近藤昭夫氏を悼む 池 田 博 明 近藤昭夫博士は 1997 年 7 月 22 日,逝去されました.御病気はガンでした. 近藤先生は日本蜘蛛学会の事務局・庶務幹事を務められました.私は一緒に会計幹事を務めさ せていただきました.先生が学ばれた神奈川県立小田原高等学校は私の住む神奈川県西部の名門 校です.日本蜘蛛学会大会の懇談の折りに,先生が小田原高校時代に斎藤三郎氏の『日本動物分 類』を図のひとつひとつまで書写されたというお話を伺ったことがあります.当時は今のような コピー機などは無かったのです.氏が高校生の頃から蜘蛛になみなみならぬ関心を持たれていた ことが分かります.氏はこの事を Atypus 最終号にも書いておられます. 大学で近藤 先生が担当 されていた という組織 学や発生学 は生物学の なかではも っとも基本 的 で重要な学問です.しかし,実習を伴わない組織学は無味乾燥で学生にとっては退屈きわまりな いものです.一方,実習しながら学ぶ組織学ほど生物の奥深さを理解できるものは他にはありま せん.近藤先生も実習中心で教育されたそうです.もっとも学生には組織学実習の重要性の自覚 がないようです.私の場合には組織学実習を大学2年のときに経験し,その重要性を理解できた のは大学3年のときでした.岡田節人著『細胞の社会』を映画サークルの友人たちに薦めたとこ ろ(映画とはなんの関係もないのに映画を見るより良い大傑作と宣伝していたのです),読んだ 人みんながそんなに面白くないというのです.自分の印象との落差はいったいなぜかを考えてみ て,思い当たったのが組織学実習の経験の有無でした.生物学科出身者だとはいえ必ずしも組織 学実習の経験があるとは限りません.まして一般の人はなおさらです.ふつうの人には人間の体 を作る細胞に多様な形態があることや,細胞それぞれに個性があることがイメージできないので す.生物を真に理解するにはこの多様性を面白がる必要があると私は思いました.器官の,組織 の,細胞の,分子の,それぞれのレベルでの多様性です.いま高等学校で生物を教えていて常に 念頭にあるのはこのことです. 先生は,私が小田原城内高校へ勤務していたころ,来校されたことがあります.東邦大学理学 部生物学科の宣伝に立ち寄られたのです.学校事務で御多忙の様子でした.東邦大学の生物学科 にはその後卒業生が数名入学してお世話になりました.談話会会員にも日本蜘蛛学会会員にも東 邦大出身の方がたくさんいらっしゃいます. 私が談話会の通信を編集していたころは例会のたびに近況を書いた連絡葉書を送られました. 欠席の通知なのですが,ていねいな近況を寄せていただきました. 近藤先生の研究について私に云々する資格はありませんが,近年は学会発表されただけで未完 のままだったものが多いように思われます.病院に入院された折り,見舞いに来た学生に対して, そんな時間があったら研究するように教えられたという話を葬儀の際に聞きました.研究こそも っとも重要だというのが大学生に対する先生の遺言であったろうと思います. 小田原市の キリスト教 会の牧師に より洗礼を 受けられた のは亡くな る数日前で あったそう で す.先生は神の子となられました. 1 錦三郎氏を悼む 池 田 博 明 錦三郎氏は 1997 年 5 月 8 日,逝去されました. 私は錦先生と同郷の山形県の出身です.私が自分で購入した最初のクモの本は三省堂新書の1 冊として先生がお書きになった『雪迎え』でした.当時の三省堂新書は『雪迎え』だけでなく, 歌人斎藤茂吉の伝記『人間茂吉』や,戦死した童謡「ないしょ話」の詩人,結城よしをの伝記『月 と兵隊と童謡』など山形県ゆかりの人々を次々 に取上げていたのです.70 年代という時代の 特 徴でしょうか ,高校生の 自主活動や 問題意識を 積極的に取 上げた高校 生通信の記 事をまとめ た 『考える高校生』なども出版されました. 当時の私にはクモよりも,柳田国男の民俗学に興味がありました.生物的なことよりも赤湯町 (現在の南陽市)の「雪迎え」という詩情豊かなことばが魅力でした.先生が観察のフィールドと された白竜湖(はくりゅうこ)は奥羽本線を米沢市の方から北上すると右手下方に見えてきます. 小学校の遠足の折りにガイドさんから大きな田下駄のことを説明されたような記憶があります. 私としてはずいぶん昔から先生を存じあげていたにもかかわらず,蜘蛛学会にも入会していな かったため,実際に錦先生にお会いしたのは日本蜘蛛学会大会 50 周年記念大会の折りでした. その後,山形市で日本蜘蛛学会の大会が開かれた折りには大会事務局として仕事をされた吉田哉 氏と先生との反省会に同郷のよしみで同席させていただいたりしました. ハエトリグモの分類に手をつけ始めて,マミジロハエトリグモ属について日本蜘蛛学会大会で 発表したとき,錦先生から大変な宿題をいただきました.その昔,錦先生が採集されたなかに未 知の Marpissa 属のハエトリがあるがそれが何かを解明して欲しいというのです.ところが錦先 生の手許にその標本は残っていません.故八木沼健夫先生の標本にあるはずだというのでした. 錦先生自筆のオスの体と触肢のスケッチ(コピー)を送って下さいましたが,なんともはっきり しません.私は「標本を見ないと分かりません」とお答えしましたが,錦先生は私の言葉を「標 本さえ見れば分かる」と理解されたらしく,山形新聞にそのクモを採集されたときの想い出を執 筆され,もうすぐ正体が分かるだろう,楽しみであると結ばれたのです.私は困ってしまいまし た.肝心の標本を見ることができないので,ご期待にそえないのです.同じ所で同様のクモを採 るしかないかもしれません.山形県には羽黒町にキツネハエトリという疑問種もいるのです. そんなわけでお答えできないでいるうちに,錦先生は逝ってしまわれました.温厚な先生のこ とですから,急がずにゆっくり研究して下さいと言っておられるような気が致します. 2 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 トゲグモの成長に伴う模様の変化と硬化部位 − 白い十字架を背負ったクモが,どのようにして髑髏模様を背負うようになるか − 加 藤 む つ み The Abdominal P attern as Development of Gasteracantha kuhlii Mutsumi Kato 丹沢(神奈川県足柄上郡松田町寄)のトゲグモ Gast eracant ha kuhlii の雌の成体の腹部背面 前部には,白黒の髑髏のような形相の模様がある.ところが,出のう直後の幼生の丸い背面の模 様は白い十字 架である. どのような 過程を経て ,白い十字 架が髑髏の 形相になる のだろうか ? また,吉倉(1987 )によ れば,トゲグモ類の腹 部背面前部は,著しく 硬化した盾板状とのこ と だが,脱皮殻は一般的なクモと同じく縮んだ状態で得られ,硬化した一枚板が初期よりあるとは 思えない.ただし脱皮殻には,成長に伴って硬化した部分として,島状に点在した褐色のキチン 板やトゲが観察できるようになる.また常にではないが,昆虫のクチクルの硬化には褐色や黒色 の着色が伴うという.つまり成長に伴う模様の変化と,トゲグモの特徴である腹部の硬化部位に は関連があるのではないかと考えていた.今回,飼育下のトゲグモの継続観察と脱皮殻の観察で, わずかであるが関連する知見が得られたので報告する. 材料および方法 材料には,1997 年 3 月 20 日に,丹沢(松田町寄)において採集した卵のうから出のうした トゲグモを用いた.これは,『トゲグモの成長に伴う形態変化と脱皮型の変化』(加藤,1997 ) において用いたものと同じであり,したがって飼育方法や観察方法もこれと同様である. 結果と考察 この方法で観察した結果得られた模様の変化を図1に示す.2本のトゲがある腹部後方にも同 様の白黒模様があるが,角度の異なるこの部位を,動き回る生体で観察し,図に表すのは非常に 難いことと,髑髏模様の形成にそれ程大きな関連がないので省略した.図に示すように,7令成 体の雌では6令位で腹部背面に異形の顔の模様が観察され始めるが,雄は成体でも逆錨型様の模 様で終わる. 3 7令 6令 5令 4令 3令 2令 図 1.トゲグモの腹部背面前部に見られる模様の変化 出のう直後を2令とし,雌は7令,雄は5令で成体になる場合の図. 後方の2本のトゲが属する部分の模様は省略.(スケールは1mm.) 4 図2.腹部背面の脱皮殻に点在するキチン板の顕微鏡写真 A:いくつかのキチン板.B:中央のキチン板のさらなる拡大写真 図2は,脱皮殻に点在するキチン板とその拡大写真である.中央部に特にはっきりした網目 模様があり,以前観察したトリノフンダマシの頭胸部の脱皮殻の構造によく似ている.ところが, 特によく硬化したトゲの部分の表面およびその他の部分に点在する毛の体表基点部分は,かなり 5 図 3.満腹時と空腹時のトゲグモ 左:満腹時,右:空腹時 着色した褐色のキチン板よりなるが,網目構造は観察できない.図2のキチン板は,脱皮時の観 察によって,腹部表面にある印刻つまり筋点に生じるものであると確認できたが,細かなキチン 板についてはさだかでない.さらに,筋点やトゲの部分は模様の黒い部分に属し,硬化が着色部 分と重なることを示す.ただし,黒い部分がすべて硬化しているわけではないようである.また, 毛は白い部分にも多数生えており,拡大して見ると白い部分には小さな褐色の点が点在し,それ が赤味がかった模様を生じさせている.ともかく,図2より,それらの硬化部はつながったもの ではないこと,すなわち,一枚の盾板を形成してはいないことがわかった.ただし,脱皮殻の観 察では雌亜成体の腹部表面の状態までしかわからないので,成体になってから急激に変化するこ とも考えられる.しかし,成体雌の腹部の観察では,満腹時および空腹時にトゲの向きが図 3 の ように変わることから,中央部が可変可能な伸縮する構造をもっている,つまり一枚板でないこ とを示していると考えた.このことは,標本の腹部背面を先の丸い針で押してみることによって も確認した. ところで吉倉(1987 )はチブサトゲグモをトゲ グモ類の例として示しており,腹部背面前 部 が硬化するメリットを炎天下での水分喪失を防ぐこととしている.しかし,私がトゲグモの生息 を確認した場所は,それほど乾燥した場所ではなかった.つまりチブサトゲグモの腹部はトゲグ モとは異なり一枚板なのかもしれないとも考えたが,後の観察で,差はあるものの,チブサトゲ グモにおいてもトゲグモと同様の可変可能な伸縮する構造が観察できた.これは後ほど機会があ れば報告する.つまり,トゲグモ類においても,卵や糸,そして食べ物をため込むのに有利な腹 部の可変性を,乾燥を防ぐためだけに完全に捨てることはしなかったのである.あるいはそのよ うに著しく変異し淘汰される時間がなかったということかもしれない.やはりトゲグモ類もクモ なのである 参考文献 吉倉 真,1987.クモの生物学.p.23,120.学会出版センター. 加藤むつみ,1994,トリノフンダマシの脱皮殻に関する報告.Kishid aia,(66):14−15. 加藤むつみ,1997.トゲグモの成長に伴う形態変化と脱皮型の変化.Kishid aia,(72):22−26. 6 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 沖縄クモ観察記(3) 新 海 明1) Field Notes of Spiders in Okinaw a (3) Akira Shinkai 私の沖縄行は 1982 年に姶まった.その折々に書き留めた沖縄のクモの観察記事は「沖縄クモ 観察記」としてすでに 2 回にわたり報告した(新海,1986 ,1988 ).その後,しばらくのあい だ沖縄を訪れる機会がなかったが,1995 年から再び宮下 直さんと一緒に沖縄行を繰り返すよ うになった.ここでは,その際に観察記録したものや,それ以前に記録していて今まで未発表だ った沖縄のクモについて紹介する. 3 月の沖縄でみたジョロウグモとイソウロウグモ 15 年ほど前に初めて沖縄を訪れた時に,下謝名先生からジョロウグモ Nephila clavat a の分 布が沖縄本島中部以北に限られていることを教えていただいた.そのため,ジョロウグモの網を 追って名護市周辺で調査をすることになった.足繁く通ううちに知り合いができ,1996 年の 3 月にそんな知人に案内されて本部半島にある旭川という所にいった.この辺りには蜜柑が多く栽 培されており,夏になれば「ひよつとすると,何か珍品でも」と思わせる場所であった.ここで, ジョロウグモの成体を 2 頭観察することができた.まさに,3 月の沖縄ならではの出来事で,本 州などでは考えられないことである. 観察したのは,1996 年 3 月 16 日で名護市の旭川だった.ジョロウグモは 2 頭いたが,いず れもメスの成体だった.ひとつは網の大きさが 45 ×45cm で,この網はミナミノアカイソウロ シロカネイソウロウグモ Aryrodes ウグモ Argyrodes f lavescens のメス成体 2 頭と幼体 14 頭, bonadea の幼体 2 頭,チリイソウロウグモ Argyrodes f issif rons のメス成体 1 頭が侵入してい た.もうひとつの網(網の大きさは側定せず)には,ミナミノアカのメス成体 3 頭と幼体 3 頭, シロカネイソウロウの幼体が 5 頭入っていた.ミナミノアカイソウロウグモやシロカネイソウロ ウグモの生活史は季節によって定まっている可能性は低く,本土では大形の宿主を欠く冬期をど のように過ごしているのか興味深かった.ここでの観察は沖縄のものではあるが,冬期にイソウ ロウグモの成体が存在し,他の時期と同様に円網に寄生していることが判明した.その生活史を 解明する手がかりのひとつになろう. ──────────── 1)〒190-0022 東京都立川市錦町 3−12−16−1103 7 旭川での観察では,名護市在住の津田愛子さんと長嶺洋子さんに現地の案内をしていただいた. ここに御礼申し上げる. トゲゴミグモの占座姿勢と餌捕獲 秋の沖縄では森といわず街中といわず至る所でトゲゴミグモ Cyclosa mulmeinensis がみ ら れる.この時期のトゲゴミは成体が多く,その円網は垂直から水平とさまざまな角度に傾いて作 成されている.そして中央につけられたゴミの中に,うまく隠れるようにクモ本体と卵のうが並 んでいるのがみられる. この網の中にいるクモの占座姿勢をよくみると,「おやっ」と思うことがあるはずだ.ほぼ垂 直になったものでは判らないが,水平方向に傾いたものでは例外なくみられる.なんと,クモが こしき部で網面の上にいるのである.この占座姿勢は「背面上位」と呼ばれている.これと同じ 占座姿勢をとるクモは今までにドヨウオニグモ Neoscona adiant a(中平,1974;松本他,1976 ) とマルゴミグモ Cyclosa vallat a (松本他,1976 )(注)で知られていた.ただし,これらのク モでもいつでもどこでもこのように占座するというわけではないようである. トゲゴミグモはこのような変わった占座姿勢をとるのだが,ではいったい餌捕獲の際にクモは 網面をどのように移動するのだろうか.通常のクモは,しおり糸をひきながら網の下面を吊り下 がって進むのであるが,網の上面にいるこのクモはどうなのだろうか.そこで私はその網に小さ な餌を投げ入れて,クモがその後にどのように動くかを観察してみた.結果は実に単純明快だっ た.餌の振動を感知したクモは,こしき糸とヨコ糸との間にわずかに広がるタテ糸間の隙間(こ こは「free zone =空間」と 呼ばれる)から,する りと網の下面にまわり ,そのまま普通の水 平 円網のクモと同様に網の下を移動したのである.そして,餌を捕らえたクモは再び「空間」から 上面に戻りそこで食事を始めた. 私は大形の餌の場合でこれを確認していないが,上面に持ち上げられない場合は下面で食べる のだろうか.いつか調べてみたいと思っている. ここに記した観察は沖縄県北中城村の中城公園で 1982 年か 83 年に見たものであるが,記録 をきちんととらなかったので現在までそのままにしていたものである.「些細な出来事も記録に 残せば生きることもある」と思いここに記すことにした. (注)この時点ではトゲゴミグモとマルゴミグモが明確に区別されておらず,松本他(1976 )の 中で記されていたマルゴミグモは現在のトゲゴミグモのことであった(谷川明男・新海栄一氏, 私信による).ということは,ずっと以前からトゲゴミグモが網上に背面上位に占座することは 知られていたわけである.このような事情により私は今まで書かなかったのだが,トゲゴミの占 座姿勢について知る人が意外に少ないことが判り記録した. オニグモの網で餌盗みしていたイソウロウグモ 2 種 イソウロウグモ属 Argyrodes のクモが他種のクモの網に侵入して餌盗みをすることはよく知 られている.1996 年秋に沖縄県名護市でオニグモ Araneus vent ricosus の網に侵入してその餌 8 を盗んでいたイソウロウグモを観察したので報告する. 発見したのは 1996 年 9 月 23 日午前 9 時 45 分で,名護市にある名護城であった.オニグモ (体長 20mm)はサクラの木の高さ 1 .6m ほどの所に造網しており,円網の大きさはタテ 80cm ×ヨコ 60cm だった.クモは円網の上方にある隠れ家から 5cm ほど下がった所でオオシマゼミ (体長 33mm)を捕食していた.この網にミナミノアカイソウロウグモ Argyrodes f lavescens とシロカネイソウロウグモ Argyrodes bonadea が各 5 頭ずつ侵入していた.ミナミノアカの体 長はそれぞれ 4.0 ,3.6 ,3.6 ,3.2 (オス),1.8mm ですべてオニグモより 10 ∼15cm 以内に おり,一方シロカネは 2.4 ,2.0 ,1.8 ,1.7 (オス),1.0mm でいずれも 25 ∼45cm ほど離れ たところにいた.ミナミノアカのほうが飼盗みには積極的のような印象があった.この網は前日 にも見ておりこの時点ではセミはかかっておらずイソウロウも全く侵入していなかったので,そ の後にセミがかかりイソウロウが侵入したのは明らかであった.オニグモの網にかかった餌をど の よ う に 感 知 し た の か は 不 明 だ が , 前 日 に こ の 網 の そ ば に オ オ ジ ョ ロ ウ グ モ Nephila maculata の網がありここに多数のイソウロウがいた.そして,このオオジョロウの網は翌朝そ こからなくなっていたことから考えて,この網に侵入していたイソウロウはオオジョロウの移動 で行き場をなくし,宿主の網を探索中にオニグモの網にかかったセミの振動を糸を通じて感知し て,そこに移動してきたのではないかと推測された.発見したときにはミナミノアカはまだ餌に 取りついていなかったが,その後次第にオニグモの食べている餌に接近してホストの反対側から 摂食していた.一方,シロカネは相変わらず網の下方を徘徊していて,セミにとりついて摂食す る様子はなかった.この傾向は時間が経つうちに顕著になり,数時間後にはミナミノアカはセミ のまわりにほとんどの個体が集まっていたのに対して,シロカネは網の下方で網に残されていた 小さな餌を探索しているだけだった.ひとつの網に同居するイソウロウグモの種間の関係を知る 手がかりのひとつになるような印象があったので,ここに記録した. ヘリジロオニグモ幼体が張っていた見慣れない「キレ網」 キレ網を張るクモとしてはヤマキレアミグモ Zygiella mont ana , ビジョオニグモ Araneus mit if icus,アオオニグ モ Araneus pentagrammicus などが 有名であるが, ヤミイロオニグ モ Neoscona f uscocolorata やヘリジロオニグモ Neoscona subpullat a といったクモもキレ網をし ばしば張っている.