Financial Services Architect Vol.36 2015年冬号 金融サービス本部 2015年、銀行業界を占う 2015年、証券業界を占う 2015年、保険業界を占う 目次 1. 2015年、銀行業界を占う ~「再編」 「グローバル化」 「デジタル化」の波 マネジング・ディレクター 宮良 浩二 2. 2015年、証券業界を占う ~トップライン拡大と規制対応 マネジング・ディレクター 中野 将志 3. 2015年、保険業界を占う ~デジタル展開後の真の勝者 マネジング・ディレクター 林 岳郎 4. 最近話題のプロジェクト 5. アライアンスおよびパッケージ・システム 6. 弊社外部講演およびレポートのご紹介 7. 会社概要 Financial Services Architect Financial Services Architect (FSアーキテクト)は、 金融業界のトレンド、最新の IT情報、 弊社サービスおよび貴重なユーザ事例を紹介する、 日本オフィス発のビジネス季刊誌です。 1 拝啓 新春の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと、お慶び申し上げます。 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 本誌「FS Architect」は、おかげさまで発刊 9 年目を迎えました。これも皆様のご支援と ご愛顧の賜物と深く感謝しております。 2012 年以降の株価上昇により、本邦金融機関は投資余力を獲得し中長期の成長を見据 えた戦略実行の準備に入られていると認識しております。 国内市場は、従来からの利益率は低さと人口減少さらに異業種の攻勢、といった成長 するには難しい局面に入ってきました。これからは総合力を活かした事業展開、新サー ビス・商品展開、既存概念を超えた再編が進んで行くものと考えております。 一方、海外市場では本邦金融機関への期待が高まっております。本邦金融機関の収益 に占める海外ウェイトも高まっていく中、多極化したグローバル市場で戦うための統合 プラットフォームの構築が必要になってくると思われます。 まさに 2015 年は、本邦金融機関の中長期成長に向けた重要な年になると確信しており ます。 新年を迎え、弊社は「Growth」をテーマとしたサービス提供に注力したいと考えており ます。最新 IT 技術や国内外での知見・人材を駆使し、皆様のビジネスの飛躍に貢献でき るよう、鋭意努力する所存です。 本号では、 「2015 年の動向を占う」と題して、銀行、証券、保険各ビジネスにおける「成長」 に向けた要諦および、その成長を支援する IT サービスのあり方について、弊社の考え方、 アイデアをご紹介させていただきたいと思います。ご一読いただき、貴社取り組みの 一助となれば幸いです。 今後ともご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。 敬具 2015 年 1 月吉日 アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 統括本部長 中野 将志 2 2015年、銀行業界を占う ~「再編」 「グローバル化」 「デジタル化」の波 「再編」 「グローバル化」 「デジタル化」―――。 3つのキーワードで経営改革の実行が求められる年になる。 2014 年3月期は史上最高水準の決算に沸いた。2014 年9月の中間決算も高い利益 水準を確保している。 ただし、銀行の経営幹部の方と意見交換をさせていただくと、 このタイミングで 構造改革の手を打つことが重要との認識が大半だ。 国内成熟経済下での危機意識はもちろんのこと、 資本の制約・信用コストの問題な ど、 前向きな投資のあしかせとなる経営イシューが少ない時期だからだ。 本年も、経営・IT革新に挑む金融機関の改革実行のパートナーとして、 この3つの 宮良 浩二 1995年 テーマを中心にしたサービス提供に力を注ぎたいと考えている。 アクセンチュア入社 金融サービス本部 マネジング・ディレクター 銀行グループ統括 1. 再編の波 : 新たなモデルでの地域 Head Ratio=( 経費 / コア業務粗利益 ) を提供するという現在の構図では、共 金融機関の合従連衡 ×100) の 低 下 に 明 確 な 相 関 は 見 ら れ 通プラットフォーム化の範囲に限界が な い。 こ れ ま で の 取 組 み に は 共 通 プ ある。同時に、地銀 IT マーケット死守 横浜と東日本、肥後と鹿児島―。 ラットフォーム化の「範囲」と「提供者」 が死活問題である IT ベンダーから抜本 地銀トップ行が仕掛けた再編、県トップ 的なコスト削減の提案は期待しづらい。 の 2 点で限界がある。 行同士の統合など、地域金融機関の再 編 の 幕 が 開 け た。 地 域 銀 行 の 貸 出 約 まず、 「範囲」について。業態は違うが、ド 定金利の低下が続いている。加えて、 イツ Sparkassen(貯蓄銀行グループ 423 地域密着という強みが活かしづらい人 銀行)は、営業などフロントの独立性を 口減少時代に直面している中、これま で 以 上 に 戦 略 的 な 合従連衡が必要と 維持する一方でシステム・事務・信用格付・ 商 品 開 発・ 外 為 業 務 な ど を 共 通 化 し 共通プラットフォームの「提供者」が 銀行となるには、自ずと地域銀行間の 機能分化を意味する。実行のハードル は高いがリーダーシップを発揮する銀 行の出現を期待したい。 なろう。3 つの考え方を示したい。 て、大手独銀比でも競争力のある OHR を ② 同一商圏内での合従連衡 ① 広域商圏での合従連衡 達成している。本邦の地銀システム共同 化のスキームやシステムソリューション 特にリテールビジネス依存度・高齢者比 広域商圏での合従連衡にあたっては一段 自体が規 模の経済を発揮できないも の経費削減につながる取組みが必要だ。 のになっているケースがあるのも事実だ 地域に根ざした営業機能以外の共通プ が、システムだけの共通プラットフォー ラットフォーム化が鍵になる。 ム化ではコスト削減の対象が小さい。 今では 8 割を超える地域銀行がシステ また、共通プラットフォーム化の範囲を ム共同化の取組みに参加している。しか しながら、システム共同化と OHR(Over 3 広げる為には「提供者」となる銀行が必 要だろう。IT ベンダーが共同化システム 率の高い地域(図表 1 の右上のセグメ ント)では、利鞘縮小による収益性の 低下に加えバランスシートの縮小も避 けられない。さらに一歩踏み込んだ効 率化が必要だ。広域での合従連衡は、 規模拡大による調達力のア ッ プ や ス ケールメリットによる一定の経費削減 が望めるものの、打てるコスト削減施 策が限定的だ。 図表 1 再編の波 都道府県別のリテールビジネス・高齢者依存度 90.0 85.0 12 14 25 11 80.0 29 24 9 75.0 65.0 10 33 23646 412123 1 43 1617 44 19 20 42 31 18 3 34 7 45 37 5 22 47 30 6 38 15 28 40 個人預金比率 リテール依存度 71.7 70.0 8 27 4 35 3239 26 60.0 50.0 13 1 45.0 17.0 19.0 21.0 23.0 25.0 25.1 27.0 29.0 31.0 33.0 65歳以上人口比率 高齢者依存度 出所: 日銀、人口問題研究所よりアクセンチュアリサーチ作成。