(科学実験9) 色のふしぎを調べよう 光の三原色 <目 1.ねらい<目的と概要> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2.材料集めの情報やヒント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 3.製作と実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 3-1.材料・部品 3-2.太陽電池回転盤の製作 3-3.実験 4.安全対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 5.科学する心を育てるための具体的なヒント ・・・・・・・2 5-1.太陽電池 5-2.色の説明と実験 3-3.回転円盤 次> 6.この教材を用いることのできる子どものレベル ・・・・4 7.この教材を用いることのできる活動団体の経験年数 ・・・・・5 8.関連項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 8-1.学習指導要領との関連 8-2.活動総覧(活動マップ) 8-3.教材系統図(カリキュラムマップ) 8-4.キーワード 9.補足資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 9-1.宇宙と気象に関する色 9-2.参考文献 本教材は宇宙とのつながりを軸として科学を身近に感じてもらうために作った 科学教材です。本教材の利用による事故等については一切責任を持ちかねます ので、本教材の利用は、経験のある指導者の指導の下に行って下さい。 2007年(平成19年)2月28日 「宇宙教育のためのリーダー育成」委員会 色のふしぎを調べよう - 光の三原色 - 1.ねらい<目的と概要> 太陽エネルギーは、私たちが生活している地球上に様々な現象や効果をもたらしています。その エネルギーを利用し、太陽電池によってモーターを回転させて、「光の三原色」や「色の三原色」 を実験を通して学びます。 2.材料集めの情報やヒント 発泡スチロールレンガは 100 円ショップなどで手に入ります。プーリー付モーターが手に入らな い場合は、プラスチックギヤ等を利用しその間にパステルカラーボードを挟めるなどの工夫をしま しょう。 3.製作と実験 3-1.材料・部品 1)材料 発泡スチロールレンガ、太陽電池、プーリー付モーター、リード線、パステルカラーボード (5×5cm)、白熱電球、画用紙 2)工作用具 ニッパー、コード付ソケット、折り紙、クレヨン、はさみ、のり、定規、セロテープ、カッ ター、分度器、カッティングマット、ハンダごて、ハンダ、ハンダごて置き、キリ、両面テ ープ 3-2.太陽電池回転盤の製作 図1を参考に製作しましょう。 1)パステルカラーボードから半径4~5cmくらいの円盤を、カッターで切りぬく。 2)円盤にあわせて、色々な色の折り紙をたくさん切り抜き、図2のような模様にのりで貼る。 3)発泡スチロールレンガに太陽電池とモーターを、両面テープやセロテープで貼り付ける。こ の際モーターの形状に合わせて、発泡スチロールをカッターでくり抜いて 4)プーリーをモーターにつけ、折り紙を貼った円盤に両面テープで貼る。 5)ハンダを使ってリード線を太陽電池とモーターにつなぐ。ハンダを使う時は熱くてやけどを するので、また、けむりは吸わないように指示に従って注意してリード線をつなごう。 3-3.実験 1)白熱電球を太陽電池に近づけて円盤を回してみる。 2)回転円盤はどのような色にみえるか観察する。 1 電球 パステルカラーボード 太陽電池 発泡スチロールレンガ モーター 図1 赤 青 赤 桃 紫 黄 図2 4.安全対策(子どもに危険を予知させる指導を含む) 今回の製作は屋内で実施することを前提にしていますが、直射日光が室内に入る場合は、太陽電 池は光を当てると電流が流れるので、何かの金属に触れ、端子同士がショートしないようにするか、 利用しない時と同様パネルの上を遮光して下さい。