ハラビロササヒメグモとフタホシヒメグモ

KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
ハラビロササヒメグモとフタホシヒメグモ
(香川県の合宿に参加して)
貞 元
己 良
はじめに
最近の私の談話会合宿参加率は,50 パーセントである.談話会の合宿が遠方に行
った翌年は近場で,というパターンの中で近年は遠方の年ばかり参加しているよう
だ.今年度(2008 年)の合宿は四国,香川県高松市にある塩江温泉郷で 7 月 18
日から 7 月 20 日までの二泊三日の日程で行われた.今回,大阪のスーパー少年の
異名を持つ池田勇介君にも 2 年ぶりに再会し,彼のクモ研究者としての成長ぶりに
も驚かされた.談話会恒例の合宿も谷川・新海の双璧が高齢にもかかわらず奮闘し,
一年も前から未踏の地に踏込み我々会員が気持ち良く宿泊できる場所を探し,満足
できる採集地を精査してきた努力は誠に頭がさがる.いつもながら,この場を借り
てお礼を申し上げたい.例の如く,これは合宿報告ではない.私が勝手に想い感じ
たことをダラダラと書いた旅日記と思って頂ければありがたい.
7 月 18 日
朝 5 時起床,6 時に家を出る.今日は 2 ヶ月に一回の通院検査の日であった.午
前 8 時少し前に病院到着,整理券を受け取り午前 8 時 30 分の診察開始を待つ.約
2 時間の間,血液検査と尿検査を実施して結果を見て担当医の診察を受けるのだが,
今回は日頃から頑張ってきた甲斐あって数値が良く,医師から褒めの言葉を頂き意
気揚々と病院を後にした.通常ならば処方箋を持って病院近くの薬局へ行き薬を出
して貰うのだが,薬の袋がかさばるため今回はパス.病院から最寄りの駅までバス
が通っているが健康のため約 20 分歩き,駅のコインロッカーに預けていた旅行バ
ックを引き出して一路羽田空港へ向け出発した.
関東は梅雨が未だ明けていなかったが,天気は上々で晴れやかな気持ちで飛行機
を待つ.搭乗口のロビーでは,合宿参加の加藤輝代子氏,佐藤幸子氏,新村誠氏,
八幡明彦氏と一緒だった.飛行機の座席は約 2 ヶ月前にパソコン教室に通う妻がイ
ンターネットを駆使して,往復のチケットを確保してくれていたので夫は楽であっ
た.ロビーで出会った 4 人とは,乗る飛行機は同じであるが席はバラバラであり,
私は前から 3 列目の窓側の特別席だったが最後の客が乗り込んできた時,客室乗務
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員の対応が他の客と明らかに違うことに気付いた.その乗り込んできた客は,民主
党の痩せた色黒の幹事長であった.仕事柄,芸能人など見慣れてはいるが私的に出
会うと,やはり一般人と同じ感覚で見るとはなく盗み見てしまう情けなさがあった.
しかし幹事長は,高松空港に着くまでズーと眠っているようであった.
飛行機の搭乗時間は意外に短く,出発から到着まで約 55 分であった.外は一面
の雲海で所々太い柱のような積乱雲が立ち上っている場所もあり,その下はきっと
凄い雨なのだろうと推測できた.しかし,四国上空に近づくにつれ雲は切れ始め,
陸が眼下に臨める所に差し掛かると道路に車が走っているのも見え,乾いた空気の
中を飛行機が滑るように進んでいるという感じであった.上空から見ると香川は平
地が無く,海から直ぐ山になる地形と感じた.その山々の奥に通じる道を目で辿り,
塩江温泉は「こんな所だろうか.」と思いを馳せて期待に胸を膨らませた.飛行機
は定刻通り,高松空港に降り立った.「暑い!」これが第一声と共に感じた香川の印
象である.空港のロビーでレンタカーを借りる者に指定されていた加藤輝代子氏と
私は,それぞれ自分で決めた業者の元を尋ね,女性陣と男性陣の 2:3 に分かれ散
会した.
通常ならば 1,800cc 以上,最低でも 1,500cc クラスの車を借りるところだが,
昨今のガソリン代の高騰で,当初,軽自動車も視野に入れ考えていた.しかし,イ
ンターネットの車情報を検索し,装備の面でカーナビ設置は 1,000cc クラス以上と
判ったので,少ない車種の中からトヨタのビッツに決め今回の旅の足とした.空港
に迎えに来た業者と約 1 キロ離れた営業所に行き,私がレンタカー借用の手続きを
している間,業者建物の周りを見ていた八幡明彦氏は「こんなのがいた.」と見せ
てくれたクモは驚きのクロガケジグモだった.いきなり四国・香川新記録達成であ
った.不慣れなカーナビを使いこなせぬまま,何とか塩江温泉に行く場所をセット
し我々は目的地に向け出発した.
車中で私は,「実は….」と切り出した.今年 6 月,千葉県野田市の清水公園で
土壌動物が専門で千葉県立中央博物館学芸員の萩野康則氏が,同公園の植物園内で
クロガケジグモを採集したという話を披露した.最初,♂の成体を採集し私に同定
依頼をしたのだが,私自身がクロガケジグモの♀しか採集したことがなく,その標本
も梅林氏の研究のため提供していたことから手許になかった.しかし,比較検討で
きないものの絵図が残っていたので♀の標本が欲しいと返事をしたところ,萩野氏は
超でかい見事な♀の成体を採取し標本にして送って来た.萩野氏の話では,温室植物
園の内側にだけ見られ外周には全く見られない….そうで,話からすれば人為分布
の可能性しか考えられないが,静岡県から神奈川・東京を飛び越えて千葉県新記録
となるのであった.
今回の合宿の宿泊場所である「新樺川観光ホテル」は,温泉街とはいうものの周
囲に温泉宿が無く,山の中の河川敷に忽然と現れた豪勢なホテルという感じであっ
た.ホテルは新館と本館に分かれ,本館は個室が多く四国八十八ヶ所巡りの旅をす
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る方々の宿に利用され,新館は家族連れや団体客を泊めるため広々とした部屋が多
かった.ホテル自体も改装,改築したばかりらしく庭師の手入れも行き届き大変綺
麗なホテルであった.ただ従業員の話では,山の中に建っているので毎日がクモと
の戦いで網を取り除くのが大変です.とのことだった.
私は指定された部屋に荷物を置き,さっそく風呂へ行くという新村氏や八幡氏を
尻目にアルコールの入った採集ビン 1 本と数本のカン瓶をポケットに忍ばせて,半
袖・スラックスという軽装でホテルの周囲を見て回ることにした.ホテルを出てホ
テルの周囲の石壁の隙間を覗いていると,ホテルの庭師のおじいさんが近づいて来
て「珍しいクモは,おりますか.ホテルの裏の山に樺川神社があります.そっちの
方に行くと,珍しいクモが採れますよ.」と,私の何処を見てクモ研究者と判断し
たのか解らぬが親切に教えてくれた.更に,おじいさんは「鳥居の下に太いアオダ
イショウが居ますから,気をつけてね.」と付け加えた.子供の頃は,私も蛇に多
少の興味があり腕に巻きつけたりもしたが,年齢を重ねるごとに苦手な生き物とな
り最近は山に入っても避けるようになってきていたので,おじいさんの一言は余計
であった.駐車場の端から裏山に上がる急な階段を登り,鳥居を過ぎて振り返ると
ホテルの全景が見渡せた.陽もまだまだ高く,夕食までは時間に余裕があったので
軽いハイキングのつもりで,山の頂上にあるという樺川神社を目指して歩いて行っ
た.クモは幼体が多く,ジョロウグモなど生まれたばかりという感じで全体的に成
長が遅れている印象であった.私は拾った木の棒で林道脇の草むらを掻き分け,蛇
に脅しをかけてから慎重に足場を固め,生えている植物の根元から葉裏にかけ下か
ら上へ眼を這わせ,隠れているクモを探し見つけ出すハンド・ソーティングテクを
駆使し,ツノナガイソウロウグモ・ヤマジグモ・ハツリグモ・オダカグモ等を採集
した.剥き出しになった崖地の木の根元ではヒザブトヒメグモの砂粒による釣鐘状
の巣が見られ,関東の山では見られない珍しいクモを思う存分観察した.そんな時,
山道から山の斜面に生える笹薮に顔を突っ込んでいると視線前方,約 20 センチの
ところでヒキガエルの様な眼を持つ生き物の横顔があった.私はドキッ,として体
を起し更に伸び上がって持っていた棒で笹を掻き分けたところ,独特の銭型模様を
持つ体長約 1 メートルの超でかいマムシであった.私は緊張のあまり硬直していた
が,マムシの方は悠然と私の視線から遠ざかって笹薮の奥へ消えて行った.これ以
降,茂みには入れず空間ばかりに視線を向け,トビジロイソウロウグモ・シロカネ
イソウロウグモ・オオシロカネグモ・コシロカネグモ・ゴミグモ等を採集した.頂
上までは登りだけで約 2 時間を要したが,頂上付近に生えていた松の大木の表面で
オオクマアメイロハエトリが徘徊しているのを採集.本日一番の収穫であった.頂
上の樺川神社は名ばかりで,整地した 10 畳ほどの平地にブロックを積み重ねて土
台を作り,その上に神棚のような神殿を乗せただけの代物で,仮設? 造っている最
中? と感じさせる神社だった.しかし見通しは良く周囲の山々が見下ろせる眺めだ
った.陽は既に落ち夕焼け空になっていたので,帰りは急な坂道を足早に駆け下り,
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約 15 分でホテルに着いた.
ホテルへ戻り,風呂へは時間的に無理があったので入らず短パン半袖姿に着替え,
夕食に当てられた宴会場に入り空席の目立つ席から適当に座った.進行役の谷川氏
と新海氏が舞台前で「まだ,来てない方が何名か居ります.逐次連絡を取っており
ますが,もう少しお待ち下さい.」と述べられていた.暫らくすると,何人かが今
着いたばかりの格好や浴衣姿などで続々と宴会場に現れたので新海氏が人数を確認
し,「あとは,池田さん待ちです.」と谷川氏に話しかけていた.これを既に座っ
ていた参加者達が聞き留め,「えっ池田さんが参加する…!? 彼は仕事辞めたら
しいョ…! 珍しい人に逢える感激―!」などという声があっち,こっちで飛び交
っていた.谷川氏は「部屋に居るはずですが…携帯で連絡を取ってみましょう.誰
か池田君の番号を知っていますか.」という発言.「えっ,池田君って言ったよ….
池田君は大阪のスーパー少年だよネ….池田君が 1 人で参加するか?!」などという
憶測だけ専行する声があっち,こっちで飛び交っていた.宴会場での夕食時間が 20
分を過ぎたころ本日最後の参加者,池田氏が慌てた様子で襖を開け宴会場に頭を下
げ下げ恐縮しながら入ってきた.彼らは池田さんが 1 人,池田君が 2 人,つまり大
阪のスーパー少年の異名を持つ池田君と保護者のお父さんと彼の弟君の 3 人であっ
た.3 人は並んで座る席が既に無く,バラバラに座ったようであった.
夜間観察
夜間観察はホテルの玄関口に午後 8 時集合であった.夜間観察の場所はホテルか
ら車で 10 分ほど山の中に入った,「香川県木田郡三木町堂ヶ平」という地名の水
田と林縁が交差する場所だった.観察会が始まって暫らくして,水田沿いの畦道を
歩いていると谷川氏が近づいて来て,「貞元さん,トリフンが欲しいので探して下
さい.」と求めてきた.こういう環境でのトリノフンダマシ類は,林縁の斜面には
オオトリノフンダマシやトリノフンダマシが多く見られるが,アカイロトリノフン
ダマシやシロオビトリノフンダマシは段差のある水田の畦の斜面や休耕田の中に多
く造網しているので,遠くまで届くライトを使って勘の働く場所を探した.結果的
には勘が的中し満足できる数と種類を確保してきたが,戻り始めた私に新海氏が近
づいて来て,「貞元さん,これ何でしょう? 最近,小さいものが良く見えないので
す.」と困った顔でガラス瓶を渡す.手に取った私はライトを当てて瓶の中を覗き
込み,ニコニコ笑う新海氏の顔を見返し(うまいなー,この人.騒いで欲しいなら,
そう言えばいいのに!)と思いつつ,大声で「ムツトゲが出ましたー.新海さんが
採りましたー.」と騒いで差し上げた.夜間観察会も最後にムツトゲイセキグモが
採れ後味のいい形で終了したが,このとき本当はもっと凄いクモが採れていたとは
クモ学者,谷川明男氏でも知る由も無かった.
約 2 時間の夜間観察が終了しホテルへ戻り,宴会場の一室を借りて「クモあわせ」
と恒例の二次会が始まった.私は直ぐに参加せず,風呂道具を持って温泉と称する
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風呂場へ出掛けた.入浴終了後,一応採集した標本ビンだけ持って宴会場に赴き,
ちょうど「クモあわせ」の最中であったので静かに聞き入っていた.「クモあわせ」
は谷川氏が記録の集計をしていたが,「他に居ませんか・・?」と言ったところで
池田君が堰を切ったようにクモの種名を羅列し始めた.彼が何気なく「ハラビロサ
サヒメグモー.」と言った時,ほぼ全員が「えっ!」という表情で一瞬凍りついた.
ハラビロとくれば,ハラビロアシナガ,ハラビロスズミ,ハラビロセンショウ,ハ
ラビロミドリオニしか知られておらず,ヒメグモにハラビロの付く種名は無くスー
パー少年の異名を持つ池田君でも間違うことがあると誰もが思い始めたころ,谷川
氏がやさしく,「種名が違うよ.もう一度何ヒメグモか,ハラビロ何グモか,な…?」
と水を向けたが,池田君は落ち着いた表情で,「ハラビロササヒメグモです.」と
言い放った.谷川氏も負けてはおらず,「そのクモの文献は何処にあるの.」と聞
き返すと,池田君は,「昨年の小野先生の新種論文に載っています.」と述べ,更
に「今日はビノキュラーを持って来ているので,後でお見せします.」と自信有り
げであった.その後,彼が用意した顕微鏡でハラビロ何とかグモのエピジナムを見,
彼が常に持っていると言う新種論文綴りから小野先生が書いた新種グモの絵図を見,
改めて「ハラビロササヒメグモ」であることを確認し,驚愕した.このクモは体長
が 1.5 ㎜弱しかなく色黒で,肉眼で捕らえることは非常に困難であり,採集しても
種名を判定することは不可能である.
しかし池田少年は,これを同定していたのである.ましてや,自称クモ学者・専
門家を自認する東京クモ談話会の面々を前にして,彼らの勉強不足を露見する様な
自信に満ちた発言と,それを補強するだけの豊富な知識,人並み外れた同定力は,
50 年か 100 年に一度現れるか否かの逸材であり本物のクモ学者に見えた.私は自
分の愚かさを反省すると共に,それを気付かせてくれた池田君に改めて敬意を表し
たいと感じた.正にスーパー少年である.
彼が小学校 6 年生の時に初めて会ったころは,人見知りしない人懐こい性格で誰
とでも仲良くなれるタイプであったが,2 年経ち思春期を迎え,「多少気難しい面
も,出てきました.」と説明する父上の言う通り,口数が少なくなっていたのは残
念であるものの,クモ学に対する情熱は人一倍凄いものを感じさせてくれた.
二次会の宴会は午前 1 時ごろまで続き,部屋に帰って寝たのは午前 1 時半を回っ
ていた.
7 月 19 日
朝 5 時起床.
外は朝靄が立ちこめるも青空が見え上々の天気と見た.早速着替え,
足音を忍ばせて靴を履きホテルの外へ出る.対岸への橋を渡り国道を山側へ 500 メ
ートルほど歩くと崖地が消え民家が並ぶ,更に先へ進むと小さな渓流沿いに山へ上
がる小道を発見.入ってみると 50 メートルほどでお墓が並ぶ広々した斜面に出,
山側に目を向けると更に奥へ続く道があり,これを登って行く.途中で先ほどの渓
5
流と一緒になり最後は,浅くて狭い渓流の出発点の様な水溜りに到着し道もここで
終了.この渓流の出発点の水は鉱物が染み出した源泉のような色で茶色に濁り,汚
れた手を洗ったついでに喉を潤そうと思ったが生温く飲む気にはなれなかった.こ
の場所で約 2 時間かけて約 30 種のクモを採集した.特筆するクモとしてはジョロ
ウグモの枠糸に居たヒゲナガヤリグモ♂,地上すれすれの網に居たクロマルイソウ
ロウグモと卵のう,オニグモの円網の中に居たトビジロイソウロウグモ,お墓の盛
り土の脇に居たゴマジロオニグモなどが挙げられる.
観察会,
観察会,午前中
午前 9 時ころホテルを出発.途中で昼食の弁当をコンビニに立ち寄って全員が購
入.車で約 1 時間走行して行った場所は,「香川県高松市西植田」の通称「ドング
リ・ランド」であった.この日は日差しが強く,車を停めた道路脇の広場から山側
へ登ることを勧められるも何となく気が向かず,この場所へ来る途中に見た民家の
畑と,この森との境に流れる小川の林縁部が気になり 1 人その場所を求め,下って
みることにした.畑の周辺でクモを採集していると,農家のおばさんが近寄ってき
て「何をしているの.クモですか.チョウチョやトンボを採りに来た人は何人も見
ましたが,クモは初めてです.何処から来なすった.えっ,東京からわざわざみえ
た.それは驚き.」などと雑談をしながら,さり気なく畑に入っても良いか,農家
の庭先の花畑に入っても良いかなど笑顔で了解を求めながら,おばさんとの会話を
楽しんだ.しかし,丁度昼食時前であった為おばさんも食事の支度をしなければな
らないようで,私には構っていられず「庭や畑には自由に入っても良いけど,マム
シに気をつけてね.今朝も一匹畑で見たし,特にドングリ・ランドはマムシが多く
て有名で藪に入らないよう他の人にも注意しなさい.」と親切に教えてくれた.私
がなぜ畑にこだわるかというと,クモを採集する上でのポイントとして農民自身が
食べる作物を栽培している畑では農薬の散布が少ない,よってクモの餌となる昆虫
も多く,クモも集まり易いと踏んで畑を探す.一番良い条件は,山にちょっと入っ
た場所で猫の額ほどの土地を開墾し,自分達が食べるだけの野菜を作っているよう
な畑があれば,最高のクモ採集場所になりうるのである.過去の例でも私が初めて
ムツトゲイセキグモを採集した場所は,山の中の畑の脇であったし,ツシマトリノ
フンダマシを採集した時も山の中の畑の端の空間であった.自分のイメージの中で,
山の中の畑と山に近い畑はキー・ポイントになっている.しかし,昨夜の新海氏が
採集したムツトゲイセキグモ以上のクモには恵まれなかった.
昼食時間が迫ってきたので,足早にこの地を離れドングリ・ランド中央部に建つ
休憩所のような建物へ入る.この建物はドングリ・ランドという施設の管理・運営
も兼ねているようで,ちょっと見,自然オタクの様な職員が常駐し,加藤氏の勤め
る学校に繋がりがある方や合宿参加会員の旧友が勤めていたりして話しに花が咲き,
この施設を昼食兼休憩場所として利用させて頂いた.食事,休憩が終了し,午後の
6
採集場所へ移動する為ほぼ全員が車の駐車場所に向かって三々五々歩いていると,
先のほうで何やら大騒ぎしている声が聞こえる.声のするほうへ近づくと,八幡明
彦氏が「マメイタイセキグモ」を採っていた.どんな所に居たか聞いてみると,「藪
の先に小さな畑があって,そこに植えられていたサトイモの葉裏にぶら下がってい
た.」,とのことだった.やっぱり畑だった.マムシ・・・怖くない人が羨ましい.
観察会,
観察会,午後の
午後の 1
午後の採集観察地は宿泊ホテル近くまで戻り,道を右に折れ山一つ反対側の渓流
近くに車を停めた.地名を確認すると「香川県高松市安原下」で,渓流に架かる桜
橋から竹林の続く林道で行われた.私は渓流沿いで下草も多く,狭い道に採集人員
がひしめき合うと予想されたのでビーティングで採集することに決め,一人迷惑の
掛からない山奥へズンズン入って行った.桜橋から 30 分も歩くと竹林は消え渓流
は離れ,人家の跡地が道路脇に延々と続く開けた場所に出た.この場所で下草を中
心にビーティングをして,チビクロドヨウグモ,オウギグモ,キララシロカネグモ
等を採集した.また,ヒメグモ sp. の♂も採れハラビロササヒメグモの♂か,と期待
したものの違ったようで本来ならば吉田哉先生に送付するところ,昨夜の観察会の
場所で池田君の弟がヒメグモ sp. の♀を採っており,そのクモと何となく形が似て
いる感じの♂だったので池田君方へ後日送付した.(後日,池田君は標本を同種の♂
ではないと同定し,クモ学会大阪大会で吉田先生に渡し,ギボシヒメグモ黒型の♂
と正式に同定された.)午後の観察会は日差しも強かったことから 1 時間半程度で
終了し移動,午後 3 時ころホテル近くの道の駅「塩江温泉」でソフトクリーム・タ
イム.旅行日程 1 泊 2 日で帰る方々を見送り,午後 4 時近くホテルに戻ってきて本
日の観察会は解散となった.
観察会,
観察会,午後の
午後の 2
当然のことながら,これで納得する私ではない.一人でも行くつもりで車のエン
ジンは停めず解散の声を聞いていたが,池田君の父上に「貞元先生,一緒に行きま
しょう.」と誘われ,「疲れたので部屋に帰って休む.」という弟君を残し,父上
の車で再度出発した.場所は昨夜観察会をした三木町堂ヶ平で,弟君がヒメグモ sp.
♀を採取したので♂を採りたいと池田君は意気込んでいた.私は,是非「ハラビロサ
サヒメグモ」を採集したいと考えていたので池田君に採集場所を聴いたところ,「小
川の縁に生える植物の葉裏に居ます.」という回答だったが,昨夜の場所と今私達
が立っている場所は同じであるが,風景が全然違っていた.水田脇に生える植物と
道路脇に生える植物は,すべて見事に刈り取られていた.更に付近を見渡すと,草
刈は今日一日で一斉に行われたらしく農民にとって無駄な植物は綺麗さっぱり無く
なっていた.ビーティングで叩く所は少ないけれど,どんな環境でもそこにクモが
居る限り探すのが我々クモ研究者の務め,と考え時間の許す限り採集に奔走した.
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私は,小川の上流部を目指して山側へ歩いて行ったが,小川は直ぐに渓流になり更
にその上は小さな堰になっていた.その堰の周りをビーティングして回り,キハネ
グモ,ヤギヌマフクログモ,オオセンショウグモ,ヤマトカナエグモ等を採集し,
そして念願のハラビロササヒメグモ♀も採集した.実は現場では採集したことに全然
気付かず,自宅に帰ってから顕微鏡の下で気付いたという次第であった.そろそろ
集合時間と分かったので山を降りようと,ふと顔を上げると私よりも遥か前方に池
田君が居た.確か彼は下の水田に居たはずなのに,いつの間にか私を抜き更にクモ
の居る環境を求めて歩き回ってきたかと思うと,その行動力と瞬発力は私には無い
「若さと強さ」を感じた.
父上の車の所で,未だ見えない池田君を待っている間に,父上が下の畑と水田で
ビーティングにより採集したクモを見せて頂いた.ご存知の通り私達研究者の標本
ビンは,割りと太目の 50 cc から 100 cc 程度のスクリュー管ビンの半分ぐらいに
アルコールを入れておき,採集したクモをまとめて漬け込んでしまうのだが,私は
父上の採集した標本ビンを見て驚いた.素人が採集したクモの種類と数ではないこ
とは,一目瞭然であった.私は,池田君がスーパー少年と言われる陰で,両親の絶
大なる支援と父親の採集能力の高さがあってこそ,スーパー少年が出来上がってき
たことを悟った.間もなく現れた池田君に対し父上は,「勇介,お前に言われた地
点のクモは全部採ったぞ.」と言っているのを聞いて,私は父親が無欲の心で子供
に全精力を傾けている姿は,実に素晴らしい,と感じた.
夜間観察
前夜と同様,午後 8 時にホテル玄関前に集合した我々は,昼間の疲れもあってリ
タイヤ組に見送られながら観察の地である,「香川県木田郡三木町奥山」へ向かっ
た.けっこう山の中をグルグル走ったように見えたが,地図の上では前夜の堂ヶ平
とは直線距離にして 2 キロと離れていなかった.
しかし,
この場所は不思議な所で,
山間の村と村を結ぶ幅員約 2 メートルのアスファルト道路の両側が採集観察地であ
ったが,車を駐車した道路脇の広場の周囲はトリフン 4 種が高さにほぼ関係なく一
面に網を張り,その先の道路両側は鬱蒼とした雑木林で,オダカグモが異様に多産
していた.全体としてクモの種類は少ないと感じた.
