Volume 5, Number 9 2013年10月 ニュー アーバニズム The Institutional Real Estate Letter – Asia Pacific 都市開発及びより高い居住性への道を模索するアジア ベンジャミン・コール 日本語 特別版 一部の記事を抜粋し、日本語に 翻訳してご提供しております。 ∼ 特集 ∼ 投資家に好都合? アジアパシフィックでの投資におけ る運用報酬体系について、投資家 が真に望むものは何か? スーパー・サイズ ミー 拡大を続け、市況回復の波に乗る 投資顧問会社の成長が続く パブリッシャーズ ノート アベノミクス 先延ばしされた危機が、(結局は) 解決された危機となる マーケット・パースペクティブ 多様化されたポートフォリオ アジアパシフィックの投資家のポー トフォリオにロンドンやニューヨーク シティを加えることでリスク・リターン 特性の調整が可能に 将来のアジア都市には、適切 なインフラや経済成長を促進す る能力を備えた機能性だけでな く、企業や住民を呼び込むため、 居住地としても魅力的な場所で あることが不可欠だろう。以前は、 都市の立地と開発を決定づけた のは、大抵地理的な要素であり、 今後も大部分ではその傾向が 続くだろう。 すなわち、企業は、 港や交通の中心地、また資源に 近接して存在していた。煙害や、 密集、治安の悪さより、地の利と 利益が優先された。 しかし、アジア経済が脱工業 化 し 都 市 化 が さ ら に 進 む な か、 サムスン、インフォシス、アップル、 アマゾン、アリババグループのよ うなハイテク企業及びサービス 企業や、金融機関、観光関連業 も 必 然 的 に 発 展 を 続 け て い る。 今や、最先端の企業は、イン ターネットの出現で、最良の従 業員が獲得でき得る地なら、どこ でもオフィスを構えることができ るようになった。 中 国 が 度 々 の 失 策 の 後、 ニューアーバニズムの要素を採 り入れ始めたのは喜ばしい ニュースと言えよう。言うまでもな く、アジアの大部分は既に発展 を遂げていることから、ニュー ア ー バ ニ ズ ム が 発 生 す る に は、 既存の都心風景の隙間を突くこ とが必須であろう。 ニューアーバニズムの原理を 基に修復されたアジア都市の一 例として東京での件を挙げたい。 ドイチェ・アセット&ウェルス・マ ネジメント(旧RREEF リアルエス テート)オルタナティブ及び不動 産投資部アジア太平洋地域担 当(日本と韓国を除く)調査・戦 略責任者レスリー・チュア氏によ ると、1914年に建てられた東京 駅及び周辺が順調に復原され、 再開発されている。 インスティテューショナル・リアル・エステート・レター・アジアパシフィックの翻訳抜粋版は、 ジョーンズ ラング ラサール株式会社より提供されています。* ジョーンズ ラング ラサール株式会社は世界70ヵ国で包括的な不動産サービスを提供しています。コーポレートファイナンスグループでは、 投資戦略の提案、ファンドマネージャー/ファンドのデューデリジェンス、JVパートナーシップ及びプロジェクト紹介、キャピタルマーケット グループでは、不動産売買の取引支援、投資アドバイザリー等のサービスを提供しています。 お問い合わせ: コーポレートファイナンス: 高橋雅之 キャピタルマーケット: 水野明彦 masayuki.takahashi@ap.jll.com akihiko.mizuno@ap.jll.com 03-5511-3369 03-5501-9947 *掲載された内容の誤り及び掲載された情報に基づいて被ったいかなるトラブル・損失・損害について、当社は一切の責任を負いません。 1 投資家に好都合? アジアパシフィックでの投資における運用報酬体系に ついて、投資家が真に望むものは何か? マード・ナマン アジアパシフィックにおける不動産投資商品の運 用報酬体系に関して、投資家が主に懸念するのは どんな点だろうか。有意義で信頼性のあるベンチ マークが未だ確立されていないアジア市場で、どの 程度が「適正な」運用報酬と言えるだろうか。リスクリ ターン特性、投資対象国、アセットクラスにかかわら ず、マーケット水準として広く認識されている報酬体 系が存在しないため、アジアパシフィックにおける適 正な報酬体系を一般化して論ずることは極めて困難 だとヘンダーソン・グローバル・インベスターズ、アジ ア不動産直接投資部門ファンドマネジャーのピー ター・リー氏は語る。 報酬体系に関する見解やその論拠についての意 見交換や発表は、投資家にとって、事前の策を講じ る際の一助となる。そのためには、討論会の開催や、 様々な属性の投資家(ソブリン・ウェルス・ファンドや 保険会社等)による調査研究が必要だとリー氏は述 べている。 また、契約条項や報酬体系、情報開示の透明性な どについて対話するには投資家、投資顧問会社双 方にとって、不動産サイクルの観点から今が好機で あろう。金融危機後も投資を続行する勇気のあった 投資家は、現在そのリターンを享受している。