CFA NEWSLETTER グローバル金融アナリストの情報誌 No.021/2012年9月号(隔月刊) CONTENTS Topics ■LIBORは実質金利の反映と不正に対する厳正な処罰が必要 CFA協会アンケートより ■ポール・スミス、CFA協会アジア太平洋地区マネージング・ディレクターに就任 ■CFA Institute Research Challenge 2012-2013 企業説明会を開催 ■日本CFA協会、新事務所に移転予定 CFAJ Update CFA News & Trend CFA Magazine 9-10月号より ■いつでも逃げ道を用意しておくこと ■モラルハザードとLIBOR ■一様ではない新興国の成長 ■適切なエクスポージャー ■必要不可欠な調整 ■内か外か CFA People ■著書紹介 手島直樹「まだ『ファイナンス理論』を使いますか?」 ■今後の主な予定 本ニュースレターでは、世界の公正な投資市場をリードする専門資格CFA®(CFA協会認定証券アナリスト)の認定・推進機関であるCFA協会の 活動から、情報をお届けいたします。取材の参考資料としてご活用いただくことができれば幸いです。 CFA協会ならびに日本CFA協会の詳細はホームページをご参照ください。 ■CFA協会/http://www.cfainstitute.org ■一般社団法人日本CFA協会/http://www.cfasociety.org/japan Topics LIBORは実質金利の反映と不正に対する厳正な処罰が必要 は実質金利の反映と不正に対する厳正な処罰が必要 CFA協会会員アンケートより 協会会員アンケートより CFA協会は9月、LIBORスキャンダル 本調査結果が金融市場への信頼回復 場合に推定レートの適用を受容して をきっかけとする規制改革の動きに に寄与することが期待されます。本 おり、その割合もアジア太平洋地区 対応してCFA協会会員にグローバル 調査はCFA協会会員21,000名に送ら が62%と他地区を上回っています。 な意識調査を実施、この度その結果 れたうち、1,259名から回答を得まし を公表しました。回答したCFA協会 た。 また今後のLIBORの管理については、 引き続き業界団体に委ねるべきと 会員の過半数は、LIBORの設定につ 調査のなかで、34%が今回のLIBOR 55%が回答する一方、LIBOR操作に スキャンダルにより「機関投資家が 対する刑事制裁を求める権限を規制 最も経済的ダメージを受けた」と回 当局に持たせるべきという点には、 答し、特にアジア太平洋地区の回答 82%と圧倒的多数が同意していま 者は38%が影響を受けたと回答し す。 いて、現状の推定レートのみに基づ く方法ではなく、実際のインターバ ンク取引レートを用いることが最も 適切な方法であると指摘しています。 またLIBORの管理は業界内で引き続 ており、アメリカ地区(27%)およ き行われるべきだが、正式に規制当 「LIBORの計算と管理に弱点があれ びEMEA(欧州・中東・アフリカ) 局による監視の対象とすべきである ば金融市場の信頼性を危うくします。 地区を上回っています。 とし、また回答者の82%はLIBOR操 投資専門家は取引レートの設定とよ 作に対して刑事制裁を加える権限を また、LIBORの最も適切な設定方法 り良い監視体制の確立によって改善 規制当局に与えるべきであるとして として、実際のインターバンク取引 されることを明らかにしています。」 います。調査結果はイギリスのウィ のみに基づく平均レートを適用すべ とCFA協会資本市場ポリシー・ディ ートリー調査機関と欧州議会の公開 きと56%が回答し、そのうち49%は レクター、ロードリ・プリースは述 協議へ伝えられました。 銀行間取引が非常に流動的となった べています。 ポール・スミス、CFA協会アジア太平洋地区マネ 協会アジア太平洋地区マネー ポール・スミス、 協会アジア太平洋地区マネージング ディレクターに就任 CFA協会の 部門を率います。 アジア太平 します。ポール・スミスは業界のグ ローバル展開を推進する会員組織、 スミス氏はアジア太平洋地域におい 洋地区オペ オルタネティブ・インベストメン て25年以上にわたり金融サービス レーション ト・マネージメント協会の協議メン のリーダーとして豊富な経験を有し、 のマネージ バーであり前理事です。 HSBCやバミューダ銀行、さらに彼 ング・ディ 自身の会社であるアジア・オルタネ オックスフォード大学で現代史修士 ティブ・アセット・パートナーズと を取得、公認会計士並びにCFA協会 いったグローバル機関での経験を踏 認定証券アナリストです。 