晶でさえも量産が
次々に会社を移り、ノウハウをリーク拡散させたのではないか?
ままならぬ時の話であり、一方1メガDRAMが大成功の路線を
とよく聞かれますが、NOですね。皆無ではありませんが、合弁と
走っていて、大口径ウェーハでの、採り個数の論議も賑やかだっ
は、新しい会社の文化を創るということに基本と期待があるので
たからであります。かくして生まれた子供は、後に三郎・四郎と
A社では、B社の時は… は、何であろうと、一先ずは禁句なので
命名されました。
す。さて、昨今の堰を切ったようなアライアンスブームは、必要なこ
あれから、もう16年が経ちます。今、韓国LGP社で建設に入
ととは思いますが、懸念も感じます。見かけ説明はSYNERGY
11-12, 2001
7
FPD Activity
云々で宜しいのですが、本質、RESTRUCTURINGの計画が明
DTIでは、東芝の川西副社長と日本IBM の三井副社長の固いス
確にならぬ以上、事足れりでは決してない筈だと思うからです。
クラムがあり、諸般の早い決断、従業員に与える安心、信頼の大
しかし走りながら考えるという、我ら民族?の特質が生きて来
きさのゆえに、成功の要因であったことは疑う余地もありませ
るのかもしれないと、密かに期待もします。カサンドラの鉄橋は
ん。一方、両社のトップ(あるいは株主)の思惑や、交流の齟齬から、
何人もが渡れないからです。以下、各位のご叱責を恐れながらも、
破局に至る事例もまた多く、その後に身を持って経験しました
何らかの共感を得ていただけるならば、嬉しいことだと思います。
が、正に泣きたくなる思いでした。
■
それにしても大きな赤字でした。
「DTI を除くとこうなります」
D T I で…
世界初の液晶の製造合弁会社DTIは、先頃13年を経て、目的を
という本社の決算説明に肩身の狭い思いをしたものです。全く
完遂して解散されました。DTIは、まごうことなく成功例だった
製品ができないなど、想像を越えた状況に暗澹たる気持ちでし
と確信しております。私は、産みの親の一人ではありますが、合
た。よく我慢してくださったと思っています。不可解なことや、
弁会社の成否、事業としての成功は、実は育ての親(具体的には2
未完成のプロセスも多く、どうするつもりだと問い詰められ や
代目)によるところが誠に大きく、本当に良くやってくださった
って見なければ分かりません で切り抜けようとしましたが、じ
と感謝の念に堪えません。立ち上げで、苦楽を共にした仲間達は、
ゃ、やって見ろと言われ仰天、今度はやってみたけど分かりませ
その後、それぞれの道を進まれましたが、今にして尊敬の念に、
んでしたで、また叱られ、しかしながら、これは答えの出せる戦
いささかも変わりのない一流の方々であり、SOLECTRON
いではありました。現在のように、サイクリックに、構造的に発
JAPAN社の安井社長、ALTEDEC社の住田専務理事は、なお第
生する赤字の怖さは別物のように思います。
一線の現役として活躍され、親しくしていただいております。
親会社の所管部門のマネージメントは会社により相当違うよう
社長とはいえ、ヘルメットと長靴での建築現場巡視の頃は、本当
です。発足当初は関心も高く、全てに善意の
に不安でした。正直のところ、上手く行く自信などなかったので
YOU?
すから。それでも尚、やろうと決めて提案したのは、ハイテクは
ります。子供が発熱しても、すぐ救急車ではないにせよ、祈祷師
必ず輝かしい未来をもたらすと、単純にひたすら信じたこと、技
まがいが派遣され、太鼓など叩かれては始末が悪い。本来、母乳
術とは必ず前進進歩する(これは人間の業であり、人間への賛歌
の免疫のある間はその治癒力を信ずべきです。合弁の当事者に
に他ならぬと思っています)ものと期待し、それを担う技術者達
は覚悟があるものです。 喧嘩なども考えられない。やったら最
への信頼があったからだと言って憚りません。そして、裏切られ
後、ホレ見たことかの雑音に潰されてしまうからです。しかし注
ることはありませんでした。
意すべきは、親子の間での、懸案事項の決定の権限や方法
合弁の成立までには、実は沢山の妥協と、成立あらしめるための
(HIERARCHYとかAUTHORIZATION)は、明確にしておくこ
STORY が必ず存在しており、これが事成れりの後の新会社
とです。一般に、組織はFUNCTIONAL、OPERATIONALいず
経営陣の負担になるのです。まず、早速に事業計画の見直しです。
れでも宜しいのですが、往々 外資系 では前者のLINEで勝手
準備に1年、中期展望3年、都合5年の読みで 儲かりますから
に?動くので情報が澱みますが、上を通せ、組織を通せなどと
で決裁されてるからです。嘘をついているのではなく、予想外の
喚いても埒が明きません。MAJORITYを取れば、決定も一方的
見落としが潜在しているのです。例えば、X-TAL CYCLEにして
で、恰好良く言えばDECISIONがSHAREされないということ
も、当初は誰の頭にも全くなかった筈で、今からすれば、本当に
でしょうが、要すれば決めるのは誰か、キチンと見ておかないと、
驚きと言う他ありません。
何時も意味不明の調整や尻拭いだけが、社長の本業になってし
DUE DILLIGENCEといって、縁組みの内諾後に、相互乗り入
まうものです。今にして思うも、DTI は、得難い親を持った、有り
れで諸般の下調べを行いますが、専門家がやるから間違いは少
難い親だったと感謝しています。
ない(最近は下調べで破談のケースも多いという)ところが結婚
■ アライアンス…、 アライアンス…
と似ていて、本人同士の相性など、分からないところが残ります。
以上は、言わば、小さな液晶の世界での話ですが、半導体では米
一言にカルチャの違いなどと簡単に言う向きがありますが、会
国という技術の先進国を相手に合弁は元より、競合離反を繰り
社そのもの、氏育ち、技術、人種、国、場所…始めから全てが違っ
返し苦労辛酸の挙句には、日米半導体摩擦を経験されました。す
ているのだし、それが分かっているのに、それが招く効果に読落
かさず、当事国の識者はSEMIを立てて、COMMUNICATION
としがあるのです。しかし、表面化したら、直ちに対応せねばな
(SEMI ITPC)の場を演出され、見事な成果を上げられました。数
りません、放置してSELF HEALINGはないと知るべきです。
回、交流会に参加させていただき、今後の業界の在り方の一つの
結論から言えば文化の違いを超越して COMMUNICATE で
知恵、知見を見た思いがします。さて、我が国の液晶は、技術の原
きるかということに尽きるように思います。公用語を英語と定
点DE FACTO OWNERとして自他共に認めるところですが、
めながら、全社で数人しか話せる人がいない、通訳を雇えば済む
何かやらねばならぬ、出番ですよと言われても、正直、戸惑い、そ
という話では決してない。やがて 英語だけ 達者な人が現れ、
してお互いに周りを見渡すという感じです。しかし、今後のあり
事業の中核に座ったりして、会社は正体不明になるのです。
方やリーダーシップを模索せねばならない時期に来たことは間
両親の意思疎通の善し悪しは、まさに天と地の違いとなります。
違いありません。
8
MAY I HELP
の渦と化します。ただでさえ2倍の仕事が何倍にもな
2001, 11-12
FPD Activity
ALLIANCE PHASE-1は、短期的な損益改善と大型投資継続の
含めて、大型化傾向にあるので、TFT-液晶は、両サイドから
RISK回避の両天秤を目的に、日本各社が挙って台湾勢と組んだ
SQUEEZEされ、テレビしか逃げ場がなくなって行くことも、逆
ことに始まります。これには結果論としての賛否両論がありま
に好材料、追い風と見ています。このような観点から、S社が社運
すし、各社の苦労もあったでしょうが、しかし私には、あまりに
を賭けてテレビに取り組んでいることを高く評価していますが、
無造作な、誰かがやるんだから式のRUSHに見え、唖然とした思
一人相撲ではいけない。
いでした。PHASE-1には、さほど高度な戦略性があるとは思え
3、4社くらいが、轡を揃えて友好的な競合を進め、虚心担懐にテ
ず、早晩PHASE-2や3があることは当然予測されました。上位
レビ事業の未来を語るグローバルな関係の構築が必要でしょう。
5、6社で市場の70%を握ってしまう現状では、流石に新規の参入
昨今のALLIANCEで、私が是とするのは、IBM社と台湾C・
はないとしても、2社で組めば3位になるとか、SCALE MERIT
MEI社による、開発と量産の垂直統合がその一つであり、もう一
を狙う縁組みは当分の間、経営戦略の中心となりましょうし、こ
つは、T社とM社の、部品開発と商品開発の融合です。これらは、
れは巨大化する客先相手への安定供給能力とSUPPLY CHAIN,
明らかにPHASE-2の戦略だと見て良いでしょう。さて、可能な
はや
LOGISTICSの合理化にも不可欠の条件でしょう。だから、逸れ
ALLIANCE、組み合わせも、大手が動いたために、急に残り少な
負け犬が残れる世界ではない。技術は大切ですが、技術だけでは
くなりつつあるように見えて来ました。PHASE-3では、台湾勢
勝てないこともわかって来つつあります。しかしながら、完成し
が台風の目かもしれませんが、彼らの中国へ動きは不透明では
た技術を買って事業を立ち上げる方がRISKも低く利口だと考
ありますものの、単純な打算が中心のように見えますから、読み
える経営には、私の拘りでしょうが、到底受け入れ難いものがあ
や対応は(商人の世界でしょうから)私には、難しいようには思え
ります。諸般の情勢を見るに、大事な時期ではありましょうが
ません。残るオオゴトは、言うまでもなく、韓国勢と、どうするかなの
ITPC 形式のCOMMUNICATIONの世界は、液晶にては、何処、
でしょう。これは誠に大きな命題だと思います。
誰ということではないけれども、求心力の見えて来るまで、もう
■
少し先送りかなとも思うのです。米100俵か、衣食足っての礼節
我が国の液晶業界は、PC一辺倒?を修正することが大切です。
