国際貿易実務

国際貿易実務
日本語版
張継文
崔艶偉
編著
外語教学与研究出版社
前
書
私は大学卒業後、貿易会社で対日輸出業務の担当をしたことがある。その
当時、中国の実情に沿った日本語の貿易実務書は少なく、なかなか手に入らな
かった。そのような書籍があれば、貿易の知識を系統的に学べ、中国の輸出業
務の流れを把握でき、日本の貿易会社との商談等にも役立つのではないかと
常々思っていた。
貿易会社での輸出業務の後、私は日本の大学院で商法を専攻した。日本語
の貿易に関する書籍を何冊も買って読んでいるうちに、中国で使える日本語の
貿易実務書を自ら書いてみようという発想が湧いてきた。
この発想の実現を本格的に目指したのは、深圳職業技術学院東方言語学部で
貿易実務の授業を担当してからのことである。日本語での教案作成、また、日
本語での中国輸出入貿易実務の教授を通して、貿易実務書の必要性を再認識し、
今回の執筆、出版に至った。『貿易実務(日本語版)』 はその授業の教案をも
とに整理し、編集したものである。
本書は国際貿易の概要、国際販売契約、商品の品質数量包装、インコターム
ズ、国際貨物の輸送、海上保険、決済、商品の検査と通関、紛争の解決、世界
貿易機関、取引の書類の十一章からなる。貿易実務を中心に紹介しているのが
本書の特色であり、価格の計算、業務用の書類、取引上の文章など実務上必要
とされる知識や中国の貿易実情、業務の流れを網羅している。
本書は、大学の日本語科の学生、貿易会社の業務担当者の方々を読者層とし
て念頭に置き、実務貿易の教科書や入門書として広く活用されるように心がけ
た。
最後に、出版にあたりこの『貿易実務(日本語版)』の必要性を認めてくだ
さり、労を執ってくださった外語教学与研究出版社の方々、また、執筆、出版
に関わってくださった片岡由賀、武永洋子及び他の関係各位に心から深い感謝
の意を表する。
編著者略歴
張継文:修士、助教授、深圳職業技術学院東方言語学部長。省輸出入貿易会
社の業務担当、部長、副社長を歴任。メール:jwzh@163.com
崔艶偉:修士、深圳職業技術学院東方言語学部教師。メール:ywcui9@sina.com
2 第一章
国際貿易の概要
ポイント
1.概念:国際貿易 輸出 輸入 赤字 黒字 EDI
2.国際貿易の対象:モノの貿易 サービス貿易 技術貿易
3.国際取引法:国際条約 国際商慣習 各国の法律
貿易とは広義的、国内各地による国内取引と国際間で商品を輸出入する国際
貿易に分けられ、国際貿易は国境を超える財貨、サービスの移動のことを指す。
現代の社会では、各国間で財貨、サービス、資金、人、技術、ノウハウなどが
国境を越えて活発に移動している。こうした国境を越える経済活動のうち、財
貨、サービスの移動を「国際貿易」と呼ぶ。
国際貿易は世界経済の発展を促進する。その理由は、貿易が自由に行われる
自由競争の原理によって、商品が高級化、高度化し、世界中の物流が促進され、
人々に素晴らしい貿易商品を供給することで、生活をより豊かにし、世界経済
の繁栄をもたらすからである。どの国でも、国民生活の維持および国内産業の
発展のために、国際貿易を必要としている。
自国から外国へ、財貨、サービスを販売することを輸出(ゆしゅつ)といい、
外国から自国へ、財貨、サービスを購入することを輸入(ゆにゅう)という。
一国の輸出総額が輸入総額を超える場合は輸出超過、あるいは黒字といい、逆
に、輸入総額が輸出総額を超える場合は輸入超過、あるいは赤字という。
伝統的に貿易の分野では、財貨の取引とサービスの取引を区別し、前者を「目
に見える貿易」、後者を「目に見えない貿易」と呼んでいる。国際収支上も、
前者の輸出入の差額を「貿易収支」とし、後者の差額は「貿易外収支」に含め
るなど扱いを変えている。
貿易実務とは、貿易(輸出、輸入)を行う上で必要なマーケティング、契約交
渉、船舶等の手配、保険付保、通関、決済、貿易金融、クレーム対応等の実務
を指す。経済のグローバル化が進み、また間接貿易から直接貿易へのシフトが
進んだ結果、企業における部品・材料の調達、委託生産、海外販売等の貿易取
引が急速に拡大し、商社、メーカー、流通業、サービス業、金融業など幅広い
業種で、貿易業務が不可欠となっている。
一、国際貿易の対象
商取引は物品売買の原型である原始時代の物々交換からはじまる。商取引は
物品売買の原型である原始時代の物々交換からはじまり、長い間、貿易の主体
をなしている。しかし、現代に入ってから、社会の発展とともに、貿易の対象
も変わり、より複雑になり、「モノ」のほかに「サービス」、「技術」なども貿
易の対象となる。
1.モノの貿易
国際取引の対象となるもの「目的物(Subject Matter)」は目に見える商品
がもっとも大きな比重を占める。本書では主として目に見える商品を対象とす
3 る国際物品売買を論述する。
2.サービス貿易
サービス貿易とは、金融、運輸、通信、流通等のサービスの国際取引のこと
である。近年の世界経済においては、先進国を中心に経済のサービス化が急速
に進展しており、国内産業におけるサービス産業の割合が年々高まっていると
同時に、国境を越えたサービスの取引であるサービス貿易も拡大し、世界貿易
全体に占めるサービス貿易の比重は着実に高まっている。
3.技術貿易
技術も国際取引の対象になる。外国企業との技術提携には、技術導入と技術
輸出がある。技術導入とは、特許権の使用やノウハウの導入である。また、技
術輸出とはわが国の製造業者が所有している特許権やノウハウを外国の製造
業者が使用することである。
二、国際収支と為替取引
1.国際収支
国際収支とはある国が外国と行う経済取引を体系的にまとめたものである。
一国が一定期間中に外国と行ったすべての経済取引を集計した勘定を言う。こ
の場合の経済取引には貨幣の支払いが伴わないものも含まれます。モノやサー
ビスの取引の流れを表す「経常収支」と、外国への直接投資や証券投資などに
よる資産と負債の変化を表す「資本収支」に分けられる。
経常収支はその国の国民所得に大きな影響を及ぼすため、国際競争力を判断
する指標となる。モノやサービスの輸出が増えればそれだけ外国からの収入が
増え、その国の国民所得も高水準になる。しかし、反対に輸入が増えれば外国
への支出が増え、対外競争力が弱くなる。
資本収支はその国のモノやサービスの支出の変化を表すものではないが、投
資による国際的な資産、負債の変化を表すため、間接的には国民所得の大きさ
を左右するといえる。
2.為替取引
為替取引とは、自国通貨と外貨との取引である。為替取引に関しても需要と
供給による価格の決定という市場原理が適用され、その交換比率が流動的に決
定される。その需給が均衡を保っていれば問題はないが、実際には常に均衡状
態にあるわけではなく、それが不均衡な状態におちいれば、自国通貨の上昇や
下落という現象を引き起こし、その変動が急激である場合には、経済社会の混
乱を招くことになる。すなわち、国際収支が黒字になると外貨の供給過剰とな
り、為替相場での自国通貨の上昇現象となってあらわれる。これは輸入業者に
は歓迎されても、輸出業者にとっては苦痛を強いるものとなる。むろん国際収
支が赤字になった場合には、その逆のことが言えるのであり、どちらにしても
利益を受け、損失を被る者が生じることとなる。このような状態を良しとせず、
自国通貨の安定を望むのであれば、何らかの方法で国際収支の管理が必要にな
る。
「為替レート」は異なる通貨を交換する時の価格である。レートとはそもそ
も率、割合、歩合といった意味を持つが、この場合には、1ドルがいくらで交
換できるか、また1ユーロがいくらで交換できるかを示す。
(1)通貨の切り上げと輸出入
4 一国の通貨の切り上げにより輸入品は仕入れ値が安くなる。仕入れ値が安く
なるということは、小売価格も値下げしやすくなるので、輸入企業に利益をも
たらす。しかし、輸出企業は、仮に商品が人民元安の時と同量の販売を行った
としても、ドルを中国元に両替する際には、人民元高の影響で、収益が減少す
る。
(2) 通貨の切り下げと輸出入
一国の通貨の切り下げになれば、その分、輸出商品の価格を下げることが出
来る。輸出企業は輸入国において、価格競争の面で有利な立場になり、結果と
して売上増(利益増)となる。しかし、人民元安により、商品の仕入れ値が上
昇し、販売価格も上がる。販売価格が上昇すれば、売上の減少につながり、輸
入企業は収益が減少する。 3.人民元為替の変動
数年来の人民元対米ドルの為替レートの推移をみると、資本取引における人
民元の交換性の制限や、管理フロート制をとっていることもあって大きな変動
はない。1990 年以降のレートの動きをみると、1994 年に為替レートを一本化
した時点で約 33%切り下がったが、その後はほぼ横ばいで推移していて、過
去8年ほとんど変動しておらず、1ドル=8.28 元前後である。
中国政府は 2005 年7月 21 日より、市場需給を基礎とした変動相場制を実施
することを発表した。人民元対米ドルの固定レートを撤廃し、弾力性のある人
民元為替レートメカニズムを構築するため、人民元対米ドルの為替レートは1
ドル=8.11 人民元に調整され、このレートを銀行間外貨取引の中間価格とし
た。これは対外貿易のアンバランスを緩和、内需を拡大、企業の国際競争力を
強化、対外開放レベルを高めるために必要な措置である。
三、電子商取引(電子ビジネス)
