日本英語教育学会ワードテンプレート (タイトル)

Language Learning and Educational Linguistics 2015-2016
言語学習と教育言語学:2015 年度版
小学校外国語活動ーCLIL による環境教育の試み
執行 智子 1
カレイラ 松崎 順子 2
〒120-0023 東京都足立区千住曙町 34-12
〒185-8502 東京都国分寺市南町 1-7-34
1 東京未来大学こども心理学部
2 東京経済大学現代法学部
E-mail:
概要
1shigyotomoko@gmail.com,
2carreira@tku.ac.jp
本研究では,小学校で行われる環境教育を学級活動と連携をとりながら CLIL を用いた外国語活動において実施し,児
童がどのように思うか,またそれが児童の外国語活動に対する動機づけをあげるのか,さらに活動で使用した児童の内容に関す
る言語を増やすかどうかを調査することを目的とした.その結果,参加した児童の振り返りから,内容・言語・協同学習につい
て振り返っていることがわかり,また,多くの児童が本プロジェクトを肯定的にとらえていたことが分った.事前事後に行った
アンケートについて対応のある t 検定を行った結果,児童の動機づけに関して質問項目「地球の環境についてもっと知りたいで
す」のみ有意な差が見られた一方,児童のアンケートから学習意欲が上がっている記述があったことが分った.また,内容に関
する言語においても,事前事後に行ったアンケートについて対応のある t 検定を行った結果,有意な差が見られた.よって,児
童たちは自ら本プロジェクトで使用した内容に関する言語を理解し語彙を増やしたと思っていることが分った.
CLIL in Elementary School Foreign Language Activities
-CLIL and Environmental Education-
Tomoko Shigyo 1
1 Faculty
Junko Matsuzaki Carreira2
of Child Psychology, Tokyo Future University 34-12 Senjuakebono-machi, Adachi-ku, Tokyo 120-0023 Japan
2 Faculty
of Contemporary Law, Tokyo Keizai University 1-7-34, Minami-cho, Kokubunji-shi, Tokyo 185-8502 Japan
E-mail:
1shigyotomoko@gmail.com,
2
carreira@tku.ac.jp
Abstract The purpose of this study is to report CLIL (Content and Language Integrated Learning) in
Foreign language activities in an elementary school. The study aimed to research how students think about
CLIL, whether it would enhance their motivation to foreign language learning, and whether it would increase
their vocabulary of the content learnt in this project. The reflections of the students showed that they enjoyed
this project by referring to the content, the language, and cooperative learning. The quantitative analysis of
pre- and post-questionnaires did not indicate that this project could enhance the students’ motivation to foreign
language learning, but the students explained that they wanted to learn more. Furthermore, there was a
significant difference between the pre- and post-questionnaires on vocabulary of the content. Therefore, this
project increased students’ vocabulary.
1. は じ め に
こ と が 重 要 で あ り ,特 に ,21 世 紀 を 担 う 子 ど も た ち へ
地球市民として生きていく人間は,みな等しく地球
の環境教育は極めて重要な意義を有して」いるとし ,
環境を守り,次の世代に地球環境を守り引き継いでい
その重要性を強調している.現在,学習指導要領にお
かなければならない.現代では,環境問題は,地球市
い て 「 環 境 教 育 」 は 1~ 2 年 生 で は 生 活 科 に お い て , 3
民一人一人が自覚をもって取り組んでいかなければな
~ 4 年 生 で は 社 会 科・理 科・体 育 科 に お い て ,さ ら に ,
ら な い 問 題 で あ る .イ ギ リ ス で は ,
「環境を人類に与え
5~ 6 年 生 で は 社 会 科 ・ 理 科 ・ 家 庭 科 ・ 道 徳 に お い て ,
られた財産であり,環境の保護,改善を義務責任とし
また,どの学年においても総合的な学習の時間や特別
て貢献できる人間の育成を環境教育の本質」
( 谷 口・大
活動において実施されている.しかしながら,世界の
西 [1],
共通語となりつつある英語教育の現場でこそ環境問題
p. 67) と し ,「 環 境 問 題 に 対 し て , 個 人 的 の 問
題 と し て で は な く ,公 の グ ロ ー バ ル な 問 題 と し て 捉 え ,
についてやり取りができるようなグローバル人材の育
地 球 の 一 員 と し て の 解 決 案 を 見 出 す 」( 谷 口 ・ 大 西 [ 1] ,
成が必須となると思われる.小学校外国語活動におい
p.67) こ と が で き る よ う 環 境 教 育 を カ リ キ ュ ラ ム の 中
ても,責任ある地球市民の育成を目指し,環境問題を
に 設 置 し て い る . 日 本 に お い て も ま た , 文 部 科 学 省 [ 2]
どのように外国語活動に取り入れるかを研究し, 積極
は,
「国民が様々な機会を通じて環境問題について学習
的に取り入れるべきなのではないだろうか.
し,自主的・積極的に環境保全活動に取り組んでいく
執行智子・カレイラ松崎順子, "小学校外国語活動:CLIL による環境教育の試み,"
言語学習と教育言語学 2015 年度版, pp. 13-24, 日本英語教育学会編集委員会編集, 早稲田大学情報教育研究所発行, 2016 年 3 月 31 日.
Copyright © 2015-2016 by Tomoko Shigyo, Junko Matsuzaki Carreira. All rights reserved.
2. 外 国 語 活 動 と 環 境 教 育
14. 生 徒 の 学 習 と 生 活 を 常 に 関 連 さ せ る
15.CLIL の こ と ば( 目 標 言 語 )を 使 う 人 と 交 流 す る
谷 口 ・ 大 西 [1]で は , 学 校 教 育 の 中 で の 環 境 教 育 に お
機会を作る
いて成果を上げるためには,
「単独の単元でとらえるよ
16. メ デ ィ ア な ど で 使 わ れ て い る 最 新 の 教 材 を 使 う
り も , 義 務 教 育 段 階 で 体 系 的 」( p. 65) に 捉 え て い く
 積 極 的 な 学 習 (active learning)
必 要 性 が あ る と 主 張 し て い る . ま た , 池 田 [2]は 「 日 本
に お け る CLIL 活 用 の 可 能 性 (座 談 会 )」 の 中 で , 普 通
17. 教 師 よ り 生 徒 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン す る
の英語の授業では環境問題を取り上げてもなかなか本
18. 生 徒 が 内 容 , こ と ば , 学 習 ス キ ル の 成 果 を 示 す
気で考えさせることはできないが,内容言語統合型学
19. 生 徒 が 学 習 成 果 の 到 達 度 を 評 価 す る
習 法( 以 下 ,CLIL)を 使 う と「 き ち ん と 学 び 考 え さ せ
20. 仲 間 と の 共 同 を 好 ん で 行 な う
る こ と が で き る 」( p. 17) と 述 べ て お り , 環 境 教 育 を
21. 生 徒 同 士 で こ と ば と 内 容 の 意 味 を 考 え る
22. 教 師 は 進 行 役 に 徹 す る
他教科と連携しながら外国語活動で取り上げることは ,
 足 場 づ く り (scaffolding)
意義深く,必要であると思われる.
23.生 徒 の 持 っ て い る 知 識 ,技 能 ,態 度 ,興 味 ,経 験
を足場とする
2.1. CLIL に よ る 外 国 語 学 習
24. 生 徒 の 立 場 に 立 っ て 情 報 を 再 構 成 す る
ヨ ー ロ ッ パ で 近 年 開 発 さ れ て き た CLIL は , 内 容 学
25. 異 な る 学 習 ス タ イ ル に 対 応 す る
習と言語学習両方を目的としたアプローチである
(Coyle, Hood, &
Marsh [ 4] ;
Mehisto, Marsh &
26. 創 造 的 で 批 判 的 な 思 考 を 培 う
Frigols [ 5] ).
