ANOTHERVIEW 不動産ファイナンスの救世主! ! の可能性 「不動産キャップレートモデル」 神崎清志― クレジット・プライシング・コーポレーション 不動産市場をモデル化し、不動産資産およびノンリコースローンの時価評価、将来の価格変動ならびにポートフォリオの毀損確率 までを総合的に管理できる手法が構築されたという。そうであれば、同手法が浸透することこそ、悲壮感漂うばかりのマーケットの 雰囲気を打破する近道となるかもしれない。この極めて革新的なアプローチの概要を解説いただいた。 科学的分析・評価時代の幕開け 予測することができるため、極端に 保守的な金融機関の融資姿勢を是 キャップレートデータベース★3 まず、キャップレートデータを収集 正するひとつの理由付けを与えたり、 するため、上場リートにて実際に行 不動産担保ローンやCMBSの公正価 われた取引のデータを集めた。その 2001年のJ-REITの上場以来、従来 値を評価するなど、このモデルは不 データを地域別、用途別に分類し、 外部からは観察することが難しかっ 動産関連商品の評価の場で今まで 全てのキャップレートデータを、標準 た不動産の実取引価格を含めた取 にない新たな機能を提供することが 物件に比準することを行った。 引情報や、キャッシュフローや権利関 できる。 用途・地域 係などの物件情報が公開情報として 詳細に取得することが可能になった。 オフィス 東京6地域、地方3都市 一方で、同時期、外資投資家の流入 住宅 東京6地域、地方3都市 などから不動産市場の急速な国際 商業施設 首都圏 ホテル 首都圏 倉庫 関東湾岸地域 キャップレートモデル 化が進み、投資家が一段と透明性を 求める声も強くなる状況も重なり、不 不動産評価方法のなかで、現在広 動産情報のディスクロジャーが急速 く用いられている直接還元法を用い に進んだ。 て評価を行う。 この様な状況でクレジット・プライ 評価額=NCF ★1/キャップレート シング・コーポレーションおよび日本 比準作業は以下のプロセスにて行 う。 ①用途別地域別にその地域のキャッ 不動産投資顧問が構築した不動産 この時の還元利回りであるキャッ プレートデータの標準と言えるような および関連商品のデータに基づいた プレートの動きを捉えることがモデル 特性を持ったビル (標準ビルと呼ぶ) を 科学的・体系的な不動産価格評価モ の中心的な役割となる。 仮想的に設定する。 デルをここでは紹介する。 キャッシュフローの変動を考慮して ②リートが不動産を取得するたびに、 いないが、米国からの報告 ★2 では、 その取引を材料にして標準ビルのキ であった不動産評価の客観的根拠 キャッシュフローを変化させるより還 ャップレートを算出する。即ち、その を提供することができるようになる。 元利回りを変化させる方が評価額の リートの取引時点でこの標準ビルが これにより、鑑定をはじめとする評価 変化を捉えやすく、精度も格段に高 同時に取引されたと仮定し、リートの の場では、一定の基準ができること いことが示されている。またモデル 不動産取得キャップレートに、特性 により評価者や評価主体の違いによ が比較的簡素化されるため、キャッ (築年、延床面積、権利関係等)の違い る評価の振れが縮まり、ファイナンス シュフローを変化させる場合に起こ に応じて一定率を乗じ(比準)、標準 の場では所有者と投資家やレンダー るパラメータの不確実性の問題を排 ビルのキャップレート(比準後キャッ との共通の基準ができることにより距 除できるという特徴がある。このよう プレート)を求める。不動産鑑定で 離感の近い対話が可能になると期待 なことを考慮しキャップレートを変動 土地の価格を求める際に、取引事 される。 させるモデルを採用している。 例から標準画地価格を求めるプロ このモデルを用いると、従来困難 また、価格の将来変動を科学的に 30 PROPERTY MANAGEMENT 2009 Feb. セスがあるが、それのキャップレー トへの援用である。 [図1]不動産業DIと市街地価格指数の関係 この比準作業は、築年や延床等の 30 ラグが存在 1月 7月 年 08 7月 08 年 1月 年 年 07 07 1月 7月 年 06 7月 年 06 1月 年 05 7月 05 年 1月 年 04 7月 7月 年 年 00 より有利な取引をしてきているかな 年 -20 04 法人の投資行動を比較し、どちらが 1月 -15 年 るため、例えば A 投資法人とB 投資 03 -10 7月 る。