宮坂 昌之 先生 - 国立国際医療研究センター研究所

第22回 NCGM研究所セミナー
NCGM SEMINAR SERIES
■ 演題
リンパ節での恒常的リンパ球血管外移動は
リゾリン脂質シグナリングにより調節される
■ 演者
みやさか
まさゆき
宮坂 昌之 先生
大阪大学未来戦略機構・特任教授
フィンランド国アカデミー・FiDiPro 教授
■ 日時
2015年
10
月19日 (月)
17:00~18:00
*入場無料
■ 場所
国立国際医療研究センター
研究所大会議室A&B
*国府台中継予定
ナイーブリンパ球は、胸腺あるいは骨髄から成熟した形で血液に放出され、全身を循環する。血中のナイーブリンパ球は、高内
皮細静脈(high endothelial venule; HEV)という特殊な血管を介してリンパ節実質に移行し、そこで然るべき抗原に出会えばリン
パ節内で増殖、分裂し、抗原に出会わなければsphingosine-1-P(S1P)受容体を介したシグナルにより輸出リンパ管、胸管を経て
血中に戻り、再循環する。これまで、HEVにおけるリンパ球の移動制御機構として、接着分子、ケモカインを介した多段階カス
ケード反応が提唱されてきた。この中で、その初期段階のリンパ球のローリングや接着に関してはその分子的基礎が明らかに
なってきたが、後期の血管外移動の過程においては不明な点が多かった。2008年、われわれのグループ(Am J Pathol 13:1566,
2008)およびSteven Rosenのグループ(Nature Immunol 9:415, 2008)がリンパ節のHEV内皮細胞に特異的に発現する分子として
autotaxin(ATX)を報告した。ATXは、血中に豊富に存在するリゾホスファチジルコリン(LPC)に働き、局所的にリゾホスファ
チジン酸(LPA)を生成する。ATXは、種々の病的リンパ球浸潤を媒介すると思われる血管においてもその発現が誘導されるこ
とから、リンパ球の血管外移動と機能的関係をもつことが推測される。その後、ATXが結晶化され、ATXが細胞表面に結合して
LPAの産生に関わり、LPAシグナルを惹起することが示された(Nature Struc Mol Biol. 118:198, 2011, 118:205, 2011)。われわれの
解析では、ATXはHEV周囲およびリンパ節実質で産生され、内皮細胞上および線維芽様細網細胞上に固相化されて存在する。内
皮細胞上のATXは、血流中のLPCを局所的にLPAに変換し、LPAがHEV内皮細胞上のLPA4受容体に働く。一方、リンパ節実質の
線維芽様細網細胞上のATXは局所的にLPAを産生し、産生されたLPAはリンパ球上のLPA2受容体に働く。このように、LPAが特
定のLPA受容体を介してオートクライン、パラクライン的に働くことにより、リンパ球トラフィキングの制御が行われることが
明らかになってきた。ここでは、新たなリンパ球血管外移動制御分子としてのATX/LPAの役割について述べるとともに、S1P受
容体シグナルとの関係についても考察したい。
主催・連絡先: 研究所長 清水孝雄 tshimizu@ri.ncgm.go.jp
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