コンテンツ配信標準化調査研究 成 果 報 告 書 平成14年3月 財団法人 日 本 規 格 協 情報技術標準化研究センター 会 目次 1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2.委員会の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 3.コンテンツ流通とバイラル・マーケティング ・・・・・・・・ 4.音楽流通を事例とする、コンテンツ流通ビジネスモデルの変遷 5 ・・・ 13 5.コンテンツ流通に関する編集工学的アプローチ ・・・・・・・・ 20 6.メタデータの利用と流通 ・・・・・・・・ 31 ・・・・・・・・ 31 ・・・・・・・・ 31 6.1.2 ID、メタデータ、コンテンツの種類と関係 ・・・・・・・・ 34 6.1.3 教育コンテンツとメタデータの標準化 ・・・・・・・・ 40 6.2メタデータと Semantic Web ・・・・・・・・ 47 6.3 ID に関する注目要素技術:ID チップ ・・・・・・・・ 67 7.コンテンツ配信と知識メディア技術 ・・・・・・・・ 70 7.1 ライセンス管理に残された課題 ・・・・・・・・ 70 7.2 教材コンテンツの部品化事例 ・・・・・・・・ 75 7.3 ミームメディアを用いたウェブコンテンツの編集 ・・・・・・・・ 81 6.1 メタデータと ID に関する動向 6.1.1 歴史 8.モーバイル配信 ・・・・・・・・ 85 1. はじめに コンピュータネットワークを通して、動画や静止画、ゲーム、音楽、ソフトウエア、書 籍等、知的財産権のあるものを売買するコンテンツ配信が注目されている。米国等では大 容量コンテンツを効率的に品質保証配信する Content Delivery Network(CDN)技術が注 目されており、IETF 等も標準化を行っている。このような状況を受けて本委員会では、知 的財産権の尊重とコンテンツのスムーズな流通の両立を目指すコンテンツ流通システム及 びその構成要素を標準化することを目的として調査研究活動を行っている。本年度はコン テンツ配信のビジネスモデルを対象として、調査研究活動を行った。 -1- 2. 委員会の構成と活動概要 2.1 委員会の構成 平成13度は以下の委員会構成で調査研究活動を行った。 表2.1−1 コンテンツ配信標準化調査研究委員会 名簿 (順不同・敬称略) 区 分 氏 名 委員長 田中 譲 北海道大学 工学部 電気工学科 委 茂樹 株式会社日立製作所 員 安藤 勤 務 先 情報・通信グループ 経営企画本部 〃 太田 剛 編集工学研究所 〃 岡本 泰次 富士通株式会社 〃 岸上 順一 NTTサービスインテグレーション基盤研究所 グローバル情報流通 SE プロジェクト 〃 木戸 達雄 経済産業省 産業技術環境局 標準課 〃 阪口 克彦 株式会社ソフトフロント 〃 坂本 浩一 日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社 〃 佐藤 和洋 札幌学院大学 社会情報学部 〃 三瓶 徹 〃 田中 一之 日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社 〃 成田 久雄 株式会社富士通インフオソフトテクノロジ 第 5 開発統括部 〃 羽豆 文江 日本電気株式会社 〃 平山 智史 ソニー株式会社 コアテクノロジー&ネットワークカンパニー 〃 牧村 信之 財団法人日本情報処理開発協会 〃 宮澤 由壽 株式会社日立情報システムズ 事業企画開発本部 〃 宮脇 裕治 富士ゼロックス株式会社 〃 村野 正泰 株式会社三菱総合研究所 事務局 木村 高久 システムサポート本部 システム技術統括部 Web サービス部 東京事務所 第 3 産業システム部 社会情報学科 株式会社スーパーコンテンツ流通 知的財産部 財団法人日本規格協会 産業システム事業部 標準化推進部 技術戦略部 先端情報技術研究所 インダストリーソリューションズカンパニー 情報技術研究センター 情報技術開発部 情報技術標準化研究センター -2- 2.2 平成 13 年度の活動概要 本年度は 12 回の委員会を開催し、コンテンツ配信ビジネスモデルの標準化を目的とす る調査研究を行った。以下に報告する 10 回の委員会で調査内容の審議を行い、11、12 回 (2月 25 日、3月 18 日)では報告書のレビューを行った。 第1回委員会(4 月 13 日) 簡単なモデルで使いやすくオープンかつ汎用的なアクセス手段を提供する、アクセス チケット社のアクセスチケットシステムのコンテンツ配信について、説明会を行い、質疑 応答を行った。 第2回委員会(5 月 24 日) 本年度の進め方に関して、テーマを絞るという委員長提案に関する議論を行った。 第 3 回委員会(6 月 19 日) 商品の知名度、注目度を高める戦略について、事例に基づいて、方法および効果につ いてのディスカッションを行った。メールと Web について用途、効果の違いならびに使い 分けを議論した。商品を告知する手段について議論した。インターネットでの先物取引に ついて議論した。また、インターネットビジネスにおける参入障壁について議論を行った。 第4回委員会(7 月 17 日) インターネットプロトコル v6 (Ipv6)とその家電への浸透という話題提供に基づき、 Ipv6 で新たに提供される機能、ユビキタス環境への寄与、パーソナルコンテンツビジネス の可能性、セキュリティ問題とコピー問題、情報・物流融合による新ビジネス、コンテン ツの問題、全ての機器にアドレスが付くことの是非、を議論した。また編集工学研の太田 委員より、コンテンツを享受する人間に注目し、コミュニテイが共有する知識の構造化を 目標とした「コミュニティエディタ」に関する話題提供を受けた。この話題に基づき、バ ーチャルコミュニティの寿命、共同知の構造化法、コンテンツの質の評価法、コンテンツ の器のありかた、及びに共同知の詳細に関する議論を行った。 第5回委員会(8月 24 日) 北大メディア研におけるコンテンツ研究の紹介、及びに教育分野における情報標準化 関連活動に関する報告を受けた。 第 6 回委員会(9 月 21 日) 0.4 ミリ角の非接触 IC チップに関する話題提供に基づき、このチップをコンテンツと -3- 組み合わせて使う可能性を議論した。また CDN2001 に関連して、大容量コンテンツの効 率的配信が商業化時代に入ったことが報告された。また、今後焦点を当てるべき課題につ いて議論し、メタデータ流通、共同知のコミュニティウェア、コンテンツ流通の支援、教 育分野での再編集モデル、が抽出された。 第 7 回委員会(10 月 29 日) メタデータの活用に関する議論を行った。Web のメタデータに関する調査報告を基に Dublin Core、Ontology に関する議論を行った。MPEG7 と Service Interface の説明を基 に、放送におけるメタデータ記述と利用について議論した。また、メタデータのコンテン ツ流通への活用に関する議論を行った。 第8回委員会(11 月 19 日) メタデータ応用システムであるセマンティック Web の紹介に基づき、議論を実施した。 また、音楽と聞き手との関連(環境、持ち物、着物、乗り物)について議論を行った。 第 9 回委員会(12 月 21 日) サイドスケープ社の Fantastica の説明を受けた。また、今年度報告書の目次案を決定 するための議論を行った。本年度の議論として、Meta Data の流通と利用、相互編集と共 同知、コンテンツの ID、音楽流通を事例とするコンテンツ流通ビジネスの歴史、を抽出し、 報告書の目次案を決定した。 第 10 回委員会(1月 30 日) PAD で実現した Dynamic Gene Annotation の説明を受け、再加工可能コンテンツに ついて議論した。The anatomy of buzz の紹介、及びに、報告書内容の詳細に関する議論を 行った。 -4- 3. コンテンツ流通とバイラル・マーケティング 3.1 インターネットとコンテンツ流通 本年のコンテンツ配信標準化調査研究委員会では、主として、ビジネスモデルの観点か らコンテンツ配信の技術を調査検討した。 インターネットを介してのコンテンツの流通には、大別して B2B、B2C、C2C の形態が ある。サービスを提供する提供者と、これを捜し求め購入する顧客がプレイヤーとして存 在する。提供するものには、マルチメディアコンテンツ、情報提供や旅行手配などのサー ビス、売る人と買う人のマッチングを図るようなマッチングの場などがある。B2B や C2C では、メタレベルで複数の B と B の間、あるいは複数の C と C との間のマッチングの場 を提供するビジネスが存在する。オークションや逆オークションのサイト、サーチエンジ ンサービス、ポータルサイトなどがマッチングの場を提供している。これに対し、B2C で は、B 側がコンテンツやサービスを提供し、多数の C が各々独立にコンテンツのダウンロ ードやサービスへのアクセスを行う。 コンテンツ流通に関して、頻繁に話題になることは、 「B2C でダウンロードされたコンテ ンツが、C2C(あるいは P2P)を用いて不正に再流通されることをいかに防ぐか?」、 「そもそ もこれを防ぐことは可能なのか?」、「防ぐべきなのか?」という疑問である。不正再流通 を防ぐ立場はコピー・プロテクションの技術を用いてペイ・パー・コピーを堅持するとい う立場と、超流通技術を用いてペイ・パー・ユースの考えを導入するという立場に分かれ る。しかし、完全なコピー・プロテクションは、PC をクライアントに用い、インターネッ トを流通ネットワークとして用いるオープン流通ネットワーク環境では実現が不可能であ る。この点は、携帯電話や PHS などのクローズド流通ネットワーク環境でのコンテンツ流 通とは事情を異にする。 B2C では、B 側が用意したウェブページ上でユーザがマウスクリックをしてコンテンツ をダウンロードし、あるいはサービスにアクセスするときには、課金情報を取ることがで きる。コンテンツのダウンロードもサービスと考え、このようなサービスの提供を定額の 事前会員契約に基づいて提供することも考えられる。しかし、ダウンロードされたコンテ ンツのローカル・ファイルへのセーブ機能を提供した途端に、C2C(あるいは P2P)での不正 再流通を完全に防止することは不可能になる。コンテンツのレンダリングや再生に特殊な レンダラーやプレイヤーを用いるようにして、その実行の際に、B 側が提供するサーバをア クセスして照合させるようにすることは考えられるが、これとても完全なプロテクション は難しい。新鮮さが価値となるコンテンツの場合には、ダウンロード後の不正再流通は、 時間が経過すると共に急速に価値を失う。サービス提供の場合にも、サービス内容は TPO に依存しており、そこから得られた情報のみを再流通したとしても、その価値は大きくな いことが多い。 -5- このように、ビジネスの観点からコンテンツ流通を見た場合には、B2P で流通するコン テンツが C2C(あるいは P2P)に流れることは望ましくなく、B2B と C2C(あるいは P2P)で 流通するコンテンツは別のものでなければならない。 それでは、B2C のコンテンツ流通はウェブ技術以前と以後とでどう変わったのであろう か?B2C でのコンテンツ流通が結局はワン・クリックによるダウンロードだとすると、ウ ェブ技術以前のftpなどを用いた流通とどう違うのであろうか?ウェブの普及によって 何故このようにコンテンツ流通がビジネスチャンスとして注目されるのであろうか? コンテンツを求めてウェブをアクセスするのは、コンテンツのダウンロードのみのため ではない。ダウンロード用のウェブページには他にも関連するコンテンツに関する情報が、 それらのダウンロードのためのアンカーと共に提供されている。そもそも、特定のコンテ ンツを求めて特定のウェブページをアクセスするのは、サーチエンジンでこのページを見 つけたか、誰かから口コミやメイルでこのページのことを聞いたことが契機となっている。 このように考えると、情報を簡便に広範に短時間に流通・再流通するというインターネッ トの特性は、コンテンツそのものの流通を変えたというよりは、どのようなコンテンツが どこで提供されているか、その質はどうかと言ったような、コンテンツに関するメタ情報 の流通に大きな変革をもたらしたと見ることができる。コンテンツそのものは、ワン・ク リックでダウンロードされるものであり、提供者からすれば、それが提供者の管理を離れ たところで勝手に大規模に再流通されることは決して望ましくないことだからである。こ れに対し、コンテンツに関するメタ情報は、提供者の手を離れたところで、勝手に大規模 に再流通されればされるだけ、コンテンツのダウンロード・アクセスが増えることになる。 このようなメタ情報の積極的な配信と再流通の促進こそが、コンテンツ流通にとって重 要であり、それこそが、インターネットの特性を利用したネットワーク時代のマーケティ ングのキーポイントであることが、 2000 年に米国で出版された Seth Godin の Unleashinng The Ideavirus(バイラルマーケティング、翔泳社)や、Emanuel Rosen の The Anatomy of Buzz(クチコミはこうしてつくられる、日本経済新聞社)において、指摘されている。 3.2 ネットワークの重要性 エマニュエル・ローゼンはかつてエンドノートという名前の研究者向け参考文献管理作 成ツールを唯一の製品として販売する社員 5 人のベンチャーに働いていた。カリフォルニ アにあったこの会社は広告を一切しなかったが、最初に送られてきた注文書はプリンスト ンからのものだった。バークレーでのエンドノートの内覧会を見た研究者の一人が学者た ちの電子掲示板に熱狂的なメッセージを書き込んだのをこの顧客がみて注文してきたと分 かった。このような経験からその後、彼はバズ、つまり口コミの研究を始め、多くの製品 の購買行動において、バズが重要な役割を果たすことを見出す。彼はバズを、ある特定の 製品・サービス・企業について、あらゆる時点で行われる人と人とのコミュニケーション -6- をすべて集計したものと定義している。 ある特定の製品を普及させるのに、目に見えないネットワークが重要になってきている。 競争するためには、個々の顧客を相手に商売しているのではなく、むしろ顧客のネットワ ークを相手にしていることを理解しなくてはならなくなってきた。情報過多の現在、顧客 1 人が 1 日に触れる広告の数は 500 以上に上ると見積もられている。このようにノイズが多 すぎる状況では、顧客にメッセージが殆ど伝わらない。顧客はまた、疑い深い。米国にお けるある調査では、ソフトウェア会社やコンピュータ会社からの情報がある程度以上信じ られると答えたのは、わずか37%。製薬会社では28%。自動車会社では18%であっ た。さらに重要なことは、顧客が情報を共有するためのインターネットという新しい道具 を見つけたことである。これにより、知人とだけでなく、見知らぬ人ともコミュニケーシ ョンができる。世界中の人に情報を広めることができる。かつて一般大衆は聴衆であった が、インターネットは大半の聴衆を舞台の上に押し上げた。電子メール、チャット、ニュ ースグループ、クレームやコメントを受け付け公開するウェブサイト、第三者により運営 されるこのようなウェブサイトなどの、インターネット上のツールがバズを急速に成長さ せる。 ネット上のバズの急成長を促すことによって急成長した企業の例としてよく知られてい るのがホットメイル社である。ホットメイル社はウェブでアクセス可能なフリーの電子メ イルサービスを提供することにより、サービス開始から僅か 18 ヶ月の間に 1200 万人の加 入者を獲得した会社である。この加入者リストが彼らのビジネス価値である。ホットメイ ル社は殆ど広告をしなかった。彼らは、サービス加入者が送る電子メイルの一番下に、 「hotmail.com でフリー電子メイルをゲットしよう」という一行を付け加えただけである。 加入者がサービスを利用して、メイルを送るたびに、バズが成長していくわけである。普 段人々が物を買うときの障害となる、価格、配達といった雑音をなくしたことも成功の要 因である。価格は購買を妨げるかも知れないし、複雑、高価な配達は注文を妨げる。 「バイラル・マーケティング」の著者のセス・ゴーディンは、これに先立ち「パーミシ ョンマーケティング」の考えを提唱したことでも有名である。メタ情報の過度な流通は人 の邪魔をすることになり嫌われてしまう。望まれないメッセージを多くの人に送りつける マーケティングは成り立たなくなってきている。「パーミションマーケティング」では、メ ッセージを顧客に送りつける前にパーミッションを受けることの重要性を説いたわけであ るが、ホットメイル社が用いた方法では、パーミッションを受ける必要もなく、人々が進 んで変わりにメッセージをばら撒いてくれる。ゴーディンはこのようなメッセージをアイ デアのウィルスと呼び、このウィルスを意識するしないに関わらず進んで撒き散らしてく れる顧客をスニーザと呼んでいる。スニーザを育て、アイデアウィルスを勝手に撒き散ら させることにより、マーケティングを行う方法をバイラル・マーケティングと名づけてい る。 ローゼンによれば、バズが急成長する製品とは、いろいろな消費者に高い関与を創り出 -7- す製品で、その製品が、エキサイティングであるか、革新的であるか、経験しなければ評 価できないか、複雑であるか、高価であるか、目に見える可視性の製品であるか、などの いずれかの特性を持つ。このような特性は人々をしてその製品に関して人に語らせる力が ある。ファックスのような製品は、多くの人が使うほどその価値が上る。人々は、自分の 持っているファックスの価値を高めるために他の人にファックスを買うことを勧める。マ イクロソフトの製品もこの例である。購買プロセスの副作用として、緊張が生じることも ある。高価な製品については特に、購入した後で不安になることがある。これは認知的不 協和として知られているが、購入者は、他の人に話すことによって、自分の意思決定を正 当化し、不協和を減少しようとする傾向がある。 バズが育つネットワークには、平均より多くのコミュニケーションを行う人々が存在す ることが多い。彼らをハブと呼ぶ。ハブには、 (1)ある製品カテゴリーにおいて、情報や 影響を与える通常のハブと、(2)報道陣、有名人、アナリスト、政治化などのようにマス メディアを使って一方向のメッセージを広範に伝えるメガ・ハブの 2 種類がある。また、 その知識に関しては、(a)特定の分野で顕著な知識を持つために、よく質問されるエキス パート・ハブと、(b)コミュニティの中心的な人が果たしている社会的ハブの 2 種類があ る。これらの組み合わせにより、4 種類のハブに分類される。 ネットワーク・ハブの特徴は、製品の早期採用者であること、多くの人々と繋がってい ること、実空間および仮想空間でよく旅行をすること、情報に飢えていること、おしゃべ りであること、メディアに常に注目していること、などである。 ローゼンはバズに影響を与える社会的ネットワークには、次のような基本原理があると いう。 ネットワークは目に見えない。しかも常に変化している。したがってプライバシーが保 護される。マーケターもまた暗闇の中にいる。マーケティング活動も競合他社の目に見え ない。 人は自分と似ている人々と結びつく。自社の従業員が顧客に類似しているほど両者のコ ミュニケーションは容易になる。 お互いに似ている人々はクラスターをつくる。自社の製品がクラスター内の標準になる と、競合他社がこれに取って代わることは困難になる。一方、特定のクラスターと密接に なりすぎることにより、他のクラスターの人々から敬遠されることもある。 バズは共通のノードを通じて広がる。個々人は皆、ひとつ以上のクラスターに属してい る。お互いに知っている人を通じてバズが広がっていくのならば、マーケターはその過程 を殆どコントロールできない。 情報はクラスター内に閉じ込められる。異なるクラスター間のギャップを識別し、社会 構造の空洞の両側にあるクラスターの人々に対して、バズを広める方法を見つけることが 必要である。 ネットワークのハブとコネクターはショートカットをつくる。コネクターとは 2 つ以上 -8- のクラスターと繋がっている人を言う。社内の人を使い、離れたネットワークの人とのつ ながりを作ることにより、意図的にショートカットを創造できる。ショートカットをつく る可能性が最も高い人々を、ハブやコネクターを探すことで探し出すことができる。 私たちは身の回りの人々と話す。マーケティングではあらゆる場所でバズを育てること が必要である。 弱い結びつきは驚くほど強い。人は自分自身と似た人とネットワークを形成する傾向が ある。彼らは同じ情報源にさらされている可能性が高い。ネットワークの外部にいる人々 は、新鮮な情報を運んでくれるので重要となる。 インターネットは弱い結びつきを育てる。電子メイルは相手をあまり拘束しないですむ。 ニュースグループや、オンライン・フォーラム上の大勢の人々は、お互いのことをまった く知らない非常に弱い結びつきを維持している。維持するのに時間もエネルギーもかから ないで、数百、数千のこのような結びつきを持てる。なぜインターネットで情報がより早 く伝わるようになったのかは、弱い結びつきが増加したことによって説明できる。インタ ーネットはクラスターをつなぐショートカットとなる。人々が維持できる結びつきの数に は制限があることから、自分と似ている人とリンクするのを好み、クラスターが形成され てきた。インターネットは管理できるリンクの数を大きく拡大した。 ネットワークは異なる市場をつなぐ。あるセグメントに属する人が別のセグメントに属 する人とどのようにつながっているかは、決してわからない。あるグループに直接届けよ うとしたメッセージは、届けようとしていない別のグループの人に到達することが多い。 自社の低価格製品での悪いサービスの経験談が、自社の高価格帯での顧客の耳に入ってし まう。 3.3 バズの形成 従来、バズは、 「2 段階の流れモデル」に従って広まるとされてきた。メディアからメガ・ ハブ、メガ・ハブからその他の人々へという 2 段階である。しかし、実際のネットワーク は線形でも、予測可能でもない。ネットワーク・ハブを狭く解釈すべきではない。ネット ワーク・ハブは平均すると全体の10から15%いるといわれている。バズの広がり方は 複雑である。人々が頼っている情報源は一つだけではない。あらゆる情報源を使っている のである。これらの情報源の相互作用は明らかでないが、ネットワークを刺激する方法は いくつかわかっている。 (1) 感染型製品 ・ 感情的な反応をかきたてる製品:顧客がその製品に対して持つ所期の経験が重要である。 ・ 自分自身を広告する製品:ビジュアルなバズをつくる製品も感染型製品である。 ・ 足跡を残す製品:DTPが始まったころ、できあがった版下には「フォトショップを使 -9- った」「イラストレータをつかった」というメッセージが添えられていた。 ・ 利用者が増えるほど便利になる製品:電話、ファックス、電子メイルは、利用者が増え るほど便利になる製品の例である。ほとんどのコミュニケーション・ツールはそうであ る。 ・ 互換性のある製品:非互換性はバズの広がりを阻害する。 ・ あとはすべて自分でしてくれる製品:「ボタンを押すだけ」といったフレーズが広告に 使える製品は感染型製品になる。 (2) 感染の加速 バズを広めるには、製品やサービスをつくった人たちが外に出て、ネットワーク上のい ろんなクラスターにニュースを植えつけなくてはならない。一つのクラスター内でバズを まいても効果は小さい。 (3) ネットワークのハブと協力する まずは、ネットワークのハブを識別しなくてはならない。それには、 ・ ネットワークのハブ自身に識別させる。自分からやってくるハブを利用しなくてはなら ない。 ・ ネットワークのハブのカテゴリーを識別する。価値のあるネットワークのハブを含んで いる可能性がある人々のカテゴリーを識別する。潜在的な顧客と結びついている可能性 の高い人々を職業から識別することも考えられる。 ・ 現場のネットワークのハブに焦点をあてる。草の根ネットワークのハブを見つけるには 現場に出ていかなくてはならない。社会的に活動的な人を探すのも一つの方法である。 ・ 調査によってネットワークのハブを識別する。小規模なネットワークでは、人々の繋が り方をあらわすソシオグラム自体をアンケートによって調査することができる。誰がネ ットワークのハブであるかだけをアンケート調査する方法もある。自分自身が製品カテ ゴリーについてどれくらい中心的であり、影響力があると知覚しているかを本人に回答 させる調査法もある。 の 4 つの方法があるとされる。 ハブが識別されたら、ハブを最初のターゲットにし、彼らに話のネタを与える。これら のハブが他社にバズを撒き散らすように刺激する。彼らを退屈にさせないように製品につ いての事実を与えなくてはならない。ネットワーク・ハブとの関係を乱用してはならない。 ハブが自社の製品を利用しているところを他の人々が見ることができるようにアレンジを することも重要である。短期的には、通常のハブよりもメガ・ハブをターゲットにするほ うが効果的に見えるが、長期的にはより人数の多い通常のハブの効果が上回る。 (4) 能動的に種をまく 各クラスターのハブに製品や製品の見本を提供し、直接経験させることも重要である。 - 10 - さらには、ハブだけでなく、より大規模な数のメンバーに種をまき、草の根的なバズを育 てることが重要である。情報は仲間内で囲い込まれることが多いので、多くのクラスター に種をまくことが重要である。種を守ることも重要である。ソフトウェアの場合には新バ ージョンの無償提供などがこれにあたる。 (5) よいストーリをつくる バズを作り出すことは、物語を作り出すことと似ている。情報を小出しにしながら、緊 張感をつくる。物語にメリハリをつける。想像をかきたてる登場人物をつくる。このよう にして、都市伝説や民話のように、バズが自己増殖する。製品の希少性と神秘性を作り出 すことにより、謎解きを消費者に迫ることになり、コミュニティに物語が生まれる。映画 の先行試写会や予告編のように、期待感を育てることも重要である。人々を舞台裏に招待 し、裏話が物語として育つのを助ける手法もよく用いられる。物語にはヒーローが必要で ある。 (6) バイラル・マーケティング 友達に情報を渡すためのツールを人々に与えなければ、バズを増殖する機会を逃してし まう。複雑な報酬プログラムは必ずしも必要ない。この手法は、インターネット以前にも、 製品に割引購入用のクーポンをつけるといった形で存在していた。クーポンが友達に渡さ れることでバズがウィルスのように広がっていく。 MCIはさらに巧妙なバイラル・マーケティング手法を発明した。加入者に特定の通話 先に対する割引サービスを提供することにより、通話相手の情報を入手し、彼らに同じ条 件での加入を勧誘した。 インターネットは、このような友人のアドレス紹介や、友人への製品紹介を簡便に大規 模に行える基盤を作った。 バイラル・マーケティングという言葉は、スティーブン・ユルヴェトソンによって作ら れた。顧客が風のウィルスのように製品に関するバズを勝手に広めてくれる仕組みを用い る手法をいう。 製品が二人の間のコミュニケーションに入り込めるならば、バイラル・マーケティング は最も高い効果を上げる。MCIの電話、ブルー・マウンテン・アーツ社の電子はがき、 ホットメール社の無料電子メールが、この手法を使って成功した。 ウェブ上で販売を行う企業の多くは、顧客にサイトに長くいてもらうためには、顧客同 士を相互作用させることが有効であると気づいている。チャットルームはそのような相互 作用をもたらすツールであるが、より革新的な例は、インターネット上のオークションサ イト、イーベイである。一つの取引が成立するたびに、売り手は高い根で売れたことを、 買い手は安い値で入手できたことを友人たちに話す。 顧客がバズを広めるのを促進するツールの中で、最もかんたんなものは、友達に簡単に 転送できるようなメールをあらかじめ用意することである。ホットメールの場合には、メ ールの最後に自動的に「hotmail.com でフリー電子メールをゲットしよう」というメッセー - 11 - ジが追加される。www.parentsoup.com では、 「オリジナルのオンライン葉書を友人や家族 に送ろう」というバナー広告が出てくる。イメージをクリックしメッセージを選べば、葉 書を作って送信できる。受け手は、付加された「電子葉書はメッセージを広めるのに有効 な方法です」というメッセージを見ることになる。ブルー・マウンテン・アーツ社の電子 はがきも同様である。電子グリーティング・カードのコンセプトにはバイラル・マーケテ ィングの本質が備わっている。 (7) バズとしての広告 広告自体が広告に関するバズを生むこともある。広告から生まれた流行語などは、間接 的に製品に関するバズを広げていく。 3.4 メタ情報の配信とバイラル・マーケティング 先にも述べたように、コンテンツ配信においても、コンテンツの流通は B2C によって行 われるのが通常で、C2C(あるいは P2P)による流通はビジネスの阻害要因と通常は考えられ ている。顧客はBのウェブページをアクセスし、ワン・クリックでコンテンツのダウンロ ードを行い、サービスの提供を受ける。