フランスでのキャリア形成 - 総合マネジメント事務所Espace MUSE

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フランスでのキャリア形成:留学からビジネスまで
フランスでの中・長期留学やワーキング・ホリデーを考えていらっしゃる方の目的をカテゴリー化す
ると、おおよそ以下の4つのタイプとなる。
① 自分の興味・関心のあるフランスの伝統技術を学びに行きたい、その後自分のライフワークに
したい
例)モード、絵画、音楽、皮革、刺繍、料理、食材(チーズやワイン)、ジュエリー(宝石細工)、
コスメ、フラワーアレンジメントなど
② フランスで数年間修行をし、自分のキャリアアップ・ステータスアップにつなげたい、自分や自
分のビジネスの付加価値としたい
例)「フランスの三ツ星獲得レストランで○年間修行したコック」、「フランスのオートクチュール
で活躍したデザイナー」、「フランスのギャラリーで個展を開き成功した画家」
③ フランスの高等教育機関や企業でのインターンシップを経験し、グローバル人材としてのキャリ
アとしたい
例)フランス語、修士号・博士号取得、フランスのネットワーク獲得、フランスのビジネスのノウハ
ウなど
④ フランスで生活したい、フランスで起業したい、フランスでビジネスをしたい
フランスへの留学や、ワーキング・ホリデーをお考えの多くの日本人は、上の4点のいずれか、ある
いは複数を目的に、希望を胸に渡仏している。しかしながら、留学にせよワーホリにせよ、せっかく
時間と資金を割いたにも関わらず、ほとんど何もできずにただ数年フランスで過ごしてしまった、と
いう日本人は少なくない。
「まずは行動!」も悪くはないが、自身のキャリアアップにつながる有益なフランス滞在にするため
に、最低限押さえておきたい点をご紹介しよう。
●よくある傾向に陥っていないかチェックしよう
「① 自分の興味・関心のあるフランスの伝統技術を学びに行きたい、その後自分のライフワークに
したい」場合
フランスは文化の中心地であり、魅力的な伝統技術やノウハウ、遺産が多く存在する。ボルドーワ
インやカマンベールチーズ、ラデュレやピエール・エルメのマカロン 、エルメスやルイ・ヴィトン、シ
ャネルなどのオートクチュール、ピカソやゴッホ、モネやルノワールなどの天才的画家をはじめとす
る優れた芸術・・・フランスを代表するこうした数々のブランドや遺産の多くは日本で非常に愛され、
グローバル化の現代では身近なものとして愛用されてもいる。また、“パリジェンヌの生活”等といっ
たテーマをめぐる書籍も多く出版されており、フランス及びフランス文化は日本人にとって親しみ
やすいものとなっている。こうした中、フランスの伝統芸術やノウハウの一つをとり、自分の好きなこ
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とをして人生を設計したい、自分の趣味をライフワークにしたい、と希望する人がその実現を目指
してフランス留学やワーホリをする、というのが①のカテゴリーの人に見られる。
弊社のキャリア・マネジメントに相談される方に①のカテゴリーに属する人は多い。このタイプの方
が陥りがちなのは、“いつかこうなりたい自分”ばかりが頭の中にあり、留学先でできるようになりた
いことが明確になっていないという点である。つまり、“フランス”や“職業への憧れ”ばかりであるの
だ。
今や情報社会であり、インターネットで検索すれば多くの分野のノウハウやテクニックを知ることが
できる。また、日本にも多くの専門学校が存在し、専門的な書籍が出版されている。日本において
も学ぶ気になれば学べる中で、「なぜ、わざわざフランスでなければいけないのか?」という質問に
答えられない人が多い。
例えば、デザインを学ぶためにフランスに留学したいとする。デザインを学ぶために、あなたは日
本でできることはすべてしただろうか?それでもフランスで学ばなければいけない理由は何であろ
うか?あなたがシャネルの専属デザイナーのカール・ラーゲルフェルド(2014年2月現在)に憧れて
いるとしよう。あなたは、「カール・ラーゲルフェルドのように有名になりたいから」ではなく、「カー