なお、65歳以上人口は2013年10月、預金は2014年9月 © 2015 Accenture 25 滋賀 2 青森 26 京都 3 岩手 27 大阪 4 秋田 28 兵庫 5 宮城 29 奈良 6 山形 30 和歌山 7 福島 31 鳥取 8 茨城 32 島根 9 栃木 33 岡山 10 群馬 34 広島 11 埼玉 35 山口 12 千葉 36 香川 13 東京 37 愛媛 14 神奈川 38 徳島 55.0 40.0 15.0 1 北海道 15 山梨 39 高知 16 長野 40 福岡 17 新潟 41 佐賀 18 富山 42 長崎 19 石川 43 熊本 20 福井 44 大分 21 静岡 45 宮崎 22 愛知 46 鹿児島 23 岐阜 47 沖縄 24 三重 All rights reserved. ガ銀行とも免許を取得、アジアにおけ これまでのライバル同士が手を組める 米国は顧客のデジタル・リテラシー(= かなど、実現のハードルは極めて高い デジタル・バンキングの受容度)が高く、 る邦銀のプレゼンスの大きさを実感で が、本部コストや店舗・自行 ATM の統 取引銀行に対するロイヤリティーが必 廃合によるチャネルコストの削減に踏 ずしも高くない(=取引銀行を変える み込んだ同一商圏内での再編も視野に 事に抵抗が少ない)が、地域銀行の広 入れる必要があろう。 域展開にはブランド問題がつきまとう。 ③ 異業態・異業種連携による 米国南部を中心に店舗展開をする きる嬉しいニュースだった。 地域銀行からメガ銀行に目を転じると、 引き続きグローバル展開の加速が最大 の経営アジェンダの一つとなっている。 2014 年 9 月中間期決算も、利鞘確保 BBVA Compass は、昨年デジタル戦略 の厳しい国内業務を、アジアを中心と を加速する上で、Simple 社を買収した。 したマーケットの成長果実で補完する 多くの地域銀行がインターネット支店 同行は、広域展開にあたって Simple 社 新しい広域モデルの構築 を開設し、地域外の顧客からの預金獲 得や貸出先拡大を狙っている。魅力的 な金利提示により地域外顧客の獲得に 一定の成果を挙げているものの一過性 となっているケースが少なくない。 地域銀行が商圏を拡大する場合、一般 的に「チャネル展開」と「ブランド認 のブランドを活用し、自身は金融商品 の「製造業者」に徹するという。これ グローバル・オペレーティングモデル は一例だが、地域銀行同士の再編を超 の構築にあたっては、 「縦串」と「横串」 えた異業態・異業種との協業による新 の両立が求められる。つまり「多様性 たな価値訴求の取組みが今後増えてく に富む各ローカルマーケットでのプレ るだろう。 ゼンス発揮」と「オペレーション(事務・ 2. グローバル化の波 : グローバル・ 知」があしかせとなる。インターネット・ オペレーティングモデルの構築 モバイルの進展は「チャネル展開」の ミャンマー、3 メガに銀行免許―。 障壁を相対的に低いものとした。一方、 「ブランド認知」については依然悩まし い問題だ。 構図が続いている。 先般、ミャンマー政府は外国銀行 9 行 に銀行免許を交付したが、日本は 3 メ システム)部門、プロダクト部門やリス ク管理部門の高度化・効率化」の 2 つだ。 各行ともますます国際業務の比重が増 える中、「縦串」重視の姿勢から、「横 串」のインフラ整備が重要なタイミン 4 図表 2 グローバル化の波 グローバル銀行のITソーシング 100% Bank A 9,400 Bank B 24,000 Bank C 43,400 Bank D 11,500 内製化比率 Bank E 25,700 Bank F 38,000 50% Bank G 16,000 Bank H 20,000 Bank I 15,050 Bank J 8,400 0% 0% 50% 100% オフショア比率 出所: Everest Researchよりアクセンチュア作成 © 2015 Accenture All rights reserved. グにあるのではなかろうか。邦銀では、 IT インフラ整備の実行スピードアップ このような取組みを銀行の経 営 幹 部 海 外 シ ス テ ム も 東 京 で 開 発・ 維 持、 のお手伝いができればと考えている。 の方にご紹介すると強い関心が寄せら それ以外はローカルの裁量という体制 れる。銀行の IT の考え方について変化 も珍しくない。これは、昨年弊社が実 施したグローバルプレイヤーのソーシ ングの実態調査結果と趣を異にするも のだ。内製(インソース)か外製(アウ トソース)かは各金融機関の戦略に依 存しているものの、一貫してオフショ アのデリバリーセンター(IT や事務の 提供センター)の徹底活用を進めてい る(図表 2)。これは、「①コスト効率 向上」や「②ビジネス展開のあしかせ とならないキャパシティーの安定確 保」に加え、 「③デリバリーセンターを 集約する事での業務・システム自体の 標準化(=各国で類似の事務やシステ ムを作らせない事)」を企図している。 3. デジタル化の波 :“脱”銀行の 発想転換 - “Everyday Bank” Digital Disruption(デジタルがもたら す破壊的な変化)―。 動化」「安定稼働」「コスト削減」がま ずもって重要であり、成熟した技術の メガ銀行の共通テーマとなる「デジタ を活用して新たなサービスやオペレー ル 化 」 を 挙 げ た い。 ア ク セ ン チ ュ ア ションを構築できないか」といった視 では、昨年アジア・パシフィック金融 座でプロジェクトや専任部署を立ち上 テクノロジーラボ(Fin-Tech Innovation げる例が増えている。背景には「テク Lab Asia Pacific)という取組みを香港 ノロジーの進展」を「顧客理解力」 「商品 で開催した。この取組みは、ニューヨー 提供力」「顧客リーチ力」といった銀行 ク・ロンドンで既に成功を収めたもの の基本機能の強化につなげようという でアジアで初めての開催となった。新 企図がある。同時に、 「業界構造の破壊」 技術をもったベンチャー企業と大手金 にいかに対応するかという問題意識の 融機関が参加し、新技術と銀行ビジネ 高まりがある。(図表 3) スの融合を企図するものだ。注目すべ 構築は弊社にとって最も実績があるテー きテーマとして、 「ビッグデータ・アナリ マの一つだ。また、弊社はインド・中 ティクス」 「モバイル・ワイヤレス」 「決 国・フィリピン等に大規模なデリバリー 済」 「セキュリティ・コンプライアンス」 センターを抱えている。弊社の実績・人 「ソーシャルメディア・コラボレーション 5 来、銀行の IT といえば「大量処理の自 最後のキーワードとして、地域銀行・ 採用が常であった。しかし、「新技術 グローバル・オペレーティングモデルの 材を梃子に、邦銀のグローバル業務や の潮目が来ていることを実感する。旧 技術」等があった。 ”Everyday Bank”――。 弊 社 は、 デ ジ タル化時代のリテール銀行の 将 来 ビ ジョンとして「あらゆるものをつなぐ 銀行」という考え方を提唱している。 