かといった感じです。
そして、本来の筋の筈であり、得意芸だった筈の画像技術の分野
歴史を見てみると、グローバルな技術の流れというものが存在
を(平たく言えばテレビでしょうが)全面的に強化する目的で見
し、多くの商品は、欧米で発生?し我が国で洗練され量産に成功
直し、路線を再構築すべきだと提案したいのです。その際、ブラ
するという手順ののち、シェアが50%を割る頃合いを見計らい、
ウン管を低く見てはなりません。今なお、50余年の歴史に裏付け
超大型投資に踏み切る、韓国、台湾に、急速にその座を譲る宿命
られた、先人の画像技術の蓄積と、事業の知恵と、そして画質の
的な経緯がよく見られました。昨今、経営はCASH-FLOW
奥深さをよく理解して、これを凌がねばならぬからです。生産シ
ORIENTEDの洗礼に苦しみ、従業員も会社に抱く価値観と期待
ステムにしても、多品種混合のCONVEYER CONCEPTの模索
を棚上げされて戸惑い、言わば伝統的な我が国の強さの根底の
を経て、14インチ専用ラインの構築で生産性革新に成功したよ
幾つかを揺さぶられて、このままでは、構造的にも負けの枠に嵌
うに、液晶でも学ぶべきものがあります。一方、半導体の経験を
まりそうです。一昔前と最も違うのは、何といっても流れの足が
活かそう、取り込もうとは言うものの、技術の流用や技術者の交
速い。次のものを用意する余裕がない。だから、PHASE 3は定
流が程々に行われた程度で、本当に液晶の事業に反映されてい
番では行かず、この流れを時系列で一方交通にせずに共有する、
るでしょうか?CHIP SCHRINKの世界とは違うのだと嘯くの
つまり日本、韓国、台湾(CUSTOMERとしての欧米勢も視野に
ではなく、グローバルに展開した事業の流れとか、膨大な経験の
入れ) 3(3.5?)極の連携関係を、各々の持ち前の得手の能力を基に、
MIGRATIONやTRANSFERが大切で、同じ会社でも、十分の
役割分担して作り上げるのが答えかと思います。誰が競争相手
ように見えないのです。
でもない、業界の存続そのものが抗すべき相手になって行くよ
各種の平面画像デバイスの可能性が、10年前とは比べ物になら
うな気がするからです。もう一つは(液晶)DEVICEの集積度が
ぬ速さで現実味を帯びて来て、業界の大きな活力を感じます。時
あがるため、部品屋とか製品屋とかの壁がなくなり、応用商品開
代や価値観が変わって、省電力などの要因も商品を左右してい
発力が勝負どころとなり、これの強い会社に縁組みの話が集ま
きますが、忘れてならないのは、画像デバイスでは、美しいもの、
る筈です。一億総出、夢中の物作りも良いが、使い道がなくて困
綺麗なもののみが生き残って来た、そして最後の勝利を勝ち取る
るのでは話にならぬではありませんか。
という教えではないかと思うこの頃です。液晶が、堂々の世代交
温故知新 成るか?
私個人としての過去の最も大きな誤算?は、PCの用途が暴走し
代を果たすべき時期に至り、学ぶべき過去の事例は、依然として多
たことでした。テレビが、遅くも数年遅れで立ち上がると見てい
いと信じております。回りくどく温故知新の表題に辿り着いたこ
ました。このことは、今日、なお尾を引いていますが、未だに半値
とをお詫び致します。
になれば普及率が云々なる論が多いのにはガッカリします。本
来、新商品は、この種の尤もらしい仮説などに頼るべきではなく、
引退の近い年寄りに、言わば最後の執筆の機会を与えていただ
市場は自分で切り開くものだという気概こそが大切です。最近は
いたように思います。今後の業界からの期待と、そして責任を自
PDPが上から降りて来始め、LTPSが、あるいはELとの合流を
覚されたSEMIであり続けていただきたいと念願致します。
11-12, 2001
9
Market Statistics
SEMIマーケット・レポート
■ 世界の半導体市場は低迷を続ける
イナス成長となるなど、今後の日本市場の推移に懸念が生じて
世界の半導体IC市場は金額ベース、数量ベース共に厳しいマイ
いる。
ナス成長が続いている。
世界市場の販売数量は7月が48.6億個で前年同月比29.9%減、
WSTS(World Semiconductor Trade Statistics:世界半導体市場
8月は50.8億個で同32.4%減と減少傾向が続いている。しかし
統計)によると、2001年7月のIC世界市場販売額は73億2,917.5
昨年後半以降の急激な減少スピードが鈍る傾向もここ数ヶ月に
万ドルで47.9%減、8月が79億6,489.6万ドルで同49.2%減と、
は僅かながら認められる[図2]
。
共に大きく落ち込んだ。地域別の販売額の前年比伸び率ではア
メリカ市場が最も大きな減少を示し、7月61.4%減、8月60.7%
■ 日本の半導体メーカーの生産および販売は再び減少傾向を示す
減となり、ヨーロッパ市場がそれぞれ45.2%減、51.8%減、日本
日本の半導体集積回路の販売数量は5月まで急落した後7月ま
市場が39.7%減、41.8%減と続き、アジアパシフィック市場は
では横ばいで推移したが8月に再び低下した。7月は18.1億個
37.0%減、33.9%減で最も減少幅が小さい。
[図1]に地域別およ
で前月比2.0%減、前年同月比33.2%減が8月には15.9億個でそ
び世界市場の成長率の推移が示されているが、今回の減速局面
れぞれ13.6%減、42.1%減となっている。ICマーケットの不調
では日本市場が相対的に緩やかな減少を示す一方で、アメリカ
に加えて、積みあがった在庫削減に向かっての減産強化が要因
市場の急速な縮少が際立っている。この結果、2000年における
であろう。8月の販売数量および在庫数量の傾向を見ると、線形
市場規模シェアと2001年1月〜8月の累積販売額シェアを比較
回路では販売数量が前年同月比43.1%減と落ち込む一方で在庫
してみると、アメリカ市場が2000年の32.7%から今年の27.6%
数量は同18.1%増の増加となり、メモリーではそれぞれが
へ、ヨーロッパ市場20.8%から21.7%へ、日本市場21.4%から
40.0%減、39.6%増となっている。バイポーラは54.2%減、10.4%
23.9%へ、アジアパシフィック市場25.0%から26.8%へと変化
減で共に減少したが相対的に在庫増、また、論理素子も販売数量
している。アメリカ市場がシェアを落とし、日本をはじめ他の地
が40.4%減の減少に対して在庫は1.3%増ながら在庫水準とし
域のシェアが上昇し、日本市場は最も落ち込みが小さい結果と
ては増加、という状態で、それぞれの製品でここ数ヶ月在庫は減
なった。しかし、ここにきて日本市場の減少傾向は大きくなり、8
少しているものの在庫圧力は相当大きいと推測される。ICの世
月は日本を除く他の地域が前月比でプラス成長する中、唯一マ
界市場がマイナス成長を続け、輸出および国内向け共にICの販
世界市場IC販売額前年同月比伸び率
%
80.0
百万個
アメリカ
ヨーロッパ
日本
アジアパシフィック
世界市場
60.0
40.0
20.0
0.0
日本のIC生産および販売数量と前年同月比伸び率
4,000
IC生産数量
生産数量伸び率
%
50
40
IC販売数量
販売数量伸び率
3,500
30
3,000
20
10
0
2,500
-20.0
-10
-20
2,000
-30
-40.0
-60.0
-80.0
1,000
5'00
6
7
8
9
10
11
12
1'01
2
3
4
5
6
7
[図 1]
8
9,000
IC販売数量
%
百万ドル
45.0
2,500
5
6
7
8
9 10 11 12 1- 2
'01
[図 3]
25.0
3
4
5
6
7
8
出所:経産省
米国半導体装置メーカーの
受注額・販売額とBBレシオ
BBレシオ
0.90
3ヶ月移動平均
Billings
(販売額)
Bookings
(受注額)
BBレシオ
35.0
前年同月比伸び率(%)
8,000
-60
3- 4
'00
出所:WSTS
世界市場IC販売数量と
前年同月比伸び率
百万個
2,000
0.80
0.70
15.0
7,000
5.0
6,000
-5.0
0.60
1,500
0.50
0.40
1,000
-15.0
5,000
-25.0
4,000
0.30
0.20
500
-35.0
-45.0
3,000
3- 4
'00
10
-40
-50
1,500
5
6
7
8
9 10 11 12 1- 2
'01
[図 2]
3
4
5
6
7
8
出所:WSTS
0.10
0
0.00
1-'01
2
3
4
5
[図 4]
6
7
8
9
暫定値
出所:SEMI
2001, 11-12
Market Statistics
売数量の伸び悩む中で、在庫圧縮のための生産調整がしばらく
2001年1月〜8月の累積販売額シェアを比較すると、米国市場が
は継続されよう。
2000年の27.1%から2001年の28.2%に、ヨーロッパ市場が
13.5%から13.7%へ、韓国市場が8.1%から7.8%へ、台湾市場が
■ 半導体製造装置の受注は低迷し販売は減少傾向
19.5%から11.6%へ、その他市場が12.5%から10.9%へ、日本市
SEMIの発表した米国半導体装置メーカーの装置全体受注額(3
場が19.3%から27.8%へと変化しており、日本市場の拡大が顕
ヶ月移動平均)は8月が7億2,420万ドルで前月比5.8%減、9月
著である。一方、今年に入ってからのIC市場は急速な縮少に見
が6億4,430万ドルで前月比11.0%減と減少した。9月は特に
舞われており、日本のICメーカーはICの販売額の減少と時期を
プロセス装置をメインとするフロント・エンドが前月比13.1%
同じくして装置の購入額の増加に遭遇したことになり、経営的
減と大幅に落ち込む一方、テスト/組立装置は3.7%増と僅かなが
には大きな負担になっていると推測される。さらに在庫調整を
ら増加した。販売額は8月が前月比3.8%減、9月は同13.4%減
進めていることもマイナスに作用して、日本市場の装置受注額
と、9月は受注、販売共に二桁の伸び率減少となった[図4]