ル・ラーゲルフェルドの下で働き、彼が得意な○○のノウハウや感性を学びたい」と答えられるだろう
か?憧れだけでフランス留学を希望する人には、後者のような意見を述べられない人が多い。
また、日本人の多くが、自分の長所として「まじめに頑張る」という点をいう。残念ながら、フランスで
キャリアを形成したい場合に、これは条件に入らない。「好きで好きでたまらない分野で、自分の個
性と才能を伸ばす」、この一点にかけて努力は惜しまずしなければならないが、その努力は世間
的なモラルに従った努力ではない。モーツァルト、ボードレール、ヴェルレーヌ、カール・リヒター、
ゴッホ達を思い出してみよう。彼らは社会通念からいったら「まじめ」とは決して言えず、モラル的な
評価とはかけ離れた私生活を送っている。しかしながら彼らの作品は一流である。この理由は、彼
らの天才がそうさせただけではなく、尋常ではない“主観的努力”の上で成立した結晶であるから
だと言えるだろう。強烈な個性や独自の表現力はここから出てくる。
社会の通念や他人の眼、名誉や社会的評価よりもまず、自分はこれがやりたい、結果はどうなるか
わからないがフランスでこれをできるようになりたい、好きでたまらないこの道で努力したい、そう思
える人のフランス留学や滞仏は、キャリアにつながるものとなり、またライフワークの第一歩となるだ
ろう。
「② フランスで数年間修行をし、自分のキャリアアップ・ステータスアップにつなげたい、自分や自
分のビジネスの付加価値としたい」場合
フランスで数年間の修行をし、日本および世界各地で自分のビジネスを地道に築いている人や、
夢を実現している日本人はたくさんいる。フランスで修行をするということの利点は、主に2つある。
1つには、目指す分野のトップレベルの技術やノウハウ、感性を習得できること。実際的テクニック
を学べること、それからそれ以上にフランスの文化文明も含めた感性を習得できることにある。フラ
ンスに集まる多文化な人々との交流、優れた芸術作品、フランスの光が生み出す景色、自由の精
神、そうしたものに触れることは、料理人であろうと、画家であろうと、決定的な影響を与えるはずの
ものであろう。もう1つには、フランスで修行をしたという事実(三ツ星レストランで○○氏に師事
等々)、またフランスで活動しているという事実(ニースで店を出している、パリで個展を開いた
等々)が、日本での自分のビジネスを有利にすることも作戦の立て方次第では可能である点だ。
ブランディングとして、フランスでの経験は有効であるということがいえる。
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しかしながら、こうして数年間フランスで修行をした後に、指揮者の小澤征爾氏のような国際的な
キャリアを築ける日本人は少ない。
例えば、パリコレにあこがれ、ヘアメイクを学びにフランスに行く人はたくさんいる。しかし、日本人
がトップに就くには非常に難しく、アシスタントを務められる人でさえ少ない。また、音楽家も然り。
日本人は練習熱心であるため、技術的にはうまくなりコンクールで一位を獲得する人もいる。しか
し、そのあとキャリアとして世界一流の中で続けていける人は少ない。それから、料理人。まじめで
協和的な性格の人が多い日本人は、三ツ星獲得レストランで雇われることは比較的容易にできる。
しかしながら、店を任せてもらえる人は少ない。キッチンの工程の一部を数年間担当するだけなの
で、総合的なものを学び取るまでにはなかなかいたらない。こうした修行を終えて、フランス国内で
店を出したとしても、その後の伸び率は人によって様々であり、名高いレストランで修行をしたこと
が結実していない人もいる。厳しいようであるが、フランスでの修行が日本国内やそのネットワーク
内のみでしか通用しないものになっている人も、少なくないのが現状である。
ブランディングのためではなく、自分が本当に世界で通用するような実力、またそれに伴うキャリア
を形成したいという人は、フランス留学を考える際に、学びたい『人』や『師匠』を探すことを提案す
る。あなたの目標は、「三ツ星レストランで修行したい」、「フランスのデザイナーを経験したい」、
「大好きなブランドで働いてみたい」というものになっていないだろうか?①で述べたことにも通じる
