BCGレポート「次の新興国で勝つ: BRICの先の自動車市場」 原典: Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Markets (2013年10月22日発行) 2014年3月 エグゼクティブサマリー (1) 「次の新興市場」は自動車市場成長のための「ラストフロンティア (最後の辺境) 」である • 年平均成長率は2020年まで約6% – Triad市場 (北米、欧州、日本、豪州、ニュージーランド )の4倍 • 2020年までの全世界の新車販売台数の5分の1を占める 市場 年間新車販売台数 (2020年、予測) 備考 (万台) ASEAN (インドネシア、タイ、マレーシア等) 460 中東の新興市場 (イラン、トルコ、サウジアラビア等) 最大で 580 アンデス地域 (アルゼンチン、チリ、コロンビア等) 290 ドイツ360万台と同規模になる 120 比較的小さい規模ではあるが、アフリカ への入り口であり、ローカライズする価値の ある地域である 北アフリカベルト地帯 (アルジェリア、エジプト、モロッコ等) BCG1403_ Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Market ロシア440万台を超える ブラジル520万台を超える 1 Copyright © 2014 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. それぞれの地域の2020年の年間新車販売台数 (予測) は以下の通り 「次の新興市場」で成功するためには、綿密に練られた戦略的アプローチが必要になる • OEM各社は多様な顧客ニーズに細やかに対応した、適切な商品ポートフォリオを構築する必要がある – トルコ (中東の新興市場) での小型車の需要 – タイ (ASEAN) のピックアップトラックの需要 – チリ (アンデス地域) のSUVやセダンの顧客の好み 等 • サプライチェーンや生産業務は市場の境界を越えて取り組むべきである – 現地サプライヤーとの協業により価格優位に立つ方法を見つけることはもちろん、市場の境界を 超えた生産網構築のために、貿易協定にも関与していくべきである • OEM各社は販売網全体でも競争力を持つ必要があり、成功の鍵は4つの地域市場で異なる – ASEAN: 現地のパートナーシップ構築のために、魅力的な店舗配置や財務的な体力が重要 – 中東の新興市場: 教育レベルが高い販売要員の確保が課題 等 OEM各社の多くは、まだこの「ラストフロンティア」を掌握しきれていない • 限られた地域で成功している企業はあるが、地域を超えて支配的地位を確立している企業はほぼない • 「次の新興市場」で成功している企業からの学びは、自動車産業の長期的発展のために重要である BCG1403_ Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Market 2 Copyright © 2014 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. エグゼクティブサマリー (2) 「次の新興市場」のうち、2020年に1万台以上の新車販売が予測されるのは88ヶ国 「次の新興市場」での新車販売台数予測 (2020年) (万台) 180 インドネシア 韓国 イラン 150 タイ メキシコ トルコ アルゼンチン ウクライナ 40 0.4 南アフリカ マレーシア コロンビア アルジェリア 台湾 チリ エクアドル 10 ボツワナ ヨルダン パキスタン 0 販売台数 パナマ ベラルーシ 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 スワジランド ニジェール セントルシア ルワンダ アルメニア ハイチ ベリーズ 75 80 85 90 95 100 105 110 115 120 125 順位 40万台以上 1万~40万台 1万台未満 (販売台数ベース) 71% 28% 1% 国数 15ヶ国 構成比 88 ヶ国 出所: IHS Automotive, January 2013、Polk、BCG分析 BCG1403_ Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Market 3 Copyright © 2014 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. サウジアラビア 100 「次の新興市場」として、4つの地域に注目 各地域の新車販売台数 (2020年予測/2012年) 注目すべき4地域 年平均 成長率 (2012-20年) 4.7% 4.6%1) 5.4% 4.2% 1.1% 3.1% 5.4% 9.5% 100 110 40 70 100 50 50 メキシコ 南アフリカ CIS 7.5% 600 460 新車販売 台数 400 200 150 310 430-580 150 (イラン) 140 290 280 (イラン 以外) 100 中東 アンデス 地域 190 0 ASEAN 120 30 90 2020年 (予測) 2012年 北アフリカ ベルト 地帯 市場の大きさ・成長率共に魅力的な市場 または ローカライズする価値のある市場 160 150 韓国 140 40 成熟市場 80 30 40 サブ サハラ アフリカ 成長の見込みは あるが、 まだ小さな市場 1. イランも含む 出所: IHS Automotive, January 2013、Polk、EIU、BCG分析 BCG1403_ Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Market 4 Copyright © 2014 