当然のことながら「お金」にまつわる 図表 3 デジタル化の波 銀行の基本機能の強化 あらゆるものをつなぐ銀行への深化 Everyday Bank 電子機器 食品 顧客理解力の強化 • 大量データを活用した与信精度向上 • 位置情報を活用したイベント捕捉 • SNSからのニーズ把握 • クレジットカードの消費行動データ等から顧客嗜好捕捉 •・ ・ ・ 衣料/靴 ペット 不動産(購入・賃貸) 消費財 電気/ガス 住 居 関 機 通 交 交通機関/ 駐車場 ホームセキュリティ クーポン/ 引換券/ ポイント エコシステム内のサービス 大企業 小売業者/中小企業/企業 シ 行 対象を 絞った 広告 情報 &教育 ー とし するソリュ ての銀 足 の調 充 に対 の ン ビ ス ニ ーズ 新聞/ 雑誌/ 書籍 トレーニング/ 教育 の 銀 行 と め ズ ー 役 ニ 航空便 ー ョ の し て サ 融 と 顧客リーチ力の強化 チケット 発券 者 自動車保険 金 暮らし 支援 防 健康&予 アクセス 医療サービス 整 各種支払い 形態 個人・家族保険 • オムニチャネルの構築 • ソーシャルメディア・モバイルバンキング • デジタル化店舗 • コラボレーション技術を利用した非対面相談 •・ ・ ・ 比較機能 購入提案 家具 • 金融商品のパッケージ化とダイナミック・プライシング • 声紋認証での本人確認、 音声認識による画面遷移 削減等、 新技術を活用したサービス提供 • 銀行商品+他業種サービスのバンドル •・ ・ ・ 自動車(購入・修理) ザーとしての銀 バイ 行 アド 家屋の修理 ハウスクリーニング/ ホームケア 商品提供力の強化 家電 燃料 Dマーケット プレイス 旅 行& レジ ャー イベント ホテル 価 値 の ま 通信 スポーツ活動 レジャー活動 レストラン/バー 電話/インターネット テクノロジーの進展 + 業界構造の破壊 © 2015 Accenture All rights reserved. ニーズはそれ単独で存在するものでは の重要な一端を担う。他企業との特別 なく、教育・医療・健康などの「コト」 な提携やパートナーシップにより顧客 消費や消費財などの「モノ」の購買に 付随する。一方で一般の顧客からする と旧来の銀行は遠い存在と感じられて い る ケ ー ス が 多 い。 弊 社 で は、 経 済 活 動 の あ ら ゆ る も のをつなぐ銀行と して、顧客の経済活動の第一接点で 3 つ の 価 値 を 提 供 し よ うとする考え方を (図表 3) ”Everyday Bank”と称している。 ①アドバイザーとしての銀行:銀行は 信頼できるアドバイザーとしての従来 の立場を活かす。ただし、「お金」のみ ならず、「コト」「モノ」を含めたニー ②価値のまとめ役としての銀行:銀行 は顧客のエコシステムやコミュニティ ③小売だけでなく金融取引もダイレク に経済的メリットをもたらす。 トで完結できる仕組みを導入。(*1) ③アクセス支援者としての銀行:銀行 イオン銀行は、①実店舗から得られる は顧客との関係を利用して、医療機関・ 顧客購買データに基づく顧客理解、② 教育産業・・・等、他のサービス業と ローン顧客にイオンでの小売割引等の の繋がりを築く。顧客のニーズやライ 経済的メリットを還元、③店舗内の銀 フスタイ ルに合わせた特別な商品や 行併設、みずほ銀行等との ATM 相互開 サービスをワンストップで提供する。 放等による利便性向上、など。(*2) 昨今の他業態からの金融ビジネスの参 このように業態を超えた競争が激化す 入も、彼らの本業を起点として、上記 る中、銀行ビジネスを ”Utility 図するものと理解できる。 置付けるか――。 「テクノロジーの進展」 Service” 3 つの価値提供で業界構造の破壊を企 と位置付けるか、”Everyday Bank” と位 ズに対して顧客の比較検討から購入・ 例えば、楽天銀行。①小売(e コマース) ファイナンスまでを支援する。 経済圏」 のワンストップメリットを訴求。 から得られる顧客購買データから顧客 理解を深め、顧客へのレコメンドに活 と「業界構造の破壊」が銀行の選択を 迫っているといえよう。 (*1)(*2) はいずれも公知情報に基づく 用。②ポイントを積極活用した「楽天 6 2015年、証券業界を占う ~トップライン拡大と規制対応 証券業界は世界的な金融危機から脱し、また日本においてはアベノミクスにより 証券市場も活況であり、トップライン拡大に向けた投資が本格化している。一方 で、金融危機からの教訓をもとに世界的に規制強化が推進されており、金融機関 の対応コスト・労力も大きな負担になってきている。 グローバル市場系ビジネス領域という範囲でとらえた場合、メガバンクや大手 証券会社では分散したオペレーション体制を再編し、営業力の強化・規制負荷 の最適化・コスト効率の最適化を得ようとするために、3つのトレンドが顕著に なるであろう。 また、リテールビジネス領域においては、顧客との距離をより縮めるためにアナ 中野 将志 1995年 アクセンチュア㈱入社 金融サービス本部 統括本部長兼証券・資本市場グループ統括 リティクスの活用がますます重要になってきている。直感と経験に基づく営業 から科学的な営業への移行と共に、経営管理基盤の構築がなされ、機動的なビ ジネスジャッジの実現が期待されている。 本稿ではまず証券会社・投資銀行への投資に関するアンケート結果や規制対応 の状況について記載したうえで、グローバル市場系ビジネス領域およびリテー ルビジネス領域の今後について述べていきたい。 1. 昨今の業界動向 トップラインに貢献する投資拡大 弊社が実施した、証券会社・投資銀行(海 外含む)へのアンケート調査結果からは、 コストコントロールのための投資よりも、 つ勝つ算段を明確にしてから投資を実行 応に対するコスト負担、人的負担は各社 する方針のようだ。(図 2) にとって重いものになってきた。(図 3) *1:ここでいうコアビジネスとは、標準的な市場環境 昨今のグローバル規制を見た場合、その で安定的に収益を出すことが期待されるビジネス 基本的な考え方は、各社のビジネス内 (商品軸、 顧客軸など) のことである。 容に応じたリスク対応を求めるものであ 弊社が実施したアンケートをまとめると り、この考え方がスタンダードになって が非常に高まっている事が伺える。将来 以下の 3 点が挙げられる。 いくと思われる。すなわち、短期的視点 の投資に対しては、さらにその傾向が顕 • 今後数年でトップライン拡大に向けた トップライン拡大に向けた投資への意欲 著になっている。(図 1) その投資先は、幅広い商品・サービスを 展開するというよりも、コアビジネス(収 益ビジネス *1)をしっかり定義し、そこ 投資は拡大する • 投資対象はコアビジネスもしくは先駆 者ビジネスに絞る もしくは個別対応でこれを凌ぐのではな く、恒常的に規制強化が続くと考えて対 応する必要がある。 例えば、担保管理などは、規制強化の 中で「トレードサポート」の位置づけから で競争力をつけようとする姿勢が見てと • それ以外の領域は投資抑制のみならず 「コア業務機能」としての位置づけへと れる。また、新興市場や新規ビジネスに 変わっている。これにより、必要最低限 おいては、先駆者としてのビジネス展開 ができるならば積極投資し、他社を追従 する立場になる場合は投資を抑制しよう としているようだ。 全体的なトップライ ン拡大を狙うのではなく、対象を絞りつ 7 簡素化・縮小も辞さない 戦略的規制対応 各地域や国で実施されている規制強化 に関しては、各証券会社・投資銀行で重 要な経営課題となっている。