が、アノニマスな名声に学ぼうとするのではなく、「留学先で何ができるようになりたいか」をぜひ考
えてほしい。どの分野のトップも、技術から仕事に対する姿勢まで、強烈で一流の個性を持ってい
る。自分にあったトップから学びとり、そうして自身の軸や技術を形成することを目指す、これこそ
が現地で修行することの有用さである。
また、この目標点がはっきりすれば、フランス語の壁を乗り越えていけるはずである。料理人にせよ、
宝石細工職人にせよ、手作業で見ていればある程度はわかるとはいえ、フランス語を抜きにして
感性を学びとることは難しい。フランスでは、どの職業でもフランス語が大切であることが現実なの
だ、と留学前に頭に入れておいていただきたい。
渡仏し、数年間滞在しても、大抵の人はフランス社会の全体像の把握やネットワークの構築は難し
い。高い目標があっても、具体的にどこから手をつけていけばいいのかわからない、どうやったら
その目標に近づけるのかわからない、というのは当然である。そうした時、周りで成功している先輩
を訪ねたり、専門家に聞くことで、フランスでの滞在が本当の意味でのキャリア形成となるよう動くこ
とが肝心である。
③「フランスの高等教育機関や企業でのインターンシップを経験し、グローバル人材としてのキャ
リアとしたい」場合
グローバル人材になること、そのキャリアを考慮して留学を考えるとき、やはり真っ先に日本人が頭
に思い浮かべるのはアメリカであるだろう。「英語は世界の公用語として幅を利かせており、ビジネ
スといえばアメリカだ」と考えている人は多いと思われる。文部科学省が出した2010年の統計によ
ると、日本人留学生(高等教育機関に在籍する「受入国に永住・定住していない」または「受入国の国籍を有しな
い」学生)の主な留学先の第一位がアメリカであるのも、こうした理由にあるかもしれない。
一方、フランスは同上の調査の結果、8位であった。フランスのイメージはというと、伝統技術による
産業に強みをもつイメージが強いのではないだろうか。特に日本におけるフランスのイメージは、
映画『アメリ』を代表するような“表象のフランス”である。これは、日本国内で展開されるオートクチ
ュールやフレンチ・レストランなどをはじめとするコミュニケーション戦略がその一因としてあるだろ
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う。
こうした偏ったフランスのイメージのみで、留学先を決めていないだろうか?実際には、フランスは
政治、ビジネス、教育分野においても強い。
○フランスで政治を学ぶ意義
フランスの政治的神話はフランス革命からはじまり、現代でもたまにニュースで流れるデモやストラ
イキの様子を見ているとその熱心さを感じている方も多いと思う。いかに個々人が「自由」であるこ
とができるかの戦いは、これもまたフランスの伝統の一つである。国民一人ひとりが政治を日常と
切り離しては考えておらず、政府や権力を監視し、おかしいと思えば高校生でもデモをはじめアク
ションを起こす。日本でも巻き起こった学生運動の展開の仕方を見れば、フランスの政治の在り方
というものを垣間見れるだろう。
1966年にストラスブールからはじまった1968年の5月革命は、世界中に広まり、日本でも学生運動
として繰り広げられた。日本の学生運動は、社会や大学の変革という当初の目的を達することがで
きず、学生内のグループの内ゲバによるリンチや殺し合いによって無残にも終わってしまった。そ
して、日本の社会一般の人々の無関心のうちに終焉し、学生運動に加わった闘士たちはその後
社会で差別されてきた。一方フランスでは、パリではじまった学生運動は、あちこちでストライキを
引き起こした。日本と同様に学生と機動隊の衝突がエスカレートする中で、異なるのは労働者も立
ち上がったことである。一般の人々が学生運動に加わり、この5月革命はフランス社会の改革につ
ながっていった。当時の学生運動の闘士たちの中には、現在政治家として活躍している人が何人
もおり、メディアをはじめとするフランス社会の中枢には学生運動の闘士が集まっている。日本の
学生運動とフランスのそれがこんなにも異なる結末となっているのは、果たして学生のみに原因が
あるだろうか?