レクターと して、10月 3日ポール・スミスが着任します。 まえ、投資家利益を優先し、市場機 前任のアシュビン・ビハーカーは引 能の最適化と経済成長環境を創造す き続きCFA協会のマネージング・デ るCFA協会のミッションをサポート ィレクターとして戦略イニシアチブ 1 Topics CFA Institute Research Challenge 2012-2013 企業説明会を開催 日本CFA協会が主催する大学生によ 業説明会には、関西から初出場の2 ます。1次審査の結果は11月9日に発 る企業分析力を競う国際大会「CFA チームを含む12校が集いました。パ 表され、12月7日の最終審査まで学 Institute Research Challenge 2012- ーク24株式会社取締役執行役員、経 生達の熱戦が続きます。 2013」は、8月9日にキックオフ・ミ 営企画本部長の佐々木賢一氏による、 ーティングを開催。これを機に、参 アナリスト向けミーティングと同様 加12校におよぶ国内大学チームに のプレゼンテーションの後、各参加 よる予選の火蓋が切って落とされま チームとのビジネスモデルや収益、 した。 企業リスク等に関する質疑応答が行 われ、2時間に及ぶ説明会を終了し 9月20日に開催された分析対象企業、 ました。これから各チームは個別の パーク24株式会社(本社:東京都千 電話会議による企業ミーティングと、 代田区、社長:西川光一)による企 レポート提出のための作業にはいり 日本CFA協会、新事務所に移転 協会、新事務所に移転予定 日本 協会、新事務所に移転予定 一般社団法人日本CFA協会は本年 な人材の育成やネットワークの醸成、 びパートナー大学、関連諸団体の 12月、大手町に竣工予定の「大手町 情報発信の拠点となる予定です。大 方々へ、より価値の高いサービスを フィナンシャルシティ サウスタワ 小の会議室やラウンジ等の施設が充 提供できるものと期待しています。 ー」に移転する予定です。移転先と 実し、利便性の高い同ビレッジに事 詳細は近日発表いたします。 なる同ビル5階は「東京金融ビレッ 務所を構えることにより、より機能 ジ」と称され、国際的な金融教育・ 的かつ活発な活動を通じて、会員を 交流に関わる団体が入居し、国際的 はじめ、CFAプログラム受験者およ 2 CFAJ Update このコーナーでは、メディアおよび会員の皆様に日本 CFA協会の各分野での活動状況をお知らせしております。 だける企業に財政的なご支援をいた 元に鋭い質問をぶつけ、その結果を だきながら、スポンサー企業の役職 レポートに反映しているところです。 員の方にセミナーや各種イベントへ この後、10月末に分析レポートの提 のご参加等のメリットを提供させて 出が締め切られ、11月9日に1次審査 いただく制度です。現在、アセット 通過の4校が発表されます。 メンバーシップ 去る8月29日、12月のレベルⅠ試験 に向けたスタディグループの立ち上 げを行いました。当日は最近合格し たばかりの資格保有者の方も試験準 マネジメント会社を中心に10 社に 倫理教育 備を進めていく上でのアドバイスを コーポレート・スポンサーになって 7 月 19 日、鉄鋼会館に於いて、日本 下さり、有意義なものになったので いただいております。各種特典がご CFA 協会 緊急特別シンポジウム はないかと思います。12月試験で1 ざいますので、ぜひ事務局までお問 人でも多くの受験者が成功を収めら 「今、年金基金運営、資産運用業界 合せ下さい。 れることを祈っております。 に求められる対応 —AIJ 事件を教 また、メンバーシップ委員会は、今 アドボカシー 訓として生かすー」が、我が国年金 後の活動の拡大・安定化を図るため コーポレートガバナンスセミナーを 基金関係の専門家および研究者を招 広くボランティアを募集します。ご 10 月 25 日に開催する予定で準備を いて開催されました。本シンポジウ 興味がおありの方は協会事務局まで 進めています。詳細は後日公開予定 ムは、基調講演、CFA 協会倫理・行 お問い合わせ下さい。 です。 為規範、パネルディスカッションの また、9 月 18 日にタイ CFA 協会を 3 つのパーツで構成され、我が国年 訪問し、最近の活動などについて情 金基金運用に係る課題とその対応策 報交換し交流を深めました。 について様々の立場・角度から検討 プログラム 8月は6月21日に開始した横浜国立 されました。