ただし,ヤマキレアミなどの前者はキレ網のスペシャリストであるが,後者 は通常の円網を張ることもある点に違いがある.1997 年 2 月に沖縄県北中城村の中城公園で, ヘリジロオニグモの張った見慣れないキレ網を観察したので報告する. 観察したのは,1997 年 2 月 15 日の午後 4 時 10 分ごろだった.ヘリジロはガジュマルの木 から垂れ下った枯れ枝と葉の間に造網していた.網の高さは 1 .6m で,その大きさはタテ 19cm ×ヨコ 14cm でタテ糸 29 本,ヨコ糸 41 本だった.私が見慣れないと感じたのは,キレ網の「キ レ」ていた場所の位置であった.普通のキレ網では上方に位置するのだが,ここでみた網では「キ レ」ている場所が下方にあったのである.そして,クモも下方の枯れ枝の隠れ家に潜んでいた. このように下方に隠れ家をもつ例を私はほとんど知らなかった.ここではこの他にも同じような 9 「キレ網」を 1 例ヘリジロでみている. 円網を張るクモは垂直でも水平でも,ほとんどのものが隠れ家を上方にもつのが普通である. これは,獲物が網にかかった場合により素早くそこへ突進することを可能にしているためと考え られる.とすれば,ここに報告したヘリジロの例はどう解釈したらよいのだろうか.あるいは単 なるこのクモの気紛れであったのだろうか. シロカネグモの一種の集団網 日本産の円網種で常に集団をつくっているクモは知られていない.外国では北米の Met epeira や南米の Parawixia などの 集団網 が名高い .私も 加藤輝代 子さんか ら南米 バラグァ イにい る Parawixia の集団網について伺ったことがある.昼間は軒などの下に成体も幼休も固まって群れ ており,夜になるとそれらが一斉に出てきて各自の網を作るのだそうだ.その際には互いにワク 糸などを利用しあうそうで,完成した網はまさに集団網となるのだという.一方,ジョロウグモ などが一ケ所に高密度に生息するような場合にも,互いにワク糸などを利用しあうため,やはり 集団網となる場合もある.このような例はスズミグモ Cyrt ophora moluccensis でも知られてい る.ここで紹介するシロカネグモの一種 Leucauge sp .(幼体だったので確定できなかったがチ ュウガタシロカネグモ Leucauge blanda と思われる)の場合は後者に属すものだと思われるが, 私は沖縄県以外では見たことがないので記録した. 観察したのは,1997 年 2 月 16 日で沖縄県名護市の名護城だった.集団網は路傍の草叢の高 さ 10cm∼70cm にあり,108 ×88 ×77cm の範囲にシロカネー種 10 頭(体長 9m−2 頭,8mm −2 頭,6mm−3 頭,3mm−3 頭),トゲゴミグモ 2 頭(体長 5mm−1 頭,3mm−1 頭)が 造網していた.これらの網の中にはミナミノアカイソウロウグモの幼体(0.5mm)が 1 頭,種 不明のイソウロウグモ(1mm)が 1 頭侵入していた.個々の網はそれぞれ独立していたが,互 いに迷網部の糸を共有していた.本州などにいるオオシロカネグモ Leucuge magnif ica の網で は迷網をみることはないが,沖縄にいるチュウガタシロカネグモの網ではしばしば上下に迷網が 確認できる.ここで紹介した集団網はこのような迷網の存在により成立していると思われた. また,迷網部の糸には 1 ∼4cm 間隔で,チブサトゲグモ Gast eracant ha mammosa の網のワ ク糸に見られるような糸の固まり(楜沢 1992 )が点在していた. オオジョロウグモの幼体の張る葉上網 造網性のクモはさまざまな場所にその網を張る.ムツボシオニグモ Araneus yaginumai やシ ロスジショウジョウグモ Hypsosinga sanguinea といった種類は一枚の葉の表面上に円網を作 っていることがある.ところが,日本最大のクモであるオオジョロウグモがなんと葉の上に円網 を張っているのである.これが 1 ∼2 例なら驚きもしないのだが,ある時期には大部分の個体が 葉上にその網を張っているようだ. 観察したのは 1997 年 4 月 3 日で,本部半島の今帰仁村の諸志御嶽(うたき)の植物群落内で あった.葉上に円網を作っていたオオジョロウは当然ながら全てが体長 1mm ほどの幼体だった. 10 この網はボチョウジの葉の表面上に作られ,大きさはタテ 9.5cm×ヨコ 7.5cm(N =8 )だった. この木の茂っていた 1.5m×1.5m ほどの中で枝の間に造網していたオオジョロウは 1 頭だけだ った(体長 1mm,網 9 ×9cm).ボチョウジの葉の大きさは 20cm×8cm ほどで,ゆるく窪み その深さは 1 ∼2cm ほどだった.網は水平になっていて,下方にだけ迷網部があった.この迷網 が新海(1985 )が指摘し たようなタテ糸とヨコ 糸が規則的に配置され たドーム状になってい る かは,観察が難しく不明である.主網はオオジョロウの成体のものと変わらなかった.クモはこ こに背面下位に占座していた.このように葉の上に造網するオオジョロウは,ボチョウジ以外に クワズイモ,ヤブニッケイ(以上,諸志),ハイビスカスの一種,マサキ(以上,名護城)など でも観察しているので,葉上はこの時期のオオジョロウの幼体の造網場所としては普遍的に使用 されているのであろう. 私は,葉上に張られたこのクモを乙羽岳山頂付近でも観察していたが,この時点ではこの網が オオジョロウグモのものであるとは気付かなかった.同行した谷川明男さんが西表島で同様に葉 上で造網しているオオジョロウをすでに観察して種名を確定されていたことから,この葉上の網 主の正体を教えていただいた.佐々木健志さんには現地の案内をしていただいた上に植物名も教 えていただいた.お二人に御礼申しあげる. 引用文献 楜沢 新,1992.チブサトゲグモの網に見られる線状の糸について.Kishid aia,(64):6−8. 松本誠治・新海栄一・小野展嗣,1976.学研の図鑑クモ.160pp. 学習研究社.東京. 中平 清,1974.ドヨウオニグモの白帯と占座姿勢.Atypus,(62 ):24−31. 新海 明,1985.ジョロウグモとオオジョロウグモの網構造の比較によるジョロウグモ属の由来の一考察. Acta ar achol., 34(1):11−22. 新海 明,1986.沖縄クモ観察記.Kishid aia,(54):1−9. 新海 明,1988.沖縄クモ観察記(2).Kishid aia, (57):13−18. 11 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 室内でのクモの実験と講話 池 田 博 明 親子で参加するクモの観察会 神奈川県の座間市公民館の 1997 年度「ふれあい自然科学クラブ」第1回で,クモの話をした. 実は座間市公民館でクモの話をするのは初めてではない.1回目は 8 年前で,公民館に「ふれあ い自然科学クラブ」が発足した ときの第1回目であった.この ときは諏訪哲夫氏のお計らいで 実 現したものである.第1回目の様子は談話会通信 67 号に「アオオビハエトリの雄に感謝 OHP で 見るクモ合戦」と題して書いた. 8 年前の参加者の母親たちが今度は運営委員となってクラブの企画をするようになったところ, 再びクモの講話を聞こうという話になったのだという.座間市公民館での2回目は野外観察だっ たので,今年の内容としては野外観察を中心に実験を交えて展開しようと計画した.音叉を使用 するとか,虫をかけてみるとか,クモ合戦を見せるとか,いろんな行動実験が考えられた.ミニ 実験のアイデアは『カ ラーアルバム クモ』 (誠文堂新光社)に記 述した.予定の日時は 1997 年 7 月 12 日(土)1時半から約2時間である. ところが2日前から午後は雨であった.勤務先の学校付近の河原でヤハズハエトリの雌雄など を採集しておこうと思っていたが,雨では能率が上がらない.本務の成績処理やクラスの仕事も あり,結局クモを採集する時間が無かった. どしゃぶりの雨の中で 12 日当日は朝からどしゃぶりだった.これで は野外観察は無理である.急にすべてを室内 で の内容で考えなければならなくなった.幸い私の出演した昨年の 9 月に放映されたNHKの「や ってみようなんでも実験」“ムシできない虫の行動”のビデオがあり,その中にはクモの行動実 験がある.これを使用してビンゴ形式で何問かはできるだろう.しかし,実際のクモの実験がな ければ参加者だってつまらないのではないか.小さな子供は正直なので,つまらないとすぐに態 度に出てしまう.子供は講師の事情などに配慮なんかしないものである.面白いかつまらないか, ただそれだけだ.参加人数は50人以上もいるそうである.大変なことになった.いそいで準備 したものは,クモを網ごと入れるための昆虫飼育箱4個,捕虫網,前川式ホンチ箱数箱,麻酔用 の二酸化炭素のガスボンベ,フィルムケース,音叉,ビデオフィルム(“ムシできない虫の行動”), 鉛筆たくさん,ビンゴ用紙.これらを車にほうり込んで朝早々に座間市へ出発した. 1 時間半ほど走って到着.9時半頃から公民館周辺で採集をした.ところが,雨がきびしくて ほとんど採集できない.あちこち歩いてヒメグモ,クサグモ,ヤミイロカニグモ,ヤマトコマチ グモ,オニグモ(幼体),ヨツデゴミグモ雄などが1∼2頭採集できただけであった.これらの 12 クモでは小さくて遠くからはよく見えない.刻々と開始時刻は近づく.困った.見世物になるク モがいない. なんとかコモリグモを探した.公民館近くの畑でハリゲコモリグモのオスを採集した.さらに 探すと卵のうを持ったメスもいた.雨のなかを必死に探して卵のう持ちのメスを2匹採集できた. 頭から風呂に入ったようにズブぬれになって しまった.OHP で卵のう除去実験を投影してみ よ うと思いついた. 室内でクモ観察ビンゴ 参加者は小学生 27 名(1年 5 名,2 年 6 名,3 年 5 名,4 年 5 名,5 年 4 名,6 年 2 名)と 大人 24 名,幼児 7 名の総勢 58 名.講義室の机を除去してイスだけで部屋がぎっしり満杯であ った. まずビンゴの説明をして数字を記入してもらった. 第1問「クモの足は体にどうついていますか」.選択肢(ア)頭胸部から4本・腹から4本, (イ)頭胸部から6本・腹部から2本,(ウ)頭胸部から8本. (ウ)と答えた人が多かった. 正解はウ.模型(中国製)の大 きなクモで足の出かたを説明 し た.その後,「実際のクモはこんなに小さいんだよ」と採っておいた小さなクモを見せる. 第2問「さてこのクモを手に載せられるかな.載せることができたら○.できなかった人は×」. 午前中に取ったいろんな種類のクモを机の上に出す.みんな前へ集って来てほとんどの子供がク モを手に載せて,糸を出すクモがぶら下がるのを面白がっていた. 第3問「いまクモはずいぶん糸を出したよね.ではそのクモの糸はこれから挙げる3つの物の どれに一番近いだろうか」.選択肢(ア)紙のせんいや木綿(つまりセルロース),(イ)肉(つ まりタンパク質),(ウ)油(つまり脂肪).正解はイ.「クモは虫の体のタンパク質で糸を作 っています.網は貴重な栄養源.したがって網を回収して食べてしまうクモも多い.リサイクル しています」.大崎(1996 )によると,コガネグモ 1 匹当たり,しおり糸を 50 ∼100 mも巻き 取ることが出来るという. 第4問「座間市には何種類のクモがいると思 いますか」.選択肢(ア)50 種くらい,(イ ) 200 種くらい,(ウ)500 種くらい.正解はイ.『座間市の動物』には 160 種のクモが記録さ れていますが,実際にはもう少し多いと思います. 第5問.「(昆虫飼育箱の中の 葉の下のヒメグモ雌を回覧して から)ヒメグモはどうしてこ ん な葉を吊っているのかな」.選択肢(ア)雨よけのため(傘代わり),(イ)子育てのため,(ウ) 葉を餌にするため.正解はイ. 第6問.「(ジョロウグモの幼体を回覧して)ジョロウグモは 5 月下旬に誕生し,9 月には親 になります.ところでこのクモ,今からひと月前の子供のときは網にいるときに触わられるとあ ることをしました.さて何をしたでしょう」.選択肢(ア)ポトリと落ちる,(イ)網をふるわ せる,(ウ)網にしがみつく.正解はイ. さてここでいったん休憩.子供たちに棒チョコを配りました.それを食べている間は子供たち 13 は話をしないので,ビデオでナガコガネグモの網ゆすり行動とコガタコガネグモの落下行動を見 てもらいました. 第7問「(コモリグモを見せてから)コモリグモの子守りってどんなものでしょうか」.選択 肢(ア)おんぶする,(イ)はきもどしをする,(ウ)ゆりかごを作る.正解はア. 卵のうをつけたコモリグモを見ながら説明しました.コガネヒメグモのように吐き戻しをする クモもいますし,イオウイロハシリグモのように保育網を作るクモもいます. 第8問「さてこのコモリグモの卵のうを取ってしまったら,お母さんグモはどうするでしょう」. 選択肢(ア)探してまた付け直す,(イ)忘れて見捨ててしまう.ひとりの子供が大きな声で, 自信たっぷりに「忘れちゃう!」と予想して,笑いが起こった. 「正解は,実験して確かめてみましょう」. コモリグモの卵のう除去実験 OHP で投影 ここで OHP (オーバーヘッド・プロジェクター )を登場させる.説明しながら,実験用ボ ン ベの二酸化炭素でフィルムケース内の雌を軽く麻酔し,卵のうを外す.二酸化炭素による麻酔法 という技術は大変便利なので,ぜひ実験に利用してほしいテクニックのひとつである.子供から 「えーっ,手で取るの!」という声があがった.透明な飼育箱を OHP に載せ,雌と外した卵の うを離して置く.1分半ほどして壁にシルエットで写っている雌が突然起き上がった.雌は動き が遅く,なかなか卵のうに近づかない.子供たち「まだ麻酔からちゃんとさめてないのかな」と 声があがる.子供が画面に集中している証拠である.ガスボンベのストローを使用してクモを少 し卵のうの近くへ誘導してやる.卵のうを見つけた雌はまずかかえた.お母さん方からはホッと した声があがる. 「もう1匹いますからもう一度やってみましょう」.この2匹目の方が役者だった.すでにク モがどんな行動をするかは,みんなが分っていて予想がつく.その予想通りに行動するかどうか, 子供たちの期待が壁に映し出されたシルエットに集まる. 雌は突然麻酔からさめて立ち上がる.ここで「起きた,起きた!」と歓声があがった.雌は少 しサークルを描きながらいかにも卵のうを探すような歩きかたをする.卵のうに近づく.見てい る子供たちが「もう少し」と声援する.卵のうにまっしぐらに近づかないところがじれったくも あり,期待を持たせるところでもある.大きく弧を描いて動いて,うまく卵のうをかかえこんだ ところで「やった!」と歓声があがった.私もホッとした. 卵のうをかかえこんだクモはし ばらくすると卵のうを糸いぼに つける.「もし卵のうが無い と それに似たもの,綿を丸めたも のとか,紙とか,ジュズ玉さえ 付けてしまいます」.この様子 は 『わくわく動物ランド』での吉田嗣郎さん撮影の映像がある.あるお母さんから「喪失感がすご いのね」という感想が出た.「 このコモリグモの卵のうのつぎ 目を母グモがかみ破ってやらな い と子供たちは卵のうから出られません.大変な子守りをするクモですね」. 第9問.最後の問題である.「ハエトリグモという目の大きなクモがいます.ところでこのハ エトリの雄に鏡を見せたら,どうするでしょうか」.選択肢(ア)鏡の中の自分の姿にうっとり 14 見とれてじっと動かない,(イ)敵だと思って怒り出す,(ウ)喧嘩の最高の勝ち方は逃げるこ となので,逃げる.どの答えにも票が集った. 「正解は,実験を見てみましょう」.番組のオオハエトリに鏡を見せたときの行動を放映した. 正解はイ.ついでにメスを見せたときの映像も見せて解説した. これでビンゴは終わり.ビンゴの数を数えて賞品はアメをあげた. クモの雌雄の見分け方やクモの一生の話を少しして講話はほぼ2時間で終わった. 室内でできる実験 試行錯誤ではあるが,クモを使って室内でできる実験についてまとめておこう. (1) クモを手でさわる. 第2問目でクモを手で触わらせたのは,クモに親近感を感じさせることができてよかったと思 う.子供たちにクモをさわらせるというのは横浜市の子ども植物園のホンチ大会(例年,斎藤慎 一郎さんが指導していた)でホンチの合戦前に行っていた実習であった.その後,小田原市の郷 土資料館や松田町子どもの館での観察会でも行ってみて,けっこう子供たちが喜ぶことを確認し ていた.クモはかみつかないことが理解でき,講師が安心して手でさわって見せれば,糸を引き ながら逃げるクモをさわるのはちょっとくすぐったいし,楽しい.それに誰もかれもが触われる のに,自分だけ触れないのは子供にとって悔しいのか,よほどのクモ嫌いでなければ,結局みん な触ってしまうのである.そして一度触れれば安心できるのだ. (2) ハエトリグモの餌捕獲行動. ハエトリグモを管びんに入れ,ハエやカを目前に入れる.ハエトリがジャンプして虫を捕獲す る様子を観察する. (3) ハエトリグモの雄間威嚇誇示行動. 雄のハエト リグモが採 集できれば 雄に鏡を見 せることに よって雄間 威嚇誇示行 動を再現す る ことができる.同種の雄が2頭いればクモ合戦をさせることができる.2枚のバルサ板のように 開放された空間で戦わせる方がよいが,シャーレの中で闘う場合もある.ネコハエトリやアオオ ビハエトリの闘いはかなり見ごたえがある.オスクロハエトリやヤハズハエトリのように体が細 長いハエトリは割り箸のような細身の板上で闘わせる方がよい.ただし,一度負けたクモをすぐ に再度闘わせるのは難しい. (4) ハエトリグモの求愛誇示行動. 雌雄のハエトリグモが採集できれば雄に雌を見せることによって求愛誇示行動,いわゆるハエ トリグモの求愛ダンスをさせることができる.雌が雄を威嚇する場合が多いので,雌を炭酸ガス で麻酔し,人為的に雌に acceptance posture を取らせることによってほぼ確実に雄に求愛ダン スをさせることができる.コモリグモの雄の求愛ダンスも可能と思われるが私は実験したことが ない. (5) コモリグモの卵のう除去実験.前述. (6) キハダエビグモの体色変化.キハダエビグモを樹皮上から採集しておき,フィルムケースに 15 入れて置く.最初に静かにクモの体色を見せておく.ふたをして強くふる.ふたを開くと体は黒 色に変化している.このクモはキララシロカネグモやコガネヒメグモよりも鈍感なので最初に見 せている間には黒色に変化しない. これらの行動を大勢に見せるには OHP は便利な装置であった.以前にシャーレの中でアオオ ビハエトリの餌捕獲行動やオス同士のクモ合戦を見せたときも効果的だったが,今回の卵のう除 去実験でもその効 果を痛感した.も っとも,OHB (実物 投影装置)で投影 してもよいし, VTR カメラで撮影してプロジェクターに映し出してもよい. 吉田嗣郎さんの私信によると,ウヅキコモリグモは回収した卵のうをすぐに糸いぼにつけるし, 代替物さえ付けてしまうが,イオウイロハシリグモは触肢で抱えた卵のうを除去すると代替物を 抱え込むことはしないそうである.ハリゲコモリグモの場合は回収した卵のうをまず抱えて,し ばらくしてから糸いぼに付け直した. これらの行動実験をするためには生きたハエトリの雌雄や卵のうを付けたコモリグモが必要な ので当然実験可能な時期が限られる.また,ハエトリの威嚇や求愛を OHP で投影する場合の欠 点は,シャーレの中に放置するとなかなか闘わない例が多いことである.