No.19 - 長野県テクノ財団

環 境と共 生する 新 産 業 創 出 へ の 挑 戦
Naganoテクノの25年、そして未来へ
専務理事の小泉博司です。商工労働行政一筋37年の県職員生活を終え
支援などの大型プロジェクトにより、
て本年4月にテクノ財団にまいりました。激化する国際競争、急激な円高に
事業費は設立時の約5倍、職員体制
伴う産業と雇用の空洞化懸念、少子高齢化に伴う将来不安の広がりなど、
は地域センターを含め60名を超え
日本のモノづくりはいま、多くの課題に直面しています。足もとの経済対
る規模となっています。さらに昨年
策はもちろんですが、こういう時だからこそ人びとの英知を結集し技術革
12月には、
「次世代産業の核となる
新と人材の育成に力を注がなければならないと考えております。
スーパーモジュール供給拠点」をめ
あらためて申し上げるまでもなく、テクノ財団の最大の使命は、技術革
ざすべく、財団内に「コーディネート
新による地域産業の高度化と地域経済の活性化にあります。その際に最
オフィス」を設置、産学官連携協議会
も重要となるのは、
グローバル化時代にふさわしい牽引エンジンの創出で
の運営や各種先端分野の研究会を
す。マラソン競技に例えれば、力強い先頭集団によるパワーの波及効果と
企画、実施しております。
もいえましょう。活力溢れる企業群のイノベーションが、県内産業全体へ
現 在 、平 成 2 4 年 4 月を 目 途 に
広く波及することで、競争に打ち勝つ数多(あまた)のスグレモノが生み
「公益財団法人」へと移行するよう
19
TECHNO NEWS
テ クノ
2010.10
No.
ニ ュ ー ス
編集・発行/(財)長野県テクノ財団 長野市若里一丁目18 番1 号 TEL026-226-8101 FAX026-226-8838 http://www.tech.or.jp/ E-mail : techno@tech.or.jp
「Think globally, act locally」
地球規模化した経済に果敢に挑戦 !!
こ いずみひろ し
小 泉博司
1949年長野県生まれ。東京理科大(工)卒、
長野県商工部香港駐在員、県テクノハイラ
ンド開発機構事務局次長、商工労働部雇
用・人材育成課長、参事兼ものづくり振興
課長などを経て2010年4月より現職
このたび長野県知事に就任いたしました阿部守一です。どうぞよろしく
お願いいたします。
私は、信州で暮らし、働く人々が、暮らしの安心、将来への希望、そして
長野県知事
阿部 守 一
準備を進めておりますが、県内産業の活性化と自立化を図るという
ふるさとへの誇りを取り戻し、力強く未来を切り開いてゆく、そんな
さて、
(財)長野県テクノハイランド開発機構と(財)浅間テクノポリス開
財団の責務を真摯に受け止め、覚悟を新たに職務に臨む所存でござい
自立した地域社会の実現を目指しています。
発機構を母体に設立した当財団も10年(前身の両開発機構設立から25
ます。今後ともご支援、ご協力をお願い申し上げます。
長野県は広く、それぞれの地域が自然環境、発展の歴史など様々な特色
として、9月補正予算により切れ目なく経済・雇用対策を実施し、実需
を有しています。長野県としての一体感を醸成する一方で、こうした
の喚起や雇用の確保に全力で取り組んで参ります。
地域の特色を伸ばすことにより、77の市町村と協調して個性的な地域
さらに、中・長期的には、工業技術総合センターの機器整備等、具体的
づくりを支援していきます。画一的な発展ではなく、それぞれの地域が
な支援策により地域と世界を見据えた積極的な産業振興を図ります。
活性化することで、長野県全体が元気になります。
環境、健康、観光における世界先進地域の創造、異業種連携の推進と
出されていく、そんな流れを創り出せればと思っております。
年)の節目を迎えました。近年は、
「知的クラスター創成事業」や国際展開
次世代の通信インフラ
可視光通信実用化研究会
グローバル市場を切り拓け!