27. 生 徒 に 楽 を し よ う と し な い で 一 歩 前 に 出 る よ う
笹 島 他 [ 6] で は ,「 CLIL は , 学 習 者 の 総 合 的 な 発 達 を サ
に促す
ポートし,そのゴールは,生徒が,能力を身に着け ,
 協 力 (co-operation)
動機づけされ,必要なことばを使い,自立した学習者
28.CLIL の 教 師 と そ れ ぞ れ の 科 目 の 教 師 と の 協 力 で
( independent learner)に 育 つ こ と 」
( p. 23)で あ る と し
授業を計画する
て い る .こ れ を 達 成 す る た め に ,CLIL の 指 導 法 の 特 徴
29.保 護 者 に も CLIL の 学 習 や 生 徒 支 援 な ど に か か わ
を Mehisto, Marsh and Frigols [ 5] (p. 29)で は , Multiple
focus ,
ってもらう
Safe and enriching learning environment ,
30. 地 域 , 教 育 行 政 , 管 理 職 と か か わ る
Authenticity, Active learning,Scaffolding,Co-operation
の 6 つ に 分 け ,さ ら に ,各 項 目 を 下 位 分 類 し 30 項 目 挙
具 体 的 に ,山 野 [ 7]( p. 96)は 小 学 校 で 扱 わ れ る CLIL
げ て い る 。 笹 島 他 [ 6] で は こ れ を 「 CLIL 指 導 法 の 30 の
の内容は「単一教科による内容,もしくはテーマ・ト
コチェックリスト」
( p. 22)と し て 以 下 の よ う に ま と め
ピックに沿った教科横断型内容」としている .外国語
ている.
学習に他教科の内容学習を横断的に取り入れることは ,
 多 様 な 視 点 ・ 多 焦 点 (multiple focus)
学習者自身が目標言語の習得と学習内容の理解が進む
1. 科 目 内 容 ク ラ ス で 外 国 語 学 習 に ア プ ロ ー チ
よ う に な る の み な ら ず , 林 [ 8] ( 2003) が 教 科 横 断 型 授
2. 外 国 語 ク ラ ス で 科 目 内 容 に ア プ ロ ー チ
業について指摘しているように,指導者が学習者中心
3. い く つ か の 科 目 を 統 合
の視点をもってカリキュラムを作成できたり ,一方の
4.科 目 間 の テ ー マ や プ ロ ジ ェ ク ト を 通 し て 学 習 を コ
教科の学習成果をもう一方の教科においても応用する
場面を設置できたり,既習事項を効果的に活用し効率
ーディネート
的に時間を活用することができるのである .つまり,
5. 学 習 プ ロ セ ス の 省 察 ( ふ り か え り ) を 促 進
カリキュラムを全体的に掌握し,効果的 に学習をデザ
 安全で豊かな学習環境
インすることができるようになるのである .
6. 所 定 の 型 通 り の 活 動 や 話 題
特 に ,Sharpe [ 9 ] に よ れ ば ,小 学 校 の 担 任 教 員 は ,「 一
7. 授 業 を 通 じ て こ と ば の 内 容 を 提 示
日中児童と一緒にいるので,深く豊かな関係を築くこ
8.こ と ば と 内 容 の 両 方 を 試 し て み る こ と で 生 徒 の 自
とができる」
「 全 教 科 を 担 当 し て い る の で ,英 語 を 子 ど
信を築く
9. 教 室 を 学 習 セ ン タ ー と し て 使 用
もの学校生活全体に組み入れることが出来る」
「小学校
10. オ ー セ ン テ ィ ッ ク 教 材 な 学 習 教 材 と 環 境 に ア ク
教育を専門としているのでカリキュラム全体の中に英
語学習を統合していくことができる」
( 執 行 [ 10 ] , p. 203)
セス
ので,担任教諭が,外国語活動において他教科の内容
11. 生 徒 の 学 習 意 識 を 高 め る
を横断的に取り入れたり,カリキュラム全体の中に外
 本 物 ら し さ (authenticity)
12. 生 徒 が 必 要 と す る こ と ば の 質 問 を す る
国語学習を統合していくことは他の校種の教員よりも
13. 生 徒 の 興 味 関 心 を 最 大 限 に 引 き 出 す
容易であり,また,一日中児童と一緒にいることで,
14
児 童 の 実 態 に 合 わ せ scaffolding や co-operation の よ う
領にある外国語活動の指導内容についての記述
な CLIL の 特 徴 を 授 業 で 生 か す こ と も で き る と 思 わ れ
「児童の興味・関心にあったものとし,国語科,
れる.
音楽家,図工科などの他教科等で児童が学習した
ま た ,渡 部・池 田・和 泉 [ 11] で は ,CLIL
には柔軟性が
ことを活用する」
( 文 科 省 [1 2] ,p. 1)に 適 合 し て い
あ り ,以 下 の よ う な バ リ エ ー シ ョ ン が あ る と し て い る .
るとしている.
・「 目 的 」 に よ る バ リ エ ー シ ョ ン
・ Communication
・「 頻 度 ・ 回 数 」 に よ る バ リ エ ー シ ョ ン
CLIL で は ,「 対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と 学 習 使
・「 比 率 」 に よ る バ リ エ ー シ ョ ン
・「 使 用 言 語 」 に よ る バ リ エ ー シ ョ ン
用ツールとしての言語使用」
( 渡 部 他 [ 11] ,p. 6)に
( p. 10)
重点を置いており,特に,
CLIL の 授 業 で は ,そ の 目 的 が 言 語 学 習 と 内 容 学 習 ,あ
・ 学 習 の 言 語 ( language of learning… 内 容 理 解
る い は ど ち ら が 優 先 さ れ る の か ど う か ,単 発 的 に CLIL
に必要な語句や表現)
の授業を入れるか,年間を通じて入れるのかどうか,
・ 学 習 の た め の 言 語 ( language for learning… 学
授業の一部に取り入れるのかあるいは授業全体に
習活動を行うために必要な表現)
CLIL を い れ る の か ど う か ,学 習 言 語 の 使 用 は 初 期 の 段
・ 学 習 を 通 し て の 言 語 ( language through
階では学習言語のみの使用をするのか,必要であれば
learning… 児 童 や 教 員 が , 授 業 で 積 極 的 な コ
第一言語を使用することも許容されるのかどうかなど,
ミュニケーション活動を行うときなどに現
教育現場一つ一つの実情に合わせて調整することがで
れる学習における偶発的,繰り返しの言語)
きるとしている.小学校の担任教員は,児童の実態を
( Coyle et al. [ 4 ] )
把 握 し て い る の で ,効 果 的 に「 目 的 」
「 頻 度・回 数 」
「比
の 3 つの言語の使用が言語使用のために必要で
率」
「 使 用 言 語 」を 調 整 す る こ と が 可 能 な の で は な い だ
あ る と し て い る . こ れ ら を 山 野 [ 6] で は , そ れ ぞ れ
ろ う か . 以 上 の こ と を 踏 ま え る と CLIL は 小 学 校 に 取
外国語活動における「単元の目標となる英語表現」
り入れやすいアプローチであることがわかる.
「 ク ラ ス ル ー ム イ ン グ リ ッ シ ュ 」「 積 極 的 に 外 国
語を聞いたり話したりすること」
( 文 科 省 [ 12] ,p. 1)
2.2. CLIL の 構 成 要 素
Mehisto, Marsh, and
Frigols [ 5] に よ れ ば , CLIL
に共通している部分があるとしている .