この規制対 の対応として、サイロ型に分断された担 保情報を横断的に把握できる仕組みの 整備が必要不可欠となる。このように、 規制強化の流れの中で業務の位置づけ も変わりつつある。 図表 1 投資目的 図表 2 ビジネス成長 19% コストコントロール 9% 69% ビジネス成長 72% 19% Today 83% 72%69% 新興市場 (ただし先駆者の場合) 72% 85% 選択された 既存ビジネスにおける シェア拡大 12% その他 79% コアビジネスへの 投資 60% 66% In 2 years 28% 投資の抑制 22% Source: Accenture 2014 High Performance Finance Study, capital markets respondents, September 2014 © 2015 Accenture All rights reserved. 2% その他 0% Past 2 years Next 2 years Source: Accenture 2014 High Performance Finance Study, capital markets respondents, September 2014 © 2015 Accenture All rights reserved. 上記を踏まえると、規制対応に関しては 規制強化が進展しコスト負担・人的負担 トップライン拡大に向けてコア業務に人 以下の 2 点を踏まえた経営判断が求め が高まるという、資源配分が悩ましい状 られるだろう。 況にある。また、中長期視点を持った対 • 規制対応の経営負担は増加しており、 中期的な視点でこれを軽減する必要が ある • 中長期的視点でのビジネスモデルを ベースとし、オペレーティングモデル (業務・システム)のあり方を規制負荷 の軽減という観点でも検討する必要が ある このような動向を踏まえた上で、グロー 応をしなければ、今後のビジネス展開や 経営的負担が大きく左右される可能性が 高い。 コア業務とノンコア業務の切り分けを 鮮明にし、そのオペレーティングモデル を大きく変革する可能性がある。 その 最も大胆なモデルが、ノンコア業務に対 があらわれてくると思われる。 する「ユーティリティサービス」の活用 トレンド1. コア業務とノンコア業務の 切り分け である。 ここ数年、業界全体の効率化推進のため 多くのプレイヤーがこれまで、オフショ に、ユーティリティサービス(共同利用 アリング、 アウトソーシング、内部シェアー サービス)が出現してきた。ユーティリ ネス領域におけるそれぞれの動向を述 り、コスト効率化の取組みは限界に達し べていきたい。 つつある。 2. グローバル市場系ビジネス領域に おける 3 つのトレンド また、金融規制強化の流れの中、規制 拡大余地もあり、投資余力もある中、 このようなビジネス環境の中、各社は こういった中、2015 年は 3 つのトレンド バル市場系ビジネス領域とリテールビジ ドサービス等の取組みを実施してきてお 証券会社、投資銀行は、トップラインの 的資源を集中投下する必要がある。 対応のためのデータ整備に多大な負荷 ティサービスは、他の業界では成功して きたモデルである。 海外の投資銀行で は既に活用事例がみられる。例えば、エ クイティトレードのコストカーブをとって みると、上位 5 社に入らないプレイヤー については、この業界で生き残っていく がかかることが予想されている。一方、 ためにユーティリティサービスなどを活 8 図表 3 コンプライアンス・リスク管理に対する支出割合 図表 4 コストカーブ(例 : エクイティ取引) (収益対比) 70 • 全体 • 欧州 •北米 60 ユーティリティ利用候補者の 典型的なコストポジション 取引1件 当たり コスト(£) ユーティリティサービス利用 により、取引当たりのコスト は、大手プレイヤー並みに 安くなってきている 50 40 大手プレイヤーの コストポジション トップ5の コストポジション 30 20 0.10 10 x1 0 x2 x8 取引件数 1%未満 1 - 2.9% 5%以上 3 - 4.9% トップ5以外のプレイヤー 出典 : Accenture Compliance Risk Survey, 2014 出典 : Accenture Research © 2015 Accenture © 2015 Accenture All rights reserved. トップ5のポジション All rights reserved. 用してコスト競争力を高めることが有力 • 規 制 対 応 の 観 点に立 つと、より中 央 な打ち手であることが示唆される。これ 集権的な管理が求められており、共通 の活用 により人的資源をしっかり確保する事が プラットフォーム化する領域を切り出 重要である。 したい。また各種規制対応を極小化し IT に関して、カスタムメイドが主流の大 日本金融機関においては、海外ビジネ たい スにおいて活用する可能性が最も高いと これらを踏まえた場合、金融グループ内 考えられる。 での顧客基盤、業務・IT 資産を有効活 トレンド2. 拠点、エンティティ間での 統合プラットフォーム ビジネス展開上の社内ステークホルダー 用する事で、ビジネス展開のスピードを 向上し、業務・IT 負荷を軽減できる可能 性が高い。 トレンド3. パッケージソリューション 手金融機関においても、パッケージソ リューションの活用も本格化すると考え られる。これまでのパッケージソリュー ションの多くは、「どの金融機関でも使 われる機能のみが実装されている」とい うものだった。しかし近年ではパッケー ジソリューションを導入する金融機関が 増えたことで、パッケージベンダと金融 はトップラインの拡大、規制対応に向け これまでの日本の金融機関は、支店もし たそれぞれの考えを持っている。 くは拠 点 主 義でありサイロ的に業 務・ 先取りして実装するまでに至る。グロー システムが構築されてきた。その結果、 バル規制に関してもその範疇に入る。 • 顧 客に向き合っている営 業 担 当は、 顧客のニーズにそった商品をスピー ディに提 供 する事 が 重 要 で 、成 果 が きちんと評価されるなら、 どのエンティ ティの商品かは関係ない • 一方で経営から見た場合、規制・税制負 荷が軽減できるエンティティ・拠点で ブッキングしたい • 業務・ITの観点からは、可能な限り投資 9 IT 基盤も多様であり、業務もシステム 化されている拠点もあればオペレーショ ンリスクが高い状態で行われている拠点 もある。こういった状態でグローバル 規制対応をしていくことは中期的に見た 場合、非常に困難である。こういった観 点からも、拠点もしくはエンティティ横 断でのプラットフォーム化が必要になっ てくるだろう。 機関との対話が進み、必要となる機能を 各国のローカル規制に関しては、パッ ケージ外で構築し連携するケースが多い ものの、時間を買うという点と共通プラッ トフォームという点の 2 つの観点で、パッ ケージソリューションを活用する機会は 増えると考えられる。 上記、グローバル市場系ビジネス領域に おいては、国内外拠点またグループ内 と労力を極小化すると共に、ビジネス での大胆なトランスフォーメーションが 展開のスピード向上に貢献したい 本格化する年になるだろう。 図表 5 顧客分析 – 顧客 / 証券会社の収益相関に基づく分類 + 顧客自身の収益 0 成功想起による活性化 成功想起予備軍 過去との決別による活性化 - 低 © 2015 Accenture 証券取引ヘビーユーザ 証券会社への収益 高 All rights reserved. 