さらに、縦・横比較が同時にでき 年 -5 03 2007年までの動き)が初めて可能にな 1月 0 年 物 件 のキャップレートの 2 0 0 0 年 から 年 10 02 時系列的な縦比較(例:千代田区標準 02 5 1月 ちらが好条件で購入されたか)、および 7月 15 年 レートの横比較( AビルとBビルではど 不動産業DI 市街地価格指数(前年比) 01 20 年 することになる。これによりキャップ 01 25 1月 される取引キャップレートを標準化 00 ばらばらな不動産取引によって観測 ど投資家別投資行動の巧拙といっ た、従来では定量的に見分けること ができない分析も可能となった。 [図2]不動産業DI予想値 現在のデータはリート取引に限定 されているが、今後プライベートファ ンド等の非公開の取引まで範囲を広 30 20 青い実線部分は 中心線の推定値 げ信頼性の向上と適用範囲の拡大 10 を目指す。 0 キャップレートモデル 青い破線部分は 将来の予想値 -10 キャップレートの変動を記述する にあたり大きな問題が3つある。 ①キャップレートのデータの歴史が浅い -20 -30 赤い点は予想後に 観測された実測値 不動産業DI観測値 不動産業DI推定値 (およそ8年間) 年 00 1月 年 01 7月 年 01 1月 年 02 7月 年 02 1月 年 03 7月 年 03 1月 年 04 7月 年 04 1月 年 05 7月 年 05 1月 年 06 7月 年 06 1月 年 07 7月 年 07 1月 年 08 7月 年 08 1月 年 09 7月 年 1 09 月 年 10 7月 年 10 1月 年 7月 ③データが離散的(データが毎月あるわ 予想値 -40 00 ②系列相関が高く非定常データ★4である けではない) で、かつ振れ幅が大きい ①の問題に対しては、マクロ変数 ※ 予想値 (点線) とその後の公表値 (赤点) が一致している様子が分かる をモデルに導入する(次項参照)こと により、長期間でのモデルの整合性 のなかの全企業不動産 気動向指数) これは、遅行の度合いを相関にて検 を図った。②は非定常モデルである 業 DI(以下、不動産業 DI )が最も説明 証した結果であり不動産市況の遅行 状態空間モデルを用いることにより 力が高く、定性的にも説得力があっ [図1]。 性を表現するものである 非定常な成分(トレンド成分等)を表現 たため、これを説明変数とした。同時 (2)不動産業DIおよびIIPの将来変動 可能とした。同時に③のデータの離 に一般的な景気指標の代表である、 を、直近値までのデータを用いて周期 散問題も解決している。 経済産業省発表の鉱工業生産指数 性を見出し、将来に外挿することによ (以下、IIP) も説明変数に加えた。 ◎キャップレート推定方法 (1 ) まず不動産価格とマクロデータの 関係を導き出す。不動産価格は日本 不動産研究所発表の六大都市市街 Capオフィス 千代田区= a(不動産業DI)+b(IIP)+c+ε Cap:キャップレート、 a、b、c:定数、 ε:誤差項 り予測した。図2では、2007年末時点 での予想値を破線にて表現している。 赤い点は予想を行った後に発表され た不動産業DI値であるが、予想値の 精度が高い様子が分かる。 ( 3 )次に、マクロデータにより、千代 地価格指数を用い、様々なマクロ変 数との相関を計った。その結果、日 ただし、不動産業 DI および IIP に 銀短期観測調査業況判断DI (DI=景 は、 およそ1年程度のラグが存在する。 田区オフィスのキャップレートの変動 を、将来動向を含め推定する。 31 [図3]千代田区標準ビルキャップレート (4 )最後に、オフィスのその他の地域、 住宅、商業施設、ホテル、倉庫のキャッ 千[%] 代 7 田 区 標 準 6 キ ャ ッ プ 5 レ ー ト 4 プレートを千代田区オフィスキャッ 予想値 プレートにより推定する。 