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表面科学 Vol. 28, No. 1, pp. 40―45, 2007
研究紹介
カーボンナノチューブトランジスタにおける
電極界面の特性
大野雄高*,**・能生陽介*・水谷
*名古屋大学大学院工学研究科
**
(独)
科学技術振興機構さきがけ
***名古屋大学高等研究院
孝*,***
! 464―8603 愛知県名古屋市千種区不老町
! 332―0012 埼玉県川口市本町 4―1―8
! 464―8603 愛知県名古屋市千種区不老町
(2006 年 10 月 12 日受理)
Interfacial Property of Metal/Nanotube Contacts
in Carbon Nanotube Transistors
Yutaka OHNO*,**, Yosuke NOSHO* and Takashi MIZUTANI*,***
*Department
of Quantum Engineering, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya, Aichi 464―8603
Japan Science and Technology Agency, 4―1―8 Honcho, Kawaguchi, Saitama 332―0012
***Institute for Advanced Research, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya, Aichi 464―8603
**PRESTO,
(Received October 12, 2006)
It is important to understand the interfacial properties of the nanotube/metal contacts because, in the case of carbon
nanotube field-effect transistors (NT-FETs), the FET action is dominated by the Schottky barrier formed at the interface of
the source contact. In this study, we have studied the interfacial properties from the electrical characterization of NT-FETs.
First, the conduction pass in the vicinity of the contact electrodes has been investigated using a multi-terminal device.
Then, the relation between conduction property of NT-FETs and work function of the contact metals has been investigated.
The interfacial band structure has been discussed in terms of the temperature dependence of the drain current.
1.は
じ
め
高いポテンシャルをもつ。このことから,国際半導体技
に
術ロードマップ(ITRS)ではナノチューブを開発緊急
カーボンナノチューブは,グラファイト 1 層のシート
を直径 1∼3 nm 程度の円筒状に丸めた一次元性の構造
をもち,
優れた電子伝導特性をもつナノ電子材料である。
度の高いデバイス材料のひとつとして採り上げられてお
り,現在最も重要な研究対象のひとつである。
ナノチューブの材料特性をデバイスとして十分に活か
例えば,その一次元性のため,電子がバリスティック伝
すためには,特に表面・界面に関する課題を克服しなけ
導(無散乱で走行すること)に近い輸送を起こすことに
ればならない。例えば,キャリアはナノチューブの表面
よって,高いキャリア移動度・速度が得られる1,2)。例
に存在するため,外部環境の影響を受けやすく,ヒステ
えば,直径 1.5 nm のナノチューブのもつ電子移動度は
リシス4,5)や大気中の酸素によるドーピング6,7)などの
cm2/Vs)
問題が生じる。また,酸素は電極/ナノチューブ界面の
cm2/Vs)に比べて非常に大きい。実際の
ダイポールにも影響する8)。これらの問題は保護膜の導
ナノチューブ電界効果型トランジスタ(nanotube field-
入により解決されつつあるものの,保護膜による伝導特
effect transistor; NT-FET)において,性能指標のひと つ
性の変化9)も報告されており,保護膜とナノチューブの
で あ る 相 互 コ ン ダ ク タ ン ス は 17 S/mm(最 先 端 の Si
界面特性を十分に理解する必要がある。
室温 で 約 36000
や GaAs(8500
cm2/Vs
に も 達 し2),Si(1500
