April 24 Issue.pub

2015年4月24日発行 第562号
MSA
Partn ers
LLC
MSA Partners LLC
370 Lexington Ave., Suite 203
New York, NY 10017
米国製薬業界週報
Tel: 212.764.4760
pharma@msapr.com
http://www.msapr.com
ヒト細胞を組み込んだオンチップ臓器
目次
インタビュー
新薬開発の効率化を促進
P2
ハイスループット対応のオンチップ
臓器開発に挑む
行政関連ニュース
P4-5
医薬品開発・製造コストの報告を企
業に義務化
FDA、ホメオパシー製品の規制枠組
み見直しに着手か
NIH、低品質医薬品の世界的蔓延
を懸念
製薬企業ニュース
P6-8
ペリゴ、マイランの買収提案を拒絶
アムジェンとバイオジェンの2015年
第1四半期決算
ロシュとキュラデブが提携
バイオテクニュース
P8
アストラゼネカ、イネートおよびセル
ジーンと提携
研究ニュース
P8
米国癌学会(AACR)ダイジェスト
製薬業界の新薬開発の成功率は非常に低
く、その打開策の一つとして、臨床効果を
的確に予測できる前臨床モデルの開発に、
とりわけ高いニーズがある。そうした中、
マイクロフルイディクス(微少流体操作)
技術を基に開発された細胞培養デバイス、
「オンチップ臓器(Organs-on-chips)」が、
新たな技術として期待されている。
ヒトの臓器をモデル化
オンチップ臓器は、
ヒトの組織や臓器の
生理学的機能を、
チップ上に再現すること
を目指している。大きさはメモリース
ティック大で、
そこに数万個単位の細胞が
生きた状態で組み込まれている。
オンチップ臓器は、
ヒトの臓器のモデル
として、従来の二次元細胞培養法を用いて
作製された細胞モデルよりも優れた特性
を複数備えている。
二次元細胞培養法の場合は通常、プラ
スチック製培養皿の栄養培地の中で細胞
を培養する。
一方、
オンチップ臓器の場合、
栄養因子を含んだ液体の流れる、
チップ上
のくぼみの中で、細胞を培養する。最も仕
組みが単純なものでは、肝細胞や腎尿細管
上皮細胞など一種類の細胞を入れるが、
複
数の異なる種類の細胞を多孔膜で仕切っ
た培養チャンバーに入れて並べることで、
より複雑な臓器や組織モデルを作製する
こともできる。
さらにオンチップ臓器では、
実際にヒトの細胞に起こり得るレベルに
合わせて、灌流させる液体の性質を変えた
り、細胞のひずみや圧縮を引き起こしたり
出来るため、ヒト体内の細胞環境に、より
類似した微小環境を再現できる。
例えば、
オンチップ臓器開発の第一人者
であるハーバード大学ヴィース研究所
(Wyss Institute)のドナルド・インバー博
士の研究室が作製したオンチップ小腸は、
大腸癌細胞由来のCaco-2細胞を取り入れ
た二重構造の細胞培養チャンバーから成
る腸管モデルだ。内腔の生理学的な流れを
保った上で、
その上皮表面において微生物
細胞を長期にわたって培養し、
また負圧駆
動の膜伸縮を用いてヒト小腸内のぜん動
を模した結果、
ヒト小腸の吸収および保護
機能の特性を再現することに成功した。
ヴィース研究所では他にも、
空気ポンプ
を使って肺の継続的な呼吸の様子を再現
するオンチップ肺を開発した他、心臓、末
梢気道、骨髄、腎臓、肝臓、皮膚、筋肉、
血液脳関門、
そして眼のオンチップ臓器を
開発中である。臓器間の相互作用の検証に
向け、複数の臓器モデルを結合した多臓器
モデル「オンチップボディー(Body on a
Chip)」も開発中だ。
ヴィース研究所はオンチップ臓器の具
体的な応用例として、
リード化合物の検証
とそれに基づく開発優先順位の決定、
分子
メカニズムや毒性学試験の実施、
臨床開発
ミメタスのオンチップ臓器製品、オーガノプレートを使って機能を再現した尿細管
本週報に関するご意見・特集記
事へのリクエストなどをお寄せ
下さい。
MSAパートナーズは、日米間の
コミュニケーションを目指す日
本の製薬業界を、市場調査・リ
サーチ・コンサルティングなど
あらゆる面から
サポートします。
①
②
③
①イヌの腎近位尿細管細胞(MDCK)により形成された、灌流可能な尿細管。幅200マイクロメートル、
高さ120マイクロメートル、長さ3ミリメートル。青の部分はポリマー、緑-黄-赤の部分は細胞。
②組織の構造がより隣接した尿細管。
出典:ミメタス
③尿細管の内側。
1
2015年4月24日発行
に有益な有効性や毒性判断のための
バイオマーカー発見などを挙げてい
る。
商業化への挑戦
オンチップ臓器を薬剤の発見や毒
性実験、そして個別化医療のための
商業用スクリーニング・プラット
フォームとして開発するためには、
いくつか越えねばならない技術的な
課題がある。
例えば、オンチップ臓器の細胞培
養基質には、その扱いやすさからポ
リジメチルシロキサン(PDMS)とい
う人工ポリマーが広く利用されてい