品物や資材などの注文や購入をする場合は、相手先へ電話、ファックスなど
を使って伝えるか、書面に書いて注文するのが普通であった。近年来、IT化
の進展とともに、世界的にネットワークを介したビジネスが発展を遂げている、
即ち電子ビジネス(Electronic Commerce)のことである。電子ビジネスの最初
の段階で、電子貿易(Electronic Trade,ET)が導入され、現在では、 EDI(Electronic Data Interchange)が導入された。 EDI(Electronic Data Interchange)とは、電子データ交換と訳され、例えば、つ
まり、社内の端末から通信回線を使って、相手先の端末にデータを送り、ネッ
トワークを介してコンピュータ間で直接やり取りする。このような形で商取引
を行うことを EDI (電子データ交換)という。商取引に関する情報を標準的な書
式に統一して、企業間、企業と貿易管理機関で電子的に交換する仕組みで、見
積もり、受発注、船腹の予約、決済、出入荷、通関、意見交換、交易管理など
に関わる商取引データを、標準的な規約に従って、インターネットを利用して
完成することができる。 EDI を導入することにより、書類などを郵送、転送したり、FAX したりする
場合と比べて、業務の簡素化、スピード化、確実化、貿易上の安全、などを図
ることができる。
四、国際貿易と法律
5 国際貿易においても、取引を規律する国際的な統一法が存在しないことによ
り、当事者はいずれかの国の国内法である各種の取引法を規範として、円滑な
取引を心掛けてきた。そして、国家ないし国際社会の政策的な観点から取引に
何らかの規制を加える強行法規が生じてきた。さまざまな条約、制度、規則、
各種の取引法、公法を包括的に表現するものとして「国際取引法」の名称が与
えられ、国際取引及び国際取引紛争に適用されるさまざまな法原則の総称であ
ると定義したが、学者によって国際取引法の範囲は異なり、紛争解決の手続法
である訴訟法や準拠法の決定にかかわる国際私法の取り扱いをめぐって、意見
が分かれる。現在、国際取引法という特定の名称を冠した法律はない。
国際取引にはいろいろな形態があり、国際貿易にかかわる当事者間の利害を
調整する法律規範は国際条約、国際商慣習及び各国の法律などである。
1.国際条約
国際取引にかかわる条約はさまざまであるが、最も重要なのは「国際物品売
買契約に関する国連条約」(United Nations Convention on Contract for the
International Sale of Goods)である。国際取引、すなわち国境を越えて行わ
れる取引で最も多いのが、物品の売買であるが、この条約は主として、売買契
約の成立とその履行の局面において生じがちなトラブルを避けるために制定
された。1980 年 4 月 10 日にウィーンで採択され、1988 年 1 月 1 日に発効され
た。2002 年 3 月、61 カ国以上の国が加盟国になっている。
中国は締約国で、条約を批准した際以下の二点を留保した。
(1)契約に書面性を要求する旨の留保。条約の第 1 条の「書面によって締結
又は立証されることを要せず,また方式についてその他のいかなる要件にも服
さない」について、わが国は売買契約の締結又は立証が書面によりなされるべ
きであると要求している。
(2)適用領域に関する留保。条約の第1条(b)
「適用領域の拡大」について、
わが国はこの条約の適用領域は、売買契約の両当事者の営業所がそれらの締約
国に所在すべきであると要求している。
この条約は次の売買には適用しない。 (a)個人、家族又は家庭で使用する
ために購入された物品の売買。ただし、売主が契約締結時以前において、その
物品がどのような使用目的で購入されたことを知らず、かつ、知るべきでもな
かった場合を除く。 (b)競売。(c)強制執行その他法令に基づく売買。(d)
株式、持分、投資証券、流通証券及び通貨の売買。(e)船舶,艦船及び航空機
の売買。(f)電力の売買。
「国際物品売買契約に関する国連条約」のほかに、「外国仲裁判断の承認及び
執行に関する条約」、
「民事訴訟手続きに関する条約」など国際取引に関する条
約はたくさんある。
2.国際商慣習
商慣習とは取引上の慣行のことで、その中で、国際取引に関わるものは国際
商慣習という。国際条約と同様、貿易に関する国際商慣習も非常に多い。その
中で、常用されるのは、次のようなものがある。
(1)インコタームズ(International Rules For The Interpretation Of Trade
Terms)
国際商業会議所( ICC )が制定した「貿易条件の解釈に関する国際規則」
の略称である。現行のものは 2000 年に改正され、13 種の定型取引条件が規定
6 されている。インコタームズでは、貿易取引契約において貨物取引の場所、危
険の移転、所有権の移転、運送の手配と運賃の負担区分、保険の手配と保険料
の負担区分、輸出入の通関手続きと関税負担およびその他の経費負担などにつ
いて、売主と買主がどのように負担すべきかを国際的な統一ルールとして取り
決めている。
(2)「荷為替信用状に関する統一規則及び慣例」(略称「信用状統一規則」)
( ICC Uniform Customs And Practice For Documentary Credits,1993
Revision)国際商業会議所(ICC)では、信用状の取り扱いや解釈が国によっ
て異なることから起こる問題を処理するため、1933 年、
「荷為替信用状に関す
る統一規則及び慣例」を制定し、1951 年、1962、1974、1983 年の改定を経て、
現 在 1993 年 に 改 訂 さ れ た UCP500 (Uniform Customs and Practice for
Documentary Credit, Publication No.500) が適用されている。信用状取引は
この統一規則に基づいて行われる。各国の銀行はこれに従うことになっている。
3.各国の立法
各国の契約法、外国為替法、外国貿易管理法などが適用対象となる資本取引
に該当する国際取引であれば、これらの法律が適用されることになる。
わが国では 1994 年に『対外貿易法』が公布され、十年間の実施を経て、2004
年 4 月、同法が改正され、7 月 1 日より発効された。
『中華人民共和国契約法』は、1999 年 3 月 15 日に開催された全国人民代表
大会第 2 回会議で採択され、1999 年 10 月 1 日より発効された。
『中華人民共和国契約法』が成立するまでは、次のような経緯がある。1993
年 9 月 2 日全国人民代表大会常務委員会は、
「経済契約法改正に関する決定」
を採択した。その背景には中国の対外開放政策が深まるにつれて「民法通則」
の下にある現行の三つの契約法、すなわち「経済契約法」
(1981 年 12 月 31 日
公布、1993 年 9 月 2 日改正・再公布)、「渉外経済契約法」(1985 年 3 月 21 日
公布)、及び「技術契約法」
(1987 年 6 月 23 日公布)がそれぞれ異なる法律関
係と領域を規制の対象にしていたため、食い違いや不調和が生じ、かつ法の規
制が具体性に欠け、よるべき法規範が欠如する結果となった。殊に 1992 年に
提起された社会主義市場経済体制の確立を改革の目標にして以来、ますます統
一的かつ完備された現代的契約法の制定が重要な課題として浮上し、「経済契
約法」が改正されて間もなく、統一的中国の契約法を起草するため、1999 年 3
月 15 日に『中華人民共和国契約法』が誕生したのである
単語
ノウハウ
黒字(くろじ)
赤字(あかじ)
シフト
技術提携(ぎじゅつていけい)
導入(どうにゅう)
特許権(とっきょけん)
経常収支(けいじょうしゅうし)
資本収支(しほんしゅうし)
专门知识、技术情报
盈余
亏空
替换、移动
技术合作
引进
专利、特许
国际贸易收支总和
投资及资本收支总和
7 流動的 (りゅうどうてき)
流动性
物々交換(ぶつぶつこうかん)
物物交换
為替レート(かわせ)
汇率
そもそも
原来、本来
ユーロ
欧元
割合(わりあい)
比例
歩合(ぶあい)
比值、比价
上昇(じょうしょう)
上升
下落(げらく)
下降
供給(きょうきゅう)
供给
過剰(かじょう)
过剩
為替相場(かわせそうば)
牌价
切り上げ(きりあげ)
升值
切り下げ(きりさげ)
贬值
管理フロート制
浮动汇率管理制
横ばい(よこばい)
平稳、停滞
メカニズム
机制、机构
構築(こうちく)
构筑
アンバランス
不平衡
緩和(かんわ)
和缓、缓和
内需(ないじゅ)
内需
EDI (電子データ交換)
电子数据交换
端末(まったん)
终端
データ
数据
簡素化(かんそか)
简化
確実化(かくじつか)
准确、可靠
統一(とういつ)
统一
取引法(とりひきほう)
贸易法
規範
规范、标准
円滑(えんかつ)
顺利、协调
手続法(てつづきほう)
程序法
訴訟法(そしょうほう)
诉讼法
準拠法(じゅんきょほう)
依照法律
公法(こうほう)
公法
包括的(ほうかつてき)
包括、总括
冠する
冠(名)、给……戴上
国際物品(ぶっぴん)売買契約に関する国連条約
联合国国际货物销售合同公约
ウィーン
维也纳
留保(りゅうほ)
保留
立証 (りっしょう)