確実に行動させるには どの種のハエトリもバルサ板の上のようにオープンな場所に出す方がよい.しかし,それでは投 影できなくなる.VTR カメラはその点が便利である. 室内でも生きたクモを見せたい スライドでクモの講話もよいと思うが,子供たち相手にはやはり実物を出すことが大切だ.そ んなに珍しいクモでなくとも,大きなクモでなくとも,名前が分からないクモであっても,幼体 であってもいいのだと確信できた一日だった. 公民館の方が参加者に書かせた感想をぜんぶ見せてもらったが,子供たちからは「クモに興味 が出た」「面白かった」という声が多くて一安心だった.大人の方からは「クイズ形式で子供と 一緒に楽しめた」という声が多かった. コモリグモがよく行動してくれて,印象的な実験がひとつできた1日だった. 参考文献 池田博明, 1989. アオオビハエトリの雄に感謝. 談話会通信, (67):4−6. 池田博明, 1997. クモの観察会指導マニュアル. Kishid aia, (71):7−12. 大崎茂芳, 1996. 蜘蛛の糸−その蛋白質科学. 蛋白質・核酸・酵素, 41:2108−2116. 16 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 オオジョロウグモの造網場所移動の観察 谷 川 明 男1) はじめに 網を張るクモは,特定の場所にいったん網を張ると,あちらこちらに移動することなく,同じ 場所で網を張り替えな がら生活する場合が多 いと私は思っていた. しかし,宮下(1996 )に よ ると,オオジョロウグモの場合はかなりの頻度で網を張る場所を変えており,そのように常に餌 条件のよい場所を探索することによって短期間での急速な成長を可能にしているという.そこで 私は,オオジョロウグモは本当に頻繁に造網場所を変えるかどうか,移動しているようなら,ど のくらいの時間同じ場所にとどまっているのか,また,どのくらいの距離を移動するのか確かめ るために本観察を行った.なお,東京大学の宮下 直博士には貴重なアドバイスと本稿のご高閲 をいただいた.ここに記して厚くお礼申し上げる. 方 法 観察は,沖縄県西表島北部の大見謝川河口付近,クーラ川河口付近,祖内岳中腹,浦内川河口 付近の各所において,1997 年 8 月 2 日朝より 8 月 8 日朝までの 6 日間にわたって行った.ただ し,すべての地点において 6 日間継続して観察を行ったのではない.各観察地点と観察日時の関 係は表1のとおりである.大見謝川とクーラ川では少数しか発見することができなかったープで マークをつけ, 次の観察時には前回マークした造網場所でのオオジョロウグモの有無 表1.観察地点と観察日時 8/4 日 時 8/2 8/3 大見謝川 ○ ○ クーラ川 ○ ○ 8/5 8/6 8/7 8/8 11: 17: 21: 22: 9: 21: 9: 17: 21: 9: 21: 7: 00 30 00 00 30 43 00 00 00 00 00 00 浦 内 川 ○ 祖内岳 A ○ 祖内岳 B ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ──────────── 1)〒248-0025 鎌倉市七里ガ浜東 2−3−1 神奈川県立七里ガ浜高等学校 17 を確認し,また,前回記録されていない場所での新たな造網をマークすることによって,オオジ ョロウグモの動向を追跡した.また,一部の個体には歩脚あるいは腹部末端に白色の油性マーカ ーペンによって印をつけ,移動した際の個体識別を試みた. 結果と考察 1.概観 各観察地点において観察することのできたオオジョロウグモ,すなわち観察の対象となったも のはのべ 99 個体であった.これらのオオジョロウグモはかなりかたよった分布をしていた. 8 月 2 日,大見謝川とクーラ川ではそれぞれ 2 頭,1 頭しか確認できず,しかも 24 時間後にはい ずれの個体も移動してしまい,新たに移入してきた個体が見られなかったのでこの 2 地点での継 続的な観察を断念した.また,浦内川でも徒歩 30 分ほどの距離に多いときでも 5 頭見られただ けであったので,この観察地では 24 時間ごとの観察を行うにとどめた.これに対して祖内岳中 腹においては,82m ほどの距離に多いときで 29 頭もの個体が見られたので,ここを重点的な観 察地とし,最低でも 1 日 2 回,9 :00 と 21 :00 には見回るようにした. 2.24 時間ごとの動向 各観察日の朝(9 :00 ∼11 :00 )造網が確認された個体数と,それらのうち 24 時間後(翌日 の朝)に残留していた個体数,移出した個体数,移入した個体数をまとめたのが表 2 である. 移出した個体の割合が最も小さかった 8 月 4 日から 5 日にかけては,29.4 %のクモが移出し ていった.逆に移出した個体の割合が最も大きかった 8 月 6 日から 8 月 7 日にかけては,75 % 表 2. 各観察日に観察された個体数とその 24 時間後の動向 月 日 8月2日 8月3日 8月4日 8月5日 8月6日 8月7日 天 候 曇り時々 雨 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ 風強い くもりで 夜一時雨 風強い この日の朝に造網を確 認した個体の数 3 0 17 34 28 そのうち 24 時間後同 じ場所にとどまってい た個体の数と割合 0 0% 0 12 70.6% 14 41.2% 7 25% 7 28% そのうち 24 時間後ま でに移出した個体の数 と割合 3 100% 0 5 29.4% 20 58.8% 21 75% 18 72% 24 時間後までに 移入した個体の数 0 0 11 14 23 13 備 考 18 11 追加 この日観 察範囲を 広げた (30) 25 5 除外 翌朝観察 していな い地点が ある のクモが移出していった.すなわち,少ないときでも 30 %ほどの個体が 24 時間後までに移動し, 多いときには 75 %もの個体が移出したのである.日によって移動する個体の割合が大きく違う のは,天候によるものと思われる.8 月 3 日から 8 月 5 日の日中にかけては安定した晴天が続き, 風も弱かったのだが,8 月 5 日の夜から台風の接近によって風がだんだんと強くなっていき,8 月 7 日の夜半(8 月 8 日未明)には時折強い降雨があった.強い風が吹いたり雨が降ると移動が 促進されるようである.これは風や雨によって網が壊されてしまうことによるものと思われる. 観察中に網が壊れた状態のものをのべ 31 例観察したが,このうち 20 例(64.5 %)が網を更新 することなく移出しており,11 例(35.5 %)は網を修復したり張り替えたりした.このことは, 網が壊されたり壊したりすると,同じ場所で修復するよりも場所を移動する場合の方が多いこと を示している.また,観察の途中で道の真中に造網している個体が2例あった.やむなくこれは 破壊したのだが,2 例とも同じ場所には網を張らずにどこかに移動していった. 3.移動する時間帯 日によって観察時間は若干異なっているが,朝 9 :00 前後と夜 21 :00 前後には観察を行ってい るので,1 日を 9 :00 ∼21 :00 の時間帯と 21 : 9:00∼21:00 18例 14% 00 ∼翌朝 9 :00 までの時間帯に分け,移出ある いは移入した時間帯をそのいずれかに特定できた のは 127 例であった.この 127 例のうち 9 :00 から 21 : 00 の 時 間 帯に 移 動 した の は 18 例 (14.2 %)で,21 :00 ∼9 :00 の時間帯に移動 したのは 109 例(85.8 %)であった(図 1 ).こ のことから移動するのは圧倒的に 21 :00 以後翌 朝までの時間帯の方が多いことがわかる.しかし, 昼間移動する個体も確実に存在しており,9 : 00 ∼17 :00 の時間帯に移動を特定できたものが 2 例あり,朝 9 :00 の観察時において移動中の個体 21:00∼9:00 109例 86% 図 1.移動した時間帯 も 2 例観察された. 4.一ヶ所での滞在時間 移入してきてから移出するまでをとらえることができたものはのべ 42 個体であった.そのう ち滞在時間が 12 時間未満のものは 11 個体(26.2 %),12 時間以上 24 時間未満が 26 個体 (61.9 %)24 時間以上 36 時間未満が 1 個体(2.4 %) 36 時間以上 48 時間未満が 4 個体(9.5 %) であり,滞在時間が 12 時間以上 24 時間未満のものが最も多かった(図 2 ).一方で滞在時間 が 60 時間以上のものが 3 例,72 時間以上のものが 1 例,96 時間以上のものが 1 例あった.こ れらは観察開始時にすでに存在していたか,観察終了時以後も存在していたため滞在時間を特定 できなかったものである.今回の観察では,観察日数が少なかったこと,観察期間の末期に天候 が崩れたことによって,一ヶ所における滞在時間が短めに認識された恐れがある.特に安定した 19 30 晴天が 続い た場 合に はど のく らい の時 間 26 一ヶ所にとどまっているのかについては, 25 調査期 間を より 長く とっ て再 度調 査を す 20 る必要があると思われる. 個 体 15 数 5.移動距離 マークをつけた 23 個体のうち,移動先 で再発見されたのはわずかに 4 例であった. 11 10 この 4 例の移動距離は,2 歩(約 1.2m), 3 歩(約 1.8m),5 歩(約 3m),13 歩 (約 8m)であった.これは,ほとんどの 4 5 1 0 12時 間未満 場合は かな りの 距離 を移 動し てし まう た めに再発見が困難であるが,移動距離の短 12∼ 24時間 24∼ 36時間 36∼ 48時間 図 2.一ヶ所での滞在時間 い場合もあるということであろう.また, 一度行方不明になった後で,最初の造網場所のすぐ側で再発見された場合が 1 例あった.これは 移動している間にまたもとの位置にもどってきたものと思われる. 引用文献 宮下 直,1996.ジョロウグモとオオジョロウグモの造網場所移動を中心とした餌捕獲戦略.日本動物行動 学会第 15 回大会要旨集. 20 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 ────DRAGLIN ES───────────────────────────────── 全国クモ相談室 第 1 回 滋賀県産オヒキグモの一種について 畑 守 有 紀 相談者 H.Y.:私は大阪在住のクモ愛好家ですが,私の悩みを聞いて下さい.夫は常日頃から仕 事と称しては野山へ分け入ってクモの珍品を持ち帰り,仕事のために野外から足の遠ざかってい る私に,必ずこれ見よがしに見せびらかすのです. 先頃も滋賀県にでかけ,オヒキグモの一種 Arachnura sp.を採集し,意気揚々と帰ってきまし た.しかも,“これはどうもキジロオヒキグモ A. logio ではないように思う.しかしキオヒキグ モ A. melanura なら分布が妙だ.いやオモシロイ.”などと独りで悦に入っているではありま せんか.恥ずかしながら私,いまだにキジロオヒキグモとキオヒキグモの違いを良く存じており ません.ここは一気に夫を見返すべく 2 種の違いについてよろしく御教授くださいませ. それと,この 2 種の分布についてもお教え下さい.今回,夫の採集した個体は色や外見をみる 限りキオヒキグモなのですが,キオヒキグモは滋賀県のような北に分布しているものなのでしょ うか?今までの私の認識ですと,本州で採集される Arachnura はキジロオヒキグモで,南西諸 島以南で採れるのがキオヒキグモと思ってい たのです.ただ,At ypus(12 )に伊賀国(滋と 三 重の県境)でキオヒキグモ(当時の和名はヲヒキグモ)が採集されたという記録もあるので,こ の地は特異的にキオヒキグモを産する場所なのでしょうか.追加個体を採集したい旨を夫に相談 致しましたが,キジロですら採集は偶発的なものであり,期待はできないとの返事.しかし今回 の採集地は将来開発されてしまうとか.私はこのキオヒキグモの分布に対する疑問がどうにも気 になって,夜もぐっすり眠れません.どうぞ快刀乱麻を切るお返事をよろしくお願い致します. とっても・あかるい 解答者 T. A. 先生:まずキジロオヒキグモとキオヒキグモの見分け方ですが,雌の場合は; 1 .キジロの方が大きい. 2 .キジロは黄白色,キは黄色や茶色. 3 .キジロの方が毛深い. 4 .キジロの方が足がたくましい. まっ,しかしこれでは両方の標本がないとわかりませんね.区別するにはやっぱりエピジナム で見るのが良いと思います.両者共に単純な形ですが,前縁の形で簡単に判断できると思います. キオヒキグモは凹のような形をしています. 次に分布の件ですが,現在キオヒキグモは私が西表から記録した以外に報告はありません. あなたが見た文献 は槌賀氏による ,1940 年(原図で は皇紀 2600 年)に 伊賀国で採集し た Arachnura 属のクモの報告でしょう.『採集したクモをスケッチして東京へ送ったところヲヒキ グモ Arachnura melanura Simon であることがわかりました』という記述があります.ただし この記事が発表された時には,槌賀氏の手元に標本は残っておらず,同定を依頼された東京の岸 21 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 ──────────────────────────────────DRAGLIN ES── 田氏が標本を確認したのか,図だけで同定したのか不明です.また以下の 3 点で,今までこの記 録を誤同定と考えてきました. 1 .岸田氏の同定はキジロオヒキグモが記載される前のもので,2 者の比較がされていないこと. 2 .槌賀氏の図によってそれをキオヒキグモとは同定できないこと. 3 .その後の記録では本土からのオヒキグモはすべてキジロオヒキグモであること. この事は八木沼先生も同様に考えられたようで,日本産真正蜘蛛目録(1977 年改訂) でキオヒキ グモの分布は台湾・東洋区とされ,本州と南西諸島については?の疑問符が記されています. しかし,今回あなたの御主人が採集された標本がキオヒキグモであったなら,これはおもしろ いことになります.槌賀氏のクモもキオヒキグモであった可能性が否定できなくなりますね.ま た,ひょっとすると新種かもしれません.う∼むおもしろい.ぜひ,標本を見せて下さい.キジ ロオヒキグモかキオヒキグモであったなら標本をよこせとはいいません.いずれでもない第 3 の 種だったらよこせと言います.あらかじめ御主人によくよく言い含めておいて下さい.その暁に は交換にキジロオヒキグモとキオヒキグモの標本をプレゼントいたしましょう. 採集記録:オヒキグモの一種 Arachnura sp. 滋賀県甲賀郡信楽町 1997.Aug.11. 金野 晋 採集 夜間にぶら下がって眠る?ハエトリグモ 平 松 毅 久 英国蜘蛛学会発行の“The Newsletter”は,談話会通信に DRAGLIN ES の原稿を載せて体裁 を立派にしたようなものであるが,1996 年発行の No.77 の 12 頁に Rainer Breitling というド イツ人の「Evarcha f alcat a の奇妙な睡眠姿勢」と題する報告が寄せられていた.マミジロハエ トリ属の E. falcata をプラスティックの箱 (150 ×80 ×45mm) に入れて自然光の当たる場所 (大 きな窓から 2m の位置)で飼育していたところ夜間箱の天井から短いしおり糸を出してぶら下が っていたという.これを読んで筆者は 1994 年 6 月 24 日三重県熊野市井戸町で夜間採集中に葉 の裏からぶら下がっているキアシハエトリ Phint ella bif urcilinea (Bös. & Str., 1906) (以下キ アシ)を 2 頭採集したことを思い出した.この時のクモの姿勢は垂直下向きだったと思うが,は っきり覚えていない.Breitling も「体に全歩脚を 押し付け短い糸でぶら下がる」とのみ記述 し ているため詳細は不明であるが,このぶら下がった状態を典型的な“sleeping position”と定義 しており,ほぼ日没から日の出までこの姿勢を保ち箱を激しく揺ってもぶら下がったままだった らしい.筆者もキアシで 2 例観察した時はどうしてぶら下がっているのか気にもとめなかったし, 22 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 ────DRAGLIN ES───────────────────────────────── それ以外のハエトリグモでは見たことがない.しかし新海 明氏(私信)によるとハエトリグモ の「ぶら下がり行動」自体は野外で何度か観察したことがあるとのことである. Breitling は夜間の「ぶら下がり行動」の意義を樹上徘徊性の種である E. falcata が潜在的な 捕食者を容易に近付けないためとし,他の樹上徘徊性ハエトリグモも同様の行動をする可能性を 示唆している.また E. falcata と同一条件で飼育した屋内性ハエトリグモの Salt icus scenicus と Euophrys lanigera では決して夜間の「ぶら下がり行動」が見られず,その理由として屋内 性種は夜間構造物の割れ目や穴に retreat(糸でつづった隠れ家)を作ってそこに潜むため, そ の機会がないからだと述べている. いずれにせよ日本でもこのようなハエトリグモによる夜間の「ぶら下がり行動」はあまり記録 がないようなので(人様の報告にかこつけて)報告することにした.しかしキアシを含めて夜間 にぶら下がっているハエトリは本当に「眠って」いるのだろうか? セマルトラフカニグモによるアリの捕食 新 海 明 クモ類の中でアリを好んで食べる種類としては,ヒメグモ科のミジングモ属 Dipoena やヒシ ガタグモ属 Episinus などでよく知られている(新海・高野,1984 ).吉倉(1987 )の「クモ の生物学」によると,トタテグモ科・ハエトリグモ科・カニグモ科・チリグモ科・ヒラタグモ科 などでもアリを捕食す るクモが知られている という.池田(1987 )の 「クモ生理生態事典」 に よると,トラフカニグモ Tmarus piger によるアリの捕食については,中平(1961 ,1967 )が すでに報告しているが,セマルトラフカニグモ Tmarus rimosus によるアリの捕食についての報 告はないようである.筆者は 1997 年 5 月に偶然にも捕食の瞬間を目撃し,記録したのでここに 報告する. 観察したのは,1997 年 5 月 10 日の午後 12 時 30 分ころで,東京都八王子市の八王子城跡近 傍の竹林内だった.セマルトラフカニグモは体長 5mm の幼体で,直径 8cm の竹の高さ 115cm 付近で,頭を下に向けて静止していた.このときの静止姿勢が特徴的であった.すなわち,1 ,2 脚を前方にそろえて真っすぐにし,3 脚はそれと直交方向に開き,4 脚は後方にやや開きかげん に向けていた.その姿勢が気になり何をするのかを観察していると,下方から数匹のアリがあが ってきた.そのうちの 1 匹が真っすぐにクモの方向にすすんでいた.この動きは特にクモに誘因 されているようには見えず,偶然その方向に歩いているようであった.そして,アリがクモの前 方にのばした第 1 ,2 脚にふれた瞬間に,クモはアリに飛び掛かりいきなりかみついて捕らえた. クモはしおり糸をひきながら少し落下したが,この時にすでにアリをくわえていた.