MOSFET で 1.2 S/mm 程度)という驚異 的 な 値 が 得 ら
また,電極と半導体ナノチューブの界面においては,
れ3),カーボンナノチューブはナノデバイス材料として
通常,ショットキ障壁が存在する。このため,NT-FET
の動作機構は,MOSFET のようなチャネルコンダクタ
E-mail: yohno@nuee.nagoya-u.ac.jp
ンスを変調する動作とは異なり,ショットキ障壁変調動
大野雄高・能生陽介・水谷
孝
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作となる8)。これは,Fig. 1 に示すように,ソース電極
FET 特性の温度依存性から電極界面のバンド構造につ
とナノチューブの接合で形成されるショットキ障壁によ
いて議論する。
ってゲート動作が行われるものである。ゲート電圧(VGS)
を印加することによりゲート―ソース間の電界を変化さ
2.多端子素子を用いたコンタクトの解析
せ,ショットキ障壁の厚さを制御し,トンネル注入され
コンタクトの特性を調べる上で,ナノチューブの抵抗
るキャリア量を変調する。このようなショットキ障壁動
(チャネル抵抗(RCH))とコンタクト抵抗(RC)を分離
作 FET においてはコンタクト抵抗が大きく,その低減
して評価することが重要である。その方法としては,四
が課題である。Javey らはショットキ障壁の高さ(φ Bp)
探針法が広く用いられているが14,15),カーボンナノチ
が電極の仕事関数に依存することに着目し,仕事関数の
ューブの場合は,コンタクト電極の形成によりナノチュ
大きい Pd を電極に用いることにより,p 型 NT-FET に
ーブの伝導性が変化することが懸念され,必ずしも妥当
おいて低抵抗コンタクトを実現している10)。一方,後に
な方法とはいえない。もうひとつの方法としては,トラ
述べるように,我々は逆に仕事関数の小さい材料(例え
ン ス ミ ッ シ ョ ン・ラ イ ン・モ デ ル(transmission line
ば Ca)を電極に用い,電子に対するショットキ障壁の
model; TLM)を用いた方法がある12,16)。これは,チャ
高さ(φ Bn)を下げることにより n 型 NT-FET を実現し
ネル長の異なるデバイスをいくつか準備し,その二端子
ている11)。これらのように,NT-FET
抵抗を測定する方法である。RCH と 2 RC の和が二端子
においては電極/
ナノチューブ界面の特性が伝導特性を支配しており,そ
抵抗として測定されるが,チャネル長の変化による RCH
の界面特性を詳細に理解することが重要である。
の変化分を求め,チャネル長をゼロに外挿することで
本研究では,ナノチューブと電極の界面について,
NT-FET の電気的特性から調べている。まず,1 本のナ
2RC を求められる。我々は,1 本のナノチューブに間隔
を変えて多数の電極を形成し,TLM 測定を行った。
ノチューブに複数の端子を形成した多端子素子を用い
Fig. 2 は作製した多端子デバイスの SEM 像である。
て,ナノチューブと電極の接合近傍においてキャリアが
電極間隔は 0.3∼3 μm である。基板は熱酸化膜(100 nm)
流れる微視的な経路を知る手がかりを得ている12)。次に,
付きの p +-Si 基板でバックゲートとして用いた。触媒と
様々な電極材料を用いて NT-FET を作製し,電極材料の
して Pt/Co を基板上にパターニングした後,熱 CVD 法
特性の相関を見出している13)。また,
により単層ナノチューブを成長した17)。SEM 観察によ
仕事関数と FET
りナノチューブの位置を確認した後,電子線リソグラフ
ィにより Au 電極を形成した。なお,TLM 測定から RC
を求めるためには,各端子における RC が等しいことが
重要であるが,電極形成後に加熱処理を行うことにより
均一な RC を得ることが可能である。
Fig. 3 は 1 本の半導体的ナノチューブの TLM 測定の
結果である。各電極間で測定した二端子抵抗を電極間隔
(チャネル長)に対してプロットしたものである。ゲー
ト電圧は−5 V であり,FET は十分に ON の状態(キャ
リアはホール)である。二端子抵抗はチャネル長の増加
Fig. 1. (a) Schematic of back-gate NT-FET and (b) energy
band structures along source, nanotube, and drain i)
without bias voltage and ii) with drain voltage (VDS )
and gate voltage (VGS). Here, φ Bn and φ Bp are Schottky barrier heights for an electron and a hole, respectively. EC and EV are conduction band edge and valence band edge, respectively, and EF is Fermi energy of contact metal.
