新しい熱可塑CFRP向けプリプレグの開発

2016 年 10 月
各位
カジレーネ株式会社
新しい熱可塑CFRP向けプリプレグの開発
炭素繊維熱可塑性樹脂複合材料の高サイクル成形と
テキスタイル加工を実現するコミングルヤーンの開発
この度、カジレーネ株式会社は、三菱ガス化学㈱、岐阜大学との産学共同研究で、炭素繊維と熱可塑
性樹脂繊維が高次元で分散されたコミングルヤーンを開発しました。コミングルヤーンとはテキスタイ
ル加工の後、加熱・圧縮・冷却のプロセスを経ることで 炭素繊維強化熱可塑性プラスチックス
(CFRTP)となるプリプレグヤーンの一種です。また、コミングルヤーンは繊維状であることから、
これまでの CFRTP では実現が困難であった複雑なテキスタイル加工を用いた成形品の作製が可能とな
り、炭素繊維と樹脂繊維の高次元での分散によって CFRTP の高サイクル成形を実現します。
開発にあたり、共同研究パートナーである三菱ガス化学㈱からは低吸水性を特長とするポリアミド樹
脂(LEXTER 樹脂)の供給を受け、岐阜大学には作製方法の技術的サポート、コミングルヤーン及び
成形品の特性評価など研究面でのサポートを受けております。また、専用の糸加工機をグループ企業の
㈱梶製作所で作製することで、エンジニアリング面においても独自のノウハウが注入されております。
【背景】
昨今、鉄より強くアルミより軽い材料である、炭素繊維強化プラスチックス(CFRP)が金属材
料に替わる材料として、非常に注目を集めています。中でも成形に化学反応を伴わない熱可塑性樹
脂を母材樹脂として用いた、炭素繊維強化熱可塑性プラスチックス(CFRTP)がリサイクル性、
二次加工性、高サイクル成形性に優れる点から期待されています。しかし、熱可塑性樹脂の溶融時
の粘度が熱硬化性樹脂の硬化前の粘度と比較して非常に高いものが多く、成形時における樹脂含浸
が難しいといった課題があります。樹脂含浸が十分でないと、CFRP の強さは発揮されません。こ
の含浸の問題が CFRTP の成形時間の短縮への障壁となっているのが現状です。
また、複合材料先進国の欧州では3次元織物強化や組物強化等のテキスタイルコンポジットの考
え方が主流ですが、日本の CFRTP 業界においては熱可塑性樹脂の難含浸性の課題から強化形態は
平織や綾織、一方向強化のような単純なものが中心となる傾向がみられており、この点においても
欧州に遅れをとっている現状があります。
【新技術の概要】
この度新たに開発したコミングルヤーンは、炭素繊維と樹脂繊維が高次元で均一に分散されてお
り、成形時は樹脂繊維が溶融することで母材樹脂となります。また、熱可塑性樹脂であればどのよ
うな繊維も使用することができます。炭素繊維は数千~数万本のフィラメント群から構成されてお
り、混繊糸はこのフィラメント群の内部から樹脂含浸が始まるため、含浸時間の短縮が可能になり、
成形時間の短縮が実現できます。編物強化や組物強化 CFRTP の成形は、テキスタイル加工後に基
材外部より樹脂を含浸させることが難しいですが、コミングルヤーンであれば樹脂を含浸させるこ
とが可能となります。また、現在広く使用されている織物強化 CFRTP においても、コミングル織
物では成形時における含浸時間の短縮のみならず、コミングル織物の持つドレープ性に起因した高
い賦形性が発揮されます。
また、織物強化基材の様な編物強化基材、組物強化基材と比較してシンプルなテキスタイル加工
を対象として、コミングルヤーンの持つテキスタイル加工性は維持しつつ、含浸に特化させた半含
浸タイプのコミングルヤーンも併せて開発致しました。
両コミングルヤーンの特徴として高い含浸特性とテキスタイル加工性の他にも、繊維状であれば
任意の熱可塑性樹脂が使用できる点や、高い(炭素繊維体積含有率)コントロール性があります。
コミングルヤーン(ドライ)外観
半含浸コミングルヤーン外観
アプリケーション例(左から織物状プリプレグ、組物引抜パイプ、半球状成形品)
【販売方針】
標準材料は炭素繊維 12K 及び 6K と三菱ガス化学株式会社より低吸水ポリアミド樹脂「LEXTER/
レクスター」の供給を受け、同社による材料面の最適化を実施致しました。また、12K、6K 共に
ドライタイプと半含浸タイプのコミングルヤーンをご用意致しております。当面は糸形態による提
供を行い、並行して織、編、組の三大テキスタイル強化をはじめとした、様々なテキスタイル加工
を用いた CFRTP の用途開発を行っており、岐阜大学の指導の下、組紐引抜パイプや CFRTP 向け
NCF(ノンクリンプファブリック)基材の開発にも成功致しました。また、ポリアミド以外の樹脂
によるコミングルヤーンの開発もニーズに合わせて進めて参ります。
<本件に関するお問い合わせ>
カジレーネ株式会社
〒929-1215 石川県かほく市高松ノ75番地2
高木光朗 E-mail:m.takagi@kajigroup.co.jp
本近俊裕 Email : t.motochika@kajigroup.co.jp
TEL:076-281-0118 FAX:076-281-0164