年金基金、投資顧問会 大学非常勤講師・宮脇先生による数 ユニバーシティ・リエゾン 社、年金コンサルタント、金融機関、 学教室の週次開催10回シリーズを CFA協会リサーチチャレンジは、筑 CFA 有資格者および受験者等 150 全て終了しました。31日には海外講 波大学大学院の新校舎をお借りして 名弱が参加し、テーマの注目度、タ 師によるWebcast 「世界的な低金利 8月9日にキックオフが開催され、い 下 で の リ ス ク 資 産 配 分 (Allocating イムリーな企画、プレゼンテーショ よいよ今年の競技が始まりました。 Risk Capital in a low interest rate ンおよびディスカッションの内容等 参加大学・大学院は前回のご報告か environment)」および「ヘッジファ について大勢の参加者の方々から好 ら1校増えて最終的に12校となり、 ン ド の 過 去 , 現 在 , 未 来 (Hedge 評を頂きました。また、CFA および その各々にCFAJからのボランティ CFA 協会の存在、活動の意義につい Funds; Past, Present and Future)」 アであり企業分析のプロであるメン て一般参加者も含めて広く知って頂 の視聴会をCFAJ オフィスにて開催 ターが付いてチームへの専門的な指 く良い機会となりました。 しました。 導を行います。また、キックオフで 9 月 27 日 に も 海 外 講 師 に よ る は分析レポートの対象企業が「パー 広報・出版 ク24(株)」に決まったことも発表 引き続きプレスリリースの発信、 されました。学生たちは、その後9 CFA協会ブログ記事の翻訳、協会HP 月20日に有楽町イトシアのパーク への掲載、CFAマガジンの要約翻訳、 24(株)本社にて開かれた模擬IRミ 当ニュースレターの編集を手掛ける コーポレート・スポンサー ーティングに臨み、IR担当の佐々木 ほか、CFAジャーナルの創刊に向け コーポレート・スポンサー制度は、 執行役員並びに望月経営企画本部課 た編集作業を行っています。 日本CFA 協会の活動にご賛同いた 長に対して、1ヶ月強の分析結果を Webcast “Investing in Commodities, Selected Observations” の視聴およ び参加者による意見交換を開催しま した。 3 CFA News & Trend このコーナーでは、 CFA Institute会員に配布される隔月刊の会員誌 CFA Institute Magazineの最新号から 6本の記事を 日本語で要約しています。原文は以下の URLをご参照ください。http://www.cfapubs.org/toc/cfm/2012/23/5 いつでも逃げ道 いつでも逃げ道を用意しておくこと 逃げ道を用意しておくこと Always Leave Yourself Outs デニス・ディック、CFA JPモルガンとUBSが自己勘定取引 最小限に抑えられるものです。 で損失を被った最近の出来事が、メ ションを取った理由はもう無くなっ ているかもしれません。 リスク管理のルールとして、次の4 ディアを大きく賑わせています。両 つが必要不可欠です。 4. 保有期間は重要では 保有期間は重要ではないこと。 重要ではないこと。ボ 社ともリスク管理に重大な欠陥があ ラティリティ、インフレーション、 りましたが、問題の本質は利益に連 1. 規律を持つこと。成功するトレー 動する報酬制度が過剰なリスクをと ダーと失敗するトレーダーとを分け る行動を促しやすいことにあります。 る第一の要因が規律であることは、 自分の資金が損しているのでなけれ 経験上はっきりしています。成功す ば、規律意識は簡単に失われるので る秘訣は、自身のルールを守り、素 す。 早くロスカットをすることです。 映画ラウンダーズのセリフに『いつ 2. 適切なリスク・リターン・レシオ でも手仕舞いどころを用意しておけ を定めること。期待リターンとの対 を定めること。 (Always leave yourself outs) 』とい 比で許容できる最大損失額を決めて うのがあります。取引に入る前にど おくべきです。 クレジットなど、多様なリスクがあ りますが、重要なことは、顧客のリ スク許容度に応じたリスク管理を行 うことです。 成功の秘訣はリスク管理の実践です。 損を最小限にできればゲームを長く 続けられることを覚えておいてくだ さい。取引を始める前には万が一の プランが必要です。いつでも逃げ道 を用意しておくことです。 れだけのリスクを取れるのかを決め、 3. ポジションを管理すること。