大阪市立科学館研究報告 21 , 137 - 138 (2011) ギャラリートークの実施について 小 野 昌 弘 * 概 要 当 館 3階 展 示 場 「身 近 に化 学 」コーナーにおいて、「香りの話 」と題するギャラリートークを実 施 している。 これは、展示 資 料 やその展 示 意 図 等 を来 館者により深 く理解してもらうものとして、1 回 約 20 分で行って いる。ここではその取 り組 みについて報 告 する。 1.はじめに 2008 年 7 月に第 3 次 展 示 改 装が終 了 し、当館 3 階 展 示 場は、国 内 では最 大 の化 学 の展 示 場 を有する こととなった。化 学 に関 する展 示 といっても、溶 液 を実 際に反応させるものではなく、化 学 反 応 をキーワードに、 様 々な資 料 を化 学 的 な視 点 で紹 介 する 静 展 示 の展 示場である。 体 験 型 展 示に比 すると、どうしても子 どもだけでなく、 大 人 に対 しても展 示 の存 在 が気 付 かれにくいことがあ る。そこで、その製 作を担 当 した学 芸 員 が、その展示を 来 館 者 に紹 介 できる場 として、ギャラリートークを実 施 している。 2.実施内 容 図 2.宣 伝 看 板 解 説 する展 示 前 や正 面 玄 関 、展 示 場 の入口に設 置 基本的には、1 日 1 回 約 20 分の実 施 で行った。 他 の開 館 時 間 内 のプログラムなどの 要 因 もあり、当 初 は実 施 日 などは不 定 期 で行 うことが多 かった が、最 近 は ほ ぼ 担 当 する 筆 者 が 出 勤 する 土 ・ 日 ・ 祝 日 の 出 勤日の中 で、午 後 3 時 10 分からの実施している。 主なトピックとしては、 ・香りと人間の関わり ・歴史の中に登場する香りについて ・香り、においの正体 ・におい分子の大きさ・重さ ・嗅覚の特性について ・フェロモン ・香りと映画 ・聞香 図1・ギャラリートークのようす * 大阪市立科学館 ono@sci-museum.jp 以 上 の中 から、当 日 の来 館 者 層 に合 わせて話 題 を提 供 している。主 に成 人 を対 象 としているが、子 どもを対 - 137 - 小野 昌弘 象 外 とすることはなく、興 味 を持 っていただける人 には 充 分 理 解 していただけるように、内 容 や話 し方 に注 意 を払っている。 この話 題 提 供 の中 で、行 っている聞 香 は、松 栄 堂 か ら 販 売 さ れ ている 電 池 式 香 炉 「 こ づ つ 」 を 使 用 し てい る。 これ は 、電 池 でヒ ー タ ー を 加 熱 し、 香 木 の 香 り を 発 生 さ せるも の で 、取 扱 いが こ れまでの 香 炉 に 比 べると 圧 倒 的に楽である。正 式 な香 道 の場 でなく、個 人 的に 香りを楽しむのであれば充 分 な能 力を有 している。 本 ギャラリートークでは、香 りの化 学 的 な話 を中 心 に 展開しているため、このような手 軽 な機 械 式の香り発生 図3.ギャラリートーク開 始から3分 程 度たった頃。まだ 装 置 が 使 用 は非 常 に便 利 で、伽 羅 などの香 りを実 際 互いの距離が遠い。 に 多 く の 見 学 者 に 確 認 して も らえ ること が 容 易 に なっ た。 きづらくなったりする。もちろんマイクを使 用 しての解 説 を実 施 しているが 、音 量 を大 きくしすぎると、 当 館 3階 3.ギャラリートークの意 義 展 示 場 が割 合 静 かな展 示 場 であるため、他 の展 示 を ギャラリートークは、博 物 館 においては、学 芸 員 がそ の展 示 の背 景 や意 義 について、展 示 解 説 パネルには 見 学 している方 々に不 快 な思 いをさせる可 能 性 もある ので注意したい。 書 ききれなかったことを 紹 介 したり、話 を聞 いている見 今 のところ、このギャラリートークを聞 くことを目 指 して 学者とのやり取りでの情 報 交 換 が行 える。また、その場 来 館されるお客 様はなく、たまたま展 示 場 で開 始 直 前 で気 軽 に質 問 をできたりと、実 施 する側 、聞 く側 にもメ に声 をかけられたので、聞 く気 になったという方 々ほと リットが多い。特に情 報 提 供 をする学 芸 員 としては、解 んどである。それでも、できる限りの本 サービス提 供と、 説 パネ ル の 物 理 的 なサイズの 問 題 か ら、 書 きた くても 化 学 、そして香 りを通 した分 子 の性 質 について、見 学 かけなかった内容を生 解 説 できるという魅 力が大きい。 者 が理 解 してもらえるような内 容 とし、少 しずつ改 善 さ その1点のみにおいても実 施 する価 値 はある。また、 せながら、今後も継続していきたい。 話 を聞 く見 学 者 にとっても、現 場 で その展 示 を造 った ものによる詳 しい生 解 説 が 聞 けることで、 展 示 や資 料 の魅力をより深く知ることができる。 特 に、この3階 展 示 場 は、可 動 展 示 ではなく、資 料 展 示 であるため、子 どもには接 しにくい部 分 もあり、実 際 展 示 場 では、小 学 校 の 団 体 が来 た場 合 、走 り抜 け てしまうことも 多 い。大 人 に 対 して も 、ゆっくりと展 示 を 見 ていこうという見 学 者 に対 しては、ほとんど全 ての展 示 物 に吸引力がある資 料 を設 置 しているのだが、関 心 が薄い方々にとっては、何か物 が置いてあるだけ、と流 していくことも多い。 実 際にこのコーナーで展 示 解 説 を行 うと、始 る時は、 やや遠 巻 きに展 示 を見 ている方 が多 く、聞 いても面 白 いものなのか探る様 子 や、つまらなかったら即 、別の展 示 に行 こうというような状 態 が読 み取 れるが、始 ってし ばらくすると前 ページ写 真 のように、かなり接 近 した距 離で解説を聞いてくれる状 態になる。 なお、このギャラリートークの問 題 点 としては、どうし ても聞いていただける人 数に限りがあるということであろ う。おおよそ20名 も集 まれば展 示 が取 り囲 まれるような 状態になり、展示 資 料 などが見えなくなったり、話が聞 - 138 -
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