また、太陽電池には極性がありますので、直列 に接続し規定以上の電流を流すと危険ですので注意して下さい。 白熱電球は、裸電球を使用する場合やけどをする危険性があります。特に実験中、球切れによる 交換の際は、軍手を着用するなどしてから交換して下さい。 5.科学する心を育てるための具体的なヒント 5-1.太陽電池 太陽の光は水や地面を暖めることができるように、エネルギーを持っています。だから太陽 の光のエネルギーを使って電流を流して、モーターを回せるのです。太陽の光のエネルギーを電 流のエネルギーに変えるには、太陽電池を使います。太陽電池は、ラジオやテレビや電気器具の 回路を作っている半導体と同じように、一種の半導体です。材料はまわりにたくさんある石の元 素のシリコンです。純粋なシリコンに、ごく少量の不純物を加えて、「N型シリコン」と「P型 シリコン」という2種類の半導体を作り、この2枚をくっつけたのが太陽電池です。この太陽電 池に太陽の光をあてると、図3のように、電流が流れてモーターが回ります。 2 図の中で ● ● と示されたのがホールで、 ● と示されたのが、電子と呼ばれる正の電気を もった粒子です。光のエネルギーが吸収されると電子とホールがペアで生成され、ホールは P 型 に、電子は N 型に分かれてゆきます。太陽電池の中では、これらの粒子が動き回っています。 図3 5-2.色の説明と実験 1)光の三原色 太陽からの白色光は、実際にはすべての可視光線が合成されたものです。この事は太陽光を プリズムを通して観察すると、虹色が見られることでわかります。太陽光線は単純化すると、 三つの領域に分割されます。実験してみせるとよいでしょう。 (a)日光のスペクトル分布 (b)(a)を単純化したもの (c)(b)を3つの領域に分割した もの 赤 緑 青 図4 このように、すべての可視光線の振動数を混合すると白色が生じるのです。面白いことに、 白色は赤色、緑色、青色の光の混合、また黄色、青色の光の混合からも得られます。赤色、緑 色、青色の光を「光の三原色」と言います。 図5 日光の単純化された放射曲線のそれぞれの領域は赤、緑、青の各色に見える。 これらの色は加法3原色と呼ばれる(加法混色)。 3 赤、緑、青をいろいろな割合で加え合わせることによって、私たちはどんな色でも作り出せ ます。 カラーテレビのブラウン管上をよく調べると、その絵がどれも 1mm以下の微細な点の集まり からできていることがわかります。点は赤と緑と青でできています。この光の三原則が重なっ て私たちの目は色を感じるのです。 2)色の三原色 「色の三原色」はまた違います。例えば赤、緑、青のペンキを混ぜると白くならず、泥のよ うなこげ茶色になります。クレヨンでやってみましょう。赤と緑のペンキを混ぜたものは、光 のように黄色にならないことも知ります。赤と緑を混ぜると茶色になることは次のように説明 されます。赤と緑の顔料は、細かく砕かれた固体粒子からなっているのですが、いずれも青の 光を吸収してしまいます。赤の光は緑に吸収されますし、緑の光は赤に吸収されます。赤い顔 料は赤い色を反射し、緑の顔料は緑を反射し、青い顔料は青い色を反射しますが、赤と緑を混 ぜ合わせると、全ての色が吸収されて黒くなるからです。実際には吸収は 100%までいかない ので、黒というよりは茶色に見えるのです。 次にシアン(青緑色)と黄色を混ぜ合わせてみましょう。この時、緑色だけが反射されて緑 に見えます。 次にマゼンダ(赤紫色)と黄色を混ぜてみましょう。赤色だけが反射されるので、赤色に見 えます。 「色の三原色」は、マゼンダ(赤紫色)、黄色、シアン(青緑色)であることが多いようで す(減法混色)。 黄色 マゼンダ シアン 図6 赤紫 (真紅) 赤 赤 深紅 青紫 黄 黒 白 青紫 青緑 黄 緑 青緑 加法混色 緑 減法混色 4 3)回転円盤 回転円盤の場合は、光の反射の状態で色々な色が見えます。