Fig. 2. SEM image of fabricated multi-terminal device.
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Table 1. Resistance R measured by four-probe
technique. Channel resistance (RCHTLM )
measured by TLM technique and twoterminal resistance ( R 2-Term ) are also
shown for comparison.
LCH(μm)
0.3
0.64
R (kΩ) RCHTLM(kΩ)
67.8
53.2
11.3
24.1
R 2-Term(kΩ)
67.2
62.7
した二端子抵抗)をまとめて示す。本デバイスにおいて
Fig. 3. Channel length dependence of two-terminal resistance (TLM plot).
測定された四探針抵抗 R は TLM 測定によって見積もら
れたチャネル抵抗(RCHTLM)よりも数倍大きく,内側の
二端子間の抵抗(R 2-Term)とほぼ等しくなった。
四探針抵抗 R と二端子抵抗 R 2-Term が等しくなること
から,ナノチューブの四探針測定の場合,外側の電極か
ら注入された電流 I は Fig. 4(b)に示すような経路で
流れることがわかる。つまり,電流 I が内側の電極を通
過する際,電極下のナノチューブを流れず,逐一電極を
介して流れていることが推測できる。この場合であれば,
電圧計 V を接続した内側の二端子間に 2 RC が含まれ,
(=RCH+
四 探 針 抵 抗 R(=V /I )は 二 端 子 抵 抗 R 2-Term
2 RC)と等しくなる。おそらく,電極を形成したことに
より電極下のナノチューブの伝導性が失われているため
と思われるが,四探針測定をナノチューブに適応する場
合には注意が必要である。
Fig. 4. (a) current pass and equivalent circuit in ideal fourprobe measurement and (b) those in real four-probe
measurement of carbon nanotube.
さて,上記のように電極下のナノチューブの伝導性が
失われていることを考えると,NT-FET において,ナノ
チューブと電極の間のキャリア輸送が電極のエッジ近傍
のみで行われていること(エッジ伝導)が示唆される。
とともにほぼ線形に増加している。この直線の傾きから
今回作製した素子において最も幅の細い電極(100 nm)
単位長さ当りの RCH,y 切片から 2 RC が与えられ,それ
においても,エッジ伝導を示す結果が得られており,電
ぞれ 37.6 kΩ/μm,47.2 kΩ であった。この RC は,比 較
気的コンタクトは電極のエッジから 50 nm 以下の距離
的低い値が得られる Pd を用いた場合と比べてさほど遜
で行われていると思われる。エッジ伝導の場合,微小電
色ない値である。しかしながら,チャネル長が 1 μm 程
極によって均一なコンタクトを形成することが可能であ
度に短くなると,デバイスの全抵抗に対して RC が支配
り,デバイス形成の面では好ましい。しかしながら,電
的であり,RC の低減はまだ十分でない。
気的コンタクト長が短いことは RC の増大の一因になり
次に,同じ多端子素子を用いて四探針測定を行い,
TLM の結果と比較した。四探針測定においては,Fig. 4
(a)に示すように,外側の二端子間に一定電流 I を流し,
内側の二端子間に生じる電圧 V を測定する。内部抵抗
が十分に大きい電圧計を用いれば,RC を排除して,内
側の二端子間のナノチューブの抵抗 RCH のみが R =V /I
として与えられるはずである。
得るため18),さらに微視的にコンタクト長と RC の関係
を明らかにすることが重要である。
3.電 極 の 仕 事 関 数 に よ る N T - F E T 特 性 の
変化
1 節で述べたように,NT-FET では電極とナノチュー
ブの接合で形成されるショットキ障壁によって電流が制
Table 1 に四探針抵抗 R の測定結果と,比較のため,
御されるため,電極界面の理解が重要である。ここでは,
TLM 測定から見積もられたチャネル抵抗(RCHTLM),お
仕事関数 φ の異なる様々な電極材料を用いた NT-FET
よび内側の二端子間の抵抗(R 2-Term;
を作製し,その電気的特性解析から界面特性を調べた結
2 RC を含めて測定
大野雄高・能生陽介・水谷
果について述べる。
孝