。
は減少傾向が続いており、今後しばらくの間日本の装置市場は
世界の半導体製造装置市場の受注額(3ヶ月移動平均)は今年の1
低迷すると推測される。
月から4月までは前月比で2桁の急減が続いた結果、4月に前年
[図8]はプロセス装置の世界市場受注額・販売額およびBBレシ
同月比で67.0%減に落ち込んでいる。その後5月、6月および7
オを示す。本レポートの「March-April 2001」版では、装置の受
月まで一桁台の減少に落ち着いていたが、8月は前月比10.5%減、
注は2001年の第1四半期および第2四半期の急減速の後、早け
前年同月比76.6%減の13億1,985万ドルに低下した。しかし傾
れば第3四半期から、遅くとも第4四半期ころから上向きに転じ
向とすれば一時の急激な変化は影を潜め、底を這うかたちで落
るのではないかと推測したが、市場の推移からは少なくとも受
ち着いているといえよう。販売額は3ヶ月移動平均値でみると
注額はほぼ底を打って、第4四半期の10月から12月のいずれか
低落傾向が続いている[図5]
。8月の販売額は15億2,476万ド
の月から受注額が上向くことが期待されていた。しかし米国に
ルで前年同月比は58.2%減と、7月の51.4%減からさらにマイナ
おける同時テロによる米国経済の減速の影響を受けて世界的に
ス幅を拡大した。地域別受注額の傾向を見ると、日本市場を除い
電子機器市場が冷え込み、半導体産業を取り巻く環境の悪化が
た地域では4月以降ほぼ横ばいで日本市場のみが減少している
指摘されおり、装置市場が回復に向けての歩み始める時期も若
[図6]。地域別販売額は、2001年における日本市場の販売額が米
干遅れ、前年同月比でプラスに転じるのは早ければ2002年第2
国市場と並んで相対的に高い水順で推移していることが[図7]
四半期、遅くとも第3四半期になるのではないかと推測される。
(SEMIジャパン小松崎 ykomatsuzaki@semi.org)
に示されている。この結果、2000年における市場規模シェアと
半導体製造装置全体の世界市場
受注額・販売額および前年比伸び率
百万ドル
7,000
受注額
受注額の伸び率
6,000
3ヶ月平均値
販売額
販売額の伸び率
%
200
半導体製造装置全体の地域別販売額
百万ドル
1,800
北米
1,600
150
5,000
100
ヨーロッパ
1,400
韓国
1,200
台湾
その他
1,000
4,000
50
3,000
0
2,000
日本
800
600
400
-50
1,000
0
8'00
9
10
11
12
12
3
'01
[図 5]
4
5
6
7
8
-100
0
8'00
出所: SEMI,SEAJ
半導体製造装置全体の地域別受注額
百万ドル
200
3ヶ月移動平均
1,800
北米
1,600
11
12
1- 2
3
'01
[図 7]
4
5
6
台湾
3,000
1,000
その他
2,500
日本
8
プロセス装置の受注額(3ヶ月移動平均)前月比伸び率
3ヶ月移動平均
4,500
1,200
7
出所:SEMI,SEAJ
受注額
販売額
BBレシオ
3,500
韓国
800
10
4,000
ヨーロッパ
1,400
百万ドル
9
BBレシオ
1.60
1.40
1.20
1.00
0.80
2,000
0.60
600
1,500
400
1,000
0.40
200
500
0.20
0
0
8'00
9
11-12, 2001
10
11
12
1- 2
3
'01
[図 6]
4
5
6
7
8
出所: SEMI,SEAJ
0.00
8'00
9
10
11
12
12
3
'01
[図 8]
4
5
6
7
8
出所:SEMI,SEAJ
11
SEMI Standards
300mm工場用ハードウェア スタンダード
日本地区スタンダード委員会F I 部会 部会長 浅川 輝雄
300mm工場用スタンダードの開発作業は、1994年12月のセミコ
3)要求事項、推奨事項と実現例
ン・ジャパン 94と前後して国際的に始まった。途中リセッションな
SEMIスタンダードの規定には「Requirement(要求事項)」と
ど紆余曲折を経たが、デバイス・メーカのコンソシアからの強い動
「Recommendation(推奨事項)」の2つ異なった要求度があり、
機付けとSEMIスタンダード委員の努力によって推進され、2000年
更に適用に際しての参考例として「Application notes(適用注)」
には実際の生産工場の装置に使用されるに至った。これら
が付与されている。
300mm工場用ハードウェア スタンダードは、業界で初めて「スタ
ンダード先行型」で開発された点が注目される。現在は、生産工場
4)暫定スタンダード
への適用に伴う諸々の検証結果のフィードバックが行われている
300mm工場用ハードウェア スタンダードは、200mm世代のよ
他、いくつかの新規のスタンダードも提案されている。標準化によ
うに主流になったプロダクトに基づいて仕様を決める「実績追
る効果を維持するためにはこのような継続的な活動が重要である。
認型」ではなく、想定されるニーズに基づいて提案されたアイデ
本稿ではこの300mm工場用スタンダードのうち、ハードウェア
アを吟味して仕様を決める「スタンダード先行型」で開発され
のスタンダードの状況と今後の動向に関して述べる。
た。従って、必ずしも現場で実験実証された技術で構成されては
いない。そこで多くのスタンダードに実装して検証されるまで
■ 3 0 0 mm 工場用ハードウェア スタンダードの目的
の間「Provisional(暫定)Standard」という呼称がつけられた。
これらのスタンダードは、「非競争領域」のキーになる仕様を標
準化することによって、以下のような恩恵に与かることを目的
■ 3 0 0 mm 工場用ハードウェア スタンダード一覧
としている。
各スタンダードの詳細説明は別の機会に譲り、次ページの表に、
1)非競争領域に費やすリソースを最小化して競争領域に回す。
300mm工場用ハードウェアSEMIスタンダードの一覧(最新レ
2)互換性、接続性の確保による改造コストの削減。
ビジョン、およびその概要(規定項目))を示す。これらのスタン
3)受注の都度の個別改造削減による信頼性の向上。
ダードは一通りの開発が終了して既に実装されているが、一部
そのために、何が「非競争領域」で、何が「競争領域」かのコン
のスタンダードはまだ「Provisional」であり改訂が行われてい
センサス作りが行われ、それに基づいて規定項目の選択とその
る。表中、スタンダード番号の右隣の数字は最新レビジョンを表
仕様および要求度が決められた。
す。0701であれば2001年7月の改訂版発行の意味となる。
■ 3 0 0 mm 工場用ハードウェア スタンダードの枠組み
■ 3 0 0 mm 工場用ハードウェア スタンダードの今後
1)規定の範囲
2000年の300mm工場投資に伴う実装実績からのフィードバッ
300mm工場用ハードウェア スタンダードは、主に、
クを通して、 多くのスタンダードから「Provisional」の呼称が
a. ウェーハ・キャリア
外された。しかし、今後も新たなフィードバックによってさら
b. ウェーハ・キャリアと装置との界面
に改善されて行く可能性があり、また、ある程度データが蓄積さ
c. 装置と半導体工場との界面
れた暁には「300mm第2世代」への比較的大きな修正もあるか
d. 装置内部の主要なユニットと装置との界面
もしれない。
の機械的仕様を定め、ウェーハ・キャリア、装置(含む搬送装置)、
半導体製造業界は、300mm化に際してスタンダードの充実を図
半導体工場の3者間の互換性を確保することを主眼としている。
り、かなりのコスト削減を行った。その額はSEMIスタンダード
日本地区委員会の試算によれば1半導体工場あたり15億円を超
2)仕様の規定方法と基準面
えると言われている。このスタンダードによるコスト削減の恩
仕様の規定には、形状、排除領域、占有領域などがあり、それらを
恵を継続的に享受して行くには、これらの実装実績データのフ
寸法とその精度で規定する。その際、多くの場合に寸法をウェ
ィードバックや新たなアイデアの採用の際に不要なバリエーシ
ーハ・キャリアの理想中心で三直交するHDP(Horizontal Datum
ョンを増大させないように、スタンダード改訂・開発作業を行う
Plane)、 FDP(Facial Datum Plane)およびBDP(Bilateral Datum
継続的な努力が必要である。
Plane)という基準面参照で規定している。
12
2001, 11-12
SEMI Standards
表:出版されている3 0 0 m m 工場用ハードウェアS E M I スタンダード一覧
番号
E1.9 0701
E15.1 0600
E19.5 0996
E21.1 1296
E22.1 1296
E26.1 0699
E47.1 1101
E57 0600
E62 1101
E63 0600A
E64 0600
E72 0600
E73 0301
E74 0301
E76 0299
E83 1000
E84 1101
E85 1101
E92 0200E
E100 1101
E101 1000
E103 0600
E106 0301
E110 1101
E111 1101
E112 1101
M31 0999
11-12, 2001
名称
概要( 規定項目)
Mechanical Specification for Cassettes Used to Transport
and Store 300mm Wafers
Specification for 300mm Tool Load Port
オープン・カセットの外形形状、FOUPを含む300mmキャ
リアのウェーハの載置位置。
ロードポートの、高さと調整可能範囲、ポート間ピッチ、キャリ
ア周辺クリアランス、OHT排除領域、床搬送装置用パラレルIO
デバイスの排除領域、キャリアIDリーダ/ライタの排除領域。
底蓋式のSMIFポッドの機械的仕様。