证实、证明
適用(てきよう)
适用
領域(りょういき)
领域、范围
競売(きょうばい)
拍卖
8 執行(しっこう)
执行
商慣習(しょうかんしゅう)
商业惯例
インコタームズ
国际贸易术语解释通则
区分(くぶん)
区分
国際商業会議所(こくさいしょうぎょうかいぎしょ)
国际商会
荷為替(にがわせ)信用状に関する統一規則及び慣例
跟单信用证统一惯例
改正(かいせい)
修改、修正
立法(りっぽう)
立法
公布(こうふ)
公布、颁布
食い違い(くいちがい)
分歧、不一致
不調和(ふちょうわ)
不协调
欠如(けつじょ)
缺乏、缺少
浮上(ふじょう)
浮出、显露
健勝(けんしょう)
健康
新規(しんき)
新、重新、新规章
本状(ほんじょう)
这封信
隆盛(りゅうせい)
隆盛、繁荣
承る(うけたまわる)
敬悉、恭听
検討(けんとう)
讨论、探讨
末永く(すえながく)
永久、长久
付き合い(つきあい)
交际、交往
平素(へいそ)
平常
格別(かくべつ)
格外、特别
引立(ひきたて)
关照、照顾
賜る(たまわる)
赐予、赏赐
多忙(たぼう)
百忙、繁忙
恐縮(きょうしゅく)
惭愧、羞愧、恐慌
来臨(らいりん)
光临、来临
9 第二章
国際売買契約
ポイント
1.輸出入の流れ:取引先 見積書 契約書 信用状
2.情報収集:市場調査 信用調査 法律調査
支払い
引取り
3.契約交渉:引合い オファー カウンター·オファー 承諾
4.契約成立:成立時期 成立方式 契約の効力 取引条件 立証書類
国際取引においては、国際売買契約を結ぶのが一般的であるが、国際売買契
約が何であるかについての定説はない。
「国際物品売買契約に関する国連条約」
第 1 条の定義では、契約当事者が複数国にまたがる場合を国際売買契約といっ
ている。この定義に従えば、物品の受け渡しが外国で行われても、契約当事者
が同一国内であれば、国際売買契約ではない。これに反対する意見も少なくな
いが、「国際物品売買契約に関する国連条約」は非常に広い範囲で採用される
ので、国際取引の当事者としては、この定義についてよく理解しなければなら
ない。
国際取引や国内取引に関わらず、売買契約の成立過程は同じである。一般的
には、売主が商品をオファーし買主がそれを承諾すれば、売買契約は成立する
(買主がオファーを出す場合もある)。しかし、実際の取引というのはそんな
に簡単ではない。売買当事者の間でオファーとカウンター·オファーが何度も
繰り返されても、合意に至らないこともある。また、安全な取引のため、本当
の商談に入る前に取引相手に対し調査を行うのも一般的な方法である。
第一節
輸出入の流れ
国際取引は輸出入を問わず、法令に従って一定の手続きをしなければならな
い。輸出入手続きの流れはそれぞれ次のようになっている。
一、輸出手続きの流れ
輸出契約締結
▼
必要な場合は、輸出許可、承認の取得
▼
信用状の入手(信用状決済の場合) 必要な場合は、為替予約
▼
商品の発生(生産手配)
10 ▼
船会社に船の手配
▼
損害保険会社との間で保険契約の締結
▼
通関の手続き
▼
船積 貨物の保税地域搬入、輸出申告、輸出検査、輸出許可(通関業者代行)
▼
輸入業者に船名、船積日を通知
▼
船荷証券を取得(代金を回収)
▼
信用状に記載の期日迄に必要書類を取り揃え、銀行へ提示し、代金を回収
二、輸入手続きの流れ
輸入契約締結
▼
必要な場合は、輸入許可証の申請と交付(対外経済部門等主管部門)
▼
信用状の開設依頼(取引銀行)
▼
輸入手続
▼
輸入商品検査(対象物品のみ)
▼
税関で通関申告手続(期限を越える場合、延滞料徴収)
▼
関税、増値税額の通知(税金納付書類)
▼
関税、増値税額の納付(期限を越える場合、延滞料徴収)
▼
通関
第二節
事前の情報収集
国際取引は、様々な危険が伴っている。国内取引と同じく、商品のニーズの
把握や市場の動向などの情報は重要である。多様な情報の収集や徹底した市場
調査、取引相手に対する信用調査などが貿易取引成功の鍵といえる。
11 一、市場調査
輸出入に関わらず、取引しようとする相手の国や地域の様々な情報を知って
いなければならない。相手国の風土や文化、政治体制や法規制、産業や金融な
どといった一般的な情報が必要である。また、扱おうとしている商品に関して、
その商品が相手の地域で適応するか、競合商品はあるか、あるいは潜在的な購
買力はどのくらいかといった商品特有の情報も欠かすことはできない。
市場調査の方法としては、情況に応じて専門の調査会社(Credit Agency)
に依頼したり、銀行、新聞社の調査データ、政府の貿易相談機関等を利用した
りすることができる。また、そのほかに、取引先の海外支店、代理店、展示会、
商談会などを利用して市場調査を行うこともできる。
二、信用調査
相手と初めて取引する際、相手企業の信用状態が不明だと、危険度が非常に
高くなる。せっかく商品を輸出しても代金が回収できない、相手企業の信用等
級が低いため自社のブランドイメージも下がってしまうなど、このようなこと
を未然に防ぐためにも信用調査が必要なのである。また、取引関係のある相手
と取引をしても、相手方が業績悪化などで資金難になることもあるので、やは
り信用調査が必要である。
信用調査の内容として主要なものは、「誠実性(Character)」、「資本力
(Capital)」、
「営業能力(Capacity)」、
「企業環境(Conditions)」、
「担保能力
(Collateral)」の五つがあり、頭文字をとって「5Cs of Credit」という。
国際取引の実務で、信用調査は主として下記のような方法で行われる。
①取引銀行を通じて信用照会をする
特に財務状態の調査の場合はこの方法が役立つ。
②相手先の取引先や同業者に照会する
③専門の信用調査機関を利用する
④貿易保険機構を利用する
三、法律調査
法律調査は実に市場調査の一環をなし、特に国際取引に大きな影響を与える
ため、取り上げて論じることにする。貿易に関して、どこの国でも何らかの法
的規制がある。国際取引そのものを直接的に規制する法律もあれば、国内法に
よって間接的に規制することもあり、とりわけ各国の外為法がその中核をなし
ている。安全な取引のため、相手国の貿易関連の法律をよく調べなくてはなら
ない。
上述の調査結果に基づき、取引先を選定して取引開始の申し入れをし、相手
側より承諾されれば本格的な商談に入る。
取引開始の申込み(兼市場調査)の文例
○○年○○月○○日
日本○○○会社御中
12 中国○○○公司
新規お取引の申込み
拝啓 貴社ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、突然でまことに失礼と存じますが、弊社と新規にお取引願いたく本状
を差し上げます。弊社は、電気製品の専門メーカーで国際的に営業をしており、
このたび日本にも販路を開きたいと考えていたところ、貴社のご隆盛を承り、
是非ともお取引願いたいと存じた次第です。
弊社は、長い取引歴史と厚い信用を得ており、貴社が私共の顧客になってい
ただければ、必ずや、貴社のご繁栄に結びつくものと確信しております。弊社
の信用状況につきましては、弊社の会社概況と2年分の決算報告書を同封いた
しますので、ご検討の上、お返事いただければ幸いです。
まずは略儀ながら書中をもってお願い申し上げます。
敬具
同封書類
1
2
会社概況
決算報告書
1通
1通
以上
取引開始の承諾の文例
○○年○○月○○日
中国○○○公司御中
日本○○○会社
新規お取引承諾の件
拝復 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
さて、この度は、新規お取引のお申入れをいただき、誠にありがとうござい
ます。弊社は、貴社のお申し入れををお受けしたいと存じます。なにとぞこれ
を機に末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。同封にて弊社
の会社概況と2年分の決算報告書をお送りいたします。
まずは承認のご返事かたがたお礼まで。
敬具
同封書類
1 会社概況
1通
2 決算報告書 1 通
以上
第三節
契約交渉
以上述べたように、国際取引の当事者は安全な取引のために、相手に対して
何らかの調査を行うのが一般的な方法である。これらの調査活動を終えてから、
本格的な契約商談の段階に入る。
13 契約交渉の手段としては口頭、FAX、テレックス、手紙、電話、E-mail など
がある。どんな方法でも、正確に伝われば有効であるが、実際の交渉では、口
頭式と書面式を合わせて行う場合が多い。
交渉の内容は品名、品質、数量、包装、価格、船積、保険、支払いなど売買
契約の各条項に及ぶ。特に、品質、数量、包装、価格、船積、支払いなどの諸
項目は取引の主要条件であるため、異議がないように売主と買主両者間で繰り
返して交渉する必要がある。契約交渉は一般的に、売主からの商品の売込みや、
それに対する買主からの引き合いに始まり、当事者双方の合意によって終わる
が、実際の商談は極めて複雑かつ時間のかかる過程である。
一、引合い(Inquiry)
引合いとは、取引の前に特定商品に対し価格、数量、貿易条件、支払条件な
どを取引相手に問い合わせることである。引合いを提起するのは、買主の場合
もあるし、逆に売主により提起される場合もある。契約交渉において引合いは
必須の一環ではない。引合いを省略し直ちにオファーの段階から交渉を始める