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. (万台) 4つの戦略的地域クラスターにおける成功のカギ ASEAN R&D 調達 ファイナンス 北アフリカベルト地帯 • 市場により顧客の嗜好が 異なる (例: インド ネシアではMPV、 マレーシアではセダン) • 製品の国別カスタマイズ が必要 (例: インド ネシアでは車高を高く) • 市場により顧客の嗜好が 異なる (例: トルコ では小型車、サウジ アラビアではSUV) • 製品の国別カスタマイズ の必要性は限定的 (例: 冷却システム) • 顧客ニーズは地域内で ほぼ一様 (但し、チリは 例外的にSUV、ピック アップトラックが好まれる) • 国別カスタマイズの必要性は 限定的 (但し、アルゼンチンの タクシーはCNG車) • 低価格車に大きな市場 ポテンシャル • 製品の国別カスタマイズ の必要性は限定的 (例: 空調) • 現地調達がコスト最適化 のカギ • ASEAN地域の生産 ネットワーク構築により 関税の影響を軽減 • トルコは中東の調達・ 生産ハブとして有望 • アルゼンチン、近隣の メキシコ、ブラジルが 主な生産ハブに • 関税により、コロンビアと エクアドルではCKD、 アルゼンチンでは現地 生産が求められる • モロッコが、北アフリカ、 欧州南西部向けの 有力な調達・生産拠点に • 現地政府、ディーラー、 代理店と強力なパート ナーシップを構築すべき • 魅力的な販売金融 商品がボリュームゾーン での勝利のカギ • 高品質のディーラー 育成と販売員の教育が 必要 • 特にサウジアラビア ではカーアクセサリー 市場が有望 • 例えばアルゼンチンと チリでは、ディーラーの 最適な地理的分布は 異なる • 柔軟な販売金融が必須 • 低価格車を販売する ためにスリムなディー ラー網が必要 • 中古車の比率が高く、 インフラが未整備な 地域への補修用部品の 供給が極めて重要 生産 販売、 アフター サービス アンデス地域 該当地域での成功のために 極めて重要 該当地域での成功のために重要 Copyright © 2014 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. 製品開発 中東の新興市場 該当地域での成功への関連性は あまり高くない 出所: BCG分析 BCG1403_ Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Market 5 「次の新興市場」1: ASEAN 2020年の新車販売台数は、ロシアを超える 総新車販売台数 上位5社の新車販売台数と現地生産状況 460 +11% 60 その他 7ヶ国 80 マレーシア +4% +5% 310 現地生産 タイ 年平均成長率 (2012-2020年) +5% (万台) 新車販売台数 (2012年) インドネシア マレーシア (万台) トヨタ 46 ホンダ 12 24 三菱 9.8 23 103 ( ) ( ) ( ) ( ) Copyright © 2014 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. ロシアの新車販売 台数 (2020年予測) : 440万台 40 60 170 180 40 インド ネシア +8% 100 いすゞ 50 40 120 150 タイ +3% 60 2007 2012 2020 (予測) 日産 19 9.6 22 21 (年) ( : 現地生産 ) : 現地組み立て 注: その他7ヶ国には、次の国が含まれる。フィリピン、ベトナム、シンガポール、カンボジア、ミャンマー、ブルネイ、ラオス 出所: IHS Automotive、BCG分析 BCG1403_ Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Market 6 「次の新興市場」2: 中東の新興市場 政治の不安定さは残るものの、2020年には「次の新興市場」の中で最大市場に 総新車販売台数 上位5社の新車販売台数と現地生産状況 新車販売台数 (2012年) 580 +3% 210 400 その他 17ヶ国1) トルコ サウジアラビア (万台) トヨタ 23 Copyright © 2014 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. (万台) イラン 年平均成長率 (2012-2020年) +5% 現地生産 50 +4% キア 37 47 350 150 110 サウジ アラビア +7% 110 トルコ +5% 130 50 60 60 80 110 110 2007 2012 プジョー ルノー2) 150? イラン +4% 2020 (予測) (年) イランの不確実性 は改善中 ヒュンダイ 28 10 33 21 8.1 20 : 現地生産 1. その他17ヶ国には、次の国が含まれる。アラブ首長国連邦、バングラディッシュ、パキスタン、イスラエル、クウェート、イラク、オマーン、カタール、バーレーン、レバノン、イエメン、ネパール、シリア、モンゴル、 ヨルダン、アフガニスタン、ブータン; 2. Daciaも含まれる 出所: IHS Automotive、BCG分析 BCG1403_ Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Market 7 「次の新興市場」3 :アンデス地域 安定した成長 総新車販売台数 上位5社の新車販売台数と現地生産状況 新車販売台数 (2012年) 290 コロンビア (万台) Copyright © 2014 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. (万台) チリ アルゼンチン 年平均成長率 (2012-2020年) +5% 現地生産 +4% 80 その他 8ヶ国 +8% 50 60 30 20 20 40 50 2007 70 コロンビア +11% チリ 2012 ルノー/ ダチア 17 アルゼン チン ( ) ( ) 20 12 トヨタ 100 39 19 +2% 30 80 13 フォルクス ワーゲン 190 160 シボレー 7.2 16 +2% フォード 9.1 14 2020 (年) (予測) ( : 現地生産 ) : 現地組み立て 注 その他8ヶ国には、次の国が含まれる。