竹の上に戻 ったクモはそのままかみ続けていたが,他のアリが接近すると竹上を反対側に逃げていった.そ 23 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 ──────────────────────────────────DRAGLIN ES── の後,糸を流してこの竹からアリをくわえたまま離脱していったところで採集した.アリの研究 家の酒井春彦氏によると,このアリはトビイロケアリ Lasius japonicus とのことであった.ま た,クモは幼体であったので私自身の同定に自信が持てなかったので,新海栄一氏と池田博明氏 にもみていただいた.両氏ともにセマルトラフカニグモでよかろうとの見解だった.これらの三 氏に御礼申し上げる. 続報5年前のサカグチトリノフンダマシ 平 松 毅 久 恥をさらすようで恐縮だが,先日古い標本を整理していたら 1991 年 6 月 9 日に採集飼育し, 同年 6 月 20 日に死亡したためアルコ−ル入りのびんに無造作に放り込んでいたサカグチトリノ フンダマシ Paraplect ana sakaguchii Uyemura, 1938 の標本が出てきた.何気なく腹部下面を 見ると何やら 褐色の点の ようなもの が見えたの で,もしや と思い実体 顕微鏡で見 てみたとこ ろ epigynum が確認できた.何と成体になっていたのである.飼育中の経緯は KISHIDAIA No.64 の DRAGLIN ES に述べたが,1.腹部がいたみかけていた(標本にしてしまえば殆ど気にならな い)こと,2.液浸にすると色落ちすること,そして 3.オオトリノフンダマシやトリノフンダマシ のイメ−ジか ら成体にな るのは夏以 降という固 定観念があ ったため幼 体の標本な らあまり価 値 がないと思っていたことなどが約5年半以上アルコ−ル漬けにしたまま放置していた理由(言い 訳)である.なかでも3番目の理由が最も大きかったような気がする.正確な日付は確認できな かったが,サカグチが事実上の最終脱皮を行ったのが 6 月 16 日か 17 日頃であったと記憶して いる.ちなみに野外での成体出現期はクモフィ−ルド図鑑(1984 )によると 7 ∼10 月となって いる. カネコトタテグモの孵化 笹 岡 文 雄 福島県原町市の野馬追祭場地において,カネコトタテグモ Ant rodiaetus roretzii の孵化を確 認したので,その状況を報告したい.1997 年8月 28 日,祭場地内の斜面林においてカネコト タテの一個体の住居の扉を開けようとしたところ,内側から扉を引き戻された.このような場合 カネコトタテはキシノウエトタテグモ Lat ouchia t ypica と違い,扉を閉ざすことなくそのほと んどが住居の奥へ逃げ込んでしまう.不思議に思いつつ再度強引に開いたところ,今度は難なく 開けることができた.すると扉のすぐ後は糸で薄い膜が張られ,穴が塞がれていた.それは完全 に穴を塞ぐものではなくて,ちょうどヒラタグモの住居の上の膜を横にしたような形で,穴の内 24 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 ────DRAGLIN ES───────────────────────────────── 径に留めて張られていた.クモはその膜越しに扉を引っ張っていたようだ. そしてクモ採集のため住居を掘削していると,その土の中に白い卵とクモとが混じっているの に気が付いた.ちょうど孵化が始まっていたと ころを掘り取ったらしく,未孵化卵約 20 ,孵 化 したての1齢の幼体約 20 を確認できた.卵は約1mm 弱,幼体は約 1.5mm 強の大きさで,共 に乳白色であった.幼体の動きは非常に鈍いが,歩くことはできた.卵嚢は掘っているとき破壊 したらしく,白い膜状のものを少し発見しただけではっきり確認はできなかった.親グモは穴の 奥に逃げていたものを確認,採集した. 脱皮時のカ ネコトタテ が同じよう に,住居の 扉の後に薄 い膜を張る ことはすで に報告があ る (山本,1942 ).山本の 報文にはその形態の記 述がないが,掲載され ている図からは穴を完 全 に塞いでいるように見える.しかし今回の様に孵化時に張られていたものと,違う形態であるか は即断できない. 参考文献:山本源三郎,1942 .カネコトタテグモの雄について.Act a arachnol., 7 :129 −133 . 北海道からオノゴミグモが採集された 谷 川 明 男 同定依頼された標本を同定していて,オノゴミグモ Cyclosa onoi Tanikawa,1992 の標本を 発見した.この標本は北海道朝日町岩尾内湖畔で 1997 年採7月 16 日から 18 日の間に採集さ れたものである.朝日町は旭川の北側に位置する.現在までのオノゴミグモの分布北端は宮城県 登米郡迫町の伊豆沼湖畔であった.この記録は北海道新記録であると共に,オノゴミグモの分布 北限となる. ムツトゲイセキグモの飼育下における投げ縄行動 工 藤 泰 恵 ムツトゲイセキグモの投げ縄行動を観察する幸運に恵まれたので次の通り報告致します. 1997 年 8 月 6 日,千葉県立中央博物館の生態園で久保田三栄子さんが採集した中令位のムツ トゲイセキグモ Ordgarius sexspinosus(以下ム ツトゲ)を入 手し,飼育して いたところ,8 月 17 日夜 7 時 15 分頃,薄暗がりの中で投げ縄をゆっくり振り回しているのを発見した.飼育 に使用したケースは,4 ×4 センチの角形,高さ 12 センチのプラスチック製で,中には餌用の蛾 を 2 匹(クモと同大と,やや大きいサイズ)入れておいた.ムツトゲは,ケースの上方に何本か の糸を不規則に張り渡して,そこに左足でつり下がり,粘球は,右の第二脚の先に作っていた. 糸の長さは約 1 センチで,第二脚の長さよりやや長い程度,その先端に約 1 ミリのかなり大きい 25 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 ──────────────────────────────────DRAGLIN ES── 球が付いていた.よく見えるようにと電気をつけてしまったためか,振り回すのをやめてしまっ たので,蛾を捕らえるところは観察できなかった.その後毎晩観察を続けたが,二度と見ること ができぬまま 8 月 24 日死亡した. ムツトゲの飼育は, 飼育経験の浅い私 には大変難しくて , いかにして餌に食い つかせるかの方法を 見いだせぬうちに 死 亡してしまった.ピ ンセットで蛾を鼻先 へ突き出しても全 く 関心を示さなかった し,蛾自身が動き回 ってムツトゲの目 の 前に来ても,まるで振り払うように前脚 2 本を動かすだけで, とても捕らえ損ねた という様子ではなか った.次々と蛾を 入 れてみたが,蛾に食 いついているところ は一度も観察でき ず に終わってしまった. ムツトゲは,オスの蛾しか捕らえないとのことだが,私が入れていた蛾は,メスばかりだったの だろうか.オスの蛾とメスの蛾の味が異なると思えないのに,目の前にあっても何故食いついて くれないのか.この点に関し,ご存じの方がいらしたら是非ご教授をお願いしたい. 余談だが,8 月 10 日朝,脱皮殻を発見した.体長は,脱皮後でも 5.2 ミリだったので,2 年 前に飼育した個体(1995 年 8 月 6 日採集,亜成体 8 ミリ,8 月 9 日脱皮して成体)に比して, 時期的に成長が遅い個体であった. 最後に,貴重な蜘蛛を提供して下さった久保田三栄子さんと,親切に飼育の指導をして下さっ た加藤むつみさんに,紙面をお借りして厚く御礼申し上げます. ジョロウグモの迷網除去実験 谷 川 明 男 ジョロウグモの網構造の特徴の一つに3重網であることが挙げられる.すなわち,主網の前後に 迷網が存在することである.外敵から身を守るのも迷網の存在意義の一つであろう.特にクモの 背面は,もしも迷網が無ければ無防備な状態にあるといえよう.そんな新海 明さんの話に興味 を持ったので,迷網が外敵から身を守るのにどのくらい役立っているかを確認しようと迷網の除 去実験を行ってみた.実験は鎌倉市にある県立 七里ガ浜高等学校弓道場の周囲で行った.20 頭 のジョロウグモを無作為に選び,そのうち 10 頭のクモ背面の迷網をはさみで切り取り,その後 の経過を対照の 10 頭と共に追跡,記録した.その結果,背面の迷網を切り取られたジョロウグ モは,すぐに迷網を張り直した. 26 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 ────DRAGLIN ES───────────────────────────────── オオヒメグモに寄生するハチ(マダラコブクモヒメバチ) 新 海 明 オオヒメグモ Achaearanea t epidariorum の不規則網の中に米粒大の大きさの蛹が吊り下が っているのをよく見かける.これは植村利夫氏がかつて「オオヒメグモヤドリバチという仮の名 をつけ」「山本大二郎氏に依ると Zat ypota albicoxa Walker」だと呼んでいたものだと思われ る[植村,1958 :自然の観察(3/4 )].このハチについての記載は古くから散見される.筆者 が知るかぎりでは,植村によって引用されていた山本大二郎の記録が最も初期のもので日本蜂類 談話会々誌(1 −1 :24 −25 )に「蜂と 蜘蛛(1 )」とい うタイトルで「之れ 等のオホヒメグモ に 時に緑色の小幼蟲が附着してゐること があるがそれを飼育して姫蜂の 1 種 Zat ypota albicoxa Walker を得た.之れはオホヒメグモに寄生し而も寄生頻度の高い蜂である」と述べている[Acta arachnol., 10 (1/2) :57 ].石野田[1958 :Atypus ,(15) :10 ]も九州霧島国立公園の尾 鈴 山でこのハチをオオヒメグモから記録している.橋本[1963 : Acta arachnol., 18 (2 ):27 −29 ]も三重県名張市香落渓で採集し記録している.これらの文献からオオヒメグモの網にいる このハチの正体は Zat ypota albicoxa と学名のついたハチであることが判ったが,その和名は植 村が「かりにつけた」オオヒメグモヤドリバチで良いのだろうか.蜂類図鑑を調べてみると Z. albicoxa Walker,1874 )という学名があり,その横には「マダラコブクモヒメバチ」という和 名が添えられていた.このようなことから,オオヒメグモに寄生していたこのハチの素性がやっ と判った.私も最近になりこのハチをオオヒメグモの網から採集しその行動を記録したので報告 する. 観察採集したのは,1996 年 10 月 6 日で愛知県犬山市にある犬山城の三光稲荷神社の裏塀だ った.発見者は小笠原幸恵さんで私が呼ばれたときはマダラコブクモヒメバチ(以下,ハチと呼 ぶ)はオオヒメグモの網にかかって餌となっていたコアシダカグモにとまって,それにしきりに 産卵管を挿入していた.綱主のオオヒメは下方に逃げていた.付近には,これとは別にもう一匹 のハチが探索行動をしていた.それをみると,オオヒメはこのハチが接近すると素早く網から落 下逃亡していた.また,この周囲のオオヒメの網にこのハチの蛹が吊り下げられていたものが多 数みられた.ここで,私はこのハチを 1 頭と蛹を 3 個採集して持ち帰ったところ数日後に 2 例 から羽化したが,採集したハチと同一のものであった. 私は,オオヒメグモの網に吊り下がっているこの蛹をこの他に,東京都下や静岡県駿東郡須走 や沖縄県名護市などでも見ている.果たしてこれらのハチが同一種なのか不明であるが,今後注 意して観察採集をしてみたいと考えている. 本稿をまとめるにあたり,薄葉 重氏には文献の紹介とハチの標本同定を,新海栄一氏には文 27 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 ──────────────────────────────────DRAGLIN ES── 献の紹介を,須賀瑛文氏には犬山での観察の案内をしていただいた.ここに御礼申し上げる. 沖縄県での珍蛛の採集記録 新 海 明 沖縄県での 珍しいクモ といえばワ クドツキジ グモとツシ マトリノフ ンダマシが 頭に思い浮 か ぶだろう.ごく最近までの私の知る範囲では,ツシマトリノフンダマシについては千木良(1978 ) による観察例の報告を知るだけで,ワクドツキジグモについては本部半島の伊豆味付近で採集さ れたことがあるらしいという噂話を知る程度のものだった. ところが,足繁く沖縄に通ううちに,これら 2 種の珍品だけでもかなりの採集記録があること がわかった.ここでは,1997 年 8 月現在での私が調べた沖縄県での珍蛛の採集記録を報告する. ワクドツキジグモ Pasilobus buf onius 本部町伊豆味 1974 年 7 月 29 日 下謝名松栄 名護市汀間三原志根垣川 1976 年 6 月 千木良芳範他(名護市教育委員会,1997 ) 久米島 不 明 千木良芳範他( 〃 ) 国頭村与那( 琉球大学演習林) 1988 年 7 月 20 日頃 山本正英 (下謝名,私信) (佐々木健志,私信) マメイタイセキグモ Ordgarius hobsoni 本部町渡久地 1971 年 6 月 23 日 下謝名松栄 (下謝名,私信) 名護市久志 1973 年 6 月 千木良芳範他(名護市教育委員会,1997 ) 名護市安部 1993 年 6 月 12 日 干木良芳範他( 〃 ) 本部町渡久地 1996 年 7 月 15 日 宮下 直 (宮下,私信) ツシマトリノフンダマシ Paraplect ana t sushimensis 国頭村与那覇岳 1961 年 8 月 下謝名松栄 恩納村名嘉真 1977 年 5 月 1 日 干木良芳範 (千木良,1978 ) 恩納村(県民の森) 1988 年 5 月 20 日頃山本正英 (佐々木,私信) 国頭村奥(奥 1 号林道) 1995 年 6 月 16 日 湊 和雄 (佐々木,私信) 国頭村与那( 琉球大学演習林) 1997 年 7 月 29 日 塩崎哲哉 (下謝名,私信) (塩崎,私信) なお,本報告をまとめるにあたり,下謝名松栄・千木良芳範・佐々木健志・塩崎哲哉・宮下直 の各氏に情報の提供をいただいた.ここに御礼申し上げる. 引用文献 名護市教育委員会編,1997.名護の自然.1−123pp. 名護市教育委員会. 千木良芳範,1978.ツシマトリノフンダマシの網について.Atypus,(72 ):19−24. 28 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 東京蜘蛛談話会 1994 年度観察採集会報告 飯能市西吾野のクモ 平 松 毅 久 1994 年度の談話会観察採集会は埼玉県飯能市の西武池袋線西吾野駅から高山不動へ向かうハ イキング・コ−スで行われた.実際には高山不動までは行かず荒川水系北川沿いに進み,高畑口 から高畑川沿いに高山不動への山道(舗装道)を少し登り,途中で引き返す片道約2km の道程 であった.駅を出て小さな橋を渡ると道を隔てた沢の反対側は植林されたスギの斜面林になって おり更に行くと石灰岩の崖が現れ,ウツギなどの落葉低木が生い茂っている.西武線のガ−ドを くぐってすぐの斜面でウツギの葉にハグモの一種(通称赤いハグモ)が多数確認された.本種の これだけまと まった個体 群が確認さ れたのは少 なくとも関 東地方では 初めてであ ろう(平松 , 1996 ).しばらく沢沿い の明るい道が続き,や がて北川の支流高畑川 を北上すると日当たり の 悪い茂みや湿った岩場,日当たりの良い崖が断続的に現れ,やがて鬱蒼とした薄暗い杉林に囲ま れるがその先へは進まなかった. 注目される種としてはハグモの一種の他にトゲグモ(10 月千田高史氏採集),オダカグモ(2 月泉宏子女史採集,貞元己良氏同定)が挙げられる.オダカグモはおそらく国内では一番北での 記録になろう(貞元,私信).また採集会当日の記録ではないが,1994 年 4 月 30 日木村知之 氏がムツメカレハグモ Lat hys sexoculat a の雄成体を採集している(木村,私信). 観察採集日と参加者(敬称略) 第1回 1994 年 5 月 15 日 天候雨 阿部代始子,荒金泰子,池田博明,加藤むつみ,木村知之,小峰光弘,笹岡文雄,新海 明, 鈴木成生,千田高史,伴 満,平松毅久,深瀬徳子,古浜 隆,安田明雄(以上 15 名) 第2回 1994 年 7 月 10 日 天候曇り時々雨 浅間 茂,阿部代始子,池田博明,笠原喜久雄,加藤むつみ,木村知之,木村正明,伴 満, 鈴木成生,千田高史,平松毅久(以上 11 名) 第3回 1994 年 10 月 16 日 天候晴れ 赤羽尚夫,阿部代始子,天野和明,天野清子,荒金泰子,池田博明,泉 宏子,大塩一郎, 笠原喜久雄,加藤むつみ,木村知之,工藤泰恵,笹岡文雄,Janis Smith,鈴木成生,伴 満, 千田高史,長井芳夫,中島晴子,中野隆雄,初芝伸吾,平松毅久,古浜 隆,牧原くみ子, 和仁道大(以上 25 名) 第4回 1995 年 2 月 27 日 天候晴れ 29 泉 宏子,大川秀治,笠原喜久雄,加藤むつみ,北山元章,木村知之,工藤泰恵,小峰光弘, 笹岡文雄,貞元己良,新海明,新海栄一,千田高史,長井芳夫,中野隆雄,初芝伸吾,伴 満 (以上 17 名) 目 録 この目録は当日採集あるいは観察されたものをその場で同定した種を中心に,後日標本同定さ れた種を加えて平松が記録し(第4回は笹岡文雄氏が記録),集計したものである. 