ことも多い。法律上から見れば、引合いはただオファーの誘いに過ぎなく、売
買双方ともに法的拘束力を持っていない。引合いは普通、ファックス、テレッ
クス、手紙などの形式を通して相手方に出される。
引合いの文例
○○年○○月○○日
中国○○有限公司
総経理様
日本○○株式会社
代表取 締 役社長
取引条件のご照会
拝啓 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
中国○○公司より貴社が各種帽子を輸出されている旨を伺いました。つきま
しては、各種の帽子のサイズ、カラー、価格などの詳細資料及びサンプルをお
送りいただきたくお願い申し上げます。弊社は大手百貨店のひとつで、貴社の
製品であれば、弊地でも有望な販路が得られるものと確信しております。
ご多忙のところまことに恐縮ですが、弊社あてにご送付をお願い申し上げま
す。また、支払条件と値引率をご提示いただければ幸いです。
まずは取り急ぎ製品についてのご照会まで。
敬具
二、オファー(Offer)
1.オファーの定義
オファーは「申込み」のことで、相手方と一定の条件で契約を締結しようと
する意思表示である。貿易実務では「オファー」と言うが、法律上「申込み」
14 と言うのが一般的である。オファーは国際取引において不可欠な一環であり、
法律上、次の諸条件を満たさなければならない。
①内容が具体的に確定していること
②申込みを受ける側の承諾を得て申込者がその意思表示に拘束されること
が明示してあること
③申込みは一または複数の特定の者に向けて出すこと。
オファーは通常、輸出者が輸入者に出すもので、「売りオファー」とも呼ば
れる。実際には「売りオファー」ばかりではなく、逆に輸入者から輸出者に出
される「買いオファー」もある。
2.オファーの方式と効力発生時期
オファーは口頭式によるものと書面式によるものがあり、国際取引中、紛争
を避けるために書面式を採る場合がほとんどである。
各国の貿易実務ではオファーの効力について一般的に「到達主義」を採り、
つまり相手方に到達した時点からその効力が生じる。口頭式の場合、電話また
は対面で取引相手に知らせれば到達したと認められ、書面式の場合は、オファ
ーが記入されている書簡や電報、テレックスなどが相手に交付された時から効
力が発生する。「交付」は、必ずしも直接的に本人が受け取るというわけでは
なく、取引先の営業所或いは郵便送付先に届けば、
「到達した」と見なされる。
3.オファーの撤回と取消し
一定の条件を満たせば、オファーは撤回または取消すことができる。
以上述べたように、法律上一般的には、申込みの効力発生時期について「到
達主義」を採用する。つまり申込みが相手方に到達する前には効力が発生しな
いのである。従ってこの期間にオファーを撤回することができる。ただし、撤
回の通知が申込みの到達前またはそれと同時に被申込者に到達しなければな
らない。
オファーの撤回はそれが発効する前に行われることであるが、オファーの取
消しとは、発効したオファーを無効にする規定である。オファーの撤回はほと
んどの国で認められるが、オファーの取消しは多くの国でを認められない。そ
こで、各国の相違を解消するために、「国際物品売買契約に関する国連条約」
では折衷的な方法をとり、下記のとおり規定している。
「契約が締結されるまで、申込みは取消すことができる。ただし、この場合に
は、被申込者が承諾の通知を発する前に取消の通知が被申込者に到達しなけれ
ばならない。」
「申込は、次のいずれかの場合には、取消すことができない。 (a)申込が、
承諾期間の設定その他の方法により、取消不能のものであることを示している
場合(b)被申込者が、申込を取消不能のものであると了解したのが合理的であ
り、かつ、被申込者がその申込に信頼を置いて行動している場合」
たとえ取消不能のオファーでも、撤回通知により撤回をすることができる。
オファーの文例
○○年○○月○○日
日本○○株式会社御中
15 中国○○有限公司
○○製品のご引合いについて
拝復 貴社ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
弊社とのお取引開始に同意いただき、誠にありがとうございます。早速です
が、お引き合いのございました○○製品について、下記のようにオファーさせ
ていただきます。改めてご検討賜りますようお願い申し上げます。
敬具
記
1.取引条件:FOB大連
2.製品:○○○
3.価格:○○○
4.最低発注量:10 ケース、注文が多ければ値引可
5.船積時期:2005 年 10 月
6.支払条件:成約後 10 日以内に取消不能のL/C開設
7.詳細条件:商慣行に従う
以上
三、カウンター·オファー(Counter Offer)
一方のオファーに対し、他方が無条件に同意すれば契約は成立するが、実際
の商談はそんなに簡単ではない。利益追求のため取引条件において、何らかの
変更や修正の要求を出す場合が比較的多い。即ちカウンター·オファーのこと
である。カウンター·オファーが相手方に受けいれられれば、契約は成り立つ
が、貿易実務で売主と買主の間で条件交渉がさらに続く場合もある。
カウンター·オファーは法律上「反対申込」と呼ばれ、承諾ではなく申込み
の拒絶であり、新しい申込みに相当する。「国際物品売買契約に関する国連条
約」では次のように規定している。
「承諾の形をとっているが、付加、制限その他の変更を含んでいる申込に対
する回答は、申込の拒絶であり、反対申込となる。」
カウンター·オファーの文例
○○年○○月○○日
中国○○有限公司御中
日本○○株式会社
仕入価格の値引きについて
拝啓 貴社ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、この度、貴社のオファーをいただき誠にありがとうございます。実は
中国の他社より多数のオファーがあり、貴社よりも 15%ほど安く入手するこ
とが可能です。ただ、弊社といたしましては、良品質である貴社の製品を購入
したい意向ですので、10%引き下げていただければお取引したいと存じます。
16 また、発注量を 100 ケースと致しますので、さらに5%引き下げていただきた
くお願い申し上げます。
ご無理なお願いとは存じますが、なにとぞご賢察のうえ、ご了承くださいま
すようお願い申し上げます。双方の努力により取引が円満に成立するよう希望
しております。
敬具
記
1.単価 8.5 万円
2.注文数量 100 ケース
以上
四、承諾·アクセプタンス(Acceptance)
承諾とは被申込者が取引相手の申込みに対して同意する意思表示を示すこ
とである。一方のオファーに対して、他方が無条件に承諾すれば、売買契約が
成立する。沈黙または反応のないことは、それだけでは承諾とみなされること
はない。各国の規定から見れば、一般的に承諾は次の諸条件を満たさなければ
ならない。
1.承諾は被申込者より出さなければならない
申込みは特定の人に対する申入れであるため、それに応じて承諾も被申込者
またはその代理人によらなければ有効なものとならない。
2.承諾は期限内に受諾されなければならない
一般的には、各国の貿易実務では、遅延した承諾を無効な承諾または新しい
申込みと見なすが、「国際物品売買契約に関する国連条約」では、次のように
特色のある規定をしている。
「(1)遅延した承諾といえども、申込者が有効な承諾として扱う旨を遅滞なく
被申込者に口頭で通告し又はその旨の通知を発した場合には、承諾としての効
力を有する。
(2)遅延した承諾を含む書簡その他の書面が、通常の通信状態であれば適切
な時期に申込者に到達したであろう状況の下で発送されたことを示している
ときは、申込者が遅滞なく被申込者に対して申込が既に失効していたものとし
て扱う旨を口頭で通告するか、又はその旨の通知を発しない限り、遅延した承
諾であっても承諾としての効力を有する。」
3.承諾は絶対的に無条件でなくてはならない
ほとんどの国では、オファーの承諾について「無条件的受諾」を要している。
しかし、「国際物品売買契約に関する国連条約」では、情況に応じて異なった
規定をしている。
「承諾の形をとった申込に対する回答が、付加的条件や異なった条件を含ん
でいても、申込の内容を実質的に変更するものでない場合には、申込者が不当
に遅滞することなくその相違に口頭で異議を述べ又はその旨の通知を発しな
い限り承諾となる。」
「付加的条件又は異なった条件であって、特に代金、支払、物品の品質及び
数量、引渡の場所及び時期、一方当事者の相手方に対する責任の限度、又は、
紛争の解決方法に関するものは、申込の内容を実質的に変更するものとして扱
う。」
17 貿易実務では、申込みと同じように承諾も「到達主義」を採るため撤回でき
る。承諾の撤回通知も承諾の効力が生じた時よりも前またはそれと同時に、申
込者に到達しなければならない。ただ、承諾が申込者に到達すれば、契約が成
立するので、申込みのような「取消し」の問題はない。
アクセプタンス(承諾)の文例
○○年○○月○○日
日本○○株式会社御中
中国○○○公司
当社製品の値引きについて
拝復 貴社ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、○月○日付貴信を拝見いたしました。値引きの件につきまして、弊社