テレビのブラウン管では、赤と 緑と青の点が同じくらいの強さだと白く見えます。クレヨンでは、赤と緑と青を混ぜると黒か ら茶色に見えます。回転円盤では、少し明るい灰色から薄茶色に見えます。実は回転円盤では 網膜上で「光の三原色」が重なって、本来白く見えるのですけれど、赤のところで青と緑の光 が吸収され、青のところで赤と緑の光が吸収され、緑のところで赤と青が吸収され、完全に白 色光が反射するよりは暗くなって、結果的に灰~茶色に見えるのです。基本的には「光の三原 色」と同じ仕組みですが、吸収も考えるので、「色の三原色」の仕組みも入っているのです。 これらの違いがわかりますか?考えてみて下さい。 6.この教材を用いることのできる子どものレベル 太陽電池の仕組みにおいて、半導体を理解することは高校生レベルでなければ難しいのですが、 製作や実験は小学校高学年からでも十分に可能なことです。実験に重点を置き、太陽エネルギーが 何であるかがわかります。 7.この教材を用いることができる活動団体の経験年数 経験は問いません。 8.関連項目 8-1.学習指導要領との関連 小学校編:理科のB区分「光の性質・ものづくり」 図画工作の内容A「表現」 中学校編:理科の第1分野(1 )「身近な物理現象」 8-2.活動総覧(活動マップ): 「天体・銀河系」 8-3.教材系統図(カリキュラムマップ): 「科学工作・科学実験」 8-4.キーワード:色の三原色、光の三原色、太陽電池回転盤、回転円盤 9.補足資料 9-1.宇宙と気象に関する色 ここで宇宙と気象に関する色の話をしましょう。空はなぜ青いのか。雲はなぜ白いのか。日 没はなぜ赤いのかを関連してお話します。 大気中の窒素と酸素の分子は紫と青の光を強く散乱します。従って太陽の光の中にあった紫 と青の光は大気中で散乱されて、大気中をあちこち広がるので、空のいたるところで青くみえ るのです。紫の色は私たちはあまり見えないので、結果的に空は青になります。 空気中に無数のチリ・雨粒や埃が含まれていると、赤や橙色の光も散乱されて、赤、緑、青 の光が重なって空や雲が白っぽくみえるのです。光の三原色が重なったからですね。これらの 微粒子が雨によって大気中から除かれると紺碧の青空が現れるのです。 朝方や夕方には、太陽の光は長い距離大気中を進むので、青い光は散乱されてしまい、赤い 色の光が残り、朝焼けや夕焼けの赤い太陽が出現するのです。その時の空の赤さは、大気中の 雲粒や微粒子により、太陽の赤い光が散乱されて出現するのです。 5 オーロラの光は、酸素原子による緑色と赤色の発光、窒素分子による赤色の発光、電離した 窒素分子による青色の発光が重なっています。特に酸素分子による緑色が強く「オーロラグリ ーン」と呼ばれています。でも実際に見ると白っぽい緑色という感じです。明るさは激しく変 わりますが、ほぼ地表の照度にして 0.1 ルクス程度で、満月の明るさぐらいです。オーロラも 様々な変動と動きをしていることがわかります。 日本では磁気圏の観測をするために「あけぼの」や「ジオテイル」を開発し活躍しています。 【青空と夕焼け】 地球 大気の層 大気の層は、図をわかりやすく するために層の厚さを約 10 倍に 協調しています 9-2.参考文献 1)「電磁気学Ⅰ」太田浩一著:丸善発行、2001 年 青空については、「1.1.空の青,海の青」(pp.1-7)に詳しい。 教材提供 :日本宇宙少年団北海道地区連絡協議会 池田眞氏 追記、編集:「宇宙教育のためのリーダー育成」委員会 教材開発グループ お問合せ先:財団法人日本宇宙少年団 TEL.03-5542-3254 FAX.03-3551-4870 e-mail kyozai@yac-j.or.jp 発行 :宇宙航空研究開発機構 宇宙教育センター ©JAXA 無断転載を禁じます 6
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