る。しかし、PDMSは疎水性小分子を
吸収する性質があるために、薬物動
態試験において薬物濃度や薬理活性
が低下してしまうという問題が指摘
されている。そのため、他の素材の
検討や、表面化学修飾などの研究が
既に開始されている。
現在、オンチップ機器で1ヶ月以上
細胞を培養するためには、培養液や
細胞状態を厳正に制御し管理する必
要がある。また現時点では、オンチッ
プ臓器の作製は研究所内の技術力や
専門性に大きく依存する。オンチッ
プ臓器の利用を拡大するためには、
現在広く利用されているスクリーニ
ング機器への対応や、各種制御機能
の自動化など、オンチップ臓器の簡
便性を高めて行く必要がある。
新興企業の取り組み
オンチップ臓器分野の有力研究室
から分離独立し、オンチップ臓器作
製技術の開発と製品化に取り組む企
業も生まれている。オンチップ臓器
の商業化に注力する2014年7月設立
のエミュレート(Emulate)は、ヴィー
ス研究所から自動化ヒトオンチップ
臓器技術の世界的ライセンスを受け
て設立された。また、多臓器チップ
の開発で知られるベルリン工科大学
教授のウーヴェ・マルクス博士は、
ドイツのベルリンを拠点にティス
ユース(TissUse)を2010年に設立し
ている。
オランダの新興企業、ミメタス
(Mimetas)は、製薬業界向け培養プ
レートとして標準化された384ウェル
プレートを使用し、製薬企業が保有
する標準的設備と互換性のある培養
第562号
システムの開発に注力している(イ
ンタビュー記事参照)。
ミメタスは、同社独自のオンチッ
プ 臓 器 製 品「オ ー ガ ノ プ レ ー ト
(Organoplate)」を応用し、人工多能
性幹細胞(iPS細胞)を使ったドーパ
ミン神経細胞や、微小毛細血管などの
産生に成功した。同社は2014年1月、
オーガノプレートの共同開発でガラパ
ゴス(Galapagos)と提携したほか、
同社のオンチップ腎臓開発プロジェ
クトにはファイザー
(Pfizer)
やロシュ
(Roche)、グラクソ・スミスクライ
ン(GlaxoSmithKline)などが資金を
提供している。
生物1個体が有する組織の機能と
制御の複雑さを考えれば、オンチッ
プ臓器によって生物を完全に再現
し、動物モデルを代替する日も近い
と考えるのは尚早だろう。動物モデ
ルには、1有機体全体を対象とした毒
性試験が可能であるという利点があ
るからだ。解決すべき課題はあるも
のの、医薬品研究開発に革新をもた
らす技術として、オンチップ臓器の
開発には大きな期待が寄せられてい
る。◆
インタビュー
ハイスループット対応のオンチップ臓器開発に挑む
ミメタス共同創業者兼社長 ヨス・ヨーア博士
オランダのライデンに拠点を置くミ
メタス(Mimetas)は、オンチップ臓
器(organs-on-chips)と呼ばれる新興
分野の先駆的企業である。ミメタス
の共同創業者兼社長のヨス・ヨーア
博士に、同社のオンチップ臓器製品
「オーガノプレート(OrganoPlate)」
の利点と製薬企業との提携について
聞いた。
――ミメタスの設立経緯をお聞かせくだ
さい。
ヨーア 4年程前のことです。後に当社
製品の基盤となるマイクロフルイディ
クス(微少流体操作)技術の新規技
術、フェーズガイド(PhaseGuide)を
開発したポール・ブルト博士がポス
ドク研究を終えてオランダに戻った
際に彼と会い、フェーズガイドの応
2
用について一緒に検討を始めました。
私たちは当時、3次元細胞培養が急
速に成長している技術分野であるこ
と、
そして3次元細胞培養モデルの持
つ複雑さと生理的特性を妥協しな
い、ハイスループット対応で使いや
すい新規の3次元細胞培養モデルに
大きなニーズがあることを理解して
いました。そこで我々は、ブルト博
士が開発したフェーズガイド技術を
利用して、オンチップ臓器を開発す
ることにしました。これがミメタス
の始まりです。
――前臨床研究において、オンチップ臓
器が動物モデルに比べて優れている点
は何ですか。
ヨーア 第一に、オンチップ臓器の場
合、初代細胞にせよiPS由来細胞にせ
よ、ヒトの細胞を生理学的に意味あ
る環境で利用できるところです。つ
まり、各種臓器の機能を厳密に確認
できるモデルを、実際に作製できる
ということです。動物実験では、そ
の動物の持つ複雑なシステム全体を
考慮しなくてはなりませんが、ヒト
細胞を使えるオンチップ臓器の場合、
非常に明確な実験を行えます。
毒性研究で言うと、例えば、ラッ
トモデルは人体における化合物の影
響をあまり正確に予測できません。
しかし、オンチップ臓器を使えば、
世界中のあらゆる人種背景を網羅し
たヒト肝細胞の完全パネルも、比較
的容易に作製できます。ですから、
オンチップ臓器技術には、動物モデ
ルで出来る以上のことを行える可能
性があります。
2015年4月24日発行
一方、動物モデルは、ある臓器が
別の臓器を標的とする物質を産生
し、そのせいで副作用が起こり得る
