教材「柔道の基本ルールを学ぼう」

柔道の基本ルールを学ぼう
この教材を学ぶにあたって
この教材は柔道を始める前に必要な知識を国際柔道審判規定に従い学んでい
きます。これから柔道を体験してみようという人、テレビなどで柔道を見ても
ルールが分からなくてつまらないという人。
この教材が終わる頃には実際に柔道を体験する前に必要なルールを知る、又は
試合を見学して試合内容がわかるようになるのが目標です。
この教材では柔道の実技にまでは触れません。この教材を興味を持って、学
習してみようと思っていただければ幸いです。
前提条件
この教材を受ける資格のある人は、
「柔道をどんな形でもいいので一度でも体
験したことのある人」又は「柔道の試合を一度でも見たことのある人」としま
す。もちろん授業でやったことがあるだけの人でも、テレビで見たことがある
というだけの人でも構いません。
第一章
柔道の歴史を知ろう
柔道の総本山である講道館は、1882 年に創設されました。創設者は、講道館
柔道の創始者嘉納治五郎師範です。柔道とは柔術から加納治五郎師範が考え出
した武道です。柔術には、いろいろの名称や流派があるものの、全体として、
無手または武器を持つ相手を攻撃し、またはそれから自分を防御する術だった
といえます。師範は、柔術各流派の優れたところを集め、危険なところを除き、
工夫と研究を加えて、全く新しい講道館柔道を創始したのです。
講道館柔道はその後、優秀さを認められ、1964 年にオリンピックの正式種目
となり、今や世界のスポーツとして各国で盛んに行われています。
第2章
柔道に必要なものは?
1、柔道着
まず柔道をするために必要なも
のは自分で着るための柔道着です。
もちろん柔道着も自分の好きなも
のでいいわけではありません。右図
のように、袖や裾などに規定以上の
長さが無ければいけません。これは
試合のときに相手が十分に柔道着
をつかめるように必要な長さです。
試合前に審判が長さを測り、規定
より短い場合はすぐに着替えが要
求されます。
また、帯の長さにも規定があります。長い分にはある程度かまいませんが、
短すぎる場合には、ほどけやすいということで帯の交換を要求されます。
2、試合場と礼法
柔道をするためにはやはり試
合場が必要です。柔道のための
試合場は右図の通りです。
各試合場に審判は主審が1名、
副審が2名。副審は試合場に対
角線上に1人づつ。試合場の中
に主審が1名います。
試合を行う時には、試合場内
に貼ってある赤テープと白テー
プの一歩後ろに、試合を行う両者が向き合って立ちます。
試合開始前と試合後には必ず礼が行われます。
試合前ですが、試合場には必ず「正面」というものがあります。まずはそち
らに向かい一礼し、次に試合相手と互いに礼をします。その後、左足から一歩
前に進み、主審の「始め」の声で試合を開始します。
試合後は試合開始と逆の手順で礼法を行います。テープの前に立ち、主審が
勝者を指したあと、右足から一歩下がり、試合相手と互いに礼をし、正面に向
かい礼をして退場します。
礼法を間違えたり、勝手に省略した場合は審判に礼法のやり直しを指示され
ます。日本古来から伝わる武道です。
「礼に始まり、礼に終わる」という基本を
忘れないようにしましょう。
第3章
試合時間や勝敗を覚えよう
1、 試合時間
試合時間は男子は5分、女子は4分で行われます。
しかし、寝技の攻防が続いた場合、審判が右図のように動
作し、
「待て」をかけ、試合開始線に戻ることを指示するこ
とがあります。
「待て」がかかっている間は時計は止められ、
寝技における「待て」
試合時間は進みません。開始線に両者が戻り、主審が
「始め」の声をかけると同時に試合が再開され、時計が再び進みます。
また、両者とも立っており、試合を行っている時にも審判は「待て」をかけ
る場合があります。この場合は両者、または一方が積極的に技をかけずに逃げ
ていると判断された場合です。
2、 技の効果ポイント
柔道で相手に勝つためには「相手より多くポイントを取る」又は、
「判定で勝つ」のどちらかになります。判定については後で説明を行います。
ここではまず、技の効果ポイントについて説明をします。
試合において対戦相手からポイントを取るには、相手を立ち技で投げるか
寝技で抑え込む必要があります。まずは立ち技によるポイントの判定です。
① 一本・・・
「相手を制しながら、背中を大きく畳につき、
強さと早さをもって投げた時」
一本を取った場合その場で勝敗が決まります。
② 技有り・・・
「相手を制しながら投げ、その技が「一本」
に必要な他の三つの要素(背中を大きく畳につく、強さ、
速さ)のうち一つが部分的に不足するとき」
例えばどんなに勢いよく対戦相手を投げたとしても、その
相手がたたみに着く前に体をひねり、体の側面から落ちた
場合などは技有りとみなされます。
技ありを2つ取れば一本とみなされます。