・ Cognition
は,第
CLIL に お け る 生 徒 が 行 う 思 考 活 動 に お い て ,山
一 に 内 容( Content)に 焦 点 を 置 く と し て い る .新 し い
情報やスキルを習得するためには,学習者は,通常新
野 [ 7 ]( p.
しい情報を理解しようとするのみならず ,それらと既
既存の知識や学習スキルと統合しながら ,意味あ
存の知識やスキルや考え方とを結びつけるものであり ,
る文脈の中で,学習言語を使って考え発話しよう
そ の よ う な こ と が 起 こ る の は 個 人 と 社 会( Community)
と す る 」こ と で あ る と し て い る .そ の た め CLIL の
の 中 で ,さ ら に ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン( Communication)
授 業 で は ,指 導 者 は ,
「授業において生徒に与える
を通して,個人的あるいは協力的な内省や分析
課題が,どの程度の認知的負荷を伴うかについて,
( Cognition ) を 通 し て 行 わ れ る と し て い る . つ ま り ,
明示的に意識できるようになり,暗記や理解に偏
CLIL で は , 上 記 4 つ の 要 素 ( Content, Community,
ることのない,バランスの取れた多様な学習活動
Communication, Cognition)を ,
「有機的に結び付けてパ
を 実 践 す る こ と が 」( 山 野 [ 7 ] , p. 97) 必 要 と な る .
ッケージング」
( 渡 部 他 [ 11] ,p. 5)し ,
「この枠組みに即
小学校外国語活動においてもまた,
「 児 童 の 知 的・
して教材を作り,授業案を考え,指導を行えば,相乗
発達レベルに考慮した学習や活動を行うべき」
( p.
効 果( synergy)に よ り 高 品 質 の 教 育 が 実 現 さ れ る 」
( p.
97) と い う 示 唆 が あ る の で , こ の 点 に お い て も ま
5) と い う の で あ る .
た ,CLIL の 概 念 は ,小 学 校 外 国 語 活 動 の 目 指 す も
山 野 [ 7] で は ,CLIL
97)は ,
「 学 ん だ 内 容 を 生 か し ,そ れ ら を
の と 一 致 を す る と 山 野 [7]は 述 べ て い る .
の 4 つの要素と外国語活動の関連
・ Community
について,
CLIL で は ,協 同 の 学 び を 通 し て 異 な る 文 化 を 学
・ Content
CLIL に お け る 内 容 は ,「 単 一 教 科 に よ る 内 容 ,
ぶことで「他者を認め,さらには自国の文化や言
もしくはテーマ・トピックに沿った教科横断型内
語の理解を深めることを目的」
( 山 野 [ 7 ] ,p. 97)と
容」
( 山 野 [7] ,p. 96)で あ る 定 義 し て い る .つ ま り ,
している.小学校外国語活動においてもまた,
CLIL で 扱 う 内 容 は ,学 校 で 学 習 中 の 学 習 者 に と っ
「( 外 国 語 を 通 じ て ) 言 語 や 文 化 に て つ い て 体 験
て関連があるもので,学ぶ対象になりうるもので
的に理解を深める」
( 文 科 省 [ 1 2 ] ,p. 1)を 目 標 の 一
あるということになる.このことは,学習指導要
つ に 掲 げ て お り ,CLIL と 外 国 語 活 動 は ,通 ず る と
15
こ ろ が あ る と 山 野 [ 7] は 述 べ て い る .
以 上 の こ と か ら CLIL を 外 国 語 活 動 に 取 り 入 れ る こ と
以 上 の よ う に CLIL の 構 成 要 素 は 小 学 校 外 国 語 活 動
により児童の動機づけを高め,積極的な参加を促し,
の柱となる考え方と一致している点が多くみられるこ
さらに,思考すること,協同的に学びあうことを促進
と か ら ,CLIL は 学 習 指 導 要 領 の 外 国 語 活 動 の 目 標 で あ
したといえるであろう.
る「外国語を通じて,言語や文化について体験的に理
ま た ,山 野 [ 7] は ,社 会 科 で 扱 う 環 境 に つ い て の CLIL
解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとす
の授業を実践した指導者が授業後,
る態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に
・
慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地
を 養 う 」(文 科 省 [ 12] ,p.
内容に関して,他教科とのクロスカリキュラムで
授業ができ,授業の内容が豊富なので,子供たち
8)を 実 現 で き る 手 立 て で あ る と
の 知 的 好 奇 心 を 満 た す 授 業 が で き る ( p. 117)
言えるのではないだろうか.
・
3. 先 行 研 究
・
言語に関して,英語学習に対する児童の積極的な
授 業 態 度 が 見 ら れ る ( p. 117)
思考活動に関して,子供たちの発達段階や知的好
パ ー ソ ン ズ [ 13] は , CLIL の 効 果 に つ い て 文 献 研 究 し
奇心を満たし,大人びている児童や表現が苦手な
た 結 果 ,CLIL は ,生 徒 の 言 語 力 と 科 目 の 内 容 の 知 識 を
児童にとってじっくり考える授業は参加しやすい
伸 ば し て い る こ と ,伝 統 的 な 外 国 語 学 習 と 比 べ CLIL を
よ う で あ る ( p. 118)
・
用いた授業は生徒の英語力とモチベーションを高める
協同学習では,他教科で行っていた協働学習の方
法 が 生 か さ れ て い る ( p. 118 )
こ と が で き る こ と を 指 摘 し ,「 CLIL に は さ ま ざ ま な 利
点(外国語取得,モチベーションや外国語に対する興
と述べたと報告しており,外国語活動に環境教育の
味 , 認 識 等 )」( p. 7) が あ る と ま と め て い る .
CLIL の 授 業 が ,認 知 ,言 語 ,思 考 ,コ ミ ュ ニ テ ィ 全 て
の面において効果的であると述べている.
笹 島 他 [ 6] に よ れ ば ,「 ウ ェ ル シ ュ ・ ケ ー キ 」 を 作 る
以 上 の こ と を 踏 ま え ,本 研 究 で は ,小 学 校 外 国 語 活
CLIL 授 業 を 小 学 校 6 年 生 に し た 結 果 , 調 理 の 最 中 に
「単純なコミュニケーションの行為をする実際の場面」
動 に CLIL の 手 法 を 用 い て 環 境 教 育 を 実 施 す る こ と が ,
( p. 92),例 え ば「 指 示 を す る ,意 欲 を 喚 起 す る ,タ ス
児童はどのように影響を及ぼすのかを調査することと
クの達成をほめる」
( p. 92)な ど を す る こ と が で き て い
する.
たと報告し,
「 家 庭 科 の 授 業 の 副 産 物 と し て『 英 語 』を
体 感 し ,ケ ー キ を 作 る と い う こ と も 学 び ま し た 」
( p. 92)
4. 本 研 究
と,内容と言語両方に生徒の気づきがあったとしてい
4.1. 目 的
る.
本研究では,近年地球を守る一つの手段としての環
山 野 [ 7] は ,CLIL の 授 業 を 異 な る 指 導 者 の 下 に お い て
境教育を,小学校外国語活動において学級活動と連携
行 い ,CLIL を 授 業 に 取 り 入 れ る こ と で 授 業 や 児 童 に ど
を と り な が ら ,CLIL を 用 い て 導 入 す る こ と が 小 学 5 年
のような変化が出るのか,外国語での言語活動に変化
生の児童にどのように影響を及ぼすのかを調査するこ
が 出 る の か ,児 童 の 思 考 活 動 を 促 進 す る の か ,さ ら に ,
とを目的とし,以下のリサーチクエスチョンをおくこ
クラスでの協同学習に変化があるのかなどについて調
ととする.