も取引が円満に成立するように希望しており、今回は最初の出荷ということも
ございますので、お申し出通りの条件でお受けしたいと存じます。弊社の事情
もご賢察のうえ、今後とも一層のご配意をお願い申し上げます。
敬具
記
1.取引条件:FOB大連
2.製品:○○○
3.価格:輸出梱包を含む
1箱 10 着入り 8 万円
4.発注量:100 ケース
5.積期:2005 年 10 月
6.支払条件:成約後 10 日以内に取消不能のL/C開設
7.詳細条件:商慣習に従う。詳細文は、契約文に記載。
以上
到達主義と発信主義
申込・承諾の効力発生時期に関しては、国際取引上「到達主義」と「発信主
義」の二種類がある。到達主義とは通知が相手方に到達した時に効力が発生す
るものである。それに対して「発信主義」は発信者が相手方に通知を発した時
に効力が発生するものである。申込・承諾の効力発生時期に関する規定は国に
より違いがあるため、十分注意を払うことが必要である。「国際物品売買契約
18 に関する国連条約」では、「到達主義」を採用している。
第四節
契約の成立
一、契約の成立
1.契約の成立時期
以上にも述べたように、取引中一方のオファーに対して相手方が無条件に承
諾すれば、契約が成立する。契約の成立時期は、承諾の効力が生じた時と合致
する。
「国際物品売買契約に関する国連条約」では、
「契約は、申込みに対する
承諾が、この条約の規定に従って効力を生じた時に成立する」と規定している。
2.契約の成立方式
当事者双方が誠意をもって取引条件を交渉し、完全合意に達したときに契約
は成立するが、どういう形で成立するかが問題になる。
現代の契約法により、売買契約の成立については文書作成を必ずしも要して
いないため、契約は文書のほか口頭によっても成立する。口頭の場合、面談ま
たは電話による引合い或いはオファーなどによる交渉の結果、双方が無条件に
合意に達したときに契約が成立する。ただ、口頭契約の場合、紛争が起きたと
き挙証が困難であるため、国際取引中では避けたほうがよい。
3.売買契約の効力
売買契約は一般的に契約が成立した時から効力が生じるが、契約が成立して
も、それは必ずしも有効なものとはいえない。例えば、中国の契約法では、そ
の第 52 条で契約の無効について下記のように規定している。
「下記事項の一つがある場合、契約は無効である。
①一方が詐欺、強迫の手段で契約を締結し国家の利益を損なった場合
②悪意をもって共謀し、国家、団体、或いは第三者の利益を損なった場合
③合法的な形式で不法な目的を隠蔽した場合
④社会公共の利益を損なった場合
⑤法律、行政法規に違反した強制的規定がある場合
二、契約の内容
一般的には、売買契約書に主要取引条件と一般取引条件が記載される。
1.主要取引条件
売買契約書は通常、当事者の一方が二通作成し、署名後に相手方に送付し、
サインを求める。そして問題がなければ、相手方の署名後、双方が契約書を保
持する。一般的には、契約書の表面に取引として必須である主要取引条件が記
載されており、主として品質、数量、包装、価格、納期(受け渡し)、保険、
決済(支払い)などの項目を含む。
2.一般取引条件
売買契約書は表面と裏面で一体となっている。表面には、前述のとおり個々
の具体的な取引の明細が記載される。表面と異なり、売買契約書の裏面にはそ
れぞれの企業が独自に、裏面契約といわれる「一般取引条件」を予め刷りこん
19 でいる場合がほとんどである。一般取引条件の主な内容としては、次のような
ものがある。
①不可抗力の条項
②信用状発行に関すること
③貿易条件の解釈に関すること
④為替変動に関すること
⑤特許、商標、実用新案、意匠等工業所有権·知的所有権の不侵害について
⑥契約不履行時の処置
⑦品質保証について
⑧クレームの提起期間や通告方法の定め
⑨仲裁に関すること
⑩準拠法の規定など
一般取引条件はそれぞれの企業独自によって決められるため、相手方の契約
書フォームを使用する際、その一般取引条件の中に受諾できない項目があれば
直ちに相手方と交渉し、訂正すべきものは訂正しておかなければならない。
三、売買契約の立証書類
口頭契約は、売買双方が面談または電話などによって交渉し、合意に達せば
その場で契約が成立するため、まったく書類を用いない場合もある。その反対
に、書面契約をとる場合は、必ず何らかの書類を用いる。国際取引中、最も常
用される契約形式は輸出入契約書である。ただ、すべての取引で契約書を交換
するわけではないので、契約書以外の商業通信文書は文書そのものが契約全体
或いはその一部分を構成する。売買契約書については以上論述したので、省略
する。ここでは、「見積書」、「注文書」と「注文請書」を紹介する。
1.見積書(Quotation)
買主より引合いされたら、売主は見積もり作業に入るのが一般的である。見
積もりとは製品のコスト、利益、他の経費などを検討する作業で、それを記し
た書類が見積書である。見積もりは売主により行われるが、買主としては、取
引しようとする製品について売主に見積もりをしてもらうことができる。この
場合、買主より「見積もり依頼状」を出すことが多い。
2.注文書(Order Sheet )と注文請書(Acknowledgement Order)
注文書は、注文を書き記した書類のことで、買方より売方に出されるもので
ある。注文書に書き入れる内容は下記のとおりである。
①品名
②品質、規格
③単価
④単位
⑤数量
⑥決済通貨
⑦合計金額
⑧船積時期
⑨支払条件
⑩保険条件
⑪包装明細
⑫荷印
⑬カタログ番号 ⑭見本番号
⑮署名
⑯その他
実際の取引では、注文書を作成し注文書送り状をつけて送付する場合と、注
文書を作成せず合意された注文内容を整理して文書に記述し送付する場合が
ある。
注文請書は、売主が買主に送付するもので、買主の注文に従って受け入れた
旨を記す承諾書である。その内容は上述の注文書とほぼ同じである。
20 単語
売買契約(ばいばいけいやく)
当事者(とうじしゃ)
複数(ふくすう)
物品(ぶっぴん)
受け渡し(うけわたし)
オファー
承諾する(しょうだくする)
カウンター·オファー
合意(ごうい)
商談(しょうだん)
法令(ほうれい)
締結(ていけつ)
信用状(しんようじょう)
決済(けっさい)
為替(かわせ)
外国為替(がいこくかわせ)
為替予約(かわせよやく)
手配(てはい)
通関(つうかん)
船積(ふなづみ)
保税地域(ほぜいちいき)
申告(しんこく)
船名(せんめい)
船荷証券(ふなにしょうけん)
代金(だいきん)
取り揃える(とりそろえる)
開設(かいせつ)
依頼(いらい)
取引銀行(とりひきぎんこう)
税関(ぜいかん)
延滞料(えんたいりょう)
徴収(ちょうしゅう)
増値税(ぞうちぜい)
納付(のうふ)
口座(こうざ)
ニーズ
取引先(とりひきさき)
市場調査(しじょうちょうさ)
信用調査(しんようちょうさ)
購買力(こうばいりょく)
新聞社(しんぶんしゃ)
买卖合同、交易合同
当事人
复数、两种以上
物品、货物
收付、交接、交割
发盘、发价、报价
接受、应允
还盘、还价
同意、意思相符
洽谈、贸易谈判、磋商
法令、条例
缔结、订立
信用证
结算、结汇
汇兑、汇款、汇兑牌价
外汇
外汇合同
安排
通关
装船
保税区、关栈区
申报、呈报
船名
提单
货款
准备、备好
开立、开设
委托、依靠
往来银行、关系行、通汇行
海关
滞纳金、误期费
征收
增值税
缴纳、交纳
银行户头
需要、需求
客户、顾客
市场调查
信用调查、资信调查
购买力
报社
21 支店(してん)
分社、分店、分公司
代理店(だいりてん)
代理店
展示会(てんじかい)
展示会、展览会
商談会(しょうだんかい)
洽谈会
ブランド
牌子、品牌
イメージ
形象、印象
資本力(しほんりょく)
资力、财力
担保(たんぽ)
担保
信用照会(しんようしょうかい)信用咨询
財務状態(ざいむじょうたい) 财务状况
同業者(どうぎょうしゃ)
同行
照会する(しょうかいする)
照会、询问
外為法(がいためほう)
外汇法
中核(ちゅうかく)
核心、中心
申し入れ(もうしいれ)
提议、提出
選定する(せんていする)
选定
貴社(きしゃ)
贵公司
販路(はんろ)
销路
決算報告書(けっさんほうこくしょ) 决算报告
同封する(どうふうする)
付在信内
査収する(さしゅうする)
查收、验收
呈示する(ていじする)
提示、出示
送付する(そうふする)
寄送
申込み(もうしこみ)
要约 FAX/ファックス
传真
テレックス
电传
交渉(こうしょう)
交涉、谈判
品名(ひんめい)
品名、商品名称
品質(ひんしつ)
品质、商品质量
数量(すうりょう)
数量
包装(ほうそう)
包装
価格(かかく)
价格
保険(ほけん)
保险
売込み(うりこみ)
推销、出卖
引合い(ひきあい)
询价、询盘
問い合わせる(といあわせる) 打听、询问、照会
誘い(さそい)
劝诱、邀请
拘束力(こうそくりょく)
约束力
カラー
颜色
詳細(しょうさい)
详细
サンプル
样品
大手(おおて)
大企业、大公司
百貨店(ひゃっかてん)
百货商店
意思表示(いしひょうじ)
意思表示
22 満たす(みたす)
满足、填满、充满
拘束する(こうそくする)
拘束、限制
明示する(めいじする)
明示、写明
売りオファー(うりオファー) 卖方发价
買いオファー(かいオファー) 买方发价
到達主義(とうたつしゅぎ)
送达主义
営業所(えいぎょうしょ)
营业所
郵便送付先(ゆうびんそうふさき)邮政地址