Capオフィス その他= d Capオフィス 千代田区+e+ε Cap:キャップレート、 d、e:定数、 ε:誤差項 3 ◎キャップレート特性 2 (1)前出の不動産業DIおよび同様に 1 して行ったIIPの将来予想を前頁の数 式に代入するとキャップレートの将来 年 1 00 月 年 7 01 月 年 1月 01 年 7 02 月 年 1 02 月 年 7 03 月 年 1 03 月 年 7 04 月 年 1 04 月 年 7 05 月 年 1月 05 年 7 06 月 年 1 06 月 年 7 07 月 年 1 07 月 年 7 08 月 年 1 08 月 年 7 09 月 年 1 09 月 年 7 10 月 年 1 10 月 年 7 11 月 年 1月 11 年 7月 0 00 予想値が求まる。図 3 は千代田区標 準ビル★5のキャップレート実績値およ ※ 点線は予想値。2010年秋頃まで上昇を続ける び予想値である。これによると千代田 [図4]不動産業DIと周期 区標準ビルキャップレートの変動幅は 3.8%∼5.5%となり、次にピークをつ 周期[年] 7 不動産業DI 80.00 けるのは2010年秋頃と予想される。 価格では2007 年末のピークから 60.00 6 2010 年秋のボトムまでに千代田区 5 標準ビルは約30%下落すると予想さ 4 れる。 40.00 (2)状態空間モデルを適用すると、周 20.00 3 期特性を計測することができる。図 4 0.00 不動産業DI推定値 周期(右軸) -20.00 に表されるように、不動産業DIは変動 1 の激しかったバブル期を除きおよそ6、 0 年 6月 況感の周期性が表現されている。 08 年 6月 7 年の周期があり、不動産業界の景 20 年 6月 04 06 20 20 年 6月 年 6月 02 20 年 6月 00 20 年 6月 98 19 年 6月 96 19 年 6月 94 19 年 6月 92 90 19 19 6月 年 6月 88 19 6月 年 86 19 6月 年 84 19 年 6月 19 82 6月 年 80 19 6月 年 78 19 76 19 年 6月 -40.00 19 74 年 2 ◎個別物件への適用 ※ 周期が6∼7年で推移している様子が分かる 融資した担保不動産等の個別物件 の評価を行うには、個別物件のキャッ プレートを推定する必要がある。例 えば、築年や延床面積をはじめとし [表1]築年および延床面積による加減値の例 範囲 築年 32 た物件の基礎的な条件から、街路条 キャップレート加減値 1年未満 -0.48% 1年∼3年 範囲 件、テナント属性、画地条件といった 4,000㎡未満 0.37% 細かな属性条件までのそれぞれの -0.33% 4,000㎡∼8,000㎡ 0.24% 条件がどの程度キャップレートに影 3年∼10年 0.00% 8,000㎡∼12,000㎡ 0.01% 響を及ぼすのかを考慮し、修正を加 10年∼30年 0.21% 12,000㎡∼30,000㎡ 0.00% える必要がある。その条件による修 30年超 0.29% 30,000㎡超 PROPERTY MANAGEMENT 2009 Feb. 延床面積 キャップレート加減値 -0.32% 正の例を表1に示す。 特 集 | 不 動 産 フ ァ ン ダ メ ン タ ル ズ の 明 と 暗 ―― この加減値はキャップレートデータ レートモデルを用いて大局的な動き ローンのウォーターフォール構造に ベースを用い、個別のキャップレート (上昇・下降局面など)が分かれば、担 従ってキャッシュフローを割り当て からその傾向を統計的に求めたもの 保掛目の効率的・機動的な運用が可 る (毀損は劣後トランシェより起こり、償 である。ここでは、築年と延床面積 能になる。 還は優先トランシェから割り当てられ について記しているが、その他のパラ 例えば、千代田区物件にて担保を る)ことによりトランシェ別毀損確率 メータについても同様の加減値の設 設定する際、キャップレートモデルによ が求まる。同時に次項に示すように 定が可能であり、実務面ではデータ ると今後30%の物件価格下落余地が 同一毀損確率を持つ証券の信用ス の可用性に基づいて最適なパラメー あった場合、担保掛目を少なくとも70% プレッドの市場値を参照することに タ数を決める必要がある。 以下に設定し、不動産価格のボトム より、適正なローンスプレッドを求め 時のカバー率が 100% を割り込む確 ることができ、そのスプレッドを用い 率を小さくなるように調整することが た割引率を用いることにより、ロー できる。従来は好景気時に金融機関 ンの時価評価が可能となる。 