ような場合に、全身性毒性を検出す
ることができます。そのため、当社
の技術が動物モデルを完全に代替す
るとは考えていません。
オンチップ臓器は、
まだ発展途上の
技術ですが、高い将来性があります。
えば初期モデルまたは個々の細胞型
を設定し、その後境界組織を構築し
て1つのマイルストーン達成となりま
す。その後、統合化されたモデルへ
――オーガノプレートの機能と、製薬企
業との典型的な提携内容についてお聞
かせください。
ヨーア オーガノプレートは、マイク
ロフルイディクスへのアクセスに
384ウェルプレートを利用する点が大
きな特徴です。384ウェルプレートと
は、3次元細胞培養を行うための当社
のユーザーインターフェースであり、
製薬企業や学術研究機関の研究室が
所有するすべてのリキッドハンドリ
ングおよびイメージング機器と完全
互換性があります。そのため、特別
な機器を用いることなく、数百、数
千、数万件もの実験を行うことがで
きます。
これは、チューブやポンプの接続
を必要とする他の多くのオンチップ
臓器と異なる特徴です。この384ウェ
ルプレートで、通常、幅200マイクロ
メートル、高さ100マイクロメートル
のマイクロ流路を作れます。
これらの個々の流路は、すべて層
状に統合することが可能です。この
方法で、
ヒトの体内の構造と同様に、
組織を1層ずつ構築することができま
す。例えば、腎臓組織には、血管が
あって血管壁があり、そして線維芽
細胞のある中間組織があり、それか
ら数種類の免疫細胞とたこ足細胞が
存在し、最後に腎臓細管の上皮があ
ります。隣接する個々の層が一体と
なって腎臓機能を司っています。
これは、まさしくミメタスがオー
ガノプレートでやっていることです。
組織と組織とを隣接、階層化させ、
それに正常な臓器内のように血流を
人工的に設け、細胞の生存状態を
保っています。
クライアントとの提携は、事前に
決めたマイルストーンを順次達成し
ていく形で行われます。通常は、例
ヨス・ヨーア博士
と移行して、最終的にそのモデルで
特異的なアッセイを構築します。
このように、ミメタスでは予算に
応じて、段階を踏みながらクライア
ントと密接に共同研究を行なってい
ます。最終的に、オーガノプレート
を当社から提供する供給契約を結び
ます。オーガノプレートはクライア
ントのニーズや特定モデルに合わせ
てテーラーメードが可能で、例えば
ラボでの試験用に1年契約で供給す
ることもあります。
――人体における毒性や有効性を示唆
する予測因子としての御社技術の有用
性を実証するために、これまでどのよう
な妥当性評価試験を行っていますか。
ヨーア 当社は、提携先の製薬企業の
希望に沿ったモデルの開発に向けて、
実に多様なプロジェクトに関与して
います。製薬企業の要請は、特定の
疾患や特定の組織に関するもので、
大部分が毒性学やADME(吸収・分
布・代謝・排泄)、薬物動態試験/薬
力学試験(PK/PD試験)に関連してい
ます。現在、当社で最も開発が進ん
でいるモデルは、腎臓とiPS神経細胞
です。
現時点ではモデルを構築し、その
モデルを、現在入手可能な標準シス
テムに照らして検証している段階で
す。標準システムとは、2次元培養細
胞や動物モデルです。次の目標は、
当社のモデルに、高い予測価値のあ
ることを示すことです。オンチップ
臓器の分野でその段階まで到達した
企業はまだ一社もなく、当社はそれ
第562号
を目指しているところです。
多数の製薬企業が社内のスクリー
ニング技術を再検証しています。製
薬企業は、スクリーニングやアッセ
イにガラクタを入れれば、ガラクタ
が出てくるだけだということに気づ
きつつあります。適切な細胞を使わ
なければ、実際に測定したいものは、
まず測定できません。
患者の初代細胞を利用したモデル
に対する要望は、製薬企業の間で一
層高まっています。製薬企業は、その
モデル開発がより困難で、
また時間も
より長くかかることを認識しながら
も、
そのようなモデルが一旦開発され
れば、
それから得られるデータをより
信用するようになるでしょう。
――オンチップ臓器の基質には、一般的
にポリジメチルシロキサン(PDMS)とい
うポリマーが利用されますが、PDMSは
化合物を吸収するため、研究結果に影
響を及ぼすと指摘されています。
ヨーア マイクロフルイディクスでは、
これまで、柔らかなシリコン製ゴム
のPDMSが使われてきました。
医薬品
は大概が疎水性化合物であるため、
PDMSにとても付着しやすく、
また吸
収されやすいというのが不都合な点
です。ですから、例えば化合物を低
濃度に厳格に制御する必要のある研
究において、PDMS基盤の機器を使っ
た実験は極めて困難です。
当社は、低吸収性の代替材料を使
用しています。培養皿はガラス製で、
処理中に用いるポリマーも非吸収性
です。当社はこれらの材料を、非吸
収性という特性を理由に選択しまし
た。
プロフィール
Jos Joore, Ph.D.