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が増加し,負側の VGS で ID がほぼ 0 となる n 型伝導特
電極の材料としては,Pd(φ Pd=5.1 eV),Ti(φ Ti=4.4
性が得られている。Mg-NT-FET においては,VGS によ
,Ca(φ Ca=2.8 eV)を用いた。
eV)
,Mg(φ Mg=3.7 eV)
って p 型あるいは n 型の電流成分が現れ,両極性伝導
Fig. 5 にこれらのコンタクト材料とナノチューブの仕事
を示した。これらの振舞いは,Fig. 6(b)に示すように,
関数の関係を示す。コンタクト材料の酸化を防ぐととも
電極のフェルミエネルギー(EF)とナノチューブのバン
に物理的強度を確保するため,コンタクト材料の上に Au
ドとの関係により説明できる。Pd 電極の場合は仕事関
や Al などを蒸着した。電気的特性の測定は低温プロー
数が大きく,EF はナノチューブの価電子帯端(EV)に
バを用いて真空中にて行った。
近い。したがって,負の VGS を印加するとホールが注入
Fig. 6(a)は作製した NT-FET のドレイン電流
(ID)-VGS
される。逆に,VGS を正側に印加した場合は,電子に対
特性である。Pd-NT-FET と Ti-NT-FET においては,VGS
してバンドギャップ程度の大きなショットキ障壁が存在
を負側に印加すると ID は増加し,逆に VGS を正側に印
し,電子は注入されない。一方,Ca 電極の場合は仕事
加すると ID はほぼ 0 となり,典型的な p 型伝導特性を
関数が小さく,電極の EF はナノチューブの伝導帯端付
示した。これに対し,Ca-NT-FET では,正側の VGS で ID
近(EC)に位置するため,電子が注入され,n 型特性を
示す。Mg 電極においては,EF はナノチューブのバンド
ギャップ付近に存在し,電子・ホールともに注入できる。
NT-FET の特性を制御するためには,仕事関数に注目し
て電極材料を選ぶことが重要である。
電極界面の特性を調べるために,ID の温度依存性を
測定した。Fig. 7(a)は Ca-NT-FET について,VGS をパ
ラメータとして,ID を 1000/T に対してプロットした結
果(アレニウスプロット)である。∼200 K 以下では ID
Fig. 5. Work functions ( φ ) of various contact metals and
carbon nanotube. The layer structures of electrodes
are also shown.
は温度に依存せずほぼ一定であり,Fig. 7(b)に示すよ
うに,トンネル電流が支配的である。これに対し,∼200
K 以上においては温度の上昇に従って ID 増加しており,
熱電界放出(電界により薄くなった障壁上部を熱励起さ
れたキャリアがトンネルすること)による電流成分が観
測される。
熱電界放出領域におけるアレニウスプロットの傾きが
VGS によって変化していることに注目する。アレニウス
Fig. 6. (a) ID-VGS characteristics of fabricated NT-FETs with
different contact metals. (b) Variation of energy band
structure by work function of contact metal.
Fig. 7. (a) 1/T dependence of ID of Ca-NT-FET. (b) Tunneling and thermal-assisted tunneling.
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性が変化するものの,仕事関数はショットキ障壁の高さ
に直接的には反映されていない。これは,電極/ナノチ
ューブ界面にダイポールが存在し,界面において急峻な
ポテンシャル降下が起こっていると考えれば説明でき
る20)。な お,界 面 ダ イ ポ ー ル の 原 因 と し て は,MIGS
(metal-induced gap state)や酸素分子などの吸着,あるい
はプロセス中に界面に導入される不純物などが考えられ
るが,詳細はまだ明らかにされていない。
半導体と金属の界面特性を表す指標として,金属の仕
事関数 φ M の変化に対するショットキ障壁の高さ φ Bn の
Fig. 8. VGS dependence of barrier height. The insets show
the mechanisms of carrier injection (i) around threshold voltage and (ii) on state.