取引 その最大許容損失額を手仕舞いどこ (要約翻訳:今井義行、CFA) に入る前だけでなく、ポジションを ろ(out)とすべきです。予めルール 維持している間もリスクを評価し続 を決めているトレーダーは、損害を けるべきです。状況が変化し、ポジ モラルハザードとLIBOR モラルハザードと Moral Hazard and LIBOR オスマン・ガハニ、CFA LIBOR不正操作スキャンダルは、 トを操作して利益を得ようとする動 LIBORの流動性やリスクの基準金利 機が潜在的に存在します。それが銀 としての信頼感を喪失させました。 行のレピュテーションを損なうとし LIBORは10兆ドルに上る個人や企 ても、その抑止効果も十分ではあり 業向け融資および350兆ドルの金融 ません。 ト情報」です。 解決策としては、パネル銀行が呈示 するレートに第三者による認証を受 けさせることです。認証機関として も、正しい認証を市場参加者に提供 デリバティブの基準金利として利用 一方、様々な規制強化などが提案さ する動機(レピュテーションリスク) れていますが、 「検証」の問題が伴い を有することになりますが、この認 金利設定の仕組みにモラルハザード ます。パネル銀行の提出レートは単 証の仕組みを生かすには以下が必要 リスクがある点も問題です。LIBOR なる呈示にすぎず、過去の取引価格 です。 を基準として融資やデリバティブ取 のように確認ができる「ハード情報」 引を行うパネル銀行には、呈示レー でなく、本質的に検証困難な「ソフ されていますので影響は甚大です。 ・認証機関が寡占でないことについ 4 CFA News & Trend ての規制当局の保証 この第三者による呈示レートの認証 的な圧力や恣意的な運用に対するけ ・最近の実取引に基づくレートの呈 は、パネル銀行の行動に対する監視 ん制にもなります。 示 機能が一つ追加されることになり、 (要約翻訳:大浜匠一、CFA) モラルハザード問題を緩和するほか、 ・認証機関に対するパネル銀行から 規制当局から独立することで、政治 の十分な情報開示 一様ではない新興国の成長 Breaking Down Breakouts ジョナサン・バーンズ 次に経済の奇跡を起こす国を探った” 強い「低文脈(low-context)」社会 Breakout Nations”の著者で、モル の区分で言えば、インドは同じ高文 ガン・スタンレーにて新興国部門の 脈社会のブラジルに似ています。し 責任者を務めるルチール・シャルマ かし、資源輸出国のブラジルと資源 氏は、新興国の成長に関しインタビ 輸入国のインドは、利害がかなり異 ューで以下のように論じています。 なります。BRICという括りはまっ しています。 資源価格は20年間の下落と10年間 の上昇を繰り返しており、現在まで 上昇が10年間続いています。加えて 資源の消費水準が高い中国の経済減 速と供給増加を考慮すると、資源価 たく意味がなく、それぞれの国を個 国民一人当たりの所得が4,000~ 格の低下が予想され、トルコを始め 別に取り扱うべきです。ブラジルは、 5,000米ドルを超えると成長率は低 資源輸入国は恩恵を受けるでしょう。 経済の安定を必要とした1980~90 下し始めます。既に約6,000米ドル 年代を乗り越えた今、より高い成長 国内基盤が安定している国では、企 を重視すべきです。 業の海外進出は分散をもたらします と中所得国になった中国経済の減 速は当然です。単一民族で国家主義 が、マレーシアや南アフリカ、イン の中国と多民族で地方分権主義の ポーランドとチェコ共和国は、EU インドは、社会構造が極めて異なる に加盟しつつユーロを導入していな ため、人口規模が近いからと言って いことが奏功しています。韓国は、 同列に論じるべきではありません。 製造業のGDPに占める割合が高く、 人間関係が緊密な「高文脈 なかでもR&Dの比率が世界で最も (high-context)」社会と個人志向の 高いため、再投資により成長を持続 ドなど国内基盤の脆弱な国では、海 外事業を拡大しても国内投資が不十 分であることが問題です。 (要約翻訳:獅々見和秀、CFA) 適切なエクスポージャー Decent Exposure スーザン・トラメル、CFA 最近のグローバル金融危機で見られ International Diversification Works イナス方向への歪みが大きく、短期 たように市場が連動して暴落する時 (Eventually)”の中で、先進22カ国の 的な市場の同時クラッシュは、確か は、国際分散投資にリスク軽減効果 データを用いて投資期間が長ければ に国際分散投資にとって問題となっ がないとの批判に対し、クリフォー 国際分散投資のメリットが大きいこ ています。