国民一人ひとりが政治に向かっているフランスでは、同様に多くの政治家の姿勢も日本とは異な
る。日本の政治家は役人に法律を作らせることが一般的であるのに対し、フランスでは政治家本
人が考え立法を目指す。このため、フランスの議員は、社会に対する問題意識のもとで、自分が
目指す社会の在り方を実現するために非常に勉強している。フランスの政治家や高級官僚と話し
ていると、古典から時事問題、芸術まで、彼らの幅広い教養に感心させられる。文学や芸術を背
景にした冗談なども多く、また新しい映画等の話題もよくのぼる。こうした政治家が展開する政治
は、長期的視点に立ったものが多く、また政治とヒューマニティーは決して切り離されてないと感じ
る。
これから政治家、あるいは政治に関わる仕事を目指している日本人には、特にフランス留学をお
勧めしたい。現在の日本の政治の問題は、まさにグローバルな視点がかけていることである。自由
とは何か、民主主義とは何か、社会とは、政治とは何か、をフランスという異文化の中で深く学び、
体感することで、偏狭なナショナル・アイデンティティーを脱出し、日本人としての独自の視点を築
き上げていただきたい。
○フランスでビジネスを学ぶ意義
フランスは、幅広い分野のビジネスで強みを持っている。主要産業には化学、機械、食品、繊維、
航空、原子力等があり、宇宙・航空産業、原子力産業などの先端産業が発達している。農業大国
でもあり、観光業も盛んだ。オートクチュールから外食産業まで、世界中でフランスのビジネスは展
開されている。
フランスのビジネスに学ぶべき点は多々あるが、以下の2点をフランス留学あるいはインターンシッ
プで身に着けることは日本において、あるいは他国においてビジネスをする際にも実力となって発
揮されるだろう。
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その1つは、フランスのマネジメント法である。日本と同様に、フランスでも組織内のヒエラルキーは
はっきりしている。そして、経営陣のトップダウン式で事業計画の方向性が打ち出されるのがフラン
スでは一般的である。この時、フランスの組織は、各々がしっかりとした意見を持ち、議論好きな個
人主義的人材で形成されており、宗教から思考法、バックグランド等まさしく多文化の共同体が形
成されていることを忘れてはならない。その中で、いかに社員を納得させ、決まった目標に向けて
モチベーションをあげるかは、リーダーやトップに立つ人材に求められる能力だ。フランスのリーダ
ーには、この点で長けている人が多い。その方法論も各自の個性があるが、論理的思考とコミュニ
ケーション能力はみなそれぞれ優れている。世界のグローバル化に従い、同質社会が当たり前で
あった日本でも、今後多文化の人材で一つの組織を形成する必要性がますます増えてくる。こうし
た時、フランスのマネジメント方法、あるいはフランスのリーダーシップを学んでおくことは、これか
ら求められる人材の能力として有益なことであるだろう。
そしてもう1つには、優れたコミュニケーション戦略がある。政府のアジェンダの提示から企業の宣
伝まで、フランスのプロジェクトはその演出の仕方でセンスが発揮されている。グローバル化の中
で事業を展開することには特に長けているといえるだろう。ブランディングからコーポレートアイデ
ンティティーの形成、色彩の遣い方、宣伝文句と、国や地域にあわせて巧みに組み合わされて効
果をあげている。また、問題が起きた時のリスクマネジメントの点でも、コミュニケーション戦略でうま
くかわしている成功例は少なくない。フランス独自の「人を動かす」コミュニケーション戦略を学び、
体感しておくことは、あらゆる職業、ビジネスにおいての実力となるだろう。
また、現在注目すべきは、フランスではスタートアップを育てるプロジェクトが官民一体となって進
められている点だ。大手企業の安定的な発展ばかりでなく、長期的な視点に立ち、次世代の新し
いビジネス、製品、人材を育てることがいくつもの団体において積極的になされ、インキュベータ
ーによるオフィスやサービスの展開、あるいは新しいチャンスにつながるコンクールも多く開催され
ている。すばらしいアイディアと努力があれば、フランスで一から起業し世界に進出していくチャン
スは、日本人にも開かれている。グローバル化の波にのり、自分のビジネスで世界を切り開いてい
きたい方は、フランスで優秀な人材と共に切磋琢磨しながら学び、起業し、事業を展開していくこ
とは、一つの大きなステップとなるだろう。
○フランスで教育を受ける意義
フランスの教育は、意外に思う人も多いが、小学校から一貫して詰め込み教育の側面を持つ。背
骨が曲がる心配があるため、キャリーケースで教科書を運ぶ小・中学生がいるほどである。暗記が
多いのも特徴だ。徹底した論理的議論をするためにも、自分の中にいかに知識のストックがあるか、
いかに引用して客観性を出せるかが一つの大事なテクニックでもある。子どもたちにこうした教養
を身に着けさせる必要があるため、フランスの高校教師には非常に優れた教養を備えた人がたく