3. リテールビジネス領域のアナリティ クス活用と CMO の確立 したいはずだ。単純化して言えば、顧客 技術の進展に伴い、ビジネスに有効活 けさせてくれた証券会社である。実は にとっていい証券会社とは、過去に儲 用できるデータは増加してきている。 多くのケースで、過去に儲けている顧 これらのデータを活用し分析する事で 客だが、証券会社にとっての手数料収 顧客対応に必要なインサイト(示唆)を 導き出す取組みが、リテールビジネス 領域を中心に進展すると考えられる。 ただし、様々なデータをかき集め、分 析基盤に取込めばインサイトが生まれ るわけではない。データを意味ある情 入が大きくないため、営業強化対象と なっていない顧客が多くいる。このよ うな顧客に営業活動を行い、過去の成 功経験を想起してもらい次なる金融商 品の販売につなげる、といった取組み で成果を出している企業もある。 報にするためには、どういった観点で つまり、アナリティクスはシステム技術 分析すべきかを考え抜かなくてはなら が話題として先行しがちだが、やはり ない。 分析の切り口あってこそ成果を出せる。 例えば、証券会社にとって優良顧客と (図 5) 4. まとめ 経済環境が大きく変わる中、各証券会 社・投資銀行はトップラインの拡大に 向け、投資意欲を高めている。その一 方で、世界的な規制強化に対応するた めには業務及び IT の構造改革が必要で あり、コスト負担や人的負担の増大が 資源配分に影響を及ぼす可能性を否定 できない状況にある。 このコスト負担や人的負担の高まりに よる影響を抑制しながらトップライン を拡大するためにも、外的要因に左右 されにくいビジネス基盤の構築を推進 する必要があろう。 2015 年は、分析の観点を持ち、システ 証券会社・投資銀行における 2015 年 は今後のビジネス拡大のターニングポ されているケースが多い。収益をもた ム技術にも精通した真の CMO(マーケ イントとなる 1 年になるのではなかろ らしてくれた顧客の特徴を分析し、そ ティング責任者)が日本証券業界にも は収益をもたらしてくれる顧客と定義 うか。 の特徴と類似する潜在顧客を見出し、 必要であろう。CMO はマーケティング アクションをとる。一見正しそうだが、 に関する業務・システムの双方の責任・ これがなかなか成果が出て来ない。 権限を持つポジションである。長らく 一方、顧客にとっていい証券会社とは で運営されてきた。アナリティクスを どんな会社であろうか。顧客にとって いい証券会社であれば継続して取引を 業務とシステムは分離したガバナンス 架け橋に、その 2 つが融合され、スピー ド感あるビジネス展開が期待される。 10 2015年、保険業界を占う ~デジタル展開後の真の勝者 逆ざや解消、アベノミクスがもたらした株高・円安トレンドを受け、2014 年度の 保険各社の業績は一定の結果を得るものと思われる。 しかし、人口減少、保険離れ等、保険業界を取り巻く環境は依然として厳しいうえ に、技術革新がもたらすイノベーションにより、もはや業界内でのみ競争優位性 を保つのでは足りない状況にさらされており、2015 年は強固で新しい経営土台 を作れるか否かの分岐点に差し掛かる年になると考えている。 保険各社は、現在進めている「デジタル化」の次のステップである「デジタル展 開」後の真の勝者となるために、保有する潤沢な資産・人材をどのように活用する べきなのか。弊社が考える3つの進化に沿って述べていきたい。 林 岳郎 2000年 アクセンチュア㈱入社 金融サービスグループ マネジング・ディレクター 保険グループ統括 また、保険料の最適化や個人に合った商 これは、より顧客の視点でのライフアド 品提供を受けるためであれば、保険会社 バイザーとしての機能をもち、一方的・ が自分の利用状況・行動に関する情報に 受動的なスタンスから、より顧客視点で アクセスしても良いと思っていることが 能動的なスタンスへシフトすることを意 分かっている。 味する。 の会社がマルチデバイス化や情報の電 顧客ニーズの多様化を受けて、保険各社 大企業は顧客が最も必要とするアドバイ デジタル化 子化を完了しており (図表1)、 は次のステージへの戦略を模索すること の次のステップへ進もうとしている。 スを提供できる人材・ノウハウ、および情 になるが、今後は全ての企業が上のス 報を保有しているものと思われる。 1.デジタル化の進化 保 険 各 社 は 積 極 的にデジタ ル 投 資を 進めている。生保各社においてはシミュ レーション・設計・申込、損保各社において は新契約・契約管理・事故対応等で、大半 弊社では、 ビジネスデジタル化の発展段 階を3 つのステージに分類(図表 2) して いるが、各社ともステージ1の半ばに来て テージを狙える時代であり、伝統的企業 が新たな価値を創造し、競争優位を築く チャンスになるであろう。 経営上の最重要事項である顧客保護・満 足度達成への注力のみならず、 ビジネス モデルをより顧客視点にシフトできる企 いると考えている。 2.ビジネスモデルの進化 また、デジタル化の浸透により、保険に 保険各社はどのように独自戦略をもち、 ものと考える。 業こそが、結果ビジネスでの勝者になる 対する顧客ニーズも変化している。弊社 上のステージへ進むことができるのか。 調査結果でも、71% の顧客がデジタル キーワードは『カンパニーセントリックか が、 ビジネスモデルの進化における勝者 らカスタマーセントリックへのシフトチェ となり、 上のステージに進むことができる ンジ』 である。 であろう。 チャネルによる商品購入を求めている こと、80% の顧客がパーソナライズ化 された商品・サービスを求めていること、 11 この判断・行動様式を実践する保険会社 図表 1 保険会社のマルチデバイス化や情報の電子化状況 分類 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 シミュレーション 設計 申込 自動査定 決済 デジタル商品 マーケティング ソーシャル 新契約 契約管理 事故対応 決済 国内生保 国内生保 国内生保 外資生保 外資生保 外資生保 国内生保 カタカナ生保 国内生保 外資生保 国内生保 国内生保 外資生保 ひらがな生保 国内生保 分類 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 リード管理 国内生保 国内損保 国内損保 国内損保 国内損保 国内損保 国内損保 国内損保 ダイレクト損保 外資系損保 外資系損保 凡例 :開発済み © 2015 Accenture :開発中 / 開発予定 :開発当面無し / 不明 All rights reserved. 3.商品・サービスの進化 新しい技術の台頭による新たな商品・ サービスの進化: 新しい技術を活用した商品・サービスの 展開は、保険会社に限らず全ての企業に 入、 レセプトの有効活用等、常に変化する ると考えており、考え方次第でそのすそ ビジネス環境での勝利に向けて、弊社ク 野は広がるものと思われる。 ライアント経営者の方々からは、新ビジ ネスの在り方や次に述べる企業間連携 の機会に対する問い合わせが絶えない。 電力会社やガス会社との提携は無いか? 通信業が保有している情報を最大限活 用する提携はないか?