③ 有効・・・
「相手を制しながら投げ、その技が「一本」に必
要な他の三つの要素(背中を大きく畳につく、強さ、速さ)
のうち二つが部分的に不足するとき」
勢いがあまり無く、相手の体を横倒しに投げた場合などは
有効とみなされます。
④ 効果・・・「相手を制しながら強さと速さとをもって肩、尻、
大腿部が畳につくように投げたとき」
相手の足を取り、しりもちを相手につかせた場合などは審判は
効果を取ることが多いです。
今まで上げた技のポイントの判定基準はあくまで基準でしかありません。
審判によっては、判定を甘く取る場合もありますし、厳しく取る場合もありま
す。しかし基本的に審判の判定は絶対です。極力逆らわない方がいいでしょう。
次は寝技でのポイントの取り方を学びましょう。
3、 寝技による効果ポイント
寝技でも先にあげたポイントを取ることが出来ます。
① 一本・・・相手が手または足で 2 度以上たたいたとき、または「参った」
と言ったとき。抑込技で 25 秒間抑えきったとき。
関節技や絞め技などは選手が我慢している状態でも、審判が完全に決まってい
ると判断した場合は、審判が一本勝ちを宣言する場合があります。
また、絞め技により、相手が「参った」を宣言することが無く落ちた(気絶した)
場合は一本勝ちとみなします。
②
技有り・・・抑込技で 20 秒以上、25 秒未満の間、抑えたとき。
③
有効・・・抑込技で 15 秒以上、20 秒未満の間、抑えたとき。
④
効果・・・抑込技で 10 秒以上、15 秒未満の間、抑えたとき
寝技は 1997 年から国際ルールが改正になり、抑え込みの秒数が短くなりまし
た。それまでは 30 秒で一本だったルールが 25 秒で一本になり、他のポイント
も全て、時間が 5 秒ずつ短縮されました。
もし、相手を押さえ込んで、時間が 25 秒たつ前に試合時間が終了した場合は
どうなるでしょうか?
抑え込んでいる途中に試合時間が終了した場合でも、抑え込みが続いている
場合は試合は継続します。そのまま 25 秒抑え込むことが出来れば一本勝ちにな
ります。しかし、もしも途中で抑え込みが解けた場合は試合はそこで終了しま
す。そして抑え込んだ時間と等しいポイントが与えられます。
それでは次は自分で獲得する技による効果ポイントではなく、
反則ポイントというのを覚えてみましょう
4、 反則ポイントについて
反則ポイントは試合で積極的に技をかけない場合、又は反則技とされている
技を使用した場合に審判より与えられます。
① 指導・・・相手に「効果」と同等のポイントを与える。軽微な違反を犯した
場合に取られる。以下のような場合が例としてあげられる。
「赤畳の上に両足を完全に付けて、5 秒以上位置する」
「立ち姿勢からいきなり寝技に引き込む」
「試合中に自分の都合で長髪を束ねることを 3 回繰り返す」
「立ち姿勢において極端な防御姿勢をとる」
② 注意・・・相手に「有効」と同等のポイントを与える。少々重い違反を犯し
た場合にとられる。以下のような場合が例としてあげられる。
「立ち姿勢で場外に故意に出る。または相手を場外へ押し出す」
「指導を 2 回取られると注意となる」
③ 警告・・・相手に「技有り」と同等のポイントを与える。重いタイプの違反
を犯した場合にとられる。以下のような場合が例としてあげられる。
「肘関節以外の関節(膝関節など)をとる」
「すでに注意を受けている時に、指導か注意を受けた場合」
④ 反則負け・・・相手に「一本」と同等のポイントを与える。非常に重いタイ
プの違反を犯した場合にとられる。以下のような場合が例としてあげられる。
「頭から畳につっこみながら、技を掛ける」
「すでに警告を受けている時に、指導、注意、警告のいずれかを受けた場合」
反則を取られて負けるような試合はしたくないですよね。
自分の実力を出し切るためには逃げてばかりではいけません。
積極的に技をかけ、反則を取られないような試合の方が、選手も見ているほう
も楽しいですよね。
さて、次はいよいよ最後!
審判による試合の勝敗判定です。
5、 勝敗の判定
試合時間が終了、又はどちらかが一本勝ちしたときに、2 章
の礼法で学んだように試合後、試合場に選手同士が向かい合っ
て立ちます。
一本勝ち、またはどちらか一方のポイントが上回っていた場
合は、その後、審判による「一本勝ち」又は「優勢勝ち」の言
葉と、勝った選手側に手を掲げる右図のような動作が行われます。
もし技のポイントも反則ポイントも互いの選手とも等し
かったらどうするのでしょう。
その場合は主審1人と副審2人による旗判定で勝敗の判
定を行います。
主審、副審がそれぞれ赤と白の旗を持ち、主審の「判定」の
声とともに試合を優勢に進めていたと思われる方の旗をそ
れぞれが挙げます。挙げられた旗の数の多い方が優勢勝ちと
なります。
勝敗が決まった後は、2章で学んだ礼法を行い、試合場を出て試合が終了とな
ります。