さんいる。有名な元高校教師は、フランス第五共和政第2代大統領のジョルジュ・ポンピドーがいる。
彼はラシーヌの戯曲を丸一冊暗記していたと言われている。それから、哲学者であり教育者でもあ
り、日本でも『幸福論』などが出版されているアランも高校教師であった。一つの目安として、フラン
スで教育を受けた人間が最低限どんな知識を求められるかを知りたい人は、フランスの高校卒業
試験であるバカロレアの試験内容を見ていただきたい。
こうして IQ を伸ばす教育がなされる一方で、その IQ が人生とは乖離しない形で育てられる教育も
フランスではなされている。人口遺伝学のパイオニアである Albert Jacquard は言う。
« Bien sûr, il faut apprendre, comprendre, nourrir son intelligence, mais il faut surtout ne jamais
oublier la finalité de tous ces efforts : savoir rencontrer. » (もちろん、学習し、理解し、知能を育む
必要はあるが、しかしこれらの努力の最終目標を決して忘れないように、特に注意する必要がある。
その最終目標とは、出会いの知恵である。)
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どんなに IQ が高く、物知りでも、他者とのかかわりの中で活かせなければ強みとはなり得ない。日
本では○○大学出身であることや、試験で一番だったりすることが一つの強みとなるが、世界に出
ればそれだけではほとんど意味をなさないだろう。特にフランスでは、「それで、あなたは今何がで
きるのか?」と聞かれておしまいとなる。
ある程度の品質で大量生産をすれば儲かる経済成長一点張りの時代は終わり、現在はビジネス
の形も研究の形も変わってきている。相当な高い質が求められており、それを目指して世界中が
切磋琢磨しているのだ。その質とは、製品の質であり、仕事の質であり、人生の質である。こうした
高い質を無視しては、経済そのものが成り立たない時代になってきており、この質を理解し、ニー
ズをつかむためには、どんな分野に従事する人間であろうと、人生そのものに対する姿勢が重要
になっている。
こうした人生を考える学びを得たい人には、フランス留学をお勧めしたい。一度日本という国を出
て、幅広い見識を担っていくことが、自身とこれからの日本のためになるであろう。
現在では、東京大学、京都大学、早稲田大学などのいくつかの大学では、交換留学としてフラン
スのエリート校、グラン・ゼコールの数校と提携している(2014年2月現在)。その他、独自で希望し
て留学することも可能であるので、制度上決まった留学に固執することなく、自身の人生設計に応
じて柔軟な留学計画を立てると良い。
フランスに数年滞在するのでは、日常生活や授業、あるいは決められた範囲のインターンシップな
どの活動以外にうまく発展させることのできない日本人も多い。また、日本人同士でかたまり、フラ
ンスという異国において、日本人ネットワークばかりを発展させる人も少なくない。フランスにいるか
らこそできるネットワーク作り、友人作り、企業とのコンタクトを積極的にすることは、フランス滞在を
より有益なものにするだろう。渡仏前、あるいはフランス生活が慣れ始めたら、計画的に実践するこ
とをお勧めする。
④ 「フランスで生活したい、フランスで起業したい、フランスでビジネスをしたい」場合
フランスで起業やビジネスを始める前に、ほとんどの人がフランス生活をまず試みるだろう。「フラン
スで生活する」ということには、およそ2種類のタイプがある。
1つには、フランス人やフランスの社会に溶け込んでいき、そしてフランス人と対等に力をつけ、キ
ャリアアップをしていく人。もう1つには、あくまでも一人の異邦人としてフランス社会の中にいて人
生を送る人。後者の場合、生活もビジネスも、日本人ネットワークが中心となる。
例えば、多くの画家は、フランスの光や景色、芸術的雰囲気に魅了され、フランスの中にいた方が
自分の実力を発揮した画を描くことができるという。しかし、フランスに住み続けながら、その作品
を展示する場所は日本での個展であり、日本のコレクターに買ってもらうことで生計を立てながら、
自分の好きな絵を描き続けている画家もいる。
また、日本の社会的なしがらみが嫌になり、渡仏する人もいる。しかしながら、フランスの社会に溶
け込んで行くだけのオープン・マインドはなく、フランスの日本人ネットワークで生活している人も少
なくない。
「フランスで起業をしよう」と考えた時、この2種類のタイプをはっきりと区別して考える必要がある。
自身の自己実現のためには、苦しくても前者のタイプでのフランス滞在、フランスでのビジネスを
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目指す人がより多くなることが望まれる。特にフランスでのキャリア形成を目指す場合には、どんな