エクアドル、ボリビア、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ、パラグアイ、ガイアナ、スリナム 出所: IHS Automotive、BCG分析 BCG1403_ Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Market 8 「次の新興市場」4 : 北アフリカベルト地帯 2020年の新車販売台数は120万台にのぼる 総新車販売台数 上位5社の新車販売台数と現地生産状況 新車販売台数 (2012年) 120 +5% 90 20 その他 2ヶ国 +6% 20 モロッコ +5% 70 10 30 エジプト 11 17 5.4 10 ( ) プジョー 6.6 ( ) 8.0 20 20 60 40 アル ジェリア シボレー トヨタ 2012 2020 (予測) 4.5 7.9 +3% 20 2007 ルノー +5% 10 10 (万台) ヒュンダイ 10 モロッコ (年) 3.7 5.5 ( : 現地生産 ) : 現地組み立て : 一部現地組み立て 注: その他2ヶ国には、次の国が含まれる。リビア、チュニジア 出所: IHS Automotive、BCG分析 BCG1403_ Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Market 9 Copyright © 2014 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. (万台) エジプト アルジェリア 年平均成長率 (2012-2020年) +4% 現地生産 担当者、お問い合わせ先 等 古宮 聡 (こみや さとし) シニア・パートナー&マネージング・ディレクター 明治大学政治経済学部卒業。IMD(International Institute for Management Development)経営学修士(MBA)。日本フィリップス 株式会社、レーザーテック株式会社ロンドン支店を経て現在に至る。 BCGインダストリアルグッズ・プラクティス(産業財)の日本リーダー。オペレーション・プラクティスのコアメンバー。 富永 和利(とみなが かずとし) パートナー&マネージング・ディレクター ペンシルバニア大学工学部卒業。コーネル大学工学部修士(MS)。マサチューセッツ工科大学経営学修士(MBA)。 トヨタ自動車株式会社、ブーズ・アンド・カンパニー、ローランド・ベルガーを経て現在に至る。 BCGインダストリアルグッズ・プラクティスのコアメンバー。 関連レポート Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Markets https://www.bcgperspectives.com/content/articles/automotive_globalization_beyond_bric_winning_rising_auto_markets/ (英語、要登録) ボストン コンサルティング グループ (BCG) について BCGは、世界をリードする経営コンサルティングファームとして、政府・民間企業・非営利団体等、さまざまな業種・マーケットにおいて、カスタム メードのアプローチ、企業・市場に対する深い洞察、クライアントとの緊密な協働により、クライアントが持続的競争優位を築き、組織能力 (ケイパビリティ) を高め、継続的に優れた業績をあげられるよう支援を行っています。1963年米国ボストンに創設、1966年に世界第2の拠点として 東京に、2003年には名古屋に中部関西オフィスを設立しました。現在世界45ヶ国に81拠点を展開しています。http://www.bcg.co.jp/ bcgperspectives.comでは、様々な業界・分野に関するBCGの知見をまとめたレポート、記事およびインタビュー映像等をご紹介しています。 https://www.bcgperspectives.com お問い合わせ先 コンサルティングに関するお問い合わせ (代表) 報道/取材に関するお問い合わせ (マーケティング) BCG1403_ Beyond BRIC: Winning in the Rising Auto Market 電話:03-5211-0300 / メール:TOKofficialinquiry@bcg.com 電話:03-5211-0600 / メール: press.relations@bcg.com 10 Copyright © 2014 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. 日本における担当者 杉田 浩章 (すぎた ひろあき) シニア・パートナー&マネージング・ディレクター 東京工業大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。株式会社日本交通公社(JTB)を経て現在に至る。 BCGコンシューマー・プラクティス、グローバルアドバンテージ・プラクティス、 オーガニゼーション・プラクティスのコアメンバー。
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