この場所での思い出は,樹木の枝の間から白黒模様の小蛇が顔を出し,近くに居
た女性陣を驚かそうと「ヘビが居ますヨ.」と指差ししたら,「キャー,可愛いい!」
と言いながら写真は撮るは素手で触ろうとするは,こっちがドン引きだった.後ほ
ど,水先案内人の地元会員に女性会員の 1 人がデジカメで撮影したヘビの画像を見
せたところ,「非常に珍しいシロマダラです.」と驚いていた.
約 2 時間の採集観察会の成果は,殆んど変わらぬ自然環境であったため種類が増
えないものの雰囲気はとても良く,珍品グモの発見も期待されたが時間切れとなり,
あえなく終了.ホテルに帰って,前夜の如く「クモあわせ」と二次会への突入であ
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ったが,私はとりあえず風呂へ直行し一日分の汗と汚れを落とした後,宴会場に足
を運んだ.宴会場では既に酒が振舞われ,「クモあわせ」は後回しになっていた.
池田君の父上の隣に座り,オプション・ツアーで見た父上の採集技術の高さを褒め
ていたら父上は,「最近は,ビーティングをしていてもクモと他の虫との違いが,
“動き”で分かる様になりました.」と経験談を披露し更に,「実は,今日,勇介
を叱ったのです.コイツ,杉の木の皮をベラベラ剥ぎ取っていたので,木を植えた
方々に申し訳ないだろう,と言って激怒しました.」と父親らしい振る舞いを述べ
ていた.しかし,口には出さないが,「絶対!私も同じことをします.」と,内心
思いつつ笑顔で話を聞いていた.父上はクモの採集技術は高いが,研究者の目線で
はない,と感じた一幕であった.池田君も,この点は察しているらしく父親の言葉
に唯黙って頷いていたが,後ほど私に,「杉の皮の下からドウシグモのようなクモ
を採集しました.」と興奮気味に話していた事から,分かり合える者同志にしか分
からない微妙な心境という感じであった.
この日の宴会は午前 1 時半まで行い,部屋に帰って寝たのは午前 2 時を過ぎてい
た.
7 月 20 日
午前 5 時 30 分起床.ホテル周辺で未だ見てない環境と言えば,ホテルの周囲と
ホテルの前を流れる香東川の河川敷であった.早速着替え,深い眠りに入っている
同室の方々の頭の上を静かに忍び足で通り,靴を履いて外へ出た.
ホテルの敷地に入る橋の袂から下の河川敷に降りられるのを確認したが,敷地の
道路を囲む大きな石垣に目をやると何やら小さな生き物がワーと散るのが見えた.
近づいてメガネを外し(最近,メガネを掛けたままだと近くのものが,よく見えな
い),石垣に顔を近づけて見ると小さなハエトリの集団であった.息を吹きかける
と 30~40 匹の幼体の集団が一斉に同じ方向に向かって飛び跳ね走り回って行く姿
が妙に愛らしい.更によく見ていると大人の個体も混じっていたので数頭,採集し
て後日自宅の顕微鏡で種の確認をしたところエキスハエトリ♀♂であった.1 頭の♂
は交接器官が片方しかなく,性モザイクと見て取れた.このエキスハエトリのコロ
ニーは,約 10 メートルの間に 5~6 個の集合体が認められ,仲間意識は隣接の集合
体とは無いようで息を吹きかけ追っていくと,先の集合体と混ざって一緒になって
同じ方向に逃げて行く姿を確認した.ここで 1 時間ほど時間を使ってしまったので,
慌てて河川敷に降り,ビーティングで無差別採集を行い,コテ付きピンセットで硬
い桜の樹の皮を少しだけ剥ぎ,樹皮下に居たキハダカニグモとカレハグモ,ナミト
ンビグモ等を採集した.
観察会,
観察会,午前中
実は,私にとっては最後の採集観察地であった.妻が帰宅日の飛行機の中で一番
安い航空会社と時間を決めていたので,東京から参加の方々とは一足も二足も早い
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便で帰ることになってしまった.午前の場所は,「香川県高松市国分寺町」の五色
台にある根香寺とその周囲で行われた.この日は,合宿参加期間中一番の猛暑でク
ーラーのかかった車内から外へ出るのは覚悟と勇気がいった.車外に出てからも,
日陰と涼を求めクモの採集は片手間だった.それでも根香寺の境内に入って行った
のは私だけだったらしく,静かな寺の周囲の雑木林をバタバタ叩くビーティングの
音が妙に耳障りであった.
境内入口の大鳥居の横で椿の太い樹があり,この木に生える葉っぱの裏側を丹念
にめくっていると,白い小さなクモを発見.一瞬ホシミドリヒメグモにも見えたが,
背甲に模様が無く突起の無いギボシヒメグモのような形のクモで,フタホシヒメグ
モだと直感した.私がフタホシヒメグモを最初に採集したのは,2003 年 8 月 2 日,
東京都八王子市南浅川町のグリーン・センター先で,それから今日まで東京都で 3
回,神奈川県で 1 回,合計 5 頭の♀を採集している.
四国は高知県高知市で平松毅久氏が採集したクモがタイプ標本になっているが,
香川県の採集は初記録と思われる.香川県では最初の採集地,三木町堂ヶ平でも採
集しているが幼体であったため保留していたので,根香寺(ねごろじ,と読む)に賽銭
を投げてはいないが御利益があったらしく,♀成体が採集できた.
この場所では,途中のコンビニで購入した昼食を木陰の比較的涼しい場所で食べ
ることになっていたが,私自身の都合により昼食を食べることなく皆さんに別れを
告げ,車に乗り込み帰宅の途に着いた.ちなみに私の昼食は,高松空港のレストラ
ンで名物の温玉ウドンと味噌おでんを食べ,香川県における食の思い出とし一足先
に東京へ帰った.
まとめ
香川県合宿の「新樺川観光ホテル」は,とても綺麗で上品で食事も逸品ぞろいで
申し分なく,風呂も内湯が温泉で気持ち良く,露天の設備もあって,心と体を癒す
には最高の演出が施されていた.従業員のおばちゃん達も気さくで話し易く,最高
の持て成しを受けた.また合宿初日の金曜日から土曜日にかけてはホテルに客が居
らず,私達クモ研究者だけの宿泊だった為,従業員の方々も物珍しさも手伝って私
達には特に好意的だった.ホテルの裏山にある樺川神社は,ホテルの敷地を通らね
ば行かれないためホテル側が観光・名所地を試行錯誤で考えた結果,山の上に神社
を造って客に山へ登らせ広大な下界を臨ませる,という意図が伺えた.山道は,手
入れが行き届き中腹辺りには,ちょっとした広場を作りベンチを設置して休憩所ま
であったが,頂上の神社はお粗末でトラロープが張ってあり,これから神殿を造ろ
うという感じがした.一応立て看板で子宝神社と書いてあった.土曜日から日曜日
にかけてはホテルも満員だったらしく,広い駐車場もいっぱいで,夕方観察会から
帰ってきたときは,車を駐車する場所にも困るほど混んでいた.夕食の配膳も前日
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とは打って変わり,おばちゃん 1 人がてんてこ舞いで皿運びをしており,鍋物の火
の付け忘れや料理の配膳忘れ等も見られ,ご愛嬌という感じであった.
夜間観察では,最初の晩に池田君の父上が,以前私が紹介した懐中電灯「型式
SF-101」(KISHIDAIA,NO.87,66 項下段)を所持しており感激したが,反面そ
の懐中電灯は光が白過ぎて夜間観察では白いクモ,若しくは白に近い色のクモの色
がとび非常に見にくい.特に砂浜でイソコモリグモを探した時,砂の白さが反射し
て穴を全く探せなかったという苦い経験もした.よって,この懐中電灯は遠くを照
らすか,見つけたクモを観察する時には便利であるがクモ探しには不向きである.
今回私が用意した懐中電灯は,同じメーカーの「型式 SJ-D3A」と「型式 GT-53AA」
の 2 本である.前者は昔の懐中電灯の色で,しかもスポットライト式である.後者
は白い光ながら三段階に色の強さが変わるタイプである.本当は,単 1 乾電池 4 個
~6 個入るデカイ物が一番いいのだが,重たいし嵩張るし旅行に持っていくには不
向きと考え,小さく軽く光量の大きな懐中電灯を探した結果,現在に行き着いた.
「クモあわせ」と二次会では,池田君の父上がクーラーボックスに冷えた缶ビー
ル,日本酒,焼酎等の酒類を自費で持参し,さらにツマミ,ツマミとなりうる珍味・
菓子類等を二日間の宴会あわせ,大量に供出して頂いた.わざわざ大阪から用意し
て,持参して下さったのですね.感謝,感謝,感謝,です.おかげで,二次会の宴
会費用が殆んどかからず,その分レンタカー借用費用とガソリン代に当てた金額と
ほぼ同額の費用が,役員から支給されました.いつもの合宿であれば,レンタカー
を借りた人は持ち出しが多かったと聞きます.また,池田君は合宿に来るに当たり
最新のビノキュラーを持参し,自分が見て欲しいクモや現地で採集したクモの同定
に利用し,「クモあわせ」と二次会の宴会場で大活躍だった.合宿にビノキュラー
を持ってきた人は,私が知る限り二人目です.偶然にも両方「池田」氏でした.
今回の香川県合宿の目玉は,もちろん八幡明彦氏が採集したマメイタイセキグモ
と新海明氏が採集したムツトゲイセキグモであるが,私の心に衝撃を与え久々に興
奮したクモは池田勇介君が採集し,彼に教えて頂いたハラビロササヒメグモである.
またフタホシヒメグモは,東京クモ談話会が主催する年 4 回の観察会でも採集記録
がなく,私的に分布を注目しているクモであったので題名の中に取り上げた.
私が,都内で採れるクモの中で最近注目しているクモにヒゲナガヤリグモがある.
今回の合宿でも採集できたが,都内の最初の記録は 1999 年 7 月 10 日工藤泰恵氏
により港区の自然教育園(国立科学博物館付属施設)で♂が採集された.私自身の
採集記録は 2003 年 7 月に高知県で採集したのを皮切りに島根,神奈川,東京,と
これまでに 8 頭の成体標本を持っている.島根県は合宿で行った地であり,神奈川
と東京は国道 20 号線を境にして左側と右側で採集した.これらのクモが今後,ど
のように分布していくか楽しみである.
談話会の合宿は夏の大イベントで,談話会の観察会でもお会いしない方々も多数
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参加され,親交を深める場となっている.最近は,歳のせいか顔は覚えているもの
の当時お会いした方々の名前を全部忘れてしまい,文章を書くとき個人の面白いエ
ピソードを入れようと思っても話が途切れてしまいボツにしたケースが多々ある.
観察会のときも思うが,多人数の時は名札を付けて頂けるとありがたい.
今回の合宿も盛大かつ大成功に終わり,ひとえに新海明,谷川明男両氏の御尽力
と役員,と言っても今回参加の役員は八幡明彦氏だけだったが,この三氏の協力と
池田君の父上の協賛により,楽しいひと時を過ごせた.また,新海氏と八幡氏は珍
品のクモを披露し合宿に花を添え,彼ら,なくして談話会の存続は有り得ないと痛
感した合宿であった.・・・という訳で来年も,よろしくお願い致します.楽しい
観察会旅行でした.
12
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
アリの巣に住むクモ,ウスイロウラシマグモ
Phrurolithus labialis について
小 松
貴*
Takashi KOMATSU. Phrurolithus labialis: a myrmecophilous spider
筆者は好蟻性と考えられるクモ,ウスイロウラシマグモ Phrurolithus labialis
(クモ目:ネコグモ科)に関する幾つかの知見を得たため,これを報告する.アリ
の巣内には様々な生物が生息しており,好蟻性生物と呼ばれる(Holldobler &
Wilson 1990).好蟻性は様々な分類群の生物に渡ってみられるが,その大多数は
節足動物が占める(Holldobler & Wilson 1990).クモ類においてもアリ巣内を
生活の基盤とする種が海外で複数種知られ,国内でもアリノスヌカグモ Evansia
merens などわずかな種が知られているが,日本産の好蟻性クモ類の生活史やアリ
に対する行動などに関する情報は皆無に等しい(Cushing 1997,寺山・丸山 2007).
筆者は好蟻性昆虫の一種であるアリヅカコオロギ属 Myrmecophilus に関する研究
を行っており,サンプル採集のために各地で様々な種のアリの巣を調査している.
中でも,体長 3 mm ほどのトビイロシワアリ Tetramorium tsushimae は南西諸島
を除く日本全国の市街地や明るい草原環境に普遍的に生息しており,他種のアリと
比べて目にする機会が多い(Japanese Ant Database Group 2003).このトビ
イロシワアリの巣を各地で掘り返して
調査する中で,筆者はある種の小型ク
モが高頻度でこのアリの巣内だけで見
られることが気になっていた.体長は
3 mm 前後で,ほぼトビイロシワアリ
と同大である.体色は全体的に薄いが,
頭胸部は赤褐色,腹部は青灰色という
特徴的な色調をしている.一般にトビ
イロシワアリは日当たり良い場所の地
面に半分埋まっている石やブロックな
ど(なるべく薄く幅広いものがよい)
図 1. トビイロシワアリの巣内にいたウスイロウラ
シマグモ.福岡県福岡市東区箱崎にて撮影.
*信州大学大学院総合工学系研究科
13
表.著者によるウスイロウラシマグモの確認地点.
東京都
山梨県
長野県
長野県
愛媛県
福岡県
静岡県
東京都
練馬区
甲斐市
松本市
松本市
松山市
福岡市
沼津市
大島町
採集地
大泉中央公園
釜無川河川敷
旭
里山辺藤井
城山町
東区箱崎
内浦重寺
泉津
採集日
06-VII-2002
02-X-2004
28-II-2007
3-III-2007
19-III-2007
15- III -2008
19- III -2008
22- III -2008
の下に営巣しており,これを裏返すとアリの掘った巣部屋や通路が見られるのだが,
この通路内をアリと一緒にこのクモも盛んに行き来しているのである.私事ではあ
るが,私は小学生の頃から頻繁にアリの巣を掘り返す遊びを繰り返し行っており,
その頃から既にトビイロシワアリの巣にこの奇妙なクモが必ずといって良いほど
同居していることを経験的に知っていた.しかし,クモ類に関する文献等の不備に
より,長らくこのクモの正体が不明な状態が続いていた.
ところが,クモ類の研究者である東京大学の馬場氏と出会ったことがきっかけで,
長野県松本市旭の信州大学構内にあるトビイロシワアリの巣から採集されたこの
クモの種同定をしていただく機会に恵まれ,ネコグモ科のウスイロウラシマグモで
ある事が判明した.その際,このクモが過去の採集例の少ないこと,特にオス個体
はごく最近になって発見された事を伺った(Kamura 2001,Kamura 2005).
筆者はこのウスイロウラシマグモを本州から九州までの複数地域で確認しており,
その地域を表に記す.
これまで野外においてこのクモを複数回観察した所,幾つかの特筆すべき特徴が
認められた.まず,アリは基本的にこのクモに対して攻撃を加えないばかりか,ク
モの存在そのものを無視する傾向にある.アリは一般的に自分の巣仲間を厳密に識
別しており,同巣出身の個体以外の生物に対しては,たとえ同種であっても攻撃的
な反応をとる.このような反応が起こる背景には,アリ体表に存在する炭化水素が
関係している.アリは種毎に体表炭化水素組成が異なる上,同種アリの別コロニー
同士では体表炭化水素の組成比に差があり,これによりアリは自分の巣仲間を認識
しているのである(Smith & Breed 1995,Thomas et al. 1999,Wagner et al.
2000).アリ巣内に住む好蟻性生物の多くはこれを逆手にとり,寄主であるアリ
と同一の組成の体表炭化水素や,アリの攻撃性を鎮める化学物質を分泌することで,
アリの持つセキュリティーシステムの裏をかいて同居している(Holldobler &
Wilson 1990,秋野ら 1996,Stoeffler et al. 2007).このため,ウスイロウラ
シマグモも何らかの化学的な方法によってトビイロシワアリから侵入者として認
知されないようにしていることが予想される.なお,海外では樹上性のツムギアリ
の巣内にハエトリグモの一種が生息することが知られ,アリと同一の体表炭化水素
を持つことでアリからの攻撃を防いでいる(Elgar & Allan 2004).
14
次に,アリ側のクモに対する無関心さとは対照的に,クモはアリの存在を非常に
意識している事が挙げられる.野外で石の裏に作られたトビイロシワアリの巣を観
察すると,クモは数十秒間石の表面や地面のアリの通路を歩き回った後に,アリの
巣穴の奥に入って姿を消す.この際,手近にいる一匹のアリの後を張り付くように
追跡する様子が頻繁に観察できる.クモは第一歩脚と触肢を用いてアリの腹部を細
かく触りながらアリの跡をつけ,場合によってはアリをまたぐように上からのし掛
かることもある.このような執拗な接触にも関わらず,アリは通常このクモに対し
て関心を示さずにいる.アリの巣内に生息するアリヅカコオロギ類は,素早くアリ
の体表に触れては逃避する行動を繰り返すことで,アリの体表炭化水素をはぎ取っ
て自分の体表に吸着させる能力を持つ(秋野ら 1996).これを考慮すると,ウス
イロウラシマグモのアリに対する緊密な物理的接触はアリ体表の成分を奪い取る
ための行動である可能性が考えられる.
このクモがアリの巣内に生息している至近要因ならびに究極要因は,今なお推測
の域を出ない.海外のツムギアリ寄生性ハエトリグモは,アリの幼虫を積極的に捕
食することで,アリの幼虫の体表炭化水素を体内に一度取り込んだ後,自分の体表
から分泌する.このため,アリはこのクモをアリの幼虫として認識している事にな
る(Elgar & Allan 2004).ウスイロウラシマグモの食性は不明だが,アリの幼
虫や蛹を餌にしている可能性が考えられ,これよりアリ巣内で生活するために必要
な化学物質を得ていると考えることもできる.さらに,ウラシマグモ科に属する他
の近縁種がどの程度アリと関係した生活史を持っているか,どのような進化的プロ
セスを経てウスイロウラシマグモのような好蟻性の強い種が現れたのかなど,興味
深い点は多い.今後,アリと共に飼育を行い,生活史の詳細や,アリと比較した体
表炭化水素の類似度を調べてみたいと思っている.
東京大学の馬場友希博士と追手門学院大学の加村隆英博士には,ウスイロウラシ
マグモの同定を行って頂いた.厚く御礼申し上げる.
引用文献
秋野順治・望月理絵・森本雅之・山岡亮平
1996.好蟻性昆虫アリヅカコオロギによる多種ア
リ類への化学擬態.日本応用動物昆虫学会誌,40: 39-46.
Cushing P.E. 1997. Myrmecomorphy and myrmecophily in spiders: A review. Florida
Entomology, 80: 165-193.
Elgar M.A. & Allan R.A. 2004. Predatory spider mimics acquire colony-specific
cuticular hydrocarbons from their ant model prey. Naturwissenschaften, 91:
143-147.
Holldobler B. & Wilson E.O. 1990. The ants. The Belknap Press of Harvard University
Press, Cambridge, Massachusetts, 732 pp.
Japanese Ant Database Group 2003. Ants of Japan. Gakken, Tokyo, 196pp.
15
Kamura T. 2001. Seven species of the families Liocranidae and Corinnidae (Araneae)
from Japan and Taiwan. Acta Arachnologica, 50: 49-61.
Kamura T. 2005. Description of the male of Phrurolithus labialis (Araneae: Corinnidae).
Acta Arachnologica, 54: 93-94.
Smith B.H. & Breed M.D. 1995. The chemical basis for nest-mate recognition and mate
discrimination in social insects. In: Carde R.T., Bell W.J. (eds.) Chemical Ecology of
Insects, vol. 2. Chapman, London, pp 287-317.
Stoeffler M., Maier T.S., Tolasch T. & Steidle J.L.M. 2007. Foreign-language skills in
rove-beetles? Evidence for chemical mimicry of ant alarm pheromones in
Myrmecophilous Pella beetles (Coleoptera: Staphylinidae). Journal of Chemical
Ecology, 33: 1382-1392.
寺山守・丸山宗利 1997.日本産好蟻性動物仮目録.蟻 30: 1-37.
Thomas M.L., Parry L.J., Allan R.A. & Elgar M.A. 1999. Colony recognition in
Australian meat ants Iridomyrmex purpureus. Naturwissenchaften 86: 87-92.
16
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
チュウガタシロカネグモの生活史
小関 峻徳・加倉井 駿也・児島 寛之・池田 博明
研究の
研究の動機
小関・加倉井・児島の三名は 2006 年度の神奈川県立西湘高等学校 2 年次の理数
コースの必修科目「理数課題研究」において,クモをテーマに研究を始めた.クモ
に関する基礎を習得した上で,2007 年度の 3 年次には,生態について調べてみよ
うと考えた.
調査地は神奈川県小田原市の国府津丘陵入り口に設定し,調査地には指導担当の
池田の自家用車で往復した.ここにはチュウガタシロカネグモ Laucauge blanda
が目立った.この種は南方系の種で 30 年ほど前から神奈川県で発見されるように
なったものの,生態調査が進んでおらず,生活史など不明の部分が多い種だと知っ
て,継続的な観察により,生活史を明らかにしていきたいと思った.
研究の
研究の方法
2007 年 4 月 20 日から 7 月下旬まで,ほぼ毎週金曜日の午後,神奈川県小田原
市国府津丘陵入り口の,光明寺の水路脇の草むらでチュウガタシロカネグモを中心
に観察した.透明な定規でその場で体長を測定し,記録した.一部をアルコール標
本にして持ち帰り,実験室内で,デジタル双眼実体顕微鏡で体長・腹部長・腹部幅・
腹部高をµm 単位で測定した.
また一部のメスの腹部を解剖して卵の有無を調べた.
9 月 14 日も追加調査を行った.
結果と
結果と考察
私たちが調査を開始する一週間前の 2007 年 4 月 14 日に同調査地で,生物部が
クモの採集を実施しており,チュウガタシロカネグモのメスの網でオスが求愛行動
をしているのを観察していた.つまり 4 月中旬の段階で既に雌雄とも成体が出現し
ており,繁殖期であった.
表 1.チュウガタシロカネグモ
採集日
4 月 14 日
4 月 20 日
5月 5日
体長 mm
7.68
5.85
8.90
メス成体の体長.
6.67
6.42
9.90
7.07
7.37
測定個体数
n=2
n=4
n=2
17
表 2.チュウガタシロカネグモ
採集日
4 月 20 日
5 月 5 日,19 日
メス成体の腹部長と腹部体積
腹部長(平均値±SD)
4.4±0.42 mm
6.8±0.99 mm
腹部体積(平均値±SD)
24±8.3 mm3
120±41.4 mm3
測定数
n=4
n=4
表 3.チュウガタシロカネグモのメス成体の腹部の卵の状態
採集日
5月5日
5 月 19 日
6月1日
6 月 12 日
体長
8.9mm
8.9mm
9.0mm
9.1mm
10.0mm
7.8mm
8.2mm
9.7mm
8.3mm
9.9mm
+++
++
+
+++
+
+
+++
-
卵
多い
やや多い
無い
少し
多い
少し
無い
少し
多い
無い
1.
.5 月上旬に
月上旬にメス成体
メス成体は
成体は急激に
急激に大型化した
大型化した
4 月 14 日,4 月 20 日,5 月 5 日のメス成体の体長の平均値は表 1 のようであ
った.4 月 14 日および 4 月 20 日のメスの体長は約 6~7 mm だったのだが,5
月 5 日になると 9~10 mm と急速に大型化したことがわかった.4 月 20 日と 5
月 5 日にオスを 1 頭ずつ採集しているが,このオスの体長はそれぞれ,5.68 mm,
5.84 mm とメスほど大型化していなかった.
2.
.メスの
メスの大型化は
大型化は腹部の
腹部の成長による
成長による
成体後は通常は脱皮をしないことを考慮すると,メスの成長は著しい.メスの体
長から腹部長を引いた値を比べると 4 月 20 日と 5 月 5 日のデータではほとんど変
化していないことがわかった.つまり,メスの大型化の原因は腹部の成長によるも
のであった.
3.
.メスの
メスの腹部は
腹部は長さ・幅・高さが増加
さが増加し
増加し,体積は
体積は 5 倍に増加していた
増加していた
5 月 5 日と 5 月 19 日のメス成体は体長が類似していたのでこの日のデータを 5
月前半の結果とし,4 月 20 日のデータと比べたところ,腹部長は 1.5 倍に増加し
ていた.さらに,腹部幅,腹部高も大きくなっており,腹部を直方体とみなして体
積を計算してみると,5 月前半のメス成体の腹部の体積は,4 月 20 日の腹部の体
積の 5 倍に増加していた.
4.
.腹部の
腹部の大型化は
大型化は卵の発達によるものである
発達によるものである
このようなメス成体の腹部の大型化は,仮説「産卵期が来て,卵が腹部内にでき
たからである」を立てて,
解剖により検証した.5 月 5 日のメス成体
(体長 8.9 mm,
18
腹部長 6.3 mm,腹部体積 99 mm3)の腹部を解剖したところ,腹部いっぱいの
卵が認められた.仮説は正しかったと思われた.ところが,である.同日に採集し
た,より大きなメス成体(体長 9.9 mm,腹部長 7.8 mm,腹部体積 162 mm3)
の腹部内には少数の卵が認められただけであった.外見からすると,腹部はじゅう
ぶん大きいのに,卵はほとんど入っていなかったのだ.さらに,5 月 19 日以降 6
月 22 日までの体長 8~10 mm のメス成体を解剖してみると,卵を持つ個体もい
れば,持たない個体もあった.この結果は予想外であった.