査 し .そ の 結 果 を 以 下 の よ う に 報 告 し て い る .CLIL の
1. 児 童 は CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 を ど の よ う に 思
授業では,
・
ったであろうか.
教科内容を使用した内容が充実し,児童の授業へ
2. CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 は 児 童 の 外 国 語 活 動 の
の興味とやる気を喚起し,担任教員の知識・経験
動機づけをあげるであろうか.
が活用された
・
3. CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 は 児 童 の 内 容 に 関 す る
外国語を使ったコミュニケーション活動に対して
言語を増やすであろうか.
児 童 の 授 業 参 加 が 促 進 さ れ ,ま た ,児 童 に「 学 習 を
通 し て の 言 語 ( language through learning)」 が 見 ら
4.2. 参 加 者
れたことから児童の外国語に対する興味を高めた
・
・
本研究の参加者は,東京都のほぼ中心に位置する東
児童の思考活動は,学習内容と言語理解から,文
京 都 新 宿 区 立 愛 日 小 学 校 に 在 籍 す る 5 年 生 19 名 で あ
脈 の 中 で「 学 習 の 言 語( language of learning)」や 学
る.参加者は,愛日小学校入学時より週に 1 回程度の
習 を 通 し て の 言 語 ( language through learning)」 を
外国語活動を経験している.愛日小学校では,外国に
使 っ て「 比 較・整 理・分 析 」
( p. 120)す る 活 動 ま で
旅行したり,家族に海外赴任や出張の経験のあるもの
広がっていると推測される
が多く,英語への関心を高く持っている児童が多く在
児童同士の学び合いが活発となった
籍しているが,本研究の参加者については詳細には調
16
査していない.
第 6回
[外 国 語 活 動 Day 3]
環境にやさしい生活を送る方法を英語で表現す
4.3. 本 プロジェクト
る.
・目標:環境問題について世界に向けて発信しよう
1. Elec 君 チ ャ ン ツ を 歌 う
2. 目 標 ( ポ ス タ ー 制 作 ) に つ い て 知 る
ポスターを制作し発表する
3. ポ ス タ ー を 制 作 す る
・計画と実施:授業計画については,担任教員を中心
第 7回
に 外 国 語 活 動 担 当 教 員 お よ び 筆 者( 当 校 外 国 語 活 動
[外 国 語 活 動 Day 4]
ア ド ヴ ァ イ ザ ー )が 行 っ た .計 画 は 以 下 の と お り で
ポスター制作
ある.
1. Elec 君 チ ャ ン ツ を 歌 う
第 1回
2. グ ル ー プ 活 動
[学 級 活 動 ]
第 8回
導入:環境について知っていること ,環境のため
[学 級 活 動 ]
ポスター制作
にしていること,自分たちで取り組めそう
第 9回
なことについて考える.
[外 国 語 活 動 Day 5]
中間発表
目標の設定:それを世界に向けて伝える
第 2回
1. Elec 君 チ ャ ン ツ
[外 国 語 活 動 Day 1]
2. 中 間 発 表 会 を す る
電気が生活に欠かせないものであることに気が
第 10 回
つく.
[学 級 活 動 ]
ポスター制作
1. 昔 と 現 在 の 生 活 の 写 真 を 比 べ , 電 気 が 暮 ら し
第 11 回
を豊かにしてきたことに気がつく.
[外 国 語 活 動 Day 6]
2. 電 気 が 使 わ れ て い る も の に チ ェ ッ ク を す る .
リハーサル大会
3. 絵 本『 ど う や っ て 作 る の ? パ ン か ら 電 気 ま で 』
1. Elec 君 チ ャ ン ツ
2. リ ハ ー サ ル 大 会 を す る
の読み聞かせを聞き,電気がつくられている
第 12 回
ことを意識する.
[外 国 語 活 動 Day 7]
発表
4. Elec 君 チ ャ ン ツ で エ ネ ル ギ ー が 作 ら れ て い る
1. Elec 君 チ ャ ン ツ を 歌 う
ことを英語で理解する.
第 3回
ポスターを制作する
2. 発 表 会 を す る
[外 国 語 活 動 Day 2]
環境問題への意識を高める.
以上のように計画を立て,実施を始めたが,第 6 回
1. Elec 君 チ ャ ン ツ を 歌 う .
[外 国 語 活 動 Day 3]環 境 に や さ し い 生 活 を 送 る 方 法 を
2. 電 気 ク イ ズ に 答 え る .
「電気を使う製品はどれでしょう」
英語で表現する段階で,児童が日本語で考えた節電方
「一番消費電力が大きいのはどれでしょう」
法を既習の英語を用いて表現することが なかなかでき
3.英 語 の 絵 本 The Earth Book の 読 み 聞 か せ を 聞 き
ないことがわかった.児童たちは自分が考えた方法で
はなく日本語をそのまま英語に訳そうとし,外国活動
環境問題に興味を持つ.
指 導 助 手( assistant language teacher, 以 下 ALT)に 尋 ね
4. 環 境 問 題 で 知 っ て い る こ と を あ げ る .
第 4回
る が ,そ も そ も 日 本 語 自 体 が 難 し く ALT に は 理 解 で き
[学 級 活 動 ]
「1 年間あるいは 1 時間時間あ
な い .そ の 上 ,児 童 自 身 も ALT に 理 解 で き る 簡 単 な 日
た り の 消 費 電 力 に つ い て 」「 電 力 消 費 を 抑 え る 方
本語で言い直すことができない.児童自身が何を言い
法について」調べる.
たい(内容)のかを,自分自身で確認することが一番
消費電力の調査
第 5回
大切であろうという話し合いを,担任教員,外国語活
[学 級 活 動 ]
環境問題と電力についての関連性について知る
動担当教員および筆者とで行い計画を改善することに
1. 環 境 問 題 と 消 費 電 力 の 関 係 に つ い て 調 べ る .
した.改善したものが以下のとおりである .
・目標:環境問題について世界に向けて発信しよう
①エネルギーを使うことで二酸化炭素が増え
寸劇で発表しビデオ作成をする
ることを知る
第 7回
② そ れ に よ っ て 温 暖 化 が 進 み ,気 温 の 上 昇 ,海
[外 国 語 活 動 Day 4]
発 信 す る 内 容 を 絵 で 描 き 必 要 な 英 語 を ALT か ら
面上昇,洪水,ハリケーンなどの環境問題が
学ぶ.
起こることを知る
第 8回
2. 環 境 を 守 る た め に 自 分 た ち が で き る こ と を 考
[外 国 語 活 動 Day 5]
節電をしている様子を寸劇として作成する .
える.
17
第 9回
[外 国 語 活 動 Day 6]
な お ,チ ャ ン ツ は 新 宿 区 か ら 加 配 さ れ た ALT と と
寸劇に使用する英語を英語らしく発信する方法
もに作成した.
(イントネーション・リズム)を知る .
第 10 回
また,
「 学 習 の た め の 言 語 」で は ,電 気 製 品 の 名 前
[外 国 語 活 動 Day 7]
な ど ク イ ズ を 通 し て 触 れ る こ と ,さ ら に グ ル ー プ
リハーサル
第 11 回
活動において寸劇を作る際に必要な英語表現を
ALT に 尋 ね る 時 に ”How do you say ~ in English?”
[学 級 活 動 ]
知っている英語をもっと使うように工夫する .