しかし、投資家は最終的 ド・アスネスら(Clifford Asness, とを示しました。 には長期にわたる富の創造、保持に Roni Israelov, and John Liew)は、 配慮すべきです。例えば、投資期間 現地通貨建て実質月次リターンの分 Financial Analyst Journal 2011年5- が60カ月の場合、国別リターンの最 布を見ると、国別ポートフォリオよ 6月号に掲載され2011年グレアム・ 低値(22カ国平均)は-57%である り22カ国の等ウエイトで構築した ドッド賞を獲得した論文” のに対して、グローバルポートフォ グローバルポートフォリオの方がマ 5 CFA News & Trend リオのリターンは同期間の平均が- ォーマンスの影響を受けやすい、と けでなくリターンの観点から最適な 16%、全期間の平均最低値は-39% いう可能性が考えられます。短期的 グローバル投資、そして、株式以外 に留まります。すなわち、長期で見 なパニックは世界中の投資家に影響 の資産クラスにおける分散効果に関 れば、分散投資の効果が認められま を与えますが、長期的な経済パフォ する研究を進めています。これらの す。 ーマンスは各国に固有なものである 研究は、一般的になりつつあるリス ためです。 クパリティ投資に示唆を与えること 分散投資のメリットが短期では小さ でしょう。 く、長期で大きい理由として、短期 著者らは時価総額加重のグローバル のリターンが投資家のリスク回避度 ポートフォリオについても同様の分 の短期的な変化の影響を受けやすい 析を行い、分散効果が劣ることを示 一方、長期のリターンは、経済パフ しました。次の課題として、分散だ (要約翻訳:斉藤哲朗、CFA) 必要不可欠な調整 Necessary Adjustments ジョナサン バーンズ 2008年の国内3大銀行破綻を始め 貨建て債務を抱える国民は打撃を被 アイスランドから欧州諸国が学べる とする金融・経済危機から4年、国 りました。 ことは、銀行破綻による民間セクタ 内銀行システムの安定化および金融 ーの損失を政府ができるだけ負担し 政府が講じた政策は、政府財政を銀 政策が功を奏し、今年1-3月期にお ない施策が有効であるということで 行破綻から保護し、クローナ建て預 いて前年比成長率4.5%まで景気回 す。アイスランドにとっての教訓は、 金を全額保証して最低限の国内銀行 復を果たしたアイスランドのマル・ 通貨統合に参加していれば定義上通 システムを保持することと、金融政 グドムンドソン中央銀行総裁に、そ 貨危機は起こり得ないということで 策により為替レートを安定化させ、 の経緯と教訓についてインタビュー す。それでも銀行危機は起こりえま 更には資本流出の規制を設けること しました。 すが、健全な地域規模の銀行制度と で、金利を十分に低く抑え、実体経 信頼できる最後の貸し手がいれば軽 政府が3大銀行へ公的資金を投入せ 済を活性化させることでした。アイ ず、倒産へと至らせたのは、他に選 スランドの問題はもっぱら金融危機 択肢がなかったためです。もし経済 であり、国内実体経済の基盤は揺る 規模がGDPの10倍にものぼる銀行 がなかったため、通貨安に伴い輸出 を救済していたら、国そのものが破 を伸ばし、経済を回復させることが 綻していたでしょう。また銀行破綻 できたのです。現在の課題の一つは、 は問題の一部に過ぎず、大量の資本 資本流出規制の撤廃です。リスク回 流入と政策の失敗で、国内の景気は 避傾向が後退し、資本流入が更に増 既に後退していました。加えて2008 加すれば、その実施は容易となるで 年初頭のクローナ暴落で、大量の外 しょう。 減できます。今後EUが必要な改革を 行い、ユーロ圏の安定性が高まれば、 アイスランドのEU加盟の可能性も 高まるかもしれません。 (要約翻訳:木村貴明) 内か外か In or Out? ジョン・ルビーノ いまや世界全体が銀行口座や資本移 とが当たり前の時代へ突入ないし再 済状況に直面して資本移動を制限す 動に対する規制が急に変更されるこ 突入したようです。極めて厳しい経 る国が相次ぎ、投資判断を著しく複 6 CFA News & Trend 雑化させています。過剰債務を抱え 止めることにあるのか、国内への流 規制強化により、損失を被る可能性 る先進国では金融システムの複雑性 入を抑えることにあるかによって大 が出てきました。現在は政治リスク および脆弱性が高まり、この対策と 別できます。