撤回(てっかい)
撤回
取消し(とりけし)
撤销
被申込者(ひもうしこみしゃ) 受要约人、被发价人
発効する(はっこうする)
生效
無効(むこう)
无效
折衷的(せっちゅうてき)
折衷的
取消す(とりけす)
取消、撤销
取消不能(とりけしふのう)
不可撤销
信頼(しんらい)
信赖
弊社(へいしゃ)
弊公司
最低発注量(さいていはっちゅうりょう) 最低订货量
無条件(むじょうけん)
无条件
追求(ついきゅう)
追求
変更(へんこう)
变更、改变、更改
求める(もとめる)
寻求、要求
反対申込(はんたいもうしこみ)反要约
拒絶(きょぜつ)
拒绝
付加(ふか)
附加
制限(せいげん)
限制
回答(かいとう)
答复、回答
値引き(ねびき)
减价
単価(たんか)
单价
アクセプタンス
接受、应允
見なす(みなす)
看作、认为
代理人(だいりにん)
代理人
受諾する(じゅだくする)
同意、承诺
遅滞(ちたい)
迟延、拖延
発送する(はっそうする)
发送
失効する(しっこうする)
失去效力、失效
不当(ふとう)
不合理、不当、不妥当
出荷(しゅっか)
发货、出货、上市
発信主義(はっしんしゅぎ)
发信主义
合致する(がっちする)
一致、吻合、符合
作成する(さくせいする)
制作、做成
面談(めんだん)
面谈
挙証(きょしょう)
举证、举出证据
23 詐欺(さぎ)
欺诈、诈骗
強迫(きょうはく)
强迫、逼迫、威吓
損なう(そこなう)
损坏、毁坏、损伤
共謀する(きょうぼうする)
共谋、合谋
合法(ごうほう)
合法的
不法(ふほう)
不法、违法
隠蔽する(いんぺいする)
隐蔽、隐瞒
行政法規(ぎょうせいほうき) 行政法规
強制(きょうせい)
强制
主要取引条件(しゅようとりひきじょうけん) 主要交易条件
署名(しょめい)
署名
保持する(ほじする)
拿、持有、保持
表面(ひょうめん)
表面、正面
一般取引条件(いっぱんとりひきじょうけん) 一般交易条件
裏面(うらめん)
背面
明細(めいさい)
明细、详单、详细
刷り込む(すりこむ)
印上
不可抗力(ふかこうりょく)
不可抗力
特許(とっきょ)
专利、许可、特别许可
商標(しょうひょう)
商标
実用新案(じつようしんあん) 实用新型
意匠(いしょう)
外观设计、图案设计
工業所有権(こうぎょうしょゆうけん) 工业所有权
知的所有権(ちてきしょゆうけん) 知识产权
クレーム
索赔
仲裁(ちゅうさい)
仲裁
準拠法(じゅんきょほう)
准据法
フォーム
形式、格式
立証書類(りっしょうしょるい)佐证文件
見積書(みつもりしょ)
估价单、报价单
注文書(ちゅうもんしょ)
订单、订货单
注文請書(ちゅうもんうけしょ)订货确认书
通貨(つうか)
通货、流通的货币
荷印(にじるし)
发货标记、唛头
カタログ
商品目录
見本(みほん)
样品
24 第三章
商品の品質
数量
包装
ポイント
1.品質:品質決定 船積品質条件 陸揚品質条件
2.数量:数量単位 決定時点 過不足認容条件 引受可能数量条件
3.包装:個装 内装 外装 荷印 指示標識 警告標識
前章で述べたが、売買契約は申込みと承諾の合致で成り立つ。また、契約の
成立については口頭でも書面でも有効である。ただ、口頭のみの約束やファク
シミリなどのやりとりのみでは、不明確なことが多く、後に紛争になりやすい。
そこで、売買両者間で取引条件に関して合意に達してから契約書を交換するの
が一般的な方法である。契約書があれば、万一トラブルが生じても、証拠とな
り得るため、取引の安全性が高くなる。売買契約書の締結に必要な基本的条件
としては、品質条件、数量条件、包装条件、取引価格条件、決済条件及び船積
条件などがあり、本章では商品の品質、数量と包装について論じる。
第一節
品質
品質とは品物の性質で、主に品種、銘柄、性能、等級、色彩、大小といった
商品の内質と外形をいう。買主が気に入った商品を買うことを期待するのは当
然のことである。しかし、国際取引の場合、売主と買主は互いに異なる国にい
るため、買主は商品の品質を自ら確認することは難しい。もし契約書に商品の
品質を明白に規定していなければ、売主と買主の間にトラブルが発生しやすく
なる。実際に、商品の品質に関しては、品質の表示方法や決定時点などでよく
トラブルが生じるため、売主と買主の双方で十分に打ち合わせる必要がある。
一、品質決定の方法
商品の品質は直接的にその使用効能、販路、価格につながり、売主と買主双
方に重要視される。国際市場で取引される商品は多種多様であり、たとえ同種
の製品であっても、異なる企業によって生産されることで、品質上差異が生じ
ることが多い。そのため、売買契約に品質条件を明白に約束しておくことが重
要になってくる。
「国際物品売買契約に関する国連条約」に従えば、売主は契約どおりの品質
の貨物を買主に引き渡さなければならない。万一、売主が契約と一致しない貨
物を引き渡した場合、買主は「損害賠償」、
「代替物請求」、
「修補請求」または
「契約の解除」などの救済手段が与えられる。この点から、品質約款の重要性
がわかる。
品質の決定は、物品の性質、特徴及び国際取引の商慣習などによって定めら
れ、貿易実務でよく利用されるのは次の五つである。
1.見本売買(Sale by Sample)
取引では、買主が契約に先立って商品の品質を検査することは困難であるた
25 め、よく見本を使って契約商品の品質を保証する。見本は通常売主が提供する
が、買主が提供する場合もある。前者の場合は「売手見本(Seller’ Sample)」
と呼ばれ、後者は「買手見本(Buyer’Sample)」と呼ばれる。また、
「売手見本」
と「買手見本」のほかに、「反対見本(Counter Sample)」もあり、「反対見本」
とは、売手見本に買主が修正を加え、売主宛に送る見本を指す。見本売買によ
る取引は主に軽工業製品、繊維製品、雑貨などの取引に利用される。
見本売買では、見本と納品の不一致による紛争が多いので、売主は特にこの
点に留意しなければならない。また、クレーム対策の証拠となるため、取引が
完了しても、見本を保存しておく必要がある。
2.標準品売買(Sale by Standard Quality)
見本売買では現物と見本が一致しなければならないが、標準品売買では現物
と標準品がほぼ同一であればよいとされる。農産物、林産物、水産物、畜産物、
殻物、鉱産物など天産物の取引では、先物売買条件をとることが多く、見本と
現物の精確な一致が不可能なので、主として標準品売買の方式を利用する。
国際取引上、標準品売買により品質を決定する場合、「平均中等品質条件
(FAQ: Fair Average Quality)」と「適正品質条件(GMQ: Good Merchantable
Quality Terms )」の二種がある。平均中等品質条件とは、商品の中等品質の
ものを条件として取引基準を決める方法であり、農産物や殻物類の売買で常用
される。適正品質条件とは、取引上適切と認められる品質で売買条件を決める
方法で、主に木材など精確な見本取引が困難な場合に利用される。
3.銘柄売買(Sale by Trade Mark or Brand)
商標や銘柄が世界的に知られている場合、それらが品質を示す役割をし、そ
の商品の品質は高水準を誇っているので、貿易実務上、それをもって品質を示
し売買が行われ、すなわち銘柄売買のことである。
4.仕様書売買(Sale by Specification)
仕様書とは、複雑な設計を要する注文品の材質、構造、性能、耐久性などの
内容や図を記した書類である。仕様書を品質基準とする取引方法を仕様書売買
という。船舶、機械、プラントなど機械類の売買契約に仕様書売買がよく採用
される。
5.国際規格売買(Sale by Grade or Type)
国際的に規格が定められている商品(セメント、ネジ、鉄鋼、羊毛など)は
その規格に準じて品質を決定する。
国際的規格には、国際標準化機構(ISO: International Organization for
Standardization)の定めた ISO 規格がある。また、それぞれの国には公的規
定によって標準規格が定められている。例えば、日本では、日本工業規格(JIS)
や日本農林規格(JAS)、ドイツでは、ドイツ国家基準(DIN)などがある。
国際標準化機構
(ISO: International Organization for Standardization)
現在、国際取引を円滑化し、経済交流を促進するために国際規格による統一
化が課題になっている。このため ISO では、さまざまな規格を制定している。
その中で ISO9000 は品質管理規格であり、この規格を有する企業は品質管理の
優秀企業として認知される。また、ISO14000 は環境管理規格であり、この規
格を有する企業は環境に配慮する優良企業として認知され、貿易戦略上の商品
26 の品質保証とともに企業の信用保証と無形資産を得ることになる。
主要規格略号表
ISO: International Organization for Standardization
(国際標準化機構規格)
JIS: Japan Industrial Standard
(日本工業規格)
ASTM: American Society for Testing and Materials
(米国材料試験協会規格)
BS: British Standards