5.
.大型の
大型の腹部で
腹部で卵を持たない個体
たない個体もある
個体もある
表 3 に見られるように腹部が 8 mm 以上と大きくても腹部内に卵が無い状態の
メスもあった.例えば,6 月 22 日に採集したメス成体(体長 8.3 mm,腹部長 6.5
mm,腹部体積 87 mm3)は腹部いっぱいに卵を持っていたが,より大きなメス
成体(体長 9.9 mm,腹部長 7.3 mm,腹部体積 127 mm3)の腹部には卵が無く,
腹咥内には糸腺がつまっていた.前者は遅れて成長したメスで,後者は産卵を終え
たメスではないだろうか.チュウガタシロカネグモの場合は,産卵した後でも一度
膨張した腹部は縮小しないものと考察できた.
クモの成長についてはジョロウグモでもっともよく研究されており,産卵前のジ
ョロウグモの腹部は大型化しているが,産卵を終えると腹部は縮小して平たくなっ
てしまう.ジョロウグモからの類推でどのクモにおいても腹部の大きなメスは産卵
前で,腹部の小さなメスは産卵後とみなしてきたが,シロカネグモには当てはまら
ないようだ.他にも大きな腹部をしているものの解剖してみると中は空っぽという
種類があるかもしれない.今後の検討課題と思われた.
6.
.調査地では
調査地では 5 月以降メス
月以降メス成体
メス成体は
成体は次第に
次第に減少する
減少する
調査地でチュウガタシロカネグモの個体数をカウントした.採集した個体は体長
を測定し,成体か幼体かを判別した後,現地で放した.一部を液浸標本にして,前
記の解剖等の試料として使用した.メス成体の個体数はグラフのように次第に減少
していった(図 1).
オス成体は 5 月 5 日までは観察できたが,5 月 19 日には発見できなかった.5
月 19 日には幼体も発見できず,腹部の大型化したメス成体だけであった.しかし,
オスがまったくいなくなったのではなかった.6 月 1 日に体長 5 mm のオス成体 1
個体を観察したからである.このサイズはオスでも小さい方であった.
7 月に入ると雌雄とも成体を観察できなくなった.新たな幼体を見ることができた
ことから,チュウガタシロカネグモのメスは少なくとも 5,6 月の間に産卵をすま
せているはずである.メスの減少傾向からは,産卵をすませると死んでしまうこと
が推測できた.夏以降の生活史については後述する.次いで,メス成体の平均体長
の変化を見てみよう.
19
図 1.チュウガタシロカネグモのメ
ス成体の個体数の変化.神奈川
県小田原市の国府津丘陵入り
口では,5 月以降メス成体の個
体数は減少する.
7.
.メスの
メスの体長は
体長は 5 月上旬から
月上旬から 6 月下旬まで
月下旬まで大
まで大きかった
4 月に成体になったばかりのチュウガタシロカネグモは 5 月上旬の一週間で腹部
が大きくなり,時期が進むにつれやや小さくはなるものの,6 月下旬にまで産卵が
遅れたメス個体も出現して,集団全体の産卵期間は結構長期間にわたると思われた.
6 月 29 日にはメス成体は見られなくなって,7 月 13 日には今年生まれた幼体が発
見された(図 2).
8.
.9 月に 2 回目の
回目の産卵期がある
産卵期がある
9 月 14 日に調査地に行ったところちょうど草刈の最中であった.クモの網のあ
ったところの草はすべて刈られて無くなっていた.草刈をしていた方にたずねてみ
ると 1 年に 2 回ほど草刈をするという.そういえば前回は 7 月上旬に草が刈られ
ていた.
図 2.チュウガタシロカネグモの体長は 5 月下旬から 6 月下旬まで大きい.
20
図 3.4 月から 9 月にかけてのチュウガタシロカネグモの体長変化.チュウガタシロカネグ
モは 5 月から 6 月にかけての時期のほかに,9 月にも産卵期があることが示唆され,2 化性
のクモであると推察された.
草むらの周辺でメス成体のチュウガタシロカネグモをやっと 2 頭発見し,採集し,
サイズを測定した.体長はそれぞれ 8.9 mm,10.7 mm とかなり大型だった.腹
部を解剖してみると 2 頭とも少数の卵が見られた.産卵直後だったようである.こ
の 9 月の結果を入れて 4 月からチュウガタシロカネグモの体長変化を並べてみると,
5 月から 6 月の産卵期の他に,9 月にも産卵期があることが示唆された(図 3).
9 月のメスは当年生れの個体である.おそらく 9 月生れの幼体が成長して亜成体
で越冬し,翌春の 4 月に成熟して繁殖期に入るのであろう.推論が正しければチュ
ウガタシロカネグモは年 2 回成体が発生する 2 化性のクモであるということが分っ
た.調査後,文献を渉猟したところ,試料のサイズ分析から横浜市内でチュウガタ
シロカネグモは 2 化であると推測した例があった(Miyashita et al. 1989).
要 約
1.神奈川県小田原市国府津の草むらで,2007 年 4 月 14 日から 9 月 14 日までチ
ュウガタシロカネグモの生態を約一週間ごとに調査した.
2.チュウガタシロカネグモのメスの体長は 5 月 5 日に急に大きくなっていた.4
月 20 日と比べてオスの体長はほとんど大きくなっていなかった.メスの腹部の
体積は 5 倍に増大していた.
3.腹部の急激な大型化は産卵期の卵の発達によるものと仮説を立てて,クモの腹
部を解剖した.5 月 5 日のメスには腹部いっぱいの卵が観察された.ところが,
腹部が大きいメスであっても腹部に卵を持たない個体もあった.
4.5 月,6 月の腹部の大きなメスであっても卵をほとんど持たないか,少しだけ
卵を持つ個体がかなりあった.外見から腹部の大きなメスは卵をたくさん持って
いると推測されるのだが,チュウガタシロカネグモの場合は卵を発達させていっ
21
たん大きくなった腹部は,産卵して腹部が空になっても収縮しないものと思われ
た.
5.メス成体は 5 月中旬から減少し,6 月下旬には見られなくなった.産卵を終え
た個体は死亡するものと推測した.
6.7 月中旬に幼体が発見され,9 月 14 日には産卵期のメス成体が見られたことか
ら,成体は年に 2 回は出現するものと思われた.
謝 辞
谷川明男博士(東京大学大学院)には雌雄の標本をもとにチュウガタシロカネグモ
を同定していただいた.記して感謝申し上げます.
参考文献
新海栄一 2006.日本のクモ.文一総合出版.
Miyashita T., Shinkai A. and Chida T. 1998. The effects of forest fragmentation on web
spider communities in urban areas. Biological Conservation, 86(3): 357-364.
22
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
ジョロウグモの越冬卵死亡の危険因子の分析
西 野
真 由 子
1.
.はじめに
ジョロウグモ Nephila clavata は越冬卵が春に孵化し,出のうする.産卵から出
のうまで 7~8 ヶ月もかかるので,死亡原因として未受精・発生異常などの内的要
因に加え,低温・乾燥・捕食などの外的要因の関与も大きい.そして,内的・外的
要因は,産卵時期・場所や母グモの状態などにも影響されることが予想される.
これまで野外におけるジョロウグモの孵化・出のうについては,下謝名(1971),
徳本(1984)などの報告があるが,産卵条件の影響は明確でない.今回は,産卵
条件からジョロウグモの越冬卵死亡の危険因子を仮定,分析した.
2.
.方 法
1994 年から 2008 年まで,大阪府堺市でジョロウグモの卵のう 841 個を野外観
察した.産卵時期,産卵場所,卵のう付着位置の高さ,産卵後の母グモの行動と出
のうの有無を記録した.1 頭でも幼体が出のうすれば出のう,全く出のうしない場
合を死亡とした.
産卵時期,産卵場所,母グモの行動はそれぞれ 3 群に分け,出のう卵のう率(出
のうした卵のう数/卵のう数)を求めた.出のう卵のう率が低い項目を危険因子と
仮定,多重ロジスティック回帰分析(Walker-Duncan 法)を行い,死亡への影響
を調べた.卵のう付着位置の高さは,出のう群と死亡群に分けて比較した.以前の
調査で人工物の卵のう付着位置は有意に高かった(西野 2007)ので,産卵場所別
にも出のう群と死亡群を比較した.
3.
.結 果
観察した 841 個の卵のうのうち幼体が出のうしたのは 680 個で,出のう卵のう
率は 80.9%だった.産卵時期,産卵場所,産卵後の母グモの行動別に出のう卵の
う率を示す(表 1).出のう卵のう率が低かったのは,産卵時期では 12 月,産卵
場所では幹と人工物(壁,塀,軒など),母グモの行動では死亡であった.
卵のう付着位置の高さ(平均±標準偏差)は出のう群 135.9±64.6 cm(n=680),
死亡群 155.4±83.2 cm(n=161)で,死亡群は有意に高かった(t 検定,p < 0.01).
しかし産卵場所別に比較すると,いずれの場所も出のうの有無で付着位置の高さに
23
表 1.産卵時期,産卵場所,母グモの行動と卵のう数および出のう卵のう率
産卵時期
卵のう数
出のう卵のう率
産卵場所
卵のう数
出のう卵のう率
母グモの行動
卵のう数
出のう卵のう率
10 月
215
80.0%
葉
601
86.9%
造網を確認
434
84.6%
11 月
12 月
542
82.8%
84
70.2%
幹
人工物
94
67.0%
造網せずに死亡
91
68.1%
146
65.1%
確認できず(行方不明群)
316
79.4%
表 2.産卵場所別の卵のう付着位置の高さ(平均±標準偏差 cm)
出のう
死亡
葉*
128.8±60.7 n=522
138.3±60.6 n=79
幹*
125.0±62.0 n=63
118.9±70.4 n=31
人工物*
181.4±68.5 n=95
204.0±98.9 n=51
*3 群とも出のうと死亡間に有意差なし(t 検定,有意水準 5%)
有意差はなかった(表 2).
表 1 から 12 月産卵,幹や人工物への産卵,母グモの死亡を越冬卵死亡の危険因
子と仮定し,卵のう付着位置の高さとあわせて多重ロジスティック回帰分析を行っ
た(表 3).幹,人工物への産卵(いずれも p < 0.01),12 月産卵(p < 0.05)
が有意だった.
4.
.考 察
今回の野外調査ではジョロウグモの出のう卵のう率は 80.9%だったが,幹,人
工物への産卵は 12 月産卵よりも越冬卵死亡の危険が高かった(表 3).野外にお
けるジョロウグモの孵化率については沖縄では 90%以上(下謝名 1971)である
が,石川では越冬卵の生存率は約 40%(徳本 1984)である.孵化率が高率であ
った沖縄では出のうまでの期間が短く,本州とは生活史が若干異なるが,卵のうは
すべて葉に作られていた.低率であった石川の調査では卵のうの大半が幹に作られ
ていたことは,今回の結果を裏付けるものである.
幹が葉に比べて越冬卵死亡の危険が高い原因として,樹液を求めて虫が往来する
ため捕食の危険が高いことがある.大阪においては,ジョロウグモの越冬卵が孵化
するのが 4 月ごろ,2 齢幼体として出のうするのが 5 月ごろであるが,その頃にな
れば,天敵となる虫たちも活動期である.人工物では塀(67 個),軒(40 個)が
多かったが,ヤモリなどの小動物も往来するため,捕食の危険が高いと推測する.
写真 1 はアリに襲われている卵のう(ケヤキ幹)である.
しかし今回の調査では捕食の痕跡があるのは一部で,萎縮卵も多かった.幹に産
卵されたジョロウグモの卵のうの 25.3%に損傷がみられたという報告がある(松
田ほか 2002)が,アメリカジョロウグモ Nephila Clavipes の越冬卵では,発育
24
表 3.多重ロジスティック回帰分析結果(n=841)
12 月産卵
幹への産卵
人工物への産卵
母グモの死亡
付着位置の高さ
偏回帰係数
0.578
1.228
1.065
0.398
0.0025
標準誤差
0.292
0.254
0.227
0.277
0.0013
標準化偏回帰係数
0.171
0.387
0.404
0.124
0.171
p値
p < 0.05
p < 0.01
p < 0.01
0.150
0.063
不全と真菌感染が死亡原因の大半で捕食は 4.5%だという(Christenson & Wenzl
1980).したがって幹や人工物の低い出のう卵のう率の原因を捕食のみで考える
ことは疑問が残る.葉に作られた卵のう(写真 2)と異なり,幹では直接,風雨に
曝されることもよくない.またジョロウグモの胚の発生は胚盤形成期で停止,越冬
後に再開と複雑なので,正常な発生のためには,幹や人工物より葉が有利である可
能性もある.
産卵場所に次いで越冬卵死亡に影響したのは産卵時期だった.産卵時期別(前,
中,後期)にアメリカジョロウグモの卵のうを調査した結果によると,出のう卵の
う率は前期(64.7~73.4%)が後期(0~27.7%)より有意に高く,死亡原因とし
て前期は風雨による落下,後期は未受精卵を含めた発育不全が多かったという
(Christenson et al. 1979).沖縄ではジョロウグモの交尾率は 91.5~100%と
いう報告もある(下謝名 1971)が,12 月産卵の出のう卵のう率の低下には未受
精卵の存在も否定できない.一方で 12 月産卵でも出のう卵のう率が 70%と比較的
高かったのは,ジョロウグモが 12 月の大阪の気候に適応しているとも考えられる.
母グモの行動は越冬卵死亡には影響は小さかった.表 1 の行方不明群(n=316)に
は造網したクモと死亡したクモが混在している.そこで行方不明群を除き,525 例
を対象に,表 3 と同じ項目で多重ロジスティック回帰分析を試みたが,産卵場所の
2 項目のみが有意だった.ジョロウグモは産卵後に卵のうを保護しないことも,
写真 1.ケヤキ幹の卵のう.多数の黒点はア
写真 2.ハナミズキ葉の卵のう.母グモ
リ(例を白矢印で示した).
は葉を折り曲げ,別の葉を付着させた.
25
母グモ死亡の影響が小さかった一因だろう.また,母グモ死亡群では人工物の卵の
うが多かった(91 例中 30 例).母グモ死亡群の出のう卵のう率の低下の原因とし
て,内因性の発生異常が多いことを想定したが,産卵場所の影響もあったのだろう.
付着位置の高さも越冬卵死亡に影響が小さかった.表 2 においても,産卵場所別
では出のうの有無で付着位置の高さに有意差がなかった.したがって死亡群の卵の
う付着位置が高かったのは,塀,軒など高い位置に作られた人工物の卵のうが多か
ったことによる.アメリカジョロウグモでは 46cm 未満の低い位置の卵のうほど捕
食の危険が高かったという(Moore 1977).捕食する動物が違うためか,今回は
そのような傾向はみられなかった.
今回の分析では越冬期間の気温,降水量などについては考慮しなかった.気候条
件が孵化,出のうに影響を与えることは疑いないが,その影響を分析することは簡
単ではない.したがって今回の結果を,大阪とは気候条件が違う他の地域にも適用
できるかは不明である.気候の影響については別の機会に検討してみたい.なお,
今回は卵のう単位で調査したが,卵単位で孵化,出のうを調査すると違う結果にな
ったかもしれない.そして,なぜ幹や人工物への産卵が危険因子であるのかという
死亡原因の解明も,今後の課題である.
5.
.引用文献
下謝名松栄 1971.沖縄島のジョロウグモ属の研究.〔Ⅰ〕ジョロウグモの生活史.沖縄生物学
会誌,7: 1-18.
徳本 洋 1984.林内におけるジョロウグモ越冬卵の生存率(講演要旨).Atypus, 85: 84-85.
西野真由子 2007.造網場所から探るジョロウグモの産卵部位選択.Kishidaia,91: 7-12.
松田久司・漆原弘光・高橋 剛・志釜じゅんこう 2002.ジョロウグモの林内での産卵部位と付
着物.Kishidaia, 83: 3-7.
Christenson T.E. and Wenzl P.A. 1980. Egg-laying of the golden silk spider, Nephila
clavipes (Linnaeus) (Araneae, Araneidae): functional analysis of the egg sac. Animal
Behaviour,28: 1110-1118.
Christenson T.E., Wenzl P.A. and Legun P. 1979. Seasonal variation in egg hatching
and certain egg parameters of the golden silk spider, Nephila clavipes (Araneidae).
Psyche,86: 137-147.
Moore C.W. 1977. The life cycle, habitat and variation in selected web parameters in
the spider, Nephila clavipes (Linnaeus) (Araneidiae). American Midland Naturalist,
98: 95-108.
26
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
千葉県白井市におけるコガネグモの生息環境
相馬 なおみ*・仲條 竜太**・長谷川 雅美**
Naomi SOMA*, Ryuta NAKAJO** and Masami HASEGAWA**.
Habitat environment of Far Eastern black-yellow garden spider
Argiope amonea L. Koch 1878 (Araneae: Araneidae) in Shiroi-shi,
Chiba Prefecture, Japan
はじめに
コガネグモ Argiope amoena L. Koch 1878 は黄色と黒の美しいコントラスト
の腹部を持つ,大型の造網性のクモである.かつては乾性・湿性を問わず草原によ
く見られたが,近年は減少が著しいといわれ,千葉県レッドリスト(千葉県環境財
団 2006)では C ランク(要保護生物)に指定されている.しかしコガネグモに
関する生態学的な知見は乏しく,生息環境さえ実証的に調査されていない.
北総台地の中央部に位置する千葉県白井市(北緯 35 度 47 分,東経 140 度 3 分)
は,北総鉄道北総線沿線のニュータウン開発が進む一方で,古くからの谷津田や雑
木林の残る地域である.このため谷津田を埋め立てた造成地にできた草原や,飼料
のための牧草地,古くからの牧,河川敷の芦原など,多様な形態の草原が見られ,
現在でも多数のコガネグモが生息している.著者らはコガネグモの生息環境を明ら
かにすべく,さまざまな草原の存在する千葉県白井市において 1)コガネグモは本
当に草原性の種なのか,また草原性の種であるならば 2)コガネグモはどのような
草原に多く生息しているのかについて調査を行った.
方 法
コガネグモは
コガネグモは本当に
本当に草原性の
草原性の種なのか
調査はコガネグモの成体が観察される 2006 年 6 月から 7 月にかけ,土地利用図
をもとに無作為に選ばれた千葉県白井市内の草地,住宅地,樹林地,水田の各 10
地点および耕作地 8 地点の計 48 地点において行われた.それぞれの調査地におい
て 100 m×100 m の調査区を設定し,調査区内に生息するすべてのコガネグモの
*
**
北総生きもの研究会
東邦大学理学部生物学科 地理生態学研究室
〒274-0072 千葉県船橋市三山 2-2-1
27
個体数を相馬が目視により数えた.なお住宅地では敷地内には立ち入らず,周囲か
ら庭木,植え込み,屋根の下などを可能な限り確認した.耕作地は原則として立ち
入っての調査を行ったが,梨園においては周囲のみを調査した.
コガネグモはどのような
コガネグモはどのような草原
はどのような草原に
草原に多く生息しているのか
生息しているのか
調査は 2006 年 6 月から 7 月にかけ,千葉県白井市の富ヶ谷地区から富ヶ沢地
区の 23 地点の草原において行われた.各草原において相馬がコガネグモの個体数
および草丈を記録し,調査後に Google マップ BETA(グーグル株式会社 2007)
を用いて草原の面積および水域までの距離を記録した.草丈は「芝生状態または草
刈りされている」,「膝丈(およそ 50 cm)以下」,「肩丈(およそ 120 cm)以
下」,「肩丈以上」の 4 段階の評価を行なった.得られたデータをもとに仲條がコ
ガネグモの生息環境を検討した.
結果と
結果と考察
コガネグモは
コガネグモは本当に
本当に草原性の
草原性の種なのか
千葉県白井市における 48 地点の調査の結果,土地利用区分における草地では 8
地点,住宅地 2 地点,樹林地 3 地点,水田 3 地点の計 16 地点においてコガネグモ
が観察された.ただし住宅地でコガネグモが観察された微環境は 2 地点とも生け垣
であり,樹林地の 3 地点はす
べて林縁部であった.また水
田での 3 例のうち 2 例は水田
わきの土水路,1 例は斜面の
畦の草地にて観察された.耕
作地では 8 地点すべてにおい
てコガネグモは観察されな
かった.草地におけるコガネ
グモのメスの個体数には大
きなばらつきがみられた(図
1).調査区(100 m×100 m)
内に 17 個体の生息を確認し
た草地がある一方,5 個体以
下の草地が 5 地点存在した.
調査面積はすべて一定であ
28
図 1.千葉県白井市における土地利用区分ごとのコ
るため,個体数のばらつきは,
ガネグモの確認個体数.プロットは 1 点が 1 調査区
それぞれの草地における環
(100m×100m)を示す.草地において多数のコガ
境の差異を反映したものと
ネグモが確認された.
考えられた.
図 2.千葉県白井市富ヶ谷地区および富ヶ沢地区における土地利用状況と草地におけるコガネグ
モ(メス成体)の確認個体数および密度.MANDARA バージョン 8.06 により作成.網かけは土
地利用状況を示し,円の大きさはコガネグモの確認個体数,円内の塗りの濃度はコガネグモの生
息密度を示す.河川沿いの草地にて多数のコガネグモを確認した.
土地利用区分ごとのコガネグモの出現頻度は全体として有意な差が認められた
(多試料χ2 検定:χ2 = 25.8, d.f. = 4, p < 0.01).それぞれの土地利用区分間の
出現頻度について Ryan の方法を用いて多重比較検定を行ったところ,草地と住宅
地(RD = 0.594, p < 0.05),草地と耕作地(RD = 0.629, p < 0.05)において
のみ有意な差がみられた.区分ごとの出現頻度の比較は,住宅地内の生け垣や水田
の畦などの調査区画内に局所的に存在する特異的な環境の影響を大きく受けると
考えられる.このため「いた」「いない」の 2 値データではなく,調査区画内で発
見されたすべてのコガネグモの個体数について検討した(図 1).しかし,それぞ
れの土地利用区分間の出現個体数に有意な差は見いだされなかった(GamesHowell の多重比較検定:p > 0.05).コガネグモが多数確認された環境は草地に
限られたが,統計的な有意差は検出されなかった.これは草地におけるコガネグモ
の生息個体数のばらつきが大きく影響しており,コガネグモの生息に適する草地と
そうでない草地が存在するものと考えられた.
29
表 1.コガネグモの生息個体数についてのポワソン回帰の結果.AIC の小さい順にモ
デルを並べた.各モデルの∆AIC は,各モデルの AIC と,最も AIC の小さい草丈のみ
を説明変数に含むモデルの AIC との差をあらわす.
説明変数
AIC
自由度調整済み寄与率
∆AIC
草丈のみ
261.1
0
0.698
距離と草丈(加法モデル)
261.2
0.066
0.700
距離と草丈(交互作用モデル)
263.1
1.967
0.700
距離のみ
416.2
155.103
0.457
空(説明変数なし)
487.6
226.411
-
コガネグモの
コガネグモの生息環境と
生息環境と,コガネグモの
コガネグモの指標種としての
指標種としての有用性
としての有用性
千葉県白井市富ヶ谷地区から富ヶ沢地区にかけての土地利用状況と,草地にお
けるコガネグモの生息状況(図 2)をみると,コガネグモは河川沿いの草地に高密
度で観察され,住宅地や梨園に隣接する草地では確認されなかった.コガネグモの
生息と,草地の平均草丈および水域までの距離の環境要素についての検討を行った.
一般に,造網性のクモのオスは成熟すると網を張らないものが多い(Foelix 1996;
池田ら 2003)ため,オスの数を正確に数えることは困難であると判断し,解析に
は確認されたメスの個体数を用いた.
確認されたメスの個体数を,一般化線形モデルを用いて解析した.応答変数で
あるコガネグモのメスの個体数はポアソン分布に従うと仮定した.リンク関数は
log を指定した.説明変数には,草地の平均草丈と水域までの距離を用いた.草地
の面積をオフセット項に指定し,面積の影響を除いた.
最も AIC が小さいモデルは,説明変数に草丈のみを含むもので,草丈のみでコ
ガネグモの個体数のおよそ 70 %を説明することができた(表 1).ただし,今回
の調査区では,草丈と水域からの距離に有意な相関が見られるため(ケンドールの
順位相関係数 τ = 0.312,p < 0.05),コガネグモの生息数の決定要因を探るには,
より多様な環境の草地での調査が必要である.
