こちら - 日本骨髄腫患者の会

ニュースと解説
Myeloma Todayのニュースと解説の内容は、IMFホットラインに寄せられた質問や読者の関
心が高い事項を基にして膨大な発表資料から抜粋しています。ご質問やご提案があれば、
MKazakova@myeloma.orgまで電子メールをお送りください。
肥満とMGUS発症リスク
アフリカ系アメリカ人では肥満が多発性骨髄腫のリスクが高いことと関係していました。
ただ、この高い発症リスクが、社会経済学的環境または遺伝的感受性、あるいはその両方
と関係しているかどうかは分かっていません。意義不明の単クローン性免疫グロブリン血
症(MGUS)では、肥満と関係があるかは明らかではありません。メイヨー・クリニックの
医師達は、社会経済学的環境が似ている40歳~79歳のアフリカ系アメリカ人女性1,000例お
よび白人女性996例を対象にスクリーニングを実施し、肥満が人種およびMGUSと関連してい
るかどうか調査しました。MGUSの女性を合計すると、アフリカ系アメリカ人が39人(3.9%)、
白人が21人(2.1%)でした。多変量解析では、肥満、アフリカ系アメリカ人および加齢が、
MGUSの高リスクと関連した独立因子でした。この調査結果は、肥満がMGUS発症に関係して
いるという仮説を支持しています。社会経済学的環境が類似した白人と比較して、MGUSが
アフリカ系アメリカ人で2倍多いことは、MGUSには感受性遺伝子があるという研究者達の仮
説を裏付けています。
MGUSと骨折リスク
スウェーデンと米国の研究グループは、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症
(MGUS)の患者の骨折リスクに関する研究を行っています。研究者達はスウェーデンの人
口ベースデータを用いて、1958~2006年にMGUSと診断された5,326人の患者を対象に骨折リ
スクを調査し、患者特性をマッチさせた対照群と比較しました。MGUS患者は5年および10年
の時点での骨折リスクが高いことが明らかになりました。腕や脚の骨折と比較して、頭蓋
骨、脊椎骨、骨盤、胸骨および肋骨における骨折リスクが有意に高く、診断時のM蛋白レベ
ルによる骨折リスクの違いは認められませんでした。骨折を経験したMGUS患者を対照群と
比較した場合、多発性骨髄腫またはワルデンストローム・マクログロブリン血症へ進行す
るリスクは高くありませんでした。
骨髄腫関連の染色体異常
IMF 科学顧問のギャレス・モーガン氏とファイス・デーヴィス氏を含むイギリスの研究者
達は、骨髄腫に関連した染色体コピー数異常とその予後的価値を研究しています。研究者
達は、骨髄腫の病態に起因している包括的なゲノムプロファイルを得るために、高解像度
の塩基多型(SNP)マッピングアレイ解析を行い、興味深い重要遺伝子が認められる領域を
確定するために、デオキシリボ核酸(DNA)の変異箇所を調べました。骨髄腫に重要な最も
高頻度の染色体欠失が、1p(30%)、6q(33%)、8p(25%)、12p(15%)、13q(59%)、14q
(39%)、16q(35%)、17p(7%)、20(12%)および22(18%)にあることが明らかにされ
ました。さらに、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)や他の解析による
データを基にして、予後的に重要な遺伝子が、1p、1qおよび17pにあることが分かりました。
また、研究者達は、骨髄腫生物学的に重要な機能を果たす遺伝子が消失していることも確
認しています。
若年骨髄腫患者の動脈血栓症
オランダの研究者達による前向きコホート研究の結果から、骨髄腫治療を受けた若い患者
に動脈血栓症の発生率が高いことが明らかになりました。この研究では、新たにMMと診断
された18歳~65歳の患者195例を対象に動脈血栓症のリスクを調べています。患者はすべて、
VAD療法(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)、TAD療法(サリドマイド、
ドキソルビシン、デキサメタゾン)、またはPAD療法(ボルテゾミブ、ドキソルビシン、デ
キサメタゾン)を3サイクル行った後で、高用量メルファランと自家幹細胞移植(ASCT)を
受けています。計522患者年で、195例中11例(5.6%)に動脈血栓症が認められました。発
生率が最も高かったのは、ASCT前の導入化学療法期間中でした。動脈血栓症のリスク増加
には高血圧と喫煙が有意に関係していました。研究者達の結論では、骨髄腫患者は導入化
学療法中とその後に動脈血栓イベントのリスクが高くなるということです。
出典:「Myeloma Today」Fall 2010, Volume 8 Number 4: Page3
http://myeloma.org/pdfs/MT804_b4web.pdf
【日本の顧問医師のコメント】
今回の記事は Myeloma Today のニュース解説です。意義不明の単クローン性免疫グロブ
リン血症(MGUS)の危険因子や骨髄腫の染色体異常,動脈血栓症の危険因子についての解
説記事が掲載されています。本邦では血栓症の発生率は欧米より低い傾向にありますが,
ステロイドやサリドマイド,レナリドミド治療中には血栓症に留意する必要があるでしょ
う。
翻訳者: 一休
監修者: 日本の顧問医師