バイオ業界で要職を17年以上務めたバイオ
テク起業家。ペプスキャン(Pepscan)、スカ
イライン・ダイアグノスティクス(Skyline
Diagnostics)、クレアテック(Kreatech)、ウェ
ストバーグ(Westburg)といったバイオテク企
業で経験を積んだ。生物学の修士号、発生
生物学の博士号を取得。優秀な成績で
(cum laude)ビジネスマーケティングの修士
号も取得した。
本ニューズレター掲載の情報は、公開情報を基にMSAが編纂したものです。弊社は、当該情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等
に対してはいかなる責任も負いません。掲載記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。 Copyright © 2003-2015 MSA Partners LLC
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2015年4月24日発行
第562号
今週の行政関連ニュース
医薬品開発・製造コストの報告を企業に義務化
医薬品価格の低下を目指し複数州議会が提案
製薬業界側が加州法案に反対する主な理由
イノベーションの阻害要因となる
カリフォルニア州議会は4月21日、
治療サイクルあたりの価格が1万ド
ル以上の医薬品について、開発およ
び製造コストの報告を製薬企業に義
務付ける法案(Pharmaceutical Cost
Transparency Act of 2015)を審議する
公聴会を開催した。
カリフォルニア州以外にも、マサ
チューセッツ州やオレゴン州、ノー
スカロライナ州など複数の州におい
て同様の法案が提出されている。法
案の詳細は州によって異なり、例え
ば年間の医薬品価格が1万ドル以上
の医薬品についてのみ、利益率およ
び様々なコストを報告するよう義務
付けているものがあれば、医薬品の
価格に関係なく、全ての医薬品を対
象に同様のデータの提出を義務付け
る法案もある。
こういった法案はいずれも、とど
まるところを知らない医薬品価格高
騰に歯止めをかけることを目指した
もので、消費者団体や企業団体、保
険会社などから強力な支持を取り付
けている。当然のことながら製薬企
業は強く反対しており、特に医薬品
価格が顕著に高額な新規C型肝炎治
療薬や希少疾患治療薬については、
そういった医薬品を使わない場合の
治療コストは、長期的にみれば高額
医薬品よりも高くつくと主張してい
る。また、こういった法案がイノベー
ションを阻む可能性に強い懸念を示
している(表参照)。
カリフォルニア州では、公聴会に
おいて製薬企業が強く反対したため、
州議会議員による法案の採決が1週
間延期された。オレゴン州では米国
研究製薬工業協会(PhRMA)とバイ
オテク産業協会(BIO)が同様の法案
の廃案に成功している。
ただし、こういった法案が成立し
ても、必ずしも医薬品価格の低下に
寄与しないとの見方もある。タフツ
大学医薬品開発研究センター
(Tufts Center for the Study of Drug
1つの医薬品について開発コストを正確に算
出することはほぼ不可能
製薬企業は高額な開発コストを回収する必
要性がある
医薬品コストは医療費総額の10%を占める
に過ぎない
既に同様の情報を証券取引委員会(SEC)に
提出している
出典:加州議会の公聴会に参加した主な製薬企業、
Pfizer、Abbvie、Bayer、Biogen、Allergen、Amgen、
BMS、Novartis、Boehringer Ingelheim (以上、日本
語表記略)の発言を基にMSA作成
Development)
のディレクター、
ケン・
カイティン氏は、
「 医薬品の価格は、
開発コストを反映したものではな
い。価格戦略は、医薬品の価値や市
場規模、使用量、パテント失効まで
の残存期間、競合分析などの要因
に基づいて策定される」と述べてい
る。◆
FDA、ホメオパシー製品の規制枠組み見直しに着手か
聴聞会で意見を収集、有効性や安全性に懸念も
FDAは4月20日と21日、ヒト用ホメ
オパシー製品の利用状況と規制枠組
みに関する情報収集を目的として聴
聞会を開催した。
FDAはホメオパシーについて、健
康なヒトに与えたら特定の疾患や症
状を引き起こすレメディと呼ばれる
物質を、その疾患の兆候や病状を呈
する患者に与えることで治療する行
為、と定義している。米国では、米
国ホメオパシー薬局方(HPUS)がホ
メオパシー製品の正式なコンペン
ディア(概要基準)とされている。
HPUSには、2004年以来、500種類以
上の成分のモノグラフ(医薬品各条)
が新規に追加され、現在は1,200以上
の成分のモノグラフが収載されてい
る。
ホメオパシー製品には、ホメオパ
4
シー製品であることがラベルに記さ
れている処方箋医薬品や生物製剤、
OTC医薬品が含まれる。FDAは1972
年に、OTC医薬品の規制枠組み見直
しに着手したが、ホメオパシー製品
については一般医薬品とは性質が異
なるとして、
審議を先送りしていた。
その後、1988年にFDAが発表した規
制 順 守 の た め の 指 針(Compliance
Policy Guide 、以下CPG)の下、ホメ
オパシー製品はFDAから承認審査を
受けずに流通が可能となったことか
ら、特にOTC医薬品としてのホメオ
パシー製品が増加の一途を辿った。
米国のホメオパシー製品市場は、
1988年の数百万ドル規模から2007年
には29億ドルに達したと見積もられ
ている。
聴聞会では、ホメオパシーを実践
する医師や、ホメオパシーだけを専
門とする医師などといったホメオパ
シー擁護派と、ホメオパシー製品の
有効性を示す科学的な証拠がないこ
とや安全面の懸念を主張する反対派
などの30名以上が証言を行った。
今回の聴聞会で収集した意見を基
に、FDAが今後どのように規制を変
更していくかは未知数だ。聴聞会で
は、製品ラベルでホメオパシー製品
を謳っていながら、ホメオパシー製
品とは認められない成分も含む製品
の製造企業を取り締まるべきという
意見について、擁護派、反対派を越