第 12 回
を 導 入 し ,英 語 を 英 語 で 尋 ね る 場 面 を 作 り 出 す こ
[外 国 語 活 動 Day 7]
ととした.
「 学 習 を 通 し て の 言 語 」で は ,絵 本 The
発表,ビデオにとり鑑賞する.
Earth Book の 読 み 聞 か せ を 通 し て 節 電 だ け で は な
く ,児 童 が 身 の 回 り の 環 境 保 全 に 使 用 で き る 言 語
4.4. 本 プロジェクトと CLIL
を 導 入 し た .以 下 絵 本 に 登 場 し た 言 語 材 料 の 一 部
である.
本 研 究 で 行 わ れ る 本 プ ロ ジ ェ ク ト に お い て ,CLIL の
1. Turn off the lights
構成要素の内容を以下とする.
2. RECYCLE!
・ Content… エ ネ ル ギ ー に つ い て 知 る
エ ネ ル ギ ー に つ い て は ,児 童 は 小 学 5 年 生 の 他 教
3. Save my leftovers
科ですでに学んでいる.さらに,本プロジェクト
4. Be nice to the worms
の最中に学級活動においてもエネルギー問題に
5. Share a book
ついて,外国語活動と並行して学習していく .こ
6. Plant a tree
のように,教科横断的に学習することで児童にと
7. Use both sides of the paper
ってエネルギーを身近な問題として内容を深め
8. Save water
ることができると思われる.
9. Clean up trash
・Communication…「 学 習 の 言 語 」で は Elec 君 チ ャ ン
10. Put my underwear in the freezer when it’s hot
ツを本プロジェクトの外国語活動の授業では毎
以 上 の よ う に そ れ ぞ れ の 言 語 を 設 定 し ,エ ネ ル ギ
回 歌 っ た .Elec 君 チ ャ ン ツ は 2 つ の パ ー ト か ら な
ー 問 題 の 解 決 策 の 一 つ で あ る 節 電 対 策 を ,世 界 に
り , 前 半 部 分 は 電 気 で あ る Elec 君 が で き る こ と
向 け て ,英 語 を 使 い ,相 手 に わ か る よ う に 発 信 す
( 主 語 の I は Elec 君 で あ る ) を 歌 っ た も の で あ
る こ と と ,グ ル ー プ で 問 題 解 決 す る( 節 電 方 法 を
り , 後 半 は 主 語 を we と し , 児 童 が 環 境 を 守 る た
考 え 英 語 で 発 表 す る )活 動 の た め に ,必 要 な 英 語
めにできることを歌ったものであ る。
を ALT に 尋 ね た り ,グ ル ー プ 内 の 話 し 合 い を し た
り す る こ と に お い て ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 活 動 を
I am Elec.
活性化をさせることができるようにした.
I eat electricity.
・ Cognition… 節 電 方 法 を 考 え る
I can make cars move.
I can make trains move.
日本の電力事情を知ること,過去の生活と現在の
I can make fridge cool.
生活の方法の違いから電気と自分たちの生活が
I can make micro wave hot.
どれほど関わりが深いかを知ること,また,産出
Please save me!
できる電力量と消費電力のバランスをとるため
には,どのようにしたらいいのかを知ることなど,
Ok we can save you!
節電の方法を考えるまでに ,知的理解と論理的思
We can close curtains.
考が必要となる.これは,児童の発達レベルに考
We can turn lights off.
慮した知的好奇心の持つことができる活動であ
We can close fridge door.
り,児童が自らできる節電とはどんなことであろ
We can save the earth!
うかを考え出すことは,知的創造的活動となると
思われる.
前 半 部 分 は 第 2 回 (Day 1)と 第 3 回 (Day 2),第 6 回
・Culture/Community… 世 界 に 向 け て( 外 国 人 に わ か
(Day 3)か ら 最 終 日 ま で は ,前 半 部 分 に 後 半 部 分 を
るように)発信する
加 え て 歌 っ た .こ の チ ャ ン ツ の 後 半 部 分 は 特 に 児
童がそのまま発表に使用できる言語材料である.
世 界 に 向 け て と い う こ と は ,受 信 者 は 外 国 人 で あ
リズムに載せて歌うチャンツを利用することで,
る こ と が 想 定 さ れ る .受 信 者 に は 日 本 と は 異 な る
児童が本プロジェクトの初回からこれらの言語
文 化 や 環 境 が あ る こ と を ,伝 え る と い う 行 為 を 通
材料に親しむことができることを念頭においた.
して体験的に理解を深める活動となると思われ
18
る.
15. 英 語 で 電 気 が し て い る こ と を 言 え ま す か .
4.5. 方 法 と分 析
16. 英 語 で 節 電 の 方 法 が 3 つ 以 上 言 え ま す か .
質 問 項 目 13~ 16 は ,
「はい」
「 い い え 」の ど ち ら か を 選
本 研 究 で は ,CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 が 児 童 に ど の
択する.
ように影響を及ぼすかを明らかにするために ,毎回の
活動後に振り返りシートを,またプロジェクトの事前
プロジェクト終了後に行う動機づけに関するアン
事後に動機づけと言語に関するアンケートを ,さらに
ケート(自由記述)の項目は以下のとおりである.
プ ロ ジ ェ ク ト 終 了 後 に CLIL の 授 業 を ど う 思 っ た か に
ついての自由記述を児童に記入させ,毎回の活動後に
1.
ALT の 先 生 の 英 語 は 分 か り ま し た か .
振り返りシートに関しては主に質的に分析 ,プロジェ
2.
担任の先生のお話はどうでしたか .
クトの事前事後に動機づけと言語に関するアンケート
3.
授業の中で新しく知ったこと・面白かったこと
に 関 し て は 量 的 に 検 定 し ,プ ロ ジ ェ ク ト 終 了 後 に CLIL
を書きましょう.
( エ ネ ル ギ ー に つ い て ,英 語 に
の授業をどう思ったかの自由記述に関しては質的に分
ついて)
4.
析をした.さらに,最終授業後に児童が口頭にて振り
ましょう.
( エ ネ ル ギ ー に つ い て ,英 語 に つ い て )
返りを,また,担任には個別にお話しを伺った.
4.6.結 果
毎回活動後に行う振り返りシートの質問項目
1.
授業を通してもっと知りたくなったことを書き
今日の外国語活動をどのくらいがんばりました
4.6.1 毎 回 活 動 後 に行 った振 り返 りシート
か
毎回活動後に行った振り返りシートにおいて ,質問
2.
今日の外国語活動は楽しかったですか
項 目 1「 今 日 の 外 国 語 活 動 を ど の く ら い が ん ば り ま し
3.
今日の外国語活動で楽しかったところ,もっと
た か 」 お よ び 質 問 項 目 2「 今 日 の 外 国 語 活 動 は 楽 し か
こうしたかったところはありますか
っ た で す か 」に 関 し て ,1~ 5 点 で 自 己 評 価 し た 結 果 は
今日の外国語活動で気づいたことや分かったこ
以 下 の と お り で あ る .( 表 1)
4.
とはありますか(英語について)
5.
今日の外国語活動で気づいたことや分かったこ
表1 外国語活動に対する児童の自己評価
とはありますか(環境について)
5
質問項目 1 と 2 に関しては,5 件法で,また,質問項
目 3~ 5 は , 自 由 記 述 と し た .
4.5
4
事前事後に行う動機づけに関してのアンケートの
3.5
質問項目
3
1.
エネルギーについてもっと知りたいですか .
2.
英語をもっと習いたいですか.
3.
英語の授業はとてもたのしいです.