変化で定義される S 値(――― d φ Bn/d φ M)がよく用いられ
る。前述の結果をもとにカーボンナノチューブにおいて
S 値を概算すると 0.2∼0.5 となる。Si や Ge などの元素
半 導 体 の 場 合,特 別 な 表 面 処 理 を し な け れ ば S 値 は
プロットの傾きは熱的な障壁の高さを表し,このことは
0.05∼0.1 と小さく21),フェルミレベルピンニングが生
VGS によって熱電界放出に対する障壁の高さが変化して
じ,その結果,デバイス特性は電極の仕事関数をほとん
いることを示している。アレニウスプロットの傾きから
ど反映しない。これに対し,ナノチューブの S 値は比
見積もった障壁の高さを VGS の関数として Fig. 8 に示
較的大きな値が得られ,フェルミレベルはピンニングさ
す。VGS > 10 V においては,障壁の高さ は∼25 meV 程
れていない。おそらく,ナノチューブが筒状の構造を持
度であった。一方,VGS < 10 V においては,VGS の減少
ち,ダングリングボンドのない系であることを反映して
に従って障壁の高さが増加し,VGS=6 V において 180
いると思われ,ナノチューブの特徴のひとつといえる。
mV 程度の障壁が存在した。この障壁高さの増加は,挿
入図に示すように,ゲート電界によるショットキ障壁の
4.ま
と
め
厚さの変化で説明できる。つまり,FET が十分に on の
最近の我々の研究から,NT-FET のコンタクト電極の
領域(VGS > 10 V)においては,ショットキ障壁が薄く,
界面について,電気的特性から調べた例を報告した。ま
キャリアはわずかな熱励起でトンネル注入され,実効的
ず,多端子素子を用いて TLM 測定から RC と RCH を分
な障壁高さは低い。一方,FET のしきい値付近(VGS < 10
離して評価することを可能とするとともに,電極下のナ
V)においては,ショットキ障壁は厚くなり,キャリア
ノチューブの伝導性が失われており,ナノチューブと電
はトンネルできず,障壁を熱的に越える電流成分が支配
極の間のキャリア輸送が電極のエッジで行われているこ
的になる。したがって,VGS の減少とともに,測定され
とを明らかにした。次に,電極材料の違いによる FET
る障壁高さは真のショットキ障壁の高さに近づく。この
特性の違いを調べ,電極材料の仕事関数に従って,FET
Ca-NT-FET においては,ショットキ障壁の高さは少な
特性が n 型から p 型に変化することを示した。ドレイ
くとも 180 meV と見積もることができる。
ン電流の温度依存性から界面の障壁高さを見積もること
電極/ナノチューブ界面のバンド構造について考える。
を可能とし,その結果から,電極/ナノチューブ界面に
Fig. 5 に示したように,Ca や Mg の仕事関数は φ Ca=2.8
ダイポールの存在が示唆された。なお,ナノチューブの
eV あるいは φ Mg=3.7 eV であり,単層ナノチューブの
界面の S 値は Si 等の半導体に比べやや大きな値であっ
仕事関数∼4.8 eV19)より 1∼2 eV も小さい。したがって,
た。
こ れ ら の 金 属 と ナ ノ チ ュ ー ブ の 接 合 を 単 純 な MottSchottky モデルで考えた場合,金属の EF はナノチュー
ブの EC より高くなり,電子に対して障壁は存在しない
はずである。しかしながら,前述の結果のように,Ca
電極の EF はナノチューブの EC より,少なくとも 180
meV ほど低い位置にある。また,Mg 電極の場合は両極
性伝導を示したことから,Mg 電極の EF はナノチュー
ブのミッドギャップ付近に位置すると考えられる。つま
り,NT-FET においては,電極の仕事関数により伝導特
文
献
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孝
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