このページの URL が電子メールや電子掲示板を用 いて交わされる文書に埋め込まれ、バズとして広がっていく。埋め込まれたURLが単な る文字列ではなく、Word 文書や Power Point スライド、電子メールの中でもアンカーとし ての機能を持つようになったことで、これらの文書の受け取り手は、URL をウェブブラウ ザのアドレス部分にコピーして貼り付けることなく、単にクリックすることにより、ブラ ウザを立ち上げそのページをアクセスすることができるようになった。このことは、URL を含むメタ情報を C2C(あるいは P2P)を用いて広範に広げるというバイラル・マーケティ ングの観点から重要である。URL 以外に、どのようなメタ情報をウィルスとして流通させ ることが技術的に可能なのか、どのようなメタ情報は C2C(あるいは P2P)を用いて流通さ せることが許されるのか、これらの問題がコンテンツ配信において重要となる。 コンテンツ自体のワン・クリックによるアクセスに関して、その不正コピー対策には 2 つの考え方がある。ひとつは、コピー・プロテクションや超流通の考えかたで、コピーや コピーの利用に課金する頑健な仕組みを導入し、課金を可能にする方法である。もう一つ は、ダウンロードされるコンテンツに旬の概念を導入し、コピーが流通しても旬ではなく なるような仕組を用いる方法である。サービス提供の場合には、アクセスごとに得られる 内容は異なるので常に旬である。コンテンツのダウンロードの場合には、コンテンツ自体 には旬の概念がなくとも、旬の概念をもったおまけを付けることとか、そのコンテンツを アクセスする際の顧客の置かれたコンテキストに旬の概念を用いることが考えられる。コ ンテキストには時、場所、アクセス履歴、等々がある。 - 12 - 4. 音楽流通を事例とする、コンテンツ流通ビジネスモデルの変遷 4.1 序節:ビジネスモデルの選択とは 道端にボウシや空き缶などを置きその前で演奏することでお金を投げ入れても らう方法は音楽ビジネスの原型を成している。その場にいて聴いている人全員が お金を投げ入れてくれるわけではない。その仕草・演奏が道行く人の心を打つも のであれば収入は多くなるし、その逆の場合には立ち止まる人もいない。このよ うな道端の演奏家の一部は酒場やレストランに積極的に出向いて商売の機会を増 やそうとした。日本ではこれを流しの演奏家と呼んでいる。流しも道端の演奏家 と同様、その仕草・演奏がテーブルのお客の心を打てば収入となるが、もちろん 支払わないものも多数いる。 さて、流しの演奏家で程度の良いものは酒場やレストランにおける人寄せとし て重宝され、特定の酒場やレストランとの契約を持ち固定的な収入を得ることが できる。道端や流しの演奏家の収入はお客の気まぐれによって大きく変動するが このような固定収入を保証する契約を結ぶことで収入の安定化を計ることが可能 になる。しかしながら安定の引き換えとして、押すな押すなの大金獲得のチャン スを犠牲にするというリスクも負わなければならない。 収入の安定化を目指すべきなのか収入の極大化に賭けるべきなのかは多くの作 詞・作曲・演奏家(以降アーティスト)たちを悩ますビジネスモデル選択の問題 である。 4.2 仲介者の登場 演奏家およびその協力者が内外を隔てる柵に相当するものを設け、その中に居 るものからは例外なく料金(入場料)を得るように規定したものがコンサートの 原型である。この方式だと、気まぐれに道行く人や飲食のために酒場やレストラ ンに集まる人を相手にするのと異なり演奏自体をお目当てとする聴衆を対象とす ることになるため様々な施策が可能になる。例えば予約制の切符を販売し事前に 売れ行きの具合を探ったり、土地によって異なる演奏家の知名度の差を知ったり、 それに合わせて会場規模を選択したり、会場の音響や視覚の差異を理由とした複 数の価格帯の切符(S、A、B 席など)を用意することでマーケティングのバリエ ーションを増やしたり、開催回数・収入の調整を試みることが可能となる。 このような作業は演奏家本来の仕事とは異なるため、規模が大きくなるに連れ そのための専門職が必要となる。興行主出現の必然性である。 「シマ」とか「シキ ル」とか興行に関わる利権問題の処理も彼らの担当となる。いわゆる芸能世界へ とつながっていく。興行主はビジネスのリスクを負うことになるわけであるから、 当然のことながら発言力は増大してゆく。興行主の中から専ら演奏者のマネジメ - 13 - ントを行う専門職も分離してきた。日本では後にプロダクションと呼ばれるビジ ネスがこれに該当する。 ここまではナマの演奏を直接販売することについて議論したが、曲を楽譜にし たり歌詞を歌集にしたりして紙メディアを販売する商売についても触れなければ ならない。楽譜の起源は紀元前数百年前バビロニアにまで遡るらしいが、これら はみなひとつひとつ書き写された写本であったため流通量は極端に少ない。14 50年ごろにはグーテンベルクの印刷機発明によって広く出版が行われることと なったが、楽譜もこの印刷機の発明後間をおかずに出版されることとなったよう である(1501年シャンソン集がイタリア人のペトルッチにより出版されたと 言われている)。印刷機の登場により流通量は劇的に増加し楽譜販売あるいは楽譜 の貸し出しがビジネスとして成立するようになった。米国の作曲家・ピアニスト であるジョージ・ガーシュイン(1898生まれ)は、若いころ出版社で楽譜を 購入するかどうかを検討するお客のためにその曲を試弾する「ソング・プラガー song‑plugger」という職に就いていたことは良く知られている。ホワイトクリスマ スを作曲したアービング・バーリン(1888年生まれ)もソング・プラガーと してニューヨーク28丁目ティン・パン・アレイ(音楽出版社が並ぶ通り)界隈 のピアノ弾きからスタートした。 音楽は元来演奏家と作詞・作曲家による楽曲と歌詞が一体となり演技と音響を 作り上げその場に居合わせる人たちに直接リアルタイムに見せ・聴かせるもので あったが、印刷技術の向上により曲の構想のみを楽譜として出版することがビジ ネスとして成立するようになったわけである。そこに仲介者としての音楽出版社 出現の必然性がある。後にラジオ放送やレコード産業の台頭により楽譜の販売や 貸し出しの市場は急速に縮小することになるが、音楽出版社はこの時代の経緯を 引き継ぎ楽曲の著作権管理の業務を主たる生業とするビジネスへとポジションを 代えてゆくこととなる。この経緯から今日では著作権管理を行う業態を実際の楽 譜を出版する・しないに関わらずミュージック・パブリッシャー(著作権管理業 であるところの音楽出版社)と呼ぶこととなった。 仲介者のもうひとつに放送メディアがあげられる。レコードやテープレコーダ ーなど技術の進歩もあり、ラジオ放送に積極的に音楽が流されるようになる。1 920年代ラジオ放送が開始されるとともに楽譜を販売する音楽出版社は急速に その数を減らしている。仲介者の役割交代の時期を迎えたわけである。 さて、アーティストとしては番組に自作を利用されるからには直接その対価を 得たいわけだが、放送メディアの告知力が後述するレコードの売り上げに大きな 影響を及ぼすこととなってからは、個別に対価を要求する強い立場を採れなくな - 14 - ってゆく。放送メディアは音楽の放送権に基づいた使用料をアーティスト側に支 払わなければならないが、現在放送メディアに課される料率は収入の1.5%と なっており他のメディアにおける使用料に比べて明らかに小さい。 近年日本では数多くのヒット曲がテレビドラマの主題歌やコマーシャルソング から生まれるようになってきている。音楽ビジネスにおけるテレビメディアの影 響力が強まっている象徴である。前半にアーティストの権利管理を代行する仲介 者として楽譜印刷を生業としていた音楽出版社がその役を担っていたと書いた。 最近はテレビ局が出資・設立するところの楽譜を出版しない音楽出版社が権利管 理を行うケースが増加してきている。 1920‑1925 アメリカ、イギリス、フランス、日本などで相次ぎラジオ放送開始 1935 アメリカでラジオ所有の世帯数が 2700 万を越える 1935 日本でラジオ聴取契約数 200 万を越える 1938 アメリカで FM ラジオ放送実験 1935 ドイツでテレビ放送開始 1950 アメリカ FCC はカラーテレビ標準を CBS 方式に決定 1957 日本で FM ラジオ放送開始 1959 アメリカでテレビ視聴者数 500 万を越える 1959 日本でテレビ視聴契約者数 200 万を越える 参考年表「放送メディア」 4.3 レコード産業の誕生 レコード産業はアーティストの作品を一般顧客にパッケージとして届けるとい う仲介者の役割を担っている。この点では前節の興行主、音楽出版社、放送メデ ィアらと同類であるが、産業規模が大きいことと関わっているビジネスのプレイ ヤーが多いということで、節を改めて概観することにした。レコード産業に係わ るキープレイヤーは(1)アーティスト、(2)レコード会社、(3)レコード小 売店、(4)再生機器メーカーである。 単純に考えると前記それぞれのキープレイヤーたちの究極的なゴール目標はそ れぞれ以下のようになっている。 (1)アーティストは、自分の作品をできるだけ 多くのユーザーに届けることができ報酬を受けとること。(2)レコード会社は、 契約した特定アーティストのひとつの作品をできるだけ大量に製造・販売するこ と。 (3)レコード小売店は、できるだけ在庫の回転率が高くなるような販売をす ること。 (4)再生機器メーカーは、ひとつのモデルをできるだけ大量に製造・販 売すること。 言い換えると、 (1)アーティストにとっては、どのようなレコード媒体のフォ - 15 - ーマットが同時に乱立していようが、最終的にユーザーの手元に届けられるレコ ードの絶対数だけが問題となる。これはこの後に説明する残り 3 つのキープレイ ヤーたちとは立場が異なる。 (2)レコード会社にとっては、彼らは最終的には物理媒体を製造する工業製 品の製造業であることからマスターディスク製作コストの最小化狙いと量産効果 を維持するため理想的には、1 品種をできるだけ大量に製造・販売するのが効率良 い。つまりレコード会社にとっては、レコード媒体のフォーマットは乱立せずひ とつであることが重要であるし、ある限定した期間に特定アーティストの特定作 品が大量に販売できることを目標とした販売戦略に基づくマーケティングを行う ことは必然となる。 (3)レコード小売店にとっては、レコード媒体のフォーマットの乱立は限ら れた展示スペースに並べるレコードの品揃えを減らし在庫コントロールを困難に する要素となり得るため、極力避けたい現象である。また商品回転率の最大化を 目指すためにはレコード会社が狙う大量販売のための戦略的マーケティングに同 調しやすい立場にある。 (4)再生機器メーカーにとっては、彼らも工業製品の製造事業者であること からもちろんレコード媒体のフォーマットはひとつに絞り込まれるべきであると 考えている。SP、EP、モノラルLPとレコード媒体フォーマットは様々に変 遷してきたが、これはレコード会社と機器メーカーの協力関係のもと、まともな 音質、まとも再生時間の確保を目指して進化してきたものである。ステレオ LP が 発売された後の30年弱はこのLPのフォーマットが安定的に継続利用された。 1877 エジソンのフォノグラフ発明 1887 エミール・ベルリナーの円盤レコード・グラモフォン発明 1904 SP 発売 1904‑1915 真空管の発明により電動拡声器が開発され普及する 1925 電気録音による SP 1947 塩化ビニールを材料とする LP 発表 1949 EP 発売 1956 ステレオ LP 発表 1982 CD 発売 参考年表「レコードの技術」 ステレオLPフォーマットは当時のレコード会社、レコード小売店、再生機器 メーカーが利益を共有できるひとつの到達点であったと考えられる。ビジネスモ デルという意味でも完成していた。レコード会社はアーティストらと契約を結び - 16 - その中から選別した特定のアーティストをラジオなどのマスメディアを使って広 く市場に認知させ、実際の売れ行きを観察しながらレコード小売店の棚に最も回 転効率の高い作品を供給しつづける。 4.4 CDの登場とビジネスモデルの完成 CDは1982年に発売されたデジタルオーディオシステムである。当時のレ コード会社は確立していたLPビジネスのため、塩化ビニールを原料とする生産 工場への投資を増大させていた。当時のレコード会社とレコード小売店にとって は、CDの発表はレコード媒体の乱立を意味し困惑の原因となった。一方アーテ ィストにとっては、CDはチャンネル間のクロストーク、スクラッチノイズが無 く連続再生時間も約74分あり作品の配布媒体としてはより理想に近づいたもの と受け止められた。指揮者のカラヤンが自身の作品を次々とCD化しCDフォー マットへのコミットメントを表明したことは象徴的である。他の多くのレコード 会社がCDへの投資をためらう中、日本のCBS・ソニーレコードは自社単独の リスクでCDの生産工場を建設した。1984年に49800円という戦略価格 で発売したソニーのCDプレイヤーD−50の市場普及効果もあり、その他のレ コード会社も順次CDへの参入を表明することとなる。 前述したようにレコード会社、レコード小売店、再生機器メーカーは基本的に 複数のレコード媒体フォーマットの並存を望んでいないためどちらかのフォーマ ットが量を減らしてゆくのは必然と考えられる。CDは勝ち残りのために再生機 器の出荷台数を大幅に増やす戦略を採った。D−50の価格戦略はそのひとつで あったが、加えて小型化に成功したことで、従来のレコード針を使用したLPプ レイヤーでは商品化が難しかった自動車搭載用、携帯用の商品群を開発・投入し て新たな市場創造を行い市場のパイ拡大に成功を収めた。 CDは、完成していたLPのビジネスモデルを継承したものだがレコード媒体 の量産効果を最大限に活かすべく日本では−Heavy Rotation と呼ばれる−マスコ ミを介した特定作品の市場への集中的な露出マーケティングや、特定アーティス トを人気キャラクターと成すような演出戦略の傾向が顕著になりつつある。レコ ード会社にとっては、いかに有力なアーティストをたくさん獲得しCDという作 品に反映できるかがビジネスの生命線であるが、CD媒体を駆ったマスマーケテ ィングのコントローラーの立場を活用することで実質的にはレコード店の棚の争 奪戦である商品ラインナップの選択に対するコントロール力を得、これがアーテ ィストに対する強い発言力の源泉となってきている。またレコーディングにおい ては高価なデジタル録音機器、専用録音スタジオの使用、デジタルのミキシング・ エフェクト・トラックダウン、マスターリング機器の使用、オペレータの雇用な - 17 - ど、一般的なアーティストが準備できる費用をはるかに越えるアルバム制作費が 必要となる。レコード会社は LP 時代からの慣例としてこのアルバム制作費を予め 融資することを条件としてアーティストおよびその完成作品に対して専属的な契 約を結んでいた。CD 時代を迎えレコード会社はアーティストに対するコントロー ル力をより強力に維持している。 4.5 ポストCDの時代 1998年末、米国レコード協会の主導により急遽SDMI(Secure Digital Music Initiative)が発足された。NAPSTERに代表されるインターネット を介した音楽コンテンツの違法コピーの無許可流通に対処するため、レコード関 係者だけでなく家電業界、PC業界、PC周辺機器業界などに対し横断的なコピ ー防止システムの開発・規格化を要請する活動に着手したものである。 しかし問題の本質はCDアルバムのネットワークを介した違法コピーの流通問 題にあるのではない。ネットワークを介した音楽の電子配信(EMD、Electronic Music Distribution)は従来のCDによって完成されたレコード産業のビジネス モデルを崩壊させる可能性があるということが問題なのである。 まず第1にEMDは流通にCDという物理媒体を使用しないためレコード会社 の大規模投資によって建設された量産工場を使用しない。第2にEMDはネット での小売が可能なためレコード小売店の限られた棚をいかに効率よく回転させる かのノウハウをレバレッジとしてコントロールしていたレコード会社のマーケテ ィング戦略と流通コントロール力がゼロリセットされる。第3にEMDはアーテ ィストのためにCD製造ラインを確保し、レコード小売店の棚を確保するという 総合的シェアコントロール力をレバレッジとしたレコード会社のコンテンツアグ リゲーション戦略の見直しを迫る。第4にEMDはコピー可能なソフトウェアに よって再生用ジュークボックスを実現することが可能なため、工業製品を量産す ることにレバレッジを発揮する既存再生機器メーカーの競争戦略の見直しを迫る。 第5にEMDはPC上で動作させるソフトウェアによって再生用ジュークボック スを実現することが可能なため、複数の競合ジュークボックスソフトウェアの取 り替え使用が容易となり依存する配信フォーマットの固定化が容易ではない。つ まり流通媒体による市場コントロールという旧来モデルが通用しない。 また、これはEMDの影響ではないが、コンピュータ技術の発達により高価な スタジオ用デジタル機器を不要とする、DTM(Desk Top Music)と呼ばれる安 価な音楽制作環境が市販されつつある。このためレコード会社による、スタジオ 使用料の融資を条件としたアーティストの実質的囲い込みの効力も薄れている。 アーティスト自身もレコード会社、小売店を介した間接的なユーザーとの接触を 乗り越えるべく、インターネット環境を活用したユーザーと直結したコミュニケ - 18 - ーションあるいはコミュニティへの参加を推進するものが増えてきている。 レコード会社はこれらの動きを注視しつつ、例えば月極め定額ダウンロードし 放題(http://www.pressplay.com , http://www.musicnet.com )などの新たなビ ジネスモデル構築の試みを行っている。 さて以下では、ネットワーク環境を駆ったポストCD時代の音楽産業の方向性 について少し探ってみることとする。 音楽業界としては、現在のような違法コピー行為に晒されている間は収益の劇 的な悪化は避けられないため、対応策として「コピーしてもしょうがない」と思 われる価格まで単価を下げるという手段を選択することができる。これはCD流 通であれEMDであれ共通の対応策として選択可能である。現在の出版物の対価 に対する価値観がちょうど精神的にこの位置にあると考えられる。当然のことな がら現状と比べると実質的な収益率の悪化を招くが、出版事業のような多品種少 量生産に活路を見出すことができる可能性がある。つまり厳選されたアーティス トの作品を大量に販売するという現行ビジネスモデルがコピーによる被害を大き くする一因にもなっている訳だから、現行の一攫千金「スター誕生」モデルを捨 て去る方向性を目指すわけである。単価を下げて選択肢を増やすことにより本当 に力のあるアーティストにはより公平な市場参加の機会を与えることになるかも しれない。 もうひとつの選択肢は、静的なデータである現行の音楽コンテンツの流通によ るビジネスは諦め、場所・人・環境に従属してダイナミックに変化する新たなコ ンテンツを開発しこれを商品とするビジネスに主軸を移行させるというものであ る。例えばアーティストが特定顧客のために作品を作るとすれば、その顧客以外 がコピーを入手する動機は薄れてしまう。逆にその特定顧客にとって作品は特別 なものとなるので比較的高い対価を支払う理由となる。 「ジャケット写真にアーテ ィストとあなたが肩を組んでいる写真が載ります」 「あなただけのためのアルバム 選曲です」「何月何日あなたが行ったコンサートのライブ録音です」「あなたのた めに歌詞を選びました」といった様々な実現手段が考えられる。流通媒体とビジ ネスモデルに適合するように今までも新しいコンテンツが様々生み出されてきた 訳だが、ネットワーク時代に流通するコンテンツがダイナミックに変化するもの であるという仮説は、今後深く検討をすべき興味深い考え方だと思う。すでにネ ットワークの環境において多くの人々がメールのやり取り、チャット、インスタ ントメッセージ、BBS、携帯電話の会話など刹那的で場所・人・環境に依存す るデータの交換に多大な時間と費用をかけている現実を再検討する必要がある。 - 19 - 5. コンテンツ流通に関する編集工学的アプローチ 近年、ネットワーク技術がますます高速・大容量化し、PC の普及率とともに、家庭 レベルまでインターネットへの接続が日常化しつつあり、われわれが接しているネット ワーク社会は、双方向でリアルタイムな知的情報世界として急速に成長しつつある。そ こでは情報提供者と情報受容者の情報段差が一段と低くなり、知的情報を個人が自由に 共有・編集・管理することができる知的情報空間(知財市場)の創出が目前にせまった かのように錯覚させられる。 しかし、現状では、利用者は知的情報の断片をブラウジングしながらスキップしてい るにすぎず、それらを個人の目的や好奇心に応じて自在に構造化したり、編集化するこ とができないままにある。とくにITの教育現場への利用が推進されにともない、グロ ーバルネットワークを活用した相互学習システムの実用化への期待は高まってきている。 編集工学研究所では、長年にわたりネットワーク社会の「すがた」を観察し、 「みかた」 を研究し、新しい「しくみ」を構築すべく研究開発に取り組んできた。とくにネットワ ーク上のコンテンツ流通を、 「編集」という視点でとらえなおし、さまざまな切り口でア プローチしてきた。ここでは、その一端を紹介しながら、コンテンツ流通に関わる議論 に、いくつかの新しい視点が提供できればと思う。 5.1 共同知を相互編集する環境 われわれは普段の日常では、極めて個人的な情報空間の中で生活している。それは「今 日は寒いなぁ」 「 どうも疲れたな」といった身体的なものから、 「 今日は何を食べようか?」 「帰りに買物をしていこう」といった単純な思考、さらには仕事をうまくこなす方法を 考えたり、授業を理解したり、宿題に追われるなど、直面した状況に対応するため、様々 な「個人知」を取り扱う。パーソナル・コンピュータは、その名の通り、このような「個 人知」のあつかいを支援するツールとして登場し普及してきた。ところが、そのPCが ネットワークにつながり、インターネットのような膨大な「世界知」と直接つながるこ とが可能となった。 「世界知」とは、生命・地球から宇宙までの自然科学の知識や、世界 のニュース、経済・政治など、よりグローバルな普遍的な知といえる。 ところが、われわれの日常的な「個人知」と、グローバルな「世界知」は、なかなか 直接つながることが難しい。そこには、できのいいインタフェースが必要となる。古来、 その役目を担っていたのがコミュニティの「共同知」であった。コミュニティのメンバ ーである村人は、直接「世界知」と向き合うのではなく、長老の話や、村の習慣、昔話 などを通して、暦や世界の成立ち、自然の法則などを学んでいったのである。そして、 どこのコミュニティにも「ヒジリ(聖=日知り)」と呼ばれる「語り部」がいて、村の歴 史から儀式や祭の作法、播種から収穫までの暦と段取りなどを蓄積するデータベースと なっていたのである。村の「祭」は、毎年繰りかえされる、データベースのメンテナン - 20 - スと、次の世代のためのバックアップ作業ともいえる。 編集工学では、この「共同知」の有り方に注目し、電子ネットワークがただ膨大な「世 界知」と「個人知」を蓄積し、交換するだけのインフラではなく、相互編集によって、 「共同知」を創出する場であり、そこに新しい価値が生まれ市場が形成されると考える。 ■図5.1−1 個人知・共同知・世界知 - 21 - 5.2 情報技術と文化技術のハイブリッド・ループ 編集工学では、情報コミュニケーションのプロセスを「メッセージを交換する」と見 るのではなく、「エディティング・モデルを交換する」ととらえる。 コミュニケーションは単なる情報交換やメッセージ交換ではなく、意味の交換であり、 とりかわされる情報のやりとりのプロセスで、たがいに似ていそうだと思われる「編集 構造」を適当にあてはめあっているとみる。編集工学では、その先行的な編集構造を観 察しながら、そこに含まれる意味を拾い出していく。 ■図5.2−1 情報技術と文化技術のハイブリッド・ループ - 22 - しかし、われわれの日常のコミュニケーションは、単純なモデルだけで成り立ってい るものではない。実際の社会的なコミュニケーションは多種多様なメディアとコンテン ツに囲まれた状態で交わされ、さまざまなユーザインタフェースや情報インフラの関与 も見逃すわけにいかない。つまり、そこには我々の身体と地球のあいだ、長い生命進化 と人類の歴史の積み重ねも含めた、すべての情報技術と文化技術のハイブリッドなルー プが作用しあっているといえる。この広範囲におよぶ作用のつながりを「情報文化技術」 と呼ぶ。 編集工学がめざすコンテンツ流通環境は産業・資本による情報技術(ハードウェア) と、個人・経験からくる文化技術(ソフトウェア)が出会うところに新たに市場を創出 することにある。その文化技術をささえる経験の背景には、言語やイメージ、知覚、記 憶などの情報編集にかかわるメタ構造(=生命情報技術)があり、人類が立ちあがって 以降の情報の歴史を紐解けば、たくさんの有効なエディティング・モデルを抽出するこ とができる。 5.3 3つの情報環境のステージ(ネットワーク編集パラダイム) これまで、人類は、その知的情報活動の成果として膨大な書物や映像などのコンテン ツを蓄積してきた。その蓄積方法には、 「系統化」と「物語化」という大きく2つの方法 が関わっているといえる。ITの発展にともない、膨大なコンテンツの蓄積は電子化さ れ巨大なアーカイブをつくりつつあり、 「系統化」の技術の一部をとりこんだコンピュー タで、検索による情報の取捨選択がわずかに可能となった。しかし、 「物語化」の方法は、 未だ満足に踏み込まれていない。 編集工学では、この「物語化」の方法を応用し、新しい「ネットワーク編集パラダイ ム」の創出をヴィジョンとして、これまで各種システムの開発に関わってきた。この「ネ ットワーク編集パラダイム」は、ネットワークとメディアとコンテンツを一体化してと らえ、将来的には次世代のためのOSに代わる、ES(エディティング・システム=編 集OS)の構築をめざしている。 「ネットワーク編集パラダイム」は大きく3つのステージで構成される。 ① ネットワーク・ツーリング環境 ② サーバ・リフレーミング環境 ③ クライアント・オーサリング環境 の3つである。以下、それぞれを簡単に説明する。 (1) ネットワーク・ツーリング環境 それぞれの個人が自分の興味や好みにしたがってインターネットなどのネットワー ク.上に散在するコンテンツをさがしだし、つなぎ合わせながらブラウジングできる環 - 23 - 境。そのためにネットワーク上をツーリングしながら、系統的かつダイナミックに知 識情報を抽出する必要がある。相互学習性をもちながら、連想検索力をもつブラウジ ングアソシエータを構想している。従来のエージェント検索的なアプローチよりも、 編集工学のエディティング・モデルを参照しながらコンテンツをブラウジングするも のとなる。 (2) サーバ・リフレーミング環境 (1)で述べたブラウジングアソシエータによって収集したコンテンツ群を、ユーザ が理解しやすい形に編集・構成するには、知識情報を立体的に構造化しなおす必要が ある。ここでは個々の知識情報をメタ知識情報構造である「物語」によって意味圧縮 し、再構築して格納する技術が必要とされる。そこで編集エンジンの開発を構想して いる。このベースには、編集工学研究所の長年の研究による古今東西の典型的な物語 から抽出されたワールドモデルと物語母型が装備される予定。 (3) クライアント・オーサリング環境 利用者が(1)(2)によって再構築され提示された情報を、それぞれの好奇心や知 的経験の背景などに応じて再編集し、いつでも呼び出し可能な状態で蓄積することが必 要である。また、蓄積された情報はネットワークを介して共有化されることで、再編集・ 再流通される。ここでは自己編集的ローカルデータベースや、編集工学のエディティン グ・モデルを応用した数種類の編集テンプレートを実装した電子文房具の開発を構想し ている。 ■図5.3−1 ネットワーク編集パラダイムのイメージ - 24 - 5.4 ESP(Editorial Scoring Platform) 編集工学では、5.3 で述べたネットワーク編集パラダイムの構築をめざし、さまざな 編集システムの研究開発に携わってきた。その中で、ネットワーク編集パラダイム実現 のための1つの基礎モデルとしてプロトタイプ開発され、実証実験と改良をかさね、実 用化に向けて開発中のシステムが、このESPである。ESPの構成は、①レパートリ ー、②カウンター、③パレットの3つのレイヤーで考えることができる。 ■図5.4−1 ESP の構成イメージ - 25 - ①の「レパートリー」は、ESPが扱うことができるコンテンツ群をさし、デジタル 化されたテキスト情報、画像情報(動画も含む)、html で記述されたインターネット上 の Web コンテンツのほかに、各種外部DBとの連携も視野に入れている。ESPでは、 これらの多種多様なデータを、Meme カードと呼ぶカード型の情報単位に載せて流通・ 表示することで、その操作性と編集可能性を確保している。