4.
地球の環境についてもっと知りたいです .
5.
外国のお友達をたくさん作りたいです .
1
6.
習った英語をもっと使ってみたいです .
0.5
7.
もっと英語の授業があったほうがいいです .
8.
英語の授業中はなんとなくいつも心配です .
9.
英語が上手になって外国の人と話してみたいで
2.5
2
1.5
0
Day 1 Day 2 Day 3 Day 4 Day 5 Day 6 Day 7 Day 8
1. 今日の外国語活動をどのくらい頑張りました
か
す.
10. 外 国 に 住 ん で み た い で す .
2. 今日の外国語活動は楽しかったですか
11. 英 語 を 話 す と き ど き ど き し ま す .
12. 外 国 の こ と を も っ と 知 り た い で す .
質 問 項 目 6~ 17 は 4 件 法 で あ る .
質問項目 1 に関しても 2 に関しても上昇下降を繰り
返しながら,徐々にではあるが上がっていく傾向にあ
事前事後に行う言語に関してのアンケートの質問項目
った.どちらの項目においても,前日より下降してい
13. 英 語 で あ い さ つ は で き ま す か .
る の は , Day 3, Day 5, Day7 で あ る .
14. 英 語 で 自 己 紹 介 は で き ま す か
質 問 項 目 3「 今 日 の 外 国 語 活 動 で 楽 し か っ た と こ ろ ,
19
もっとこうしたかったところはありますか楽しかった
下 の と お り で あ る .( 表 2)
ところ,もっとこうしたかったところはありますか」
表2 言語に関するアンケート結果
に関して,
1.
活動自体が面白かった
13英語であいさつはできま
すか
「 電 気 を 使 用 し て い る も の を 探 す 」「 電 気 に 関 す る
ク イ ズ 」「 劇 を 作 っ た 」
2.
活動で導入した英語が分かった,言えた
14英語で自己紹介はでき
ますか
「 ALT の 先 生 が 言 っ て い る こ と が わ か っ た 」「 活 動
で 聞 い た こ と ば を 使 い た い 」「 活 動 で 聞 い た こ と ば
15英語で電気がしているこ
とを言えますか
を使えた」
「劇にわかったことばを使った」
「絵本の
ことばを使いたい」
3.
班活動をうまくしたい
4.
発音が分かった
5.
英語で尋ね方がわかった
16英語で節電の方法が3つ
以上言えますか
0% 20% 40% 60% 80% 100%
など毎回の活動内容に言及しているものが多く,1
事前
や 2 に 関 す る 記 述 は 外 国 語 活 動 Day 1~3 に 多 く , 3~5
に 関 し て は Day4~7 に 多 か っ た .
事後
質 問 項 目 15「 英 語 で 電 気 が し て い る こ と が 言 え ま す か 」
質 問 項 目 4「 今 日 の 外 国 語 活 動 で 気 づ い た こ と や 分
と 質 問 項 目 16「 英 語 で 節 電 の 方 法 が 3 つ 以 上 言 え ま す
か っ た こ と は あ り ま す か ( 英 語 に つ い て )」 に 関 し て ,
か 」 に 関 し て 有 意 差 が あ っ た . 質 問 15: t(14) = 9.54, p
1.
電化製品の名前が分かった
= .00, 質 問 項 目 16: t(14) = 4.58, p = .00. さ ら に , プ
2.
節電の方法を英語で言うのが分かった
ロジェクトのターゲットとは直接関係ない英語での自
3.
必要な英語の言い方が分かった
己 紹 介 に 関 し て の 質 問 項 目 14「 英 語 で 自 己 紹 介 が で き
4.
英語らしく言う言い方が分かった
ますか」に関しては,有意差は出なかったが,事後に
5.
知っている英語があることがわかった
参加者全員が「はい」と答えていることが興味深い .
な ど 1~2 の よ う に 導 入 し た 英 語 の 表 現 に 言 及 し て い る
記 述 は ,Day1~3 に 多 く あ り ,3~5 の よ う に 発 信 に 必 要
4.6.3 プ ロ ジ ェ ク ト 終 了 後 に 行 う 動 機 づ け に 関
な 英 語 の 言 い 方 な ど に 言 及 し て い る も の は ,Day4~7 に
してのアンケート
多くあった.
プロジェクト終了後に行われた動機づけに関する
質 問 項 目 5「 今 日 の 外 国 語 活 動 で 気 づ い た こ と や 分
ア ン ケ ー ト に お い て , 質 問 項 目 1「 ALT の 先 生 の 英 語
か っ た こ と は あ り ま す か ( 環 境 に つ い て )」 に 関 し て ,
は分かりましたか」に関して,
1. 生 活 の 中 で ほ と ん ど が 電 気 を 使 っ て い る
•
分かった(9 人)
2. い ろ い ろ な 発 電 の い い 方 が 分 か っ た
•
何となくわかる(2 人)
3. 小 さ な こ と で 地 球 が 守 れ る こ と
•
分かるときとわからないときがある( 3 人)
4. 一 年 で 一 番 使 う 電 化 製 品 が エ ア コ ン と 言 う の
•
少し難しい(1 人)
がわかってびっくりした
など,半数以上の児童がわかったと答えているもの
5. 1 つ の 家 で 5000 個 も 電 池 を 使 っ て い る の が 驚
の,わかったとは言い切れない児童も 4 割近くいた.
いた
質 問 項 目 2「 担 任 の 先 生 の お 話 は ど う で し た か 」 に
6. 節 電 の 方 法 に は た く さ ん あ る と 分 か っ た
関して,
など,毎回の活動内容に関して言及しているものが
•
多 く , こ れ ら の 記 述 は Day 1~3 に 集 中 し て い た .
分かりやすかった(6 人)
「環境と節電の関係などでわかりやすかった」
•
4.6.2 動 機 づ け と 言 語 に 関 し て の ア ン ケ ー ト
勉強になった参考になった(7 人)
「先生のアドバイスを参考にした」
プロジェクトの事前事後に行われた動機づけに関
「先生の話はとても参考になった」
す る ア ン ケ ー ト を 検 定 し た 結 果 , 質 問 項 目 4「 地 球 の
•
環境についてもっと知りたいです」においてのみ有意
特にない(1 人)
など,ほとんどの児童が興味関心を持って聞いてい
差 が あ っ た , t(15) = 1.39, p = .28. 一 方 , 他 の 項 目 に は
たと思われる.
有意差が見られなかった.
質 問 項 目 3「 授 業 の 中 で 新 し く 知 っ た こ と ・ 面 白 か
また,言語に関するアンケートを検定した結果は以
ったことを書きましょう.
( エ ネ ル ギ ー に つ い て ,英 語
20
に つ い て )」 に 関 し て ,
•
•
節 電 の 方 法( 内 容 )を 知 っ て( お も し ろ か っ た )
て自分の知っている単語でも通じることがわ
(7 人)
かった
「いろいろな節電方法が分かった」
•
「節電と環境の関係」
•
•
•
知 ら な い 単 語 が た く さ ん あ っ た が ,動 き を 入 れ
自分が知っていることばでも普段あまり使わ
なかったことばを使うようになった
節電の言い方が分かった(4 人)
•
はじめは節電の方法など自信がなく小さい声
「英語で節電の方法が3つ以上言えるようにな
で 話 し て い た が ,そ う い う 言 葉 も 自 信 を も っ て
った」
はっきり言えるようになった
「節電方法を英語で言えるようになった」
児 童 た ち は ,Day1 か ら 発 表 で あ る Day 8 ま で の 過 程 を
劇をしたこと(3 人)
振り返り,自分の成長を認めていると思われる言及が
「班で調べたことを劇で発表したこと」
多かった.
