こちら - 日本骨髄腫患者の会

支持療法
IMFホットラインのコーディネーターがあなたの質問に答えます。
「IMFホットライン800-452-CURE(2873)」は、骨髄腫に関する最善の
情報を、誠実に対応して相談者にいつも提供しています。ホットラインのスタッフは、ナンシー・
バクスター、デビー・バーンズ、ポール・ヒューイットとミッシー・クレペターです。電話は、月
曜日から金曜日の午前9時から午後4時(標準時刻)まで受け付けています。また、電子メール
TheIMF@myeloma.orgでオンラインの質問も受け付けています。
私は、治療法の一部としてベルケイドによる治療を受けていますが、骨髄腫医師の間に、ベルケ
イドの投与量について意見は一致していますか?
ボルテゾミブ(ベルケイド)は、広く使われている多発性骨髄腫に効果の高い治療薬です。単独投与
でも、デキサメタゾンまたはその他3、4種の治療薬と併用することもできます。ボルテゾミブは効
果が高いため、患者さんが薬によく耐え、副作用のために治療を中断するような事態にならないよ
う投与することが大切です。
手や腕、足または脚あるいはその両方に麻痺やうずき、時には痛みを伴う末梢性ニューロパシー(神
経障害)(PN)は、骨髄腫患者さんに一般的に見られる症状です。糖尿病と同様、骨髄腫自体がPN
を引き起こすこともあります。また、サリドマイドとボルテゾミブは、骨髄腫の二大治療薬ですが、
これらの治療薬がPNの原因ともなることもありますし、先在するPNが悪化することもあります。骨
髄腫治療の目標は、患者さんの生活の質を維持しながら治療することですので、慢性的な衰弱状態
となってしまう前に、このPNの発生に注意を払い、芽のうちに摘み取ることが大切です。
スペインのバルセロナで2010年6月に開催された国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)の会合で、
世界各地から集まった骨髄腫の専門家が、たくさんの重要な課題について話し合いました。そのひ
とつは「どのように、ニューロパシーのリスクを最小限に押さえることができるか?」という問題
でした。この問題に答えるため、専門家はPNの発生率を低下させるためにボルテゾミブの投与量に
関するガイドラインを立案するよう、重要な、新しい臨床試験データを調べてみました。
臨床試験は、新しい薬剤や薬剤の併用について試験するための方法であり、しばしば新しい投与量
を決定するための手段でもあります。トリノ大学のアントニオ・パランボ医師とマリオ・ボッカド
ロ医師が率いるイタリアの研究グループ(GIMEMA)が実施した、VMPT(ベルケイド、メルファラン、
プレドニゾン、サリドマイド)治療+VT維持療法と、維持療法なしのVMP治療を比較した第Ⅲ層無
作為化臨床試験の結果が、幹細胞移植に不適格な患者さんに対する治療法の第一選択肢として、
2009年12月の米国血液学会(ASH)及び2010年6月の米国腫瘍学協会(ASCO)の会議で発表されまし
た。この試験では、PNの発症率を低下させるために、通常、週2回ボルテゾミブを投与するところ
を、週1回に変更されました(1.3mg/㎡を週1回で4週投与した後、1週間休薬)。試験結果の解析
を行った研究者は、「ボルテゾミブの週1回の投与は、週2回投与と比較して、治療効果に影響する
ことなく、有意にPNの発生率を低下させた」と発表しました。
スペインの骨髄腫研究グループ(PETHEMA/GEM)は、骨髄腫の第一選択治療として、VTかVPによる
維持療法を行うVTPとVMPを比較した第Ⅲ相無作為化試験を実施しました。この試験結果から、スペ
イン・サラマンカ大学のマリア・ビクトリア・マテオス博士は、ボルテゾミブ週2回投与を6週間続
ける治療を1サイクル行った後、毎週1回投与する方法(1.3mg/㎡を週1回で4週投与した後、1週
間休薬する)によって、PNの発症率が低下するのが観察されたと結論づけました。
これらの試験結果とIMWGの専門家の総合的な臨床経験に基づいて、毎週のボルテゾミブ投与とPN
の早期発見が、ニューロパシーのリスクを最小にする治療選択であると、IMWGは結論づけました。
IMWG機関誌上で間もなく発表される予定ですが、ボルテゾミブの投与量を決めるための特別のガイ
ドラインは、以下のとおりです。

PNの症状のない患者さんは、従来どおりボルテゾミブを週2回投与できる。

軽度のニューロパシーがある患者さん(NCIの一般毒性規準による「グレード1」:日常活動
を行う際、全く痛みがないか、機能不全の症状が伴わない、しびれ・脱力感と反射反応の低
下の両者、あるいはいずれかがある患者さん)は、PNの危険因子があるので、医師は慎重に
評価し、適切な治療方針を決めなければならない。ボルテゾミブ1.3mg/㎡を週1回処方する
治療で開始する必要がある。
日常生活で痛みをともなう「グレード1」の神経障害、または痛みはないが日常活動に支障
を来す神経障害を有する患者さん(「グレード2」)には、ボルテゾミブ1.0mg/㎡を週2回
の投与に変えるといった薬剤添付文書の勧告にかえて、1回1.3mg/㎡のボルテゾミブの投与
を週1回に減らすべきである。
痛みのある「グレード2」の神経障害のある患者さん、「グレード3」の患者さん(激痛、脱


力感、感覚障害または麻痺と深刻な痛みの療法か、いずれかが日常活動に影響している患者
さん、歩行に支えや補助の必要な患者さん)には、副作用が改善されるまで、ボルテゾミブ
の投与を中止する必要がある。PNが改善されて来たら、ボルテゾミブ1.0mg/㎡を週1回投与
の再開を検討する必要がある(現在の添付文書の推奨は、0.7 mg/㎡で再開するということ
も含まれる)。
いつものように、私たちはこの情報について皆さん診療している血液担当医・腫瘍担当医と話し合
うことと、PNの症状を経験したらできるだけ速やかにすべての症状をヘルスケア・チームに知らせ
るようにお勧めします。皆さんが、指や腕、つま先、足あるいは脚に感じる麻痺感覚、脱力感、う
ずきまたは痛みは少しでも無視をしてはいけません。できるだけ早くすべての症状を報告すること
によって、皆さんの担当医師が患者さんを衰弱させる進行性の症状を予防するための迅速な措置を
とることができるようになります。
出典:「Myeloma Today」Fall 2010, Volume 8 Number 4: Page11
http://myeloma.org/pdfs/MT804_b4web.pdf
【日本の顧問医師のコメント】
現在我が国では、ボルテゾミブは再発、難治の骨髄腫に、すなわち second line としての使用が認められている.
実際に使用した経験から週1回 1.3mg/m2 の使用でも2−3週で神経障害が出る患者さんが結構多い.休薬して1
−2ヶ月後に神経障害の進展のないことを確かめながら再会している.デキサメサゾンと併用して使用すること
を原則にしていることで意外と深刻な状態は起こしていない.これは我が国で使用の早期にいわれた間質性肺炎
による呼吸種害の発生を防ぐことにもなっている.これらに注意して使用すればかなりの効果を上げることがで
きる。
翻訳者:鈴木
監修者: 日本の顧問医師