浅間精密成形金型研究会
(善光寺バレー地域センター)
(浅間テクノポリス地域センター)
社会や経済の地球規模(グローバル)化が進む中、地域(ローカル)の
相乗効果の創出、市場創造と顧客志向の徹底を「産学官金」共同のプロ
LED
(発光ダイオード)の光を活用する
「可視光通信」は、電磁波による
「簡単には真似が出来ない」
といわれてきた日本の金型技術も、海外企
あり方が今、あらためて問われています。この信州の地において、これまで
ジェクトにより推進してまいりたいと考えております。
人体への影響が無いことや、
反射・屈折等の光学特性を活かした光路設計
業の猛追を受けて競争が激化、
コスト面だけでなく品質、納期とも予想を
先人が守り育ててきたものを、私たちの個性として大切にしながら、
これらの実現には、県だけではなく、企業、支援機関、市町村、NPO
が出来るなど優れた特徴を持つ点から、
赤外線、
レーザーに継ぐ、
次世代の
はるかに超えた対応が求められています。
国際的な視野に立ち、地球規模化した経済に果敢に挑戦していくこと
やボランティア、そして個人などの力を広く結集せねばなりません。そこに
無線通信インフラの一つとして期待されています。
そこで、
改めて
「ものづくり」
の根幹である金型関連の最新技術について
が必要です。即ち、
“Think globally, act locally”です。
結集した県民一人ひとりが主役です。
調査研究を行うとともに技術力の向上と人材育成を目的とした研究会を
現在、長野県の景気は、厳しさを残しつつも回復に向けた動きがみら
貴財団をはじめ県内産業界の皆様方におかれましても、県と一丸と
育成枠」の支援を受け、信大工学部
立ち上げました。
れますが、最近の急激な円高や海外経済の減速懸念などから下振れ
なって地域経済の発展に貢献いただきますことを心からご期待申し
半田教授(会長)のもと
(株)
アウトス
これまでの研修会(2回開催)では、参加者から生産現場のニーズ、
リスクが強まっています。このため、県としましては当面する経済対策
上げ、ごあいさつとさせていただきます。
タンディングテクノロジー社
(OTC)
を
シーズの提供をいただき、講師、参加者が膝を交えた討議が進められまし
LEDスポット照明
当研究会は、昨年の「技術シーズ
中核企業として、
LED可視光通信技術
た。
「ものづくり」の生産現場を強
製品説明
の 実 用 化 実 験を実 施しています。 CM
この技術によって、
展示品にやさしい
多機能照明や街路照明への応用が期
携帯型
受信機
電話
森の資源を有効活用
県内で活躍するコーディネータの研修会を開催
ていくための愚直な取り組みで
PC
家電
グリーンエネルギー創造事業研究会
チャレンジに皆様の声援をお願
アジア諸国の工業力の台頭や急速な市場拡大の中で、県内企業が
ネータはもとより、市町村や関係団体で活躍されているコーディネータ
いします。
グローバル競争に打ち勝っていくためには、環境や健康ニーズなどの
の皆さんも参加いただき(総勢60名)交流も深めることができました。
新たな成長分野を見据えつつ、信頼性ある確かな技術力と新たなビジネス
テクノ財団では、今後もコーディネータの資質向上を目的とした事業
モデルの構築が急務となっています。
を進めてまいります。
(事務局長 千原 薫)
そばアレルギー技術で花粉症改善へ アレルギー改善食素材開発研究会
(伊那テクノバレー地域センター)
本年度から調査活動を開始した「グリーンエネルギ創造事業研究会」
時に呼吸困難や意識喪失を伴う
「そばアレルギー」
を防止しようと取組ん
ケースが増えてきました。とりわけ、新たなるイノベーションを早期に
でいた信州大学農学部の研究により、
アレルゲンタンパク質を多糖修飾する
創出していくために、企業と大学、専門機関など多様な力を結集した
根県の「ブルータワーガス化プラント」
8月には
「ちちぶバイオマス元気村
ことによりアレルギーが劇的に軽減されることが確認されました。
戦略的な取り組みが求められており、その繋ぎ役を担うコーディネータ
発電所」の間伐材ガス化発電・コジェネ施設の見学を行い、8月27日には、
本研究会では、
こうした成果を基に、
「花粉症」の改善を視野に入れた
等の役割は、ますます重要となっています。
研究をスタート、天然多糖
そこで、長野県テクノ財団では、信州大学と(財)全日本地域研究交
(会員30名)が、先進プロジェクトの見学調査を行ないました。
4月には島
(事務局長 小林 憲一)
多糖修飾による経口免疫寛容
類や天然サポニン等、種々
の食品素材をもとに免疫