大量の外国資本流入は、 が市場リスクよりはるかに高く、最 して各国中央銀行が利下げを実施し インフレ率や自国通貨の上昇を通じ 大のリスク要因であることを認識す た結果、安全資産や高利回り資産を て国民生活や企業活動に悪影響を及 る必要があります。市場が先に反応 求めて国境を越えた資本の大移動が ぼす可能性があります。一方、過去 すると効力が低下するため、新たな 起きました。こうした急激で大規模 の政策面での失敗が大量の資本流出 資本移動規制は予告なしに導入する な資本移動から自国経済を守るため を招き、国内に残る資本の流出を防 必要があり、次にどの国が実施する に資本移動を制限する国が増加した ぐために資本移動を制限する国もあ かを予想することは困難です。その のです。 ります。 ため投資対象国の分散化が一段と重 資本移動規制には様々な形態があり、 要になると同時に、非金融資産の投 グローバル投資を行う上で、市場ト 金融および財政政策と重複するもの 資妙味も相対的に高まっています。 レンドや資産クラスの選択について が多いため、分析を難しくしていま 正しい判断を行っても、資本移動の すが、最終的な目的が資本を国内に 7 (要約翻訳:森由紀、CFA) ) CFA People 著書紹介 手島直樹『まだ「ファイナンス理論」を使いますか?― MBA依存症が企業価値を壊すー』 (日本経済新聞出版社) 企業価値創造の重要性が高まるにつ 質を解説します。 れ、M&Aなどのファイナンス戦略が <手島直樹氏 注目を浴びていますが、必ずしも狙 インサイトフィナンシャル株式会社 い通りの成果をあげているとは言え 代表取締役。CFA協会認定証券アナ ません。なぜファイナンス戦略は企 リスト。慶應義塾大学商学部卒。ピ 業価値を創造しないのか?本書では、 ッツバーグ大学経営大学院MBA。ア 著者の事業会社での実務経験から学 クセンチュア、日産自動車を経て んだ理論と現実のギャップをもとに、 2009年に起業。著書に『グロービッ あるべき「企業価値向上経営」の本 シュ実践勉強法』 (日本実業出版社) 略歴> 10月以降、日本CFA協会が主催する主なセミナー等の予定は以下の とおりです。 ●10月9日 森 洋一氏(公認会計士、国際統合報 「ETFs in Asia: Expert Advice and 告評議会(IIRC)技術部会メンバー) Takeaways」 会場:日本CFA協会会議室 会場:東京証券会館9階 11月19日には三井 千絵氏(野村総 講師:Ms Deborah A. Fuhr (Partner & Co-founder, ETFGI LLP) ●10月25日 合研究所 会場:東京証券会館9階 「コーポレートガバナンスの新潮流 企画部 (OECD円卓会議、ビジョナリーボー 2013年 次世代EDINETにおける新 ●10月16日 ド報告書、会社法改正要綱最終案)」 XBRLの解説・企業分析への応用セ 第6回ESG研究会「本格化を迎える 講師:Lee Kha Loon氏, CFA (Head, ミナーを日本CFA協会会議室で、11 ESG投資 Standards and Financial Market 月 22 日 に は 、 François Trausch 氏 ~統合報告とESG情報 資産運用ソリューション データアナリスト)による データ化の潮流~」 Integrity, APAC, CFA Institute) 講師:荒井 勝氏(社会的責任投資フ 小池 敏雄氏, CFA, CMA、(公認会 ト、アジアパシフィック CEO、GE ォ ー ラ ム (SIF-Japan) 会 長 、 計士、日本CFA協会理事、リーバイ キャピタル・リアル・エステートジ FTSE4Good政策委員会メンバー、 スジャパン(株)社外監査役) ャパン社長兼 CEO、日本GE 株式 CDP Japan (カーボン・ディスクロ 富永 誠一氏(特定非営利活動法人 会社代表取締役)による不動産投資 ージャー・ジャパン)アドバイザリ 日本コーポレート・ガバナンス・ネ に関するセミナーを東京証券会館で ー・グループ・メンバー、エコステ ットワーク(CGネット)※ 予定しております。 ージ協会第三者評価委員) 長) 8 事務局 (GE キャピタル・リアル・エステー [報道に関するお問い合わせ先]CFA協会 広報事務局 担当:株式会社ppc福嶋・松本 9 Tel 03-6809-2690/Fax 03-6809-2691 E-mail:fukushima@ppc-inc.co.jp
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