略号説明:M(雄成体),F(雌成体),m(雄幼体),f(雌幼体),y(雌雄不明幼体), e(卵のう) 5月 7月 10 月 2 月 キノボリトタテグモ F F y ジグモ Ff y ハグモの一種 FM Fy 4. Miagrammopes orient alis マネキグモ y 5. Octonoba sybot ides カタハリウズグモ FMy F 6. Oct onoba varians ウズグモ F F 7. Octonoba yesoensis エゾウズグモ FMm Ctenizidae トタテグモ科 1. Ummidia f lageria Atypidae Fy ジグモ科 2. Atypus karschi Dictynidae ハグモ科 3. Dictyna sp. Uloboridae Fy my ウズグモ科 Segestriidae ミヤグモ y Fy f マシラグモ科 9. Lept onet a sp. Pholticidae y エンマグモ科 8. Ariadna lat eralis Leptonetidae y M マシラグモの一種 ユウレイグモ科 10. Pholcus crypt icolens ユウレイグモ Fy F F fy 11. Achaearanea angulit horax ツリガネヒメグモ y Fey Fe y 12. A. japonica ヒメグモ 13. A. t epidariorum オオヒメグモ Fy F f 14. Argyrodes cylidratus トビジロイソウロウグモ FM y y 15. A. cylindrogast er オナガグモ Mf y y 16. A. fur フタオイソウロウグモ f F y my 17. A. saganus ヤリグモ Ffy F y y Theridiidae 30 ヒメグモ科 y Fy 5月 18. Crysso argyrodif ormis オダカグモ 19. C. punct if era ホシミドリヒメグモ 20. C. venust a コガネヒメグモ 21. Dipoena must elina カニミジングモ 22. Episinus aff inis ヒシガタグモ 23. E. nubilus ムラクモヒシガタグモ y 24. St eat oda cavernicola ハンゲツオスナキグモ F 25. Theridion chikunii バラギヒメグモ F 26. T. lat if olium ヒロハヒメグモ F 27. T. steminot at um ムナボシヒメグモ 28. T. subadult um コケヒメグモ Mfy 29. T. yunohamense ユノハマヒメグモ F Linyphiidae 7月 10 月 2月 y F y F y y fm Fy F f y Fe F F y m y y サラグモ科 30. Bat hyphant es robust us クロテナガグモ F 31. B. tat eyamensis タテヤマテナガグモ F 32. Doenit zius peniculus デ−ニッツサラグモ 33. Erigonidium nigrit erminorum ハシグロナンキングモ 34. Gonat ium japonicum ヤマトケズネグモ 35. Labulla cont ort ipes アシヨレグモ 36. Linyphia f usca クスミサラグモ FM 37. L. japonica ツリサラグモ F 38. L. longipedella アシナガサラグモ y 39. L. oidedicata ヘリジロサラグモ FM 40. L. yunohamensis ユノハマサラグモ F 41. Nemat ogmus sanguinolent us チビアカサラグモ Ff 42. Strandella quadrimaculat a ヨツボシサラグモ Ff 43. Ummeliat a osakaensis オオサカアカムネグモ 44. Walckenaeria kant onis カントウヒゲヌカグモ Mimetidae F F m y y F y y m y y y f F F センショウグモ科 45. Ero japonica センショウグモ Theridiosomatidae F y カラカラグモ科 46. Ogulnius pullus ヤマジグモ Ff Fe y 47. Theridiosoma epeiroides カラカラグモ FMm Fe y 48. Wendilgarda sp. ナルコグモ Anapidae fmy m m ヨリメグモ科 31 49. Conoculus lyugadinus Mysmenidae ヨリメグモ 5月 7月 y y 10 月 2月 コツブグモ科 50. Mysmenella jobi ナンブコツブグモ Ff 51. Acusilas coccineus ハツリグモ y 52. Araneus abscissus キザハシオニグモ My 53. A. ejusmodi ヌサオニグモ 54. A. fuscocolorat a ヤミイロオニグモ F 55. A. ishisawai イシサワオニグモ y 56. A. pentagrammicus アオオニグモ 57. A. pseudocentrodes トガリオニグモ y 58. A. uyemurai ヤマオニグモ Mf 59. A. viridiventris ハラビロミドリオニグモ 60. A. sp. ヤミイロオニグモの一種 F F 61. Araniella yaginumai ムツボシオニグモ m F 62. Argiope boesenbergi チュウガタコガネグモ f F y 63. A. bruennichii ナガコガネグモ y F 64. A. minut a コガタコガネグモ 65. Cyclosa sp. カラスゴミグモの一種 66. C. oct ot uberculat a ゴミグモ Ff 67. C. sedeculat a ヨツデゴミグモ F 68. Cyrt arachne buff o トリノフンダマシ Fe 79. Gast eracantha kuhlii トゲグモ F 70. Hypsosinga sanguinea シロスジショウジョウグモ Mf 71. Larinia argiopif ormis コガネグモダマシ 72. Neoscona mellott eei ワキグロサツマノミダマシ 73. N. naut ica イエオニグモ F 74. N. scylla ヤマシロオニグモ f 75. N. scylloides サツマノミダマシ 76. Zilla ast ridae サガオニグモ F 77. Z. sachalinensis カラフトオニグモ FM Araneidae Fm コガネグモ科 Tetragnathidae y F y y F y f F F F F y y F y y y M y F y Fy y FMy Fy アシナガグモ科 78. Leucauge magnif ica オオシロカネグモ 79. L. subblanda コシロカネグモ f F 80. L. subgemmea キララシロカネグモ y FMf 32 f y 5月 81. Meta ret iculoides ヤマジドヨウグモ 82. Met leucauge kompirensis タニマノドヨウグモ y 83. M. yunohamensis メガネドヨウグモ Ffy 84. Nephila clavat a ジョロウグモ 85. Tet ragnatha maxillosa ヤサガタアシナガグモ 86. T. praedonia アシナガグモ 87. T. squamat a ウロコアシナガグモ Urocteidae 7月 10 月 2月 y Fy f y y y y F e y My y y y y ヒラタグモ科 88. Uroct ea compact ilis ヒラタグモ f F Fy Fy 89. Agelena limbat a クサグモ y FM Fe ye 90. A. opulent a コクサグモ y F 91. Coelot es corasides ヤマヤチグモ y 92. C. insidiosus シモフリヤチグモ F 93. C. luct uosus メガネヤチグモ 94. Cybaeus nipponicus カチドキナミハグモ F ハタケグモ M Agelenidae Hahniidae タナグモ科 M ハタケグモ科 95. Hahnia cort icico la Pisauridae y キシダグモ科 96. Dolomedes rapt or アオグロハシリグモ y y 97. D. saganus スジアカハシリグモ y FMy y 98. D. sulf ureus イオウイロハシリグモ F Fy Lycosidae フジイコモリグモ 100. A. japonica ヒノマルコモリグモ 101. Pardosa ast rigera ウヅキコモリグモ Fe 102. P. yaginumai キシベコモリグモ y 103. P. sp. ハリゲコモリグモ sp. 104. Pirata t anakai コガタコモリグモ 105. Oxyopes sertat us Clubionidae my y y fy y my コモリグモ科 99. Arct osa f ujiii Oxyopidae y F fm y Fe ササグモ科 ササグモ f fy フクログモ科 106. Clubiona jucunda ヤハズフクログモ 107. C. lena トビイロフクログモ 108. C. vigil ムナアカフクログモ F y F 33 5月 7月 10 月 2月 109. C. zilla ウコンフクログモ M 110. It at sina prat icola イタチグモ y 111. Phrurolit hus nipponicus ウラシマグモ 112. Ort hobula crucifera オトヒメグモ F 113. Trachelas japonica ネコグモ y Anyphaenidae F イヅツグモ シボグモ科 115. Anahit a f auna シボグモ Heteropodidae Thomisidae f y f y アシダカグモ科 116. Heteropoda f orcipata コアシダカグモ カニグモ科 117. Bassaniana decorat a キハダカニグモ 118. Diaea subdola コハナグモ 119. Lysiteles coronat us アマギエビスグモ 120. Misumenops kumadai クマダハナグモ 121. M. t ricuspidatus ハナグモ 122. Oxytat e striat ipes ワカバグモ FM y y 123. Tmarus piger トラフカニグモ Ff F F 124. Xyst icus croceus ヤミイロカニグモ FM F y Philodromidae F m FMe y F F fm M y キハダエビグモ 126. P. subaureolus アサヒエビグモ 127. Tibellus t enellus シャコグモ y f y Fe ハエトリグモ科 128. Carrhot us xant hogramma ネコハエトリ y 129. Evarcha albaria マミジロハエトリ FM FMy 130. Harmochirus insulanus ウデブトハエトリ F y 131. H. pullus キレワハエトリ y 132. Marpissa dybouski オオハエトリ F 133. M. pulla ヨダンハエトリ 134. Myrmarachne innermichelis f fm m f ヤサアリグモ y y 135. M. japonica アリグモ M 136. Phint ella abnormis チャイロアサヒハエトリ M y 137. Plexippoides doenitzi デ−ニッツハエトリ M FMy 34 y エビグモ科 125. Philodromus spinitarsis Salticidae f イヅツグモ科 114. Anyphaena pugil Ctenidae y F F y 5月 7月 138. Plexippus payklli チャスジハエトリ 139. Rhene at rat a カラスハエトリ 140. Silerella vitt at a アオオビハエトリ FM 141. Yaginumaella st riat ipes ウススジハエトリ F 142. Yaginumanis sexdentat us ムツバハエトリ 合計(種数) 10 月 2月 F y F M 73 69 81 63 今回の調査では合計 28 科 142 種が確認された.杉林が多く道路も舗装されていてそれほど 変化に富んだ環境というわけでもないわりにはまずまずの種数と言えよう.なお目録中のカラス ゴミグモの一種 Cyclosa sp. は標本による同定を行っていないので,近似の2種のうちカラスゴ ミグモ Cyclosa atrata とカギヅメカラスゴミグモ C. hamulata のいずれか確認できなかった. また今回の採集観察会では高山不動までは行かなかったが,1977 年 5 月 1 日当時の東京蜘蛛談 話会有志による観察採集会が西吾野駅∼高山不動∼吾野駅というル−トで行われている.詳しく は KISHIDAIA No.42(1977 )の田中の報告を参照していただければわかると思うが,私的な集 まりのせいもあり種名のリストは発表されていない.今回の報告にあたり 1977 年の採集観察会 に参加された貞元己良氏のご好意により,貞元氏個人が採集されたクモのリストをご提供いただ いた.採集を実施した行程の長短,開発等による環境の変化もあり単純に比較できないが,参考 資料として末尾に付記した. 最後に過去の採集記録と今回の同定結果をお送り下さった貞元己良氏,同じく同定にご協力を いただいた池田博明,木村知之,笹岡文雄,新海 明,伴 満の各氏に厚く御礼申し上げる. 参考資料 1977 年 5 月 1 日 場所;西吾野駅∼高山不動∼吾野駅 貞元己良氏採集のクモ目録(種名のみ) Ctenizidae トタテグモ科 1.Ummidia f lageria キノボリトタテグモ Atypidae ジグモ科 2.Atypus karschi ジグモ Uloboridae ウズグモ科 3.Oct onoba sp. ウズグモの一種 Segestriidae エンマグモ科 4.Segest ria nipponica コマツエンマグモ Theridiidae ヒメグモ科 5.Achaearanea t epidariorum オオヒメグモ 6.Argyrhodes cylidrogaster Linyphidae サラグモ科 オナガグモ 7.Episinus aff inis ヒシガタグモ 8.Theridion chikunii バラギヒメグモ 9.Linyphia f usca クスミサラグモ 10.L. yunohamensis ユノハマサラグモ 11.Strandella quadrimaculat a ヨツボシサラグモ 35 Araneidae コガネグモ科 12.Acusilas coccineus ハツリグモ 13.Araneus ejusmodi ヌサオニグモ 14.A. fuscocolorat us ヤミイロオニグモ 15.A. macacus ヤエンオニグモ 16.A. pentagrammicus アオオニグモ 17.A. tsuno ツノオニグモ 18.A. vent ricosus オニグモ 19.Cyclosa oct ot uberculat a Tetragnathidae アシナガグモ科 ゴミグモ 20.Zilla astridae サガオニグモ 21.Z. sachalinensis カラフトオニグモ 22.Met leucauge yunohamensis メガネドヨウグモ 23.Tet ragnatha praedonia アシナガグモ 24.T. squamat a ウロコアシナガグモ Urocteidae ヒラタグモ科 25.Uroct ea compact ilis Pisauridae キシダグモ科 26.Pisaura lama アズマキシダグモ Lycosidae コモリグモ科 27.Pardosa astrigera ウヅキコモリグモ Anyphaenidae イヅツグモ科 28.Anyphaena pugil イヅツグモ Philodromidae エビグモ科 29.Philodromus spinit arsis Thomisidae カニグモ科 30.Oxyt at e st riat ipes Salticidae ハエトリグモ科 31.Harmochirus insulanus ウデブトハエトリ 32.Myrmarachne japonica 合計 15 科 32 種 引用文献 平松毅久,1996.西吾野に大量の赤いハグモ.Kishid aia, (70): 68. 田中理恵,1977.高山不動というところ.Kishid aia, (42): 26−28. 36 ヒラタグモ(無斑紋型) キハダエビグモ ワカバグモ アリグモ KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 東京蜘蛛談話会1995 年度観察採集会報告 東京都田無市・東京大学農学部付属演習林田無試験地のクモ 宮 下 直・笹 岡 文 雄 東京大学農学部付属演習林田無試験地は,およそ 9.1ha の面積をもち,周囲を農学部付属農 場や宅地などに囲まれている.植生としては,武蔵野に特徴的な雑木林(アカマツ,コナラ,ク ヌギ,イヌシデなど)に加え,照葉樹(シラカシ,クス),各種見本林(マツ類,スギ,ポプラ など),草地,苗畑などが存在し,環境は非常に多様である.本試験地は,都市部ではほとんど 全滅してしまった,ハルゼミ,クツワムシ,ジャノメチョウなどの貴重な昆虫類が生息するほか, オオタカ,アカゲラといった鳥類もほぼ周年みられ,自然度の極めて高い都市林である. 参加者(50 音順・敬称略) 第1回 1995 年5月 14 日(日)曇 阿部代始子,池田博明,泉 宏子,梅林 力,大川秀治,尾口治子,笠原喜久雄,加藤むつみ, 工藤泰恵,小峰光弘,笹岡文雄,佐々木智雄,佐藤幸子,赤藤由美子,新海 明,新海栄一,鈴 木成生,竹崎靖一,高橋 登,千田高史,長井芳夫,中野隆雄,浪波徳義,成田和子,初芝伸吾, 伴 満,平松毅久,宮下 直,安田明雄 29 名 第2回 1995 年7月9日(日)曇 阿部たい子,池田博明,泉 宏子,梅田泰圭,梅林 力,緒方 和,小川敦央,尾口治子,柿沼 智子,笠原喜久雄,加藤ななえ,加藤晴弘,加藤むつみ,木村知之,工藤泰恵,小峰光弘,笹岡 文雄,佐藤幸子,清水紀子,ボード・ハンス・シリング,鈴木成生,竹崎靖一,谷川明男,千田 高史,永井 隆,中島晴子,中野隆雄,浪波徳義,新村 誠,野崎文江,伴 満,平井正子,平 松毅久,宮下 直,山仲設子,山仲芳和,山本昭六 37 名 第3回 1995 年 10 月 15 日(日)晴 荒金泰子,池田博明,市川哲雄,市川弥生子,泉 千陽,泉 宏子,大川秀治,緒方 和,小川 敦央,尾口治子,柿沼智子,笠原喜久雄,加藤ななえ,加藤晴弘,加藤むつみ,木村知之,工藤 泰恵,笹岡文雄,佐藤幸子,清水紀子,新海 明,新海栄一,ボード・ハンス・シリング,杉本 喜亮,鈴木成生,竹崎靖一,谷川明男,千田高史,長井芳夫,中西 章,中野隆雄,中村文夫, 浪波徳義,平松毅久,深瀬徳子,福田英克,宮下 直,安田明雄,和仁道大 39 名 第4回 1996 年2月 18 日(日)雪 笹岡文雄,貞元己良,新海 明,谷川明男,千田高史,中野隆雄,平松毅久,宮下 直 8名 37 第 3 回 10 月 15 日(撮影:千田高史) 第 4 回 2 月 18 日(撮影:千田高史) 目 録 略号説明:F(雌成体),M(雄成体),m(雄幼体),f(雌幼体),y(雌雄不明幼体), e(卵のう),−(未確認). 5月 7月 10 月 2 月 y FMy 1. Ctenizidae トタテグモ科 1. Lat ouchia t ypica (Kishida) 38 キシノウエトタテグモ F y 5月 7月 10 月 2月 y Fy Fy y 2. Atypidae ジグモ科 2. Atypus karschi Dönitz ジグモ 3. Amaurobiidae ハグモ科 3. Dictyna f elis Bös. & Str. ネコハグモ Fe − F − 4. Lat hys humilis (Blackwall) カレハグモ M − − − 5. Miagrammopes orient alis Bös. & Str.