今回の調査においては,コガネグモの生息する草地の条件を特定することはで
きなかった.しかし,千葉県白井市にはコガネグモの他にチュウガタコガネグモ
Argiope boesenbergi Levi 1983,ナガコガネグモ A. bruennichi (Scopoli 1772),
コガタコガネグモ A. minuta Karsch 1879 の 3 種のコガネグモ属のクモが生息し
ている(加藤ら,印刷中).これらはすべて大型の造網性クモ類であり,日本各地
に広く分布し(新海ら 2006),昼夜を問わず網の中心にいることが多い.このた
め発見が容易であり,かつ成体であれば種の識別も比較的容易である.このためコ
ガネグモ属のクモ類の生息環境を明らかにすることにより,有用な指標種となるも
のと期待される.
30
謝 辞
調査にあたり,北総生きもの研究会の相馬唐代子氏には大変お世話になった.ま
た東京環境工科専門学校の加藤輝代子講師およびささがにの郷ビオトープ研究所
の八幡明彦氏にはコガネグモに関する貴重な情報をいただいた.ここにお礼申し上
げる.最後に,調査全般にわたり支えてくれた夫,相馬成光.協力してくれた娘,
朱里.どうもありがとう.
引用文献
千葉県環境財団 2006.千葉県レッドリスト:千葉県の保護上重要な野生生物 2006 年改訂版,
千葉県環境生活部自然保護課,千葉,36pp.
Foelix R.F. 1996. Biology of Spiders Second Edition. Oxford university press, New York,
330pp.
グーグル株式会社 2007. Google マップ BETA. http://maps.google.co.jp/maps
池田博明・新海 明・谷川明男 2003.クモの巣と網の不思議
多様な網とクモの面白い生活.
文葉社,東京,183pp.
加藤輝代子・仲條竜太・植松いのり 千葉県白井市のクモ類相.白井市自然環境基礎調査報告書.
(印刷中)
新海 明・安藤昭久・谷川明男 2006.県別クモ類分布図 ver.2006b.著者自刊 CD.
新海栄一 2006.ネイチャーガイド日本のクモ.文一総合出版,東京,336pp.
谷 謙二 2007.地理情報分析支援システム MANDARA バージョン 8.06.
http://www5c.biglobe.ne.jp/~mandara/
31
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
─────────────────────────────────DRAGLINES──
シロオビトリノフンダマシの卵のう
荘 司
康 治 郎
2007 年 9 月 7 日,東京都小金井市東町,野川沿いのオギ原にてシロオビトリノ
フンダマシの卵のうを見つけた(図 1).従来知られていた卵のうは淡褐色で下膨
れのヘラ形(新海・高野 1984)だが,今回見つかった卵のうは黄色で細身の紡錘
形である(図 2)
.これは谷川明男博士が南西諸島の与那国島で見つけたものと同
形であり,ヘラ形卵のうを作るものとは「別種の“可能性”もある」とのこと.過
去に記録のある「シロオビトリノフンダマシ」はどちらのタイプの卵のうを作るの
か,それは混在するのか,生態的相違があるのか等々,分類的生態的に再確認する
必要がある.因みにシロオビトリノフンダマシの卵のうは見つけにくい.トリノフ
ンダマシやオオトリノフンダマシは見つけやすい高さに複数個卵のうを作るが,シ
ロオビトリノフンダマシは低位置に一つだけ作るものと思われる.見つけるには
「母グモのいる場所の足元」を丹念に探す必要があるだろう(図 3).
お願い
シロオビトリノフンダマシの卵のうを見つけられた方は卵のう採集の上,詳細情
報を谷川明男博士までご連絡下さるようお願い申し上げます.
謝 辞
南西諸島のシロオビトリノフンダマシについてご教示いただいた谷川明男博士,
シロオビトリノフンダマシの卵のうについて情報提供していただいた福岡県の江
島義文氏,東京都の阿部汎孝氏に感謝申し上げます.
図 1.東京都小金井市にて発見した紡錘形の
図 2.卵のうは黄色で,形態は細身の紡錘形
シロオビトリノフンダマシの卵のう.
である.
32
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
──DRAGLINES─────────────────────────────────
図 3.紡錘形の卵のうとシロオビトリノフンダマシの発見場所の状況.シロオビトリノフンダマ
シの卵のうは低い位置に作られる可能性があるため,母グモのいる場所の足元を丹念に探す必要
があるだろう.
参考文献
新海栄一・高野伸二 1984.フィールド図鑑クモ.東海大学出版会,東京,204pp.
谷川明男 2007.シロオビトリノフンダマシの卵のう.東京クモゼミ報告 178 号.池田博明編
http://homepage3.nifty.com/~hispider/seminar/seminar178.txt
伊豆諸島・八丈島のクモ小記録
笹 岡 文 雄
筆者は 2008 年 8 月 4 日,短時間であるが八丈空港周辺にて調査採集を行い,い
くつかの所見を得たのでここに報告したい.
33
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
─────────────────────────────────DRAGLINES──
採集目録
トタテグモ科 Ctenizidae
キノボリトタテグモ
Ummidia fragaria 植物公園内住居のみ個体未確認
ジグモ科 Atypidae
ジグモ
Atypus karschi
植物公園付近石垣 1F
コガネグモ科 Araneidae
スズミグモ
Cyrtophora moluccensis
植物公園付近緑地 1F1M
エビグモ科 Philodromidae
キハダエビグモ
Philodromus spinitarsis
植物公園内
1y
以上 3 科 3 種.略号は,F:♀成体,M:♂成体,y:雌雄不明幼体.
考 察
キノボリトタテグモはすでに谷川(2005)による記録があり,今回はその際に
確認された八丈植物公園を再調査した.園内のカナリーヤシ Phoenix canariensis
1 本から廃巣が 3 個確認出来たのみで,個体は確認出来なかった.その内の 1 個は
扉が完全に残っており,比較的新しい物と推定された.少なくとも八丈植物公園内
には生息している可能性が高いと思われる.植物園内という環境の記録であるので,
人為的な分布の可能性もあり,さらに全島的な調査が必要であろう.
ジグモは八丈島初記録であるが,八丈ビジターセンターのホームページの「島の
生きもの」によると,分布が「島内全域」となっており,それが事実とするとかな
り以前より生息していた可能性が高い.したがって過去のクモ類調査は同種を見落
とし,今回まで確認がなされなかったと考えられる.
同種は植物公園隣接緑地において約 50 個体の集団があり,また園内でも広範囲
の生息が確認できた.しかしその他伊豆諸島においては三宅島(仲辻 1936,1942)
,
大島(笹岡 2007)の記録のみである.三宅島はその後 60 年以上記録がなく,ま
た大島においては少数しか個体を確認できていない.これらのこととその他の島嶼
の調査不足を勘案しても,伊豆諸島における八丈島の分布は非常に特異と思われる.
スズミグモは 2008 年に初めて記録され(仲條 2008)今回が 2 例目である.し
かしやはり同ホームページによると「ここ数年良く目にするようになってきていま
す.」とあり,こちらは 2008 年以前から島内に定着していたようである.
今回は植物公園内およびその周辺緑地で非常に多くの個体が確認できた.そこで
はスズミグモが大型造網性のクモの優占種であり,他にはチュウガタシロカネグモ
が散見される程度であった.
34
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
──DRAGLINES─────────────────────────────────
キハダエビグモは幼体であったが伊豆諸島初記録である.また八丈島においては
エビグモ科のクモ初記録になった.本土では普通種である同種が,伊豆諸島で稀産
種であるのか,さらに八丈島で他のエビグモ科のクモがほんとうに生息していない
のかは調査不足のため明確ではない.
また今回,ジョロウグモは確認できなかった.ジョロウグモは徳本(1999)が
1995,1997 年に島内で行った調査でも確認されていない.過去に植村(1965)
は「全島に極めて普通でおびただしくすんでいる.秋にはさぞ盛観を呈することで
あろう.」とし,当時は全島に分布していたことを報告している.
今回は徳本(1999)の調査より狭い地域であるので即断はできないが,島内の
状況は変わっていないと思われる.消滅したとは言い切れないが,少なくとも 13
年前から激減したままであることは間違いないのではないか.
おわりに
八丈島は伊豆諸島の中でも,クモ類の調査されている島の 1 つである.小野
(2001)の集計段階では伊豆諸島中,最も記録(70 種)が多い島であった(現在
は新島が最も多い(仲條・植松 2007)).しかし依然として稀産種と言い難い種が
確認されたことを考えると,その調査は現在に至っても十分ではないと言わざるを
得ない.したがって八丈島におけるクモ類のファウナは未だ明らかであるとはいえ
ない.
謝 辞
今回,八丈島を調査するにあたり,国立科学博物館動物研究部小野展嗣博士から,
貴重な資料のご提供をいただいた.ここに厚くお礼を申し上げる.
参考文献
八丈ビジターセンター."島の生きもの".八丈ビジターセンター八丈島自然情報.
http://www.hachijo-vc.com/creature/(参照 2008-10-28)
.
葛西重雄 1968.蜘蛛類目録.八丈島動植物総目録,158-162pp.東京都教育庁八丈出張所,東
京.
加藤正世 1940.八丈島に於ける採集品目録.昆蟲界,8: 690-730.
仲條竜太 2008.八丈島のクモ.Kishidaia,93: 58-59.
仲條竜太・植松いのり 2007.伊豆諸島新島のクモⅡ.Kishidaia,91: 42-43.
仲辻耕治(原文ママ) 1936.伊豆三宅島採集記.Acta Arachnologica,1: 67-72.
仲辻耕次 1942.伊豆七島産蜘蛛類に就て.農学輯報,1(4): 287-328.
35
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
─────────────────────────────────DRAGLINES──
小野展嗣 2001.伊豆諸島のクモ類.国立科学博物館専報,37: 261-277.
笹岡文雄 2007.伊豆大島のトタテグモおよびその他のクモ.Kishidaia,92: 66-70.
新海栄一 1969.東京都産真正蜘蛛類.東亜蜘蛛学会,大阪,65p.
谷川明男 2005.採集情報.遊絲,16: 16.
徳本 洋 1999.八丈島のジョロウグモ消滅か?.Kishidaia,76: 36-40.
植村利夫 1951.八丈島及び青ヶ島の蜘蛛類.Acta Arachnologica,12(3/4): 78-83.
植村利夫 1965.八丈島産の蜘蛛類に就いて.城南紀要,2: 17-26.
八木沼健夫 1957.伊豆七島のクモ.Atypus,12: 16.
八丈小島のクモ III
仲 條 竜 太
伊豆諸島の八丈小島(33°07’ N,139°41’ E)からは,これまで 4 科 5 種のクモ
が知られている(仲條 2007,2008).著者は 2008 年 8 月 19 日および 2008
年 10 月 10 日にこの島から採集されたクモを同定する機会に恵まれたため,ここ
に報告する.目録中,八丈小島新記録となる種は,学名の頭に*をつけた.最後に
貴重な標本を同定する機会を与えて下さった東邦大学大学院の深澤 悟氏に深くお
礼申し上げる.
採集地:東京都八丈支庁八丈町八丈小島
採集者:深澤 悟
チュウガタシロカネグモ
*Laucauge blanda (L. Koch 1878)
F,19-VIII-2008.
ミナミノシマゴミグモ
Cyclosa confusa Bös. & Str. 1906
F,19-VIII-2008/2F,19-VIII-2008.
*Neoscona subpullata (Bös. & Str. 1906)
F,19-VIII-2008.
引用文献
仲條竜太 2007.八丈小島のクモ.Kishidaia, 91: 43.
仲條竜太 2008.八丈小島のクモ II.Kishidaia, 93: 59.
36
ヘリジロオニグモ
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
──DRAGLINES─────────────────────────────────
文献調査による伊豆・小笠原諸島のトタテグモ類 追補
笹 岡 文 雄
筆者は Kishidaia No.94 にて伊豆・小笠原諸島のトタテグモ類(キシノウエト
タテグモ Latouchia typica,キノボリトタテグモ Ummidia fragaria)の分布につ
いて実施した文献調査の結果を発表した(笹岡 2008)
.しかし小笠原の文献につ
き見落としていたものがあった.また文献ではないが,伊豆諸島において新たにト
タテグモの分布が判明したので合わせて追加報告しておきたい.
伊豆諸島
伊豆諸島におけるキシノウエトタテグモの分布は大島のみ(笹岡 2007,2008)
であったが,本稿において三宅島と八丈島を産地として追加する.三宅島について
は東京大学総合研究博物館収蔵のクモ類標本の中から,谷川明男氏によって♂が確
認され,同HPにて公表された(東京大学総合研究博物館 2006)
.しかしラベル
に記載されている日付は“31/III '24”とあり,キシノウエトタテグモのオスの出
現期である 9~10 月とは大きく異なる.日付が採集日ではなく標本作成日である
としても若干の疑義がもたれる.またオスは出現期に住居を出て徘徊するため,荷
物等に付着したものが三宅島に運ばれ,採集された可能性も考えられる.したがっ
て同島にて,分布調査をする必要はあるが,今回の標本確認が記録であることに変
わりはない.
また,八丈島は八丈ビジターセンターの高須英之氏によって,2007 年 3 月 4 日
に植物公園内にて採集され個体の写真が撮影された(高須私信)
.筆者がその写真
を見たところ,キシノウエトタテグモのメス成体と思われた.その後の高須氏の再
調査により新たに個体が確認されたことから,キシノウエトタテグモが八丈島に分
布していることは確実であるといえる.
なお新島においてもトタテグモと思われる住居が確認された(東邦大学地理生態
学研究室 2008)
.住居の写真のみであるので,詳細は今後の調査を待たなければ
明確なことは断定出来ない.したがって今回はその事実のみ触れておくこととする.
小笠原諸島
新たに小笠原諸島のクモに関する 12 件の文献を調査したが,依然としてチチシ
マトタテグモ Pachylomerus mirandus が小笠原における唯一のトタテグモ類の
記録である.今回追加した文献のうち 2 件(Kishida 1928,岸田 1969)もチチ
シマトタテグモのものである.
37
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
─────────────────────────────────DRAGLINES──
謝 辞
本稿にて追加した小笠原諸島の文献は,国立科学博物館動物研究部の小野展嗣博
士がまとめ,2007 年 6 月 29 日進化多様性生物学研究会にて配布された資料から
ほとんど引用させていただいた.また八丈ビジターセンターの高須英之氏には,面
識もないままメールを差し上げたにもかかわらず大変丁寧なご対応いただいた.そ
して更にご多忙の中を生息地の再調査までしていただいき感謝に堪えない.ここに
お二方には,厚くお礼申し上げたい.
参考文献
東邦大学地理生態学研究室 2008.研究室グラフ「野外基礎実習(新島) 2008.8.9~13」
http://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/bio/geoeco/a-news/data/2008/08/13.html
(参照 2008-10-31)
.
Kishida K. 1928. Trapdoor spiders of Japan and their bearing on zoogeography.
Annotationes Zoologicae Japnonenses, 2: 385-387.
岸田久吉 1969.日本帝国産原始蜘蛛類に就いて.Kishidaia, 10: 3-6.
大野正男 1977.
“動物に関する調査”
.小笠原母島道路計画にともなう自然環境調査報告書.国
立公園協会編.国立公園協会(東京)
,218pp.
大野正男・矢野 亮・菅原十一 1977.
“動物”
.小笠原父島道路計画にともなう自然環境調査報
告書.国立公園協会編.国立公園協会(東京)
,43pp.
笹岡文雄 2007.伊豆大島のトタテグモおよびその他のクモ.Kishidaia, 92: 66-70.
笹岡文雄 2008.文献調査による伊豆・小笠原諸島のトタテグモ類.Kishidaia, 94: 46-50.
下村兼二 1933.小笠原島の動植物(アルス科学写真叢書)
.アルス(東京)
,81pp.
新海栄一 1977.東京都産真正蜘蛛類Ⅲ.Acta arachnologica, 27(special no.): 321-336.
東京大学総合研究博物館 2006.クモ類標本データベース
http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DDoubutu/invertebrate/arachnida/list1.html
(参照 2008-12-17)
.
八木沼健夫 1970a.分布資料.Atypus, 54: 27.
八木沼健夫 1970b.日本の真正蜘蛛類相.国立科学博物館研究報告,13: 639-701.
八木沼健夫 1977.日本産真正蜘蛛類目録.Acta arachnologica, 27(special no.): 367-406.
八木沼健夫 1979.小笠原のクモ.動物と自然,9(8): 33-36.
八木沼健夫・新海栄一 1975.分布資料.Atypus, 64: 26.
吉田 稔 1969.小笠原のクモについて.自然保護,82: 19.
追加文献の内 3 件(八木沼 1970b,1977,新海 1977)は各種目録等を集計した日本産クモ類
の総合目録であるが,特に伊豆,小笠原の分布が付記されているため,あえてリストに収録した.
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KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
東京蜘蛛談話会 2008 年度合宿報告
香川県高松市塩江(しおのえ)温泉と五色台周辺のクモ
新海
明・谷川 明男
2008 年度の東京蜘蛛談話会の合宿は,7 月 18 日から 7 月 20 日までの 2
泊 3 日で香川県高松市塩江温泉および高松市五色台周辺で 25 名の参加者を迎
えて行なわれた(図 1).四国地方での合宿は 1995 年の高知合宿以来であっ
た.香川県からのクモの採集目録の主なものは筆者らが知るかぎりでは小松敏
宏(1941),垂水有三(1972),八木沼健夫(1954,1955,1956)など 5
編にすぎない.日本のクモ類相を明らかにする上で是非とも調査をせねばなら
ない空白県のひとつであった.
今回は香川県高松市塩江温泉周辺の木田郡三木町堂ケ平,高松市西植田のド
ングリランド,高松市安原下の桜橋および高松市五色台根香寺周辺で観察採集
を実施した.おもな調査地点を図 2 に示す.なお,標本の同定では安藤昭久さ
ん,井原
庸さん,植松いのりさん,貞元己良さんにお世話になった.ここに
御礼申し上げる.
図 1.参加者一同
39
図 2.香川県高松市塩江温泉合宿の主な採集地.★印で示す.1.木田郡三木町堂ケ平(①,
②)
2.高松市西植田ドングリランド
3.高松市安原下桜橋
日
4.高松市五色台根香寺
程
7 月 18 日(金)はれ.17:00,香川県高松市塩江温泉にある宿舎「新樺川
観光ホテル」に集合.夕食後,塩江温泉から 10 分ほどのところにある国道 193
号線沿いの木田郡三木町堂ケ平(①)で夜間観察を実施した.トリノフンダマ
シ類やムツトゲイセキグモの幼体,オダカグモなどが採集観察できた.
7 月 19 日(土)はれ.関東地方などでは梅雨明けが宣言されたそうだが,
四国地方はすでに梅雨が明けてしばらく経っており日差しは朝から強烈であ
った.午前中は高松市西植田のドングリランドと呼ばれる県立自然公園周辺で
観察会.ヒシガタヒメグモやマメイタイセキグモなどを観察.午後は,高松市
安原下の桜橋周辺の渓流沿いの林内で観察会が行なわれた.ここではホウシグ
モやチビシロカネグモが観察できた.その後,多くの参加者は宿舎にもどり休
憩となったが,有志により三木町方面での観察会も実施された.
夜間観察は高松市に隣接する三木町堂ケ平(②奥山)の林道沿いで実施.トリ
ノフンダマシ類やトゲグモ,キヌアシナガグモなどが観察できた.
40
7 月 20 日(日)はれ.高松市五色台にある根香寺周辺で観察採集をした.
キノボリトタテグモやクロマルイソウロウグモなどが観察できた.その後,高
松市内にある栗林公園の裏山にてキシノウエトタテグモとクモタケの観察と
採集が有志によって行なわれた.午後 2 時ころ栗林公園の駐車場にて解散した.
参加者
安藤昭久,池田幸二,池田勇介,池田亮太,井原 庸,植松いのり,加藤輝
代子,貞元己良,佐藤幸子,荘司康次郎,新海 明,谷川明男,鶴崎展巨,中
島亜紀,中島和之,仲條竜太,中西亜耶,長崎緑子,新村 誠,張替智行,平
松毅久,船曳和代,本多佳子,三谷 進,八幡明彦(以上,25 名).
目
録
採集地の地名の略称および世界測地系にもとづく緯度経度は,堂:木田郡三
木町堂ケ平(①)[34°10’16.7”N,134°07’43.2”E],奥:木田郡三木町堂
ケ平(②)[34°10’31.1”N,134°07’55.6”E],ど:高松市西植田ドングリ
ランド[34°13’13.0”N,134°04’36.3”E],桜:高松市安原下桜橋[34°10’49.9”N,
134°02’32.5”E],根:高松市五色台根香寺[34°20’40.2”N,133°57’41.4”E],
宿:宿舎周辺[34°10’07.4”N,134°05’23.3”E]である.成長段階は,F:雌
成体,M:雄成体,y:幼体,x:性別成幼不明である.