(英国標準規格)
DIN: Deutsches Institut für Normung(ドイツ工業品<標準>規格)
UL: Underwriters Laboratories
(米国安全規格)
ANS: American National Standards
(米国標準規格)
CSA: Canadian Standards Association (カナダ標準規格)
MIL: Military Specification and Standards(米国軍需規格)
SAE: Society of Automotive Engineers(自動車技術者協会規格)
NEMA: National Electrical Manufacturers Association
(米国電気製品製造業者協会規格)
二、品質決定の時点
国際取引中、仕向地に到達するまでに貨物は海上輸送などで相当の期日を要
するため、この間に、商品の品質が変わる可能性が高く、船積時点と陸揚時点
で品質格差が生じることが少なくない。特に、農水産物、原材料などの取引で
は、この問題が目立つ。これらの紛争を避けるために、品質を決める条件とし
て、売買契約に品質決定時点を明確に設定しておく必要がある。すなわち、品
質に関する最終決定を船積時点とするか、陸揚時点とするかを決めておかなけ
ればならない。
1.船積品質条件(Shipped Quality Terms)
船積品質条件とは商品の船積時における品質が、契約上の品質と同一でなけ
ればならないとする取引条件である。ばら積貨物は輸送中において品質が変化
する恐れが高いため、貿易実務ではよく船積品質条件が採用される。この場合、
売主は、第三者検査機関による品質検査を受け船積時の品質を証明すれば、船
積後品質が変わっても売主の契約違反とならない。
2.陸揚品質条件(Landed Quality Terms)
この条件を採用すれば、売主には、陸揚時の品質保証が義務づけられる。も
し、陸揚げされた物品の品質が売買契約に一致しなければ、買主は検査機関か
ら得た鑑定報告書によって売主に対して損害賠償を請求したり、強いては解約
することができる。
品質決定の時点について、売買契約に特約があれば、特約によって義務が定
められるが、特約がない場合は、採用された取引条件(Trade Terms)の原則
に従う。例えば、取引条件が CIF や FOB の場合は、売主は船積時点で品質を保
27 証し貨物を引き渡す義務がある。その反対に、売買契約が DEQ や DES の場合は
揚地品質条件となる。
品質に関する応用文例
●貴社の製品を調査しましたところ、その 4%以上に欠陥があることが判明い
たしました。今後は欠陥のない商品が全数量の 99%以上になるよう品質のチェ
ックを厳しくしていただきたいと存じます。
● 貴社のご要望にお応えできるように弊社製品の品質を改善いたしましたの
で、必ずやご満足いただけ、多くの注文に結びつくものと確信しておりま
す。
第二節
商品の数量
「国際物品売買契約に関する国連条約」に従い、契約で定めた数量の貨物を
引き渡すのが売主の基本義務である。もし売主がこの基本義務に違反した場合、
買主が損害賠償などの救済方法が与えられる。従って、契約書には数量条件を
正確に定めておく必要がある。
一、数量単位
数量は貨物の価格を計算する上で重要であるので、契約書に必ず明記しなけ
ればならない。国際取引では、商品の種類や性質、取引の慣習からさまざまな
計量方法が使われており。その中で、重量、容積、個数、包装単位、長さ、面
積などが最も多く利用される。
1.重量(Weight)
重量は国際取引において広く使われ、農水産物、鉱産物などの天産物、また
は金、銀などの貴重品は主として重量単位で数量を計算する。
重量単位には、キログラム(kg)、ポンド(ib)、オンス(oz)、トン(t)な
どがある。国によっては単位が同じでも、英トン、米トン、仏トンのように、
重さが異なるため、取引単位を再確認する必要がある。例:
英トン(ロング·トンとも言う)=2240 ポンド=1016 キログラム
米トン(ショート·トンとも言う)=2000 ポンド=907 キログラム
仏トン=2204.6 ポンド=1000 キログラム
2.容積(Measurement)
容積単位には、リットル(l)、ガロン(gal)などがあり、液体品、石油な
どの取引によく使われる。
3.個数(Piece)
個数には、個(Piece)、ダース(Dozen:12 個)、グロス(Gross:144 個)、セ
ット(Set)などがあり、工業製品、雑貨品、機械、部品などの取引によく使
われる。
28 4.包装単位(Package)
木箱(Case)
、梱(Bale)、袋(Bag)、束(Bundle)、ドラム缶(Drum)など
がある。
5.長さ(Length)
メートル(m)、ヤード(yd)などがある。繊維製品などの取引によく使われる。
6.面積(Square)
面積は皮革品、ガラス、タイルなどの取引によく使われ、平方メートル
(Square Meter)、平方フィート(Square Feet)、平方ヤード(Square Yard)
などがある。
二、数量決定時点
国際取引では売主が契約数量の貨物を買主に引き渡さなければならないが、
実際にはさまざまな原因で、契約数量の貨物を引き渡せない場合がある。これ
らの状況を考慮し、後にトラブルが起こらないように数量決定時点を明記して
おくのが一般的な方法である。取引上、数量決定時点の規定は主に次の二つの
方法がある。
1.船積数量条件(Shipped Weight Terms)
船積数量条件とは、船積時点で売買契約で定めた数量を保証し貨物を引き渡
すことである。つまり商品の船積時における数量が、契約の数量と同一でなけ
ればならないとする取引条件である。輸送中において数量が変化する恐れの高
い散積商品などにこの条件がよく採用される。船積数量条件を採用した場合、
輸送中の数量減少は買主の負担となる。
2.陸揚数量条件(Landed Weight Terms)
陸揚数量条件とは、陸揚地点で数量を保証することである。この数量条件を
採用した場合、輸送中に生じた数量減少は売主の負担となる。
契約に特約或いは特例の慣習がない限り、数量決定時点は前述の品質決定時
点と同様に貿易条件の原則に従うことになる。
三、数量過不足認容条件(More or Less Terms)
1.過不足
国際取引中、さまざまな原因で常に数量過不足の問題が生じる。重量や容積
を単位とする取引では、特にこの問題が著しい。従って契約商談の段階で数量
過不足認容条件を取り決め、合意しておく必要がある。
「数量過不足認容条件」
とは契約の際、一定範囲の過不足を容認することをあらかじめ取り決めておく
条件である。原料、穀物など運送中に減少が生じやすい貨物では、よくこの条
件が採用される。契約数量の貨物を引き渡すのは売主の基本義務であるが、数
量過不足認容条件を採用した場合、貨物に過不足が生じても、契約した範囲を
超えなければ、契約違反と見なされない。例えば、契約書に次のように規定す
る。
「5%以内の過不足は売主(または買主)の任意」
英語では、下記のようになる。
「5% more or less at seller’s (or buyer’s) opinion」
「荷為替信用状に関する統一規則」においてその第 39 条 b 項に数量過不足
の問題について下記のとおり規定している。
29 「信用状が明記された物品の数量に過不足があってはならないと定めてい
ないかぎり、5%を超えない過不足は許容される。ただし、使用金額が信用状
金額を超えないことを常に条件とする。この過不足は、信用状に包装単位また
は個数によって数量が明記されている時は適用されない。」
2.概数
契約に過不足認容条件を About や Approximately の概数で認めている場合は、
信用状統一規則第 39 条 a 項で「“About”“Circa”またはこれと類似の語は
10%を超えない過不足を許容しているものとして解釈される」と規定している
ため、過不足許容範囲の目安となるが、、数量条件については、About などの
ような漠然とした用語は問題が起きやすく、紛争を避けるためにはできるだけ
常に確定した数量を記載すべきである。
四、引受可能数量条件
引 受 可 能 数 量 条 件 に は 最 小 引 受 可 能 数 量 条 件 ( Minimum Quantity
Acceptable)と最大引受可能数量条件(Maximum Quantity Acceptable)があ
る。取引中、契約数量が増加するにつれて商品単価あたりの費用率が減少する
ため、一回あたりの注文量の最小限、つまり「最小引受可能数量」を決めてお
く必要がある。また、どの企業でも、生産能力に限界があり、納期などの関連
もあるため、それらを考慮に入れて「最大引受可能数量」を決定しておく必要
もある。
数量に関する応用文例
●本契約は数量に関し過不足認容条件に従うことをご了承ください。契約数量
の 5%増減の過不足を認めていただきますようお願いいたします。
●モデル第 423 番の銅板を 200 トン仕入れたく存じます。つきましては、見積
書をご送付くださいますようお願い申し上げます。5 月にその数量が船積され
ることを確約いただければ、今後とも定期的にご注文できる見込みでございま