マネキグモ Ff F y − 6. Octonoba sybot ides Bös. & Str. カタハリウズグモ M F y − 7. O. varians (Bös. & Str.) ウズグモ − − y − 4. Uloboridae ウズグモ科 5. Pholcidae ユウレイグモ科 8. Pholcus crypt icolens Bös. & Str. ユウレイグモ f F Fe FMy 9. P. phalangioides (Fuesslin) イエユウレイグモ F − − − 10. Achaearanea angulit horax (Bös. & Str.) ツリガネヒメグモ m F Fy − 11. A. asiat ica (Bös. & Str.) キヒメグモ y FMy − − 12. A. culicivora (Bös. & Str.) カグヤヒメグモ − FM y − 13. A. japonica (Bös. & Str.) ヒメグモ y fmy Fy y 14. A. kompirensis (Bös. & Str.) コンピラヒメグモ − FM − − 15. A. t abulata Levi オオツリガネヒメグモ − F − − 16. A. t epidariorum (C.Koch) オオヒメグモ F Fye mye − y − 6. Theridiidae ヒメグモ科 17. Argyrodes bonadea Karsch y シロカネイソウロウグモ y 18. A. cylindrogast er (Simon) オナガグモ M FMe m − 19. A. f issif rons O. P.-Cambridge チリイソウロウグモ y − ye − 20. A. f ur Bös. & Str. フタオイソウロウグモ y y y − − − − 22. Coleosoma oct omaculatum (Bös. & Str.) ヤホシサヤヒメグモ− − y − 23. Dipoena must elina (Simon) カニミジングモ − − Fy − 24. D. punct isparsa Yagimuma シモフリミジングモ Ff − F − 25. Episinus aff inis Bös. & Str. ヒシガタグモ F − y − 26. Theridion chikunii Yagimuma バラギヒメグモ FM FMe y y 27. T. st erninot atum Bös. & Str. ムナボシヒメグモ f Fe F y 28. T. subpallens Bös. & Str. ハイイロヒメグモ m − f − − M − − F − − 21. A. nipponicus Kumada ツノナガイソウロウグモ y 7. Linyphiidae サラグモ科 29. Bathyphant es t at eyamaensis (Oi) タテヤマテナガグモ 30. Diplocephaloides saganus (Bös. & Str.) ハラジロムナキグモ F 39 5月 7月 10 月 2月 31. Linyphia. oidedicata (Helsdingen) ヘリジロサラグモ FfM F y − 32. Meioneta nigra Oi クロケシグモ − M − − F F − − 34. Ost earius melanopygius (O.P.-Cambridge) スソグロサラグモ− − F − 35. Ummeliat a feminea (Bös. & Str.) F − − y − y − 33. Nemat ogmus sanguinolentus (Walck.) チビアカサラグモ アトグロアカムネグモ − 8. Mimetidae センショウグモ科 36. Ero japonica Bös. & Str. センショウグモ 9. Araneidae コガネグモ科 37. Acusilas coccineus Simon ハツリグモ − M y − 38. Araneus abscissus (Karsch) キザハシオニグモ − − y − 39. A. mit if icus (Simon) ビジョオニグモ − − FM − 40. A. pent agrammicus (Karsch) アオオニグモ F FM − − 41. A. pseudocent rodes Bös. & Str. トガリオニグモ y − − − 42. A. semilunaris (Karsch) マルヅメオニグモ m F − − 43. A. vent ricosus L.Koch オニグモ fy fy y y 44. A. viperif er Schenkel カラオニグモ FMy f y − 45. Argiope bruennichii (Scopoli) ナガコガネグモ − y F − 46. A. minuta Karsch コガタコガネグモ y fm F − 47. Chorizopes nipponicus Yagimuma ヤマトカナエグモ FMe FMe − − 48. Cyclosa argent eoalba Bös. & Str. ギンメッキゴミグモ FfMm y Fy − 49. C. japonica Bös. & Str. ヤマトゴミグモ − − F − 50. C. octot uberculat a Karsch ゴミグモ FM Fye y − 51. C. onoi Tanikawa オノゴミグモ my Fye − − 52. C. sedeculata Karsch ヨツデゴミグモ FMy Fye my m 53. Cyrt arachne buf o (Bös. & Str.) トリノフンダマシ − f Fye − 54. C. inaequalis Thorell オオトリノフンダマシ y f Fe − − − − − y − 57. Hypsosinga sanguinea (C. Koch) シロスジショウジョウグモ − y − − 58. Larinia argiopif ormis Bös. & Str. コガネグモダマシ F − − − 59. Neoscona adianta (Walckenaer) ドヨウオニグモ − − y − y F − 55. C. nagasakiensis Strand シロオビトリノフンダマシy 56. Cyrt ophora moluccensis (Doleschall) スズミグモ 60. N. mellott eei (Simon) − ワキグロサツマノミダマシ y 61. N. scylla (Karsch) ヤマシロオニグモ − y − − 62. N. scylloides (Bös. & Str.) サツマノミダマシ y f − − 63. Zilla sachalinensis (Saito) カラフトオニグモ F y y − 40 5月 7月 10 月 2月 10. Tetragnathidae アシナガグモ科 64. Leucauge subblanda Bös. & Str. コシロカネグモ fMmy FM y − 65. L. subgemmea Bös. & Str. キララシロカネグモ y FM − − 66. Met leucauge yunohamensis (Bös. & Str.) メガネドヨウグモ − − y − 67. Nephila clavat a L.Koch ジョロウグモ y y FfMmy e 68. Tetragnat ha praedonia L.Koch アシナガグモ y − y − 69. T. squamata Karsch ウロコアシナガグモ M f − y Fye F Fy Fye 11. Urocteidae ヒラタグモ科 70. Uroct ea compact ilis L.Koch ヒラタグモ 12. Agelenidae タナグモ科 71. Agelena limbata Thorell クサグモ y y − − 72. A. opulent a L.Koch コクサグモ y y FM − 73. Coelot es corasides (Bös. & Str.) ヤマヤチグモ y − − − 74. C. luctuosus (L.Koch) メガネヤチグモ Fy f y − f − − − y Fye − y m Fy − 13. Pisauridae キシダグモ科 75. Dolomedes saganus Bös. & Str. スジアカハシリグモ 76. D. sulf ureus L. Koch イオウイロハシリグモ y 77. Pisaura lama Bös. & Str. アズマキシダグモ 14. Lycosidae コモリグモ科 78. Arct osa ebicha Yagimuma エビチャコモリグモ − FM F − 79. A. fujiii Tanaka フジイコモリグモ f − y − 80. Lycosa coelest is L.Koch ハラクロコモリグモ y − m − 81. Pardosa ast rigera L.Koch ウズキコモリグモ Fmy m y − 82. P. laura karsch ハリゲコモリグモ fM FMe y − 83. Pirata procurvus (Bös. & Str.) チビコモリグモ − FMe − − 84. P. t anakai Brignoli コガタコモリ − FM − − 85. Trochosa ruricola (De Geer) アライトコモリグモ − − y − 15. Oxyopidae ササグモ科 86. Oxyopes badius Yagimuma クリチャササグモ y − y − 87. O. sert atus L. Koch ササグモ fm FM y − F − − − 89. Chiracanthium eut itt ham Bös. & Str.アシナガコマチグモ fm − y − 90. C. kurilensis Bös. & Str. − M − − 16. Gnaphosidae ワシグモ科 88. Drassodes serrat idens Schenkel トラフワシグモ 17. Clubionidae フクログモ科 ヒメフクログモ 41 5月 7月 10 月 2月 91. C. rostrata Paik マイコフクログモ FM − − − 92. C. vigil Karsch ムナアカフクログモ − − − y 93. Phrurolit hus komurai Yaginuma コムラウラシマグモ − − FM − 94. P. nipponicus Kishida ウラシマグモ FM F fy − 95. P. pennat us Yaginuma ヤバネウラシマグモ − F − − 96. Trachelas japonicus Bös. & Str. ネコグモ F − − − − y − FM F − − − y M y − 18. Anyphaenidae イヅツグモ科 97. Anyphaena pugil Karsch イヅツグモ 19. Heteropodidae アシダカグモ科 98. Heteropoda f orcipata (Karsch) コアシダカグモ 20. Ctenidae シボグモ科 99. Anahit a f auna Karsch シボグモ 21. Philodromdae エビグモ科 100. Philodromus auricomus L. Koch キンイロエビグモ y F y y 101. P. spinit arsis Simon キハダエビグモ FM Fe y Ffm 102. P. subaureolus Bös. & Str. アサヒエビグモ Ffy Fy − − 103. Thanat us miniaceus Simon ヤドカリグモ − − F − 104. T. nipponicus Yaginuma ヤマトヤドカリグモ − − y − 105. Tibellus t enellus (L. Koch) シャコグモ Ffy F y − 22. Thomisidae カニグモ科 106. Bassaniana decorat a (Karsch) キハダカニグモ m F y F 107. Coriarachne fulvipes (Karsch) コカニグモ Fy f − Fy 108. Diaea subdola O.P.-Cambridge コハナグモ − f m − 109. Lysiteles coronat us (Grube) アマギエビスグモ F − − − 110. Misumenops kumadai Ono クマダハナグモ F − y y 111. M. tricuspidatus (Fabricius) ハナグモ Fye Fe m − 112. Oxytat e striat ipes L. Koch ワカバグモ FM fy f − 113. Thomisus labef act us Karsch アズチグモ y f − − 114. T. rimosus Paik セマルトラフカニグモ y FM − − 115. Xyst icus croceus Fox ヤミイロカニグモ FMe y − 116. X.saganus Bös.& Str. オオヤミイロカニグモ − F − − − − F − 118. Carrhot us xant hogramma (Latreille) ネコハエトリ FM F y − 119. Euophrys iwat ensis Bohd. & Prós. イワテハエトリ M − y − FM 23. Salticidae ハエトリグモ科 117. Brist owia het erospinosa Reimoser 42 マツモトハエトリ 5月 7月 10 月 2月 120. Evarcha albaria (L.Koch) マミジロハエトリ FM FM Fy − 121. Harmochirus insulanus (Kishida) ウデブトハエトリ FM F y − 122. H. pullus (Bös.& Str.) キレワハエトリ F FM Fy − 123. Lauf eia aenea Simon エキスハエトリ F F − − 124. Marpissa elongata (Karsch) ヤハズハエトリ f M y − 125. M. pulla (Karsch) ヨダンハエトリ F FM Fmy − 126. Myrmarachne innermichelis (Bös.& Str.) ヤサアリグモ y f − − 127. M. japonica Karsch Ff − F y FM y y アリグモ 128. Phint ella abnormis (Bos.& Str.) チャイロアサヒハエトリf 129. P. cast riesiana (Grube) マガネアサヒハエトリ − M − − 130. P. linea (Karsch) メガネアサヒハエトリ − F − − 131. Plexippoides annulipedis (Saito) マダラスジハエトリ M − − f 132. P. doenit zi (Karsch) デーニッツハエトリ f − M − 133. Pseudicius vulpes (Grube) イナズマハエトリ − − y − 134. Rhene at rat a (Karsch) カラスハエトリ y Fmy y y 135. Silerella vitt at a (Karsch) アオオビハエトリ f FM − − − − − − − y − 99 89 89 23 136. Sitt icus penicillat us (Simon) シラホシコゲチャハエトリM 137. Yaginumanis sexdentat us Yaginuma ムツバハエトリ 以上 23 科 137 種を報告する.基本的には採集日当日に観察されたものを集計し,各個体の種 の確認はおこなっていない.その後,標本同定された種を追加調整してリストとしたが,観察例 のみとの区別はしていない. またさらに当地において確認されたことを,特に記録する必要があるクモについて以下に示す ことにする. 1)キシノウエトタテグモ Lat ouchia typica (Kishida) 地中性のクモで,土中に管状の住居を造り入口に蓋をつける.「レッドデータブック」(日本 の絶滅のおそれのある野生生物 無脊椎動物編)に記載されているクモ類希少3種の中の一つ. 東京では住宅地,寺社などに多く,今のところ普通種である.当地でも人家周辺のみで確認され た.関東以南の主に都市部に分布しているが,全国的には分布空白地が多く調査は進んでいない. また本種のみから発生するとされる寄生性の菌類クモタケ Nomuraea atypicola も,7月9日に 確認された. 2)マルヅメオニグモ Araneus semilunaris (Karsch) 樹間の高い位置に垂直円網を張る,山地性のクモである.緑地であっても平地で採集されるの 43 は稀である. 3)ヤマトゴミグモ Cyclosa japonica Bös. & Str. マルヅメオニグモと同じく,山地性のクモである.これも平地で採集されるのは珍しい. 4)オノゴミグモ Cyclosa onoi Tanikawa 基準産地の宮城県の伊豆沼の他,神奈川県の丹沢,熊本市など数ヵ所の記録があるが,いずれ も1個体と採集例は少ない.当地でも分布範囲はごく狭く個体数も限られるが,現在確実に定着 している唯一の場所である.また雄の記載は当地と兵庫県の標本によっている. 5)スズミグモ Cyrt ophora moluccensis (Doleschall) 南方系の大型のクモで,時に1mにもなる大きなドーム型の網を張る.西日本では普通種であ るが,近年北上傾向にある.当地では 10 月 15 日に幼体1例の採集報告があった.恐らくバル ーニング等により分散してきたものを確認したと思われるが,いずれにしても現在のところ当地 が分布の北限にあたる. 6)マツモトハエトリ Brist owia het erospinosa Reimoser 1属1種のハエトリで,体形はアメイロハエトリ属 Synagelides によく似ている.特に雌 は アメイロハエトリ Synagelides agoriformis と誤認されやすい.西表島から関東まで報告があり, 河川敷で採集されることが多い.ただし全体の採集例は少ない. 7)イワテハエトリ Euophrys iwat ensis Bohd. & Prós. 名称は基準産地の岩手県による.地表やリター層を徘徊する小型のハエトリで,採集例が非常 に少ない.同属のハエトリグモに酷似するものが多いために,体形や班紋のみによる識別は困難 である. 最後に池田博明,工藤泰恵,貞元己良,谷川明男の各氏には採集標本の同定結果をお知らせい ただいた.また池田,谷川両氏および新海栄一氏には,特記した種についていろいろとご教示い ただいた.さらに千田高史氏は本稿に掲載のための写真を快く提供して下さった.ここに紙面を 借り,各氏に厚くお礼申し上げたい. 参考文献 環境庁自然保護局野生生物課,1991.日本の絶滅のおそれのある野生生物 レッドデータブック 無脊椎動物 編.pp.249−250. 自然環境研究センター,東京. Tanikawa, A., 1992. A Re visional study of the Japane se spide rs of the ge nus Cyclosa Me nge (Arane ae : Arane idae ). Acta ar achnol., 41: 11−85. Tanikawa, A., 1992. A De scription of the Male of Cyclosaonoi Tanikawa, 1992 (Arane ae : Arane idae ). Acta ar achnol., 41: 199−202. 44 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 東京蜘蛛談話会 1996 年度観察採集会報告 小網代の森のクモ 安 田 明 雄 1996 年度の観察採集会は,神奈川県三浦市小網代の森でおこなわれた.小網代の森は,神奈 川県南東部,三浦半島の先端 近くにあり,面積は約 100ha,落 葉広葉樹と常緑広葉樹からな る 混合林がみられる.