適用事例 適用事例1|時価評価 キャップレートモデルの適用事例の ひとつとして、まず個別物件の時価評 がこぞって担保掛目を上げるなど、本 特にメザニントランシェは、トラン 来あるべき方向とは逆になる傾向さ シェ間の整合性を保つのが難しく、 え存在したため、このキャップレート トランシェ構造を正確に評価可能な モデルによる担保設定コントロールは モデルを用いることにより初めて評価 非常に重要性が高いと思われる。 が可能になる。 ◎ノンリコースローン評価 ◎信用スプレッドの導出 価を挙げる。物件投資、貸付担保設 定 (リコース、ノンリコース) 、並びにそれ らの会計処理など、多面的に不動産 ノンリコースローンにおいて不動産 信用スプレッドの市場値を求める 物件評価が必要になってくる。特に、 の評価とともに同様に重要となってく ために、投資法人債のスプレッドを参 2009年度末から導入が予定されてい るのが、担保の順位(優先劣後構造) 照している。投資法人債を発行して る賃貸等不動産の時価開示は、賃貸 である。トランシェ構造を持った融 いるリートのポートフォリオをキャップ 物件を多数抱える企業にとっては大 資 (メザニン融資、シニア融資) の場合、 レートモデルにて評価し毀損確率を きな負担となるが、われわれは体系 どの程度の上乗せスプレッドを設定 導き出す。一方で、市場で観測され 的なソリューションとしてキャップレー するのかを理論的に導くには体系的 る当該投資法人債のスプレッドを参 トモデルの利用を推奨している。 なモデルが必要である。ここでは、 ト 照し、毀損確率とスプレッドの関係を ランシェ構造を含んだ債権の評価方 導き出している。この方法のほか、金 法を簡単に紹介する。 融機関など自社にて毀損確率とスプ 適用事例2|ローンへの適用 ◎リコースローンでの担保価値推定 通常不動産担保ローンを実行する レッドの関係を導き出せるデータを保 ◎ローン評価方法・トランシェ構造の考慮 有している場合は、それを用いて信 用スプレッドのモデルを構築すること 際、担保掛目(物件評価額のうち担保 将来キャップレートの期待値は周 として認める比率)を70% などと設定 期的に変動するが、この変動と観測 するが、本来は不動産評価額は時間 誤差をモデル化しキャップレートの とともに大きく変わるため、担保掛 分布形状を求める。同時に物件の 目は機動的に変更する必要がある。 キャップレート間に相関構造を設定 2007 年までに大量に発行された 即ち、不動産価格が高騰し下落余地 する。こうして得られたキャップレー CMBSであるが、依然としてセカンダリ が大きくなっている時には担保掛目 トを 「NCF /キャップレート」 を通し ーマーケットでは買い手が見つけ難い を下げ、逆の場合は担保掛目を上げ て価格に変換することにより価格の 状況である。しかし、保有証券の評 る操作が必要になってくる。将来見 将来分布を得る。そしてローン残高 価は会計上開示する必要があり、多 通しが存在しない状況ではこの機 に対する不動産価格の分布状況に くの CMBS 投資家はその評価にアレ 動的な見直しが難しいが、キャップ 従って毀損確率を求める。この時、 ンジャー(多くは証券会社)の評価値を が望ましい。 適用事例3|CMBSへの適用 33 ― ―特 集 | 不 動 産 フ ァ ン ダ メ ン タ ル ズ の 明 と 暗 用いている。ここでは、多くのアレンジ のノンリコースローンを資産として保 まっており、有効性も高いことが示 ャーが採用していると思われる評価方 有し、そのパススルー証券としてトラ されている。今後はデータの蓄積と 法の問題点とキャップレートを用いた ンシェ別の債券が発行される。各ノ ともに、同様のアプローチの広がり 評価方法を解説し、モデルによる正確 ンリコースローンがそれぞれ満期時 や、多くのユーザーへの浸透を期待 な評価の重要性を述べる。 点までにどの程度の価格になるかを したい。 キャップレートモデルにて表現し、そ ★1― NCF:NOI(Net Operating Income)から資 ◎一般的な簡便評価法 この方法はCMBSから発生するクー れに伴ってノンリコースローンの評価 本的支出を控除したもの。NOIは、原則として実績 収支を加工せずに採用している 額が変化、最終的にCMBSの評価額 ★2―David Geltner and Jianping Mei(1995) ポンキャッシュフローを同格付けの新 が変化するという構造をとる。