クレジットカード会 も勝利をもたらす一つの機会であると考 企業間提携や連携による新たな商品・ 社の情報にリーチし、 これまでにないリー える。 サービスの進化: ド生成ができないのか?等、保険各社が 既に、アリアンツとBMW の提携、東京海 検討すべき企業間連携の切り口は幅広 Googleドライバーレスカー、ウェアラブル 機器の浸透、既にサービス提供が始まっ ているテレマティクス等、保険ビジネスに 影響をおよぼす可能性のある新しい技 術の台頭は枚挙にいとまがない。現在の 上日動とNTTドコモの提携等、大企業間 の提携は拡大している。 しかし、直接的に はビジネスシナジーがないと考えられて いる企業間連携には、 まだ十分に手が付 保険商品・サービスの根底を覆す技術革 けられているとは言い難い。 新に対して、 勝負を挑む会社こそが、 保険 保険各社が注力すべきポイントは、さま ビジネスにおける勢力地図を塗り替える 会社になるであろう。 ざまな企業とサービスを結び付けるエコ システム(データを企業全体、ひいては い。 位置情報を活用し事故を防ぐサービス、 ウェアラブル・グーグルグラス等を活用し 契約者の病気を防ぐサービス、ライフラ イン利用率を活用した契約者確認サー ビス等、 これらは結果、付加保険料を下 げ、サービスも充実するなど顧客満足に つながるだけではなく、保険会社もメリッ 技術革新がもたらす新たな商品・サービ 各企業のパートナーに容易にそして有益 トを享受できる。 スの今後と併せ、マイナンバー制度の導 に循環させることができるシステム) にあ 12 図表 2 ビジネスデジタル化の発展段階 デジタル化のステージ 各ステージの代表的シーン (例) ステージ1 チャネルの デジタル化 ステージ1 新たな収益源の獲得 ステージ3 デジタルビジネス コンバージェンス チャネルの デジタル化 プロセスの デジタル化 ステージ2 ステージ2 商品・サービスの デジタル化 商品・ サービスの デジタル化 • モバイル機器/ゲーミフィケーションを 活用した新規顧客の開拓 • 街頭における顧客情報に応じた デジタルサイネージ広告の提供 など • センサーテクノロジーを活用した 生産工程・倉庫ピッキング業務の効率化 • 金融機関における申請承認プロセスの 自動化 など • GPS/機器稼働センサーを活用した 産業機器のサービス化 • ウェアラブルデバイスを付けた衣料品 • 輸送業のリアルデータのマネタイズ など ステージ3 デジタル ビジネス コンバー ジェンス • ネット・メディア企業、医療機器メーカー、 保険会社等が連携したヘルスケア サービスなど 次の保険ビジネスを創出する企業が新た している一方、弊社が呼ぶ「ビッグバン型 験を行っている。中国の2大インターネット に表れる可能性は十分にありえる。今、保 破壊」を被る可能性にもさらされている。 企業、 テンセントとアリババは最近、中国 ステージ1 プロセスのデジタル化 コスト効率化 © 2015 Accenture All rights reserved. 険各社は保険ビジネスにおける現在の 位置を他に奪われるか、現状を維持・拡大 できるかの分岐点に立っていると考えて いる。 各進化がもたらす企業の復権 日本ではシリコンバレーのような大規模 ベンチャーによる新たなビジネスの台頭 は難しく、日本版のベンチャーは大企業 の関与を避けて通れないと考えている。 これまでに述べた 3 つの進化を経て、大 企業は復権と次世代企業としての勝者 (図表3) となる。 イノベーションによって競争のルールが 瞬時に変わることを、弊社は「ビッグバン 型破壊」 と呼んでおり、 今日ではほぼすべ ての業界がデジタル化のメリットを享受 13 破壊的変化を最も被りやすいのは、情報 を基盤としたサービスを扱い、それらを デジタルで提供できる業界だ。その典型 が保険業界である。 弊社の推計によると、今後 1年間で最大 平安保険と組んで保険商品をオンライン で販売すると発表した。グーグルは2011 年、保険商品比較サイトのビートザット クオート・ ドットコム( BeatThatQuart. com)を買収し、イギリスとドイツ、フラン スで保険商品の価格比較サイトを立ち上 4000 億ドルの保険料が、業界内で移転 げた。 する。弊社が世界各国で行ったアンケー トでは、3 分の 2 以上の顧客が、保険会社 以外から保険商品を購入することを検討 すると答えた。そして23%が、 グーグルや アマゾンといったオンラインサービスの プロバイダーからの購入を検討すると答 えた。 もちろん、市場調査と販売力だけで保険 会社になれるわけではない。また、新規 参入企業には規制という高い障壁があ り、特に自己資本に関する要件は厳しい。 加えて、他社が複製しにくい重要な「ハー ド」資産もある。保険金の支払いを支え る大規模な投資ポートフォリオや、複雑 業界外の企業は既にこの傾向に対応し なバックオフィスのシステム、専門知識な ており、デジタルを通じて保険を扱う実 どだ。 図表 3 “Big is the Next Big Thing” デジタル化の進展は企業の復権をもたらす テクノロジープレイヤーによる既存市場への侵食 デジタル化による企業の復権 店舗 広告 テクノロジー 企業 facebook 発電 GMS Google 自動 運転車 顧客 倉庫 携帯 電話 店舗 顧客 物流 金融 YAHOO! 取引情報 マーケット プレイス AWS 顧客 amazon 既存 企業 Kindle 家庭 動画 電力 家電 販売 テクノロジーを活用した場の確立とビジネス成長 メディア 送配電 設備 写真 記事 顧客 テクノロジーとビジネス資産活用による破壊的変化 • AmazonやGoogleは大規模投資を一気呵成に行い吸引力ある 「場」を形成 • 企業は自社の持つ膨大な顧客ベースや設備等ビジネス資産の 新たな異なる価値に気づき始めた •「場」を梃子に多くのサービスを立上げデジタル化を牽引し、 リアルビジネスのフィールドにも侵食 • テクノロジーとビジネス資産の組合せにより新たな価値を 創造することで、企業が復権を遂げる © 2015 Accenture All rights reserved. しかしこうした資産も、変化する顧客の を認識し、的確にデジタル展開を行うこ 需要に合わせて保険会社がデジタル面 とにより、生き残る可能性を手にできる。 での能力を開発しなければ、価値を失う そしてみずからが破壊者となって、自社 だろう。他業界のサービス提供者と同様 が創造した新しい環境で繁栄することさ に保険会社も、単なる商品販売から「価 え可能になる。 値ある体験」の提供へと戦略を移行させ まとめ る必要がある。 各社の状況により、各テーマの優先順位 既述の通り、 多くの企業は、 「デジタル化」 は変わる点、 またグローバル展開や、 リス を既に進めている。すなわち、デジタル クマネジメント、働き方の進化、 ダイバシ 技術を用いて自社の効率化を図り、顧客 へのサービスを向上させている。 次 のステップとなるのは「デジタル 展 開」、つまりデジタル技術を用いて、新た なビジネスモデルや製品・サービスを創 造することだ。それは従来の事業の枠を 超えるものであってもいい。既存の大企 業は、 デジタル技術がチャンスとなること ティー等その他取組むべきテーマは他に もあるものと理解しているが、本稿であ げた3つのテーマは経営テーマとして不 可避であると考えている。