森の中を小川が流れ,源流から河口までの完結した集水域をなしている.ま た,夏の晩にアカテガニの産卵がおこなわれる場所としても知られている. 三浦市の年平均気温は 15.4 ℃,年平均降水量は 1586mm(統計期間 1971 年∼1990 年)で あり,神奈川県内でも温暖な地域である. 観察・採集は,おもに白髭神社から干潟まで小網代湾に沿っておこなわれた(図1). 4回の観察採集会を通じて以下の点に気づいた. 1.ジグモがいてもおかしくない環境にもかかわらず,確認されなかった. 2.クロマルイソウロウグモが神奈川県内で4例目の記録となった. 3.シモフリヤチグモFが小型で,体長は6mm 弱であった(普通は 15mm 位).このような 小型の個体は,千葉県船橋市のある地域においても見られる.(貞元私信) なお,小網代の森での観察採集会を設定するに当たり,お世話になった岸 由二氏にお礼申し 上げる. 神奈川県 三浦半島 小網代の森 図1.小網代の地図 45 採集観察日と参加者(50 音順,敬称略) 第1回 1996 年5月 19 日(日)晴 浅間 茂,梅田泰圭,緒方 和,長田佐智子,織茂尚子,笠原喜久雄,加藤ななえ,加藤むつみ, 工藤泰恵,鈴木成生,佐藤幸子,新海 明,高橋 登,千田高史,中野隆雄,新村 誠,西尾美 枝子,伴 満,前川隆敏,安田明雄,山川 守,和仁道大(22 名) 第2回 1996 年7月 14 日(日)晴 池田博明,及川照代, 長田佐智子,笠原喜久雄,加藤むつみ,木村知之,工藤泰恵,小池牧子 , 笹岡文雄,貞元己良,佐藤幸子,高橋 登,谷川明男,中野隆雄,長井芳夫,浜岡史子,守 桂 子,安田明雄(18 名) 第3回 1996 年 10 月 21 日(日)曇り後雨 浅間 茂,笠原喜久雄,加藤むつみ,笹岡文雄,新海 明,新海栄一,鈴木成生,谷川明男,千 田高史,中野隆雄,平松毅久,古浜 隆,水野陽介,安田明雄,関東学院中学・高校生:青木重 之,石渡大輔,坂田大輔,千葉真由美,三川英之(19 名) 第4回 1997 年2月 23 日(日)晴 赤羽尚夫,押田房子,笠原喜久雄,加藤むつみ,小峰光弘,笹岡文雄,貞元己良,谷川明男,中 野隆雄,新村 誠,平松毅久,安田明雄(12 名) 5 月 19 日 干潟にて 目録および季別一覧 この目録は,現地で観察・採集された種の記録と,標本を持ち帰り同定された種の記録とを合 わせて集計したものであるが,目録中ではその区別をしていない. 目録中の記号の意味は以下のとおりである. M(雄成体),F(雌成体),m(雄幼体),f(雌幼体),y(性別不明幼体),e (卵のう), −確認されず 46 5月 7月 10 月 2月 − F y y F F − y Antrodiaetidae カネコトタテグモ科 1. Ant rodiaetus roretzi カネコトタテグモ Ctenizidae トタテグモ科 2. Ummidia fragaria キノボリトタテグモ Uloboridae ウズグモ科 3. Hypt iot es aff inis オウギグモ − − F − 4. Octonoba sybot ides カタハリウズグモ − Fye ye − − F − − − Fye − FM − − Oecobiidae チリグモ科 5. Oecobius annulipes チリグモ Segestriidae エンマグモ科 6. Ariadna insulicola シマミヤグモ Theridiidae ヒメグモ科 7. Achaearanea japonica ヒメグモ y y 8. Achaearanea tepidariorum オオヒメグモ F Fmfye Fye 9. Anelosimus crassipes アシブトヒメグモ f − f 10. Argyrodes bonadea シロカネイソウロウグモ y ye FMy y 11. Argyrodes cylindratus トビジロイソウロウグモ − F − − 12. Argyrodes cylindrogaster オナガグモ F y f y 13. Argyrodes f issif rons チリイソウロウグモ − Fe − − 14. Argyrodes f ur フタオイソウロウグモ − − y − 15. Dipoena cast rata ボカシミジングモ − F − − 16. Dipoena must elina カニミジングモ f − − − 17. Enoplognat ha t ransversif oveata カレハヒメグモ F Fe Fm Ffy 18. Episinus aff inis ヒシガタグモ − − − y 19. Spheropist ha melanosoma クロマルイソウロウグモ − Fe − − 20. Theridion st erninotat um ムナボシヒメグモ − F − y − − − F Fmy fmy Nesticidae ホラヒメグモ科 21. Nest icus brevipes コホラヒメグモ Linyphiidae サラグモ科 22. Doenit zius peniculus デ−ニッツサラグモ − − F − 23. Linyphia oidedicat a ヘリジロサラグモ ? y − M 24. Meioneta obliqua ナナメケシグモ − FM − − 25. Walckenaeria sait oi サイトウコブヌカグモ − M − − − FM y − Mimetidae センショウグモ科 26. Ero japonica センショウグモ 47 5月 7月 10 月 2月 Araneidae コガネグモ科 27. Acusilas coccineus ハツリグモ − − y − 28. Araneus macacus ヤエンオニグモ − y − − 29. Araneus mit if icus ビジョオニグモ − y − − 30. Araneus pent agrammicus アオオニグモ − y − − 31. Araneus vertricosus オニグモ f Fy Fy y 32. Araniella yaginumai ムツボシオニグモ − y − − 33. Argiope amoena コガネグモ y y y − 34. Argiope bruennichii ナガコガネグモ − Ff F − 35. Argiope minut a コガタコガネグモ − fe F − 36. Cyclosa japonica ヤマトゴミグモ − − F − 37. Cyclosa oct ot uberculata ゴミグモ FMy Fe y − 38. Cyclosa sedeculata ヨツデゴミグモ y Fe my y 39. Cyrt arachne inaequalis オオトリノフンダマシ − − e − 40. Cyrt arachne nagasakiensis シロオビトリノフンダマシ − f − − 41. Neoscona mellott eei ワキグロサツマノミダマシ − y − − 42. Neoscona naut ica イエオニグモ − − F − 43. Neoscona scylla ヤマシロオニグモ y M − − 44. Neoscona scylloides サツマノミダマシ y My − − 45. Neoscona subpullat a ヘリジロオニグモ − y − − 46. Yaginumia sia ズグロオニグモ − F f − 47. Zilla ast ridae サガオニグモ − − y − Tetragnathidae アシナガグモ科 48. Leucauge blanda チュウガタシロカネグモ − − F − 49. Leucauge magnif ica オオシロカネグモ − FM − − 50. Met a ret iculoides ヤマジドヨウグモ − Ff F − 51. Met leucauge yunohamensis メガネドヨウグモ − − y − 52. Nephila clavat a ジョロウグモ − y FMy e 53. Tetragnat ha maxillosa ヤサガタアシナガグモ − F FM − 54. Tetragnat ha praedonia アシナガグモ f − y − 55. Tetragnat ha squamata ウロコアシナガグモ M − − my F fm y Fy y F − y Urocteidae ヒラタグモ科 56. Uroct ea compact ilis ヒラタグモ Agelenidae タナグモ科 57. Agelena limbata 48 クサグモ 5月 7月 10 月 2月 58. Agelena opulenta コクサグモ y my F − 59. Coelot es corasides ヤマヤチグモ f − − − 60. Coelot es insidiosus シモフリヤチグモ − − − F 61. Coelot es kit azawai アズマヤチグモ − − − F 62. Coelot es luct uosus メガネヤチグモ F M FMy − Pisauridae キシダグモ科 63. Dolomedes sulf ureus イオウイロハシリグモ y y y f 64. Pisaura lama アズマキシダグモ − − − y Lycosidae コモリグモ科 65. Pardosa ast rigera ウヅキコモリグモ F FM fy y 66. Pirata procurvus チビコモリグモ − F − − f − − y Oxyopidae ササグモ科 67. Oxyopes sertat us ササグモ Clubionidae フクログモ科 68. Chiracanthium japonicum カバキコマチグモ y − − − 69. Chiracanthium lascivum ヤマトコマチグモ − F − − 70. Clubiona japonica ヤマトフクログモ F − − − 71. Clubiona kurosawai クロサワフクログモ − − − F 72. Clubiona vigil ムナアカフクログモ − F − y 73. Phrurolit hus nipponicus ウラシマグモ − F F − 74. Phrurolit hus pennat us ヤバネウラシマグモ − Fm − − 75. Trachelas japonicus ネコグモ − − − y − y − y Ctenidae シボグモ科 76. Anahit a f auna シボグモ Heteropodidae アシダカグモ科 77. Heteropoda f orcipata コアシダカグモ y Ff y − 78. Heteropoda venat oria アシダカグモ − − e − Thomisidae カニグモ科 79. Bassaniana decorat a キハダカニグモ m − − − 80. Diaea subdola コハナグモ − y − − 81. Misumenops t ricuspidatus ハナグモ Fy y FM − 82. Oxytat e striat ipes ワカバグモ FMy y y y 83. Pist ius undulatus ガザミグモ − y − − 84. Thomisus labef act us アズチグモ y my y − 85 Tmarus rimosus セマルトラフカニグモ − Fe − − 49 86. Xyst icus croceus ヤミイロカニグモ 5月 7月 10 月 2月 m M − − Philodromidae エビグモ科 87. Philodromus spinit arsis キハダエビグモ M − F y 88. Philodromus subaureolus アサヒエビグモ y Fe y y 89. Tibellus t enellus シャコグモ f F − − Salticidae ハエトリグモ科 90. Carrhot us xant hogramma ネコハエトリ FM − Fm y 91. Evarcha albaria マミジロハエトリ M FM − − 92. Lauf eia aenea エキスハエトリ − ? − − 93. Marpissa elongata ヤハズハエトリ − Fme − − 94. Marpissa pulla ヨダンハエトリ FM M − − 95. Menemerus confusus シラヒゲハエトリ − FMy − − 96. Myrmarachne innermichelis ヤサアリグモ Mm F − y 97. Myrmarachne japonica アリグモ − F y y 98. Phintella castriesiana マガネアサヒハエトリ − M − − 99. Phintella versicolor メスジロハエトリ M Fye y Mmy 100. Plexippoides doenitzi デ−ニッツハエトリ Fm − − − 101. Plexippus paykulli チャスジハエトリ − FM y − 102. Plexippus set ipes ミスジハエトリ Fm Fm − − 103. Pseudicius himeshimenisis イソハエトリ f My − − 104. Rhene at rat a カラスハエトリ m − − − 105. Silerella vitt at a アオオビハエトリ − F − − 参考文献 岸 由二,1987.いのちあつまれ小網代.小魂社 熊田憲一・池田博明・谷川明男,1995.神奈川県産クモ類目録.Kishid aia, (68): 1−48. 横浜地方気象台,1996.神奈川の気象百年.財団法人日本気象協会横浜支部 50 KISHIDAIA, No.73, Jan., 1998 東京蜘蛛談話会 1996 年度合宿報告 茨城県久慈郡大子町のクモ 笹 岡 文 雄 東京蜘蛛談話会の 1996 年度合宿は,1996 年 8 月 4 日(日)∼6 日(火)の 3 日間茨城県久 慈郡大子町(だいごまち)で行なわれた.大子町は福島県と栃木県に挟まれるように茨城の北西 の隅に位置し面積約 325km2,久慈川上流の山間の町である.そのほぼ中央部にあるJR水郡線 常陸大子駅周辺に町の中心がある.宿舎(余暇活用センターやみぞ,大子町矢田)も地区内に置 き,主に宿舎周辺と北西の八溝山,南東の袋田の滝周辺の三ヵ所で採集観察を行なった. 茨城県の県北のクモ類目録は,本邦において初めてのものである. 参加者(50 音順・敬称略) 池田博明,泉 宏子,小澤實樹,加藤むつみ,金野 晋,木村知之,工藤泰恵,小峰光弘,笹岡 文雄,貞元己良,佐藤幸子,新海 明,鈴木成生,千田高史,長井芳夫,新村 誠,初芝伸吾, 西尾三枝子,畑守有紀,伴 満,水野陽介,和仁道大 22 名 地元参加 高橋米夫 八溝山 福島県 至郡山 福島県 大子町 大子町 月待の滝 栃木県 栃木県 宿舎 常陸大子駅 水戸市 袋田の滝 埼玉県 茨城県 千葉県 水郡線 至水戸 図 1.大子町略図および位置図 51 日 程 8月4日(日) 晴 午後より袋 田の滝( 日本三大瀑 布の一つ ) 周辺において,滝までの行程の道路沿いおよ び滝付近の崖などで採集観察を行なった.さ らに夜間は宿舎裏の久慈川と国道 118 号 を 越えた農地周辺(大子町池田・鏡沢)で観察 を行なった.また宿舎敷地内の採集はこの日 より最終日まで,三々五々個人単位で行なわ れた. 図 2.袋田の滝周辺での観察風景 8月5日(月) (8 月 4 日,撮影:小峰光弘) 晴 午前に八溝山(標高 1,022m)の八溝林道途中の遊歩道沿いで採集観察を行なう.午後は林道 登り口付近と,宿舎近くの月待の滝周辺で行なった.また夜間は月待の滝の奥手(大子町大生瀬・ 富草)の農家周辺で行なった. 8月6日(火) 晴 宿舎を 10:00 にチェックアウトし現地解散のため,特に採集観察は行っていない. 目 録 略号説明 地点と採集日:宿(宿舎敷地内,8/4 ),袋( 袋田の滝周辺,8/4 ),裏(宿舎裏手の農地 周 辺,8/4 ),八(八溝山八溝林 道,8/5 ),入(八溝林道登り 口付近,8/5 ),月(月待の滝 周 辺,8/5 ),農(月待の滝奥の農家周辺,8/5 ) クモの令:F(雌成体),M(雄成体),m(雄幼体),f(雌幼体),y(雌雄不明幼体), e(卵のう) 1. Antrodiaetidae カネコトタテグモ科 1. Antrodiaet us roret zii (L.Koch) カネコトタテグモ 八 Fy キノボリトタテグモ 袋y ジグモ 袋 FM 4. Miagrammopes orientalis Bös. & Str. マネキグモ 袋 Fy 5. Oct onoba varians (Bös. & Str.) ウズグモ 袋F ウズグモの一種 袋y 2. Ctenizidae トタテグモ科 2. Ummidia f ragaria (Dönitz) 3. Atypidae ジグモ科 3. At ypus karschi Dönitz 4. Uloboridae Oct onoba sp. 52 入y ウズグモ科 裏y 入F 農y Oct onoba sp. ウズグモの一種 裏y 6. Pholcus crypt icolens Bös. & Str. ユウレイグモ 八F 7. P. phalangioides (Fuesslin) イエユウレイグモ 宿 FMy 5. Pholcidae ユウレイグモ科 6. Theridiidae 入F ヒメグモ科 8. Achaearanea angulit horax (Bos. & Str.) ツリガネヒメグモ 袋y 八F 9. A. culicivora (Bös. & Str.) カグヤヒメグモ 八e 入 Fe 10. A. japonica (Bös. & Str.) ヒメグモ 宿f 裏F 11. A. t abulata Levi オオツリガネヒメグモ 月 Fye 12. A. t epidariorum (C.Koch) オオヒメグモ 宿 FM 袋 FMe 八 F 農M 入 Fe 月 Fye 農 FM 13. Anelosimus crassipes (Bös. & Str.) アシブトヒメグモ 14. A. iwawakiensis Yoshida イワワキアシブトヒメグモ 農 Fe 15. Argyrodes bonadea Karsch シロカネイソウロウグモ 袋 y 16. A. cylindrogast er (Simon) オナガグモ 袋 Fye 17. A. fur Bös. & Str. フタオイソウロウグモ 袋F 18. A. nipponicus Kumada ツノナガイソウロウグモ 袋 Fe 19. A. saganus (Dön. & Str.) ヤリグモ 袋 Ff 裏 F 八 Fy 入 e 20. Chrysso punct if era (Yaginuma) ホシミドリヒメグモ 八 fy 21. Dipoena must elina (Simon) カニミジングモ 裏 FM 22. St eat oda cavernicola Bös. & Str. ハンゲツオスナキグモ 袋 Fy 23. Tapinopa longidens (Wider) カナコキグモ 八 FfMm 24. Theridion chikunii Yagimuma バラギヒメグモ 袋y 25. T. rapulum Yagimuma ギボシヒメグモ 裏 Ff 26. T. riparium Blackwall イワマヒメグモ 八F 27. T. st erninot atum Bös. & Str. ムナボシヒメグモ 八F 28. T. t akayense S.Saito タカユヒメグモ 八 Fye 29. T. yunohamense Bös. & Str. ユノハマヒメグモ 袋F 30. Labulla cont ort ipes (Karsch) アシヨレグモ 八 Ffy 31. Lepthyphant es cericeus (S.Saito) キヌキリグモ 八 Fy 32. Linyphia angulif era Schenkel ハンモックサラグモ 八y 33. L. brongersmai (Helsdingen) チビサラグモ 八m 34. L. f usca (Oi) クスミサラグモ 袋y 裏y 35. L. longipedella Bös. & Str. アシナガサラグモ 裏y 入y 36. St randella quadrimaculata (Uyemura) ヨツボシサラグモ 八y 7. Linyphiidae 農 Fy 入 Fe 裏M 入 Fe 入 Fe 農 Fmy 八 Fe 入F 月F サラグモ科 53 8. Mimetidae センショウグモ科 37. Ero japonica Bös. &t Str. 9. Theridiosomatidae センショウグモ 袋e 裏M カラカラグモ科 38. Ogulnius pullus Bös. & Str. ヤマジグモ 袋e 入 FMe 39. Theridiosoma epeiroides Bös. & Str. カラカラグモ 袋e 八 Fe 40. Wendilgarda sp. ナルコグモ 袋M ヨリメグモ 入y 42. Araneus cornut us Clerck ナカムラオニグモ 袋F 43. A. ejusmodi Bös. & Str. ヌサオニグモ 裏F 44. A. f uscocoloratus (Bös. & Str.) ヤミイロオニグモ 裏M八F 入f農 y 45. A. ishisawai Kishida イシサワオニグモ 八y 46. A. pent agrammicus (Karsch) アオオニグモ 八y 47. A. uyemurai Yaginuma ヤマオニグモ 袋F 48. A. vent ricosus L.Koch オニグモ 49. Argiope amoena L.Koch コガネグモ 50. A. bruennichii (Scopoli) ナガコガネグモ 10. Anapidae ヨリメグモ科 41. Conoculus lyugadinus Komatsu 11. Araneidae 入 Ff コガネグモ科 Araniella sp. 