Atypidae ジグモ科
Atypus karschi
ジグモ
宿y
Ctenizidae トタテグモ科
Conothele fragaria
キノボリトタテグモ
根y
Latouchia typica
キシノウエトタテグモ
栗林公園 Fe
Pholcidae ユウレイグモ科
Pholcus crypticolens
ユウレイグモ
奥 F,桜 Fy,ど FMye,
根 FM, 宿 F
Segestriidae エンマグモ科
Ariadna lateralis
ミヤグモ
ど FM
Oonopidae タマゴグモ科
Orchestina flava
キハネグモ
堂F
Orchestina sanguinea
アカハネグモ
桜 F,堂 F,ど F
Mimetidae センショウグモ科
Ero japonica
センショウグモ
堂 F,ど F,根 FMy
41
Mimetus japonicus
ハラビロセンショウグモ 奥 FM,根 y
Mimetus testaceus
オオセンショウグモ
堂F
Oecobiidae チリグモ科
ヒラタグモ
Uroctea compactilis
堂 Fe,宿 y
Uloboridae ウズグモ科
Hyptiotes affinis
オウギグモ
奥 y,桜 y,ど y,宿 y
Miagrammopes orientalis
マネキグモ
堂 F,ど F
Octonoba sybotides
カタハリウズグモ
桜 F,宿 y
Octonoba varians
ウズグモ
奥 F, 桜 M, 堂 y,
ど FM, 根 F, 宿 y
Theridiidae ヒメグモ科
Achaearanea angulithorax
ツリガネヒメグモ
堂F
Achaearanea asiatica
キヒメグモ
桜 M,堂 F
Achaearanea culicivola
カグヤヒメグモ
奥 F,堂 M,ど M
Achaearanea ferrumequina ヒザブトヒメグモ
Achaearanea japonica
ニホンヒメグモ
奥 Fe,宿 F
奥 y, 堂 y, ど FMy,
根 FM, 宿 Fy
Achaearanea kompirensis
コンピラヒメグモ
桜 Fye,堂 F,ど F
Achaearanea ryukyu
リュウキュウヒメグモ
根 FM
Achaearanea tabulata
オオツリガネヒメグモ
宿F
Allothymoites kumadai
ハラビロササヒメグモ
堂F
Argyrodes bonadea
シロカネイソウロウグモ ど F,宿 F
Argyrodes cylindratus
トビジロイソウロウグモ 奥 F,桜 FM,堂 FMy,
ど FMe, 根 F, 宿 F
Argyrodes kumadai
チリイソウロウグモ
奥 FM,桜 FM,堂 FM,
ど FM, 根 M, 宿 y
Ariamnes cylindrogaster
オナガグモ
堂 y,ど y,宿 y
Chrysso albipes
ギボシヒメグモ
奥 Fe, 桜 y, 堂 Fy,
ど Fy, 宿 y
Chrysso argyrodiformis
オダカグモ
奥 FM, 堂 FMy,
ど FMy, 根 F, 宿 Fy
Chrysso bimaculata
フタホシヒメグモ
桜 y,堂 y,根 F
Chrysso foliata
ホシミドリヒメグモ
堂 F,根 y
Chrysso vesiculosa
ヒシガタヒメグモ
どF
42
Coleosoma blandum
サヤヒメグモ
堂F
Dipoena punctisparsa
シモフリミジングモ
桜y
Enoplognatha abrupta
カレハヒメグモ
根 F,宿 y
Episinus affinis
ヒシガタグモ
堂y
Neospintharus fur
フタオイソウロウグモ
桜 Fy
Neospintharus nipponicus
ツノナガイソウロウグモ 奥 Fe,ど Fe,宿 F
Paidiscura subpallens
ハイイロヒメグモ
どF
Parasteatoda tepidariorum
オオヒメグモ
堂 Fe, ど Fe,
根 y, 宿 FM
Phycosoma flavomarginatum キベリミジングモ
奥 F,桜 M,宿 M
Phycosoma japonicum
ヤマトミジングモ
奥F
Phycosoma mustelinum
カニミジングモ
奥 Fy, 堂 Fy,
ど FMy
Rhomphaea labiata
ヒゲナガヤリグモ
堂 F,宿 M
Rhomphaea sagana
ヤリグモ
奥 F,堂 Fy
Spheropistha melanosoma
クロマルイソウロウグモ 桜 Fe,堂 Fe,ど F,
根 Fy, 宿 Fe
Takayus chikunii
バラギヒメグモ
堂 F,ど F,宿 F
Yaginumena castrata
ボカシミジングモ
堂F
Theridiosomatidae カラカラグモ科
ヤマジグモ
Ogulnius pullus
奥 Fe,桜 Fe,堂 Fe,
ど F, 根 F, 宿 F
カラカラグモ
Theridiosoma epeiroides
奥 Fe,桜 Fe,堂 Fe
Anapidae ヨリメグモ科
Comaroma maculosa
ヨロイヒメグモ
桜 F,ど FM,根 FM
Conculus lyugadinus
ヨリメグモ
桜 F,堂 FMy
Pimoidae ピモサラグモ科
アシヨレグモ
Weintrauboa contortipes
宿F
Linyphiidae サラグモ科
Arcuphantes iharai
アキヤミサラグモ
桜 F,根 F
Asthenargus matsudae
ヒメウスイロサラグモ
桜F
Bathyphantes tateyamaensis タテヤマテナガグモ
堂M
Hylyphantes graminicola
クロナンキングモ
ど F,宿 M
Neriene fusca
クスミサラグモ
桜 y,宿 y
Neriene limbatinella
フタスジサラグモ
宿y
43
アシナガサラグモ
Neriene longipedella
奥 y, 桜 y, ど y,
根 y, 宿 y
Neriene oidedicata
ヘリジロサラグモ
桜 y,ど F,宿 F
Tmeticus bipunctis
ヌカグモ
宿F
Tetragnathidae アシナガグモ科
Leucauge blanda
チュウガタシロカネグモ ど y
Leucauge crucinota
チビシロカネグモ
桜F
Leucauge magnifica
オオシロカネグモ
堂 FM, ど FM, 根 F,
宿 FM
Leucauge subblanda
コシロカネグモ
ど M, 宿 F
Leucauge subgemmea
キララシロカネグモ
奥 F, 桜 F, 堂 F,
ど F, 宿 M
Menosira ornata
キンヨウグモ
桜 y,堂 y,ど y
Meta nigridorsalis
チビクロドヨウグモ
桜 F,ど y
Metleucauge kompirensis
タニマノドヨウグモ
堂F
Metleucauge yunohamensis メガネドヨウグモ
堂y
Tetragnatha lauta
キヌアシナガグモ
奥y
Tetragnatha maxillosa
ヤサガタアシナガグモ
堂M
Tetragnatha praedonia
アシナガグモ
奥 y,桜 y,堂 FMy,宿 y
Tetragnatha squamata
ウロコアシナガグモ
奥 F, 堂 y, ど FM,
宿 Fy
Nephilidae ジョロウグモ科
ジョロウグモ
Nephila clavata
奥 y, 桜 y, 堂 y,
ど y, 根 y
Araneidae コガネグモ科
Acusilas coccineus
ハツリグモ
奥 y,桜 y,ど F,宿 F
Araneus ejusmodi
ヌサオニグモ
奥 F,堂 FM,宿 F
Araneus mitificus
ビジョオニグモ
堂y
Araneus pentagrammicus
アオオニグモ
ど FMy
Araneus semilunaris
マルヅメオニグモ
堂F
Araneus ventricosus
オニグモ
奥 F,宿 F
Araneus viridiventris
ハラビロミドリオニグモ 奥 y,堂 y,宿 y
Araniella yaginumai
ムツボシオニグモ
堂y
Argiope bruennichi
ナガコガネグモ
堂 y,ど y
44
コガタコガネグモ
Argiope minuta
奥 y, 桜 y, 堂 y,
ど Fy, 根 y, 宿 y
ヤマトカナエグモ
Chorizopes nipponicus
堂 e, 堂 F, ど e,
根 FM
Cyclosa alba
シロゴミグモ
ど F,根 F
Cyclosa argenteoalba
ギンメッキゴミグモ
桜 y, 堂 M, ど F,
根 y, 宿 Fy
ギンナガゴミグモ
Cyclosa ginnaga
奥 FMy, 桜 FMy,
ど FMy, 根 FMy,
宿 Fy
Cyclosa japonica
ヤマトゴミグモ
桜 y,ど y,根 Fe
Cyclosa octotuberculata
ゴミグモ
奥 F,ど F,宿 F
Cyclosa sedeculata
ヨツデゴミグモ
根 Fe
Cyrtarachne bufo
トリノフンダマシ
桜 y,ど y
Cyrtarachne inaequalis
オオトリノフンダマシ
奥 My, 桜 y,
堂 Fy,ど My,宿 y
Cyrtarachne nagasakiensis シロオビトリノフンダマシ 奥 y,堂 F,ど Fy
Cyrtarachne yunoharuensis アカイロトリノフンダマシ 奥 FMy, 桜 y,
堂 FMy,ど Fy,宿 F
Eriophora sachalinensis
カラフトオニグモ
桜y
Eriovixia pseudocentrodes
トガリオニグモ
奥 FM, 桜 y,
堂 FMy, ど FMy,
宿 Fy
Gasteracantha kuhli
トゲグモ
奥F
Mangora herbeoides
ゴマジロオニグモ
宿y
Neoscona melloteei
ワキグロサツマノミダマシ 奥 y,桜 y,堂 y,ど y
Neoscona nautica
イエオニグモ
宿 FM
Neoscona punctigera
コゲチャオニグモ
奥 y,堂 y,宿 y
Neoscona scylla
ヤマシロオニグモ
奥 F,堂 M
Neoscona scylloides
サツマノミダマシ
堂 FM
Ordgarius hobsoni
マメイタイセキグモ
どF
Ordgarius sexspinosus
ムツトゲイセキグモ
堂y
Poltys illepidus
ゲホウグモ
桜y
Yaginumia sia
ズグロオニグモ
宿y
Lycosidae コモリグモ科
45
Pardosa pseudoannulata キクヅキコモリグモ
宿y
Pisauridae キシダグモ科
Dolomedes saganus
スジブトハシリグモ
堂y
Dolomedes raptor
アオグロハシリグモ
奥 F,桜 y,堂 y,ど FMy
Dolomedes sulfureus
イオウイロハシリグモ
奥 My, 桜 Fy, 堂 Fy,
ど Fy, 宿 y
Oxyopidae ササグモ科
ササグモ
Oxyopes sertatus
堂 FM,ど F
Agelenidae タナグモ科
Agelena silvatica
クサグモ
堂 y,ど y,宿 y
Allagelena opulenta
コクサグモ
桜 y, 堂 y, ど y,
根 y, 宿 y
Dictynidae ハグモ科
カレハグモ
Lathys annulata
宿F
Titanoecidae ヤマトガケジグモ科
ヤマトガケジグモ
Nurscia albofasciata
桜M
Miturgidae ツチフクログモ科
Cheiracanthium unicum ヤサコマチグモ
宿F
Liocranidae ウエムラグモ科
イタチグモ
Itatsina praticola
堂 F,根 F
Clubionidae フクログモ科
Clubiona vigil
ムナアカフクログモ
堂F
Clubiona yaginumai
ヤギヌマフクログモ
桜 F,堂 y
Clubiona zilla
ウコンフクログモ
奥M
Corinnidae ネコグモ科
Otacilia komurai
コムラウラシマグモ
どF
Phrurolithus nipponicus
ウラシマグモ
根F
Phrurolithus pennatus
ヤバネウラシマグモ
ど FM,根 F
Zodariidae ホウシグモ科
Mallinella hoosi
ホウシグモ
桜y
Gnaphosidae ワシグモ科
Sanitubius anatolicus
ナミトンビグモ
宿M
Sparassidae アシダカグモ科
Heteropoda venatoria
46
アシダカグモ
堂 M,根 M
カマスグモ
Thelcticopis severa
桜y
Philodromidae エビグモ科
Philodromus subaureolus
アサヒエビグモ
どF
Tibellus tenellus
シャコグモ
堂 F,根 F
Thomisidae カニグモ科
Bassaniana decorata
キハダカニグモ
宿 Fy
Diaea subdola
コハナグモ
桜 F, 堂 FM,
ど FM,根 M
Ebelingia kumadai (Ono 1985) クマダハナグモ
どy
Ebrechtella tricuspidata
ハナグモ
奥 F,ど F
Oxytate striatipes
ワカバグモ
奥 y,堂 y
Thomisus labefactus
アズチグモ
ど FMy
Tmarus piger
トラフカニグモ
奥 F,堂 y
Tmarus rimosus
セマルトラフカニグモ
桜 F,堂 FM,ど F,
根 F, 宿 M
ヤミイロカニグモ
Xysticus croceus
奥 F,堂 F
Salticidae ハエトリグモ科
Asianellus festivus
ヤマジハエトリ
どF
Evarcha albaria
マミジロハエトリ
奥 Fe,桜 FM,
堂 My,ど FMy,
根M
Harmochirus insulanus
ウデブトハエトリ
桜 M,ど FM
Hasarius adansoni
アダンソンハエトリ
宿y
Laufeia aenea
エキスハエトリ
桜 M,宿 FM
Marpissa pulla
ヨダンハエトリ
桜 FM
Menemerus fulvus
シラヒゲハエトリ
根y
Myrmarachne inermichelis
ヤサアリグモ
桜 FM,ど Fe,根 y
Pancorius crassipes
アシブトハエトリ
どy
Phintella abnormis
チャイロアサヒハエトリ 桜 M,ど F
Phintella bifurcilinea
キアシハエトリ
奥 F,桜 FM,堂 F
Plexippoides annulipedis
マダラスジハエトリ
どF
Plexippoides doenitzi
デーニッツハエトリ
堂 x,ど Fye,根 Fy
Plexippus paykulli
チャスジハエトリ
どF
Rhene albigera
ヒメカラスハエトリ
桜 FMy, 堂 FM,
ど FM, 根 FMy
47
Rhene atrata
カラスハエトリ
ど FM
Sibianor pullus
キレワハエトリ
桜F
Siler cupreus
アオオビハエトリ
ど Fy
Sitticus avocator
ヒトリコゲチャハエトリ
奥F
Sitticus penicillatus
シラホシコゲチャハエトリ 桜 M
Synagelides annae
オオクマアメイロハエトリ 桜 F,根 F,宿 F
Yaginumanis sexdentatus
ムツバハエトリ
奥 y,堂 M,根 y
合宿当日,三谷進氏がそれまでに香川県内で採集したクモ類の標本を拝見す
る機会があった.その中で特筆に値するものを以下に掲げておく.
Ordgarius hobsoni マメイタイセキグモ
1F,2007 年 6 月 27 日,高松市紫雲山.
Moneta caudifer
ハラナガヒシガタグモ
1F,2008 年 7 月 13 日,仲多度郡琴平町琴平山.
Meta reticuloides
ヤマジドヨウグモ
1y,2008 年 6 月 15 日,仲多度郡まんのう町久保谷.
Chrysso scintillans コガネヒメグモ
1M,2008 年 6 月 15 日,仲多度郡まんのう町久保谷.
引用文献
小松敏宏 1941. 香川縣採集蜘蛛目録.Acta Arachnologica, 6: 43-45.
垂水有三 1972. 香川県のクモ(1).Atypus, 58: 36-42.
八木沼健夫 1955. 小豆島のクモ.Nature Study 臨時増刊.pp.19-22.
八木沼健夫 1956. 小豆島のクモ(2).Nature Study 臨時増刊.pp.18-22.
八木沼健夫・木村武比古・大志茂善平・木村重仁 1954. 小豆島のクモ.Atypus, 6: 8.
48
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
伊豆諸島三宅島で採集したクモ
仲條 竜太・柊
雅実・中西 亜耶
Ryuta NAKAJO, Masami HIRAGI, Aya NAKANISHI. Spiders of
Miyake Island, Izu Islands, Japan
伊豆諸島の三宅島(34°05’ N,139°31’ E)は,東京の西南西約 180km に位置
する面積約 55.4 km2 の火山島である.活発な火山島として知られ,2000 年 7 月
には大規模な噴火を起こしている.三宅島からはこれまでに 75 種のクモが記録さ
れている(山本 2002,新海ら 2008)が,これらはすべて 2000 年 7 月の噴火以
前のものである.噴火の影響の強い地域では,造網性クモ類の著しい個体数の減少
が観察されており(長谷川・阿部 2006),噴火によるクモ類相への影響が懸念さ
れる.
著者らは 2008 年 9 月 10 日および 10 月 10 日から 12 日に三宅島にてクモ類を
観察,採集する機会に恵まれた.9 月は,三宅島東部の阿古地区から北西部の神着
地区にかけての 7 ヶ所(火戸寄神社,二島地区,御祭神社,海岸保安林,姉川神社,
土佐地区雄山登山道入口,椎取神
社)でクモ類の観察,採集を行い,
国立公園の特別保護区である南
部の大路池周辺では観察のみを
行った.10 月は,9 月の調査地
点に,新たに 2 ヶ所(砂防ダム周
辺,三宅高校うら)を加えてクモ
類の採集,観察を行った(図).
クモ類の採集は見つけ採り法に
よって行った.採集したクモ類は
直ちに 80%エタノール液浸標本
とし,研究室に持ち帰った後,実
図.三宅島における調査地点.三宅島は現在も火山
体顕微鏡を用いて種の同定を行
ガスが発生しているため,立入禁止区域のほか,危
った.このうち,現在までに同定
険区域,高濃度地区内へは必要最低限の行為を除き
の完了したクモ類をここに報告
立ち入ることができない.
する.これに加えて,著者らは東
49
邦大学大学院理学研究科の深澤悟氏および水澤玲子氏によって三宅島から採集さ
れたクモ類を同定する機会に恵まれたため,ここにその同定結果を併せて報告する.
目録中,M は雄の成体を,F は雌の成体を示す.また三宅島新記録となる種は学名
の頭に*をつけた.本研究により三宅島から新たに伊豆諸島新記録となる 1 科 2 種
を含む 4 科 9 種のクモが記録され,現在までに知られるクモ類は 25 科 82 種とな
った.最後に,三宅島での調査の機会を与えてくださった東邦大学の長谷川雅美教
授,標本の同定にご協力頂いた東京大学大学院の谷川明男博士,論文を紹介してく
ださった日本野鳥の会の江崎逸郎レンジャー,貴重な標本を与えて下さった東邦大
学大学院理学研究科の深澤悟,水澤玲子両氏に深くお礼申し上げる.
目 録
Ero japonica Bösenberg & Strand 1906
センショウグモ
M,御祭神社,9-X-2008,中西亜耶採集.
*Achaearanea japonica (Bös. & Str. 1906)
ニホンヒメグモ
2F,火戸寄神社,10-IX-2008,仲條竜太採集/F,御祭神社,10-IX-2008,
仲條竜太採集/F,椎取神社,10-IX-2008,仲條竜太採集/F,姉川神社,
10-X-2008,中西亜耶採集.火戸寄神社,椎取神社で優占していた.
Argyrodes bonadea (Karsch 1881)
シロカネイソウロウグモ
F,二島地区,10-IX-2008,仲條竜太採集/F,火戸寄神社,10-IX-2008,
仲條竜太採集
*Argyrodes kumadai Chida & Tanikawa 1999
チリイソウロウグモ
F,火戸寄神社,10-IX-2008,仲條竜太採集.ニホンヒメグモの網から採集し
た.
Argyrodes miniaceus (Doleschall 1867)
アカイソウロウグモ
M,火戸寄神社,10-IX-2008,仲條竜太採集.ニホンヒメグモの網から採集
した.
*Chrysso albipes (S.Saito 1935)
ギボシヒメグモ
F,土佐地区雄山登山道入口,10-IX-2008,仲條竜太採集.
伊豆諸島新記録.
Dipoena punctisparsa Yaginuma 1967
シモフリミジングモ
F,御祭神社,9-X-2008,中西亜耶採集.
Episinus affinis Bösenberg & Strand 1906
ヒシガタグモ
F,御祭神社,9-X-2008,柊雅実採集.
Episinus nubilus Yaginuma 1960
ムラクモヒシガタグモ
F,姉川神社,10-X-2008,中西亜耶採集.
Keijia sterninotata (Bösenberg & Strand 1906) ムナボシヒメグモ
F,御祭神社,9-X-2008,柊雅実採集.
50
*Lasaeloa okinawana (Yoshida & Ono 2000)
オキナワミジングモ
M,御祭神社,9-X-2008,中西亜耶採集.
伊豆諸島新記録.
Parasteatoda tepidariorum (C. L. Koch 1841)
オオヒメグモ
2F,火戸寄神社,10-IX-2008,仲條竜太採集/2F,御祭神社,10-IX-2008,
仲條竜太採集.
*Rhomphaea labiata (Zhu & Song 1991)
ヒゲナガヤリグモ
F,海岸保安林,10-IX-2008,仲條竜太採集.
Steatoda cingulata (Thorell 1890)
ハンゲツオスナキグモ
F,御祭神社,9-X-2008,柊雅実採集/F,御祭神社,9-X-2008,中西亜耶
採集.
Neriene oidedicata Helsdingen 1969
ヘリジロサラグモ
FM,火戸寄神社,10-IX-2008,仲條竜太採集.
Leucauge blanda (L. Koch 1878)
チュウガタシロカネグモ
F,22-V-2008,深澤悟採集/2F,二島地区,10-IX-2008,仲條竜太採集/
FM,火戸寄神社,10-IX-2008,仲條竜太採集/F,海岸保安林,10-IX-2008,
仲條竜太採集.
Nephila clavata L. Koch 1878
ジョロウグモ
FM,御祭神社,10-IX-2008,仲條竜太採集.今回の調査では,御祭神社と大
路池(9 月,10 月)でのみ確認した.
Argiope bruennichi (Scopoli 1772)
ナガコガネグモ
F,火戸寄神社,10-IX-2008,仲條竜太採集.
Argiope minuta Karsch 1879
コガタコガネグモ
F,二島地区,10-IX-2008,仲條竜太採集.
Cyclosa confusa Bös. & Str. 1906
ミナミノシマゴミグモ
F,22-V-2008,深澤悟採集/4FM,二島地区,10-IX-2008,仲條竜太採集
/2F,火戸寄神社,10-IX-2008,仲條竜太採集/F,御祭神社,10-IX-2008,
仲條竜太採集/F,椎取神社,10-IX-2008,仲條竜太採集.
*Cyclosa vallata Keyserling 1886
マルゴミグモ
F,二島地区,10-IX-2008,仲條竜太採集.
*Neoscona punctigera (Doleschall 1857)
コゲチャオニグモ
F,二島地区,10-IX-2008,仲條竜太採集.
Neoscona subpullata (Bösenberg & Strand 1906) ヘリジロオニグモ
M,御祭神社,9-X-2008,柊雅実採集.
Pardosa astrigera L. Koch 1878
ウヅキコモリグモ
M,22-V-2008,深澤悟採集/F,砂防ダム周辺,9-X-2008,中西亜耶採集.
*Allagelena opulenta (L. Koch 1878)
コクサグモ
51
F,海岸保安林,10-IX-2008,仲條竜太採集.
カチドキナミハグモ
Cybaeus nipponicus (Uyemura 1938)
M,海岸保安林,10-X-2008,中西亜耶採集.
Ebrechtella tricuspidata (Fabricius 1775)
ハナグモ
FM,22-V-2008,深澤悟採集/F,23-V-2008,深澤悟採集.
*Thomisus labefactus Karsch 1881
アズチグモ
F,土佐地区雄山登山道入口,10-IX-2008,仲條竜太採集/M,10-IX-2008,
水澤玲子採集.
Plexippus paykulli (Audouin 1826)
チャスジハエトリ
M,23-V-2008,深澤悟採集.
引用文献
新海明・安藤昭久・谷川明男
長谷川雅美・阿部晴恵
2008.県別クモ類分布図
Ver.2008.著者自刊 CD.
2006.三宅島の噴火が島嶼生態系に及ぼした影響と回復過程―生物間
相互作用からみた三宅島の生態系の一側面―.森林科学,46:24-27.
山本
裕
2002.三宅島における蜘蛛の観察記録.Miyakensis(三宅島ふれあいセンター研究
報告),8:7-8.
52
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
伊豆諸島御蔵島で採集したクモ
仲條 竜太・中西 亜耶・柊 雅実
Ryuta NAKAJO, Aya NAKANISHI, Masami HIRAGI. Spiders of the
Mikura Island, Izu Islands, Japan
伊豆諸島の御蔵島(34°05’ N,139°31’ E)は,東京の南約 200 km に位置する
面積約 20.6 km2 の火山島である.火口噴出物中に含まれる炭化物の放射性同位体
分析から,最も新しいマグマ噴火の発生年代は 5300 年から 5500 年前と考えられ
ており(杉原・嶋田 1999),それ以来大きな噴火は発生していない(貝塚ら 2000).
海岸線のすべては 100 m から 200 m におよぶ海食崖が発達し(濱田 2001),港
の整備は遅れ,現在も荒天時には連絡船が欠航となることが多い.また年間 5000
mm に達する降水によって流水が維持されている(濱田 2001).
御蔵島には,日本最大規模の広がりを持つスダジイ林をはじめとし,多様な植生
が殆ど原生状態で残存している(御蔵島自然研究グループ 1996)ため,御蔵島の
クモ類相の解明は,伊豆諸島の原生的なクモ類相を考える上で欠かすことのできな
い作業である.しかし著者らの知る限り,これまでに発表された御蔵島産のクモ類
は,K. Sohma 氏による 1969 年 6 月 21 日から 25 日および同年 10 月 22 日の採
集(大河内 1969),小野展嗣博士による 1970 年 7 月 9 日から 16 日の採集(新
海 1977,Ono 1988,Okuma 1994,
小野 2001)による 17 科 42 種の記
録のみであり,十分な調査がなされて
いるとは言いがたい.
著者らは 2008 年 9 月 7 日から 10
日にかけて,御蔵島の東京電力御蔵島
発電所からボロ沢橋にかけての都道,
村道および集落(図)においてクモ類
の採集を行ったため,ここに現在まで
に同定の完了したクモ類を報告する.
クモ類は見つけ採り法によって採集
し,採集したクモ類は成長段階,雌雄
図.御蔵島における調査地(図中灰色部).
を確認した後,80%エタノール液浸標
53
本とした.標本は研究室に持ち帰り,実体顕微鏡を用いて種の同定を行った.目録
中 M は雄の成体を,F は雌の成体を示す.また,御蔵島新記録となる種は学名の
頭に*をつけた.本研究により御蔵島から新たに 9 科 18 種のクモが記録され,現
在までに知られるクモ類は 19 科 61 種となった.最後に,御蔵島滞在中にお世話
になった御蔵島役場および御蔵島観光協会の方々,御蔵島での調査の機会を与えて
くださった東邦大学の長谷川雅美教授,標本の同定にご協力頂いた東京大学大学院
の谷川明男博士に深くお礼申し上げる.なお本調査は御蔵島村役場の許可を得て実
施した.
目 録
Calommata signata Karsch 1879
ワスレナグモ
F,7 日,中西亜耶採集.村営西川住宅付近の斜面にて 2 巣を確認した.
Ero japonica Bösenberg & Strand 1906
センショウグモ
F,7 日,中西亜耶採集.
Uroctea compactilis L. Koch 1878
ヒラタグモ
F,8 日,仲條竜太採集.御蔵島バンガローにて多数生息を確認した.
*Argyrodes bonadea (Karsch 1881)
シロカネイソウロウグモ
F,7 日,中西亜耶採集.
Parasteatoda tepidariorum (C. L. Koch 1841)
オオヒメグモ
F,7 日,柊雅実採集.
*Phycosoma mustelinum (Simon 1889)
カニミジングモ
F,7 日,中西亜耶採集.
*Rhomphaea labiata (Zhu & Song 1991)
ヒゲナガヤリグモ
F,7 日,柊雅実採集.
Steatoda cingulata (Thorell 1890)
ハンゲツオスナキグモ
F,7 日,中西亜耶採集.
*Nematogmus sanguinolentus (Walckenaer 1842)
チビアカサラグモ
FM,7 日,中西亜耶採集.
Neriene oidedicata Helsdingen 1969
ヘリジロサラグモ
FM,7 日,仲條竜太採集.
Leucauge blanda (L. Koch 1878)
チュウガタシロカネグモ
F,7 日,柊雅実採集.島内に多数生息していた.
*Leucauge magnifica Yaginuma 1954
オオシロカネグモ
F,7 日,仲條竜太採集.
*Leucauge subblanda Bösenberg & Strand 1906
コシロカネグモ
F,7 日,中西亜耶採集.
*Meta reticuloides Yaginuma 1958
54
ヤマジドヨウグモ
M,7 日,仲條竜太採集/F,8 日,仲條竜太採集.
*Tetragnatha squamata Karsch 1879
ウロコアシナガグモ
M,9 日,中西亜耶採集.
*Nephila clavata L. Koch 1878
ジョロウグモ
FM,7 日,柊雅実採集.島内に多数生息していた.
*Araneus ventricosus (L. Koch 1878)
オニグモ
F,7 日,仲條竜太採集.鳥の尾付近にて,1 個体のみ確認した.
*Argiope minuta Karsch 1879
コガタコガネグモ
F,7 日,柊雅実採集.
Cyclosa confusa Bösenberg & Strand 1906
ミナミノシマゴミグモ
FM,7 日,仲條竜太採集.