応答を観察しながら、効果
的な改善策を探っていま
食用多糖(ガラクトマンナン)
す。近い将来、伊那谷から
そば
「脱・花粉症」
の吉報が発信
できるかもしれません。
他
多糖修飾
抗原として
認識しない
◀技術移転の「目利き人材」
としてのコーディネータの役
割や公的研究資金活用にむ
けた「優れた提案」の手法な
どについて、専門家から講義
を受けました。
流協会(JAREC)の協力を得て、コーディネータ等の皆様の日常活動に
研修会「信州ものづくりコーディネータ研修プログラムⅠ」を開催しました。
1日目は、 1、コーディネータの基本的役割
2、アーリーステージにおけるマーケティングの考え方
アレルゲン毎に
修飾体が必要
(事務局長 林 正樹) 医師の指導下に低アレルゲン化抗原(多糖修飾
抗原)を長期間投与する
4
ネータやアドバイザー、推進員等を配置して企業活動のサポートにあたる
役 立つ知 識を学ぶとともに、併せて相互の人 脈づくりを目的とした
スギ花粉
多糖修飾
(コーディネートプロデューサー 岩下幸廣)
こうした中、各自治体においては、産業振興策の一環として、コーディ
(アルプスハイランド地域センター)
JPO及び岩谷産業の講演会を開催しました。
(平成22年8月27日∼28日)
はありますが、
メンバーの新たな
待されており、
実用化に向け研究に取
(事務局長 大平 英明)
り組んでいます。
信州の未来を拓くスグレモノ創出をめざして
くし、
グローバル市場を切り拓い
3、優れた提案とは
4、長野県における地域振興概要 などの講義、
2日目は、実例をテーマにして「S−N変換マトリックス」による課題
解決手法を学びました。研修会には、信州大学やテクノ財団のコーディ
▶グループ討議(7∼8名ごとの
グループで課題解決に向けて
ディスカッション をスタート、
まずは名刺交換から。)
企業の海外展開をサポートするテクノ財団の国際・広域プロジェクト
世界市場を拓く経営戦略をサポート
目指すは世界一小さな工場
(国際・広域連携チーム)
いまや工業製品のみならず、科学技術やビジネスモデルについても、国境を越えて情報が飛び交い、その成
果や評価も瞬時に世界中に広がっていきます。そこでテクノ財団は、こうしたグローバル競争の時代の中で、県
内企業が勝ち残り、更なる発展をしていけるよう、海外展開の支援と競争力向上のための国内連携サポートを
目的とした「国際・広域連携チーム」を設置しています。
「DTF研究会」が10周年
(諏訪テクノレイクサイド地域センター)
「小さな製品は、小さな機械で」をキャッチフレーズに、2000年から活動している「DTF研究会」が本年11月
に創立10周年を迎えます。
「DTF」
とは、
デスクトップファクトリーの略ですが、
単に
「小さな工場」
を
目指すだけのものではありません。環境にやさしい、省エネ、省資源、
省スペースなど21世紀の産業が必要とするものづくりの仕組みを製造
国際交流・広域連携活動
システムとして発信し、
日本や世界の製造業に役立てていこうと、
諏訪地域
テクノ財団では、すでにナノケベック(カナダ)やベネトナノテク(イタリ
の企業と支援機関などで結成した研究会です。
ア)とMOU(連携活動の覚書)を締結しており、相互に訪問し具体的な開
既に会員それぞれが特徴ある製品を生み出しており、諏訪地域をDTF
発テーマの設定を模索しています。また、カナダ、
ドイツ、
フィンランド、
フラ
の情報発信基地、
クラスターへと発展させるべく
「DTF国際フォーラムin諏
ンス、イタリア、アメリカ等を訪問し、各国のクラスター調査や、知的クラス
訪」の開催をはじめ、2006年に採択されたジェトロのRI
T事業によるスイ
ター事業などの紹介、企業の海外展開につながる試作の仲介などを行って
スとの技術交流など、
海外展開を視野に国際交流事業を実施しています。
きました。また、これにあわせて、海外の研究者が幾たびも本県を来訪する
また 、平 成 2 2 年 5 月には「 も の づくり大 賞NAGANO2010」の
など相互交流も進んでいます。さらに、国際競争力の向上を目的に、国内連
特 別 賞を受賞し、続く6月には、
フランスのEMM2010コンファレンス
携にも注力、2008年からは、福岡県の知的クラスターとマッチングフォーラ
「MECHATRONICS AWARDS」の特別賞を受賞、その活動に内外から
注目が集まっています。
ムを開催しています。
競争力向上のカギは「語学」とビジネスの「流儀」
(事務局長 今井 敏夫)
▲ フランス・アヌシー市にあるイノベーション支援機構(2010.