英語の特徴イントネーション(2 人)
最終授業後,担任教員は以下のように述べていた.
「イントネーションについて」
「子どもたちが発するコミュニケーションの欲求
など,プロジェクトで学習した内容についての記述
や表現のエネルギーがとても高まって来たようなこと
が多かったが,劇をしたことなどプロジェクトで用い
を感じます.以前は,とても受身な感じがあったんで
た手法や,英語のイントネーションなど言語に関する
すが,それが自分が考えたことを発するということが
ことを言及している児童もいた.
すごくいい経験になったようです.子どもたちのこと
質 問 項 目 4「 授 業 を 通 し て も っ と 知 り た く な っ た こ
ば に な っ て き た の が 大 き い .最 初 は ALT の 先 生 に 聞 い
とを書きましょう.
( エ ネ ル ギ ー に つ い て ,英 語 に つ い
てそれを出すだけだったのが,劇をやっていくうちに
て )」 に 関 し て ,
自 分 た ち の こ と ば に な っ て い っ た .」
•
•
他の発電方法(2 人)
児 童 同 様 担 任 教 員 も Day1 か ら の 過 程 の 中 で , 児 童
「冷蔵庫のことだけじゃなく他を習いたい」
のプロジェクトに対する関心や参加の具合の変化に言
節電方法(4 人)
及していた.
「他の節約方法について知りたい」
•
•
な お , 第 12 回 [外 国 語 活 動 Day 7]に 行 っ た 児 童 の 発
「他にどんな節電方法があるのかと言うこと」
表 に 用 い た 言 語 材 料 は ,状 況 を 説 明 す る セ リ フ( I’m hot.
他の環境のためにできること,エネルギーのこ
I turn up the air conditioner)の 後 に ,電 気 で あ る Elec 君
と(2 人)
が登場し苦しむ場面,そして主張したいセリフとなっ
「他に環境のためにできること」
ていた.主張したセリフは,以下のとおりであった.
「エネルギーは何年後なくなるのかなど」
 Clean TV display.
方法の言い方(5 人)
 Don’t put too much food into fridge.
「他の節電方法や環境問題,環境問題の様々な
 Shut down window when you turn on the air
問題を英語で言うこと」
conditioner.
「英語で節電の方法をもアッと言えるようにな
 Don’t put things on fridge.
りたい」
 Dish washer use electricity. Wash dish by hand.
など,プロジェクトで学習した内容に関することや ,
 Don’t open the fridge too many times.
そこから発展したことが多く記述されていたが ,一方
 Set the air conditioner to 30 degrees.
英語に関しても関心を寄せている児童もいた .
 Hot food use much electricity. Let it cool down.
 We can save the earth.
4.6.4 最 終 授 業 後 の 児 童 振 り 返 り
5.考 察
最終授業後の児童が共有した振り返りは以下のよ
うであった.
5.1.児 童 は CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 を ど の よ
•
緊張した
•
はじめは調べたことをすごく長い文で言って
リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン 1「 児 童 は CLIL を 用 い た 外 国
い た が ,日 本 語 で 短 く し て 考 え て ,英 語 で 短 く
語活動をどのように思ったであろうか」に関して調査
したのが良かった
するために,まず,毎回の活動後に児童が記入した振
練習の時は声が小さくあまり聞こえなかった
り 返 り シ ー ト を 分 析 し た . 質 問 項 目 1「 今 日 の 外 国 語
の が ,本 番 で は 声 が 大 き く て と て も わ か り や す
活 動 を ど の く ら い 頑 張 り ま し た か 」 と 質 問 項 目 2「 今
かった
日の外国語活動は楽しかったですか」において ,だん
•
うに思ったであろうか
21
だ ん と 上 が っ て い く 傾 向 が み ら れ た が ,Day 3「 節 電 の
本プロジェクトととらえていたといえるのではないだ
た め に で き る こ と を 考 え 英 語 を 知 る 」, Day 5「 寸 劇 を
ろうか.
作 る 」, Day 7「 リ ハ ー サ ル 」 で は , そ れ ぞ れ の 前 回 か
ら 比 べ る と ,下 が る 傾 向 に あ る .こ れ は ,Day 3, Day 5,
5.2.CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 は 児 童 の 外 国 語
Day 7 に お け る 活 動 が , 他 に 比 べ る と 児 童 が 考 え る 作
活動の動機づけをあげるであろうか
業が多く,認知的負荷がかったためと思われる.つま
リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン 2「 CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動
り , 認 知 的 負 荷 が 重 い 作 業 の 時 に は 「 頑 張 っ た 」,「 楽
は児童の外国語活動の動機づけをあげるであろうか」
しかった」という実感がなかなか得ることができない
を調査するために,本プロジェクトの事前事後におい
からではないだろうか.
て動機づけに関するアンケートを行い ,それぞれにお
ま た , 振 り 返 り シ ー ト の 質 問 項 目 3「 今 日 の 外 国 語
い て 対 応 の あ る t 検 定 を 行 な っ た 結 果 ,質 問 項 目 4「 地
活動で楽しかったところ,もっとこうしたかったとこ
球の環境についてもっと知りたいです」においてのみ
ろはありますか楽しかったところ,もっとこうしたか
有 意 差 が あ っ た .よ っ て ,CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 の
っ た と こ ろ は あ り ま す か 」で は ,
「電気に関するクイズ」
本プロジェクトは,児童の外国語活動の動機づけをあ
「劇を作った」など活動で導入した英語表現や事柄に
げたとは言いきれない.しかしながら,本プロジェク
ついての記述や,導入した英語がわかった・言えたな
トの参加者である児童たちの中には,海外赴任や海外
ど英語自体への気づきや体験した喜び,また,班活動
出張を頻繁にしている家族を持つ者や,長期休暇に外
の運営に関するものなど毎回の活動内容に沿っての記
国に旅行する者も多く,もともと英語学習の動機づけ
述 が 多 い .さ ら に ,記 述 を 分 類 す る と ,
「活動自体が面
が高いことなどが考えられる.よって,本プロジェク
白 か っ た 記 述 」 は CLIL の 構 成 要 素 で あ る Content,
トのテーマである環境に関しての質問である質問項目
Cognition を ,「 活 動 で 導 入 し た 英 語 に つ い て の 記 述 」
4 以外には事前事後において大きな差が出なかったの
は Language を ,「 班 活 動 に つ い て の 記 述 」 は
ではないだろうか.一方,質問項目 4 に関しては有意
Communication を 表 し て お り , CLIL の 構 成 要 素 の す
差があり,また,プロジェクト終了後に行った動機づ
べてにおいて児童が振り返っていたことがわかる.ま
け に 関 し て の ア ン ケ ー ト 質 問 項 目 4「 授 業 を 通 し て も
た,その中では児童が楽しんでいることがうかがわれ
っと知りたくなったことを書きましょう .
(エネルギー
る.