Specification for 300-mm Bottom-Opening Standard
Mechanical Interface (SMIF)
Cluster Tool Module Interface 300 mm: Mechanical
Interface and Wafer Transport Standard
Cluster Tool Module Interface 300 mm: Transport Module
End Effector Exclusion Volume Standard
Radial Cluster Tool Footprint 300 mm Standard
Provisional Mechanical Specification for Boxes and Pods
Used to Transfer and Store 300mm Wafers
Mechanical Specification for Kinematic Couplings Used
to Align and Support 300mm Wafer Carriers
Provisional Specification for 300mm Front-Opening
Interface Mechanical Standard (FIMS)
Mechanical Specification for 300mm Box Opener/Loader
to Tool Standard (BOLTS/M) Interface
Specification for 300mm Cart to E15.1 Docking Interface
Port
Specification and Guide for 300mm Equipment Footprint,
Height and Weight
Specification for Vacuum Pump Interfaces - Dry Pumps
Specification for Vacuum Pump Interfaces Turbomolecular Pumps
Guide for 300 mm Process Equipment Points of
Connection to Facility Services
Specification for 300 mm PGV Mechanical Docking
Flange
Specification for Enhanced Carrier Handoff Parallel I/O
Interface
Specification for Physical AMHS Stocker to Interbay
Transport System Interoperability
Provisional Specification for 300mm Light Weight and Compact Box
Opener/Loader to Tool-Interoperability Standard (BOLTS/Light)
Provisional Mechanical Specification for a Reticle SMIF Pod
(RSP) Used to Transport and Store 6 Inch or 230 mm Reticles
Provisional Guide for EFEM Functional Structure Model
Provisional Mechanical Specification for a 300 mm
Single-Wafer Box System that Emulates a FOUP
Provisional Overview Guide to SEMI Standards for
Physical Interfaces and Carriers for 300 mm Wafers
Guideline for Indicator Placement Zone and Switch Placement
Volume of Load Port Operation Interface for 300mm Load Ports
Provisional Mechanical Specification for a 150 mm Reticle SMIF
Pod (RSP150) Used to Transport and Store a 6 Inch Reticles
Provisional Mechanical Specification for a 150 mm
Multiple Reticle SMIF Pod (MRSP150) Used to Transport
and Store Multiple 6 Inch Reticles
Provisional Mechanical Specification for Front-Opening
Shipping Box Used to Transport and Ship 300 mm Wafers
クラスタ・ツール用のプロセス・モジュールの機械的接続
仕様。
クラスタ・ツールの搬送モジュールのエンド・エフェクタ
の形状。
放射状クラスタ・ツール用プロセス・モジュール専有面積。
FOUPを含むBOX/Podの形状。(内面の形状はE1.9参照)
キャリアをロードポートに位置決めして保持する3本2組
のピンの位置と形状。
FOUP開閉機構(レジストレーション・ピンやラッチキーなど)
の位置や形状。(FOUPはこれと勘合することが要求される)
FOUPのオープナー/ローダーと装置本体との接合部の、
装置本体側の機械的寸法。
装置にPGVをドッキングさせるためのドッキング・イン
ターフェイスを実装するための排除領域。
クリーン・ルームおよび用力室に設置される装置のフットプリン
ト、高さ、重量のリミット。搬入時の搬入単位の最大寸法、重量。
ドライポンプの吸気・排気フランジ、ダクト・ポート、パージ・ポー
ト、冷却水のコネクタ・タイプやサイズ、信号線・電源線の仕様。
TMP(ターボモレキュラー・ポンプ)の吸気・排気フランジ、パージ・ポ
ート、冷却水のコネクタ・タイプやサイズや位置、信号線・電源線の仕様。
工場のユーティリティと装置との接続位置のガイド。
PGVに使用されるドッキング・フランジの静止(床固定)
側の機械的仕様。
装置とAMHSとの間でのキャリア移載時に用いるパラレ
ルI/Oの信号仕様および通信仕様。
ストッカとベイ間搬送装置との間の物理的インターフェ
イス(複数のタイプの寸法リスト)。
FOUPのオープナー/ローダーと装置本体との接合部の、
装置本体側の機械的寸法。
6インチまたは230 mmのレチクルを搬送・保管するため
のレチクルSMIF Pod(RSP)の機械仕様。
EFEM(装置のフロント・エンド・モジュール)の機能面か
らみた構成モデル。
枚葉ウエーハ・ボックス(SWIF)の機械仕様。
ハード系SEMIスタンダードの全容と相互関係。
ロードポート・オペレーション・インターフェイス(ステー
タス表示およびオペレーション・スィッチ)の取り付け場所。
6インチ・レチクルを搬送・保管するための150mmレチク
ルSMIF Podの機械仕様。
6インチ・レチクルを搬送・保管するための150mm複数枚
収納レチクルSMIF Podの機械仕様。
フロント・オープニング・シッピング・ボックス(FOSB)の
機械的形状(内部はE1.9参照)。
13
MEMS
日本におけるMEMSの課題
東北大学 未来科学技術共同研究センター 江刺 正喜
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械シス
われたことに対する見直しも行われている。電子部品などで
テム)は、電子回路だけでなくセンサやアクチュエータのような
MEMS技術の必要性が高い日本の産業界では、 大学への人材派
異なる要素をシリコン基板上などに集積化したもので、小形で
遣などを通じて研究開発を進めてきた。しかし国家レベルの支
ありながら複雑で高度な働きをするシステムである。半導体集
援の下で、MEMS研究開発をビジネスマインドで推進してきた
積回路の製造技術を基本にし、電子、機械、光、材料などの多様な
欧米に対し[2]、日本企業の技術レベルは相対的に低下しており、
技術を融合した「マイクロマシニング」と呼ばれる微細加工技
将来我国の産業が従来のように電子部品・システムで世界に貢
術で製作され、「情報・通信」
「自動車・民生」
「製造・検査」
「医
献していけるかどうか危ぶまれる。韓国や台湾では国家的戦略
学・バイオ」など広い分野に用いられる[1]。
による支援で急成長している[3]。台湾では公的資金でITRI(工
図1(a)はガラスに反応性イオンエッチング(RIE)で貫通孔を形成
業技術研究院)に共用試作設備(Common Laboratory)を設置し
し、めっきで孔に金属を埋めることでガラスの裏側に貫通配線
た。Walshin(華新麗華)などのMEMSファウンダリ会社もでき
を取り出した構造である。図1(b)はこれをウェハ用のマイクロ
ているが、これは自社の製品を持たずに下請けに徹しているた
プローバに応用した例であるが、この他チップサイズでしかも
め、機密漏洩の心配なしに発注できる。プロセス技術の向上に努
ウェハ工程でパッケージングされたマイクロリレーなどへも応
めると同時に、ITRIなどで開発したプロセス技術を持ち込んで
用している。図2は多数のプローブを使って並列に書込みや読
同社の製造工程に合わせられるようにすることで、多様な要求
出しを行うマルチプローブデータストレージであるが、これに
に応えている。また同社は各国の言語に通じたスタッフを採用
も貫通配線が重要な役割を果たしている。先端30nmのサーマ
するなど、国際的なビジネス展開を目指している。去る7月3日
ルプローブを用いて、DVDRAMのGeAsTeによる相変化記録媒
に市ヶ谷のSEMI会議室で行われたWalshinのMa氏による講
体に熱的に書込み、導電率の違いで読出しており、1Tビット/イ
演会には多くの日本企業からの参加があった。MEMS製品の研