6月)
2010.6月スイスローザンヌ市で開催されたEPMTの商談風景▶
国際競争力の向上には、英語での情報発信手法と、海外のビジネス事
情を熟知することが不可欠です。
このため2008年から長野高専と共同
で「ESP
(ビジネス英語)講座」を開設しています。
ビジネス英語の学習
世界を目指せ!NAGANO航空宇宙プロジェクト
はもとより、海外の研究者やコンサルタントを招き、工業技術、知財、
ビ
イギリス・ファンボロー“エアショー”
ジネス手法(流儀)などの情報提供や相談会も行っています。
(ナノテク・材料活用支援センター長 若林 信一)
将 来 的な成長 が 期 待される航 空宇宙産 業 への県内企 業 の 参入を支 援するため、昨 年 6月に設 立した
「NAGANO航空宇宙プロジェクト」では、海外展開を視野に事業を推進しています。
その第一弾として、本年7月、英国ファンボロー国際航空ショーへの会員企業の出展を支援しました。
イギリスケンブリッジ大学の技術経営講座で教鞭を取られる
Dr. Tim Minshall氏の講演。
( 平成22年9月21日工業技術総合センターにて)▶
経済産業省中部経済産業局をはじめとする国の機関と地方自治体など
成長するアジア市場への進出をバックアップ
先ずはマレーシア、タイから
が連携して派遣したミッション団に、全国の航空機部品加工メーカー(31
(海外展開支援オフィス)
成長著しいアジアは世界経済の牽引役として、ますますその重要性を増してきています。
「 海外展開支援
オフィス」は、長野県企業がアジア圏をはじめとする有望市場に向けて海外展開を図る際のサポートを目的
社)
とともに
「NAGANO航空宇宙プロジェクト」
の会員も参加しました。
航空ショーでは、
注目のボーイングB787やエアバスA380などのデモフ
ライトをはじめ、
世界各国の航空宇宙関連機器メーカーによる展示が行わ
れ、大変な盛り上がりを見せました。また、参加企業は、海外企業等128社
と延べ223件にのぼるビジネスミーティングを実施、その場で商談が成立
に本年7月に設立されました。
したものもあり大きな成果が得られました。
先 ず は10月 中 旬 に マ レ ー シ ア で 開 催 さ れ る「IGEM2010」
ので、
今後も引続き会員企業の海外展開を支援して参ります。
航空宇宙産業への参入は、
海外におけるビジネス展開が必須となります
(GreenTechnology & Eco-Produducts)
と11月下旬にタイで開催予定
(事務局次長 林 俊哉)
の
「METALEX2010」
(金属加工機械関連)
のふたつの展示会へ県内企業
向けブースを構え、長野県の技術力と商品力をアピールします。また、
これに合わせて現地に調査員を派遣し、現地におけるビジネスの立上げ
や展開の現状を調査する予定です。
今や海外ビジネス展開は個々の開拓者精神の時代から、
総合力の時代に
なって来ました。
▲7月19日∼25日に開催された「ファンボロー国際航空ショー」の一場面(英国ロンドン郊外
ファンボロー飛行場)
仏国パリ・エアショーと交互に2年に1度開催されている世界的航空ショーです。
これを契機に、産学官の知力と技術力を結集して、
この魅力ある市場と
の繋がりを築いて参ります。
(プロデューサー岡本則久)
2
(提供 JAXA)
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