えて多くが賛同した。また、OTC医
薬品として販売されているホメオパ
シー製品の利用について、
風邪など、
ある決まった経過をたどって自然に
回復する疾患に限定されるべきとい
う点についても、多くの賛同が集まっ
た。◆
20
01
15
5年
年4
4月
月2
24
4日
日発
発行
行
2
第5
56
62
2号
号
第
今週の行政関連ニュース
NIH、低品質医薬品の世界的蔓延を懸念
国際的な政策介入を推奨
国立衛生研究所(NIH)は4月20日、
低品質の医薬品が発展途上国におい
て健康の脅威になりつつあると結論
付ける研究論文17本について、同所
ウェブサイトで言及した。これらの
研究論文は同日、米国熱帯医学およ
び衛生学雑誌(The American Journal
of Tropical Medicine and Hygiene)の
オンライン版に特別付録記事として
掲載された。
研究論文の1つでは、
マラリアや結
核、リーシュマニア症の治療を適応
とする1万6,800の医薬品や、抗生物
質のサンプルの品質を検証した結
果、その9~41%が品質基準に達して
いなかったと指摘した。また低品質
のマラリア治療薬の使用によって、
2013年、アフリカにおいて12万2,350
人の小児が死亡したと推定した。
付録記事の冒頭部において元FDA
局長のマーガレット・ハンバーグ博
士は、今日の医薬品サプライチェー
ンの状況を「国内と国外で製造され
た医薬品の境界が曖昧になってお
り、患者に偽造品が届くことを防ぐ
ため、国際的な品質および安全管理
の必要性が高まっている」と指摘。
製造の国際化を背景に医薬品供給
チェーンの複雑化が一層進んでいる
ことから、「医薬品の品質と安全性
を確保するための、
より強力な監視」
が必要であると述べた。
研究論文は、偽造医薬品や低品質
医薬品が、医薬品規制システムが存
在しない、もしくはシステムの拘束
力が弱く、かつ平均年収が低い、も
しくは中程度の国々で蔓延している
との調査結果を紹介。医薬品偽造問
題に対する国際的な枠組みや国レベ
ルの厳格な法律の適応といった、政
策介入を推奨した。
NIHのフォーガティ国際センター
の名誉研究者であるジョエル・ブレ
マン博士は、政策、科学、技術、調
査、疫学、物流の専門家の間で、国
際供給プロセスの安全性を確実にす
るための協力が緊急に必要との見解
を示した。◆
テバ、5億1,200万ドルの和解金支払いへ
反トラスト法訴訟で過去最大
4月20日付の一部報道によると、
ジェネリック薬の上市遅延を目的に
ブランド薬企業とジェネリック薬企
業との間で締結される、いわゆる金
銭支払いを伴う和解合意(Pay-forDelay settlement、以下和解合意)を
巡る訴訟で、被告であるテバ・ファー
マスーティカル・インダストリーズ
(Teva Pharmaceutical Industries、以
下テバ)が5億1,200万ドルの和解金
を支払うことで合意した。和解合意
を巡る反トラスト法訴訟の和解金と
しては、過去最大となる。
同訴訟は、セファロン(Cephalon)
の睡眠障害治療薬、プロビジル
(Provigil、一般名modafinil)のジェ
ネリック薬販売を目指して簡易新薬
承認申請(ANDA)を提出した複数
のジェネリック薬企業とセファロン
が締結した複数の和解合意に対する
反 ト ラ ス ト 法 訴 訟 を 、 1つ の 訴 訟
(In re Modafinil Litigation)
にまとめ
たもの。原告は連邦取引委員会
(FTC)やプロビジル購入者団体ら
で、ペンシルバニア州東部地区連邦
地裁が審理を担当した
(週報550号行
政記事参照)。
プロビジルは、1998年にナルコレ
プシー(睡眠障害)患者の覚醒促進
剤として、また2004年に、新たに閉
塞型睡眠時無呼吸症候群および交
代勤務睡眠障害にともなう発作性睡
眠の症状の治療薬としてFDAから承
認を受けている。
テバはプロビジルのジェネリック
薬販売を目指しANDAを提出した1
社であり、セファロンと和解合意を
締結していたが、2011年のセファロ
ン買収にともない本訴訟の被告と
なった。◆
その他の主なニュース
■FDA、医療機器の国外臨床試験デー
タに関するガイダンス草案を発表
FDAは4月22日、医療機器の市販前
承認(PMA)申請について、米国外で
実施された臨床試験のデータ提出に
関するガイダンス草案を発表した。
同ガイダンス草案は、臨床試験のグ
ローバル化が進む現在の状況を理解
した上で、申請書類に含まれる臨床
データの妥当性を確保するため、米国
とその他国々との違いのうち、
特に考
慮が必要とされる点を明らかにした
もの。
例えば、標準ケアの定義や、臨床試
験施設の状態、被験者人口、規制要件
などの違いは、医療機器の安全性や有
効性を検証するデータ分析の結果に
影響を及ぼすため、FDAは、PMA審査
に際し、
特にこれらの点を注意すると
している。
■NCI、米国乳癌症例数の予測を発表
国立癌研究所(NCI)は4月20日、米
国癌学会(AACR)の年次総会におい
て、2030年の米国の乳癌症例数は、
2011年より最大50%増加するとの見
通しを発表した。
NCIによると、侵襲性乳癌と非浸潤
(in situ)乳癌に分類される新規乳癌
の全症例数は、2011年の28万3,000件
から、2030年には44万1,000件に増加
する。乳癌症例全体における割合は、
50~69歳の女性では2011年の55%か
ら2030年には44%に減少、70~84歳の
女性では同期間に24%から35%へと
増加する。エストロゲン受容体(ER)
陽性の侵襲性乳癌の割合は63%で横
ばい、ER陽性の非浸潤乳癌の割合は
19%から29%へと増加し、ER陰性の
乳癌(侵襲性乳癌と非浸潤乳癌含む)
の割合は17%から9%へと減少する。
NCIは、早期発症型のER陰性乳癌
の高リスク因子として初産年齢が若
い女性が母乳を与えないことが知ら
れている一方で、初産年齢の高齢化や
母乳育児の増加が近年見られること
が減少の一因である可能性を示唆し
た。
本ニューズレター掲載の情報は、公開情報を基にMSAが編纂したものです。弊社は、当該情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等