ンチ2程度の高密度記録ができる。このようにマイクロマシニ
究開発をしても生産できる場がなくて困っている日本メーカも
ングやMEMSは、情報機器の周辺でシステムの重要な部分に使
多いが、日本のメーカが台湾のMEMSファウンダリに依存するこ
われ大きな付加価値をもたらす技術であるが、我国で呼ばれて
とになると、我国の産業競争力は弱くなるのではと懸念される。
いる「マイクロマシン」いう言葉は、機械全体を小さくした虫の
半導体産業の変化で(韓国のメモリや台湾のファウンダリ)、日本
ように動く小形機械を連想させる。昨年度で終了した10年の「マ
の半導体メーカの生産設備が遊休施設化しつつあり、国内の半
イクロマシン」プロジェクトが、その前進である「極限作業ロボ
導体メーカもMEMSのファウンダリへ転換を検討中であるが、
ット」プロジェクトの後継として機械技術を中心に行われたこ
新規設備投資や採算見込などの点で容易ではない。半導体景気
とが大きな理由である。このプロジェクトは産業に結びつく点
の山谷の周期が短くなり転換の計画が立て難いことや、外国に
であまり役に立っていなく、産業支援よりも官僚マインドで行
比べ国家的組織による支援が弱いこともその原因と言えよう。
図1 (a)ガラス貫通配線
図1 (b)マイクロプローバへの応用例(東京エレクトロンと東北大学)
14
2001, 11-12
MEMS
ネットワーク化などで情報の蓄積・共有
を進め、短期間で効率よく研究開発がで
きるようにすることも大切である。公的
施設を試作などに共用して新産業を生む
スピンインというやり方が欧州などでは
盛んになっているが、ハイテク試作設備
の共用や既設設備の有効活用によるコス
ト低減・リスク低減も必要と言える。プロ
ジェクションディスプレイにはDMD
図2 マルチプローブデータストレージ(a)構成
(Digital Micromirror Device)と呼ばれる
CMOSの上に多数の可動鏡を形成した
チップが用いられているが、このような
リソグラフィの利点を活かしたアレイ構
造のデバイスなどには回路付の大規模
MEMSが使われる。このような本格的な
設備を必要とする大規模MEMSを研究
開発する場も必要である。
来る12月6日(木)に幕張メッセで「第5回
SEMIマイクロマシン/MEMSセミナー」
がセミコン・ジャパンに併設で開催され
るが、これでは新しいMEMS会社、国内
外のMEMSファウンダリ、MEMS製造
装置などの紹介の他、韓国のMEMSベン
図2 マルチプローブデータストレージ(b)サーマルプローブの構造
チャや台湾のITRIからの招待講演を行う
予定である。
参考文献
[1] 江刺正喜:「MEMS 技術の真価 − システムLSI の差異化技術
へ3次元構造や異種材料を導入−」
日経マイクロデバイス2001年9月号, pp.125-136 (2001)
[2] 和賀三和子:「欧米におけるマイクロシステム実用化の取り組み」
4th Microsystem / MEMS Seminar予稿集(Semicon Japan 2000),
pp.29-32 (2000)
[3] 江刺正喜:「韓国台湾を中心としたアジアのMEMS動向とMEMS
ファウンダリ」次世代センサ,11-1,pp.2-5 (2001)
図2 マルチプローブデータストレージ (c)サーマルプローブアレイ
11-12, 2001
図2 マルチプローブデータストレージ (d)相変化記録媒体への記録例(2μm角)
15
IC Industry
LSIの論理・機能検証手法の動向
NECラボラトリーズ マルチメディア研 究 所 中村 祐一
1.はじめに
計をソフトウエアでモデリングする代わりに、ハードウエア部
近年のLSIの大規模化と、LSIと動作ソフトウエアを含めたシス
品の統合でLSIと等価な機能を持つエミュレータと呼ばれるプ
テムの複雑化により、LSIやシステムが不具合なく設計されてい
ロトタイプシステムを実現し、 実際に電気的な信号を流すことに
るか、あるいは所望の機能・論理を達成できているかを調べる検
よって機能・論理を実証する検証手法である。初期の時代には、
証の重要性が増している。従来、LSIの論理・機能設計の検証には
AND、 OR、 フリップフロップなどの単機能LSIの統合で実現し
計算機で動作するソフトウエアを使ったシミュレーションによ
たものが存在したが、エミュレーションの性能を大幅に高めた
る検証作業が主に使われてきた。しかし、ソフトウエアシミュレ
のはFPGA(Field Programmable Gate Array:書き換え可能な
ーションだけではLSIの大規模・複雑化に対応が不十分で、新た
集積回路アレイ[1][2])の登場が大きな経緯となっている。FPGA
な検証手法が適用されている。本稿では、最新の検証手法である
は、あらかじめ準備されたゲートを配線のフューズを切断する
エミュレータを使ったプロトタイピング検証手法について述べる。
ことによって所望の機能を実現するタイプや、所望の論理をメ
モリのデータテーブルとして実現して実現するタイプのものな
2 . ソフトウエアを使ったシミュレーション
どいろいろな実現方法があるが、外部から設計データをダウン
LSIの設計においては、機能・論理設計をシミュレータに対応す
ロードすることにより、オンボードでの書き換えが可能である
る言語で記述してモデリングし、動作アプリケーションに対応
という点からエミュレーションに適しているデバイスである。
するテストベンチをシミュレータに入力して出力される値と期
この特徴は、デバッグ中に発生する些細な変更や、デバッグ情報
待値を比較することによって検証作業を進めることが日常的に
の追加などに対して、ほぼソフトウエアシミュレーションと同
行われている。
様の手続きで変更が可能であるということを意味する。すなわ
しかし、ソフトウエアシミュレーションによる検証作業には、1)
ち、ソフトウエアシミュレーションにおける、記述変更からコン
動作速度、2)モデリングの精度の2つ問題で、シミュレーション
パイルを経て、シミュレーション実行と同様に、ソフトウエア上
では設計上の不具合が検出できなくても、実LSIでは動作しない
の操作を行うだけで設計の変更やデバッグによる修正への対応
という問題がしばしば発生する。たとえば、レジスタの動作を詳
が可能となる。
細に記述してモデリングした場合において、100万トランジスタ
のLSIに対するソフトウエアシミュレーションは、GHzクラス
4 . エミュレータの適用事例
の計算機をプラットフォームとして利用しても、100Hz程度の
大規模LSIに対するFPGAを使った初期のエミュレータの検証
動作 限界である。このことは、LSIの実動作周波数として
事例としてもっとも有名なのは、1995年のDAC(Design Automation
100MHzを仮定した場合において、10秒で終了するアプリケー
Conference:世界でもっとも高水準なLSIの設計自動化会議)
ションも、ソフトウエアシミュレーションでは100日以上を必要
で発表されたUltarSparcI[3]の検証プロジェクトである。
とすることを意味し、このような複雑な実アプリケーションレ
このプロジェクトはUltarSparcIプロセッサの製造前に、このプ
ベルのテストベンチを使ったソフトウエアシミュレーションは
ロセッサの全回路をエミュレータ上に搭載して、アプリケーシ
行われないのが一般的である。
ョンとしてオペレーティングシステム(OS)を起動することによ
実アプリケーションの動作レベルによってのみ検出可能な不具
りプロセッサの論理設計の不具合を検出しようというものであ
合は、LSI製造後に実LSI上の信号を観測することによって検証
った。この検証には、千個近いFPGAを搭載したエミュレータが
を行っていたが、近年のLSIの大規模化、アプリケーションの複
5台準備され、プロセッサの機能はFPGA上の等価回路としてマ
雑さなどによって、再設計と再製造を繰り返すこととなり、高い
ッピングされた。そして、エミュレータの入出力はLSIのピンの
設計コストと設計の長期間化を招くため、実チップでのデバッ
形に整えられ、実際のワークステーションのプロセッサを抜い
グは極力避ける方向にある。
たマザーボード上に接続された。これによりワークステーショ
ンと等価なプロトタイピング装置が完成し、ハードディスクか
3 . エミュレーション
らのO S の起動が可能となった。ワークステーションは
上記のような設計期間の長期間化を解決するために、最近注目
100MHz以上で動作するのと比較して、このエミュレータを使
されているのがエミュレーション技術である。これは、LSIの設
ったプロトタイピングシステムは500KHz程度の周波数でしか
16
2001, 11-12
IC Industry
動作しなかったが、実機とは200倍程度の差しかなく、ワークス
また、LSIは複数の機能やソフトウエアを1つのチップ上に統合
テーションにおいて数分必要なウィンドウシステムを含むOS
したSystem on a Chip(SoC)に進化している。SoCは、チップ全
の起動に半日程度しか要していない。エミュレータを使ってOS
体を新規設計することなく、CPUやDSPなどの設計が完了した
を起動できたことから、従来のソフトウエアシミュレーション
ブロックを再利用して設計を行い、新規に設計する部分を最小
では検出不可能であったような不具合の25〜50%をLSIの製造
化して設計に必要な期間や工数を削減しようというものである。
完了前に発見でき、LSI設計の短期間化に貢献したという報告が
このSoCに対するソフトウエア開発のためのLSIのプロトタイ
なされている。
ピング向けエミュレータを実現するためには、CPUなどの部分
このようにFPGAを利用したエミュレータをLSIの検証に利用
は既存のLSIをそのまま搭載し、新規設計や各既存設計のLSIの
すると大きな設計期間の短縮効果が得られることが示されたが、
接続部分だけをFPGAで実現するだけでよく、FPGAの必要個
SUNの事例のようにOSのような複雑なアプリケーションが起