Neoscona subpullata (Bösenberg & Strand 1906)
ヘリジロオニグモ
F,7 日,柊雅実採集/M,7 日,中西亜耶採集.
*Poltys illepidus C. L. Koch 1843
ゲホウグモ
F,8 日,仲條竜太採集.新生橋の欄干から採集した.
Pirata procurvus (Bösenberg & Strand 1906)
チビコモリグモ
F,7 日,中西亜耶採集.
*Allagelena opulenta (L. Koch 1878)
コクサグモ
F,7 日,仲條竜太採集.
*Coelotes kitazawai Yaginuma 1972
アズマヤチグモ
F,7 日,中西亜耶採集/M,8 日,仲條竜太採集.
*Tegecoelotes corasides (Bösenberg & Strand 1906)
ヤマヤチグモ
F,8 日,仲條竜太採集.
*Orthobula crucifera Bösenberg & Strand 1906
オトヒメグモ
M,7 日,中西亜耶採集.
Diaea subdola O. P.-Cambridge 1885
コハナグモ
M,7 日,中西亜耶採集.アシタバ Angelica keiskei の花上にて多くの個体
を観察した.
Thomisus labefactus Karsch 1881
アズチグモ
M,7 日,中西亜耶採集/F,7 日,中西亜耶採集.コハナグモと同様.
*Harmochirus insulanus (Kishida 1914)
ウデブトハエトリ
M,7 日,中西亜耶採集.
*Plexippus setipes Karsch 1879
ミスジハエトリ
F,7 日,柊雅実採集.
Rhene atrata (Karsch 1881)
カラスハエトリ
M,7 日,中西亜耶採集.
Siler cupreus Simon 1888
アオオビハエトリ
55
F,7 日,柊雅実採集.
引用文献
濱田浩美 2001.御蔵島の水文学的特性に関する研究.千葉大学教育学部研究紀要
III 自然科
学編,49: 11-18.
貝塚爽平・小池一之・遠藤邦彦・山崎晴雄・鈴木毅彦 2000.日本の地形 4 関東・伊豆小笠原.
東京大学出版会,東京,349pp.
御蔵島自然研究グループ 1996.御蔵島原生自然植生域の生態学的研究.第 5 期プロ・ナトゥー
ラ・ファンド助成成果報告書:17-27.
Ono H. 1988. A revisional stydy of the spider family Thomisidae (Arachnida, Araneae)
of Japan. National Science Museum, Tokyo, 252pp.
小野展嗣 2001.伊豆諸島のクモ類.国立科学博物館専報,37: 261-277.
大河内哲二 1969.各地のクモの同定記録.Kishidaia,9: 55-58.
Okuma C. 1994. Spiders of the genera Episinus and Moneta from Japan and Taiwan,
with descriptions of two new species of Episinus (Araneae: Theridiidae). Acta
Arachnologica, 43: 5-25.
新海栄一 1977.東京都産真正蜘蛛類 III.Acta Arachnologica, 27: 321-336.
杉原重夫・嶋田 繁 1999.伊豆諸島,御蔵島火山における最新の噴火活動について.日本火山
学会講演予稿集:13.
56
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
文献による福岡県産クモ類目録
馬場 友希・新海 明・谷川 明男
福岡県から報告されたクモ類の記録は,筆者らが知るかぎりでは 80 編である.
ここでは,これらの記録を集めて福岡県産のクモ類目録を作成した.この結果,福
岡県産クモ類は 42 科 328 種となった.読者の中には,ここで報告したリストに載
っていないクモを,福岡県への採集旅行の際に見たという方もおられると思う.し
かし,この目録はあくまですでに発表された文献に基づいてまとめたものである.
もし,発表済みであるにもかかわらず,ここに掲載されていないクモの種類があれ
ば,文献情報ともども著者らにまでご連絡いただければ幸いである.
目録の作成にあたっては,2008 年 7 月 31 日までに発表された福岡県での採集
記録や観察記録などのクモ類のデータを収集した.ただし,福岡県産クモ類の種名
のリストアップを目的としたので,同一種について扱っている文献を網羅はしてい
ない.出典のもとになった文献は種名のあとに番号で示した.この番号は引用文献
のものと一致している.引用した文献中で種名が特定できないもの,たとえば××
グモの一種,××sp.,××グモ?などとされているものについては,すべて目録
から除外した.科名・属名・種名・和名ならびに配列は,すべて谷川(2008)に
よった.
目 録
Liphistiidae ハラフシグモ科
Heptathela kimurai Kishida 1920
キムラグモ
54
Atypidae ジグモ科
Atypus karschi Dönitz 1887
ジグモ
52, 68
Calommata signata Karsch 1879
ワスレナグモ
58, 61
Ctenizidae トタテグモ科
Conothele fragaria (Dönitz 1887)
キノボリトタテグモ
52, 69, 71
57
Sicariidae イトグモ科
Loxosceles rufescens (Dufour 1820)
イトグモ
52, 67
Scytodidae ヤマシログモ科
Scytodes thoracica (Latreille 1802)
ユカタヤマシログモ
52
Leptonetidae マシラグモ科
Masirana nippara Komatsu 1957
ニッパラマシラグモ
52
Pholcidae ユウレイグモ科
Crossopriza lyoni (Blackwall 1867)
オダカユウレイグモ
50
Pholcus crypticolens Bösenberg & Strand 1906
ユウレイグモ
52, 69, 71
Pholcus phalangioides (Fuesslin 1775)
イエユウレイグモ
67
Segestriidae エンマグモ科
Ariadna insulicola Yaginuma 1967
シマミヤグモ
69
Ariadna lateralis Karsch 1881
ミヤグモ
52, 71
Segestria nipponica Kishida 1913
コマツエンマグモ
52
Oonopidae タマゴグモ科
Gamasomorpha cataphracta Karsch 1881
ダニグモ
52
Ischnothyreus narutomii (Nakatsuji 1942)
ナルトミダニグモ
52
Mimetidae センショウグモ科
Ero japonica Bösenberg & Strand 1906
センショウグモ
52, 69, 71
Mimetus japonicus Uyemura 1938
ハラビロセンショウグモ
52, 71
Mimetus testaceus Yaginuma 1960
オオセンショウグモ
52, 71
Oecobiidae チリグモ科
Oecobius navus Blackwall 1859
58
チリグモ
52, 71
Uroctea compactilis L. Koch 1878
ヒラタグモ
52, 67, 69, 71
Uloboridae ウズグモ科
Hyptiotes affinis Bösenberg & Strand 1906
オウギグモ
52, 69, 71
Miagrammopes orientalis Bösenberg & Strand 1906 マネキグモ
52, 68, 71
Octonoba sinensis (Simon 1880)
トウキョウウズグモ
71
Octonoba sybotides (Bösenberg & Strand 1906)
カタハリウズグモ
52, 69
Octonoba varians (Bösenberg & Strand 1906)
ウズグモ
52, 67, 69, 71
Nesticidae ホラヒメグモ科
Nesticella brevipes(Yaginuma 1970)
コホラヒメグモ
9
Nesticus higoensis Yaginuma 1977
ヒゴホラヒメグモ
9
Theridiidae ヒメグモ科
Achaearanea angulithorax (Bösenberg & Strand 1906) ツリガネヒメグモ
52
Achaearanea asiatica (Bösenberg & Strand 1906)
キヒメグモ
68
Achaearanea culicivola (Bösenberg & Strand 1906) カグヤヒメグモ
52, 68, 69
Achaearanea ferrumequina (Bösenberg & Strand 1906) ヒザブトヒメグモ
52
Achaearanea japonica (Bösenberg & Strand 1906)
ニホンヒメグモ
52, 68, 69, 70, 71
Anelosimus crassipes (Bösenberg & Strand 1906)
アシブトヒメグモ
48, 52, 69, 71, 80
Argyrodes bonadea (Karsch 1881)
シロカネイソウロウグモ
3, 68
Argyrodes cylindratus Thorell 1889
トビジロイソウロウグモ
71
Argyrodes kumadai Chida & Tanikawa 1999
チリイソウロウグモ
59
52, 68, 69
Ariamnes cylindrogaster (Simon 1888)
オナガグモ
52, 69
Chrysso albipes (S.Saito 1935)
ギボシヒメグモ
52, 71
Chrysso bimaculata Yoshida 1998
フタホシヒメグモ
80
Chrysso foliata (L.Koch 1878)
ホシミドリヒメグモ
52, 71
Chrysso scintillans (Thorell 1895)
コガネヒメグモ
52, 68, 71
Chrysso vesiculosa (Simon 1894)
ヒシガタヒメグモ
52
Coleosoma octomaculatum (Bösenberg & Strand 1906) ヤホシサヤヒメグモ
52, 64
Dipoena punctisparsa Yaginuma 1967
シモフリミジングモ
69
Enoplognatha abrupta (Karsch 1879)
カレハヒメグモ
49, 52, 68, 69, 71, 80
Enoplognatha caricis (Fickert 1876)
ヤマトコノハグモ
52, 64, 69, 71
Episinus affinis Bösenberg & Strand 1906
ヒシガタグモ
21, 70, 71, 80
Episinus nubilus Yaginuma 1960
ムラクモヒシガタグモ
21, 52, 71
Keijia sterninotata (Bösenberg & Strand 1906)
ムナボシヒメグモ
69, 71
Latrodectus geometricus (C.L.Koch 1841)
ハイイロゴケグモ
56
Moneta caudifera Dönitz & Strand 1906)
ハラナガヒシガタグモ
21
Neospintharus fur (Bösenberg & Strand 1906)
フタオイソウロウグモ
69, 71
Paidiscura subpallens (Bösenberg & Strand 1906)
ハイイロヒメグモ
52
Parasteatoda tepidariorum (C. L. Koch 1841)
52, 64, 67, 69, 70, 71
60
オオヒメグモ
Phoroncidia pilula (Karsch 1879)
ツクネグモ
47, 52, 80
Phycosoma flavomarginatum (Bösenberg & Strand 1906) キベリミジングモ
68
Phycosoma mustelinum (Simon 1889)
カニミジングモ
46, 52, 68, 69, 70, 71, 80
Rhomphaea sagana (Dönitz & Strand 1906)
ヤリグモ
52
Spheropistha melanosoma Yaginuma 1957
クロマルイソウロウグモ
52
Steatoda cingulata (Thorell 1890)
ハンゲツオスナキグモ
69, 71
Steatoda erigoniformis (O. P.-Cambridge 1872)
ナナホシヒメグモ
78
Steatoda grossa (C. L. Koch 1838)
シロホシヒメグモ
49, 80
Stemmops nipponicus Yaginuma 1969
スネグロオチバヒメグモ
69, 71
Takayus chikunii (Yaginuma 1960)
バラギヒメグモ
52, 71
Takayus latifolius (Yaginuma 1960)
ヒロハヒメグモ
52, 71
Takayus takayensis (S. Saito 1939)
タカユヒメグモ
52, 71
Theridion pinastri L. Koch 1872
ムネグロヒメグモ
52
Thymoites okumae (Yoshida 1988)
クロササヒメグモ
79, 80
Yaginumena castrata (Bösenberg & Strand 1906)
ボカシミジングモ
52, 69, 71
Yunohamella subadultus (Bösenberg & Strand 1906) コケヒメグモ
52, 69
Yunohamella yunohamensis (Bösenberg & Strand 1906) ユノハマヒメグモ
52
Theridiosomatidae カラカラグモ科
Ogulnius pullus Bösenberg & Strand 1906
ヤマジグモ
52
61
Theridiosoma epeiroides Bösenberg & Strand 1906 カラカラグモ
52
Mysmenidae コツブグモ科
Mysmenella jobi (Kraus 1967)
ナンブコツブグモ
76
Pimoidae ピモサラグモ科
Weintrauboa contortipes (Karsch 1881)
アシヨレグモ
68
Linyphiidae サラグモ科
Arcuphantes hikosanensis H.Saito 1992
ヒコサンヤミサラグモ
30
Arcuphantes iriei H.Saito 1992
イリエヤミサラグモ
30
Asperthorax communis Oi 1960
ザラアカムネグモ
71
Asthenargus matsudae Saito & Ono 2001
ヒメウスイロサラグモ
28
Dicornua hikosanensis Oi 1960
ヒコサンヌカグモ
18
Diplocephaloides saganus (Bösenberg & Strand 1906) ハラジロムナキグモ
52
Entelecara dabudongensis Paik 1983
コウライホテイヌカグモ
55
Erigone prominens Bösenberg & Strand 1906
ノコギリヒザグモ
52
Gnathonarium dentatum (Wider 1834)
ヤマアカムネグモ
64
Gnathonarium exsiccatum (Bösenberg & Strand 1906) ニセアカムネグモ
52, 71
Gonatium japonicum Simon in Bösenberg & Strand 1906 ヤマトケズネグモ
69
Gongylidioides communis Saito & Ono 2001
ナミズキンヌカグモ
28
Herbiphantes cericeus (S. Saito 1934)
キヌキリグモ
52
Hypselistes australis Saito & Ono 2001
28
62
ミナミツノタテグモ
Nematogmus sanguinolentus (Walckenaer 1842) チビアカサラグモ
52, 69
Neriene angulifera (Schenkel 1953)
ハンモックサラグモ
52
Neriene fusca (Oi 1960)
クスミサラグモ
68
Neriene japonica (Oi 1960)
ツリサラグモ
71
Neriene limbatinella (Bösenberg & Strand 1906) フタスジサラグモ
18
Neriene longipedella (Bösenberg & Strand 1906) アシナガサラグモ
52, 71
Neriene montana (Clerck 1757)
ヤマジサラグモ
71
Neriene oidedicata Helsdingen 1969
ヘリジロサラグモ
52, 64, 71
Neriene radiata (Walckenaer 1842)
シロブチサラグモ
52
Nippononeta obliqua (Oi 1960)
ナナメケシグモ
69
Nippononeta okumae Ono & H.Saito 2001
オオクマニッポンケシグモ
22
Pelecopsis punctiseriata (Bösenberg & Strand 1906) ウスチャズダカグモ
52
Saitonia longicephala (H. Saito 1988)
ズナガコヌカグモ
29
Strandella quadrimaculata (Uyemura 1937)
ヨツボシサラグモ
52, 71
Turinyphia yunohamensis (Bösenberg & Strand 1906) ユノハマサラグモ
52, 69, 71
Ummeliata feminea (Bösenberg & Strand 1906)
トウキョウアカムネグモ
52, 64
Ummeliata insecticeps (Bösenberg & Strand 1906) セスジアカムネグモ
52, 71
Walckenaeria chiyokoae H. Saito 1988
オオクマコブヌカグモ
29
Tetragnathidae アシナガグモ科
63
Diphya okumae Tanikawa 1995
オオクマヒメドヨウグモ
43
Leucauge blanda (L. Koch 1878)
チュウガタシロカネグモ
69
Leucauge magnifica Yaginuma 1954
オオシロカネグモ
52, 68, 69, 71
Leucauge subblanda Bösenberg & Strand 1906
コシロカネグモ
52, 68, 69, 70
Leucauge subgemmea Bösenberg & Strand 1906 キララシロカネグモ
52, 69, 71
Meta reticuloides Yaginuma 1958
ヤマジドヨウグモ
52, 68
Metleucauge kompirensis (Bösenberg & Strand 1906) タニマノドヨウグモ
52
Metleucauge yunohamensis (Bösenberg & Strand 1906) メガネドヨウグモ
52
Pachygnatha quadrimaculata (Bösenberg & Strand 1906)
ヨツボシヒメアシナガグモ
69
Tetragnatha maxillosa Thorell 1895
ヤサガタアシナガグモ
52, 64, 71
Tetragnatha nitens (Audouin 1826)
ヒカリアシナガグモ
75
Tetragnatha praedonia L. Koch 1878
アシナガグモ
52, 64, 69, 71
Tetragnatha squamata Karsch 1879
ウロコアシナガグモ
52, 69, 71
Tetragnatha vermiformis Emerton 1884
シコクアシナガグモ
19
Tetragnatha yesoensis S. Saito 1934
エゾアシナガグモ
20
Nephilidae ジョロウグモ科
Nephila clavata L. Koch 1878
ジョロウグモ
52, 69, 71
Araneidae コガネグモ科
Acusilas coccineus Simon 1895
52, 68, 71,
64
ハツリグモ
Alenatea fuscocolorata (Bösenberg & Strand 1906) ヤミイロオニグモ
52, 71
Arachnura logio Yaginuma 1956
キジロオヒキグモ
59
Araneus acusisetus Zhu & Song 1994
オオクマヤミイロオニグモ
44
Araneus ejusmodi Bösenberg & Strand 1906
ヌサオニグモ
52, 69, 71
Araneus ishisawai Kishida 1920
イシサワオニグモ
52, 68, 71
Araneus mitificus (Simon 1886)
ビジョオニグモ
71
Araneus nojimai Tanikawa 2001
マメオニグモ
44, 52
Araneus pentagrammicus (Karsch 1879)
アオオニグモ
52, 69, 71
Araneus pinguis (Karsch 1879)
アカオニグモ
52
Araneus rotundicornis Yaginuma 1972
マルコブオニグモ
52, 73
Araneus semilunaris (Karsch 1879)
マルヅメオニグモ
52
Araneus seminiger (L.Koch 1878)
コケオニグモ
52
Araneus uyemurai Yaginuma 1960
ヤマオニグモ
52, 71
Araneus variegatus Yaginuma 1960
ニシキオニグモ
52
Araneus ventricosus (L. Koch 1878)
オニグモ
52, 69, 70, 71
Araniella yaginumai Tanikawa 1995
ムツボシオニグモ
52, 68, 71
Argiope amoena L. Koch 1878
コガネグモ
52, 69, 71
Argiope boesenbergi Levi 1983
チュウガタコガネグモ
52, 68, 71
Argiope bruennichi (Scopoli 1772)
ナガコガネグモ
65
52, 64, 69, 71
Argiope minuta Karsch 1879
コガタコガネグモ
52, 69, 71
Chorizopes nipponicus Yaginuma 1963
ヤマトカナエグモ
69, 71
Cyclosa argenteoalba Bösenberg & Strand 1906 ギンメッキゴミグモ
42, 52, 68
Cyclosa confusa Bösenberg & Strand 1906
ミナミノシマゴミグモ
42, 68, 69
Cyclosa kumadai Tanikawa 1992
クマダギンナガゴミグモ
42
Cyclosa laticauda Bösenberg & Strand 1906
キジロゴミグモ
42, 52, 71
Cyclosa monticola Bösenberg & Strand 1906
ヤマゴミグモ
52, 68, 71
Cyclosa octotuberculata Karsch 1879
ゴミグモ
2, 42, 52, 64, 69, 71
Cyclosa okumae Tanikawa 1992
オオクマギンメッキゴミグモ
42
Cyclosa omonaga Tanikawa 1992
シマゴミグモ
42, 52, 70, 71
Cyclosa sedeculata Karsch 1879
ヨツデゴミグモ
42, 52, 68, 69, 71
Cyclosa vallata Keyserling 1886
マルゴミグモ
42, 68, 69
Cyrtarachne bufo (Bösenberg & Strand 1906)
トリノフンダマシ
52, 68
Cyrtarachne inaequalis Thorell 1895
オオトリノフンダマシ
52
Cyrtarachne nagasakiensis Strand 1918
シロオビトリノフンダマシ
68
Cyrtarachne yunoharuensis Strand 1918
アカイロトリノフンダマシ
68
Cyrtophora exanthematica (Doleschall 1859)
キヌアミグモ
71
Cyrtophora moluccensis (Doleschall 1857)
60
66
スズミグモ
Eriophora astridae (Strand 1917)
サガオニグモ
69
Eriophora sachalinensis (S. Saito 1934)
カラフトオニグモ
52, 70, 71
Eriovixia pseudocentrodes (Bösenberg & Strand 1906) トガリオニグモ
71
Gasteracantha kuhli C. L. Koch 1837
トゲグモ
52
Gibbaranea abscissa (Karsch 1879)
キザハシオニグモ
52
Hypsosinga pygmaea (Sundevall 1831)
ヨツボシショウジョウグモ
52
Hypsosinga sanguinea (C. L. Koch 1844)
シロスジショウジョウグモ
52
Larinia argiopiformis Bösenberg & Strand 1906
コガネグモダマシ
52, 68, 69
Mangora herbeoides (Bösenberg & Strand 1906)
ゴマジロオニグモ
52
Neoscona adianta (Walckenaer 1802)
ドヨウオニグモ
52, 64, 68, 69, 71
Neoscona melloteei (Simon 1895)
ワキグロサツマノミダマシ
52, 69, 71
Neoscona nautica (L. Koch 1875)
イエオニグモ
67, 68
Neoscona punctigera (Doleschall 1857)
コゲチャオニグモ
68, 69
Neoscona scylla (Karsch 1879)
ヤマシロオニグモ
52, 69, 70
Neoscona scylloides (Bösenberg & Strand 1906)
サツマノミダマシ
52, 69, 71
Neoscona subpullata (Bösenberg & Strand 1906) ヘリジロオニグモ
68, 70
Neoscona theisi (Walckenaer 1842)
ホシスジオニグモ
71
Ordgarius sexspinosus (Thorell 1894)
ムツトゲイセキグモ
72
Paraplectana sakaguchii Uyemura 1938
サカグチトリノフンダマシ
67
59
Pasilobus hupingensis Yin, Bao & Kim 2001
ワクドツキジグモ
57, 62
Pronoides brunneus Schenkel 1936
コオニグモモドキ
52
Yaginumia sia (Strand 1906)
ズグロオニグモ
52, 68, 71
Lycosidae コモリグモ科
Arctosa depectinata (Bösenberg & Strand 1906)
カガリビコモリグモ
66
Arctosa ebicha Yaginuma 1960
エビチャコモリグモ
37
Arctosa hikosanensis Tanaka 1985
ヒコサンコモリグモ
33, 37
Arctosa ipsa (Karsch 1879)
ヒノマルコモリグモ
36, 52
Lycosa coelestis L. Koch 1878
ハラクロコモリグモ
35, 68, 69
Pardosa agraria Tanaka 1985
イナダハリゲコモリグモ
33, 38, 69
Pardosa astrigera L. Koch 1878
ウヅキコモリグモ
40, 52, 64, 67, 69, 71
Pardosa brevivulva Tanaka 1975
ヤマハリゲコモリグモ
32, 38
Pardosa laura Karsch 1879
ハリゲコモリグモ
38, 52, 67
Pardosa pseudoannulata (Bösenberg & Strand 1906) キクヅキコモリグモ
38, 64, 71
Pardosa yaginumai Tanaka 1977
キシベコモリグモ
39, 65
Pirata clercki (Bösenberg & Strand 1906)
クラークコモリグモ
31, 34, 52, 69, 71
Pirata piratoides (Bösenberg & Strand 1906)
イモコモリグモ
31, 34
Pirata procurvus (Bösenberg & Strand 1906)
チビコモリグモ
31, 34, 52
Pirata subpiraticus (Bösenberg & Strand 1906)
68
キバラコモリグモ
31, 34, 52
Pirata yaginumai Tanaka 1974
ナミコモリグモ
31, 34
Pisauridae キシダグモ科
Dolomedes angustivirgatus Kishida 1936
スジボソハシリグモ
41
Dolomedes raptor Bösenberg & Strand 1906
アオグロハシリグモ
52, 68, 71
Dolomedes saganus Bösenberg & Strand 1906
スジブトハシリグモ
52
Dolomedes silvicola Tanikawa & Miyashita 2008
スジアカハシリグモ
52, 71
Dolomedes stellatus Kishida 1936
キクメハシリグモ
63