今回は紙面の 都合上、各テーマに対する具体的な事例 や進め方について、記載できなかったが、 今後、各社の方々と議論を深めていけれ ばと考えている。 14 最近話題のプロジェクト 昨今の営業力強化に関する引き合いに加えて、 システム刷新や次世代シス テム検討といった新たな成長に向けた案件のご支援をさせていただいており ます。 また、弊社でも注力しているグローバル案件やトレーディング・リスク管理に 関するお問合せ・プロジェクトご支援の機会も数多く頂いております。 このような引き合いの増加は、全社をあげた取組みが活発化している証左で あり、弊社としても、お客様のパートナーとして、幅広い分野でより一層の ご支援ができればと考えております。 業態 案件概要 CS 銀行 基幹系刷新後の「次の成長」 に向けたIT戦略立案・ガバナンス改革構想立案 ○ 証券 エクイティ営業強化に向けたグローバルCRMシステム構築 ○ ○ 今後の金融規制に向けたトレーディングシステム刷新計画の立案 ○ ○ 契約設計書・申込書の電子化 (タブレット化) システム構築プロジェクト ○ ○ 本社組織・要員の目指すべき姿の検討、 および働き方改革の検討支援 ○ 次期クレジットカードシステムの要件定義・機能配置検討支援 ○ 次期クレジットカードシステム構築プロジェクトのPMO支援 ○ 市況商品の成約・リスク管理におけるシステム化計画立案 ○ 保険 カード その他 (略) CS:コンサルティング、TC:テクノロジー 15 TC ○ アライアンスおよびパッケージ・システム 社名/ソリューション名 ソリューションタイプ ソリューション概要 弊社/ 銀行向け プラットフォーム グローバルも含めた銀行業経験と先進トレンドを反映した次世代ハブソリューション。フロントエンドとバッ Accenture Multi Channel Platform (MCP) 弊社/ Accenture Mobility Managed Service (AMMS) 弊社/ Accenture Life Insurance Platform (ALIP) 弊社/ Claim Components Solution(CCS) クエンドを分離し、商品・サービスの多様化や顧客志向のクロスセル営業プロセスをマルチチャネルで実現 する。顧客チャネル追加やバックエンドシステム統廃合を想定したSOA2.0型の柔軟なシステム間連携機能や、 マ ルチチャネルでの顧客情報統合管理、複数商品を跨るバンドル商品も含めた新商品・サービス生成、先進のチャ ネルフロント構築機能をベースに、あるべき銀行のシステム全体像構築を効率的かつ強力に支援。 銀行・カード会社向け プラットフォーム モバイルコマースのサービスデリバリープラットフォーム。モバイルバンキング・ポイント管理・ペイメント(NFC 含む)・クーポン・マーケティングなどのモバイルマネー系のコンポーネントを有する。従来、携帯キャリアが 提供していたモバイルマネー系のサービスを金融プレーヤーが主導で構築できるため、スマートデバイスを新 たな攻めのチャネルとして活用することが可能。欧米において多数の導入実績を有する。 生命保険会社向け 契約管理システム 生命保険・年金保険の契約管理(サイクル)業務を包括的に支援する基幹系パッケージシステム。コン ポーネント単位の組み合わせによって、最適な機能のみの導入が可能。北米を中心に60 社以上に 提 供 中。2006 年 8月アクセンチュアが NaviSys 社を買収後、ソリューション名をアクセンチュア 生命保険プラットフォーム(Accenture Life Insurance Platform–ALIP)に改称。 損害保険会社向け パッケージシステム 損害サービス業務全般をカバーするグローバル No.1のソリューション。北米トップ三社のうち二社 が導入しており、約7万人の事案担当者が日々CCSを使用、米国個人保険損害全事案中 36%は CCS で処理されている。初期導入は1998 年で、16 社に導入済。個人保険、企業保険といった全商品に 対応。業務分析ツール等変革に必要となる要素を包括的に含む。 弊社/ Underwriting Components Solution (UWC) 弊社/ Memetrics (Digital Marketing Optimization) Pega 損害保険会社向け 引受業務支援 パッケージ アカウント管理、 リスクセグメンテーション、外部データとの統合、指標管理といった機能に強みを持つ 全商品に対応し、引受業務全般をカバー。より迅速かつ適切な見積・引受を可能にし新たなリスクセグ メントの開拓、 コンバインド・レシオの改善に大きな効果をもたらす。英RSAや米Allstate, Travelersといった欧米ト ップ企業9 社が既に採用済。 マーケティング チャネル最適化 ソリューション Webサイトのランディングページ、E-mail、DM、リスティング広告、コールセンター等ダイレクトマーケ ティング手段の活用を最適化し、売上増加、口座開設率の向上等、ROI の最大化を科学的かつ自動 的に実現。2007 年 12 月アクセンチュアが Memetrics 社を買収したことにより、コンサルティングを 含めたより総合的なソリューションとして提供可能。 BPM CRM ルールエンジン ソフトウェア 業務プロセス・ルールベースのシステムを構築するための統合開発プラットフォームで、 Pegaの活用によりビジネ スプロセスとシステムは一体となり、 整合性のある柔軟なシステム構築を実現。 Next-Best-Action Marketingによ り、 市場・消費者動向に応じた機動性の高い柔軟な対応ができ、 クロスセル・アップセルの強化、 営業推進の強化が 行える。弊社はPlatinum Partnerとして、多くの海外事例に基づいた銀行、保険などの金融機関へのシ ステム提供が可能。 Calypso Murex トレーディング・ リスク管理システム デリバティブ(株式、金利、コモデティ、クレジット)、外為関連のディーリングフロントオフィス・リスク 管理やバックオフィス業務を行うための市場系システムの導入支援。欧 州を中心に世界で 200 名 以上のエンジニア(国内では約20名)と多数の導入経験により培った方法論を最大活用。 日興システム ソリューションズ (NKSOL) 証券・資産運用系 システム& コンサルテーション 銀行、証券、投信投資顧問等を主要顧客として、総合証券システム、オンライントレーディングシステム、 投信窓販システム、投信経理システム等を、ASP 型のシステムサービスとして提供。また、豊富な実務・ 運用経験に基づく、業務・システム・技術コンサルティングを展開。2005 年、より高度で幅広いサービス をワンストップで提供すべく、 アクセンチュアとアライアンスを締結。 Oracle Financial Services Software 銀行勘定系システム コア・バンキングパッケージとして、新 規 顧 客 獲 得 数 4 年連 続 世界 第一 位にランキング( 2002 ~ 2005 年 、IBS 誌 ) 。現 在 の 顧 客 数 500 以 上、115ヵ国 以 上で サービ スを 提 供して い る「 Oracle FLEXCUBE 」。モジュール・アーキテクチャとして、機能が部品化されており、必要な機能のみの導入 が可能。また、商品をパラメータで設定可能なため、新商品の導入が容易。 