数を削減し、エミュレーション装置のコストを下げ、プロトタイ
動可能であることが実証されると、ソフトウエアの開発にも利
ピングの実現に必要な労力を削減することができる。
用できないかという検討が始まった。すなわち、従来のLSI上で
このようにして、FPGAの必要個数を減らし、SoCの機能のうち
動作するソフトウエアの開発は最終的にはLSIの製造後にしか
CPUなどを単体LSIとして搭載したソフトウエア開発向けのエ
行うことができず、その結果として、システム全体のパフォーマ
ミュレーション装置がARM[4]社などで開発されている。これら
ンスの低下や、開発スケジュールの長期間化の問題が生じてい
の検証手法は従来型のALL FPGAエミュレータの1/100程度の
た。しかし、エミュレータを用いることにより、LSIの製造前にタ
価格で入手可能であり、FPGAを1,2個程度利用するため、簡単
ーゲットシステムのLSIをプロトタイピングした環境が得られ
なプロトタイピングシステムとしてソフトウエア開発の現場で
ることから、ソフトウエアの先行あるいは同時開発のメリット
利用されている。一方で、ソフトウエア開発向けのエミュレータ
を享受できるようになった。
は、LSIに搭載する機能や接続形態などに対して、実LSIとエミ
しかし、このUltarSparcIの事例で使った環境は、数百個の
ュレータの間の等価性が完全には保証できない場合があり、LSI
FPGAを搭載したエミュレータが5台必要であり、非常に高価な
のハードウエアを完全に検証するためにはFPGAを多数搭載し
だけでなくFPGAによるモデリングを経て、ソフトウエア動作
たエミュレータが用いられることが多い。また、ハードウエアの
に至るまでの準備に必要なリソースが問題となっていた。たと
詳細なデバッグにおいては、デバッガなどが完備したソフトウ
えば、千個以上のFPGAによる等価回路の生成には、70台の計算
エアシミュレータでのデバッグに優位性があり、用途に応じて
機の並列実行を行っても36時間程度必要となっていた。これで
さまざまな検証方法を適用することが重要である。
は、あまりにも高価で複雑なシステムであるため、複数のソフト
ウエア開発者が同時にデバッグ・評価する用途には適さない。そ
6.おわりに
のため、ソフトウエアの開発にはこのようなエミュレータのよ
FPGAを利用したLSIのプロトタイピング装置であるエミュレ
る検証手法うまく利用されずにいた。
ータとエミュレータを利用した検証手法について述べた。これ
らのシステムは90年代の終わりから実際のLSIの設計に適用が
5 . ソフトウエア開発のためのエミュレータ
開始され、FPGAの高性能化によって、LSIのハードウエア設計
しかし、近年の1)FPGAの大規模化、2)LSIのシステム化が、
のみならず、ソフトウエア開発の期間の短縮と低コスト化に貢
FPGAエミュレータの複雑化や高コスト化を解決しつつある。
献し始めている。しかし、FPGAの高性能化はエミュレータの
1995年当時、FPGA 1個あたりの最大搭載ゲート数(1ゲートは
ようなプロトタイピングツールでの利用だけではなく、中規模
トランジスタ4個程度の大きさ)は10K程度であった。この数字
で性能があまり高くないLSIの置き換えとしてFPGAが利用さ
はメーカーの公称の上限であり、実際にはこの3,40%しか利用で
れる場面も多くなっている。その場合、LSIのプロトタイピング
きないことが一般的であったため、実用上の上限は3,4Kゲート
と本番の設計が同時に進行することとなり、LSI設計における新
程度が上限となっていた。この程度の容量では、1Mゲートの
たな設計手法となりつつある。
LSIの等価回路を実現するには、FPGA数百個が必要となり、
関連サイトならびに参考文献
LSIのある機能を実現するだけでも数十個のFPGAが必要とな
[1] Xilinx, http://www.xilinx.com
っていた。しかし、2001年に利用可能なFPGAでは、実用レベル
[2] Altera, http://www.altera.com
でも300Kゲートの利用が可能となっており、LSIを1個の
[3] J. Gatelely, et. al. " UltarSparc-I Emulation",
FPGAで表現するのは難しいが、LSI中のある機能ブロックであ
るならば、数個のFPGAで実現可能となっている。
11-12, 2001
DAC95pp.13-18, 1995.
[4] ARM, http://www.arm.com/jp
17
IC Industry
知的財産と企業戦略(続)
株式会社日立ハイテクノロジーズ 金子 紀夫
kaneko-toshio@nst.hitachi-hitec.com
前回 7‐8月号では知的財産と企業戦略の概要を述べましたが、今
回は特許庁がまとめたシステムLSIの特許出願状況を例にとって、
第3図 要素技術別米国特許上位10社
比率 (1998.1-1999.9)
で健闘しています。
一方、日本では大企業
日本の悩める問題とその方策について考えてみたいと思います。
の寡占状態です。
■ システムLSI米国特許調査結果
システムLSIは2005
http://www.jpo.go.jp/saikin/991210̲lsi.htm
年には2,000億ドル近
システムLSIは高集積、高速、多機能など高付加価値の回路で、今
いビジネス規模予測
までとは異なる新たな市場を創出する製品として期待されてい
があり、今後の日本経
ます。しかしこれを成功させるには設計、製造、検査の高度な技
済と貿易の根幹に位
術が求められています。技術は権利化されて初めて知的財産と
置付けられているIT戦略上の大きな柱です。
なるわけで、各国の企業が特許出願のしのぎを削っています。
技術動向を登録特許だけで見ることは、正確ではないとの意見
第1図から、通信関連が最も期待される市場であると同時に、米
もあるでしょう。出願から登録までは時間もかかるし、また出願
国からの出願が半数以上を占めていることが解ります。
「応用
していないノウハウもあると思います。日本の技術レベルはも
特許が強い」という日本の神話?はこの世界では通用していな
っと高く評価すべきかもしれません。しかし、前述のように、発
いようです。さて要素技術の幾つかを見てみましょう。
明は権利化(登録)されて初めて財産価値が生まれます。これら
第2図(a)は、設計資産の代表としてマイクロプロセッサの設計
の統計は、深刻に受け止めなければならないと思うのです。
第1図 アプリケーション分野・国別米国特許
(1998-1999.9)
第2図 要素技術米国特許
(1998.1-1999.9)
(a)μプロセッサ(総数 1,381件)
(b)プロセス(総数 5,406件)
技術を示しています。
以下、問題点を考察しましょう。
米国の圧倒的多数が一
■ なぜ米国特許が出にくいのか?
目瞭然です。またツー
一般に外国出願が少ない理由として、次の3点が考えられます。
ルとしてのCAD技術
まず、第一に認識の問題があります。よく日本で特許権をとると、
も同様の傾向にありま
その特許権に関する発明はアメリカでも、誰も真似できないと
す。日本の製造プロセ
思っている人がいます。確かに、発明という行為は人が行うもの
ス技術はレベルが高い
ですから、どこの国で発明しようと最初に発明した人には国の
と評判ですが、知的財
別に関係なくその発明を独占する権利を一つの特許権で認めて
産から見ると同図(b)
もいいようなものです。しかし、日本の特許権は日本の法律で保
のように米国の約6割
護されますが、残念ながら外国には及びません。外国でも発明
程度です。またファン
についての独占を得たいのであれば外国出願をする必要があり
ドリーとしての台湾か
ます。第二は出願に関わる費用です。第4図に示すように総費
らの権利化が急増し、
用で約2.5倍もかかり、しかも翻訳費用がそのうちの半分を占め
日本を追い上げていま
ているのです。これは特にベンチャー企業にとっては大変な負
す。同図(c)に示す検証
担です。たくさんの特許事務所がありますから、よく調べ懇意に
技術は、システムLSI
しておくことが必要でしょう。第三には出願の経路です。直接各
においては、商品価値
国に出願をするパリ優先ルートと国際出願経由で各国に移行す
を左右する「低コスト
るPCTルート(Patent Cooperation Treaty)に大別されます。まず
化」という大きな課題
国内に出願し優先権を確保することは共通ですが、前者では1年
を克服するために、こ
以内に各国の形式、言語の出願書類を作成し各国へ出願します。
れまで以上に要素技術
これに対し後者では1年以内に日本語で国際出願書類を作成し、
の一翼を担うものと考
えられます。米国の強
(c)検証技術(総数 2,498件)
第4図 出願にかかる経費(請求項 6)
さがこの分野でも顕著
です。
弁理士
さて第3図の「その他」
の部分に注目してくだ
さい。米国ではベンチ
ャー企業が全ての分野
18
翻訳
長2年6月)以内に各国
へ移行手続きをしま
日本
特許庁
国内出願
優先日から1年8月(最
米国
米国
弁護士 特許庁
米国出願
す。時間をかけて質
の良い翻訳ができ、市
場や企業の方針など
0
20
40
60
万円 (120円/$)
80
100
の変化に応じて柔軟
な対応ができ、また出
2001, 11-12
IC Industry
願国をじっくり選定できるなどのメリットがあります。この制
第6図 日本特許の日米大学出願件数の比較(1988 公開)
度は1970年成立、8年遅れて日本が加盟しましたが、その利用率
は米国の約1/4といわれています。詳しくは、特許庁などのホー
ムページをご覧ください。
以上、言語のハンディキャップをもつ日本人、しかし先端ビジネ
スの主戦場が外国、しかもアジア諸国の追い上げなどを考えた
とき、外国における権利の保全は避けて通れません。法律の整備
も必要だと思いますが、まずはマインドの高揚が最も重要では
ないかと思います。
■ なぜベンチャー発特許が少ないのか?