Dolomedes sulfureus L. Koch 1878
イオウイロハシリグモ
52, 64, 69, 71
Perenethis fascigera (Bösenberg & Strand 1906)
ハヤテグモ
52, 69
Pisaura lama Bösenberg & Strand 1906
アズマキシダグモ
52, 69
Oxyopidae ササグモ科
Oxyopes licenti Schenkel 1953
クリチャササグモ
52
Oxyopes macilentus L. Koch 1878
シマササグモ
62
Oxyopes sertatus L. Koch 1878
ササグモ
52, 64, 69, 71
Ctenidae シボグモ科
Anahita fauna Karsch 1879
シボグモ
52, 68, 69, 71
Agelenidae タナグモ科
Agelena labyrinthica (Clerck 1757)
イナズマクサグモ
52
Agelena silvatica Oliger 1983
クサグモ
45, 52, 64, 68, 69, 71
Allagelena opulenta (L. Koch 1878)
コクサグモ
52, 69, 71
69
Tegenaria domestica (Clerck 1757)
イエタナグモ
52, 67
Cybaeidae ナミハグモ科
Cybaeus melloteei (Simon 1886)
ナミハグモ
52
Cybaeus nipponicus (Uyemura 1938)
カチドキナミハグモ
52, 68
Cybaeus okafujii (Yaginuma 1963)
アキヨシナミハグモ
5
Hahniidae ハタケグモ科
Hahnia corticicola Bösenberg & Strand 1906
ハタケグモ
52
Dictynidae ハグモ科
Brommella punctosparsa (Oi 1957)
ナシジカレハグモ
68
Cicurina japonica (Simon 1886)
コタナグモ
52
Dictyna felis Bösenberg & Strand 1906
ネコハグモ
52
Lathys annulata Bösenerg & Strand 1906
カレハグモ
52, 71
Amaurobiidae ガケジグモ科
Coelotes antri (Komatsu 1961)
ホラズミヤチグモ
69, 71
Coelotes decolor Nishikawa 1973
ウスイロヤチグモ
69
Coelotes exitialis L. Koch 1878
ヤチグモ
52
Coelotes micado Strand 1907
ミカドヤチグモ
52, 68
Iwogumoa insidiosa (L. Koch 1878)
シモフリヤチグモ
52, 68, 69, 71
Pireneitega luctuosa (L. Koch 1878)
メガネヤチグモ
68, 71
Tegecoelotes corasides (Bösenberg & Strand 1906)
ヤマヤチグモ
52, 69, 71
Titanoecidae ヤマトガケジグモ科
70
Nurscia albofasciata (Strand 1907)
ヤマトガケジグモ
69, 71
Miturgidae ツチフクログモ科
Cheiracanthium eutittha Bösenberg & Strand 1906
アシナガコマチグモ
52, 69, 70, 71
Cheiracanthium japonicum Bösenberg & Strand 1906
カバキコマチグモ
52, 71
Cheiracanthium lascivum Karsch 1879
ヤマトコマチグモ
52, 69, 71
Anyphaenidae イヅツグモ科
Anyphaena ayshides Yaginuma 1958
ナガイヅツグモ
52
Anyphaena pugil Karsch 1879
イヅツグモ
52, 68, 71
Liocranidae ウエムラグモ科
Itatsina praticola (Bösenberg & Strand 1906)
イタチグモ
52, 69
Clubionidae フクログモ科
Clubiona corrugata Bösenberg & Strand 1906
コフクログモ
52
Clubiona japonicola Bösenberg & Strand 1906
ハマキフクログモ
52
Clubiona jucunda (Karsch 1879)
ヤハズフクログモ
52, 69
Clubiona kurilensis Bösenberg & Strand 1906
ヒメフクログモ
64
Clubiona lena Bösenberg & Strand 1906
トビイロフクログモ
52, 68, 71
Clubiona neglectoides Bösenberg & Strand 1906
ヨモギフクログモ
52
Clubiona vigil Karsch 1879
ムナアカフクログモ
52, 71
Corinnidae ネコグモ科
Orthobula crucifera Bösenberg & Strand 1906
オトヒメグモ
27, 69
Phrurolithus nipponicus Kishida 1914
ウラシマグモ
52, 68
71
Phrurolithus pennatus Yaginuma 1967
ヤバネウラシマグモ
68, 69
Trachelas japonicus Bösenberg & Strand 1906
ネコグモ
52, 71
Zodariidae ホウシグモ科
Asceua japonica (Bösenberg & Strand 1906)
ドウシグモ
69
Gnaphosidae ワシグモ科
Cladothela oculinotata (Bösenberg & Strand 1906) チャクロワシグモ
15, 52
Cladothela parva Kamura 1991
ヒメチャワシグモ
15
Cladothela unciinsignita (Bösenberg & Strand 1906) ムナキワシグモ
15
Drassodes serratidens Schenkel 1963
トラフワシグモ
69
Drassyllus sanmenensis Platnick & Song 1986
エビチャヨリメケムリグモ
11
Drassyllus sasakawai Kamura 1987
ヤマヨリメケムリグモ
11
Gnaphosa kompirensis Bösenberg & Strand 1906 メキリグモ
13, 52, 69
Hitobia unifascigera (Bösenberg & Strand 1906)
ヒトオビトンビグモ
62
Sanitubius anatolicus (Kamura 1989)
ナミトンビグモ
14, 17
Sernokorba pallidipatellis (Bösenberg & Strand 1906) マエトビケムリグモ
16, 52, 71
Zelotes asiaticus (Bösenberg & Strand 1906)
クロチャケムリグモ
52
Zelotes exiguus (Müller & Schenkel 1895)
チビケムリグモ
53
Zelotes tortuosus Kamura 1987
クロケムリグモ
12
Sparassidae アシダカグモ科
Heteropoda venatoria (Linnaeus 1767)
67, 71
72
アシダカグモ
Micrommata virescens (Clerck 1758)
ツユグモ
52
Sinopoda forcipata (Karsch 1881)
コアシダカグモ
52
Sinopoda koreana (Paik 1968)
トライコアシダカグモ
10
Sinopoda stellatops Jäger & Ono 2002
ヒメアシダカグモ
10, 76, 77
Thelcticopis severa (L. Koch 1875)
カマスグモ
71
Philodromidae エビグモ科
Philodromus auricomus L. Koch 1878
キンイロエビグモ
52, 69
Philodromus emarginatus (Schrank 1803)
キエビグモ
52
Philodromus spinitarsis Simon 1895
キハダエビグモ
52, 69, 71
Philodromus subaureolus Bösenberg & Strand 1906 アサヒエビグモ
52, 69, 70, 71
Thanatus miniaceus Simon 1880
ヤドカリグモ
52, 69, 71
Thanatus nipponicus Yaginuma 1969
ヤマトヤドカリグモ
69
Tibellus tenellus (L. Koch 1876)
シャコグモ
52, 69, 71
Thomisidae カニグモ科
Bassaniana decorata (Karsch 1879)
キハダカニグモ
52, 70, 71
Coriarachne fulvipes (Karsch 1879)
コカニグモ
60
Diaea subdola O. P.-Cambridge 1885
コハナグモ
26, 52, 69
Ebelingia kumadai (Ono 1985)
クマダハナグモ
24
Ebrechtella tricuspidata (Fabricius 1775)
ハナグモ
26, 52, 64, 69, 70, 71
Heriaeus melloteei Simon 1886
アシナガカニグモ
73
26, 52, 71
Lysiteles coronatus (Grube 1861)
アマギエビスグモ
23, 25, 26, 52
Oxytate striatipes L. Koch 1878
ワカバグモ
52, 71
Ozyptila nipponica Ono 1985
ニッポンオチバカニグモ
25
Phrynarachne katoi Tikuni 1955
カトウツケオグモ
1
Pistius undulatus Karsch 1879
ガザミグモ
52, 68, 69
Synema globosum (Fabricius 1775)
フノジグモ
26, 52
Thomisus labefactus Karsch 1881
アズチグモ
52, 69, 70, 71
Tmarus horvathi Kulczynski 1895
ハナナガトラフカニグモ
26
Tmarus piger (Walckenaer 1802)
トラフカニグモ
26, 52, 70, 71
Tmarus yaginumai Ono 1977
ヤギヌマノセマルトラフカニグモ
26
Xysticus atrimaculatus Bösenberg & Strand 1906 ホンクロボシカニグモ
25, 26
Xysticus croceus Fox 1937
ヤミイロカニグモ
26, 52, 69, 71
Xysticus hedini Schenkel 1936
クロボシカニグモ
52
Xysticus insulicola Bösenberg & Strand 1906 アズマカニグモ
26, 68, 69
Xysticus kurilensis Strand 1907
チシマカニグモ
69
Xysticus saganus Bösenberg & Strand 1906 オオヤミイロカニグモ
26, 52
Xysticus trizonatus Ono 1988
オビボソカニグモ
26
Salticidae ハエトリグモ科
Asianellus festivus (L. Koch 1834)
74
ヤマジハエトリ
69
Carrhotus xanthogramma (Latreille 1819)
ネコハエトリ
52, 68, 69, 71
Evarcha albaria (L. Koch 1878)
マミジロハエトリ
6, 52, 67, 69, 71
Hakka himeshimensis (Dönitz & Strand 1906)
イソハエトリ
51, 69, 71
Harmochirus insulanus (Kishida 1914)
ウデブトハエトリ
52, 69, 71
Hasarius adansoni (Audouin 1826)
アダンソンハエトリ
67, 68, 69, 71
Laufeia aenea Simon 1888
エキスハエトリ
8, 52, 71
Marpissa milleri (Peckham & Peckham1894)
オオハエトリ
52, 67, 71
Marpissa pulla (Karsch 1879)
ヨダンハエトリ
52, 68, 71
Mendoza canestrinii (Ninni in Canestrini & Pavesi 1868) オスクロハエトリ
52, 69
Mendoza elongata (Karsch 1879)
ヤハズハエトリ
52, 64, 69, 71
Menemerus fulvus (L. Koch 1878)
シラヒゲハエトリ
67, 69, 71
Myrmarachne formicaria (De Geer 1778)
タイリクアリグモ
69
Myrmarachne inermichelis Bösenberg & Strand 1906 ヤサアリグモ
52, 69
Myrmarachne japonica (Karsch 1879)
アリグモ
52, 69, 71
Pancorius crassipes (Karsch 1881)
アシブトハエトリ
52, 69, 71
Phintella abnormis (Bösenberg & Strand 1906)
チャイロアサヒハエトリ
52
Phintella arenicolor (Grube 1861)
マガネアサヒハエトリ
52
Phintella bifurcilinea (Bösenberg & Strand.1906)
キアシハエトリ
52
75
メガネアサヒハエトリ
Phintella linea (Karsch 1879)
68
Plexippoides doenitzi (Karsch 1879)
デーニッツハエトリ
52, 68, 69, 71
Plexippus paykulli (Audouin 1826)
チャスジハエトリ
52, 67, 69, 71
ミスジハエトリ
Plexippus setipes Karsch 1879
52, 68, 69
イナズマハエトリ
Pseudicius vulpes (Grube 1861)
67
カラスハエトリ
Rhene atrata (Karsch 1881)
52, 64, 68, 69, 71
Sibianor kochiensis (Bohdanowicz & Prószyński 1987) ナカヒラハエトリ
7
アオオビハエトリ
Siler cupreus Simon 1888
52, 64, 69
シラホシコゲチャハエトリ
Sitticus penicillatus (Simon 1875)
62
Synagelides annae Bohdanowitz 1979
オオクマアメイロハエトリ
4, 74
Yaginumaella striatipes (Grube 1861)
ウススジハエトリ
71
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KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
伊豆諸島・青ヶ島のクモ類
笹 岡
文 雄
概 観
青ヶ島は本土東京より 358 km,近接の八丈島より約 70 km の距離があり,伊
豆諸島の有人島ではもっとも南に位置する(北緯 32 度 27 分).面積 5.98 km,
海岸線長 9 km で伊豆諸島の有人島の中では式根島,利島についで小さい.行政区
は 1 島で 1 自治体(東京都青ヶ島村)を形成する.島は典型的な複式成層火山で,
南部に内輪 500 m のカルデラを形成する.北部はなだらかな段丘を形成し,そこ
に集落がある.周囲はすべて断崖で砂浜はなく海食崖となっている.地質調査が進
んでおらず,成立年代ははっきりしないが,大島,三宅島より古いとされる.1785
年(天明 5 年)に大規模な噴火があり,以後 40 年あまり無人島となる.現在も内
輪山では噴気があり地熱も高いが,その後噴火の記録はなく,気象庁火山活動ラン
ク C となっている.典型的な海洋性気候で年間降水量は 2000 mm を超えるよう
であるが,正式な観測点が設置されていないため正確な降水量は不明である.ただ
青ヶ島 BLOG(青ヶ島 MAN 2008)に記録されている降雨日数から推定すると,
隣接島の八丈島より少ないと思われる.湿潤であるため湧水があるが,湖沼,河川
等の水系はまったく無い.1785 年の噴火以前には外輪山内に淡水池が存在したが,
噴火に伴う火山活動によって消失してい
る.植生は単純で,外輪山外側はオオバ
ヤシャブシ,内側はタブノキを主として
いる.内輪山はツバキの植林が行われ天
然林は少なく,一部は噴気によって裸地
となっている.昭和 30 年代まで行われた
薪炭用の代伐や焼畑の為の山焼き,また
近年本土より進入したゴマダラカミキリ
によるハンノキ,タブノキの古木枯死な
どによって森林相もより単純になったよ
うである.また温暖湿潤なため外輪山内
の林床はシダ類が優先している.北部の
集落周辺にはハシジョウススキを中心と
した広範囲の草地がある.
図 1.青ヶ島の位置
81
図 3(左)
.島内略図(小林(1980)
より)
.図 4(上)
.青ケ島外観(海
上保安庁海洋情報部(2002)より)
.
調査概要
補虫網を用いて,スウィーピング,ビーティング,シフティングによる採集をお
こなった.必要に応じて見つけ取りを併用している.採集したもののみ記録し,目
撃のみのものは除外した.したがってチュウガタシロカネグモなど全島にわたって
生息していたものも,一部の採集した地域しか記録していない.
(調査期間
2008.8.1-4)
目 録
個体記号:F ♀成体,f ♀幼体,M ♂成体,m ♂幼体,y 雌雄不明幼体. 採
集地略号:池(池之沢)
,キャ(キャンプ場周辺)
,清(清受寺周辺),凸(外輪山
北側山道)
,集(集落),宿(宿舎室内)
,金(金比羅神社周辺).
1. チリグモ科 Oecobiidae
1. チリグモ Oecobius navus
2F 2-VIII-2008 宿.
2. タナグモ科 Agelenidae
2. イエタナグモ
Tegenaria domestica
1F 1-VIII-2008 清,1F 3-VIII-2008 金.
コモリグモ科 Lycosidae
コモリグモの一種 Pardosa sp.
82
3y 3-VIII-2008 金.
3. ヒラタグモ科 Urocteidae
3. ヒラタグモ Uroctea compactilis
1f 2-VIII-2008 宿.
4. ヒメグモ科 Theridiidae
4. カグヤヒメグモ Achaearanea culicivola
1F1M1y 3-VIII-2008 キャ.
5. オオヒメグモ Achaearanea tepidariorum
1F 1-VIII-2008 清,2y 2-VIII-2008 集.
5. サラグモ科 Linyphiidae
6. チビアカサラグモ
Nematogmus sanguinolentus
1F 1-VIII-2008 池,2F1M 1-VIII-2008 清,1F 3-VIII-2008 凸.
7. ヘリジロサラグモ
Neriene oidedicata
3F1f3M 1-VIII-2008 清.
8. スソグロサラグモ Ostearius melanopygius
1F 1-VIII-2008 池.
9. オオサカアカムネグモ Ummeliata osakaensis
1M 1-VIII-2008 清.
6. アシナガグモ科 Tetragnathidae
10. チュウガタシロカネグモ Leucauge blanda
1F 1-VIII-2008 池,1F1y 1-VIII-2008 清,1M1y 3-VIII-2008 キャ.
7. コガネグモ科 Araneidae
11. オニグモ Araneus ventricosus
1F 1-VIII-2008 清,1y 3-VIII-2008 キャ.
12. ナガコガネグモ Argiope bruennichii
2M 1-VIII-2008 池,1f 1-VIII-2008 清,1M 3-VIII-2008 キャ.
13. コガタコガネグモ Argiope minuta
1F 2-VIII-2008 キャ,1M 3-VIII-2008 キャ.
14. ギンメッキゴミグモ Cyclosa argenteoalba
1F1y 2-VIII-2008 集.
15. ミナミノシマゴミグモ
Cyclosa confusa
2F 1-VIII-2008 清,1F 3-VIII-2008 凸,1F 4-VIII-2008 集.
ゴミグモの一種 Cyclosa sp.
1m 1-VIII-2008 池.
16. ヘリジロオニグモ Neoscona subpullata
1F 1-VIII-2008 池,1F 2-VIII-2008 集,1F 3-VIII-2008 金.
8. シボグモ科 Ctenidae
83
17. シボグモ Anahita fauna
1f 1-VIII-2008 池.
9. アシダカグモ科 Sparassidae
18. アシダカグモ
Heteropoda venatoria
2y 2-VIII-2008 宿,1F 3-VIII-2008 集.
10. カニグモ科 Thomisidae
19. コハナグモ Diaea subdola
1F 2-VIII-2008 集,1M 3-VIII-2008 キャ.
20. ハナグモ Misumenops tricuspidatus
1F 1-VIII-2008 池, 1F2M2y 1-VIII-2008 清.
21. ヤギヌマノセマルトラフカニグモ
Tmarus yagimumai
1F 1-VIII-2008 池(小野展嗣確認)
,1y 3-VIII-2008 金,
1y 3-VIII-2008 凸,1y 3-VIII-2008 キャ.
カニグモの一種 Xysticus sp.
1y 3-VIII-2008 キャ.
11. ハエトリグモ科 Salticidae
22. アダンソンハエトリ Hasarius adansoni
1M 2-VIII-2008 宿.
23. ヤサアリグモ Myrmarachne inermichelis
2y 1-VIII-2008 池.
24. マガネアサヒハエトリ
Phintella arenicolor
1M 3-VIII-2008 金,1M 3-VIII-2008 凸.
アサヒハエトリの一種 Phintella sp.
5y 1-VIII-2008 池,1y 1-VIII-2008 清,3y 3-VIII-2008 凸,
4y 3-VIII-2008 キャ.
25. チャスジハエトリ Plexippus paykulli
1F1M 3-VIII-2008 キャ,1M 3-VIII-2008 宿.
以上 11 科 25 種.
クモ相概観
クモ相概観
これまでにクモ類の記録は 5 件報告されている(植村 1951,小林 1955,岸田
1961,大野・八木沼 1972,仲條 2008)
.しかし記録種類数は 4 件が 1 桁であり,
残り 1 件(大野・八木沼 1972)も未確定種を含め 19 種にすぎない.また新海
(1969),小野(2001)は上記等の文献から種類数の集計を行っている.しかし
同集計に含まれなかった文献があり,その後 1 件が発表され,総記録数は 11 科 26
種である(表 1)
.今回新たに記録された 8 科 13 種を加えて再集計すると,青ヶ島
産のクモ類は 14 科 39 種となる.
84
表 1.伊豆諸島青ヶ島からこれまでに記録された 11 科 26 種のクモ類.種の配列および和名は原
文のまま表記し,括弧内に標準和名を記した.分類体系は現在ものに修正した.
文献
植村(1951)
掲載種数
6科7種
小林(1955)
6科7種
岸田(1961)
2科3種
大野・八木沼(1972)
9 科 18 種
仲條(2008)
5科6種
掲載種
オオヒメグモ,ナガコガネグモ,コシロガネグモ(コ
シロカネグモ)
,ジョロウグモ,ヘリジロサラグモ,
ハナグモ,アズマカニグモ
ヒラタグモ,ジョロウグモ,オニグモの一種,コガ
ネグモモドキ(コガネグモダマシ)の一種,コガネ
グモの一種,ホシドクグモ(ウヅキコモリグモ)
,デ
ーニッツドクグモ(キクヅキコモリグモ)
,ハマキフ
クログモ,アシダカグモ,ハナグモ
コガネグモ,ナガコガネグモ,シロカネグモ(チュ
ウガタシロカネグモ)
サヤヒメグモ,オオヒメグモ,ヘリジロサラグモ,
ヘリジロオニグモ,コガネグモ,ナガコガネグモ,
ムシバミコガネグモ,コガネグモダマシ,ジョロウ
グモ,.チュウガタシロカネグモ,オオシロカネグモ,
コシロカネグモ,ウロコアシナガグモ,ヒラタグモ,
コハナグモ,アズチグモ,マガネアサヒハエトリ,
フクログモの一種,アシダカグモ
オオヒメグモ,チュウガタシロカネグモ,ミナミノ
シマゴミグモ,コハナグモ,チャスジハエトリ,ア
オオビハエトリ
考 察
調査不足を加味してもクモ相は単純と言わざるを得ない.ただしこれは伊豆諸島
全般の傾向であり(小野 2001)
,青ヶ島のみが例外ではない.しかし伊豆諸島で
ほぼ同じ面積の利島(69 種)に比べてもその約 56%にすぎず,また種構成も貧弱
である.それは温暖湿潤な気候であるが植生が単調であること,また 1785 年(天
明 5 年)の大規模な噴火により植生がほぼ壊滅したと推定され(小林 1980),現
存植生が比較的新しいこととの関係が考えられる.さらに近接した島嶼がなく,ほ
ぼ孤島なので,バルーニングなどによる外部からの移入頻度も低いのであろう.
本土より約 370km 離れていながら南方系種についてはサヤヒメグモ,ムシバミ
コガネグモ,チュウガタコガネグモ,アシダカグモ(大野・八木沼 1972)程度で
極めて少ない.一部のコサラグモ類を除けば,関東地方平野部の一般的なクモがほ
とんどを占めている.全島ではチュウガタコガネグモが比較的多く,集落部ではオ
ニグモが目立った.また本土では普通種であるクサグモ,コクサグモが今回に至る
まで確認されていない.ジグモ,トタテグモ類などの地中性種もまったく記録がな
い.またかつて記録されていたジョロウグモも今回の調査では見つけることができ
なかった.ただ今年は,島民によると 6 月以来ほとんど降雨がなく,これほどの少
雨は稀であるとのことだった.したがって一部を除いて全島的にリター層を含めた
地表の乾燥が著しかった.このことが今年の徘徊性種,あるいは地表性のコサラグ
モ類の生息に影響を与えた可能性があることを付記しておく.
85
謝 辞
同定に関して,国立科学博物館動物研究部の小野展嗣博士にはご助言をいただい
た.紙面を借りお礼を申し上げたい.
参考文献
青ヶ島 MAN 2008.
青ヶ島 BLOG.http://shoden.ddo.jp/~aogashima/
(参照 2008-10-28)
.
伊豆諸島・小笠原諸島民俗誌編纂委員会編 1993.伊豆諸島・小笠原諸島民俗誌.ぎょうせい(東
京)
,1178pp.
伊豆諸島東京移管百年史編さん委員会編 1981.伊豆諸島東京移管百年史
上巻.東京都島嶼町
村会(東京)
,1325pp.
海上保安庁海洋情報部 2002.
“青ヶ島全景”
.海域火山データベース.
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo13-2.htm
(参照 2008-12-8)
.
岸田久吉 1961.伊豆諸島の動物.どうぶつと動物園,13(5): 16.
小林亥一 1980.青ヶ島島史.青ヶ島村(東京)
,601pp.
小林純子 1955.青ヶ島の動物.資源科学研究所彙報,38: 127-144, pls.I-II.
仲條竜太 2008.青ヶ島のクモ.Kishidaia, 94: 45.
小野展嗣 2001.伊豆諸島のクモ類.国立科学博物館専報,36: 261-277.
大野正男・八木沼健夫 1972.日本産真正蜘蛛類分布資料(II)
.東洋大学紀要教養課程自然科学,
14: 51-64.
新海栄一 1969.東京都産真正蜘蛛類.東亜蜘蛛学会,大阪,65p.
植村利夫 1951.八丈島及び青ヶ島の蜘蛛類.Acta Arachnologica, 12(3/4): 78-83.
86
KISHIDAIA, No.95, Feb. 2009
土浦市宍塚のクモ類
水山 栄子*・山根 尚子**・深澤 由憙子*・久地岡 美保*・薄井 由美子*
はじめに
これまでに土浦市宍塚のクモ類は,菅波洋平(1977)により 14 科 58 種,松田
浩二・森本信生(1995)により 18 科 72 種が報告されている.国立科学博物館教
育ボランティア「クモグループ」では土浦市の「NPO 法人 宍塚の自然と歴史の
会」の依頼を受け,クモ類の調査を行った.
採集地の
採集地の概要
宍塚は茨城県土浦市の西部,つくば市と隣接する地域で住宅街の中に残された宍
塚大池(3.3 ヘクタール)を中心に広がる約 100 ヘクタールの緑地である.宍塚に
は,上高津貝塚,考古資料館があり,湿地,水田,畑,雑木林,放置された造林地,
空き地などが混在する.今回は大池周辺を中心に調査を行った.
採集方法
採集は 2 か月に 1 回のペースで 2006 年 4 月より 2008 年 3 月まで見つけ採り,
スィーピング,ビーティング,シフティングの方法で行った.また毎月 1 回,採集
地内の 5 か所程度でトラップによる採集を行った.
結果と
結果と考察
今回の 2006 年 4 月から 2008 年 3 月までの調査では 30 科 171 種が確認され
た.今回を含むこれまでの 3 回の報告・調査で,現在までに宍塚で確認できた種は
31 科 191 種となった.しかし,調査を行うことができたのは宍塚の大池付近だけ
であり,調査地域を広げることによりまだ多くの種のクモを採集できるものと考え
られる.また,この調査により発見されたガケジグモ科ヤマヤチグモ属の 1 種は,
Ono(2008)によりヒタチヤマヤチグモとして新種記載された.
*
**
国立科学博物館教育ボランティア
NPO 法人 宍塚の自然と歴史の会
87
土浦宍塚産クモ
土浦宍塚産クモ類目録
クモ類目録
番号の前に*印のついている種は,今回の調査では確認できなかったが,過去の
調査で確認された 20 種である.過去 2 回の調査の記録は 2 行目に示した.