Meme カードはコンテンツ の他に所有者情報や編集履歴などを含む情報コンテナの役割も持つと同時に、表・裏の 対情報を持つことで、情報の最小単位の中に編集性を内在させている。 ②の「カウンター」は、ESPの利用者が最初にアクセスする窓口であり、レパート リーの膨大な情報にアクセスするためのガイド機能としての役割を持つ。そこには簡単 なディレクトリ構造を持った棚が用意され、利用者はその棚の構造をベースとして、 注 意のカーソル を興味や疑問の対象に向けることができる。後に説明するトポグラフィ ック連想検索システムは、シナリオにそったオーサリングツールを持ったカウンターシ ステムでもある。カウンターにアクセスした利用者は、レパートリー膨大なコンテンツ 群から取り出したコンテンツを Meme カードとして閲覧し、蓄積するとともに再編集・ 再流通させることができる。 ③の「パレット」は、カウンターでナビゲーションされながら取得した Meme カード の蓄積・再編集にあたり、利用される編集フォーム集である。そこには編集工学研究所 が開発した編集の5要素(連結型・三位一体型・分岐型・結合型・派生型)からなる基 本パターンから、物語母型を応用したものまでが複数のレイヤーで提供される。パレッ ト上に配置され構造化されたコンテンツは、さらにシナリオボードで組み合わせられ、 シナリオ化される。シナリオボードにも、5W1H のような単純なものから、ワールド モデルを単純化したものまで多様なテンプレートが提供される。このパレットとシナリ オ・ボードをベースとする Meme カードの関係情報構造は、XML と XSL に変換され、 XML ライブラリーで共有化される。 現在、この ESP のコンセプトを利用したシステムは、住宅メーカによる家庭内情報編 集ツールのサービス実験や、学校教育の現場で利用される科学技術学習システムの自習 (調べ学習)プラットフォームとして実証実験に活用されている。 5.5. 日本文化に着目したトポグラフィック連想検索システム 編集工学では日本文化にひそむ情報編集の方法に注目し、それをコンピュータ技術の 中に取り込むための研究を続けてきた。現在、動画や音声をはじめ、あらゆるメディア を取り込みつつある PC の世界では、デスクトップ・メタファーが圧倒的に普及してい る。たしかにデスクワークを想定した定型的な作業の効率化には便利な道具といえる。 しかし、いざ編集の道具として扱うとなると、いまひとつもの足らないのではないだろ うか。 その不足感の秘密を解く鍵が、日本文化の情報構造にあると見ている。例えば、デス - 26 - クトップメタファーの限界の1つは「世界」 (ワールド・モデル)の欠如である。デスク トップ・メタファーはあくまで近代的な自己を理想の前提として設計されていて、どん な利用者にも白紙の状態で出発させ、ファイルやフォルダを充実させながら自分なりに 便利な編集をさせることを目標とする。ところが、日常の我々の編集は白紙からはスタ ートしない。常に情報は編集途中の状態で投げ出されている。 そこで、編集工学研究所では花鳥風月や雪月花という、 「世界」を背景に持った日本文 化のプログラミング言語ともいえる構造を取りだし、枕詞・歌枕といった場所や時間と 連動したプロトコルを内包する和歌の情報システムや、 「海山里モデル」をワールドモデ ルとしながら、コミュニティの物語を駆動させる「祭」のシステムなどを研究対象とし て、[電脳歳時記]、[京都ハイパー絵巻]、[システム花鳥風月・祭ニッポン]、[EE /ImageCanalizer 花鳥風月]など、数々のデータベースと、電子文房具とネットワーク が融合したシステムのプロトタイプを開発してきた。その日本文化の基本構造をベース と し た シ ス テ ム の 研 究 開 発 の 集 大 成 と し て 開 発 さ れ た の が 景 色 景 物 景 気 集 [ The MIYAKO]である。 98 年に京都市と京都デジタルアーカイブコンソーシアムから委託を受け、MMCA(マ ルチメディアソフト振興協会)の支援事業で開発された景色景物景気集[The MIYAKO] は、京都に残る膨大な日本文化コンテンツのデータベース化と、再利用化がねらいであ る。従来の検索型ではない、ユーザの「好み」や「興味」を引き取りながら、日本文化 の基本構造の「気づき」や「理解」へとナビゲートする逍遥型の連想検索と、相互編集 型のオーサリング環境を実現することで、地域コンテンツの流通環境のモデルを構築す ることを目標とした。 全体の構造は、 「マップ」 「スポット」 「シーン」 「オブジェクト」の4つのレイヤーで、 ユーザのツーリングが進むが、全体を通して空間軸と時間軸の移動をナビゲートするイ ンターフェースの設計と、データ構造の設計がなされた。特徴的なのは「トピカ」ステ ージで、 「マップ」で選択されたプレイスが持つ空間構造の基本モデルから、現在までの 変遷を確認することができる立体空間モデルが提供された(「トピカ」とはアリストテレ スの時代の場所に情報をむすびつける記憶法)。 「オブジェクト」ステージは、着物や調度品、山鉾や人物まで、京都市が持つ膨大な 画像コンテンツを「あわせ」「ゆかり」「みたて」「そろい」「しごと」の5種類の日本文 化に特徴的な連想検索によって、次々と関連するコンテンツを取り出すことができる。 ユーザはこのように「マップ」 「スポット」 「シーン」 「オブジェクト」間を移動しなが ら、アイテムを取りだし、連想検索によってアイテム間のつながりの意味を把握しなが らブラウジングする。さらに、 「好み」にあったアイテムは「玉手箱」と呼ぶローカルデ ータベースにストックし、 「宝船」ステージで簡単な分類編集することができる(このシ ステムの詳細については日本規格協会発行『知識メディア標準化調査研究委員会 書』(平成 11 年3月)の7章で報告されている。 - 27 - 報告 このシステムのコンセプトと基本構造をいかしながら、ネットワーク上の地域コンテ ンツ相互編集・共有システムとしての性格を強化したのが、IPC(インテリジェント・ パッド・コンソーシアム)と開発した、地域コンテンツ編集システム「HIJIRI」である。 [TheMIYAKO]よりオーサリング・ツールを充実され、地域サーバを介して、ユーザ がコンテンツを登録・閲覧・編集することができる。 さ ら に 、 現 在、 編 集 工 学研 究 所 で は、 密 教 21 デ ジ タ ルア ー カ イ ブ・ SHINGON Canalizer「The 空海」と、科学技術学習ナビゲーション「Synla」が、相互編集プラッ トフォーム化に向けて、新しく開発中である。 ■図5.5−1 景色景物景気集[The MIYAKO]の構造 5.6 2つのメタファーを導入した相互編集環境の構築 これまで述べたように編集工学研究所では、ネットワーク編集パラダイムの実現をめ ざし、様々なシステムの研究開発にとりくんできた。ここではすべてを紹介できなかっ - 28 - たが、他にもとくに教育現場への IT 導入については、暦象航行型研究教育システム [CRONOS]、情報編集型総合学習システム[カプタリウム]、遊びと学びを統合する編 集空間[2+1 学習システム]などの研究開発・実証実験を、産・官・学一体となった体 制で取り組み、高い評価を得ている。 ここでは、最後に 国 メタファーと 学校 メタファーを利用した、ネットワーク 上のコンテンツ流通、知財育成、知財市場創出の試みを紹介し、まとめとしたい。 最初の 国 メタファーにもとづく知財市場の創出をめざした試みは、[ISIS 編集の 国]というプロジェクトで 2000 年 12 月より 2001 年 12 月末まで、実験サービスをお こなった。詳細は、昨年度の報告で述べたため割愛するが、そこで利用されたベースの システムが 5.4 で紹介した ESP(Editorial Scoring Platform)である。知財のありかを コンテンツそのものより、むしろ編集の方法におき、方法が流通することで新たな価値 の創出をはかった。 こ の [ ISIS 編 集 の 国 ] は 第 1 期 実 験 を 終 え 、 次 の 展 開 を 準 備 中 で 、[ ISIS Encyclomedia]として、ネットワーク上に巨大な「知の空間」を創出させる予定である。 現在、松岡正剛(編集工学研究所所長)を中心に、百万冊の本が収納される「図書街」 の空間構造を設計中で、膨大な書籍データの入力作業がすすんでいる。 もう一方の 学校 メタファーを利用したアプローチが[ISIS 編集学校]である。 一般的な Web ブラウザで閲覧できる電子会議室とメーリング・リストを連動させた[コ ミュニティ・エディター]というツールを利用している。この[コミュニティ・エディ ター]は、編集工学研究所が共同開発したツールで、藤沢市・札幌市の先進事例のほか、 自治体、NPO、政党、学校などで活用され、ツールのみならず、ルール・ロールも含め たネットコミュニティの運用モデルとして定着している。 [ISIS 編集学校]は[ISIS 編集の国]の情報編集空間の構造を 学校 メタファー によって再編し、2001 年 6 月の開始から、まもなく生徒数が 1000 人を越えようとして いる。この学校では、 [コミュニティ・エディター]のラウンジを 教室 として、そこ に教師役となる情報編集ナビゲータ「師範代」が登場する。各教室には 10 名〜20 名程 度のユーザが生徒として割り振られる。生徒には週に1番程度のペースで、編集をおこ なうための情報コンテンツを 編集稽古 というエクササイズとして配信される。生徒 は師範代のナビゲーションのもと、編集稽古にそって回答(編集)し、その編集内容を 師範代が指導、評価するというルールによって運営されている。 [ISIS 編集学校]の特徴は、ユーザ(生徒)とラウンジのナビゲータ(師範代)、お よびユーザ同士の間におこるコミュニケーションが、 「教室」という枠組みの中で際だっ た創発性を発揮することである。生徒は編集稽古を通じて、編集の方法を学び、自己の 編集能力を発見し、また師範代の指南(編集)によって、あたらしい編集の方法に気づ き学習していく。しかしこのプロセスにおいて、師範代(師範代も元は生徒であり、ひ と通りの稽古が終了した後、師範代試験を受け、さらにオフラインの伝習座で指南の方 - 29 - 法を学ぶ)もまた新たな編集方法を発見し、そこに生徒と師範代間の相互編集状態が生 まれ、コンテンツ受容力が高く編集意欲にわいた「場」が出現するのである。 その結果、稽古を通じて交わされるコミュニケーションの中で利用されるコンテンツ の量が膨大にふくらむことになる。筆者はこれまで、多種多様な電子コミュニティの運 用に関わり、進行役や管理者をつとめてきたが、どの場合も場の活性化と継続性には、 多大な努力が必要とされる。これまでの経験値でいうと、アクティブなコミュニティで は、進行役の発言数が5割以上、場合によっては7割をこえるといえる。しかも、ほと んどの会話は日常的なもので、そこに知財とよべるようなコンテンツが関わることは少 ない。ところが、編集学校では定期的に出題される編集「方法」の獲得によって、コミ ュニティ内で交わされるコミュニケーションの中で流通する優良なコンテンツ(ここで いうコンテンツの多くは、現状のネット環境の制約から、オリジナルコンテンツそのも のではなく、正しくは コンテンツに関する情報 であるが)の量が飛躍的に高くなっ ていくのである。つまり、コミュニティ全体のコンテンツ消費欲と知財創出のポテンシ ャルが、おどろくほど高くなる。この「スクール型モデル」による、知財創出型のコン テンツ流通環境が、これからの電子ネットワーク上のコンテンツ・ビジネスを考える上 で、大きなヒントになるのではないかと注目している。 ■図5.6−1 編集学校の 稽古 の一例 - 30 - 6. メタデータの利 用 と流 通 6.1 メタデータと ID を巡 る動 き 6.1.1 :歴 史 情 報 流 通 の 歴 史 は デ ー タ ベ ー ス の 歴 史 で も あ る 。1989 年 の WEB の 発 明 以 来 一 般 化 さ れ 、 さ ら に IT を リ ー ド す る 形 に な っ た イ ン タ ー ネ ッ ト も 見 方 に よ れ ば 一 種のデータベースであろう。それは完全に分散型で管理された様々なデータに対 し て 、 YAHOO を は じ め と す る サ ー チ エ ン ジ ン や ポ ー タ ル を 通 じ て 、 必 要 な 情 報 に た ど り 着 く と い う 仕 組 みで 進 ん で き て い る 。最 近 の P2P に 関 し て も 、そ の デ ー タ が ど こ に あ る か を 知 る 仕 組 みは 何 ら か の デ ー タ ベ ー ス が 必 要 に な る 。 デ ー タ ベ ー ス は 従 来 の CODASYL 型 の も の か ら リ レ ー シ ョ ナ ル に な り 、オ ブ ジ ェ ク ト 型 と 代わって来ているが、基本的には集中型をベースにする動きと考えていいであろ う 。し か し こ こ に 来 て SGML か ら 使 い や す く し た XML が 提 案 さ れ て 以 来 、あ ら ゆるトランザクションに適用され、インターネットそのものが巨大なデータベー スの様相を呈してきている。 さて、このような状況においてメタデータは確実にその市民権を得、期待も大 き く な っ て き て い る 。 そ の い い 例 が Dublin Core に お け る 様 々 な 動 き に 象 徴 さ れ て い る 。[「 Dublin Core Metadata Element Set に よ る 複 数 メ タ デ ー タ の 検 索 」、「 デ ィ ジ タ ル 図 書 館 」 No. 11, 1998 年 3 月 4 日 http://www.dl.ulis.ac.jp/DLjournal/No_11/5-saito/5-saito.html] 10 年 以 上 に わ た り 元 々 MARC: Machine Readable Code と い う 形 で 図 書 情 報 を 機 械 に も 理 解 で き る 形 で 表 現 す る こ と が 行 わ れ て き た 。 そ れ を 1995 年 3 月 に Dublin Core という形であらたにメタデータを用いて表現していくことが合意され、以下のエ レメントが決められている。これは非常に簡易に表現できることが重要であるた め 15 個 の エ レ メ ン ト し か 決 め ら れ て い な い 。 そ の 情 報 は 以 下 の 3 種 類 に 分 け ら れる。 (1) 主 と し て 情 報 資 源 の 内 容 に 関 係 す る エ レ メ ン ト (2) 情 報 資 源 を 知 的 財 産 と し て み た 場 合 に 主 と し て 情 報 資 源 に 関 係 す る エ レメント (3) 主 と し て 情 報 資 源 の 具 現 化 に 関 係 す る エ レ メ ン ト (1)内 容 の 説 明 Title Subject Description Source Language Relation Coverage ( 2) 知 的 財 産 に 関 す る も の Creator Publisher Contributor Rights (3)具 現 化 に 関 す る デ ー タ Date Type Format Identifier ま た そ れ ぞ れ の 意 味 は 以 下 の と お り 。( デ ィ ジ タ ル 図 書 館 1998 年 よ り 抜 粋 ) - 31 - Dublin Core の 15 の element set 1. Title: Creator や Publisher に よ っ て 与 え ら れ た 情 報 資 源 の 名 前 。 2. Author or Creator: 情 報 資 源 の 内 容 に 第 一 の 責 任 を も つ 人 ま た は 組 織 。 3. Subject and Keywords: 情 報 資 源 の 主 題 と キ ー ワ ー ド 。 4. Description: 文 章 に よ る 情 報 資 源 の 内 容 説 明 。 5. Publisher: 情 報 資 源 を そ の 現 在 の 形 に し た 組 織 。 6. Other Contributor: 情 報 資 源 に 対 し て 間 接 的 で は あ る が 重 要 な 貢 献 を し た人や組織。 7. Date: 情 報 資 源 が 現 在 の 形 で 利 用 で き る よ う に な っ た 日 づけ 。 8. Resource Type: 情 報 資 源 の 内 容 区 分 。 9. Format: 情 報 資 源 の デ ー タ 形 式 。 10. Resource Identifier: 情 報 資 源 を 一 意 に 識 別 す る た め の 文 字 や 番 号 。 11. Source: 情 報 資 源 の 出 典 を 一 意 に 識 別 す る た め の 文 字 や 番 号 。 12. Language: 情 報 資 源 を 記 述 し た 言 語 。 13. Relation: 他 の 情 報 資 源 と の 関 係 。 14. Coverage: 情 報 資 源 の 空 間 的 、 時 間 的 特 性 。 15. Rights Management:情 報 資 源 の ア ク セ ス 制 限 に 関 す る 情 報 への リ ン ク 。 さ て 、 上 記 論 文 に お い て 、 15 個 の エ レ メ ン ト を 持 つ Dublin Core に 対 し て 、 27 の デ ー タ 項 目 を 持 つ WoPEc と 19 の デ ー タ 項 目 を 持 つ WAGILS の 相 互 関 係 を 比 較 し て い る 。こ れ は メ タ デ ー タ を 理 解 す る 上 で 興 味 深 い 論 文 で あ ろ う 。結 論 と し て 、 ほと ん ど が 一 対 多 と い う 関 係 に な り 同 じ 内 容 を 複 数 の 体 系 で 示 す こ と の 難 し さ を 浮 き 彫 り に し て い る 。し か し 、そ の 後 、MPEG-7 あ る い は TV Anytime Forum に お い て XML を 用 い た シ ン タ ッ ク ス が 一 般 化 さ れ て く る に 及 ん で 、 体 系 の 違 う メ タ データにおいてもそのスキーマが決まっていれば、ネームスペースで区別するな どの工夫で相互乗り入れあるいは参照が簡単にできるようになってきた。 6.1.2.メタデータとコンテンツ ID の標 準 (1)メ タ デ ー タ の 標 準 メ タ デ ー タ の 使 用 に 関 し て は 様 々 な 分 野 で 検 討 が 進 ん で お り 、XML と い う 強 力 なツールの発達ともあいまって今後さらに広まることが予想される。以下にメタ データの主な標準を示す。 表 6.1-1 メ タ デ ー タ の 主 な 標 準 利用分野 Web 標準化団体 W3C 規格/解説 セ マ ン テ ィ ッ ク Web や 、 RDF (Resource Description Framework) - 32 - URL www.w3c.org 放送 TV-Anytime SMPTE (Society of Motion Picture and Television Engineers: 米 国 映 画 ・ テ レ ビ技術者協会) EBU(European Broadcasting Union) P/META Project 図書情報 ISO TC46/SC4 DCMI(Dublin Core Metadata Initiative) 博物館 CIDOC – ICOM (International Committee for Documentation of the International Council of Museums) 地理情報 FGDC(Federal Geographic Data Committee) 教育 IEEE 権利管理 indecs (INteroperability of Data in E-Commerce System) ContentGuard 社 マルチメ ディア ISO/IEC JTC1 SC29 (MPEG) ニュース 報道 IPTC(The International Press Telecommunications Council : 国 際 新 聞 電 気 通 信評議会) 日 本 新 聞 協 会 ( NSK) 政府 e-GMF(eGovernment Metadata Framework in UK) メタデータは、コンテンツ情報 ( 検 索 )と 利 用 者 情 報( 嗜 好 分 析 ) を記述できるように仕様化 メタデータの国際的互換性確保 の た め 、辞 書 の 編 纂 規 定 、バ イ ナ リ ―符 号 化 に よ る コ ー デ ィ ン グ 規 格 ( KLV コ ー デ ィ ン グ ) 制 定 番組制作、放送、アーカイブの BtoB 間 で の 相 互 互 換 の た め の 仕 様策定 MARC(Machine Readable Code)図 書目録情報フォーマット www.tv-anyti me.org www.smpte.or g www.ebu.ch www.niso.org/ international/ SC4 dublincore.or g Web 上 で の リ ソ ー ス を 記 述 す る ための基本となる15の要素タ イ プ Dublin Core を 規 格 化 CIDOC CRM ( Conceptual Reference Model)で は 博 物 館 所 蔵 物や文化遺産情報をオブジェク ト 指 向 で 記 述 ( 他 、 Categories: 博 物 館 の 所 蔵 物 の 分 類 、 Core Data: 考 古 学 サ イ ト の 記 述 等 ) 地理情報の米国内メタデータ仕 様 CSDGM(Content Standard for Digital Geospatial Metadata) を 策 定 LOM( Learning Object Metadata) 教育や学習で利用されるあらゆ る学習オブジェクトに関するメ タデータ 異なるメタデータの相互運用性 を確保するための規程化 コンテンツに関する許諾条件を 記 述 す る 言 語 XrML ( Extensible Rights Management Language) を 規格化 MPEG-7 で 、 映 像 ・ 音 声 情 報 検 索 用メタデータの標準表記方法を 規格化 ニ ュ ー ス 配 信 フ ォ ー マ ッ ト NewsML を 規 格 化 (2000.10)。ニ ュ ー ス ジ ャ ン ル や 、配 信 し た 新 聞 社 等の情報を挿入できる。 NewsML を 日 本 の 新 聞 業 界 に 合 わ せ た NskNewsML を 規 格 化 www.pressnet. or.jp 政府の発信情報の検索を目的と し て 、 Dublin Core を ベ ー ス に 規 格化 www.egovern ment-uk.com/ esprit.htm www.cidoc.ic om.org www.fgdc.gov ltsc.ieee.org/ wg12 www.indecs.o rg www.xrml.org mpeg.telecom italialab.com www.iptc.org (2)コ ン テ ン ツ ID の 標 準 コ ン テ ン ツ に ユ ニ ー ク な ID を 付 与 し て 管 理 し よ う と い う コ ン テ ン ツ ID の 標 準 化 は 、 ISO を は じ め と し て 多 く の 機 関 で 行 わ れ て い る 。 そ の 一 部 を 以 下 に 示 す 。 - 33 - 表 6.1-2 コ ン テ ン ツ ID の 主 な 標 準 識別子 URL 管理団体 解説 Content ID cIDf www.cidf.org CRID: Content Referencing ID DOI: Digital Object Identifier TV Anytime Forum コ ン テ ン ツ へ の ID 埋 め 込 み を 意 識 し た ID と メ タ デ ー タ 主 に 検 索 の た め の 参 照 ID www.doi.org UPC: Universal Product Code UCC: Uniform Code Council. Inc. Integrated ID Project for the Music Industries ISAN: Intl Standard Audiovisual Number ISBN: Intl Standard Book Number ISRC: Intl Standard Recording Number ISSN: Intl Standard Serial Number RIAA, IFPI, CISAC, and BIEM デジタルオブジェクトに対 す る ID 製 品 に 対 す る ID。 米 国 、 カ ナ ダ 、 そ れ 以 外 は EAN: European Article Numbering 音 楽 中 心 の ID と メ タ デ ー タ ISO TC46 AV 作 品 の ID www.nic-bnc.ca ISO TC46 書 籍 の ID www.isbn.org IFPI 音 楽 の 録 音 原 盤 に 対 す る ID www.ifpi.org ISSN Intl center www,issn.org ISTC: Intl Standard Textual Number ISWC: Intl Standard Work Number ONIX: Online Information eXchange V-ISAN: Version Identifier for ISAN ISO TC46 雑 誌 、新 聞 、報 告 書 、年 鑑 な ど の 定 期 刊 行 物 に 対 す る ID 小 説 な ど の 抽 象 的 作 品( シ ナ リ オ ) に 対 す る ID 楽曲などの音楽作品に対す る ID 電 子 出 版 用 の ID と メ タ デ ー タ TV 番 組 へ の ID.ISAN と 連 動 www.smpte.org IDF CISAC AAP: American Ass. of Publishers SMPTE: Soc. of Motion Picture and TV Engineering www.tv-anytime.org www.uc-council.org www.en-int.org www.riaa.org/PR_St oray.cfm?id=341 www.nic-bnc.ca/iso/t c46sc9/istc.htm www.nic-bnc.ca/iso/t c46sc9/iswc.htm www.publishers.org/ home/onix/onix.pdf 6.1.2.1. ID、メタデータ、コンテンツの種 類 と関 係 (1) ID 一 概 に ID と 呼 ん で も そ の 対 象 に 気 を つ け る 必 要 が あ る 。大 き く 分 け る と 素 材 、 作 品 、流 通 単 位 と な る 。素 材 と は 、ま さ に 編 集 す る 前 の ベ ー ス と な る も の で あ り 、 映 画 に お い て は ロ ケ で 撮 ら れ る 映 像 そ の も の で あ る 。 実 際 に は ほと ん ど が 編 集 の 段階で使われなくなるのであろうが、別の機会に使われる可能性もある。そのた め 映 像 を 記 述 す る メ タ デ ー タ と と も に ID を つ け て 管 理 す る こ と が 時 に は 重 要 に な る 。 こ の よ う な ID と し て は 放 送 の 現 場 で 使 わ れ る た め に SMPTE で 定 義 さ れ た UMID と 呼 ば れ る も の が 有 名 で あ る 。 作 品 に 付 与 さ れ る ID は 最 も 一 般 的 な も の で あ る 。 身 近 な 例 で は 本 や 雑 誌 に 付 与 さ れ て い る ISBN と い う ID で あ る 。 作 品 が 違 え ば 別 の ID に な っ て い る が 、 本 屋 に 山 積 みさ れ て い る 同 じ 作 品 で あ れ ば す べ て 同 じ ID が 付 与 さ れ て い る 。つ ま り 、こ れ は 本 と い う「 モ ノ 」に ID が 付 い て い る 訳 で は な く 、 抽 象 化 さ れ た 作 品 ごと に ID が 付 与 さ れ て い る の で あ る 。 作 品 が 本 と い う 固 定 的 な メ デ ィ ア で の み配 布 さ れ る 場 合 は こ こ ま で の ID で よ か っ た。しかし、ネットワークが発達し、コンテンツがデジタル化され様々なメディ - 34 - アを用いて、同じ作品が流通することが多くなってきた。このような場合は、同 じ コ ン テ ン ツ で あ っ て も そ の 流 通 経 路 別 あ る い は 契 約 別 に ID が 必 要 に な る 。 