に対してはいかなる責任も負いません。掲載記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。 Copyright © 2003-2015 MSA Partners LLC
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2015年4月24日発行
第562号
今週の製薬企業ニュース
ペリゴ、マイランの買収提案を拒絶
テバはマイラン買収を提案、うわさが現実に
ペリゴ(Perrigo)は4月21日、マイ
ラン(Mylan)から4月8日付けで受け
取っていた買収提案について、
取締役
会が全会一致でこれを拒絶したと発
表した 。マイランは4月8日、ペリゴ
株式1株あたり205ドル、総額約290億
ドルでの買収を提案。この買収額は4
月3日のペリゴ株終値に25%超のプレ
ミアムを上乗せしたものだった。
拒絶の理由としてペリゴは、
マイラ
ン提示額がペリゴの企業価値を正当
に評価していないこと、また、2014~
2017年の3年間で売上の年平均成長
率(CAGR)5~10%を目指す、ペリ
ゴの成長戦略によって達成される競
争力に基づいてペリゴ株主が受ける
べき全利益を反映していないこと、
ぺ
リゴが2015年3月末に完了したオメ
ガ・ファーマ(Omega Pharma)買収に
よるベネフィットや、今後3年間で10
億ドル近くの売上を見込むペリゴの
革新的な新製品パイプラインからも
たらされるベネフィットを計算に入れ
ていないことを挙げた。
マイランとペリゴは共にジェネリッ
ク薬販売大手で、
マイランはペリゴ買
収により、スペシャリティ医薬品、
ジェネリック医薬品、
OTC医薬品およ
び栄養補助製品市場におけるプレゼ
ンス強化を狙っているという。
マイランは2014年7月、アボット
(Abbott)の先進国市場向けブランド
ジェネリック薬事業を買収することで
アボットと合意し、
約100種類のス ペ
シャリティ医薬品とジェネリック薬か
らなる広範な医薬品ポートフォリオ
と、
フランスならびに日本の製造施設
を取得している。
一方のペリゴも積極
的な企業買収を行ってきており、
2013年にはアイルランド拠点の製薬
企業エラン(Elan)を買収した。
しかし一部報道は、
マイランのペリ
ゴ買収の狙いを、
以前から憶測のあっ
たテバ・ファーマスーティカル・イン
ダストリーズ(Teva Pharmaceutical
Industries、以下テバ)による買収を
嫌ったマイランが、
事業規模を拡大す
るためぺリゴ買収に乗り出したとの見
方を示した。実際にマイランは、ペリ
ゴ買収を提案する前の週には、
買収防
衛策として毒薬条項を用意したとも
伝えられている。
こうした中、
テバは同日の4月21日、
マイランの発行済株式を1株あたり82
ドル、総額約400億ドルで買収する提
案を行ったと発表、
市場の買収憶測を
裏付けた形となった 。この金額は、
4月7日のマイラン株価終値に37.7%の
プレミアムを載せたもので 、テバで
は50%を現金で、
残り50%をテバの株
式で支払う予定。
一部報道によれば 、テバは簡易新
薬承認申請(ANDA)中の医薬品候補
を400剤以上保有、そのうち80剤以上
については第一ANDA申請者である
という。
これらの多くが上市されれば、
マイラン買収後の新会社はジェネ
リック薬市場でさらに巨大な力を持
つことになる。また、多発性硬化症、
呼吸器系疾患、疼痛、アレルギー疾患
分野の医薬品を含むスペシャルティ
医薬品部門の売上は100億ドルを超え
るとも予測されている。
これらを踏まえテバでは、
マイラン
買収により、
幅広い製品群と強固な商
業化力、地理的な優位性を備えた、
「ジェネリック薬世界市場の変革に
寄与する」
主導的な製薬企業になると
期待 。同取引がテバの株主にとって
魅力的な戦略であり、
また財政面での
利益をもたらすこと、
同時にマイラン
の株主にとっても、
高いプレミアムと、
株式の価値を高めることになると述
べた。
なおマイランは4月24日、ペリゴに
対し、1株あたり約222ドル、総額約
330億ドルでの買収を再提案した。テ
バによる買収提案には言及していな
い。◆
主要製薬企業の収益報告
今週はロシュ(Roche)やアストラ
ゼネカ(AstraZeneca)を含む製薬大手
6社が2015年第1四半期の収益報告を
行った。下記の表は企業記事(7ペー
ジ参照)で取り上げたアムジェン
(Amgen)を除く5社について、2015
年第1四半期の売上および純利益と、
それぞれの前年比伸長率をまとめた
ものである。
*来週号は、特集記事で2015年第1四
半期の決算総括をお届けします。◆
製薬企業5社の2015年第1四半期売上および純利益
会社名
決算発表日
売上
前年比
ロシュ
4月21日
124億1,140万ドル*
5%増**
NA
NA
イーライリリー(Eli Lilly)
4月23日
46億4,470万ドル
1%減
5億2,950万ドル
27%減
アッヴィ(AbbVie)
4月23日
50億4,000万ドル
10.5%増
10億2,200万ドル
4.2%増
ノバルティス(Novartis)
4月23日
119億3,500万ドル
7%減
23億600万ドル
6%減
アストラゼネカ
4月24日
60億5,700万ドル
1%増**
5億5,000万ドル
NA
*連邦準備銀行による外国為替レート2015年1~3月平均1ドル=0.9534スイスフランで換算
**伸長率は恒常為替レート=CERベース
6
純利益
前年比
出典:各社発表資料を基にMSA作成
2015年4月24日発行
第562号
今週の製薬企業ニュース
アムジェンとバイオジェンの2015年第1四半期決算
両社ともに大幅な増収増益を報告
アムジェン(Amgen)とバイオジェ
ン(Biogen)は2015年第1四半期収益
を発表した。
アムジェンの4月22日の発表による
と、売上は前年同期比11%増の50億
3,300万ドル、純利益は同51%増の16
億2,300万ドルだった。
製品別売上は、好中球減少症治療