Atypidae ジグモ科
1. Atypus karschi Donitz 1887
ジグモ
(松田・森本 1995)
Pholcidae ユウレイグモ科
2. Pholcus crypticolens Bös. & Str. 1906
ユウレイグモ
(松田・森本 1995)
Segestriidae エンマグモ科
3. Ariadna lateralis Karsch 1881
ミヤグモ
Mimetidae センショウグモ科
4. Ero japonica Bös. & Str. 1906
センショウグモ
Oecobiidae チリグモ科
5. Uroctea compactilis L. Koch 1878
ヒラタグモ
Uloboridae ウズグモ科
6. Hyptiotes affinis Bös. & Str. 1906
オウギグモ
7. Miagrammopes orientalis Bös. & Str. 1906
マネキグモ
8. Octonoba sybotides (Bös. & Str. 1906)
カタハリウズグモ
(松田・森本 1995)
*9. Octonoba varians (Bös. & Str. 1906)
ウズグモ
(菅波 1977)
Theridiidae ヒメグモ科
10. Achaearanea culicivola (Bös. & Str. 1906)
カグヤヒメグモ
(菅波 1977)
11. Achaearanea japonica (Bös. & Str. 1906)
ニホンヒメグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
*12. Achaearanea kompirensis (Bös. & Str. 1906)
コンピラヒメグモ
(松田・森本 1995)
13. Achaearanea oculiprominens (S. Saito 1939)
キヨヒメグモ
14. Achaearanea tabulata Levi 1980
オオツリガネヒメグモ
15. Anelosimus crassipes (Bös. & Str. 1906)
アシブトヒメグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
16. Argyrodes bonadea (Karsch 1881)
シロカネイソウロウグモ
(松田・森本 1995)
17. Argyrodes kumadai Chida & Tanikawa 1999
88
チリイソウロウグモ
(松田・森本 1995)
18. Ariamnes cylindrogaster (Simon 1888)
オナガグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
19. Dipoena punctisparsa Yaginuma 1967
シモフリミジングモ
20. Enoplognatha abrupta (Karsch 1879)
カレハヒメグモ
(菅波 1977)
21. Episinus affinis Bös. & Str. 1906
ヒシガタグモ
22. Keijia sterninotata (Bös. & Str. 1906)
ムナボシヒメグモ
23. Neospintharus fur (Bös. & Str. 1906)
フタオイソウロウグモ
(菅波 1977)
24. Paidiscura subpallens (Bös. & Str. 1906)
ハイイロヒメグモ
25. Parasteatoda tepidariorum (C. L. Koch 1841)
オオヒメグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
26. Phoroncidia altiventris Yoshida 1985
ハラダカツクネグモ
27. Phoroncidia pilula (Karsch 1879)
ツクネグモ
28. Phycosoma flavomarginatum (Bös. & Str. 1906) キベリミジングモ
29. Phycosoma mustelinum (Simon 1889)
カニミジングモ
30. Rhomphaea sagana (Donitz & Strand 1906)
ヤリグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
31. Stemmops nipponicus Yaginuma 1969
スネグロオチバヒメグモ
32. Takayus chikunii (Yaginuma 1960)
バラギヒメグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
*33. Takayus latifolius (Yaginuma 1960)
ヒロハヒメグモ
(菅波 1977)
34. Yaginumena castrata (Bös. & Str. 1906)
ボカシミジングモ
35. Yaginumena mutilata (Bös. & Str. 1906)
コアカクロミジングモ
Theridiosomatidae カラカラグモ科
*36. Ogulnius pullus Bös. & Str. 1906
ヤマジグモ
Mysmenidae コツブグモ科
37. Mysmenella jobi (Kraus 1967)
ナンブコツブグモ
(松田・森本 1995)
Linyphiidae サラグモ科
38. Asperthorax communis Oi 1960
ザラアカムネグモ
39. Bathyphantes tateyamaensis (Oi 1960)
タテヤマテナガグモ
40. Bathyphantes yodoensis Oi 1960
ヨドテナガグモ
41. Diplocephaloides saganus (Bös. & Str. 1906)
ハラジロムナキグモ
42. Doenitzius peniculus Oi 1960
デーニッツサラグモ
89
43. Erigone prominens Bös. & Str. 1906
ノコギリヒザグモ
*44. Floronia exornata (L.Koch 1878)
ハナサラグモ
(菅波 1977)
45. Gonatium japonicum Simon in Bös. & Str. 1906
ヤマトケズネグモ
46. Meioneta nigra Oi 1960
クロケシグモ
47. Nematogmus sanguinolentus (Walckenaer 1842) チビアカサラグモ
アシナガサラグモ
*48. Neriene longipedella (Bös. & Str. 1906)
(松田・森本 1995)
49. Neriene oidedicata Helsdingen 1969
ヘリジロサラグモ
*50. Neriene radiata (Walckenaer 1842)
シロブチサラグモ
(菅波 1977)
51. Nippononeta ungulata (Oi 1960)
ツメケシグモ
52. Tojinium japonicum Saito & Ono 2001
ヤマトトウジヌカグモ
53. Turinyphia yunohamensis (Bös. & Str. 1906)
ユノハマサラグモ
(菅波 1977)
54. Ummeliata angulituberis (Oi 1960)
コトガリアカムネグモ
55. Ummeliata erigonoides (Oi 1960)
トガリアカムネグモ
56. Ummeliata feminea (Bös. & Str. 1906)
アトグロアカムネグモ
57. Walckenaeria chiyokoae H. Saito 1988
オオクマコブヌカグモ
58. Walckenaeria keikoae H. Saito 1988
フタエツノヌカグモ
Tetragnathidae アシナガグモ科
オオシロカネグモ
59. Leucauge magnifica Yaginuma 1954
(菅波 1977,松田・森本 1995)
コシロカネグモ
*60. Leucauge subblanda Bös. & Str. 1906
(菅波 1977,松田・森本 1995)
キララシロカネグモ
61. Leucauge subgemmea Bös. & Str. 1906
(菅波 1977,松田・森本 1995)
メガネドヨウグモ
62. Metleucauge yunohamensis (Bös. & Str. 1906)
63. Pachygnatha quadrimaculata (Bös. & Str. 1906)
ヨツボシヒメアシナガグモ
64. Pachygnatha tenera Karsch 1879
ヒメアシナガグモ
65. Tetragnatha caudicula (Karsch 1879)
トガリアシナガグモ
(菅波 1977)
66. Tetragnatha lauta Yaginuma 1959
キヌアシナガグモ
*67. Tetragnatha maxillosa Thorell 1895
ヤサガタアシナガグモ
(松田・森本 1995)
68. Tetragnatha praedonia L. Koch 1878
90
アシナガグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
69. Tetragnatha squamata Karsch 1879
ウロコアシナガグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
70. Nephila clavata L. Koch 1878
ジョロウグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
Araneidae コガネグモ科
71. Acusilas coccineus Simon 1895
ハツリグモ
*72. Araneus ejusmodi Bös. & Str. 1906
ヌサオニグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
73. Araneus mitificus (Simon 1886)
ビジョオニグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
74. Araneus pentagrammicus (Karsch 1879)
アオオニグモ
(松田・森本 1995)
75. Araneus semilunaris (Karsch 1879)
マルヅメオニグモ
(松田・森本 1995)
76. Araneus stella (Karsch 1879)
ツノオニグモ
*77. Araneus uyemurai Yaginuma 1960
ヤマオニグモ
(菅波 1977)
78. Araneus ventricosus (L. Koch 1878)
オニグモ
(松田・森本 1995)
79. Argiope amoena L. Koch 1878
コガネグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
*80. Argiope boesenbergi Levi 1983
チュウガタコガネグモ
(菅波 1977)
81. Argiope bruennichi (Scopoli 1772)
ナガコガネグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
82. Argiope minuta Karsch 1879
コガタコガネグモ
(松田・森本 1995)
83. Chorizopes nipponicus Yaginuma 1963
ヤマトカナエグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
84. Cyclosa argenteoalba Bös. & Str. 1906
ギンメッキゴミグモ
85. Cyclosa atrata Bös. & Str. 1906
カラスゴミグモ
(松田・森本 1995)
86. Cyclosa octotuberculata Karsch 1879
ゴミグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
87. Cyclosa sedeculata Karsch 1879
ヨツデゴミグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
91
88. Cyrtarachne inaequalis Thorell 1895
オオトリノフンダマシ
(松田・森本 1995)
89. Cyrtarachne yunoharuensis Strand 1918
アカイロトリノフンダマシ
90. Eriophora astridae (Strand 1917)
サガオニグモ
91. Eriophora sachalinensis (S. Saito 1934)
カラフトオニグモ
92. Gibbaranea abscissa (Karsch 1879)
キザハシオニグモ
93. Hypsosinga sanguinea (C. L. Koch 1844)
シロスジショウジョウグモ
*94. Larinia argiopiformis Bös. & Str. 1906
コガネグモダマシ
(松田・森本 1995)
95. Larinioides cornutus (Clerck 1757)
ナカムラオニグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
96. Neoscona adianta (Walckenaer 1802)
ドヨウオニグモ
(松田・森本 1995)
97. Neoscona melloteei (Simon 1895)
ワキグロサツマノミダマシ
(松田・森本 1995)
98. Neoscona punctigera (Doleschall 1857)
コゲチャオニグモ
(松田・森本 1995)
99. Neoscona scylla (Karsch 1879)
ヤマシロオニグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
100. Neoscona scylloides (Bös. & Str. 1906)
サツマノミダマシ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
Lycosidae コモリグモ科
101. Arctosa ebicha Yaginuma 1960
エビチャコモリグモ
102. Arctosa fujiii Tanaka 1985
フジイコモリグモ
103. Arctosa ipsa (Karsch 1879)
ヒノマルコモリグモ
104. Arctosa stigmosa (Thorell 1875)
クロココモリグモ
105. Hygrolycosa umidicola Tanaka 1978
シッチコモリグモ
106. Pardosa astrigera L. Koch 1878
ウヅキコモリグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
107. Pardosa laura Karsch 1879
ハリゲコモリグモ
108. Pardosa pseudoannulata (Bös. & Str. 1906) キクヅキコモリグモ
109. Pirata piratoides (Bös. & Str. 1906)
イモコモリグモ
110. Pirata procurvus (Bös. & Str. 1906)
チビコモリグモ
111. Pirata tanakai Brignoli 1983
コガタコモリグモ
112. Trochosa ruricola (De Geer 1778)
アライトコモリグモ
Pisauridae キシダグモ科
113. Dolomedes sulfureus L. Koch 1878
92
イオウイロハシリグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
114. Pisaura lama Bös. & Str. 1906
アズマキシダグモ
Oxyopidae ササグモ科
115. Oxyopes licenti Schenkel 1953
クリチャササグモ
(松田・森本 1995)
116. Oxyopes sertatus L. Koch 1878
ササグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
Ctenidae シボグモ科
117. Anahita fauna Karsch 1879
シボグモ
Agelenidae タナグモ科
118. Agelena silvatica Oliger 1983
クサグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
119. Allagelena opulenta (L. Koch 1878)
コクサグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
Hahniidae ハタケグモ科
120. Hahnia corticicola Bös. & Str. 1906
ハタケグモ
(松田・森本 1995)
Dictynidae ハグモ科
121. Cicurina japonica (Simon 1886)
コタナグモ
122. Dictyna felis Bös. & Str. 1906
ネコハグモ
123. Lathys sexoculata Seo & Sohn 1984
ムツメカレハグモ
Amaurobiidae ガケジグモ科
124. Coelotes kitazawai Yaginuma 1972
アズマヤチグモ
125. Iwogumoa insidiosa (L. Koch 1878)
シモフリヤチグモ
126. Pireneitega luctuosa (L. Koch 1878)
メガネヤチグモ
127. Tegecoelotes mizuyamae Ono 2008
ヒタチヤマヤチグモ
Anyphaenidae イヅツグモ科
128. Anyphaena pugil Karsch 1879
イヅツグモ
(菅波 1977)
Liocranidae ウエムラグモ科
129. Itatsina praticola (Bös. & Str. 1906)
イタチグモ
Clubionidae フクログモ科
130. Cheiracanthium japonicum Bös. & Str. 1906
カバキコマチグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
131. Cheiracanthium lascivum Karsch 1879
ヤマトコマチグモ
132. Clubiona japonica L. Koch 1878
ヤマトフクログモ
*133. Clubiona jucunda (Karsch 1879)
ヤハズフクログモ
93
(菅波 1977)
134. Clubiona kurilensis Bös. & Str. 1906
ヒメフクログモ
135. Clubiona lena Bös. & Str. 1906
トビイロフクログモ
(菅波 1977)
136. Clubiona vigil Karsch 1879
ムナアカフクログモ
(菅波 1977)
Corinnidae ネコグモ科
137. Orthobula crucifera Bös. & Str. 1906
オトヒメグモ
138. Phrurolithus nipponicus Kishida 1914
ウラシマグモ
(松田・森本 1995)
139. Phrurolithus pennatus Yaginuma 1967
ヤバネウラシマグモ
(松田・森本 1995)
140. Trachelas japonicus Bös. & Str. 1906
ネコグモ
Gnaphosidae ワシグモ科
141. Drassodes serratidens Schenkel 1963
トラフワシグモ
142. Drassyllus sanmenensis Platnick & Song 1986
エビチャヨリメケムリグモ
143. Gnaphosa kompirensis Bös. & Str. 1906
メキリグモ
144. Kishidaia albimaculata (S.Saito 1934)
ヨツボシワシグモ
145. Micaria japonica Hayashi 1985
ヤマトツヤグモ
146. Sanitubius anatolicus (Kamura 1989)
ナミトンビグモ
147. Zelotes asiaticus (Bös. & Str. 1906)
クロチャケムリグモ
Sparassidae アシダカグモ科
*148. Micrommata virescens (Clerck 1758)
ツユグモ
(菅波 1977)
149. Sinopoda forcipata (Karsch 1881)
コアシダカグモ
Philodromidae エビグモ科
150. Philodromus auricomus L. Koch 1878
キンイロエビグモ
(菅波 1977)
151. Philodromus spinitarsis Simon 1895
キハダエビグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
152. Philodromus subaureolus Bös. & Str. 1906
アサヒエビグモ
153. Tibellus tenellus (L. Koch 1876)
シャコグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
Thomisidae カニグモ科
154. Bassaniana decorata (Karsch 1879)
キハダカニグモ
155. Diaea subdola O. P.-Cambridge 1885
コハナグモ
94
156. Ebrechtella tricuspidata (Fabricius 1775)
ハナグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
157. Oxytate striatipes L. Koch 1878
ワカバグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
158. Ozyptila matsumotoi Ono 1988
マツモトオチバカニグモ
159. Pistius undulatus Karsch 1879
ガザミグモ
160. Thomisus labefactus Karsch 1881
アズチグモ
(松田・森本 1995)
161. Tmarus piger (Walckenaer 1802)
トラフカニグモ
162. Tmarus rimosus Paik 1973
セマルトラフカニグモ
(松田・森本 1995)
163. Xysticus croceus Fox 1937
ヤミイロカニグモ
(菅波 1977)
164. Xysticus saganus Bös. & Str. 1906
オオヤミイロカニグモ
Salticidae ハエトリグモ科
165. Carrhotus xanthogramma (Latreille 1819)
ネコハエトリ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
166. Evarcha albaria (L. Koch 1878)
マミジロハエトリ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
167. Harmochirus insulanus (Kishida 1914)
ウデブトハエトリ
*168. Helicius cylindratus (Karsch 1879)
コジャバラハエトリ
(菅波 1977)
169. Helicius yaginumai Bohdanowicz & Prószyński 1987 ジャバラハエトリ
170. Marpissa milleri (Peckham & Peckham 1894)
オオハエトリ
171. Marpissa pulla (Karsch 1879)
ヨダンハエトリ
(松田・森本 1995)
*172. Mendoza canestrinii (Ninni in Canestrini & Pavesi 1868)
オスクロハエトリ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
173. Mendoza elongata (Karsch 1879)
ヤハズハエトリ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
174. Mendoza ibarakiensis (Bohdanowicz & Prószyński 1987)
キタヤハズハエトリ
175. Mendoza pulchra (Prószyński in Wesołowska 1981)
シナノヤハズハエトリ
176. Menemerus fulvus (L. Koch 1878)
シラヒゲハエトリ
177. Myrmarachne formicaria (De Geer 1778)
タイリクアリグモ
95
178. Myrmarachne inermichelis Bös. & Str. 1906
ヤサアリグモ
(松田・森本 1995)
179. Myrmarachne japonica (Karsch 1879)
アリグモ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
180. Phintella abnormis (Bös. & Str. 1906)
チャイロアサヒハエトリ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
181. Phintella arenicolor (Grube 1861)
マガネアサヒハエトリ
182. Phintella linea (Karsch 1879)
メガネアサヒハエトリ
183. Phintella versicolor (C. L. Koch 1846)
メスジロハエトリ
184. Plexippoides doenitzi (Karsch 1879)
デーニッツハエトリ
(松田・森本 1995)
185. Plexippus setipes Karsch 1879
ミスジハエトリ
186. Pseudicius vulpes (Grube 1861)
イナズマハエトリ
(松田・森本 1995)
187. Rhene albigera (C.L.Koch 1848)
ヒメカラスハエトリ
188. Rhene atrata (Karsch 1881)
カラスハエトリ
(菅波 1977,松田・森本 1995)
189. Sibianor pullus (Bös. & Str. 1906)
キレワハエトリ
190. Siler cupreus Simon 1888
アオオビハエトリ
*191. Tasa nipponica Bohdanowicz & Prószyński 1987 トサハエトリ
(松田・森本 1995)
謝 辞
本調査を行うにあたり,「NPO 法人 宍塚の自然と歴史の会」理事長の及川ひろ
み氏には調査の便宜を図るなどご尽力を,菅波洋平氏には昭和 52 年度の研究報告
書「茨城県南部・西部の真正蜘蛛類について」をお送りいただきとても参考になっ
た.国立科学博物館の小野展嗣博士にはクモの同定などでご指導いただいた.各氏
に厚く御礼申し上げる.
参考文献
松田浩二・森本信生 1995.“宍塚大池周辺のクモ類”.宍塚大池地域自然環境調査報告書.宍
塚の自然と歴史の会編.宍塚の自然と歴史の会.224pp.
Ono H. 2008. Five new spiders of the familie Dictynidae, Cybaeidae, Coeloidae,
Coelotidae and Ctenidae (Arachnida, Araneae) from Japan. Bulltein of the National
Science Museum, Series A, Zoology, 34: 157-171.
菅波洋平 1977.茨城県南部・西部の真正蜘蛛類について.内地留学研究報告書.環境学習にお
ける地域資料収集と活用法について.
96
KISHIDAIA 投稿規定
1)投稿資格は本会会員とする.ただし共著者には,会員以外の者を含むことがで
きる.依頼原稿については,本会会員でなくとも,運営委員会の承認があれば
よい.
2)投稿内容は,クモや東京蜘蛛談話会に関しての論文,解説,記録,紀行文,感
想などとする.
3)原稿の採否については,運営委員会にて決定する.また,原稿に対して加筆・
削除・訂正などをお願いすることがある.
4)頁数は図表を含めて,刷り上がり 8 頁以内とし,超過頁分は著者負担となる.
ただし超過頁分の代金を徴収しない場合があり,別項に記す.超過頁代は 1 頁
につき 2500 円とするが,印刷費の変更等により,金額が変ることがある.
5)特別な費用を要する印刷は,その実費を著者負担とする.
6)別刷りは 50 部単位で作成するが,その費用は全額著者負担とする.
7)論文の著者校正は 1 回だけとする.DRAGLINES など短文の場合は著者校正を
省略する場合がある.
超過頁分を徴収しない場合
補 1)談話会活動報告(観察会報告・合宿報告など)は超過頁代を取らない.
補 2)各県別目録を積極的に掲載する方針が 1997 年 4 月の総会で確認され,主旨
に沿う原稿に関しては超過頁代を取らずに掲載する.
補 3)その他運営委員会で認めたもの.
原稿作成上の注意
1)手書き原稿は白紙に黒字,横書きで書いて下さい.
2)文章は 5 行目から書き始め,1 行目にタイトルを,3 行目に著者名を書いて下
さい.
3)ワープロなどで原稿を作成した場合は,プリントアウトしたものではなく FD
あるいは CD をお送りください.
4)図は製図用インクなどにて完成したものにして下さい.図,写真などを画像フ
ァイルとしてお送りくださる場合には,本文中に貼り付けたものだけではなく,
元の画像ファイルそのものもお送りください.画像解像度は刷り上りのサイズ
で 300dpi 以上でないときれいに印刷できません.デジタルカメラで撮影した
写真は解像度などを変更せずにもとのままのファイルでお送りください.
5)原稿は電子メールでも受付けます.ただし添付ファイルが開けない事も予想さ
れますのでテキストファイルで送って下さい.なお,原稿ファイルでは,中央
ぞろえや字下げなどの書式の設定は一切行わないでください.
97
KISHIDAIA 創刊「
創刊「40 周年記念号」
周年記念号」の原稿募集のお
原稿募集のお願
のお願い
2009年1月でKISHIDAIAが誕生してから40年になります.そこで次号(96号,2009年夏発行
予定)を「40周年記念号」として出版することになりました.以下のような要領で会員からの記
念原稿を募集しますので,たくさんのご投稿をお待ちしています.
記念文:談話会の活動についての思い出,要望などなんでも構いません.字数制限もありません.
原稿はKISHIDAIAと同様,池田博明または仲條竜太までご送付下さい(下記参照).
締切は 2009年6月末日を予定しています.
詳細は,新海 明
〒192-0352 八王子市大塚 274-29-603(Tel 042-679-3728)まで.
東京蜘蛛談話会
運営委員
池田 博明・小野 展嗣・木村 知之・甲野 涼・新海 明・谷川 明男・仲條 竜太・
萩本 房枝・初芝 伸吾・安田 明雄・八幡 明彦
会
長:新海 栄一 185-0011
東京都国分寺市本多 1-6-6
本
部:小野 展嗣 169-0073
東京都新宿区百人町 3-23-1
国立科学博物館動物研究部
会誌編集:仲條 竜太 362-0071
埼玉県上尾市井戸木 4-15-13
E-mail: r_nakajo@jcom.home.ne.jp
(原稿送付先) 池田 博明 258-0018 神奈川県足柄上郡大井町金手 1099
E-mail: fwgd9084@mb.infoweb.ne.jp
通信編集:谷川 明男 247-0007 神奈川県横浜市栄区小菅ヶ谷 1-4-2-1416
E-mail: dp7a-tnkw@j.asahi-net.or.jp
事 務 局:初芝 伸吾 186-0002 東京都国立市東 3-11-18-203(有)エコシス
E-mail: hatsushiba-ecosys@h8.dion.ne.jp
会
計:安田 明雄 231-0861 神奈川県横浜市中区元町 5-219
E-mail: kobato@gol.com
郵便振替:00170-8-74885 東京蜘蛛談話会(年会費一般 3,800 円/学生 2,000 円)
会計監査:笠原喜久雄・梅林 力
KISHIDAIA No.95
2009 年 2 月 28 日 印刷
編集者 仲條竜太
2009 年 2 月 28 日 発行
発行者 新海栄一
発行所 東京蜘蛛談話会
東京都新宿区百人町 3-23-1 国立科学博物館動物研究部 小野展嗣方
印刷 株式会社オーエム 大阪市東成区中道 4-5-14-101
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KISHIDAIA
Bulletin of Tokyo Spider Study Group
No.95,Feb. 2009
─ 目
次 ─
貞元己良:ハラビロササヒメグモとフタホシヒメグモ
(香川県の合宿に参加して)……...........……....................................... 1
小松 貴:アリの巣に住むクモ,ウスイロウラシマグモについて..……………… 13
小関 峻徳・加倉井 駿也・児島 寛之・池田 博明:
チュウガタシロカネグモの生活史…………………………………………… 17
西野真由子:ジョロウグモの越冬卵死亡の危険因子の分析………………..…… 23
相馬なおみ・仲條竜太・長谷川雅美:
千葉県白井市におけるコガネグモの生息環境…………….……………….. 27
DRAGLINES
荘司康治郎:シロオビトリノフンダマシの卵のう………………...…………... 32
笹岡文雄:伊豆諸島・八丈島のクモの小記録……………………………………. 33
仲條竜太:八丈小島のクモ III...….......................................…………….... 36
笹岡文雄:文献調査による伊豆・小笠原諸島のトタテグモ類 追補…………. 37
新海 明・谷川明男:東京蜘蛛談話会 2008 年度合宿報告
香川県高松市塩江温泉と五色台周辺のクモ………………………………... 39
仲條竜太・柊 雅実・中西亜耶:伊豆諸島三宅島で採集したクモ………………… 49
仲條竜太・中西亜耶・柊 雅実:伊豆諸島御蔵島で採集したクモ………………... 53
馬場友希・新海 明・谷川明男:文献による福岡県産クモ類目録………………… 57
笹岡文雄:伊豆諸島・青ヶ島のクモ類…………………………………………...… 81
水山栄子・山根尚子・深澤由憙子・久地岡美保・薄井由美子:
土浦市宍塚のクモ………………………………...…………………………... 87