こ れ が 最 も 具 体 的 な ID と な る 。 ID ID ID ID ID ID ID ID ID ID ID ID ID ID ID インターネット 編集段階での モジュールに付与 作品に付与 流通経路などを含んで 作品に付与 図 6.1.2-1 デ ジ タ ル コ ン テ ン ツ 流 通 に お け る ID の 付 与 こ の よ う に ID は 様 々 な 対 象 に 対 し て 付 与 さ れ る こ と に 注 意 さ れ た い 。 放 送 、 音 楽 、 出 版 の メ デ ィ ア に 対 し て こ の ID の 階 層 を 表 現 し て みた 。 左 か ら 素 材 、 作 品そして具体的な形を持ったコンテンツとなっている。 オリジナル バージョン 流通 ワーク エピソード コンテンツ ロイヤルティ、作品種別 放送局内管理 流通条件管理 ISAN V-ISAN 1 Content ID 1 無償サンプル マスター V-ISAN 2 Content ID 2 有料ストリーミング V-ISAN 3 Content ID 3 閲覧期間限定 放送事業におけるコンテンツの具象化過程 楽曲作品 演奏 流通(パッケージ) ワーク 録音 CD ロイヤルティ、作品種別 演奏管理 流通条件管理 ISWC ISRC 1 UPC 1 CDパッケージ マスター ISRC 2 UPC 2 DVD ISRC 3 UPC 3 テープ 音楽事業におけるコンテンツの具象化過程 - 35 - 作品(シナリオ) 書籍 流通(パッケージ) ワーク 出版 本 ロイヤルティ、作品種別 出版管理 流通管理 ISTC ISBN 1 ISSN 1 マスター ISBN 2 ? 出版事業におけるコンテンツの具象化過程 図 6.1.2-2 業 界 別 コ ン テ ン ツ の 具 象 化 過 程 (2)メタデータ メ タ デ ー タ の 定 義 に 関 し て は い ま だ に 定 ま っ た も の は な い が 、一 般 的 に は data about data と い う 英 語 の 定 義 か ら 、コ ン テ ン ツ (情 報 資 源 )に 関 し て 記 述 さ れ た デ ー タ群であり、ある程度の規格化と表現形式が決まっているものをいう。情報資源 を効率よく探しだすために、情報資源(コンテンツ)に対して付与される、情報 資源の場所、簡単な内容、権利条件等の記述を含むデータであり、広く整合性の とれたものと表現できるだろう。分類としてはセマンティックレベルとシンタッ クスレベルとがある。前者に関しては最も多く使われる、検索用のもの、流通属 性を表現するもの、権利情報を表現するもの、アクセス制御に関するものなどが 挙げられる。しかし必ずしも統一的にすべてをメタデータと呼んでいるわけでは な い 。ま た 後 者 に 関 し て は 、XML で 表 現 さ れ た も の 、単 に エ レ メ ン ト 名 だ け を 定 義しているものがある。個々の例に関しては別章を参考にしていただきたい。 (3)コンテンツ 日本語ではいつのまにかコンテンツと呼ばれるようになったが、英語の発音そ のままであれば寧ろコンテントであろう。この定義もメタデータと同じくらい困 難であるが、何らかの情報資源を指すといえよう。最終的に人間が獲得したいも のと表現してもいい。従来「コンテンツ流通」ということばは、コンテンツその も の を 以 下 に 流 通 さ せ る か と い う ア プ ロ ー チ が 主 で あ っ た 。そ の た め 、特 に 音 楽 、 映像に関しては広い帯域を要求するため、一方では圧縮の技術、一方ではブロー ドバンド技術が求められていた。しかし、メタデータとともに考えるとそのアプ ローチが変わってくる。即ち、実態としてのコンテンツ獲得は最後の一瞬であれ ばよく、その獲得まではメタデータの流通あるいは権利の流通が確保されていれ ばいいということになる。 - 36 - (4)3 者 の関 係 ID、メ タ デ ー タ 、そ し て コ ン テ ン ツ 、こ れ ら の 3 つ の オ ブ ジ ェ ク ト は そ れ ぞ れ がいろんな関係で結 び付けられる。以下にいくつかのパターンを示す。 1 コ ン テ ン ツ => ID => メ タ デ ー タ あ る コ ン テ ン ツ を 何 ら か の 形 で 手 に 入 れ た 際 、そ の 権 利 な ど の メ タ デ ー タ 情 報 を 知 り た い と い う 場 合 が こ れ に あ た る 。例 え ば コ ン テ ン ツ に 電 子 す か し や ヘ ッ ダ ー 情 報 と し て 埋 め 込 ま れ て い る ID を 取 り 出 し 、 そ の ID か ら 必 要 な メタデータ情報をどこかのデータベースに問い合わせるという場合である。 2 ID => メ タ デ ー タ => コ ン テ ン ツ ID が コ ン テ ン ツ への ポ イ ン タ ー で あ る 場 合 が こ れ で あ る 。 即 ち 何 ら か の 形 で ID を 知 り 、そ の コ ン テ ン ツ を 獲 得 し た い と い う 場 合 に 必 要 と な る 。例 え ば 、 あ る コ ン テ ン ツ を 視 聴 し て い た と き に 、 他 の コ ン テ ン ツ への リ ン ク が ID で 表 現 さ れ て い た 場 合 を 指 す 。こ の と き ID は 通 常 URN な ど の 簡 単 な 番 号 記 号 に な っ て い る 。こ の ID を リ ゾル ブ 機 構 を 用 い て 解 釈 す る と 、必 要 な コ ン テ ン ツ の あ る 場 所 に 関 す る メ タ デ ー タ を 獲 得 す る こ と が で き る 。例 え ば URL で あ る 。こ の URL を 辿 る と 所 望 の コ ン テ ン ツ に た ど り 着 く と い う 仕 組 みで あ る 。 3 メ タ デ ー タ => ID => コ ン テ ン ツ こ れ は 例 え ば ブ ロ ー ド バ ン ド サ ー ビ ス に お い て 所 望 の 番 組 =コ ン テ ン ツ を 獲 得 す る 過 程 で 使 わ れ る 。ブ ロ ー ド バ ン ド サ ー ビ ス に お い て は 通 常 の テ レ ビ と 異 な り 膨 大 な コ ン テ ン ツ の 選 択 が 可 能 と な る 。そ の た め 必 要 な コ ン テ ン ツ 情報のテーブルが今までの新聞などのテレビ欄とは違った形で配送される であろう。例えば、メタデータを用いて、監督が A で B という種類のコン テンツを見たいという要求が出たとする。ここで A と B というメタデータ で 表 現 さ れ る コ ン テ ン ツ は 複 数 の 候 補 が 出 る で あ ろ う 。こ れ ら 複 数 の コ ン テ ン ツ に 対 応 す る ID の 中 か ら 必 要 な コ ン テ ン ツ を 時 間 情 報 、ア ブ ス ト ラ ク ト 情報などのメタデータを参考にしながら一つに絞り込んで最終的に必要な コンテンツにたどり着くというパターンである。 6.1.2.2. インターオペラビリティの重 要 性 6.1.2 で メ タ デ ー タ の 利 用 分 野 を ま と め た が 、 そ れ ぞ れ の 分 野 で の メ タ デ ー タ は適用分野や使いやすさなどを考慮していくつかのパターンに分けることができ る。しかし、これらのメタデータ全体に共通の要求条件をまとめると以下のよう - 37 - になる。 ・ 更新性:常に最新の状態を示すこと ・ 常時性:いつでも即手にはいること ・ 同報性:多数の人が同時に手に入ること ・ 一覧性:一度に見られること ・ ターゲット適合性:役に立つ時に役に立つ人へ ・ コンテンツ密着性:いつでも取り出せること これらは今後新たな分野でメタデータが適用されるときにも必要な条件だと考 えられる。メタデータの重要なところは様々な人や機関が、簡単に利用できるこ とである。そのためエレメント名の決め方やスキーマに関し規格化が行われてい る 。 こ れ ま で は 各 分 野 ごと に 進 め ら れ て き た メ タ デ ー タ も 、 デ ジ タ ル コ ン テ ン ツ のネットワーク上での爆発的な流通が予想される中で、それぞれの分野を超えて 流通することが予想される。例えば、本のメタデータと音楽あるいは映画のメタ データをリンクして使うということなどはブロードバンドサービスなどのコンバ ージェンスの中で容易に想像される。そのときに重要なのはインターオペラビリ ティの確保であろう。ここでインタオペラビリティには何段階かが考えられる。 単なる意味レベルのものであれば、なんらかのテーブルを参照すればかなり運用 で き る か も し れ な い 。 し か し 、 も っ と タ イ ト な リ ン ク を 考 え る と XML 記 述 の 方 法からスキームや名前の決め方、あるいはサービスシーンにおける運用の仕方、 こ れ に は メ タ デ ー タ 自 身 の 鮮 度 の 確 保 な ど が 含 ま れ る 。 幸 い XML は 、 異 な る 定 義がされていても例えば名前空間の定義を行うことにより広範囲な適用領域を確 保できる性質を持っている。 6.1.2.3. ビジネスへの応 用 メタデータを用いることはビジネスにおいては必ずしも新しい面ばかりではな い。すでにインデックスや説明記述などことばは違っても同じような概念を用い ているからである。しかし、メタデータという規格化された機能を用いるメリッ トは何であろうか?それはデータベースそのものだと言えよう。例えば、飛行機 の 予 約 に お け る デ ー タ ベ ー ス の 価 値 を 想 像 し て みる と い い 。 確 か に デ ー タ ベ ー ス がなくてもチケットの発行や空席紹介は紙と電話があればできる。しかし、それ には多くの人と場所が一箇所に集中しなければならない制約、スピードや費用の 問題などがあり、とても経済的になりたつものではない。最近はこのデータベー ス を WEB と 接 続 す る こ と で よ り 、 快 適 で 安 い サ ー ビ ス を 提 供 す る こ と が 可 能 と な っ て い る 。そ の た め 今 ま で の 発 券 サ ー ビ ス と は 全 く こ と な る サ -ビ ス が 実 現 し た 。 こ れ の 延 長 で メ タ デ ー タ を 考 え て みる と 、 想 像 し や す い 。 個 人 の 好 みを 記 述 し た - 38 - メタデータと飛行機運行などに関するメタデータ、さらにホテル、レンタカー予 約などのメタデータがあると、それは各データベースが接続されたイメージにな るであろう。メタデータが従来のデータベースと異なるのは、それぞれの情報が 自立的に存在しており、データベースシステムという上で動くのではなく、メタ データ自らが他のシステムのメタデータに働きかけるというところにある。そこ に は デ ー タ ベ ー ス で 必 要 と さ れ る 複 雑 な DBMS は な く 、お 互 い の 約 束 事 だ け が あ る。ある情報を表すメタデータが、それを利用できる他のシステムに働きかけ、 その結果としてなんらかの動きがでるというイメージである。最も多く使われる シーンは検索、選択であろう。膨大なメタデータ群の中から、個人のメタデータ でフィルターすることにより、必要なデータだけを選択するという場面はビジネ スシーンにおいて多くある。将来は、現在それぞれのシステム単位で動いている メタデータをより深くリンクさせ新たなサービスが期待される。 別 章 で 述 べ ら れ て い る セ マ ン テ ィ ッ ク WEB は メ タ デ ー タ の 持 つ 新 た な 可 能 性 を 示している。つまりオントロジーの世界においてメタデータの使い方を規定し、 さま ざま な メタ デ ータ が直 接 機能 しあ う こと を仮 定 して いる 。 ここ から は 将 来 eMarketplace に お け る 新 し い 仕 組 みが 誕 生 す る か も し れ な い 。 さ ら に ネ ッ ト ワ ー ク への 直 接 的 な 機 能 を 持 つ か も し れ な い 。 下 記 に OSI7 層 モ デ ル か ら 現 在 の イ ン タ ー ネ ッ ト 4 層 モ デ ル さ ら に 新 コ ン テ ン ツ 流 通 4 層 モ デ ル を 示 す 。従 来 は 層 を 多 く 定 義 し て 、そ の 間 の API を し っ か り 決 め る こ と に よ り 、各 機 能 を 充 実 さ せ 汎 用 性 を 確 保 す る こ と が で き た 。し か し イ ン タ ー ネ ッ ト で は あ ら ゆ る 機 能 が TCP/IP の上に構築され、従来の 7 層 か ら 4 層 へ変 更 さ れ た 。 こ れ を コ ン テ ン ツ 流 通 へ適 用したのが右記の図である。 アプリケーション層 プレゼンテーション層 セッション層 即ちコンテンツの流通は必 トランスポート層 アプリケーション層 コンテンツ層 ずメタデータを通して行わ ネットワーク層 トランスポート層 メタデータ層 データリンク層 インターネット層 IP層 物理層 ネットワークインタフェース層 ネットワークインタフェース層 インターネット4層モデル コンテンツ流通新4層モデル れ、直接コンテンツが流通 するのではなく、メタデー タの流通が優先し、さらに メタデータがネットワーク 層に直接働きかけるという OSIの7層モデル OSIからインターネットさらに.. 仮定である。今後このよう な方向に行くのではと想像 図 6.1.2-3 コ ン テ ン ツ 流 通 の 階 層 モ デ ル している。 - 39 - 6.1.3 教 育 コンテンツとメタデータの標 準 化 (1)教 育 環 境 の高 度 情 報 化 に対 する日 本 政 府 の動 き 日 本 政 府 は、わが国 の情 報 化 の遅 れへの対 応 として 2001 年 に e-Japan 戦 略 を打 ち立 て、 いわゆる IT 革 命 への積 極 的 な姿 勢 を示 した。そこには基 本 戦 略 として、 国 家 戦 略 の必 要 性 と、 目 指 すべき社 会 が次 のように謳 われている。まず、国 家 戦 略 としては、「世 界 最 先 端 のIT環 境 の実 現 等 に向 け、必 要 な制 度 改 革 や施 策 を5年 間 で緊 急 ・集 中 的 に実 行 す るには、国 家 戦 略 を構 築 して国 民 全 体 で構 想 を共 有 することが重 要 である。また、民 間 は 自 由 で公 正 な競 争 を通 じて様 々な創 意 工 夫 を行 い、政 府 は、市 場 が円 滑 に機 能 するよう な環 境 整 備 を迅 速 に行 う。」ことが明 記 されており、その目 指 すべき社 会 としては下 記 のよう に示 されている: ・すべての国 民 が情 報 リテラシーを備 え、豊 富 な知 識 と情 報 を交 流 し得 る ・競 争 原 理 に基 づき、常 に多 様 で効 率 的 な経 済 構 造 に向 けた改 革 が推 進 される ・知 識 創 発 型 社 会 の地 球 規 模 での発 展 に向 けて積 極 的 な国 際 貢 献 を行 う このような社 会 を実 現 するために、下 記 のような重 点 政 策 分 野 が設 定 され、IT 戦 略 本 部 において具 体 的 な作 業 が展 開 されている: * 超高 速ネ ット ワー クイ ンフ ラ整 備及 び競 争 政 策 * 電子商取引 * 電子政府の実現 * 人材育成の強化 教 育 分 野 に関 しては、上 記 の 人 材 育 成 の強 化 において、その具 体 的 な戦 略 が設 定 さ れている。以 下 では、e−Japan重 点 計 画 における教 育 コンテンツに関 係 する事 項 について の取 組 状 況 を示 す。なお、詳 細 は文 献 を参 照 されたい。 (2)教 育 に対 するe−Japan重 点 計 画 概 要 −教 育 コンテンツ関 係 − IT戦 略 本 部 を中 心 に、教 育 及 び学 習 の進 行 並 びに人 材 育 成 として、下 記 のような種 々 の検 討 が各 省 庁 で実 施 されている。その抜 粋 を表 6.1-3 に示 す。 ①学 校 教 育 の情 報 化 ・IT活 用 型 教 育 の本 格 的 実 施 (IT活 用 教 育 の深 化 定 着 と教 員 のIT指 導 力 の向 上 等 ) 【文 部 科 学 省 】: −そのための学 校 のIT環 境 の整 備 推 進 (各 教 室 へのパソコン配 備 とインターネット常 時 接 続 、学 校 内 LAN等 のインフラ整 備 【文 部 科 学 省 、総 務 省 】等 ) −教 育 用 コンテンツの充 実 ・普 及 【文 部 科 学 省 、総 務 省 、経 済 産 業 省 】等 ②国 民 の情 報 リテラシーの向 上 ・IT基 礎 技 能 講 習 等 の成 果 分 析 と更 なる方 策 のあり方 【総 務 省 、厚 生 労 働 省 、文 部 科 - 40 - 学 省 、農 林 水 産 省 】等 ③IT専 門 人 材 の育 成 活 用 ・職 業 訓 練 によるIT高 度 人 材 の養 成 【厚 生 労 働 省 】: −高 度 な外 国 人 IT人 材 の積 極 的 な受 入 れ【経 済 産 業 省 、法 務 省 、厚 生 労 働 省 】 −大 学 ・大 学 院 における専 門 教 育 のあり方 【文 部 科 学 省 】等 また、コンテンツに関 しても電 子 商 取 引 等 の促 進 を図 るために、下 記 のような検 討 が進 め られている。ここでの成 果 は教 育 業 界 においても有 用 なものと考 えられる。 *デジタルコンテンツの流 通 促 進 ・著 作 権 等 の権 利 処 理 の円 滑 化 のためのシステム・ルールの整 備 【総 務 省 、文 部 科 学 省 、 経済産業省】 ・コンテンツ流 通 技 術 の開 発 【総 務 省 、経 済 産 業 省 】等 表 6.1.3-1 各 省 庁 の教 育 情 報 環 境 整 備 の取 り組 み状 況 (抜 粋 ) 施策名 担当省庁 すべての公 立 小 中 高 等 学 校 等 に 文部科学省 インターネット接 続 すべての公 立 小 中 高 等 学 校 等 の 文部科学省 各 学 級 の授 業 においてコンピュータ スケジュール 2001 年 度 進捗状況 ◎3 月 現 在 、接 続 率 81.1%。2001 年 度 末 までに 100%接 中 続予定。 2005 年 度 ま ◎3 月 現 在 、コンピュータを既 に設 置 している教 室 の割 合 で は 11.0%。2005 年 度 末 までに完 成 予 定 。 お お む ね ◎3 月 現 在 、LAN に接 続 している教 室 の割 合 は 11.5%。 2002 年 度 ま おおむね 2002 年 度 までに公 立 学 校 の約 2割 について整 を活 用 できる環 境 の整 備 公 立 小 中 高 等 学 校 等 の校 内 ネッ 文部科学省 トワーク(LAN)の整 備 で 小 中 高 等 学 校 等 のインターネット 総務省 2001 備。 年 度 ◎現 在 、1,675 校 を高 速 接 続 して研 究 中 。また、本 年 度 高速接続 文部科学省 中 内 に新 たに 1,500 校 を追 加 し、計 3,175 校 を接 続 する 各 教 科 用 コンテンツ、博 物 館 、図 文部科学省 2005 年 度 ま "◎現 在 、教 育 委 員 会 等 が所 有 する各 教 科 の学 習 資 で 源 を教 育 コンテンツとして開 発 し、インターネットで提 供 中 予定。 書 館 等 の学 習 資 源 をデジタル・ア ーカイブ化 したコンテンツ等 を作 成 (10 件 )。今 年 度 中 にさらに約 8 件 程 度 を開 発 予 定 。 し、インターネット提 供 ◎現 在 、17 のコンソーシアムにおいて、各 コンソーシアムが 学 習 資 源 のデジタルアーカイブ化 等 を通 じて開 発 した教 育 コンテンツを授 業 に利 用 するための方 法 (ノウハウ)につ いての開 発 研 究 を実 施 中 。 ◎現 在 、学 校 ・スポーツ健 康 用 コンテンツについて、協 力 者 会 議 を設 置 し、コンテンツの内 容 において協 議 を行 い、コンテンツ開 発 業 者 と連 携 しながら、コンテンツを開 発 、更 新 中 。本 年 度 中 にインターネットで提 供 予 定 。 ◎現 在 、伝 統 芸 能 や現 代 舞 台 のデジタル・アーカイブ化 を通 じ、インターネットで提 供 できるコンテンツを作 成 中 。 (歌 舞 伎 の演 技 、成 り立 ち等 の解 説 したコンテンツ等 ) ◎小 ・中 ・高 等 学 校 現 場 における科 学 技 術 ・理 科 教 育 用 コンテンツのニーズ調 査 を実 施 し、これに基 づき科 学 技 術 ・理 科 教 育 用 コンテンツを試 作 ・評 価 中 。また、提 供 ・流 通 システムの研 究 開 発 に着 手 。" 大 容 量 教 育 コンテンツの制 作 技 術 等 についての研 究 開 発 、実 用 化 総務省 文部科学省 2005 年 度 ま ◎現 在 、多 様 なネットワーク環 境 下 において、学 校 に配 で 備 される平 均 的 な端 末 から、インターネット上 で 3D コンテ ンツ等 の大 容 量 コンテンツ等 の閲 覧 を可 能 とするための 研 究 開 発 実 施 中 (2002 年 度 まで)。 教 育 情 報 ナショナルセンター機 能 の整 備 総務省 経済産業省 2005 年 度 ま (総 務 省 ) で ◎現 在 、ネットワーク上 に散 在 する教 材 コンテンツの教 文部科学省 科 ・学 年 等 を自 動 判 別 し、高 速 かつ容 易 に必 要 な検 索 を可 能 とする検 索 技 術 の研 究 開 発 を実 施 中 。(2002 年 度 まで) - 41 - (経 済 産 業 省 ) ◎現 在 、国 際 標 準 に対 応 した参 照 データを付 与 した教 育 用 コンテンツ開 発 、配 信 サーバーを開 発 するとともに、 レイティングソフト等 の開 発 を実 施 中 。また、産 業 界 の貢 献 によるコンテンツ開 発 等 も実 施 中 。 (文 部 科 学 省 ) ◎8 月 現 在 、基 本 となるサイトをインターネットで公 開 中 。 あわせてセンター機 能 の一 層 の整 備 充 実 について研 究 開 発 を推 進 中 。 デジタル・コンテンツの遠 隔 共 同 制 総務省 作 システム開 発 デジタル・コンテンツの市 場 規 模 の 2001 年 度 中 経済産業省 拡大 ◎現 在 、通 信 ・放 送 機 構 の公 募 委 託 研 究 において、本 施 策 を実 施 中 。 2005 年 度 ま ◎2000 年 において、市 場 規 模 は 1999 年 と比 べて 10% で 拡 大 。一 層 の拡 大 を図 るべくコンテンツ基 盤 技 術 等 開 発 事 業 を執 行 中 。 実 際 の教 育 現 場 で IT が十 分 に活 文部科学省 平 成 1 4 年 ◎教 育 情 報 ナショナルセンター機 能 の整 備 【年 度 内 】 用 されるよう、公 共 機 関 が保 有 する 総務省 度予算要求 ◎「IT 人 づくり計 画 」の実 施 【2002 年 度 内 】 映 像 コンテンツの活 用 、学 習 資 源 経済産業省 中。 実 際 の教 育 現 場 で IT が十 分 に活 用 されるよう、公 共 機 等 のデジタル・アーカイブ化 の促 関 が保 有 する映 像 コンテンツの活 用 、学 習 資 源 等 のデ 進 、ネットワーク提 供 型 のコンテンツ ジタル・アーカイブ化 の促 進 、ネットワーク提 供 型 のコンテ の積 極 的 な開 発 等 により、多 様 な ンツの積 極 的 な開 発 等 により、多 様 な教 育 用 コンテンツ 教 育 用 コンテンツの充 実 ・普 及 を の充 実 ・普 及 を図 るとともに、各 種 の教 育 用 コンテンツの 図 るとともに、各 種 の教 育 用 コンテ 検 索 、ダウンロードが可 能 な教 育 用 ポータルサイトの充 実 ンツの検 索 、ダウンロードが可 能 な を図 るなど、教 育 用 コンテンツの普 及 のための体 制 を整 教 育 用 ポータルサイトの充 実 を図 る 備 する。 など、教 育 用 コンテンツの普 及 のた (文 部 科 学 省 ) めの体 制 を整 備 する。 ◎小 ・中 ・高 等 学 校 現 場 における科 学 技 術 ・理 科 教 育 用 コンテンツの研 究 開 発 、提 供 ・流 通 に関 して、平 成 14 年度予算要求中。 ◎協 力 者 会 議 を設 置 し、本 コンテンツの内 容 について協 議 を行 い、コンテンツ開 発 事 業 者 に助 言 を与 えながら本 コンテンツの開 発 更 新 を行 うため、平 成 14年 度 予 算 要 求中。 ◎センター機 能 の整 備 について研 究 開 発 を進 めており、 すでに基 本 となるサイトを開 設 し、インターネットを通 じて 一 般 公 開 (平 成 13年 8月 )。引 き続 き機 能 整 備 を図 るた め、平 成 14年 度 予 算 要 求 中 。 ◎ネットワーク提 供 型 のコンテンツの積 極 的 な開 発 によ り、多 様 な教 育 用 コンテンツを充 実 ・普 及 を図 るため、平 成 14年 度 予 算 要 求 中 。 ◎デジタルコンテンツ活 用 の高 度 化 に関 する実 践 研 究 を 実 施 するため、平 成 14年 度 予 算 要 求 中 。 ◎伝 統 芸 能 や現 代 舞 台 をデジタル・アーカイブ化 し、イン ターネットで提 供 できる教 育 用 コンテンツを、平 成 12年 度 は2件 作 成 、13年 度 は5件 作 成 予 定 。平 成 14年 度 に ついても予 算 要 求 中 。 (総 務 省 ) ◎教 育 用 コンテンツの流 通 を促 進 させるためのブラットホ ームの開 発 や必 要 な環 境 整 備 のための経 費 について、 平 成 14年 度 予 算 要 求 中 。 (経 済 産 業 省 ) ◎地 域 産 業 の力 を活 かした教 育 用 コンテンツの開 発 のた めの経 費 について、平 成 14年 度 予 算 要 求 中 。 優 れたコンテンツクリエイターを育 成 総務省 平 成 1 4 年 ◎ 「IT 人 づくり計 画 」の実 施 【2002 年 度 内 】 するため、コンテンツの国 際 競 争 力 経済産業省 度予算要求 ◎ (総 務 省 ) の強 化 に配 慮 しつつ、コンテンツの 中。 ◎ブロードバンドコンテンツの制 作 ・流 通 の促 進 のた 制 作 環 境 や流 通 構 造 の改 善 、イン めに必 要 な経 費 について、平 成 14年 度 予 算 要 求 ターネット上 でのコンテンツ流 通 の 中。 円 滑 化 のために必 要 な取 組 を行 (経 済 産 業 省 ) う。 ◎7月 に実 務 者 ・有 識 者 から成 る委 員 会 を立 ち上 げ、現 在 方 策 を検 討 中 。優 れたコンテンツクリエイタ - 42 - ーを発 掘 ・育 成 するコンテンツ制 作 基 盤 技 術 等 開 発 事 業 (平 成 13年 度 予 算 )を執 行 中 。また、来 年 度 についても引 き続 き同 事 業 を行 うため、平 成 14年 度予算要求中。 (第 7 回 IT 戦 略 本 部 会 議 資 料 より編 集 ・抜 粋 ) (3)教 育 分 野 における情 報 化 の現 状 上 述 のように国 策 として種 々の施 策 が教 育 分 野 にも展 開 されつつある。たとえば、①ミレニ アムプロジェクト(公 立 学 校 のインターネット接 続 (2001 年 度 )、高 速 接 続 化 1.5Mbps(2004 年 度 )、学 校 内 LAN整 備 、教 育 委 員 会 等 に情 報 化 推 進 コーディネータ配 置 )、②新 学 習 指 導 要 領 の導 入 (2002 年 度 :総 合 的 な学 習 の時 間 、教 科 学 習 で考 える力 育 成 、ITの効 果 的 な活 用 (「各 教 科 等 の指 導 にあたっては、生 徒 がコンピュータや情 報 通 信 ネットワーク などの情 報 手 段 を積 極 的 に活 用 できるようにするための学 習 活 動 の充 実 に努 める」)、情 報 活 用 能 力 の育 成 、授 業 の改 善 )、③国 策 による教 育 の情 報 化 支 援 策 (文 部 科 学 省 :教 育 用 コンテンツ・ツールの開 発 (12、13 年 度 )、経 済 産 業 省 :教 育 用 画 像 素 材 集 の開 発 (12, 13 年 度 )、総 務 省 :高 速 ネットワーク環 境 整 備 )、などがある。 なお、上 記 の施 策 を推 進 するには、教 育 用 コンテンツ利 用 に関 する下 記 のような課 題 を解 決 する必 要 がある: *授 業 に適 合 するコンテンツが容 易 に見 つからない(コンテンツ発 見 が困 難 ) ・決 められた時 間 内 での効 率 的 ・効 果 的 な授 業 が困 難 ・授 業 に利 用 できる素 材 が少 ない(ネット上 には沢 山 あるが): −信 頼 できるサイトは? −時 間 のかかるネットサーフィンが大 変 だ! *学 生 用 、教 員 用 コンテンツが内 容 を見 るまで分 からない(コンテンツ内 容 確 認 が困 難 ) ・内 容 が良 くても理 解 できない! *コンテンツの学 校 での使 用 許 諾 範 囲 が分 からない(著 作 権 確 認 が困 難 ) ・複 製 可 能 なの?