テクニックやそれを売り出すためのノウハウがあったとしても、最低限の基本的な姿勢として前者の
姿勢が求められている。
例えば、シェフの例を挙げよう。世界文化遺産に登録されてから、またそれ以前からのクール・ジャ
パン戦略も含め、和食が海外で展開されている。フランスでも和食ファンは多い。この流れに沿い、
日本風のフランス料理で勝負するというのも良いことだろう。また、フランスで和食を提供するのも
よい。しかし、それはモーツァルトが音楽で豪語したように、日本人シェフも、「自分はどんな大物フ
ランス人シェフの味でも真似ができるし、どんな人の作品も同じような味が出せる、その上で自分
の日本人としての味を出すのだ」と言えるくらいになってほしい。その前から、フランス文化とは異
なる文化である日本、つまりそのエキゾティスムを盾に売り出すのでは本物とは言えないだろう。苦
労して通過すべき過程を通過してから目的地に達することが重要であり、目的地にいかに早くた
どり着くかを目標にするのでは、結局その後さらなる発展は難しくなってくる。
フランスで生活するということは、自分の中の日本をフランスに持っていくことでもなければ、フラン
スで自分の中の日本を押しつぶすことではない。両方をとりいれ、自身のパラダイムを広げること
である。そのためには、一日いちにちの過程を大切にすることで、はじめて見えてくるものがあるだ
ろう。そしてそれこそが、フランス滞在の醍醐味ではないだろうか。フランスでのキャリア形成を、自
分がどれだけのもので望むのか、それに従ってフランス滞在の計画を立てるのが良いだろう。
●フランスの滞在許可、フランスにおける各種許可証の問題
自分がどうゆうキャリアを積みたいかによって、適切な滞在許可を得る必要がある。弊社にご相談
いただくケースに、滞在許可証のトラブルも少なくない。
フランスでの生活が慣れ始め、せっかく「これから!」と意気込んでいた時に、急遽滞在許可や労
働許可の問題がおこり、日本に帰る羽目になったケースが多くある。最初から自分のキャリアを想
定して適切な許可証をとることは、フランスでのキャリア形成のために必要不可欠なことであること
を頭にいれておこう。
ご友人同士のネットワークやインターネット等で得た情報をもとにご自身で滞在許可証等の手続き
を進められる方がトラブルに陥る原因には、およそ2つある。1つには、その情報が“あなたの場合
にとって”的確ではないということだ。「フランスで活動する」という共通テーマがあったとしても、期
間、職種、配偶者等、それぞれフランスにおいて歩む道は人様々である。A さんのケースではクリ
アできることが、B さんではできない、ということは当然起きてくる。「わたしのキャリア形成にとって、
どの滞在許可がいいのか」を各自きちんと考えよう。もう1つの理由には、フランスの窓口対応の多
様性があげられる。日本の場合は比較的、役所等公共機関ではマニュアルに従って同じような回
答が返ってくる。一方、フランスでは、窓口によっても、受付する人によってケース・バイ・ケースで
異なることが多々あるのだ。これは、フランス国内でも問題として挙げられていることである。一度ト
ラブルが起こってしまうと、最初から適切な方向で進んだ場合に比べ、膨大な時間とエネルギーが
必要とされるばかりでなく、最悪の場合には正攻法では不可能になってしまうことも多々あるのだ。
問題が起こってから専門家に相談するのではなく、フランス滞在の計画を立てられる際にどの許
可証をとるのが自分のキャリアには適切か、申請書類の選択からその作成まで、どうやったら目指
す許可証を確実に取得できるのかを、あらかじめ専門家に相談しながら進めることは、最終的に
時間も費用もエネルギーも節約になることがはるかに多い、ということが弊社の長い経験から言え
ることである。
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◎ 総合マネジメント事務所 Espace MUSE の<フランスでのキャリア形成>
フランスにおいて、ネットワークのほとんどないところで、留学する、生活する、起業する、ビジネス
をやるということは、下地作りから計画的にやることが大切です。日本で生まれ育っていれば、自
分が意識しなくともテレビやラジオ、新聞からの情報が日常的に飛び込んできて、社会とはどうゆう
ものであるかもある程度は認識できます。しかし、いきなりフランスに飛び込んでみても、特にフラ
ンス語が不便な中ではフランスの社会がどういう形で機能しているかを認識するのは難しいことで
す。日常レベルのコミュニケーションからビジネスリレーション、継続的な発展、滞在許可等の各種
許可を含めた諸問題をクリアし、フランスでの留学、ワーキング・ホリデー、インターンシッ
プ等、フランスにおける滞在が各自の有益なキャリア形成となるにはどうすればいいのか、
総合マネジメント事務所 Espace MUSE では個別のキャリア・マネジメントから、セミナー、
研修、ブリーフィングをしております。
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