BaselⅡ 対応システム 銀行勘定系システム ERP(人事・会計)システム データベース・システム 高品質・高付加価値な導入コンサルテーション、豊富な成功事例に裏づけされた安全・確実なシス SAS Institute イベント・ベースト・ マーケティング クレジットライン最適化 リスク・マネジメント サステナビリティ CRM、リスクマネジメント、サステナビリティ等同社ソフトウェア・コンポーネントにより、金融業界では、 個人・法人向け顧客営業支援、 クレジットカード与信分析、BaselⅡAMA 分析、カーボンモデリング等の CSR環境アプローチ等、様々な分野における高度データ分析をリードするソフトウェア。 Temenos 銀行勘定系システム バンキング・システムとして、世界 120カ国、600 顧客サイトで利用されている「 Temenos」。 「 T24」は、 SAP テム導入、およびSAP社とのグローバルアライアンスに基づく手厚いサポートを提供。 “BWを中核とした情 報系システムの再構築”等、個別課題へのソリューションとして提供可能。 オープン・アーキテクチャにもとづき、カスタマイズ性と拡張性を提供し、 リアルタイム対応を可能と するモジュラー構造。ハイ・パフォーマンスをリードするコア・バンキング・ソフトウェア。 16 弊社外部講演およびレポートのご紹介 外部講演のご案内 セミナーインフォ社主催 Insurance Forum 2014 「デジタルが保険ビジネスを加速する レポートのご案内 「 CMO-CIO 調査 2014:浮き彫りとなっ た CMO と CIO のマインドギャップ」 「日本企業の 8 割以上の CMO(マーケ ~新たな局面を迎えたデジタル化の波~」 ティング責任者)が IT 部門を戦略的パー 11 月 27 日 ( 木 ) 弊 社 マ ネ ジ ン グ・ デ ィ レ ク タ ー 石 井 教介およびシニア・プリンシパル大窪 章敬が講演致しました。沢山の方にご 参加頂き、特にタブレットを使ったデ モはご好評頂きました。内容にご関心 があれば遠慮なくお声かけください。 トナーとみなしていない」 、 「5 割近くの 11 月中旬にファイナンス & リスクサー ビスの Global リードであるスティーブ・ カルプ及びアジア・太平洋地域のリード であるアリエッタ・ルルーが来日しま した。金融経済新聞 11 月 24 日号に日本 CIO が、マーケティング部門との踏み のリードである山本晋五も交えたインタ 込んだ連携・協働は不要と考えている」 。 ビュー記事が「グローバル戦略、決めて 」と題され掲載されました。 このような事実が弊社が実施した 2014 は『デジタル』 CMO-CIO Alignment Survey に よ り 明 ご関心があれば遠慮なくお声かけくだ らかになり、各種メディアで取り上げられ さい。 ています。調査結果の分析に加え、デジ タル・マーケティングの重要性・必然性、 以上ご不明な点などございましたら、 日本企業に向けた提言をレポートにまと 金融サービス本部マーケティング担当 めました。是非ご一読下さい。 www.accenture.com/jp/cmociosurvey2014 17 新聞・雑誌への掲載 (AccentureAsiaPacific@accenture.com) までお問い合わせ下さい。 会社概要 グローバル拠点数: アクセンチュア株式会社 お問合せ先 世界 56 カ国 本社所在地: ニューズレターの掲載内容に関する 200 都市以上 売上高: 300 億米ドル (2014 年 8 月期) 従業員数: 約 30 万 5 千人 〒 107-8672 東京都港区赤坂 1-11-44 お問合せは、金融サービス本部 FS Architect 担当 赤坂インターシティ シニア・マネジャー 松濤 真人 電話番号 : 03-3588-3000(代表) AccentureAsiaPacific@accenture.com へご連絡ください。 送付先の変更 ・ 停止等に関するご連絡 ピエール・ナンテルム FAX: 03-3588-3001 (Pierre Nanterme) 従業員数: ください。 会長兼最高経営責任者 : は、同封の Fax 用紙・ご郵送にてご連絡 約 5,400 名(2014 年 11 月 30 日時点) 代表者: 代表取締役社長 程 近智 URL : www.accenture.com/jp 03-3588-3000( 代表 ) 03-3588-3001(FAX) FS Architect 専用サイト www.accenture.com/jp/fsarchitect 金融サービス本部トップページ www.accenture.com/jp/fs 18 アクセンチュア金融サービスに アクセンチュアについて ついて アクセンチュアは、経営コンサルティング、 アクセンチュア金融サービスは、バンキング、 テクノロジー・サービス、アウトソーシング・ キャピタル・マーケット及び保険の3セクター サービスを提供するグローバル企業です。 における様々な金融機関に対し、世界各国 31万9,000人の社員を擁し、世界120カ国以 で経営コンサルティング、テクノロジー・サー 上のお客様にサービスを提供しています。 ビス、アウトソーシング・サービスを提供して 豊富な経験、あらゆる業界や業務に対応で います。 きる能 力 、世 界 で 最 も 成 功 を 収めて い る 国内外の金融業界の変化をいち早く捉え、 金融機関の中核戦略及びオペレーションに 重要な役割を果たすことで、企業のみならず 業界全体の成長に貢献したいと考えています。 クライアント企業のトップラインの拡大、コス ト削減、高まる規制やリスクへの対応、合併・ 買収に伴う統合作業、新しいテクノロジーや 複数チャネルサービスの導入等、支援領域は 多岐に亘ります。 アクセンチュア金融サービスは、約5万人の 金融業界の専門家を擁し、世界各国でサー ビスを提供しています。 企業に関する広範囲に及ぶリサーチなどの 強みを活かし、民間企業や官公庁のお客様 がより高いビジネス・パフォーマンスを達成 できるよう、その実現に向けてお客様ととも に取り組んでいます。2014 年8月31日を期末 とする2014 年会計年度の売上高は、300 億 USドルでした(2001年7月19日NYSE 上場、 略号:ACN)。 アクセンチュアの詳細は www.accenture.comを、 アクセンチュア株式会社の詳細は www.accenture.com/jpをご覧ください。 2014 年会計 年度の売上高は 65 億1千万 US ドルでした。 3つのセクターにおける主な金融機関は以下 の通りです。 • バンキング:リテール銀行、商業銀行、総合 金融機関、政府系金融機関、クレジット・ 信販会社、リース会社 • キャピタル・マーケット:証券会社、信託銀行、 投資/ 投資顧問会社、資産運用会社、証券 保管機関、各種金融商品取引所、清算及び 決済機関 • 保険:損害保険会社、生命保険会社、年金 保険会社、再保険会社、保険ブローカー 当社はグローバルのトップ顧客20 社の全て と、14 年間或いはそれ以上に亘る長期の関 係を築いています。 そのうちの8 割に対しは、15 年以上継続して サービスを提供しています。 アクセンチュア株式会社金融サービスの詳細 はwww.accenture.com/jp/fsをご覧ください。 Copyright © 2015 Accenture All rights reserved. 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