加 工 可 能 なの? ・児 童 ・生 徒 の学 習 結 果 として発 信 可 能 なの? *理 解 を深 め、興 味 を持 たせるコンテンツの発 見 が困 難 (有 益 なコンテンツ発 見 が困 難 ) ・教 科 書 の枠 を越 えた発 想 の展 開 に役 立 たせるにはどうするの? 上 記 課 題 に一 部 応 える形 で、IPA では教 育 用 画 像 素 材 構 築 事 業 が進 みつつあり、学 校 等 教 育 機 関 における教 育 目 的 で利 用 可 能 なコンテンツ開 発 が行 われている。そのコンテン ツは、著 作 権 者 への通 知 不 要 、複 製 ・加 工 等 の 2 次 利 用 可 能 で、静 止 画 ・動 画 等 が収 集 されている。その収 集 分 野 は、教 科 別 (地 理 、歴 史 、理 科 、国 語 、音 楽 、介 護 福 祉 、ほか) の画 像 や日 本 紹 介 画 像 (伝 統 工 芸 、日 本 の祭 り、折 り紙 、能 と狂 言 、匠 の技 と心 、ほか)な ど29のカテゴリで、約 1000 点 が開 発 され、利 用 可 能 となっている。しかし、いわゆる学 校 教 育 機 関 にとどまらず、様 々な分 野 において教 育 コンテンツの必 要 性 が高 まっているが、教 育 用 コンテンツへの対 応 は遅 れている。情 報 インフラ整 備 の進 展 が急 速 に進 む中 、そこを流 れ - 43 - る教 育 コンテンツ整 備 (開 発 ・利 用 環 境 、制 度 ・体 制 の確 立 等 )への強 化 が期 待 される。 (4)教 育 用 コンテンツに関 する標 準 化 動 向 インターネットをベースとした情 報 インフラの普 及 により教 育 分 野 においてもその環 境 を積 極 的 に活 用 する動 きが活 発 になっている。しかし、独 自 仕 様 での開 発 が先 行 すれば、折 角 のコンテンツの有 効 利 用 は困 難 となる。このような事 態 を回 避 するために、教 育 用 コンテンツ も含 めて、国 際 的 に教 育 ・学 習 システムの標 準 化 活 動 が、WBT(Web Based Training)シス テム(WBL(Web Based Learning)技 術 仕 様 と呼 ばれることもある。また、他 の呼 び方 もあるが、 以 下 では WBT を使 用 する。)の標 準 規 格 化 という形 で進 められている。以 下 、この標 準 化 活 動 による効 果 、国 内 外 における標 準 化 活 動 の動 向 について概 観 する。 ①標 準 WBT システムによる期 待 効 果 現 在 、教 育 システムビジネスが活 発 になっているが、仕 様 の標 準 化 によって、下 記 のような 効 果 が期 待 される: ・同 一 フォーマットの教 材 や学 習 者 情 報 が複 数 プラットフォームで利 用 可 能 ・教 材 の流 通 量 の増 大 により相 対 的 な教 材 開 発 コストの低 下 期 待 可 能 ・教 材 部 品 インタフェースの標 準 規 格 化 により、部 品 再 利 用 可 能 →開 発 コスト低 減 化 ・教 材 等 の標 準 化 により WBT システム間 や他 システム間 の相 互 運 用 性 向 上 ②WBT システムに関 する国 外 の標 準 化 動 向 下 記 の団 体 において、WBT システムや教 育 コンテンツについての標 準 規 格 策 定 が進 めら れている: *AICC(Aviation Industry CBT Committee) *IMS(IMS Global Learning Consortium Inc.) *IEEE LTSC(Learning Technology Standards Committee) *ADL(Advanced Distributed Learning) *ISO/IEC SC36、他 (欧 州 における CEN/ISSS(EU),ARIADNE(EU)、など) これらの団 体 が個 別 に標 準 仕 様 を開 発 しているのではなく、互 いに連 携 しながらCMI (Computer Managed Instruction)、LOM(Learning Object Metadata)、コンピテンシー定 義 など広 範 囲 な対 象 の標 準 化 作 業 を進 めている。具 体 的 には下 記 のような作 業 が各 団 体 で実 施 されている。なお、各 団 体 のカッコ内 のものが具 体 的 な仕 様 名 である。 (イ)学 習 クライアントと学 習 管 理 サーバ間 の通 信 : ・ADL(SCORM: Shareable Content Object Reference Model) ・AICC/IEEE(CMI: Computer Managed Instruction) ・IMS(IMS Content Management) (ロ)教 材 コンテンツのフォーマット: ・ADL(SCORM: Shareable Content Object Reference Model) - 44 - ・AICC/IEEE(CMI: Computer Managed Instruction) (ハ)学 習 教 材 のメタデータ: ・IEEE/IMS(LOM: Learning Object Metadata) (ニ)教 材 パッケージの移 植 : ・IMS(IMS Content Packaging) (ホ)評 価 データのフォーマット: ・ADL(SCORM: Shareable Content Object Reference Model) ・AICC/IEEE(CMI: Computer Managed Instruction) (ヘ)テスティングシステム: ・IMS(IMS QTI: Question & Testing Interoperability) (ト)学 習 者 プロファイル: ・IEEE(PAPI: Public and Private Information) ・IMS(LIP: Learner Information Packaging) (チ)異 種 システムとの通 信 : ・IMS(IMS Enterprise) ③WBT システムに関 する国 内 の標 準 化 動 向 国 内 ではTBTコンソーシアムが 1996 年 より活 動 しており、AICC規 格 をベースとしたガイド ラインを開 発 し、公 表 している。また、2000 年 4 月 には産 ・官 ・学 協 同 の団 体 としてALIC (先 進 学 習 基 盤 協 議 会 :Advanced Learning Infrastructure Consortium)が設 立 され、学 習 技 術 の研 究 、遠 隔 学 習 教 育 環 境 プロトタイプシステムの開 発 、相 互 運 用 性 の検 討 、上 記 国 際 的 標 準 化 機 関 との連 携 による標 準 仕 様 の普 及 と規 格 化 活 動 などを積 極 的 に進 め ている。 (5)教 育 コンテンツとメタデータ - SCORM(教 材 コンテンツの標 準 規 格 )の概 要 SCORM は Web 上 での学 習 用 コンテンツに関 する コンテンツ集 約 モデル(CAM: Content Aggregation Model) と学 習 管 理 システム間 における 実 行 環 境 (Run-time Environment) を定 義 している。Web 上 での学 習 用 コンテンツの仕 様 やガイドラインを規 定 した参 照 モデル で 、 可 用 性 (Accessibility) 、 相 互 運 用 性 (Interoperability) 、 耐 久 性 (Durability) 、 そ し て 再 利 用 性 (Reusability)の要 求 を満 たすように策 定 されている。現 在 、SCORM2.0 の作 業 に 入 っている。 ①SCORM Content Aggregation Model(CAM)の概 要 SCORM CAM は下 記 のものを規 定 している: *コンテンツモデル(学 習 したコンテンツ要 素 を定 義 している命 名 法 ): な お 、 こ の モ デ ル は 、 Assets ( 学 習 用 資 産 : Asset Meta-data で 定 義 。 ) 、 Sharable Content Object(SCO:Assets の集 合 、LMS 間 等 でやり取 りされる学 習 資 源 の最 下 位 レベ - 45 - ルの単 位 。SCO Meta-data で定 義 。)、Content Aggregation(学 習 資 源 を、教 授 する単 位 ( コ ー ス 、 章 、 モ ジ ュ ー ル な ど ) に 集 約 す る た め の マ ッ プ ( コ ン テ ン ツ 構 造 ) 。 Content Aggregation Meta-data で定 義 。)の要 素 からなる。 *メタデータ(コンテンツモデル要 素 のインスタンスを記 述 する機 構 ) SCORM のコンテンツモデル要 素 は IEEE LTSC Learning Object Metadata の要 素 に対 応 している。上 述 したように、コンテンツモデルの対 応 した要 素 ごとにメタデータの記 述 形 式 が規 定 されている。すなわち、Assets Meta-data、Sharable Content Object Meta-data、 Content Aggregation Meta-data である。 *コンテンツパッケージング(学 習 行 為 の表 現 方 法 (コンテンツ構 造 )と異 種 環 境 間 運 用 の 学 習 資 源 のパッケージ方 法 (コンテンツパッケージング)) コンテンツモデル要 素 とそのメタデータとのバインディング機 構 を規 定 するのがこのコンテン ツパッケージングである。 ②SCORM メタデータ情 報 モデル SCORM メタデータの規 定 は上 述 したように、IEEE LTSC LOM 標 準 および IMS LRM XML バインディング仕 様 を踏 襲 したものである。IEEE 仕 様 には大 体 64 個 のメタデータ要 素 がある が、この中 で SCORM にとって必 須 のものは何 かという観 点 から検 討 が加 えられている。これ が SCORM メタデータ情 報 モデルである。 SCORM メタデータ情 報 モデルは、以 下 の9つのカテゴリからなる: *General(資 源 を記 述 する一 般 的 情 報 ) *Lifecycle(資 源 の変 遷 過 程 における履 歴 や現 在 の状 態 、影 響 者 等 に関 した特 徴 ) *Meta-metadata(メタデータレコードに関 する情 報 ) *Technical(資 源 に関 する技 術 的 な要 求 や特 性 ) *Educational(資 源 に関 する教 育 あるいは教 育 学 的 な特 性 ) *Rights(資 源 利 用 に関 する権 利 や条 件 ) *Relation(資 源 間 の関 連 定 義 特 性 ) *Annotation(資 源 の教 育 利 用 に関 するコメント情 報 ) *Classification(資 源 の分 類 システムに対 する記 述 情 報 ) ③教 材 構 造 とSCORM規 格 における標 準 化 の範 囲 概 略 上 述 の内 容 を踏 まえ、SCORM の標 準 化 対 象 と教 材 構 造 を下 記 に例 示 しておく。 - 46 - SCORM標準規格 SCORM標準規格 階層情報 教材の構成要素 プラットフォーム)) サーバ(CMI/CBT サーバ(CMI/CBTプラットフォーム コース管理 情報 Root クライアント(Web ブラウザ)) クライアント(Webブラウザ SCO(レッスン) 目標1 ●コース全体の管理情報 ・コンテンツ名、内容、作成者、 レベル、バージョン等 ●教材構造 ・SCOとブロックの階層構造 (章、節、項、... ) (章、節、項、...) ・ブロック:複数のレッスン ・コンポ−ネント:複数のブロ ックのグループ化した単位 ●前提条件、完結条件 ●学習目標 SCO SCO 目標3 Block SCO SCO 目標4 CMI/CBTコミュニケーション CMI/CBTコミュニケーション 目標2 SCO 分類情報 前提条件 1 教材構造:SCO(レッスン)、ブロック SCO 教材構造 学習 目標 SCO 完結条件 SCO 学習履歴 21 図 6.1.3-2 教 材 の構 成 要 素 1 SCORM規格における標準化の範囲(下線部) 20 図 6.1.3-3 SCORM 標 準 化 対 象 参考資料 (1) 第 7回 高 度 情 報 通 信 ネットワーク社 会 推 進 戦 略 本 部 資 料 (平 成 13年 11月 7日 開 催) (2) eラーニング白 書 (2001/2002年 版 ) (3) http://www.adlnet.org/ (4) http://ltsc.ieee.org/ (5) http://www.imsglobal.org/ - 47 - 6.2 メタデータと Semantic Web 6.2.1 メタデータ、Semantic Web はなぜ必要か インターネットが普及し、欲しいコンテンツを好きなときにダウンロードし、コンテン ツを見たり聞いたりできるようになった。しかし、欲しいコンテンツがどこにあるか分か っている場合には、その URL を指定すれば、コンテンツを入手できるが、欲しいコンテン ツがどこにあるか分からない場合、そのコンテンツを探すのが難しい。例えば、 「渋谷さん が書いたコンテンツ」を探したくて、サーチエンジンで渋谷というキーワードで探しても 東京の渋谷という地名に関するコンテンツが何十万件も見つかってしまうだろう。渋谷と いう名前で検索すべきであるのが、サーチエンジンによる Web 検索は、その意味を理解せ ず高度な文字列検索を行っているに過ぎないからである。 最近 XML が登場し、Web 上のコンテンツは XML で記述されるようになってきた。例え ば、渋谷さんの書いた本は、次のように XML の記述がされるであろう。 <creator> <name>渋谷</name> <age>30</age> </creator> このような XML 記述をすれば、著者は渋谷という名前で年齢が 30 才であることが自明の ように思われる。しかし、人間にとっては、自明かもしれないが、実は計算機にとっては <creator>,<name>,<age>は、自然言語で表された概念 コンテンツを書いた人、その人の 名前、その人の年齢を表しているといったことを理解することはできず、自明ではない。 すなわち、XML では、タグ付けによって、構文(シンタックス)の定義を与えているだけ で(これだけでもサーチエンジンの文字列検索の精度、処理性能は向上する)、意味(セマ ンテックス)の定義を与えていない。そこで、意味の記述をあたえようとするのが、メタ データであり、Semantic Web である。 このように、コンテンツに意味情報を与えると、計算機が情報の意味を理解できるよう になり、「渋谷でパソコンが安くて信頼のおける店を探せ」といった意味処理を含む検索が できるようになる。また、意味情報の付与は、知的検索ばかりではなく、電子商取引の自 動化、海外旅行の飛行機、ホテル、チケットの予約とスケージュリング、受信メールの振 り分け、異なる標準間のデータ交換など、その応用範囲を拡大させる。 6.2.2 メタデータ、Semantic Web とはーその特徴 メタデータ、Semantic Web は、W3C などの団体が中心となって、その標準化、推進活 動を行っている。メタデータは、データについてのデータであり、データを或る目的のた めに扱いやすくするデータのことである。例えば、以下のようなデータがある。 ・データを構造化したデータ ・データリソースについてのデータ - 48 - ・カタログデータ ・データを共通認識させる意味データ Semantic Web は、データについての意味情報であり、W3C のディレクターであるティ ム・バーナーズ・リーらによって提唱された。その考え方は、サイエンティフィック・ア メリカン誌で、以下のように紹介され、計算機が情報の意味を理解できるようにし、各意 味情報を用いて、自動的な処理、知的な推論処理を行うことによって、人々が知識共有を グローバルに効率よく効果的に行うことを目指している。 「The Semantic Web is an extension of the current web in which information is given well-defined meaning, better enabling computers and people to work in cooperation. 」 Semantic Web は、メタデータの拡張として記述される。下図に示すように、Semantic Web は、XML Schema,RDF,RDF Schema,DAML+OIL などのメタデータの記述を階層的 に定義することよって記述される。 図 6.2-1 ―Semantic Web のアーキテクチャ(出典:参考資料1) Semantic Web プロジェクトの特徴は、セマンテックスの標準化に向けて、非集中型のア プローチを採用していることである。データに対し意味を付与し、計算機が理解可能とす るには、XML のタグ、プロパティの用語を標準化し、その意味付けを明確化するメタデー タの定義が必要となるが、そのメタデータの標準化にあたっては、一つに統一するのでは なく、複数の標準が存在することを許容している。それぞれの目的のために、数多くのメ - 49 - タデータが定義され、標準化されてくると、それらの複数のメタデータには、同義語、同 音異義語などが生じ、用語の相違が生まれる。このような場合には、同義語の辞書(オン トロジー)を作ることによって、その用語の相違を解消していこうとしている。この同義 の辞書もメタデータで、図の Ontology vocabulary レイヤで定義される。同義語辞書を作 成してもセマンティクスギャップ(用語の相違)は完全には解消されないが、現実的なア プローチであると言える。データベースがデータの整合性、一貫性を死守するあまり、分 散化、共有化が進まなかったのに対し、Web が、データの整合性、一貫性を放棄して分散 化を進め、ボトムアップの草の根型の発展を遂げ、Web をグローバルな巨大なデータベー ス化するのに成功したように、セマンティクスギャップを許容することによって、ボトム アップの草の根型に意味、知識が蓄積されて、巨大な知識ベースが構築されることを目論 んでいる。 では、これから、図に示した Semantic Web アーキテクチャの各レイヤを紹 介していくことにしよう。なお、Logic,Proof,Trust レイヤは、構想段階で、まだ、何も 決まっていないので、省略する。 6.2.3 XML Schema XML Schema は、XML ドキュメントの以下に示すクラス情報を記述する。 ・構造情報:どのようなエレメント、属性から構成されているか ・データタイプ:そのエレメント、属性がどのようなデータタイプであるか <xsd:element name=“Price” type=xsd:dicimal> ・データの基本情報:エレメントの頻出回数の制約などの情報 <element name=“item” minOccurs=“1” maxOccurs=”unbounded”> これには、意味情報はなく、DTD と同様の機能を提供するが、DTD は XML でないのに対 し、XML Schema は XML であるので、XML で使われているツールが XML Schema に対し ても使えるメリットがある。 注文票の例を以下に示す(出典:参考資料 2)。 注文票 purcheseOrder の XML は以下の ようであり、shipTo, billTo, items が記述されている。 [The Purchase Order, po.xml ] <?xml version="1.0"?> <purchaseOrder orderDate="1999-10-20"> <shipTo country="US"> <name>Alice Smith</name> <street>123 Maple Street</street> <city>Mill Valley</city> <state>CA</state> <zip>90952</zip> </shipTo> - 50 - <billTo country="US"> <name>Robert Smith</name> <street>8 Oak Avenue</street> <city>Old Town</city> <state>PA</state> <zip>95819</zip> </billTo> <comment>Hurry, my lawn is going wild!</comment> <items> <item partNum="872-AA"> <productName>Lawnmower</productName> <quantity>1</quantity> <USPrice>148.95</USPrice> <comment>Confirm this is electric</comment> </item> <item partNum="926-AA"> <productName>Baby Monitor</productName> <quantity>1</quantity> <USPrice>39.98</USPrice> <shipDate>1999-05-21</shipDate> </item> </items> </purchaseOrder> この XML に対する、XML Schema は、以下のように記述される。<zsd:element>で構成す るエレメントの名前(タグ名)とデ−タタイプが、<xsd:attribute>で属性の名前とデータ タ イ プ が 示 さ れ 、 複 雑 な デ ー タ タ イ プ ( こ の 例 で は 、 USAddress, Items ) は <zsd:complexType>でその詳細なデータ構造が<zsd:element>、<xsd:attribute>を用いて再 帰的に定義されている。 [The Purchase Order Schema, po.xsd] <xsd:schema xmlns:xsd="http://www.w3.org/2001/XMLSchema"> <xsd:annotation> <xsd:documentation xml:lang="en"> Purchase order schema for Example.com. Copyright 2000 Example.com. All rights reserved. </xsd:documentation> - 51 - </xsd:annotation> <xsd:element name="purchaseOrder" type="PurchaseOrderType"/> <xsd:element name="comment" type="xsd:string"/> <xsd:complexType name="PurchaseOrderType"> <xsd:sequence> <xsd:element name="shipTo" type="USAddress"/> <xsd:element name="billTo" type="USAddress"/> <xsd:element ref="comment" minOccurs="0"/> <xsd:element name="items" type="Items"/> </xsd:sequence> <xsd:attribute name="orderDate" type="xsd:date"/> </xsd:complexType> <xsd:complexType name="USAddress"> <xsd:sequence> <xsd:element name="name" type="xsd:string"/> <xsd:element name="street" type="xsd:string"/> <xsd:element name="city" type="xsd:string"/> <xsd:element name="state" type="xsd:string"/> <xsd:element name="zip" type="xsd:decimal"/> </xsd:sequence> <xsd:attribute name="country" type="xsd:NMTOKEN" fixed="US"/> </xsd:complexType> <xsd:complexType name="Items"> <xsd:sequence> <xsd:element name="item" minOccurs="0" maxOccurs="unbounded"> <xsd:complexType> <xsd:sequence> <xsd:element name="productName" type="xsd:string"/> <xsd:element name="quantity"> <xsd:simpleType> - 52 - <xsd:restriction base="xsd:positiveInteger"> <xsd:maxExclusive value="100"/> </xsd:restriction> </xsd:simpleType> </xsd:element> <xsd:element name="USPrice" <xsd:element ref="comment" type="xsd:decimal"/> minOccurs="0"/> <xsd:element name="shipDate" type="xsd:date" minOccurs="0"/> </xsd:sequence> <xsd:attribute name="partNum" type="SKU" use="required"/> </xsd:complexType> </xsd:element> </xsd:sequence> </xsd:complexType> <!-- Stock Keeping Unit, a code for identifying products --> <xsd:simpleType name="SKU"> <xsd:restriction base="xsd:string"> <xsd:pattern value="¥d{3}-[A-Z]{2}"/> </xsd:restriction> </xsd:simpleType> 6.2.4 RDF(Resource Description Framework) RDF は、メタデータを表すための枠組みであり、計算機が理解可能とするための情報記述 を与える。RDF では、リソースとプロパティと値の三つ組で構造を表す極めてシンプルな 構造化モデルを採用している。 例えば、リソース:http:// www.w3.org/Home/Lassila のプロパティ:著者の値:Ora Lassila は、次のように表される(本節の例の出典は参考資料3)。 <rdf:Description about=”http://www.w3.org/Home/Lassila”> <Name>Ora Lassila</Name> </rdf:Description> 値は、リソースを指してよいので、ネットワークとして定義していくことができる。 「 http:// www.w3.org/Home/Lassila ( リ ソ ー ス ) の 著 者 ( プ ロ パ テ ィ ) は 、 個 人 http://www.w3.org/staffId/85740(リソース)であり、その個人の名前(プロパティ)は Lassila(値)、Email アドレス(値)は lassila@w3.org である。」は、次のように記述され る。 - 53 - <rdf:RDF> <rdf:Description about="http://www.w3.org/Home/Lassila"> <Creator> <rdf:Description about="http://www.w3.org/staffId/85740"> <Name>Ora Lassila</Name> <Email>lassila@w3.org</Email> </rdf:Description> </Creator> </rdf:Description> </rdf:RDF> ま た 、 構 造 を 表 す モ デ ル と し て コ ン テ ナ モ デ ル を 採 用 し 、 <Bag>, <Sequence>, <Alternative>が用いられる。