この時 ”The Present Value Model with Time-Varying 発債スプレッドを用いて割引く方法 ウォーターフォール構造を考慮するこ and Investment Decisions”Journal of Real Estate であり、現場では多くのアレンジャー とによりCMBS のトランシェ構造を正 Finance and Economics, 11:119-135 が用いている評価方法ではあるが、 確に評価することが可能である。 Discount Rates: Commercial Property Valuation これは重大な問題を含んでいる。 ①格付けの硬直性 ★3―キャップレートデータベースの作成および 比準作業は日本不動産投資顧問株式会社により行 われ、その著作権は同社に属する ★4―ランダムウォークのような定常的なプロセ ◎評価例 スではないデータ系列。モデル化にはウィナープロ CMBSは発行時に予備格付けをと リーマン・ブラザースがアレンジ ることが多いが、一旦格付けがつく したCMBSの評価を行ってみた (情報 する必要がある。非定常モデルの詳細な説明は、紙 と上場証券ではないため見直しが頻 ソースは格付機関のディスクロージャー 面の都合上ここでは割愛する 繁にあるわけではない。従って、発 資料。クーポン水準は想定ベース) 。 行時についた格付けを長い期間使 対象証券 LJAC4 ②スプレッドの硬直性 クラス B、F 想定クーポン Libor+0.42%(B)、 Libor+2.3%(F) 想定償還日 2013/5(B)、 2012/8(F) 測する時には他の証券で通常行わ 評価日 2008年9月末 れているように既発債市場から観測 評価値 (額面100) 86.8 (B) 、57.2 (F) ケットは取引が極端に少なくなってい ★ 5 ― 千代田区日比谷にある A クラスビルを想 定。築年5年、延床面積1万㎡、駅距離300m。地下2 階・地上15階 い続けることになる可能性が高い。 現在CMBS市場のセカンダリーマー セスでは表現できないため、非定常モデルを使用 る。そのため、市場スプレッドを計 することができず、代替として新発債 市場から観測している。しかし、現 簡便評価法にて求めている評価 在この新発債の発行も極端に少なく 額に対して大きく下げる結果となって なっているため、スプレッドは最新値 いる。これは、CMBS の評価額が単 とはいえかなり前の情報を使わざる に下がるというだけでなく、大きなデ を得なくなっている。これがスプレッ フォルトリスクを内包しており、リスク ドを硬直的にする要因となっている。 管理の重要性が増しているというこ 以上のような要因により、簡便評価 とを示唆している。 法で求めたCMBSは非常に価格の硬 直性が強く、特に現在の様な値動き が高い時は時価評価値を得ることは ほぼ不可能と言わざるを得ない。 *** ここまでキャップレートモデルの構 築方法から実際の適用例まで述べ てきたが、このデータをベースとした ◎キャップレートモデルによるCMBS評価 アプローチは、今まで定量的分析が キャップレートモデルを用いたCMBS 難しかった不動産および関連商品評 評価方法を解説する。CMBSは複数 価の分野で既に実務上の利用も始 34 PROPERTY MANAGEMENT 2009 Feb. 神崎清志 KANZAKI Kiyoshi 1991年東京大学工学部卒。1993年東 京大学工学系研究科修了。1993 年日 本長期信用銀行にてデリバティブ商品 開発に従事、前職は独立系ヘッジファ ンドCIO。2008年より現職。 kiyoshi_kanzaki@credit-pricing.com 株式会社クレジット・プライシング・ コーポレーション 2001年設立の金融系コンサルティング ファーム。クレジット分析をベースに、 様々な債権や証券化商品の評価を行っ ている [www.credit-pricing.com] 日本不動産投資顧問株式会社 本件データベース構築およびモデル開 発 に お け る パ ート ナ ー 。設 立 以 来 5,000件以上の評価・鑑定を行った実績 がある。一般不動産投資顧問業、不動 産鑑定業者、宅地建物取引業者 [http://www.jreic.co.jp]
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