しかし、 ファンドレイズ環境は依然として厳しい状態が続いて いる。従って、市場が極端に良い訳でも悪い訳でも ない現在が、合理的な対話を持つには適切な時期 であると言えよう。 スーパー・サイズ ミー 拡大を続け、市況回復の波に乗る投資顧問会社の 成長が続く ラリー・グレイ 近年、独自の「特製ソース」を使って、運用資産を スーパー・サイズ化し、世界の不動産投資顧問ラン キングトップに躍り出た投資顧問会社が数社出てき た。アグレッシブな成長やM&A戦略を通じて、ブルッ クフィールド・アセット・マネジメント、CBREグローバ ル・インベスターズ、そしてブラックストーン・グルー プが他社を大きく引き離したことが、プロパティ・ファ ンズ・リサーチ(PFR)及びインスティチューショナル・ リアル・エステート・インク (IREI)による不動産投資顧 問会社に関する世界規模での調査で明らかになっ た。 この業界ビッグスリーが、他社への相当なリードを 維持している。1,154億USドル超の運用資産を誇る 2 ブルックフィールド・アセット・マネジメントがランキン グ首位を維持、以下907億USドルのCBREグローバ ル・インベスターズ、886億USドルのブラックストーン・ グループと続く。(投資顧問会社トップ100社のランキ ング及び各社運用資産の地理的分布の詳細を示す 32,33ページの図表「世界の不動産運用資産」をご 参照ください。) 「グローバリゼーションと合従連衡が当業界の推進 力となっており、更なる成長と大手各社のM&A 活動 を促進している。」 IREI社長兼CEO ジェフリー・ドー マン氏が指摘する。「大型機関投資家は取引する投 資顧問会社の数を絞ると同時に、ポートフォリオのグ ローバル化を試みている。その結果、グローバル投 資顧問会社がグローバル投資商品の種類を拡充し、 一社で多様なサービスを提供するようになった。」 調査結果の詳細及び投資顧問会社ランキングはこ ちらからダウンロードいただけます。 http://publications.irei.com/TIREL-NA-Report09-13.html パブリッシャーズ ノート アベノミクス マーケット・パースペクティブ 多様化されたポートフォリオ 先延ばしされた危機が、(結局は)解決された危機となる アレックス・エイドリン 今年初め、日本に新政府が発足して安倍晋三が 首相に就任し、アベノミクスが開始されてから、日本 で著しい変化が起こっている。経済に関する一連の 新政策はどのように進展しているのか、また新政策 は日本経済及び不動産市場にどのような影響を及 ぼすのか。 新政府の政策についてはアナリストや専門家による 記事が多々発行され、巨額を投じた景気刺激策、公 共事業、円安といったアベノミクスの何たるかがほぼ 周知となった。今年第三四半期の終わりには、日本 の長引いたデフレーション状態を終結させるため打 たれた実験的手段のどれかが、この国の経済風景を 再成形するのを興味深く観察できることだろう。 一つ明らかなのは、金利の引き上げを背景に、日 本の年金基金やその他の機関投資家が、日本国債 から株式へ、またおそらく不動産へも一部運用資産 を振り向けるだろう。日本の不動産は既にかなりの高 値をつけているが、日本の機関投資家が一斉に不 動産市場に流れ込めば(短期的ではなく、より長期 的な筋書きにおいて)、国内で新たな不動産バブル が発生する可能性もある。 アジアパシフィックの投資家のポートフォリオに ロンドンやニューヨークシティを加えることで リスク・リターン特性の調整が可能に ミーガン・ウォルターズ博士 ニコラス・ウィルソン アジアパシフィックの投資家の間で、ロンドンと ニューヨークシティへの注目が高まっている。2012年 及び2013年上半期でアジアパシフィック資本の投資 家がロンドンに96億USドル、ニューヨークシティに32 億USドルを投資したが、この金額は、同期間中上記 二都市において直接不動産に投資された金額のお よそ10-20%を占める計算になる。 なぜこの二都市がアジアパシフィックにおける主要 な投資先都市と拮抗するのか。同様に、英国及び米 国ベースの投資家の目にアジアパシフィックの都市 はどのように映っているのか。自国の不動産ポート フォリオにロンドンとニューヨークシティを加えることで、 投資家は期待通りの分散効果が得られるだろうか。 もしくは、今、主要都市はみなこのような傾向を示し ているのだろうか。 自国の物件に投資したアジアパシフィックの投資 家に主に問いたいのは以下の質問である。すなわち、 これらのリターンを踏まえて、ポートフォリオにロンド ンとニューヨークシティを加えることで、どの程度リ ターンのボラティリティが改善されるのか。アジアパシ フィックの投資家が、アジアパシフィック地域内のみ で投資した場合の方が良い結果を得ただろうか。 3
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