例えば、アルファベット順に指定された二人の著者のドキュ メントがあり、二つの異なった言語のタイトルが付けられ、Web 上の 2 箇所で同じドキュ メント公開されている例は、次のように表される。 <rdf:RDF xmlns:rdf="http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#" xmlns:dc="http://purl.org/metadata/dublin_core#"> <rdf:Description about="http://www.foo.com/cool.html"> <dc:Creator> <rdf:Seq ID="CreatorsAlphabeticalBySurname"> <rdf:li>Mary Andrew</rdf:li> <rdf:li>Jacky Crystal</rdf:li> </rdf:Seq> </dc:Creator> <dc:Identifier> <rdf:Bag ID="MirroredSites"> <rdf:li rdf:resource="http://www.foo.com.au/cool.html"/> <rdf:li rdf:resource="http://www.foo.com.it/cool.html"/> </rdf:Bag> </dc:Identifier> <dc:Title> <rdf:Alt> <rdf:li xml:lang="en">The Coolest Web Page</rdf:li> - 54 - <rdf:li xml:lang="it">Il Pagio di Web Fuba</rdf:li> </rdf:Alt> </dc:Title> </rdf:Description> </rdf:RDF> 6.2.5 RDF Schema RDF Schema は、RDF の以下のようにデータタイプを記述する。 ・クラス、及び他のクラスとの関係を定義 オブジェクト指向風に<Class>, <subClassOf>が用いられる。 ・プロパティ、及び他のプロパティとの関係を定義 <subPropertyOf>で他のプロパティの定義を継承することを示す。 ・プロパティの値の範囲、属するクラスなどプロパティの制約を定義 <range>でプロパティの値の範囲を、<domain>でプロパティが属するクラスを指定する。 ・意味(ラベルとコメント)を定義 <label>でラベルを、<comment>でコメントを指定する。 次の例は、人のクラスに関する定義 Person である。クラス Person は、別に定義済みのク ラス Animal のサブクラスと定義される、プロパティ maritalStatus は、クラス Person に 属し、値の範囲は、クラス MaritalStatus で、その値は”Married"、”Divorced"、"Single"、 "Widowed"のいずれかである。プロパティ ssn は、クラス Person に属し、値の範囲は、ク ラス Integer である。プロパティ age は、クラス Person に属し、値の範囲は、クラス Integer であることを示している(例の出典は参考資料 4)。 <rdfs:subClassOf rdf:resource="http://www.w3.org/2000/03/example/classes#Animal"/> </rdfs:Class> <rdf:Property ID="maritalStatus"> <rdfs:range rdf:resource="#MaritalStatus"/> <rdfs:domain rdf:resource="#Person"/> </rdf:Property> <rdf:Property ID="ssn"> <rdfs:comment>Social Security Number</rdfs:comment> <rdfs:range rdf:resource="http://www.w3.org/2000/03/example/classes#Integer"/> <rdfs:domain rdf:resource="#Person"/> </rdf:Property> - 55 - <rdf:Property ID="age"> <rdfs:range rdf:resource="http://www.w3.org/2000/03/example/classes#Integer"/> <rdfs:domain rdf:resource="#Person"/> </rdf:Property> <rdfs:Class rdf:ID="MaritalStatus"/> <MaritalStatus rdf:ID="Married"/> <MaritalStatus rdf:ID="Divorced"/> <MaritalStatus rdf:ID="Single"/> <MaritalStatus rdf:ID="Widowed"/> </rdf:RDF> 6.2.6 メタデータの例 ―D ublin Core 以上の RDF、RDF Schema を用いてメタデータが定義され、各業界、団体で標準化作業 が行われている。その主なものには、以下のものがある。 ・Dublin Core;書誌情報の基本語彙集 ・P3P:プライバシーに関するメタデータ ・RSS:サイト情報の要約と公開 ・WSDL:リモートプロシジャコール(SOAP)のメタ情報 この内、Dublin Core を紹介する。 Dublin Core は、Web や文書の作者、タイトルなどの書誌情報の基本語彙集である。 次の 15 の基本エレメントタイプが決められている。 Title Creator Identifier Subject Souece Description Language Publisher Relation Contributor Coverage Date Type Format Right さらに基本エレメントタイプよりもっと厳密なメタデータ記述を行うために、以下のよう な修飾子がある。 Title.alternative Description.tableOfContents Date.created Date.Valid Description.abstract Date.available Date.issued Date.modified Format.extent Format.medium Relation.isVersionOf Relation.isRequiredBy Relation.isFormatOf Coverage.special Relation.hasVersion Relation.isReplaceBy Relation.replace Relation.requires Relation.isPartOf Relation.references Relation.hasFormat Coverage.temporal - 56 - Dublin Core の例を次に示す(例の出典は参考資料4)。 <rdf:RDF xmlns:rdf="http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#" xmlns:dc="http://purl.org/metadata/dublin_core#"> <rdf:Description about="http://www.dlib.org"> <dc:Title>D-Lib Program - Research in Digital Libraries</dc:Title> <dc:Description>The D-Lib program supports the community of people with research interests in digital libraries and electronic publishing.</dc:Description> <dc:Publisher>Corporation For National Research Initiatives</dc:Publisher> <dc:Date>1995-01-07</dc:Date> <dc:Subject> <rdf:Bag> <rdf:li>Research; statistical methods</rdf:li> <rdf:li>Education, research, related topics</rdf:li> <rdf:li>Library use Studies</rdf:li> </rdf:Bag> </dc:Subject> <dc:Type>World Wide Web Home Page</dc:Type> <dc:Format>text/html</dc:Format> <dc:Language>en</dc:Language> </rdf:Description> </rdf:RDF > 6.2.7 DAML+OIL DAML+OIL Ontology Ontology は、RDF Schema に加えて、より詳細なクラス、プロパティの定 義、制約、表記を記述する。 これらの記述のために以下が使われる。 equivalentTo sameCLassAs samePropertyAs disjionWith Disjion unionOf disjionUnionOf intersectionOf commplementOf oneOf Restriction onProperty toClass hasValue hasClass minCarinality maxCardinality cardinarity hasClassQ minCardinalityQ maxCardinalityQ cardinalityQ NonNegativeInteger inverseOf TransitiveProperty UniqueProperty UnambigousProperty List nil first rest item Ontology versionInfo imports 以下に例を示す(例の出典は参考資料9)。 <!-- $Revision: 1.9 $ of $Date: 2001/05/03 16:38:38 $ --> - 57 - <rdf:RDF xmlns:rdf ="http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#" xmlns:rdfs="http://www.w3.org/2000/01/rdf-schema#" xmlns:daml="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil#" xmlns:xsd ="http://www.w3.org/2000/10/XMLSchema#" xmlns:dex ="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil-ex#" xmlns:exd ="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil-ex-dt#" xmlns ="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil-ex#" > <daml:Ontology rdf:about=""> <daml:versionInfo>$Id: daml+oil-ex.daml,v 1.9 2001/05/03 16:38:38 mdean Exp $</daml:versionInfo> <rdfs:comment> An example ontology, with data types taken from XML Schema </rdfs:comment> <daml:imports rdf:resource="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil"/> </daml:Ontology> <daml:Class rdf:ID="Animal"> <rdfs:label>Animal</rdfs:label> <rdfs:comment> This class of animals is illustrative of a number of ontological idioms. </rdfs:comment> </daml:Class> <daml:Class rdf:ID="Male"> <rdfs:subClassOf rdf:resource="#Animal"/> </daml:Class> <daml:Class rdf:ID="Female"> <rdfs:subClassOf rdf:resource="#Animal"/> <daml:disjointWith rdf:resource="#Male"/> </daml:Class> - 58 - <daml:Class rdf:ID="Man"> <rdfs:subClassOf rdf:resource="#Person"/> <rdfs:subClassOf rdf:resource="#Male"/> </daml:Class> <daml:Class rdf:ID="Woman"> <rdfs:subClassOf rdf:resource="#Person"/> <rdfs:subClassOf rdf:resource="#Female"/> </daml:Class> <daml:ObjectProperty rdf:ID="hasParent"> <rdfs:domain rdf:resource="#Animal"/> <rdfs:range rdf:resource="#Animal"/> </daml:ObjectProperty> <daml:ObjectProperty rdf:ID="hasFather"> <rdfs:subPropertyOf rdf:resource="#hasParent"/> <rdfs:range rdf:resource="#Male"/> </daml:ObjectProperty> <daml:DatatypeProperty rdf:ID="shoesize"> <rdfs:comment> shoesize is a DatatypeProperty whose range is xsd:decimal. shoesize is also a UniqueProperty (can only have one shoesize) </rdfs:comment> <rdf:type rdf:resource="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil#UniqueProperty"/> <rdfs:range rdf:resource="http://www.w3.org/2000/10/XMLSchema#decimal"/> </daml:DatatypeProperty> <daml:DatatypeProperty rdf:ID="age"> <rdfs:comment> age is a DatatypeProperty whose range is xsd:decimal. age is also a UniqueProperty (can only have one age) </rdfs:comment> <rdf:type rdf:resource="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil#UniqueProperty"/> - 59 - <rdfs:range rdf:resource="http://www.w3.org/2000/10/XMLSchema#nonNegativeInteger"/> </daml:DatatypeProperty> <daml:Class rdf:ID="Person"> <rdfs:subClassOf rdf:resource="#Animal"/> <rdfs:subClassOf> <daml:Restriction> <daml:onProperty rdf:resource="#hasParent"/> <daml:toClass rdf:resource="#Person"/> </daml:Restriction> </rdfs:subClassOf> <rdfs:subClassOf> <daml:Restriction daml:cardinality="1"> <daml:onProperty rdf:resource="#hasFather"/> </daml:Restriction> </rdfs:subClassOf> <rdfs:subClassOf> <daml:Restriction> <daml:onProperty rdf:resource="#shoesize"/> <daml:minCardinality>1</daml:minCardinality> </daml:Restriction> </rdfs:subClassOf> </daml:Class> <daml:Class rdf:about="#Animal"> <rdfs:comment> Animals have exactly two parents, ie: If x is an animal, then it has exactly 2 parents (but it is NOT the case that anything that has 2 parents is an animal). </rdfs:comment> <rdfs:subClassOf> <daml:Restriction daml:cardinality="2"> <daml:onProperty rdf:resource="#hasParent"/> </daml:Restriction> </rdfs:subClassOf> - 60 - </daml:Class> <daml:Class rdf:about="#Person"> <rdfs:subClassOf> <daml:Restriction daml:maxCardinality="1"> <daml:onProperty rdf:resource="#hasSpouse"/> </daml:Restriction> </rdfs:subClassOf> </daml:Class> <daml:Class rdf:about="#Person"> <rdfs:subClassOf> <daml:Restriction daml:maxCardinalityQ="1"> <daml:onProperty rdf:resource="#hasOccupation"/> <daml:hasClassQ rdf:resource="#FullTimeOccupation"/> </daml:Restriction> </rdfs:subClassOf> </daml:Class> <daml:UniqueProperty rdf:ID="hasMother"> <rdfs:subPropertyOf rdf:resource="#hasParent"/> <rdfs:range rdf:resource="#Female"/> </daml:UniqueProperty> <daml:ObjectProperty rdf:ID="hasChild"> <daml:inverseOf rdf:resource="#hasParent"/> </daml:ObjectProperty> <daml:TransitiveProperty rdf:ID="hasAncestor"> <rdfs:label>hasAncestor</rdfs:label> </daml:TransitiveProperty> <daml:TransitiveProperty rdf:ID="descendant"/> <daml:ObjectProperty rdf:ID="hasMom"> <daml:samePropertyAs rdf:resource="#hasMother"/> - 61 - </daml:ObjectProperty> <daml:Class rdf:ID="Car"> <rdfs:comment>no car is a person</rdfs:comment> <rdfs:subClassOf> <daml:Class> <daml:complementOf rdf:resource="#Person"/> </daml:Class> </rdfs:subClassOf> </daml:Class> <daml:Class rdf:about="#Person"> <rdfs:comment>every person is a man or a woman</rdfs:comment> <daml:disjointUnionOf rdf:parseType="daml:collection"> <daml:Class rdf:about="#Man"/> <daml:Class rdf:about="#Woman"/> </daml:disjointUnionOf> </daml:Class> <daml:Class rdf:ID="TallMan"> <daml:intersectionOf rdf:parseType="daml:collection"> <daml:Class rdf:about="#TallThing"/> <daml:Class rdf:about="#Man"/> </daml:intersectionOf> </daml:Class> <daml:Class rdf:ID="MarriedPerson"> <daml:intersectionOf rdf:parseType="daml:collection"> <daml:Class rdf:about="#Person"/> <daml:Restriction daml:cardinality="1"> <daml:onProperty rdf:resource="#hasSpouse"/> </daml:Restriction> </daml:intersectionOf> </daml:Class> <daml:Class rdf:ID="HumanBeing"> - 62 - <daml:sameClassAs rdf:resource="#Person"/> </daml:Class> <daml:Class rdf:ID="Adult"> <daml:intersectionOf rdf:parseType="daml:collection"> <daml:Class rdf:about="#Person"/> <daml:Restriction> <daml:onProperty rdf:resource="#age"/> <daml:hasClass rdf:resource="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil-ex-dt#over17"/> </daml:Restriction> </daml:intersectionOf> </daml:Class> <daml:Class rdf:ID="Senior"> <daml:intersectionOf rdf:parseType="daml:collection"> <daml:Class rdf:about="#Person"/> <daml:Restriction> <daml:onProperty rdf:resource="#age"/> <daml:hasClass rdf:resource="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil-ex-dt#over59"/> </daml:Restriction> </daml:intersectionOf> </daml:Class> <daml:ObjectProperty rdf:ID="hasHeight"> <rdfs:range rdf:resource="#Height"/> </daml:ObjectProperty> <daml:Class rdf:ID="Height"> <daml:oneOf rdf:parseType="daml:collection"> <Height rdf:ID="short"/> <Height rdf:ID="medium"/> <Height rdf:ID="tall"/> </daml:oneOf> </daml:Class> - 63 - <!-- TallThing is EXACTLY the class of things whose hasHeight is tall --> <daml:Class rdf:ID="TallThing"> <daml:sameClassAs> <daml:Restriction> <daml:onProperty rdf:resource="#hasHeight"/> <daml:hasValue rdf:resource="#tall"/> </daml:Restriction> </daml:sameClassAs> </daml:Class> <daml:DatatypeProperty rdf:ID="shirtsize"> <rdfs:comment> shirtsize is a DatatypeProperty whose range is clothingsize. </rdfs:comment> <rdf:type rdf:resource="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil#UniqueProperty"/> <rdfs:range rdf:resource="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil-ex-dt#clothingsize"/> </daml:DatatypeProperty> <rdfs:Class rdf:ID="BigFoot"> <rdfs:comment> BigFoots (BigFeet?) are exactly those persons whose shosize is over12. </rdfs:comment> <daml:intersectionOf rdf:parseType="daml:collection"> <rdfs:Class rdf:about="#Person"/> <daml:Restriction> <daml:onProperty rdf:resource="#shoesize"/> <daml:hasClass rdf:resource="http://www.daml.org/2001/03/daml+oil-ex-dt#over12"/> </daml:Restriction> </daml:intersectionOf> </rdfs:Class> <Person rdf:ID="Ian"> - 64 - <rdfs:comment> Ian is an instance of Person. Ian has shoesize 14 and age 37. From the range restrictions we know that these are of type xsd:decimal and xsd:nonNegativeInteger respectively. Ian also has shirtsize 12, the type of which is the union type clothingsize; the discriminating type "string" has been specified, so the value is to be taken as the string "12" rather than the integer 12. We may be able to infer that Ian is an instance of BigFoot (because 14 is a valid value for xsd:over12). </rdfs:comment> <shoesize>14</shoesize> <age>37</age> <shirtsize><xsd:string rdf:value="12"/></shirtsize> </Person> </rdf:RDF> 6.2.8 メタデータ、Semantic Web の課題と展望 メタデータ、Semantic Web は、まだ、発展途上の技術であり、以下のような課題を抱え ている。 ・標準化がうまく成功するか? ・メタデータ、Semantic Web をうまく活用するためには、推論など AI 技術が必要になる。 この AI 技術を用いたツール、アプリケーションが出て来るか? ・メタデータ、Semantic Web の記述は、HTML などの記述に比べ、かなり難しい。支援 ツールの出現等により、多くの人々が使いこなせるようになるか? 