農 Ffy 袋 Fy 裏 F 入 FM 農 F 宿F 裏F 農F 袋 Fy 裏 FMy 入 fy 農 FfM ムツボシオニグモの一種 八 y 51. Chorizopes nipponicus Yagimuma ヤマトカナエグモ 袋e 52. Cyclosa argent eoalba Bös. & Str. ギンメッキゴミグモ 袋y 53. C. at rat a Bös. & Str. カラスゴミグモ 八F カラスゴミグモの一種 入 FM 54. C. japonica Bös. & Str. ヤマトゴミグモ 八F 55. C. octot uberculat a Karsch ゴミグモ 袋 Fye 入y 農y 56. C. sedeculata Karsch ヨツデゴミグモ 袋 Fye 裏y 入y 57. Cyrt arachne buf o (Bös. & Str.) トリノフンダマシ 裏 FMy 58. C. inaequalis Thorell オオトリノフンダマシ 裏 FfMy Cyclosa sp. 59. C. nagasakiensis Strand シロオビトリノフンダマシ 裏F 60. C. yunoharuensis Strand アカイロトリノフンダマシ 裏F 61. Neoscona adianta (Walckenaer) 62. N. mellott eei (Simon) 月e 農 FfM 袋 M 裏 FMy 農 FMy ドヨウオニグモ ワキグロサツマノミダマシ 袋y 裏 Fy 63. N. naut ica (L.Koch) イエオニグモ 宿 FM 64. N. punct igera (Doleschall) コゲチャオニグモ 裏 FfMy 65. N. scylla (Karsch) ヤマシロオニグモ 66. N. scylloides (Bös. & Str.) サツマノミダマシ 54 農 Fy 農y 農 fmy 袋 Ff 裏 Fy 入 F 月 F 農 y 袋 F 裏 FfM 農 Fy 67. Yaginumia sia (Strand) ズグロオニグモ 袋 Fy 68. Zilla sachalinensis (Saito) カラフトオニグモ 八y 12. Tetragnathidae アシナガグモ科 69. Leucauge subblanda Bös. & Str. コシロカネグモ 袋F 70. L. magnif ica Yaginuma オオシロカネグモ 宿 F 袋 F 入 F 農 Ff 71. L. subgemmea Bös. & Str. キララシロカネグモ 袋 FM 72. Menosira ornat a Tikuni キンヨウグモ 裏y 73. Met a ret iculoides Yaginuma ヤマジドヨウグモ 入y 74. Met leucauge kompirensis Bös. & Str. タニマノドヨウグモ 裏F 75. M. yunohamensis (Bös. & Str.) メガネドヨウグモ 裏F 76. Nephila clavata L.Koch ジョロウグモ 77. Tetragnat ha maxillosa Thorell ヤサガタアシナガグモ 78. T. praedonia L.Koch アシナガグモ 79. T. squamata Karsch ウロコアシナガグモ 袋 FM 80. T. yesoensis S.Saito エゾアシナガグモ 農y Tet ragnatha sp. アシナガグモの一種 袋y Tet ragnatha sp. アシナガグモの一種 袋y ヒラタグモ 袋 Fye クサグモ 袋 fM 13. Urocteidae 裏f 裏F 農F 八y 袋y裏y八y入y農y 農 FM 宿 FM 裏 y 月 Fy 農 FM 裏y 八F ヒラタグモ科 81. Uroct ea compact ilis L.Koch 14. Agelenidae 入y タナグモ科 82. Agelena limbata Thorell 裏F 入F 月y 月y 83. A. opulent a L.Koch コクサグモ 袋y 84. Coelot es insidiosus L.Koch シモフリヤチグモ 袋y 85. C. luctuosus (L.Koch) メガネヤチグモ 袋F Coelot es sp. ヤマヤチグモの一種 八y Cybaeus sp. ナミハグモの一種 袋y 86. D. rapt or Bös. & Str. アオグロハシリグモ 入y 月 Fy 87. Dolomedes saganus Bös. & Str. スジアカハシリグモ 裏y 入y 88. D. sulf ureus L. Koch イオウイロハシリグモ 袋 Fe ウヅキコモリグモ 裏 Fe ササグモ 月F 15. Pisauridae 16. Lycosidae 八F 八F 農F キシダグモ科 裏y 農y 入y コモリグモ科 89. Pardosa ast rigera L.Koch 17. Oxyopidae ササグモ科 90. Oxyopes sertat us L. Koch 18. Clubionidae 農F フクログモ科 55 91. Chiracanthium japonicum Bös. & Str. カバキコマチグモ 袋 F 入 M 月 F 農 Fye 92. Clubiona japonicola Bös. & Str. ハマキフクログモ 入M ナガイヅツグモ 袋F 94. Philodromus auricomus L. Koch キンイロエビグモ 農F 95. P. spinit arsis Simon キハダエビグモ 袋M 96. P. subaureolus Bös. & Str. アサヒエビグモ 八y 97. Diaea subdola O.P.-Cambridge コハナグモ 裏 Fye 98. Lysit eles coronat u (Grube) アマギエビスグモ 八 Fy 99. Misumenops t ricuspidatus (Fabricius) ハナグモ 裏 Fy 100. Oxyt at e st riat ipes L.Koch ワカバグモ 裏y 101. Thomisus labef act us Karsch アズチグモ 裏f 102. Tmarus rimosus Paik セマルトラフカニグモ 裏 FfM 103. Xyst icus croceus Fox ヤミイロカニグモ 裏M 104. X. saganus Bös. & Str. オオヤミイロカニグモ 袋F 19. Anyphaenidae イヅツグモ科 93. Anyphaena ayshides Yaginuma 20. Philodromdae 21. Thomisidae 22. Salticidae 裏F エビグモ科 農 Ff カニグモ科 八F 農y 農 Fy 八y 農y 農y ハエトリグモ科 105. Carrhot us xant hogramma (Latreille) ネコハエトリ 農y 106. Evarcha albaria (L. Koch) マミジロハエトリ 裏 My 八 FM 入 F 月y 農y 107. Helicius yaginumai Bohd. & Prós. ジャバラハエトリ 八 FM 108. Lauf eia aenea Simon エキスハエトリ 入F 109. Marpissa dybowskii (Kulczyński) オオハエトリ 袋 FfM 110. M. elongata (Karsch) ヤハズハエトリ 裏F 111. Menemerus confusus Bös. & Str. シラヒゲハエトリ 袋 FM 112. Phint ella linea (Karsch) メガネアサヒハエトリ 袋M 農 FM 113. Plexippoides doenitzi (Karsch) デーニッツハエトリ 裏F 八 Fm Sitt icus sp. コゲチャハエトリの一種 袋 y 114. Yaginumaella st riat ipes (Grube) ウススジハエトリ 八 FfMm 入 fm 115. Yaginumanis sexdentat us (Yaginuma) ムツバハエトリ 月 Fy ハエトリグモの一種 八M 採集地別種類数内訳 宿舎敷地内8種,袋田の滝周辺 50 種,宿舎裏手の農地周辺 46 種,八溝山八溝林道 37 種,八 溝林道登り口付近 33 種,月待の滝周辺 13 種,月待の滝奥の農家周辺 38 種 56 以上 22 科 115 種を報告する.基本的には観察採集日の当日に,確認されたものを集計した. そしてその後標本同定された種を追加してリストとしたが,ここでは観察例のみとの区別はおこ なっていない.また宿舎敷地内の観察採集の報告は,8月4日分のみであった. No.26 イワマヒメグモ(貞元巳良氏同定)は茨城県新記録である.No.53 カラスゴミグモはカ ギヅメカラスゴミグモ Cyclosa hamulata Tanikawa との疑義があるが,リスト中にはそのまま 掲げた. 最後に合宿期間中,池田博明,泉宏子,小澤實樹,金野晋,小峰光弘,西尾三枝子,和仁道大 の方々には,現地の移動にあたって快く自家用車の提供と運転をしていただいた. さらに現地の観察採集ヵ所の選定では,池田博明,金野晋・畑守有紀夫妻,木村知之,貞元己 良の方々のお手を煩わせた.現地大子町在住の会員高橋米夫氏にはお忙しい中,宿舎をお尋ねい ただいた. また帰京後貞元己良氏には採集標本の同定結果をお送りいただき,小峰光弘氏には本稿掲載写 真をご提供いただいた. 各氏にはこの紙面を借りて,厚くお礼を申し上げたい. 57 編集後記 いよいよ寒さも厳しくなったこの頃,いかがお過ごしでしょうか.KISHIDAIA No.73 です. 新体制により,次号,次々号の目処もすでについている様子.本当に心強い限りです.せっかく の機会ですから,クモ達の動きがにぶくなったこの季節の間に,KISHIDAIA に投稿してみては いかがでしょう?今まで一度も投稿したことのない方も,見たこと,気づいたことをぜひお寄せ ください.強力なスタッフが即座に編集し,またたく間に発送します. そして,私の今年の抱負.「投稿するぞ」…です. (木村) ついで 74 号と 75 号を編集中ですのでふるってご投稿下さい.これら2号は今年中に発行する 予定です.今回の 73 号も木村・谷川・池田の体勢で分担しております.私達の知識はらせん状 に進むという印象があります.それは山上りに似ています.一度に頂上を目指そうとすると高山 病にかかってしまうことがあります.そこで,ゆっくり,ときには回り道をしながら登っていき ます.登っているつもりだったのに下ってしまっていることもあります.必ずしも登っているわ けではないのですが,一歩一歩道を確実に踏みしめていれば,少しずつ山頂に近づいているもの なのです.この KISHIDAIA の論文や記事が貴重なその一歩なのです. ひとりの知識をみんなのものに. (池田) 1996 ・1997 年度運営委員 池田 博明・小野 展嗣・木村 知之・久保田 克哉・笹岡 文雄・高橋 登・高橋 祐子・ 谷川 明男・萩本 房枝・平松 毅久・安田 明雄 泉 191-0062 東京都日野市多摩平 7-15-9 会 長:萱嶋 本 部:小野 展嗣 169-0073 東京都新宿区百人町 3-23-1 国立科学博物館動物研究部 会誌編集:木村 知之 215-0012 神奈川県川崎市麻生区東百合ケ丘 4-38-12 (原稿送付先) 池田 博明 258-0018 神奈川県足柄上郡大井町金手 1099 電子メールアドレス 通信編集:笹岡 文雄 fwgd9084@mb.infoweb.ne.jp 170-0004 東京都豊島区北大塚 3-12-21 事 務 局:平松 毅久 350-0816 埼玉県川越市上戸 91-3 会 瀬尾荘 202 計:安田 明雄 231-0861 神奈川県横浜市中区元町 5-219 郵便振替:00170-8-74885 東京蜘蛛談話会 (年会費 一般 2,800 円 学生 2,000 円) 会計監査:笠原喜久雄・鈴木成生 KISHIDAIA No.73 1998 年 1 月 31 日 印刷 編集者 木村知之 1998 年 1 月 31 日 発行 発行者 萱嶋 発行所 東京蜘蛛談話会 東京都新宿区百人町 3-23-1 印刷 58 泉 有限会社 相模プロセス 国立科学博物館動物研究部 小野展嗣方 神奈川県相模原市淵野辺 2-15-27 KISHIDAIA Bulletin of Tokyo Spider Study Group No.73, Jan., 1998 ─ 目 次 ─ 追悼: 近藤昭夫氏を悼む 錦三郎氏を悼む ......................................................................... 1 加藤むつみ: トゲグモの成長に伴う模様の変化と硬化部位 .................................................. 3 明: 沖縄クモ観察記(3) ...................................................................................... 7 新海 池 田 博 明: 室内でのクモの実験と講話 ............................................................................... 12 谷 川 明 男: オオジョロウグモの造網場所移動の観察 ......................................................... 17 DRAGLINES 畑守有紀: 全国クモ相談室 第 1 回 滋賀県産オヒキグモの一種について ..................... 21 平松毅久: 夜間にぶら下がって眠る?ハエトリグモ ......................................................... 22 新海 明: セマルトラフカニグモによるアリの捕食 ......................................................... 23 平松毅久: 続報5年前のサカグチトリノフンダマシ ......................................................... 24 笹岡文雄: カネコトタテグモの孵化 .................................................................................. 24 谷川明男: 北海道でオノゴミグモが採集された ................................................................ 25 工藤泰恵: ムツトゲイセキグモの飼育下における投げ縄行動 ........................................... 25 谷川明男: ジョロウグモの迷網除去実験 ........................................................................... 26 新海 明: オオヒメグモに寄生するハチ(マダラコブクモヒメバチ) ............................ 27 新海 明: 沖縄県での珍種の採集記録 ............................................................................... 28 平松毅久: 東京蜘蛛談話会 1994 年度観察採集会報告 飯能市西吾野のクモ....................... 29 宮下 直・笹岡文雄: 東京蜘蛛談話会 1995 年度観察採集会報告 東京都田無市・東京大学 農学部付属演習林田無試験地のクモ.................................................................................. 37 安田明雄: 東京蜘蛛談話会 1996 年度観察採集会記録 小網代の森のクモ ......................... 45 笹岡文雄: 東京蜘蛛談話会 1996 年度合宿報告 茨城県久慈郡大子町のクモ....................... 51 編集後記 ................................................................................................................................... 58 59
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