中小企業の経営者のなかには「うちは特許とはあまり縁があり
ません」と、考えている向きが多くないでしょうか?これは特許
第7図 国内の特許実施状況
に対する知識が不足しているか、大企業からの下請けとの考え
が習慣化している結果ではないでしょうか?人材の質は企業の規
実施
模には関係ありません。中小・ベンチャー企業はユニークなアイデ
体の約8割を占めてい
未実施
(潜 在 実 施) (休 眠)
33
23
ます。
「売る」より「守
る」特許が多いと言え
44
るかもしれません。
アで勝負です。しかし、第5図に示すように日本の開業率は欧米
に比べて非常に低い水準にあります。一般論としてベンチャー
企業が過保護される理由はありませんが、多大な研究投資が必
確かに「優良特許」とは
0%
要な基礎技術については大学や大企業からの援助が必要です。
50%
100%
第8図 日本の特許の特徴
日本テクノマート(1996)
日本における大学・研究機関からの技術移転では、米国のバイド
基本技術を抑えている
ことが大切ですが、そ
れだけでしょうか?基
ール法成立に遅れること18年、1998年に「大学等技術移転促進
60
本特許はそんなに出る
法」が施行されました。今では20近いTLO組織(Technology
40
ものではありません。
Licensing Organization)が生まれ活性化しています。もともと
20
また応用・改良特許を
研究資金の一部を特許収入から得るのが目的ですが、ベンチャ
0
ー企業の育成とともに一石二鳥のシステムで今後が楽しみです。
しかし、大学・研究機関での特許活動は国際的に見て貧弱です。
既存の小改良
改良性大
創造性大
改良特許
独創性大
基本特許
技術レベル
おろそかにしていると、
製品化の時に他社に足
をすくわれることが、
第1表は自国への出願、また第6図は日本出願の比較です。大学で
しばしばあります。企業にとって重要な要素は他にもあります。
の特許取得が研究成果として認知されない、特許出願前に学会
それは第一に「相手が困る特許」です。回避案が困難、代替案
発表する、また産業化と距離のある明細書になりがちなど、基本
ではコスト高、代替案では競争力小などの条件を満たすことが必
的な課題の解決が急務ではないでしょうか?
要です。第二に「相手が欲しがる特許」です。競合他社の立場
第7図は企業などが持つ特許の実施状況です。休眠特許が半数
に立って、自社の核となる技術を縦横に使い明細書に反映する
近くを占めています。積極的に開放してベンチャー育成に努力
ことです。また特許マップは特許庁で紹介している様式が参考
しなければなりません。従来、特許情報の利用に精通した一部の
になりますが、即戦力のためには第2表に示すように、製品のセ
企業が出願時の事前調査や権利侵害の確認をする程度で、地域
ールスポイントをまず掲げ、それを支える技術を書き出しアイ
の格差も大きく中小企業の技術開発にはほとんど活用されてい
デアを出し合うことを勧めます。
ませんでした。この反省に立って1996年、特許庁は全国都道府県
第5図 開業率(各期間中に開業した企業数/各期
間初の企業数)の国際比較(1988-1994)
に「知的財産センター」
を設立しその機能強化
を図っています。運用
上、特に大企業の協力
は大切だと考えます。
第1表 日米大学の自国への出願(1996)
日本
3,870件
米国
0.102件
11-12, 2001
第2表 実戦型特許マップの例(弊社 半導体用電子顕微鏡)
セールスポイント
高スループット
高精度計測、観察
リアルタイムモニタ
使い勝手・システム化
トラブル対応
技術A
画像処理
光学系
GUI
自動レシピ
リモート・メンテ
技術B
自動焦点
画像処理
高速演算
ファイリング
予防保全
技術C
ステージ移動
自動計測
良否判定
ネットワーク
携帯通信
■ 良い特許を取るには
半導体産業は製造装置、素子そしてセットへと、あらゆる分野で
まず第8図をご覧くだ
日本の産業の根幹です。それを支える技術の権利化に、一人で
さい。日本の特許出願
も多くの関心を期待します。(以下は主な参考文献)
の特徴を示しています。
知的創造時代の知的財産 清水啓助 他 慶應大出版会
2000/3
基本的なものより、周
特許による世界戦略
2000/7
辺とか改良のアイデア
技術者のための特許知識 井坂義治
TIC講習会
によるものが多く、全
大丈夫か日本の特許戦略 馬場練成
プレジデント社 2001/5
須藤政彦 他 弘学出版
2001/9
19
EHS
SEMI EHS(環境・健康・安全)活動の状況と方向性
東京エレクトロン株式会社 井深 成仁
地球環境問題についての関心は世界的に日増しに高まり、その
S16、S17と増えてきている。
取組への重要性に対する認識も高まって来ていると言える。た
今後の方向としては、既に進みつつあることではあるが、グロー
だ、環境対策には経済的負担も大きいことから、企業によっては
バルに通用するガイドライン化の促進、国際的協力関係の拡充、
本音論として優先順位を下げてしまっている企業もあると伺っ
各種法規制や他の規格との整合性への考察、統一的解釈のため
ている。
のハンドブック制定、利用の更なる促進等の課題と、作業の健
人々の健康や安全については、物事の基本であるという共通認
康・安全を確保するためのガイドラインやEHSメトリクスに関
識はあるものの、自分の身は自分で守れというような現実が一
するガイドラインの制定等が行われていくと考えられる。
部に残されていることも否めないところである。
しかし、21世紀を迎え、全ての企業や組織が真に地球環境や人々
EHS Divisionは1995年に発効したCE Markingに適合するた
の健康・安全を考え、必要な施策を講じていかないと、地球環境
めに、SEMI会員企業のサポートを目的として活動したCE
の劣化を改善することは困難であり、人々の健康・安全が保障さ
Marking Interest Groupの成果が大きかったこと、その後温暖
れない社会では、経済活動も継続的な発展を続けることは難し
化対策を始め環境関係の規制が強化されたこと等、ビジネスに
いと言わざるを得ない。そして、環境と健康・安全への取組には
直接関係するEHS問題への会員企業のサポートを目的に設立
共通点が非常に多いことから、環境・健康・安全(Environmental
された組織である。EHS Divisionは、EHS Executive Committee
Health and Safety:以下EHS)を一体なものとして取組んでい
を頂点として、 ICRC(International Compliance & Regulatory
る企業や組織も増えてきており、SEMIも然りである。
Committee:国際法規制適合委員会)、EHS Interest会議、フォー
ラム・セミナー活動、他のEHS活動組織との連繋等を通じて、会
SEMIでは、会員企業がEHSに積極的且つ効果的に取組んでい
員企業のEHSに関するビジネスがスムーズに行われるための支
けるように、二つのEHSに関する組織を持っている。スタンダ
援を行っている。
ード組織としてのEHS委員会と、EHS活動全般を掌るEHS
EHS Executive Committeeが中心となって2000年に制定され
Divisionである。
た「EHSに関する革新、リーダーシップ、適切なマネージメント
SEMIスタンダードのEHS委員会は1985年に北米地区でスタ
を行うことを宣言することを意味するGlobal Care」への署名企
ートした(名称の変遷はあった)組織であり、現在は北米、日本、欧
業は、現在世界で33社(日本で7社)に達しているが、更に多くの
州に委員会を持っている。これまでに制定されたEHSガイドラ
企業への参加を求めている。Global Careの基本精神は、Workplace
インは18を数えているが、これらは会員企業が顧客等に提供す
Health and Safety, Resource Conservation, Product Stewardship,
る装置やコンポーネント、ファシリティーがEHSに配慮したも
Community Service and Excellenceの5つである。
のであり、顧客先等での作業がEHSに配慮して適切に行われる
国際法規制適合委員会では、会員企業の製品が世界各地のEHS
ために使用されている。詳細には半導体製造装置をはじめとし
に関係する法規制にいかにスムーズに適合していくのかを調
て、装置要素技術、警告ラベル、EHSに配慮した装置マニュアル、
査・検討していくことを目的としており、CE Marking Interest
人間工学、火災対策、リスクアセスメント、ミニエンバイロンメ
Groupの発展形である。
ント、無人搬送車、排気等のユーティリティー、特殊ガス供給や
EHS Interest会議は非常にユニークなもので、時節に適した
取扱等の健康・安全ガイドラインが整備されている。中でも
EHSに関する話題を取上げ、幅広いディスカッションを通じて
S2(半導体製造装置環境・健康・安全ガイドライン)は世界各地に
参加者の理解を深めることを目的としたものである。
広がりを見せ、Selete殿を皮切に日本のデバイスメーカーでの採
フォーラム・セミナー活動としては、温暖化対策、適正な化学物
用も始まっている。環境問題もS2の2000年の改訂時に大幅に
質管理、排出物管理、EHSマネージメント、法規制適合等の課題
強化された他、S12(汚染除去ガイドライン)、S16(装置廃棄ガイ
について、国際的業界活動における著名人等を招いての講演等
ドライン)等によって充実されつつある。これらは、セミコン・ジ