従って、Web のように大ブレークして、巨大な知識ベースに発展するかどうかは、現段階 ではなんとも言えない。しかし、将来に向けた期待のもてるビジョンであることは確かで あろう。 [参考資料] 1)“The Semantic Web” by TIM BERNERS-LEE, JAMES HENDLER and ORA LASSILA, http://www.sciam.com/2001/0501issue/0501berners-lee.html 2)“XML Schema Part 0: Primer” by David C. Fallside, http://www.w3.org/TR/xmlschema-0 3)“Resource Description Framework(RDF) Model and Syntax Specification”, by Ora Lassila, Ralph R Swick, http://www.w3.org/TR/REC-rdf-syntax/ 4)"Resource Description Framework(RDF) Schema Specification 1.0"、 - 65 - by Dan Brickley, R.V. Guha、 http://www.w3.org/TR/rdf-schema/ 5)“Dublin Core Metadata Element Set, Version 1.1: Reference Description” http://dublincore.org/documents/dces/ 6)“Dublin Core Qualifiers”、 http://dublincore.org/documents/dcmes-qualifiers/ 7)“Annotated DAML+OIL (March 2001) Ontology Markup” http://www.daml.org/2001/03/daml+oil-walkthru.html 8)”Reference description of the DAML+OIL (March 2001) ontology markup language” http://www.daml.org/2001/03/reference.html 9)”daml+oil-ex.daml” ,http://www.daml.org/2001/03/daml+oil-ex.daml - 66 - 6.3 ID に関する注目要素技術: ID チップ この章ではIDに関する注目要素技術である無線認識型粉末ICチップ(ID チッ プ)について述べる。 1)コンテンツ表現構造とコンテンツID デジタルコンテンツ流通の分野では、田中譲教授(北大)がミームメディアのコン セプトを提唱している。また、フラッシュメモリーに開錠鍵をいれ流通させようと いうコンセプトが森享一名誉教授から提唱されている。その後、ブロードバンド化 の進展により、音声や動画などのマルチメディアコンテンツを高速に配信する要求 が高まり、コンテンツの大容量化が進むと同時に、いつでも・どこでもコンテンツ を受けたり・発信したりできるためのモバイルデバイスの種類が豊富に揃ってきて いる。しかし、これらのデータはデバイス側のメモリ容量などの制限から独自のフ ォーマットでしか対応しないものが多く、管理データやコンテンツを各フォーマッ ト毎に作成しているが、コンテンツの流通を促進し、市民に恩恵をもたらすために は、デバイス依存でなく、どのデバイスでも処理できるための共通化が不可欠とな ってきた。さらに、利用者側のデバイスとコンテンツ提供者側とでやりとりするコ ンテンツ表現構造の標準化やコンテンツの構造化が不可欠となっている。 コンテンツ配信では、コンテンツだけを配信すれば良いというわけではなく、 コンテンツ属性データやセキュリティデータなどのコンテンツIDデータもコン テンツといっしょに配信する必要が出てくる。そして、コンテンツを効率よく流通 させるためには、どういったコンテンツが配信されているかを利用者に知らせるこ とが必要であり、コンテンツの全部を配信するのは効率が悪いし、通信料もかかる。 そのため、インデックス情報を提供することで大量のデータを管理しながら効率よ く処理する方法がとられてきた。コンテンツIDは、文書のタグの名前、種類、属 性などを定義し、どういう属性がついているかという情報をアプリ間で交換するた めに必要となる。さらに、インデックス情報のエンコーディングを共通化すること によりアプリケーションの開発効率を飛躍的に向上させることができる。また、コ ンテンツの著作権や利用許諾の権利を保護しようという動きがある。 コンテンツ自身の権利関係の記述に関するものとしては cIDf があり、コンテンツ の利用許諾に関する記述として XrML の標準化が検討されてる。誰に対して、どの コンテンツに、どんな行為を、どんな条件で利用を許諾しているかのライセンス情 報をコンテンツにバインドしようという試みである。 ところが、最近になってわずか0.4ミリ角の小さなICチップが登場し、この - 67 - 粉末ICチップとコンテンツIDをリアルタイムに認識することによって新しい 世界が実現できるのではないかと話題になっている。 情報・知識 (ビット)と モ ノ (アトム)の融合の世界である。 2)粉末ICチップとコンテンツID 無線による移動体識別技術は自動認識を可能にし、先進の半導体技術はICチップ の超小型化・軽量・薄形化をもたらす。一方、コンテンツID標準化技術はコンテ ンツの流通を促進し、モノの Identification と Location をリアルタイムに認識で きる世界が開ける。注目されている粉末チップは、わずか0.4ミリ角にアナログ・ デジタル変換装置、高周波回路、メモリーを内蔵し、電波を送るとチップ内で変換 し、メモリーのデータを電波に変えて送り返す仕組みをもつ。外部アンテナを付け れば、30センチの距離内であれば交信でき、メモリーには38桁のデータを保持 できる。 < 粉末ICチップの仕様例 > ・0.4mm 角のチップの中 ・128 ビットROM ・認識情報に暗号技術を適用 ・2.45GHz 高周波アナログ回路 ・外部アンテナ ・30cm の通信 この極小の粉末チップを見ていると、様々なコンテンツ流通の世界が想像されてく る。例えば、消費者がTVや商品カタログを見ながら、カタログについている粉末 チップをスキャンすると要求しているコンテンツの入口に到達する。 コンテンツの入口に到達した消費者はTVから自然言語で入力し、消費者の意向に 沿ったコンテンツだけをピックアップし、しかもクローズド・キャプション技術や グラフ等を使ってプレゼンテーションが行われる。見やすい綺麗な個客用コンテン ツだけを見せるプレゼンテーション分野の実現である。すでに伝統的広告紙メディ アとウエブ上のコンテンツを見て内容を確認するビジネスモデルが登場している。 - 68 - ・生活者 読み取ったコードを URLに変換する カタログ コンテンツ サーバ インターネット上のコンテンツ 広告紙 伝統的メディア モバイル変換 (with ID チップ) < 伝統的メディアとウエブ上のコンテンツを見て内容を確認する事例 > 現在、記述方法の標準化活動が推進されており、HTML 文書を集めキーワードを自動 的に抽出するための標準化、権利情報へのポインタ記述、使用条件、履歴記述、コ ンテンツIDの記述方法の標準化などを検討している。マルチメディアコンテンツ 記述の全体の枠組み、インタフェース・プロトコールの標準化はMPEG21で検 討されている。 さらに、SC31ではGPSとICチップの結合による商品追跡仕様の検討を開始 した。当初は、世界中に散らばっているリターナブル・コンテナ管理のビジネスモ デルを考えている。さらに、株券、小切手や商品券に粉末チップをすきこんで真贋 の判定に使う適用分野へのアプローチがなされている。また、米MITでは、Smart World Forum を発足させ、electronic product code と physical markup language を開発している。 < 粉末ICチップの応用事例 > (1)インターネットと連動した内容確認・詳細説明 (2)GPSとICチップデータ結合による商品追跡 (3)大量部品で搆成されるモノの部品交換等の履歴管理 (4)電子チケッティング・システム (5)有価証券、小切手等の真贋 これらの動きは、粉末チップをインターネットと結び付けて考えれば、現在の社会 を大きく変える可能性を秘めているからである。今迄、全く考えられなかったビジ ネスモデルによる情報・モノ一致の世界が拓かれるとして熱き視線を浴びている。 - 69 - 7.コンテンツ配信と知識メディア技術 7.1 ライセンス管理に残された課題 IntelligentPad コンソーシアム(http://www.pads.or.jp/ 以降、IPC)では、情報処理 振興事業協会(http://www.ipa.go.jp/)の事業の一つとして、1998 年 1 月より翌年 3 月ま での間、ライセンス管理システムの開発を行った。このシステムは、デジタルコンテンツ の自由な流通、複写、編集を許しながらも、それらの利用管理・課金と保護を行うことを 目指したものである。この開発の過程において多くの問題点が挙げられたが、全てを短い システム開発期間だけで解決できたわけではなく、いくつかの課題を残してきた。またこ の一年のブロードバンドの急速な普及に伴い、再度デジタルコンテンツの流通に関する議 論が高まってきており、それに伴って様々な課題が新たに提示されている。それらのいく つかについて、以下に述べる。 (1) 利用者にとっての障壁 IPC のライセンス管理システムの開発においては、各々のコンテンツを追跡管理しながら も、自由な複写と編集を許すことに主眼をおいた。保護されたデジタルコンテンツを複写 可能にする方式は、INTERTRUST 社(http://www.intertrust.com/)の DRM(Digital Rights Management)に代表されるように、一般的な考え方になってきているが、編集可能であり かつその編集物が再流通可能である点については、他に例を見ない優れた機能である。だ が、機能が優れているだけで利用されるわけではない。ライセンス管理システム一般につ いて利用者の側から見ると、いくつか大きな問題が残っている。 (a) 個人情報の引き渡しを利用者は受け入れるか。 従来の現金による売買においては匿名性があった。ところがクレジットカードやポイン トカードの導入によって、この匿名性は徐々に失われつつある。それがコンテンツ単位ま で管理可能になると、より詳細な嗜好が記録されることになり、このことを利用者は受け 入れるかという課題が残っている。もちろん嗜好情報を提供してもらう替わりに、なんら かの特典を利用者に与えればよいという考え方もあるし、受け入れる利用者も一定割合存 在する。また個人の嗜好情報を特定できないように管理する仕組み(例えばインフォミデ ィアリ)も考えられる。一方、それらの情報が適切に管理されているのだろうかという疑 念も利用者の側から起こるだろう。最近ウェブサイトにプライバシーポリシーを掲げるケ ースが増えているが、個人情報を管理する側の一方的な宣言だけで済む問題ではなく、第 三者による適切な監査が必要である。 (b) コンテンツ入手の手間をいかに軽減するか。 流通しているデジタルコンテンツを入手し、正当な権利を持った利用者になるためには、 原権利者またはその代行者に対して、自らを識別してもらい、また必要であれば、対価の 支払いを行わなければならない。この時、少なくとも、何らかの認証手段と決済手段を用 - 70 - 意しなければならないことになる。Amazon(http://www.amazon.com/)のワン・クリック のように、個人情報と決済情報を一度登録してしまえば、手軽に注文できる仕組みは、す でに存在している。しかし初めて訪れた店舗に対しては、必要な情報を全て一から入力し なければならない。この手間の軽減と個人情報の保護のためにもインフォミディアリのよ うな仕組みが必要となろう。これに近い事例として、懸賞の応募を容易にする MyID (http://www.MyID.ne.jp/)のようなサービスがすでに登場している。 もうひとつの課題として、利用者が欲しいと思うコンテンツをいかにして探し出すかと いう問題があるが、別の次元の議論なので、ここでは触れないことにする。 (2) 利用者が望むデジタルコンテンツとは 現在利用可能なデジタルコンテンツには、テキスト、サウンド、ムービー、およびそれ らを組み合わせた編集物がある。 (a) 単体のコンテンツは流通するか。 静止画像の代表的事例として、写真の流通が考えられる。写真集の形態であれば、書籍 では不可能な映像効果などの新たな魅力を付加できるので、成立し得ると考えられるし、 実際、CD‑ROM の形態で多数販売されている(ex. http://www.synforest.co.jp/)。動画も テレビ番組や映画のような形態であれば、すでにパッケージ化されており、ビジネスとし て成り立っている。さらに音楽も長年パッケージ販売されてきた実績がある。このように 物理媒体に納めた形では、すでに商業ベースにのっており、利用者も多数存在している。 しかし、デジタルデータのままでネットワークを通じて流通する形態は、音楽配信にお いて立ち上がり始めたばかりであり、まだマスマーケットを形成するには至っていない。 その原因の一つに、配信を行うには回線が細いという問題があったが、昨年来のブロード バンドの急速な普及により、この問題は解決されつつある。むしろコンテンツを持ってい る側が、ネットワーク配信を躊躇しているように見える。その理由の一つには、違法コピ ーを防ぐという課題があるが、これは適切な保護システムを導入すれば済む話である。む しろ大きいのは、パッケージ販売のビジネスモデルが大きく変わることに対する抵抗感で はないだろうか。また保護システムも、あまりにきついと利用者も受け入れなくなる。現 状 CD を購入した際に得られる私的コピーなどのベネフィットが損なわれては受け入れ難い。 少なくともパソコン等のネットワーク接続機器からポータブル再生装置等の他の機器への 私的コピー、およびバックアップは必須である。 一方、利用者にとってコンテンツがデジタル化されネットワーク経由で入手可能になる ことの最大のメリットは、物理的生産量に制約されずに入手できる、つまり絶版がなくな ることと、検索可能になることであろう。この2点は、供給側に対しても、販売機会の増 大をもたらす可能性が高い。 (b) 利用者は編集するか。 結論から言ってしまえば、多くの利用者は編集せずに完成物を望むであろう。だからと - 71 - いって編集できるようにすることが不要ということではない。編集物の一部でも、自分の 気に入った形に編集できることは、編集物の多様性を産み出し、それらが再流通して、多 くの人の評価を経ることによって、よりよい編集物へと洗練され、一層利用者に受け入れ られるものになっていくことが期待できる。またそれらの評価情報もネットワークを通じ て瞬く間に広まり、その編集物が、さらに多くの利用者に受け入れられるようになるであ ろう。このことを実現するには、編集物内の個々のコンテンツおよび編集行為そのものを ライセンス管理できる編集物対応のライセンス管理システムが必要である。 (3) ライセンス管理システムはコスト的に引き合うか ライセンス管理を行う際には、少なくとも下記の点を考慮しなければならない。 (a) 複写の制御 保護された状態のデジタルコンテンツは、流通を促進する上で、むしろ積極的に自由に コピーさせることが望ましい。ただし複写数量や複写世代を制御すべきケースも考えられ る。 (b) 高信頼性 ライセンス管理システムの利用者であるコンテンツ供給者および利用者が安心して利用 できることが必須である。 (c) 種々の課金方式の共存 販売方式(売り切り、従量制)、支払い時期(先払い、後払い)、割引(サイトライセン ス、ボリュームディスカウント、広告付き等)などの種々の販売形態に対応できることが 望ましい。また一定期間の試用を許すとか、支払いが済むまでは機能制限を設けるなどの 自由度も必要となろう。 (d) 交換可能なライセンス管理システム 破られないプロテクトはあり得ない。定期的、または破られた際に、システムの一部が 交換可能な仕組みが必要である。 (e) 改竄防止 課金情報、利用情報の改竄や消去、デジタルコンテンツの不法コピーや改竄に耐えられ なければならない。 (f) ユーザに不必要に負担をかけない ユーザに余計な操作や時間をかけさせてはいけない。 (g) マシンまたはユーザの特定 ライセンス管理のベースとなるマシンまたは利用者を特定するための何らかの識別子が 必要である。 少なくとも以上の要件を満たしたシステムを維持管理し続けなければならない上に、決 済手数料を、高くてもクレジットカード並に抑えないと、普及は難しい。このため、多く - 72 - の方式が提案・提供されても、採算面から最終的には一握りのシステムに集約されていか ざるを得ないのではないか。また利用者の側から見ても、操作や決済方法が異なる複数の システムが存在することは嬉しいことではないので、利用者側による淘汰も行われるであ ろう。 (4) ライセンス管理サービスはどうあるべきか (a) 管理 デジタルコンテンツのライセンス管理を行う上で、コンテンツ、供給者、利用者の識別 が必要となる。このうち、コンテンツに対しては CONTENT ID Forum(http://www.cidf.org/) の活動に代表されるように、標準化の気運が高まってきており、将来的には、第三者機関 による識別子管理が行われることが期待される。しかし利用者の識別に関しては、個人情 報の保護の問題もあって、取り扱いが難しい。現状では、決済を行う業者ごとにばらばら の識別子を付与しているため、単体のコンテンツの売り切り流通は可能であっても、編集 物の再流通を促す上では、管理が困難になっている。再流通が行われるようになると、利 用者が供給者にもなり得ることや複数の供給者のコンテンツが同一編集物内に混在するこ とを考慮しなければならない。さらには個人情報を保護するための法整備なども必要とな ろう。 (b) 課金 個別のコンテンツごとに決済可能な小額課金の仕組みも必要だが、各コンテンツの単位 ごとに決済する従量課金が、本当に適切なのかは疑問が残る。なぜなら、少なくとも決済 を行う際には利用者の確認を求めなければならないが、この時、一つ一つのコンテンツに ついて承認を利用者に求めるのは繁雑だからである。一ヶ月に数回程度の決済回数でしか ないペイ・パー・ビューテレビ放送でさえ、利用者はなかなか増えず、多くは月決め定額 制を選択していることから見ても疑問を持たざるを得ない。例えば包括的に決済してくれ る仲介業者が間に入ることも考えられるが、それとてペイ・パー・ビューテレビ放送の課 金粒度の域を出るものではない。もちろん対象となるコンテンツによって、この粒度は異 なるであろう。例えば、音楽であれば、一曲単位での課金が成り立つかもしれないが、写 真では組写真以上でないと受け入れられないといったことが考えられる。またそのコンテ ンツの価値によっても変化する可能性がある。例えば有名写真家の写真であれば一枚単位 の販売が可能だが、新進作家の場合は、セットにしないと難しいといったことが起き得る だろう。 一方、通信料金やプロバイダー利用料金は、定額制に急速に移行しつつある。デジタル コンテンツを入手する有力手段の一つであるネットワークの利用料金が定額制に移行して いる中で、単純な従量課金は一層馴染みにくくなってきている。 こうした状況の中で、デジタルコンテンツの課金においては、定額制、上限を設けた従 量課金、広告付きなどの方法を適宜組み合わせて行く必要があるのではないだろうか。ま - 73 - た売り切りだけではなく、利用量が少ない場合の低額課金も考えていく必要がある。 (5) 誰のためのライセンス管理 ライセンス管理システムは、どちらかといえば、デジタルコンテンツを提供する側を護 るために考えられた仕組みであり、利用者は、余計な手間が増えるライセンス管理システ ムを望んでいるわけではない。ただ良質のデジタルコンテンツを継続的に入手可能にする ためには、制作者に適切な対価が支払われなければならないことを理解した上で、止むを 得ず容認しているだけである。もし別の簡便な手段によって制作者に対価が支払われるの であれば、利用者に直接接するライセンス管理システムは不要なのかもしれない。 その一つの妥協的解決方法が、既に行われている機器や媒体やレンタル業者から直接徴 収する付加金方式である。しかし現行のルールではパソコン関連機器が対象に含まれてお らず、P2P 技術の発展に伴って、有名無実化する恐れがあり、何らかの対策が必要である。 別な視点からデジタルコンテンツを媒体の外に出せないようにするコピーガード方式が 古くから考えられ、また最近音楽 CD で実際に採用され始めているが、コンテンツをデジタ ル化するメリットからは逆行するように思えるし、編集物の流通を否定することになる。 一方、著作権法は、今や作者を守るためのものではなく、莫大な著作権を所有する者の 利益を代弁するものになってきているために、極論すれば文化の衰退を招くという懸念も 出て来ている(例えば、米国では、5 つのレコード会社が今や音楽流通の 85%を牛耳って いるという http://www.hotwired.co.jp/news/news/20011130204.html)。適切なライセ ンス管理システムの導入とネットワークが、多様性をもたらす可能性もあるし、逆に寡占 を促進してしまうかもしれない。 ともかくライセンス管理に関する現状の議論では、利用者にとっての利益と言う視点が 欠けているように思える。 - 74 - 7.2 教材コンテンツの部品化事例 経理の勉強をするとき、損益計算書、仕訳帳、経営指標などの道具を使います。 他の勉強でも、辞書の類、実験道具、分類表などの道具をつかいます。学習のための道具 とそのメディア部品化について考えます。 7.2.1 デジタル算数セット 教育出版株式会社が開発中の小学校の算数学習用ソフトウェア「デジタル算数セット(仮 称)」を紹介します。小学校では、おはじき、数え棒、時計、定規、三角形や四角形の色板 ブロック、数字カード、などの算数の勉強をするための色々な道具が入った道具箱を使っ ています。デジタル算数セットはこのような道具を電子化(デジタル化)したものです。 電子的なメディア部品の「おはじき」「時計」「色板」などを画面の上で並べたり、数えた り、比べたりしているうちに、数の概念、時間の概念、形の概念、計算方法などを体験的 に学ぶことができます。 (1) 起動 デジタル算数セットを起動すると、図1のようにクラスと名前を聞かれます。 クラス、先生の名前、生徒の名前は、事前に登録定義しておくことができます。 クラスと名前を入力した後、次のどちらかの勉強方法を選択します。 ・ 算数セットの道具を、自分で自由に組合わせて自主的に勉強する方法。 ・ 学年別に用意された練習問題に従って勉強する方法。 練習問題は、問題を解くための思考手順に沿って、使うべき道具と、その道具をどう使 うべきかのアドバイスをシナリオとして仕立てたものです。 起動 図 7.2-1 起動後の名前の入力と勉強方法の選択 - 75 - (2) 算数セットの道具 デジタル算数セットには、次のような学習の道具があります。 A) 数の概念と数遊び つみ木、10個用つみ木ケース、100個用つみ木ケース おはじき、さいころ 数字カード おぼん シャッフルボックス (つみ木でも、おはじきでも、数字カードでも、何でも中に入れることができる。 シャッフルしたら、中に入れたものから1個だけ取り出す。) カウンタ ② ④ ① ⑦ ③ ⑤ ⑥ 図 7.2-2 道具(①つみき,②おはじき,③数字カード,④さいころ,⑤おぼん、 ⑥カウンタ、⑦シャッフルボックス) B) 時間の道具 時計 ストップウォッチ - 76 - C) 計算とグラフ 九九表 数直線 グラフ(棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、面グラフ) D) 図形 色板 方眼 立体 図 7.2-3 道具(九九表) 図 7.2-4 道具(方眼) (3) 学年別の練習問題 教科書に沿った練習問題が用意されています。 問題を考える思考方法に従って、生徒の操作や思考を誘導します。このストーリ作り、シ ナリオ作りが、練習問題作りで苦労する部分です。いくつかの練習問題の画面例をご紹介 します。 図 7.2-5 時刻と時間の問題 図 7.2-6 比例数直線(かけ算) - 77 - 図 7.2-7 タングラム 図 7.2-6 グラフの練習問題 (4) これからの発展に向けて デジタル算数セットをどのように発展展開していくのか、教育出版様のお考えを伺い、 それをベースにどのような発展の可能性があるかを、筆者として考えてみました。 A) 算数以外の教科への展開 学習道具を部品化するという方法は、算数以外の教科でも有効だと考えられます。 B) インターネット環境での利用 教室で使うという使い方が、最初の段階だとすれば、今後は、ネットワークを経由した 遠隔授業、生徒どうしの協調学習、ネットワークを使った様々な学習形態、コラボレー ション形態を考える必要があるだろう。 C) オーサリング 授業のやり方や教え方を、先生自信が工夫し、自分の手で練習問題を作れる環境が必要 である。 学習の手順をストーリー化し、道具の使い方や物事の考え方をアドバイスするシナリオ を作れるオーサリング環境が必要である。 D) 海外展開 このような自主トレーニングにも使えるような教材は、海外でもニズがあるのではない だろうか。ビジネスとしても真剣に海外展開を考えてもよいにではないだろうか。 - 78 - 7.2.2 部品化と流通 教材コンテンツが、生まれて、配布ないし流通し、加工され、利用される様子を、つぎ の3種類に教材コンテンツを分類して考えてみます。 知識 :知識とそれを実世界で適用する方法の知識。 教科書で主要な知識が説明され、辞書や補助教材で網羅的に知識が示され る。 訓練素材:問題集やケーススタディ。 知識を実際に活用できるようにするトレーニング用コンテンツ。 データ :知識を適用する対象である実世界から集められたデータ、情報。 (1) 知識 学習の対象となる知識は、世の中で誰もが認める確立した知識です。研究段階にあるよ うなものは、学説として、ここでいう知識とは見なさないことにします。 知識は、教科書、本、辞書、eLearning 教材のような、商品の教材コンテンツとして、教材 メーカや出版社などから供給されるものが、大部分を占めます。 教科書のような教材コンテンツには、知識だけ単独ではなく、代表的な訓練素材も同梱さ れています。訓練素材との組み合わせ方や、訓練の順序の中に、教材コンテンツ作成者の 意図、個性が現れます。 知識を伝え教えることに主眼を置いた教材コンテンツは、供給者であるメーカが供給し た後で、知識を体系的に伝えるという用途で加工、二次利用されることは通常はありませ ん。知識を断片化して、次のような用途で、他のコンテンツに組み込まれる、と考えられ ます。 ・ 講義ノートとして断片が取り込まれる。 ・ 訓練素材を作るときに、ヘルプやアドバイス情報として、断片が取り込まれる。 知識を断片化し、それを習得するための、雛形となる代表的な訓練素材というものを用 意できたとすると、それがまさに、デジタル算数セットでいう部品化された道具になるで しょう。「雛形となる代表的な訓練素材」まで含めて「知識」と考えるべきでしょうか。 (2) 訓練素材 訓練素材は、メーカが供給するもの、教師が授業や試験のために作成したもの、生徒が レポート提出用に作ったもの、クイズごっこのようなノリで作られたもの、など作成者も 作られ方も千差万別です。 訓練素材には、問題を解くための思考手順や試行手順が想定されており、シナリオ(ス トーリー)を備えています。だれでもが、訓練素材を作って、交換し、遊べるような環境 が必要です。 「雛形となる代表的な訓練素材」をベースに作るのですが、訓練素材を組み合 - 79 - わせたり、少し制約を強めたりすることで、シナリオに味付けをしたくなります。道具と 環境が必要です。 (3) データ 経済白書のデータ、物理や科学の実験データ、交通量のデータ、桜の開花情報、近所の 空き地に生えている草花の分布、道端の花の写真、などなど、データは色々あります。国 や研究組織が集めたデータから、個人で集めたデータまで色々あります。 学習するときに、適切なデータを見付けて、学習中の知識をそのデータに適用してみる と、良いレポート、良い訓練素材を作れたりします。 Web から欲しいデータを見付けることは、大分やりやすくなってきました。しかし、異 なる場所で見付けたデータを組み合わせようと思うと、形式が異なっていて大変苦労して しまいます。データが XML になり、標準化が進めば改善されるでしょうが、データをメデ ィア部品化して、データの組み合わせや加工がビジュアルに直接操作で行えるようになっ て欲しいものです。 - 80 - 7.3 ミームメディアを用いたウェブコンテンツの編集 1986 年にゼロックス社 PARC のマーク・ステフィックは、次世代の知識メディアという 論文の中で、ミーム(meme: 文化遺伝子)のような振る舞いをする電子情報メディアの開 発の必要性を論じている。