薬のニューラスタ
(Neulasta)
とニュー
ポジェン(Neupogen)の合計が前年同
期比横ばいの13億8,000万ドル、関節
リウマチ治療薬エンブレル(Enbrel)
が同13%増の11億1,600万ドル、骨粗
鬆症治療薬プロリア(Prolia)と、プロ
リアと同一成分で固形癌患者の痛み
や骨折などの骨関連症状(SRE)の発
症を予防するエクスジバ(Xgeva)が
それぞれ同39%増の2億7,200万ドル、
22%増の3億4,000万ドルだった。
貧血治療薬のアラネスプ
(Aranesp)
とエポジェン(Epogen)は、それぞれ
同4%増の4億8,000万ドル、同16%増
の5億3,400万ドルを売り上げた。二次
性副甲状腺機能亢進症(SHPT)治療
薬のセンシパー(Sensipar)は同24%
増の3億3,400万ドル、多発性骨髄腫治
療薬カイプロリス
(Kyprolis)
は同59%
増の1億800万ドルと共に伸張した。
バイオジェンが4月24日に発表した
2015年第1四半期の売上は前年同期
比20%増の25億5,500万ドル、純利益
は同70%増の8億2,300万ドルだった。
主力製品の売上は、2013年3月に
FDA承認を受けた経口の多発性硬化
症(MS)治 療 薬 テ ク フ ィ デ ラ
(Tecfidera)が前年同期の5億600万
ドルから大きく増加して8億2,500万
ドルを売り上げたが、
直前期との比較
では10%減と伸び悩んだ。
この理由と
してバイオジェンは、米国とドイツで
の需要がさほど大きくなかったことを
挙げた。
その他、MS治療薬のアボネックス
(Avonex)とタイサブリ(Tysabri)
の売上は、それぞれ同9.9%減の6億
9,300万ドル、同4.7%増の4億6,300万
ドルだった。2014年8月に再発型多発
性硬化症(RMS)治療を適応に承認さ
れ た プ レ グ リ デ ィ(Plegridy)は
6,180万ドルを売り上げた。
血友病B患
者のための組み換え血液凝固第IX因
子、アルプロリクス(Alprolix)と、
2014年6月に承認された血友病A患者
のための長期作用型遺伝子組み換え
第VIII因子(FVIII)Fc融合タンパク、
エロクテート(Eloctate)の売上は、
それぞれ4,310万ドルと5,360万ドル
だった。◆
ロシュとキュラデブが提携
癌免疫療法薬の共同開発と商業化で
ロシュ(Roche)とインドのニュー
デリーを拠点とするキュラデブ・
ファーマ・プライベート(Curadev
Pharma Private、以下キュラデブ)は、
インドールアミン2. 3-ジオキシゲナー
ゼ(IDO)1およびトリプトファン2 .3
-ジオキシゲナーゼ(TDO)阻害剤の
開発と商業化に関して独占的ライセ
ンス合意に至った。キュラデブが4月
20日に発表した。
両社は、IDO1とTDOの両方を標的
とするキュラデブのリード免疫寛容
阻害剤の前臨床開発と、IDOおよび
TDO経路の研究を共同で手掛ける。
IDO1とTDOは癌誘発性の免疫抑
制を仲介する酵素。腫瘍細胞や特定
の免疫細胞は、これら酵素の働きを
利用して抗腫瘍免疫反応を制御する
ことが分かっている。
合意の下、キュラデブは契約一時
金2,500万ドル、
マイルストーン金およ
びロイヤルティとして最大5億3,000万
ドルをロシュから受ける可能性があ
る。ロシュは研究、開発、製造およ
び商業化に関する費用を負担し、共
同研究資金もキュラデブに提供する。
キュラデブは共同研究から生まれた
IDO1およびTDO阻害剤以外の製品に
ついてもマイルストーン金とロイヤル
ティを受け取る可能性がある。◆
その他の主なニュース
■アエリー、ロプレッサのフェーズIII臨
床試験結果を発表
アエリー・ファーマスーティカルズ
(Aerie Pharmaceuticals)は4月23日、
緑内障または高眼圧症患者の眼圧
(IOP)低下を適応に開発中のロプ
レッサ(Rhopressa)のフェーズIII臨床
試験結果を発表した。ロプレッサは、
Rho-キナーゼ(ROCK)とノルエピネ
フリン輸送体(NET)の両方を阻害す
る。
Rocket 1と呼ばれるフェーズIII臨
床試験では、緑内障患者182名をロプ
レッサを1日1回投与する群に、188名
を対照薬のチモロール(timolol)を1
日2回投与する群に割り付けた。ベー
ス ラ イ ン の IOP は 20mmHg 以 上 27
mmHg未満とした。
結果、ロプレッサは、主要評価項目
としたチモロールに対する非劣性を
達成できなかった。
ただしロプレッサ
は、ベースラインIOPが26mmHg未満
の患者においては、測定した9つの時
点の全てにおいて、
チモロールに対す
る非劣性を達成した。
■イミュノジェン、サノフィからADC候
補薬を再取得
イミュノジェン(ImmunoGen)は4月
24日、3月31日締め四半期の収益報告
において、サノフィ(Sanofi)と提携し
て開発していたSAR3419の権利を、サ
ノフィから再取得したと発表した。
SAR3419は、イミュノジェンの標的
抗 体ペイ ロー ド(Targeted Antibody
Payload、TAP)技術を利用した薬剤結
合抗体(Antibody-drug conjugate、以下
ADC)で、抗腫瘍化合物であるメイタ
ンシノイド(maytansinoid)を含む。イ
ミュノジェンとサノフィは、びまん性
大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)や
他の血液癌の治療を適応に同剤を開
発 し、2014 年 の 米 国 臨 床 腫 瘍 学 会
(ASCO)
で良好なフェーズII臨床試験
結果を報告していた。
一部報道によれば、両社は昨年夏頃
から同剤の開発計画について協議して
いた。なお両社は、癌治療薬候補の
ADC3剤でも提携している。
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2015年4月24日発行
第562号
今週のバイオテクニュース
アストラゼネカ、イネートおよびセルジーンと提携
抗癌剤MEDI4736の開発前進で
アストラゼネカ(AstraZeneca)と同