を通じて参加者の理解を深めるために行われている。
ャパン等で開催されるSTEP(SEMI TECHNOLOGY EDUCATION
他のEHS活動組織との連繋としては、ISESH(国際半導体環境
PROGRAM)を通じて会員企業をはじめ数多くの方々に対しての
安全会議)やSSA(Semiconductor Safety Association)、ISSM、
情報提供が行われている。また、日本発のガイドラインもS13、
CGA等との協力関係を維持することによって、会員企業への
20
2001, 11-12
EHS
EHSに関する情報提供を行っている。
法などの情報提供が求められる。
EHS Divisionは本来的には国際組織であるが、北米地区を中心
サプライチェーンという意味では、グリーン調達についての情
としているのが現状であり、日本では充分な活動が行われてい
報も必要である。
るとは言えない状況にある。日本でもCE Marking Interest
次に健康問題であるが、人間工学的要素を考慮した装置設計や
Groupは活発且つ有意義な組織であったが、その役割を終了し
適切な作業トレーニングのための情報が求められる。カセット
た後の母体を作ることができなかったことから、ICRCは北米地
の重量化や装置の大型化、騒音の増大、PCやワークステーショ
区のみの活動となっている。また、EHS Interest会議も日本で行
ンへのアクセスの増加等により、作業者が視聴覚障害、関節炎、
っていくための会員企業等のリソース不足等もあって、活動は
腰痛、腱鞘炎、肩痛、筋肉痛、ストレス等の症状を訴える恐れが
行われていない。他組織との連繋による情報提供も日本では不
ある。
足しており、これらは今後改善されていかなければならない課
化学物質管理の適正化も健康問題について重要な課題である。
題である。
装置内での反応メカニズムに関連しての装置や排気ダクトに付
北米におけるEHS Divisionの活動は会員企業からの積極的な
着すると考えられる化学物質や排気されるガス成分の測定すべ
参加もあり、非常に活発に行われている。欧州も北米ほどではな
き箇所や定性・定量化方法等の情報は、実際に定性・定量化を行
いが、法規制動向調査や対応方法検討、SSA・ISESH等との連繋
う上で有用なものである。
も比較的良く行われている。EHSの重要性から鑑み、日本にお
次に示す安全への取組は、STEPやセミコン・ジャパンのフォー
けるSEMI会員企業の経営者の方々には、EHSに関しての更な
ラム等で行われている。半導体製造装置を安全に使用するには、
る注力を期待してならないところである。
説得力のある安全基準に基づいて設計・製造する必要がある。半
導体製造装置の環境・健康・安全ガイドラインであるSEMI S2
ここで、今後SEMIで会員企業向けに取組むべき課題の一部と
に基づいて設計・製造することは一つの説得力のある方法であ
して、半導体製造装置を例に既に実施されているものも含めて
る。S2はEHSに関する他のSシリーズガイドライン、世界各地
以下に記述する(なお、この内容の詳細は平成12年12月7日付
のスタンダード、法規制を参照して、安全に加えて環境や健康面
け日刊工業新聞に投稿している)。
への配慮も可能なガイドラインである。また、説得力のある安全
まず、環境面では、LCA(ライフサイクルアセスメント)について
設計には説得力のあるリスクアセスメント手法に基づいて対策
の情報提供が求められる。温暖化対策、天然資源保全、大気汚染
される必要があり、SEMI S10やEN1050等も有用である。顧客
防止、土壌汚染防止、水質汚濁防止、酸性雨対策、森林資源保全等
のサイトがある地域や国の安全についての法規制への考慮も装
を考察するのにLCAは有効な方法である。温暖化対策としての
置設計に必要なものであり、代表例として、各国の消防法や、高
LCA結果を簡単に紹介すると次のようになる。温暖化防止には、
圧ガス保安法(日本)、CEマーキング(欧州)、電気・火災・ビルディ
CO2排出削減のために省エネルギー化が必須である。主には、
ングコード(米国)等がある。
使用電力と排気量の削減であるが、洗浄装置では純水使用量も
装置を使用する作業者の安全性を確保するための装置マニュア
半導体工場の電力消費に大きな負荷を与えている。使用電力を
ル作成情報[SEMI S1(警告ラベル)、S13(半導体製造装置の操作
考察する場合にも、稼動時のみならず、待機時での考察や、装置
および保守マニュアル)等]や、トレーニングの実施方法も重要で
の構成各要素(ポンプ、チラー、RF、ヒーター)の負荷割合の考察
ある。
も必要である。更に、エッチング装置やCVD装置で使用されて
いるCF4、C2F6、C3F8等のPFCや、CHF3等のHFC、SF6や
初めにも述べたことであるが、世界の潮流は、EHSを蔑ろにしな
NF3も温暖化係数の大きな物質であり、それらの排出量の大幅
いまでも、後手を踏む企業は間違いなく脱落していくというこ
な削減や、他の物質への転換が必要であり、装置サプライヤーに
とであり、半導体関連業界では他産業にも増してその傾向は強
は、排気成分の定性定量化、プロセスの最適化や適正除害の推奨
まると考えられる。EHSを実行していくには間違いなく多大な
が求められる。
コストが掛かるが、このことを疎かにすると、後により一層の費
天然資源問題では、化石資源、レアメタル、水資源等の使用量最
用を支払うことになりかねないのも現実である。EHSはビジネ
少化に関すること、リサイクル/リユース情報、分別し易い構造、
スを行う上での必須事項と位置付け、SEMIとしても会員企業の
使用物質の表示、実証データの提示方法等の情報提供が求めら
利益に結び付けられるようなサポート体制をこれまで以上に充
れる。
実していく必要がある。
大気汚染防止としては、CVD装置、エッチング装置、洗浄装置等
からのNOx、SOx、ハロゲン化排気成分等の定性定量化と除害方
11-12, 2001
SEMI イベント・カレンダー
2001年
12月5日(火)〜7日(木)
セミコン・ジャパン
幕張メッセ
2002年
2月5日(火)〜2月7日(木)
セミコン・コリア
ソウル
2月18日(月)〜20日(水)
ISSジャパン
パンパシフィックホテル横浜
3月26日(火)・27日(水)
セミコン・チャイナ
上海
4月16日(火)〜18日(木)
SEMI FPD Expo 2002
東京ビッグサイト
4月16日(火)〜18日(木)
セミコン・ヨーロッパ
ミュンヘン
5月7日(火)〜9日(木)
セミコン・シンガポール
シンガポール
SEMI FPD Expo 2002
2002年4月16日(火)〜18日(木) 東京ビッグサイトにて開催
―規模、質ともトップレベルへ― 出展社募集中!!
5月27日(月)〜29日(水)
FPD Expo Taiwan
台北
6月18日(火)〜20(木)
SEMI Forum Japan
グランキューブ大阪
SEMI FPD Expo 2002 は、JEITA (社)電子情報技術産業協会主催の
EDEX電子ディスプレイ展、ESSシステムLSIソリューションフェアととも
7月17日(水)〜24日(水)
セミコン・ウエスト
17日〜19日(Test, Assembly & Packaging)
サンノゼ
22日〜24日(Wafer Processing)
サンフランシスコ
に開催されます。
フラットパネルディスプレイの新潮流に向かって、皆様のビジネスチャンス拡
大に有効なエキサイティング・ステージをご提供致します。
皆様のご出展を心よりお待ち申し上げております。
セミコン・ジャパン 2001
12月5日(水)〜7日(金) 幕張メッセ
(1〜11ホール、イベントホール)にていよいよ開催
ホームページで詳細案内中! www.semi.org/semiconjapan
9月16日(月)〜18日(水)
セミコン台湾
台北
10月8日(火)〜10日(木)
FPD Expo Korea
ソウル
今年もセミコン・ジャパンがいよいよ開催されます。
10月15日(火)・16日(水)
セミコン・サウスウエスト
オースチン
11月11日(月)〜14日(木)
International Trade Partners Conference
ハワイ
1 2 月4 日( 水) 〜6 日( 金)
セミコン・ ジャパン
幕張メッセ
現在、SEMIジャパンのホームページでは、セミコン・ジャパン2001展示会
および併催プログラムの情報をご覧いただくことができます。なお、インター
ネット上での展示会入場事前登録受付は11月16日(金)をもって終了致しま
した。ご登録いただけなかったお客様は会場内「当日受付」にてご登録くだ
さい。併催プログラムのインターネットでのお申込みは11月26日(月)まで
です。お急ぎください。
それでは幕張メッセにてお待ち申し上げております。
* 予定は変更される場合があります。
SEMI会員数
内訳:
2000年8月末日現在 : 2,404社
SEMI News 11-12月号
北米
1,217社
2001年11月21日発行(隔月刊)
日本
569社
ヨーロッパ
290社
韓国
136社
台湾
130社
シンガポール他
準会員他:
62社
110社
SEMI ジャパン
〒102-0074 東京都千代田区九段南4-7-15 健和ビル7F
Tel: 03 (3222) 5874 Fax: 03 (3222) 5757
E-mail:semijapan@semi.org
SEMI Japan OnLine: www.semi.org / japan
SEMI OnLine:www.semi.org
2001 SEMI ジャパン