ミームというのはリチャード・ドーキンスが 1976 年に出版した 「利己的遺伝子」の中で、ミメーシス(mimesis; 芸術、模倣)と遺伝子(gene)の 2 つの 語を組み合わせて作った造語で、文化の進化にも遺伝子的進化と同様の仕組みが見られる のではないかとの考えから、文化の進化における継承される情報の架空の単位につけた名 称である。いろいろなアイデアの発達を考えると、アイデアは人から人へと複製されて伝 わり、その間に、複数のアイデアが組み替えられたり、既存のアイデアの一部が誤って置 き換えられたりすることにより、新しいアイデアが生まれ、多様なアイデアは人々の評価 によって淘汰される。ここには、遺伝子の場合の、自己複製、組み換え、突然変異、自然 淘汰のすべての機構が揃っている。ファッションや建築、芸術や思想の進化にも同様の仕 組みが見られる。 1980 年代中ごろは、エキスパートシステムの考えに代表されるように、人々の知識を外 在化し、推論可能な形に形式化して蓄積することにより、コンピュータがこれらの知識を 再利用できるようにするという知識ベースシステムの研究が盛んであった。ステフィック は、このようなシステムの研究と共に、人々が知識を再利用できる形式に外在化し、相互 に交換・流通できるような電子情報メディアの研究開発が必要であると説いた。彼はさら に、そのような電子情報メディアは、知識の複製や組み換えが容易で、知識の広範な流通 が可能で、人々による知識の淘汰が促進されるような、ちょうど、ミームのような振る舞 いをするメディアであろうと語っている。 北海道大学の田中も、1987 年より開始した IntelligentPad の研究開発とその研究室内で の使用を通じて、同様の考えに達し、ミームメディアのビジョンと、そのアーキテクチャ を確立した。彼は、次世代の電子情報メディアが満たすべき条件が 3 つあると考えている。 第1は多様なコンテンツを扱えることである。電子情報メディアはコンテンツとして数値 や文字列で表現される情報のみならず、コンピュータ上で定義されるあらゆるオブジェク トを扱うことができなくてはならない。これらのオブジェクトには、種々のアプリケーシ ョン・プログラムが定義するツールや、ネットワーク上のサーバをアクセスすることによ って提供されるサービスも含まれる。第2の条件は、複合文書(compound document)アー キテクチャの採用である。本を始めとする文書メディア使用の歴史は長く、電子情報メデ ィアにおいても、文書メディアの体裁を踏襲し、これにツールやサービスが埋め込まれる 複合文書アーキテクチャが主流となりつつある。第 3 の条件は、ミームメディアであるこ とである。ネットワークを介した転送と、WWWを介した出版の機能に加え、再編集と再 流通の機能を持つことである。文書メディアに限れば、ワードプロセッサなどの電子化さ れた文書メディアは編集・再編集機能を提供している。しかし、ツールやサービスが埋め - 81 - 込まれた複合文書の編集・再編集ツールは未だ普及発展していない。したがって、再編集 結果を再び流通させる再流通機能も一般ユーザ向けには提供されていない。 ミームメディアにのった知識の再編集・再流通は、これらの知識を共有するコミュニテ ィのメンバーによって行われ、その頻度が高いほどコミュニティが共有するミームの進化 が加速される。コミュニティが共有するミームの全体からなる集合をミームプールと呼ぶ。 ミームプールの進化を加速するには、 (1)ミームプールのブラウジングとアクセスを容易にし、 (2)ミームの再編集・再流通を容易にすることにより、 利用者数の拡大と各人による再編集・再流通操作の頻度の高上を計ることが必要である。 このような支援機能をもったミームの出版流通蓄積空間の基盤システム・アーキテクチャ をミームプール・アーキテクチャと呼ぶ。現在の WWW は、複合文書の出版とブラウジング の機能は提供しているが、複合文書に埋め込まれたコンポーネントのアクセスや、これら の再編集・再流通に関しては支援機能を提供していない。 田中等は、現在、以下の機能を持つミームプール・アーキテクチャを開発中である。 (1) 通常のブラウザでアクセス可能な複合文書から、これに埋め込まれたツー ルやウェブサービスを含む任意のコンポーネントをパッドとして自在に抽出できる。 (2) これらを貼り合わせることにより、機能を統合した新しい合成パッドが定 義できる。 (3) 合成パッドをパッド化された別のウェブ文書のライブコピーにドラッグ・ アンド・ドロップで埋め込むことができる。 (4) 再編集によって得られるこれらのパッドをウェブ出版用のパッドの上で自 由にレイアウトすると、その結果は、HTML とスクリプトを用いて、通常のウェブブラ ウザを介して利用可能なウェブ文書に、自動的に変換される。 (5) このようにして定義されるウェブ文書の HTTP サーバへの登録も容易に行え る。 ライブコピーというのは、時々刻々表示を変えるというような、何らかの機能を持ったコ ンポーネントを、その機能を保持したままコピーすることをいう。コンポーネントを抽出 してパッド化する際に、対応するサーバを一定時間間隔でアクセスしてコンテンツを更新 するようにポーリングの機能が付加される。 これらの機能は、ウェブ文書からの任意のコンポーネントのライブコピーをパッドとし て抽出する機構と、合成パッドをその内部のパッド間の機能連携機構も含めて HTML とスク リプトを用いて、通常のウェブブラウザで利用可能なウェブ文書に変換する機構によって 実現することができる。前者をライブ・ドキュメント化といい、後者をフラットニングと いう。 図 7.3.1 は Yahoo ファイナンスから、日経平均の値をライブなコンポーネントとしてパ ッド化して抽出し、これを用いて変動の状況をテーブルパッドとチャートパッドで表示し - 82 - たものである。抽出したコンポーネントはライブ・コンポーネントと呼び、ライブ・コン ポーネントをいくつか用いて合成されたパッドはライブ・ドキュメントと呼んでいる。ラ イブ・コンポーネント・パッドは、元のページの URL を用いて、指定された時間間隔毎に このページをアクセスし、自身の状態と表示を更新する機能がある。切り取るコンポーネ ントが文字列で、しかも数値を表すことから、これを数値に自動的に変換し、その値を保 持するスロットが自動的に定義される。数値以外の文字列の場合には、その文字列を値と して保持するスロットが定義される。ここで用いたテーブルパッドは、新しい入力毎に、 その時刻と入力値を対にしてリストに追加するする機能を持っている。アンカーとなって いるような文字列コンポーネントを抽出する場合には、その文字列の値を保持するスロッ トの他に、このアンカーが持つジャンプ先ページの相対アドレスを保持するスロットが定 義され値が設定される。さらにジャンプ先アドレス用のスロットが定義され、このパッド がクリックされる度にこのスロットにこのジャンプ先 URL が設定され、子パッドに対して は update メッセージが、親パッドにはこのスロット値をパラメータとして持つ set メッセ ージが送られる。 図 7.3.1 Yahoo ファイナンスからの日経平均の抽出と、チャートパッド による時間変化の表示 図 7.3.2 は Yahoo Maps ウェブページから、地図表示と、ズーム制御パネル、移動制御パ ネルをライブ・コンポーネントとして切り出し、これらを貼り合わせて合成パッドを定義 したものである。制御パネルでは、個々のボタンのクリックに対応した検索要求が定義さ れており、切り出しの際には、サーバの URL の後にこの検索要求を付加した要求式を保持 するスロットが自動的に生成される。このスロットが、制御パネル・パッドのプライマリ・ スロットとなる。プライマリ・スロットとは、親パッドへの値の入出力に使われる値を保 持するスロットである。制御パネルのボタンがクリックされると対応する検索要求が付加 された URL がこのスロットに設定されると共に、set メッセージを用いて親パッドへこの値 が送られる。制御パネルは親パッドの URL スロットに結合され、送られてきた検索要求付 - 83 - きの URL は、地図表示を切り出したライブ・コンポーネント・パッドによってサーバに送 られ、新しく送り返されてきた HTML 文書の地図の部分が、このパッドの上に表示される。 View Port Pad Click View Port Pad 図 7.3.2 Yahoo マップからの地図表示と制御パネルの切り出しと、それ らを用いた再編集 合成パッドをウェブ文書の DOM ツリーのノードとして挿入することを埋め込みという。 一方、合成パッドをフラットニング・パッドと名づけた特殊なパッドの上にお互いが重な らないように並べることにより、全体を HTML 文書に変換して、通常のブラウザを介して表 示し利用可能にすることをフラットニングという。合成パッドは ActiveX オブジェクトに 変換することにより、HTML 文書中に埋め込むことが可能である。埋め込みでは、埋め込み 用タグを用いてターゲットのウェブ文書の HTML 定義を書き換える。フラットニングでは、 並べられた合成パッドを ActiveX オブジェクトに変換して、全体を HTML 文書で定義するこ とにより、標準のウェブブラウザでブラウジングすることを可能にする。 ウェブ文書からライブ・コンポーネントをパッドとして抽出しただけでは、抽出したツ ールやサービスの入出力機能をパッド間の連携に用いることができない。これを可能にす るには、ウェブ文書中の入力フォームや分節可能なオブジェクトをスロットとしてライ ブ・コンポーネントの外に公開する必要がある。田中らはこの技術も既に開発しており、 バイオ情報の分野で公開されている膨大なウェブサービスを自在に連携して利用するのに 応用している。例えば、DDBJ サーバの Blast サービスを利用して DNA シーケンスのホモロ ジー検索をおこない、類似のシーケンスを含む遺伝子シーケンスを求め、その第一候補に 関して GenBank サーバの GenBank Report サービスをアクセスして関連論文の論文題目を得 て、これを用いて PubMed サーバの文献データベースをアクセスすることにより論文内容を 求めるという作業が、3つのウェブサービスを 1 つのツールに合成して利用可能である。 - 84 - 8 .モ ー バ イ ル 配 信 8.1 モーバイルネットワークの拡 大 モ ー バ イ ル ネ ッ ト ワ ー ク 環 境 が 整 い つ つ あ る 。 DoCoMo の 第 3 世 代 携 帯 電 話 「 FOMA」 で は 、 受 信 時 最 大 384kbps の パ ケ ッ ト 通 信 と 、 64K デ ー タ 通 信 の 両 方 が使えるので、モバイル環境でもインターネット接続がより快適に行え、静止画 や 音 、映 像 を 含 ん だ コ ン テ ン ツ も ス ト レ ス な く 利 用 で き る よ う に な っ た 。PHS の DDI ポ ケ ッ ト も 、 64kbps の デ ー タ 通 信 サ ー ビ ス の 他 、 32kbps パ ケ ッ ト 通 信 に よ る 定 額 制 の つ な ぎ 放 題 デ ー タ 通 信 サ ー ビ ス 「 AirH"」 を 行 っ て お り 、 2002 年 3 月 か ら は 3 2 k b p s パ ケ ッ ト 通 信 を 4 つ に 束 ね て 、最 大 1 2 8 k b p s の サ ー ビ ス を 始 め た 。 KDDI グ ル ー プ の a u も 最 大 通 信 速 度 64kbps の パ ケ ッ ト 通 信 サ ー ビ ス を 行 っ て い る が 、さ ら に 受 信 時 最 大 2 . 4 M b p s の 高 速 デ ー タ 通 信 サ ー ビ ス「 H D R 」( H i g h D a t a Rate)の 実 験 も 進 め て い る 。 一 方 、P D A や ノ ー ト パ ソ コ ン 向 け の 無 線 L A N も 、2 0 0 2 年 春 に は 都 内 3 0 0 ヵ 所 以 上 で 月 額 1000 円 か ら 2000 円 で 高 速 イ ン タ ー ネ ッ ト が 使 い 放 題 の 商 用 サ ー ビ ス が 始 ま る 。3 G 携 帯 電 話 の 基 地 局 が 1 台 数 億 円 に 対 し 、8 0 2 . 11 b の 無 線 L A N だ と 1 台 が 1 0 万 円 前 後 と 初 期 投 資 が 低 く 、し か も デ ー タ 通 信 速 度 は 11 M b p s と 速 い の で 、サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ の ビ ジ ネ ス モ デ ル さ え 確 立 す れ ば 普 及 も 早 い と 思 わ れ る 。 8.2 配 信 されるコンテンツ 携帯電話で個人が発するメールは凄まじい量であり、モーバイルネットワーク の主な用途はメールである。さらに、個人向けのミニ情報としてニュース、ビジ ネ ス 情 報 、天 気 予 報 、着 信 メ ロ デ ィ 、待 受 け 画 像 、ス ポ ー ツ 、趣 味 、便 利 な 情 報 、 辞 書 、 占 い 、 ゲ ー ム 、 芸 能 情 報 、 音 楽 、 映 画 /チ ケ ッ ト 、 グ ル メ 情 報 、 シ ョ ッ ピ ン グ、健康情報、交通情報、地図など、実に多種の情報が配信されており、少額で あっても課金されるのでビジネスとして成り立ち、情報量が多くても無料サービ スが多いインターネットと、ビジネスモデルがよく対比されている。 モ ー バ イ ル ネ ッ ト ワ ー ク の ビ ジ ネ ス 用 途 も 、 中 心 は メ ー ル で あ り 、 メ ー ル への 書類の添付である。メール程度であれば、携帯電話のデータ通信でも間に合うの で 、 駅 や コ ー ヒー シ ョ ッ プ 等 の 公 衆 無 線 LAN を 使 う 用 途 は 、 ビ ジ ネ ス 用 で は 動 画 を 含 ん だ 販 売 資 料 の ダ ウ ン ロ ー ド く ら い で あ ろ う 。し た が っ て 、公 衆 無 線 L A N では個人向けのニュース画像、漫画、ゲーム、音楽のような重たいコンテンツの 配信が期待されている。 8.3 モーバイル 配 信 ビジネスの 障 害 モーバイルネットワークでコンテンツの配信を行う場合の障害は、インフラの 普及、利用料金、サービスを行う側のビジネスモデル、コンテンツなど多岐にわ - 85 - た り 、 複 雑 に 絡 み合 う の で 解 決 が 一 筋 縄 で は 行 か な い 。 幾 つ か の 例 を 上 げ て みた い。 iモードに代表される携帯向けコンテンツサービスを、未だに成功例の少ない イ ン タ ー ネ ッ ト で の コ ン テ ン ツ サ ー ビ ス と 対 比 し て みる と 、 最 大 の 成 功 要 因 は 少 額課金が可能なことであろう。コンテンツ代金は少額なのでクレジットカード決 済は採算が合わないだけでなく、面倒である。幸い、携帯電話には電話番号が振 ら れ 、 通 信 料 の 支 払 者 は 特 定 さ れ て お り 、 少 額 も 決 済 で き る 。 こ れ ほど 優 れ た イ ンフラは無い。多様なサービスが参入して競争した結果、当初の予想を上回る多 くの魅力的なサービスが提供された。電車を待つ僅かな時間を使って手に入る駅 周 辺 の 遊 びの 情 報 な ど 、 携 帯 な ら で は の 新 鮮 な 情 報 や 着 信 メ ロ デ ィ な ど の コ ン テ ンツが成功している。この他、あまり表には出て来ないもう1つの成功要因があ る。携帯電話の販売価格体系である。すなわち、通話料からのキックバックとい う 販 売 支 援 金 に よ り 見 か け の 携 帯 電 話 の 販 売 価 格 が 非 常 に 安 く で き た 。そ の 結 果 、 新 機 種 を 市 場 に 投 入 す る と 、 ユ ー ザ は 次 々 と 新 機 種 へ簡 単 に 買 い 替 え て く れ た 。 買い換え期間が平均11ヶ月と短かくなったのである。その結果、新サービス対 応 端 末 への 世 代 交 代 が 速 く 、 サ ー ビ ス の 採 算 ラ イ ン 突 破 も 早 か っ た 。 携 帯 の 普 及 台数の多い欧州で、携帯向けコンテンツサービスの普及が遅かったのは国民性の 違いだけではなかったのである。第3世代携帯電話の普及が遅れているのも、ユ ーザに買い換えを促す魅力ある新サービスが出てくる為のビジネス条件が揃わな いからである。 同 様 に 普 及 が 期 待 さ れ て い る 公 衆 無 線 LAN も 簡 単 で は な い 。 使 う 都 度 、 ユ ー ザに時間課金するのでは手軽さを失ってしまう。そこでサービスプロバイダが、 無 線 LAN 経 由 で ユ ー ザ に イ ン タ ー ネ ッ ト 接 続 を 提 供 す る 会 社 、 例 え ば ハ ン バ ー ガショップからだけ使用料を取る形になれば、店の客であるユーザにとっては手 軽 で あ る 。 し か し ハン バ ー ガ シ ョ ッ プ に と っ て も 当 初 は 客 の 囲 い 込 みの 道 具 で あ っても、普及すると単なる出費になってしまう。だからと言って、普及もしてい ない段階でユーザから定額料金を貰うのも難しい。 ハ ン バ ー ガ シ ョ ッ プ 等 が 無 線 LAN を 設 置 し 、 ユ ー ザ に イ ン タ ー ネ ッ ト 接 続 を 提供したとしても、店内にローカルサーバを置き、独自のマンガや音楽の視聴サ ービス、便利情報の提供を行うことになる。ここで課題となるのは小額課金であ る。個人向けコンテンツは低価格のコンテンツが多く、クレジット決済は馴染ま ない。そこでiモードのようにコンテンツビジネスを普及させるためには、使い や す い コ ン テ ン ツ 課 金 の 仕 組 みを 最 初 か ら 用 意 し て お か な い と 無 料 サ ー ビ ス ば か りになってしまい、インフラの費用も賄いきれない。 8.4 モーバイル配 信 での決 済 方 式 - 86 - 8.4.1 携 帯 電 話 キ ャリヤによる 代 金 回 収 代 行 携帯電話キャリヤは、あらかじめ登録されたコンテンツプロバイダの商品、例 えば楽曲などの販売代金を、通話料金と一緒にユーザに請求することで、販売代 金を回収するサービスを提供している。一般にコンテンツの価格は何十円と、低 価 格 な た め 、 携 帯 電 話 キ ャ リ ヤ に よ る 少 額 決 済 の 仕 組 みは 、 コ ン テ ン ツ サ ー ビ ス の普及を支える大きな原動力になった。 8.4.2 SET によるクレジット・デビット 決 済 サービス S E T ( S e c u r e E l e c t r o n i c Tr a n s a c t i o n ) 決 済 は 、 日 本 で は 日 本 イ ン タ ー ネ ッ ト 決 済推進協議会が推進しており、銀行口座の暗証番号やクレジットカード番号を暗 号化し、決済機関だけがサーバで管理するセキュリティの高い方式。金融機関が S E T 決 済 サ ー ビ ス に 必 要 な サ ー ビ ス を 代 行 し 、ユ ー ザ は 複 雑 な 設 定 を す る こ と な く簡単にインターネット決済ができる。 8.4.3 SSL デビット決 済 サービス S S L ( S e c u r e S o c k e t s L a y e r ) は 、ネ ッ ト 上 で 安 全 に 情 報 を 送 受 信 す る 業 界 標 準 プ ロトコル。ユーザ、サービス提供事業者と金融機関の間に決済センタを設置し、 SSL を 利 用 し て 、 決 済 情 報 は 金 融 機 関 の み に 、 注 文 情 報 は サ ー ビ ス 提 供 事 業 者 に の み 流 す と い う 安 全 な 三 者 間 取 引 を 実 現 。ユ ー ザ は I D・ パ ス ワ ー ド に よ る 簡 単 な 操作で利用できる。 8.4.4 IC カード型 決 済 サ ービス PKI(PublicKey Infrastructure) 公 開 鍵 暗 号 方 式 を 利 用 し て 、 IC カ ー ド に 暗 証 番 号 、 個 人 証 明 書 を 保 存 し て 、 認 証 に 使 う こ と で 、 非 PC か ら で も 簡 単 に ク レ ジ ットカード支払を可能にした。 8.4.5 IC カード型 電 子 マ ネー 決 済 PKI(PublicKey Infrastructure) 公 開 鍵 暗 号 方 式 を 利 用 し 、 物 理 的 に も 論 理 的 に も 改 竄 や 攻 撃 に 強 い IC カ ー ド の 中 に 電 子 マ ネ ー を 入 れ 、 サ ー ビ ス 提 供 事 業 者 間だけでなく、個人間でもお金の移動を可能にした。少額課金に適している。 8.5 モーバイル配 信 ビジネスと 著 作 権 問 題 モーバイル配信も「ブロードバンド=動画」と考える向きが多いが、映画のV ODはバックボーンか配信サーバがネックになりやすく、当面は短時間のビデオ ク リ ッ プ を 送 る ぐら い が 主 に な る と 思 わ れ る 。 そ こ で ビ ジ ネ ス に な る キ ラ ー ア プ リは依然として音楽だ言われている。しかしながら、難しい課題がある。その1 つが著作権問題である。 ナップスターのような個人間ファイル交換ソフトを使えば、個人間で楽曲の貸 し借りが自由にできる、というより自由にコピーが配布できる。しかし日本では 公衆ネットワークに繋がっているサーバに音楽ファイルをアップロードするだけ で 違 法 で あ る 。 2002 年 1 月 29 日 、 日 本 音 楽 著 作 権 協 会 (JASRAC)と 音 楽 ソ フ ト 1 9 社 は 、フ ァ イ ル 無 料 交 換 サ ー ビ ス の 日 本 M M O に 対 し 、市 販 の 音 楽 C D か ら 複 - 87 - 製した音楽ファイルをサービスの対象にしないように求める仮処分を、東京地裁 に 申 請 し た 。し か し 、情 報 技 術 の 進 展 で 、こ の 手 の 問 題 が 次 々 と 起 こ る で あ ろ う 。 例えば、CDを友達に貸すのは違法だろうか。自宅のステレオで友人に音楽を 聴かせるのは違法だろうか。友達に自分の買ったCDを売るのは違法だろうか。 もし、これらが違法でないとするならば、いろいろなことが起こる。例えば音楽 配信で曲を買ったとする。この曲を友達に貸す(コピーではなく移動)ことも違 法ではない筈だ。そうなると学校のクラスの仲間で曲を買い、友達同士で移動す ることも違法ではなくなる。インターネット環境がブロードバンドであれば、聴 きたい時に瞬時に移動できる。また、ファイルは移動させずに、友人のパソコン から希望の曲をストリーミングで聴くこともできる。友人のステレオで音楽を聴 かせてもらったのと同じである。どちらの場合も、流行するとCDの売上はダウ ン す る で あ ろ う 。離 れ た 友 達 に C D を 郵 便 で 送 る な ら 、貸 す の も 譲 る の も 良 い が 、 ネット上では個人的な貸し借りもストリーミングも、譲るのも違法だという法律 解 釈 が 必 要 に な る 。し か し 実 際 に 取 締 る と な る と 、ネ ッ ト を 流 れ る 情 報 の 中 か ら 、 隠 さ れ た デ ー タ を 探 す こ と に な り 、 イ タ チ ごっ こ に な り か ねな い 。 し た が っ て 、 違法だという法律解釈で取締るのも一方法だが、適法とした上で、個人間のコン テンツの移動を管理して広く薄く著作権料を回収する手立ても選択の一つである。 お仕着せのラジオの曲を聴くか、CDを買って聴く以外は全て違法で、せっか くの技術の進歩も、それを消費者が利用できないというのでは誰も納得しないだ ろ う 。高 速 の 通 信 網 が あ れ ば 、世 の 中 の 流 通 の 仕 組 み ま で 変 わ る の は 必 然 で あ る 。 著作権を保護しながら、安全で効率的に流通させる手段、ユーザを正確に特定で きる手段、価値ある情報はコピーできない手段、少量課金できる手段など、技術 を総動員して、消費者も、音楽家も小説家も、そして消費者にコンテンツを届け る 周 辺 事 業 者 も 喜 ぶ仕 組 みを 作 ら ねば な ら な い 。 も し 、 公 衆 無 線 L A N を 備 え た 駅などのホットスポットで、利用者不詳のPDA間で音楽やゲームのコピーが 次 々 と な さ れ た ら 手 が 付 け ら れ な っ て し ま う 。ま た 、個 人 の P C( ホ ー ム サ ー バ ) の磁気ディスクの容量が大きくなると、日本中の本と音楽を手元に置くことさえ できる。著作権を保護しながら、安全で効率的に流通させる手段などは、コンテ ンツ配信ビジネスには必須で、これは電子社会の基本インフラでもある。 こ の た め の 動 き も 既 に 始 ま っ て い る 。 Tr u s t e d A p p l i a n c e で あ る 。 セ キ ュ リ テ ィ チ ッ プ を 組 み込 み、 ユ ー ザ の 素 性 も は っ き り さ せ て 、 電 子 商 取 引 も 改 ざん さ れ ることなくセキュアにできる機器が待たれる。 - 88 - WIM MMC Trusted Net PDA 紹介 介プ プロ ロバ バイ イダ ダ 紹 ユビキタスネットワーク環境 Trusted Home Server 紹介情報 コンテンツ コンテンツ コン ンテ テン ンツ ツプ プロ ロバ バイ イダ ダ コ ライセンス ライセンス プロバイダ プロバイダ ライセンス鍵 Trusted PC 暗号化コンテンツ コンテンツ コンテンツ 暗号化コンテンツ Trusted Car Info. System 図 8.1 8.6 Tr u s t e d A p p l i a n c e で 拡 が る コ ン テ ン ツ 配 信 メタデータの 流 通 公衆無線LANを備えた駅などのホットスポットで、忙しいユーザが、本当に 音 楽 や 電 子 本 の 購 入 を 検 索 か ら ス タ ー ト す る の だ ろ う か 。 消 費 者 は 自 分 の 好 みに 合った本や音楽が、批評家の推薦文と、初めの1、2 頁とか試聴ファイル付きで メールで送られてくると衝動的に買ってしまわないだろうか。音楽であれば限り なく放送に近い配信でもよい。例えばPDAの中のエージェントがメタデータの 洪 水 の 中 か ら 、 好 みに 合 っ た 曲 を 、 し か し 偏 ら ず に 適 当 に 見 繕 っ て ダ ウ ン ロ ー ド するのもよいだろう。また、カリスマ書評家や音楽評論家は、その見識だけで、 ネット上から仲介手数料を自動的に得るようになるだろう。 8.7 パラダイムの 変 換 コンテンツ配信でコンテンツの流通が拡大し、しかも関係者が正当な報酬を得 ることができれば、コンテンツの拡大再生産が始まる。その為に不正コピー・不 正 利 用 を 防 ぐた め の 技 術 だ け が 注 目 さ れ て い る が 、 消 費 者 側 の 使 い 勝 手 を 考 え る と、著作権権利者側の柔軟な発想も求められている。 例えば音楽の場合だと、1曲購入だと300円でも、1回しか聴かないなら無 - 89 - 料、3回以下なら30円という価格設定や、何曲聴いても1000円の月極め定 額サービスを望む場合もある。ブロードバンドの世界では、本質的にレンタルと 購入の区別がつかなくなるだろう。放送も、実は1つのサーバから、視聴者の好 みに 合 わ せ て 何 万 通 り の 放 送 を や っ て の け る こ と も 可 能 だ か ら 、 オ ン デ マ ン ド と 放送の区別もつかなくなるだろう。その後の進歩を考えると無理やり区別をつけ て管理するのも難しい。消費者に魅力的なサービスを提供することで、不正コピ ーも少なくなり、多くの消費者に音楽を聴いてもらえるようにもなる。コンテン ツを送る側にとってもビジネスは拡がる。著作権を保護しながら、安全で効率的 に流通させ、ユーザを正確に特定でき、少量課金ができるインフラを早急に普及 させないと、既に失いつつあるポータブル音楽ビジネスを復活できないかもしれ ない。 参考文献 ( 1 ) Tr u s t e d C o m p u t i n g P l a t f o r m A l l i a n c e URL h t t p : / / w w w. t r u s t e d p c . o r g / h o m e / h o m e . h t m (2)マ ル チ メ デ ィ ア カ ー ド ア ソ シ エ ー シ ョ ン U R L http://www.mmca.org - 90 - コンテンツ配信標準化調査研究 成 果 報 告 書 平成14年3月 発行 財団法人 日 本 規 〒 107-8440 出版 格 協 会 東京都港区赤坂4−1−24 電話(03)5770-2251 新高速印刷株式会社 〒 107-8440 東京都港区新橋5−8−4 電話(03)3437-6365 ‑無断転載を禁ず‑
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