に つ い て , 英 語 に つ い て )」 に お い て ,「 他 に ど ん な 節
質 問 項 目 4「 今 日 の 外 国 語 活 動 で 気 づ い た こ と や 分
電 方 法 が あ る の か 」な ど 他 の 節 電 方 法 に つ い て や ,
「他
か っ た こ と は あ り ま す か( 英 語 に つ い て )」で は ,活 動
に環境のためにできること」
「エネルギーは何年後なく
で 導 入 し た 英 語 の 表 現 に 言 及 し て い る 記 述 は Day 1~3
なるのかなど」など環境問題の将来について知りたい
に多く,英語に触れそれを学習することが興味を引い
と思っていることがわかった.また,学習言語である
て い る こ と が わ か る .ま た ,
「英語らしく言う言い方が
英語に関しても「他の節電方法や環境問題 ,環境問題
分かった」など発信に必要な言い方などに言及してい
の様々な問題を英語で言うこと」
「英語で節電の方法を
る も の は ,Day4~7 に 多 く ,お お む ね 児 童 は 毎 回 の 活 動
もっと言えるようになりたい」など英語を使用して環
に関して記述していることがわかった .さらに,質問
境についてや節電についてなど本プロジェクトで扱っ
項 目 5「 今 日 の 外 国 語 活 動 で 気 づ い た こ と や 分 か っ た
た内容を伝えたいと思っていることがわかった .
こ と は あ り ま す か( 環 境 に つ い て )」に お い て は ,毎 回
以上のことから,量的分析では本プロジェクトの学
の活動で扱った内容に関することが多く ,特に導入部
習によって児童の動機づけが上がったということは 言
分 に 当 た る Day 1~3 に 多 く 記 入 が あ っ た .
い切れないが,児童のアンケートにある記述から質的
さらに,最終授業後に行われた児童振り返りから,
に分析するともっと知りたい・もっと言いたいという
内容を考える際に工夫したこと,発表するにあたり英
学習意欲が上がり,本プロジェクトが動機づけにつな
語ではどのようにいうべきかを考えたこと ,発表する
がっているように見受けられる.
際 の 態 度 な ど Day1 か ら 発 表 で あ る Day 8 ま で の 過 程
を振り返り,活動の内容・言語・表現すべてにおいて
5.3.CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 は 児 童 の 内 容 に
振り返り,自分の成長を認めていると思われる言及が
関する言語を増やすであろうか
多かった.
リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン 3「 CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動
以 上 の こ と か ら ,CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 の 本 プ ロ
は児童の内容に関する言語を増やすであろうか」を調
ジェクトを通して,児童は内容・言語・協同学習につ
査するために,本プロジェクトの事前事後において言
い て 自 ら 自 主 的 に 振 り 返 り ,多 く の 児 童 が「 わ か っ た 」
語に関するアンケートを行い,それぞれにおいて対応
「言えた」
「 伝 え ら れ た 」な ど の 表 現 を 用 い て 肯 定 的 に
の あ る t 検 定 を 行 な っ た 結 果 ,質 問 項 目 15「 英 語 で 電
22
気 が し て い る こ と を 言 え ま す か 」 お よ び 質 問 項 目 16
「英語で節電の方法が3つ以上言えますか」に関して
6. ま と め
有 意 差 が 見 ら れ た .質 問 15:t(14) = 9.54, p = .00,質 問
本研究において,学級活動との連携をとりながら
項 目 16: t(14) = 4.58, p = .00. こ れ は ,「 学 習 の 言 語 」
CLIL を 取 り 入 れ た 小 学 校 外 国 語 活 動 を 児 童 が ど の よ
および「学習のための言語」を言えるようになったと
うに思うのか,それが児童の外国語活動における動機
いうことであり,言語学習にも本プロジェクトの効果
づけが上がるのか,また,それが児童の内容に関する
があったということになる.これは,毎回の活動後の
語彙を増やすのかを調査した。その結果, 毎回の活動
振り返りシートの児童の記述にも「電化製品の名前が
後の児童の振り返りには,言語・内容・協同学習 など
分かった」
「節電の方法を英語で言うのが分かった」
「知
に つ い て 記 述 さ れ て お り ,「 わ か っ た 」,「 楽 し か っ た 」
っている英語があることがわかった」とあること ,さ
と言及されていたものが多かった.また,外国語学習
らに,プロジェクト終了後に行う動機づけに関しての
について「もっと学びたい」と,言語においては内容
ア ン ケ ー ト の う ち 質 問 項 目 1「 ALT の 先 生 の 英 語 は 分
に関する言語をわかったとの記述があった.さらに,
か り ま し た か 」で は ,約 7 割 の 生 徒 が「 わ か っ た 」
「な
授業者である担任教員も児童が本活動を通して積極的
んとなくわかる」と記述していることからもうかがえ
に英語学習と取り組もうとしている児童の姿を語って
る.
おり,児童と合わせて本活動に満足しているようであ
さらに,有意差は見られなかったがプロジェクトの
っ た .CLIL を 取 り 入 れ た 外 国 語 活 動 で は ,担 任 教 員 な
ターゲットとは直接関係ない英語での自己紹介に関し
らではの発想を取り入れ児童のみならず担任教員が活
て の 質 問 項 目 14「 英 語 で 自 己 紹 介 が で き ま す か 」に 関
躍できる場を作ることが多くできる.このことから,
しては,有意差は出なかったものの事後において参加
CLIL の 授 業 で は 授 業 に 参 加 し て い る 全 員 で 活 動 を 作
者全員が「はい」と答えていることから ,本プロジェ
り上げることができ,より一層の効果が上がるのでは
クトを終えたときに,目標言語項目のみでなく,既習
ないかと思われる.今後も様々な教科とコラボレーシ
の表現に関しても自信を持って相手にいうことができ
ョンし,児童の思考を深めることができる外国語活動
るようになったと思っている児童がほぼ全員になった
の可能性を探りたいと思う.
と い う こ と で あ る .こ れ は ,大 変 興 味 深 い 結 果 で あ る .
内容を重視し,学習言語も,学習者に必要なものを優
文
献
[1] 谷 口 和 成 ・ 大 西 洋 悦 , “ ク ロ ス カ リ キ ュ ラ ム に 基
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[10] 執 行 智 子 , “ 第 5 章 実 践 例 5.2.3 東 京 都 新 宿 区 戸
先的に提供しているにも関わらず,英語で自分自身の
ことが言うことができると思えるようになったという
こ と は ,CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 が 児 童 の 英 語 に 対 す
る自信を高めているということになるのではないだろ
うか.
ま た ,最 終 授 業 後 の 振 り 返 り に お い て ,児 童 た ち は ,
「 知 っ て い る 単 語 で 通 じ る 」「 知 っ て い る 言 葉 を 使 う 」
な ど ,CLIL を 用 い た 外 国 語 活 動 で ,児 童 た ち は こ れ ま
で学習してきた英語を違う文脈で活用できることにも
気づいたといえよう.最終授業後の担任教員へのイン
タ ビ ュ ー に お い て ,担 任 教 員 は ,
「コミュニケーション
の 欲 求 」「 表 現 の エ ネ ル ギ ー 」「 自 分 の 考 え た こ と を 発
する」
「 子 ど も た ち の こ と ば に な っ て き た 」な ど と い う
言葉を用いながら,本プロジェクトを通して児童たち
が,自分たちのことばを模索していく過程を生き生き
と語っていた.これは,本プロジェクトにおいて,児
童のみならず担任教員が真剣にことばと向き合い ,児
童と向き合ってきたからである.小学校では全教科を
担 任 教 員 が 教 え て い る の で 教 科 横 断 型 の CLIL の 導 入
は大変受け入れやすく,馴染みやすいことから,児童
と担任教員が深くかかわりあえたのであろう.だから
こそ,児童も担任教員もプロジェクト終了後には満足
感が得られたのではないだろうか.
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塚 第 一 小 学 校 ― ― HRT が 主 導 と な る 外 国 語( 英 語 )
活 動 を 目 指 し て ,” 生 き る 力 を 育 む 消 灯 英 語 教 育
――津田塾大学からの提言, 吉田真理子・田近裕
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