社のバイオ医薬品研究開発部門であ
るメディミューン(MedImmune)は
4月24日、イネート・ファーマ(Innate
Pharma、以下イネート)の抗NKG2A
抗体、IPH2201の開発の拡大と促進を
目的に、
イネートと提携したと発表し
た。IPH2201は、ナチュラルキラー細
胞とサイトカインT細胞による抗癌機
能を阻害するチェックポイント受容
体であるNKG2Aを阻害する新規クラ
スのヒト化IgG4抗体。
合意の下両社は、IPH2201と、メ
ディミューンの抗プログラム細胞死
リガンド1(PD-L1)免疫チェックポ
イント調節因子阻害剤MEDI4736と
の併用療法を固形癌患者で検証する
フェーズII臨床試験と、IPH2201の単
独療法および既存治療薬との併用療
法を複数の癌治療を適応に行う
フェーズII臨床試験を実施し、
関連す
るバイオマーカー開発にも取り組む。
アストラゼネカは契約一時金2億
5,000万ドルを支払い、IPH2201の単独
療法や、MEDI4736との併用療法の共
同開発と製品の商業化に関する独占
的世界的権利を取得する。
アストラゼ
ネカはフェーズIII臨床試験開始まで
に追加で1億ドルと、規制関連の成功
や製品売上に応じた段階的なマイル
ストーン金を支払う可能性がある。
別件でアストラゼネカは同日、
非ホ
ジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、
多発性骨髄腫を含む広範な血液癌を
適応症としたMEDI4736の開発と商
業化で、セルジーン(Celgene)と提
携したと発表した。
合意の下セルジーンは、アストラ
ゼネカに契約一時金4億5,000万ドル
を支払う。セルジーンは合意に基づ
く臨床試験を主導し、2016年までの
研究開発費用については全額を、そ
れ以降については75%を負担する。
セルジーンは、合意から生まれ承認
された製品の商業化も担当する。
アストラゼネカは 継 続 し て
MEDI4736を製造し、血液癌を適応症
とした同剤の世界売上に応じたロイ
ヤルティをセルジーンに支払う。ロ
イヤルティは売上の70%とし、4年間
で50%まで徐々に減額される。◆
米国癌学会(AACR)ダイジェスト
米国癌学会(AACR)の年次総会が、4月
18~22日にペンシルバニア州フィラデル
フィアで開催された。同学会から注目の
研究2件を取り上げる。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ
(Bristol-Myers Squibb、以下BMS)は
4月20日、オプジーボ(Opdivo、一般
名nivolumab)とイェルボイ(Yervoy、
一般名ipilimumab)
との併用療法の有
効性と安全性を検証したフェーズII
臨床試験結果を発表した。
CheckMate-069と呼ばれる無作為
化二重盲検フェーズII臨床試験では、
治療未経験の切除不可能なステージ
3および4の黒色腫患者142名を対象
に、オプジーボとイェルボイの併用
療法(以下、併用療法群)とイェル
ボイの単独療法(以下、単独療法群)
とを比較した。なお同試験には、
BRAF野生型患者およびBRAF変異
陽性患者の両方が参加した。
併用療法群に95名が、単独療法群
に47名が無作為に割り付けられた。
併用療法群は、オプジーボ1mg/kg
とイェルボイ3mg/kgを3週間ごとに1
回、計4回投与し、その後オプジーボ
3mg/kgを2週間ごとに1回、疾患の増
悪または認容できない毒性が認めら
れるまで投与した。一方単独療法群
は、併用療法群と同じレジメンで、
8
8
オプジーボをプラセボに置き換えた。オプジーボとイェルボイの併用療法とイェルボイ
主要評価項目はBRAF野生型患者 単独療法との比較における、各被験者群での
ORRおよびPFS中央値
における客観的奏効率(ORR)、二
併用投与群
単独投与群
次評価項目はBRAF野生型患者にお
61%
ける無増悪生存期間(PFS)、BRAF BRAF野生型患者
11%
(うち完全奏効
におけるORR
V600変異陽性患者におけるORRと
22%)
PFSおよび安全性とした。
BRAF変異陽性
結果、併用療法群におけるBRAF野
8.5ヶ月
2.7ヶ月
患者における
生型患者のORRは61%、完全奏効率
PFS中央値
は22%を示した。一方、単独療法群
出典:企業情報を基にMSA作成
におけるBRAF野生型患者のORRは
11%にとどまり、完全奏効を果たし
連するグレード3~4の副作用の発生
た患者はいなかった。
率は、併用療法群で54%と、24%だっ
また、併用療法群におけるBRAF変
た単独療法群の倍以上だった。
また、
異陽性患者のPFSの中央値は8.5ヶ月
併用療法群では医薬品に関連する死
と、2.7ヶ月だった単独療法群と比較
亡が3件報告された。
して顕著に優れていた。ORRは抗プ
AACRではメルク(Merck)もPDログラム細胞死リガンド1(PD-L1)
L1 抗 体 治 療 薬、キ ー ト ル ー ダ
陽性の患者で58%、PD-LI陰性の患者
(Keytruda、一般名pembrolizumab)
で55%と、PD-L1変異の有無とORRと
について、既存の治療法が奏効しな
の間に関連はなかった。
いか適切でないPD-L1陽性の進行し
CheckMate-069はオプジーボとイェ
た固形癌患者を対象としたKEYNOTE
ルボイの併用療法の安全性を、イェ
-028と呼ばれる、マルチコホート、非
ルボイ単独療法との比較により検証
無作為化フェーズIb臨床試験結果を
した初の無作為化試験で、併用療法
発表した。このうち進行した胸膜中
の安全性プロファイルは以前行われ
皮腫患者25名を対象に行われたコ
た併用療法レジメンにおけるものと
ホート試験では、キートルーダ投与
同等だった。副作用の発生率は併用
による全奏効率は28%、また患者の
療法群で91%、単独療法群では93%
48%で病勢の安定が見られ、疾病コ
と両群で同等だったが、医薬品に関
ントロール率は76%に上った。◆
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