す。
第三節 包装(Packaging)
包装とは物品の輸送、保管などにあたって価値および状態を保護するために
適切な材料、容器などを物品に施すことをいう。包装には保護性、便利性、経
済性、衛生性など特定の機能が必ず要求される。包装問題は主要取引条件のひ
とつである。国際取引中、売主は契約どおりに商品を包装しなければ、買主が
貨物を拒否したり、損害賠償を請求したりする可能性があるため、注意を払わ
なければならない。
一、包装の種類
30 国際取引において、商品の種類は多く、品質や特徴も多様であるので、包装
に対する要求もさまざまである。一般的には、包装は個装(Unitary Packing)、
内装(Inner Packing)および外装(Outer Packing)の3種に分けられる。
個装とは、物品個々の包装をいい、商品を保護するだけではなく、商品は最
終的に消費者に届くため、色彩やデザインにも工夫をし、商品の価値を高め、
販売促進に役立つようにしなければならない。内装は包装貨物の内部の包装で
あり、物品に対する湿気、光熱、衝撃などを考慮し、適切な材料や容器などを
物品に施さなければならない。外装は包装貨物の外部の包装で、輸送包装
(Transport Packing)とも呼ばれる。商品の安全を保護し、貨物の保管、積卸
しの利便を図るのが外装の主な働きである。また、輸送包装には、個品包装
(Single Package)と集合包装(Assembled Package)の二種類がある。個品包
装とは、運送中の貨物をひとつの計算単位として施す包装のことで、箱(Cases)、
桶(Drams)、袋(Bags)などが常用される。集合包装には、トレー(Tray)、コン
テナ(Container)、コンテナバッグ(Flexible Container Bag)などが常用さ
れる。
国際取引では、すべての商品が包装されて輸送されるというわけではなく、
一部の貨物は裸荷(Nude Packed)や、ばら荷(In Bulk)という形で輸送され
る。例えば、輸送技術の進歩に伴い、食糧品、石油などの貨物はばら荷の形を
とるようになったことで、輸送におけるコストを減らすことができるばかりで
はなく、輸送スピードも速くになってきた。また、車両、鋼材、木材などの貨
物では、覆いや縄を掛けて梱包するだけで輸送される裸荷という形をとる場合
も多い。
二、包装の標識(Mark)
商品の識別、検査、輸送や通関のために、商品の外装に標識をつけるのが一
般的な方法である。包装標識はその用途から、
「荷印(Shipping Mark)」
「指示
標識(Indicative Mark)」「警告標識(Warning Mark)」に分けられる。
1.荷印(シッピング・マーク)
荷印は荷物発送のとき、包装につける符号である。外装には、仕向地、個数
など他の貨物との混同を避け、運送人や荷受人の識別を容易にするための荷印
を刷り込むのが慣習となっている。
荷印に関する規定は国や地域によって大きく異なるので、国際取引において
不便をもたらすことがある。国際標準化機構(ISO)はこのような状況を考慮
し、荷印の簡素化を目指し、荷印の内容について基本的な 4 項目を勧めている。
①バイヤーの名称(略称)
②契約番号または注文番号
③仕向地(Port Mark)
④貨物の梱包ケース番号
下図は荷印の例である。
ABCCO
バイヤーの名称
SC9750
契約番号
LONDON
仕向港
No.4—20
件号(順番と総数)
2.指示標識
31 国際取引で取り扱う物は多種多様で、壊れやすい、水濡れ防止など取引物は
それぞれ独自の特質を持っているため、輸送中において十分注意を払わなけれ
ばならない。指示標識は貨物の積み卸し、保管、運送中の注意事項を指示する
標識である。たとえば、日本では包装貨物の荷扱いについて下記のような指示
標識を規定している。
番
号
指示/情報
指示標識
指示内容
包装貨物の中身は壊れやすい。
そのため、注意して取り扱わね
ばならない。
壊れもの
1
(FRAGILE)
2
手かぎ禁止
(USE NO HAND HOOKS)
包装貨物を取り扱う際、手かぎ
の使用を禁止する。
3
上
(THIS WAY UP)
包装貨物の正しい上向き位置
を示す。
直射日光遮へい
4 (KEEP AWAY FROM
SUNLIGHT)
包装貨物を直射日光にさらし
てはならない。
放射線防護
5 (PROTECT FROM
RADIOACTIVE SOURCES)
包装の中身が、放射線の透過に
よって劣化するか、全く使用で
きなくなる。
6
水ぬれ防止
(KEEP AWAY FROM RAIN)
包装貨物が雨にあたらないよ
うにしなければならない。
包装貨物が一つのユニットと
して取り扱われるときの重心
位置を示す。
重心位置
7
(CENTER OF GRAVITY)
32 8
転がし禁止
(DO NOT ROLL)
包装貨物を転がしてはならな
い。
3.警告標識
化学品、爆発物など危険性の高い貨物の外装に安全注意のため付けられる標
識を警告標識と呼ぶ。例えば、中国では、下記のようなものが規定されている。
包装に関する応用文例
●この商品は海上運送中に湿る可能性がありますので、各反物は油紙に包み、
亜鉛張りの箱に入れていただきたく存じます。包装には最善の注意を払ってく
ださいますようお願い申し上げます。
●各商品を頑丈な段ボール箱に入れ、全長2メートル以内の木枠で包んでいた
だきたく存じます。弊社依頼通りの包装方法をとっていただいた際には、必ず
包装明細書にその旨を記載してくださいますようお願い申し上げます。
● 商品はご満足いただけるように最善の注意を払い包装いたしました。品物
が安全に到着いたしましたら、ご連絡くださいますようお願い申し上げま
す。
単語:
ファクシミリ
性質(せいしつ)
品種(ひんしゅ)
銘柄(めいがら)
性能(せいのう)
等級(とうきゅう)
色彩(しきさい)
大小(だいしょう)
外形(がいけい)
異なる(ことなる)
自ら(みずから)
繋がる(つながる)
传真
性质
品种
品牌、牌子、品种
性能
等级
色彩
大小
外形、外表
不同
亲自、亲身
联系、有牵连
33 多種多様(たしゅたよう)
多种多样
引き渡す(ひきわたす)
交给、提交
損害賠償(そんがいばいしょう) 损害赔偿
代替物(だいたいぶつ)
代替物、替代品
修補(しゅうほ)
修补、修理
解除(かいじょ)
解除
救済(きゅうさい)
救济
見本売買(みほんばいばい)
凭样品交易、凭样买卖
先立つ(さきだつ)
事先、在……之前
保証(ほしょう)
保证、担保
提供(ていきょう)
供给、提供
売手見本(うりてみほん)
卖方样品
買手見本(かいてみほん)
买方样品
反対見本(はんたいみほん)
对等样品、回样
修正(しゅうせい)
修改、改正、修正
類似する(るいじする)
类似、相似
軽工業(けいこうぎょう)
轻工业
繊維(せんい)
纤维
雑貨(ざっか)
杂货
納品(のうひん)
交货、缴纳的货物
標準品売買(ひょうじゅんひんばいばい)凭标准买卖
現物(げんぶつ)
现货、实物
畜産物(ちくさんぶつ)
畜产品
鉱産物(こうさんぶつ)
矿物
殻物(こくもつ)
谷物、粮食
先物(さきもの)
期货
平均中等品質条件(へいきんちゅうとうひんしつじょうけん )
良好平均品质、平均中等品质
適正品質条件(てきせいひんしつじょうけん)上好可销品质
銘柄売買(めいがらばいばい)
凭品牌买卖
仕様書売買(しようしょばいばい)凭说明书和图样买卖
設計(せっけい)
设计
材質(ざいしつ)
质料、质地
耐久性(たいきゅうせい)
耐久性
船舶(せんぱく)
船只、船舶
機械(きかい)
机械
プラント
成套设备
規格売買(きかくばいばい)
凭规格买卖
セメント
水泥
ネジ
螺丝、螺栓
鉄鋼(てっこう)
钢铁
羊毛(ようもう)
羊毛
準じる(じゅんじる)
依据、依照
国際標準化機構(こくさいひょうじゅんかきこう) 国际标准化组织
34 仕向地(しむけち)
目的地
陸揚げ(りくあげ)
卸货
格差(かくさ)
差别、差距
設定する(せっていする)
设置、设定
船積品質条件(ふなづみひんしつじょうけん) 装船品质条件
散積み(ばらづみ)
散装、散载
契約違反(けいやくいはん)
违反合同
陸揚品質条件(りくあげひんしつじょうけん) 到货品质条件、到岸品质条件
鑑定報告書(かんていほうこくしょ)鉴定报告
特約(とくやく)
特约、特别约定
船積書類(ふなづみしょるい)
装运单证、装船单据
添付する(てんぷする)
添上、附上
欠陥(けっかん)
缺陷
判明する(はんめいする)
判明、清晰、清楚
明記する(めいきする)
明确记载、写清楚
計量(けいりょう)
计量、测量
容積(ようせき)
容积、体积
個数(こすう)
个数、件数
包装単位(ほうそうたんい)
包装单位
貴重品(きちょうひん)
贵重物品
キログラム
千克、公斤
ポンド
磅
オンス
盎司
ロング·トン
长吨
ショート·トン
短吨
リットル
升
ガロン
加仑
液体品(えきたいひん)
液体物
石油(せきゆ)
石油
ダース
打(12 个)
グロス
罗(12 打)
セット
一组、一套、一副
工業製品(こうぎょうせいひん) 工业制品
部品(ぶひん)
零件、部件
木箱(きばこ)
木箱
梱(こり)
捆、件
袋(ふくろ)
袋
束(たば)
把、捆
ドラム缶(ドラムかん)
圆桶
ヤード
码
皮革品(ひかくひん)
皮革制品
タイル
瓷砖
フィート
英尺
船積数量条件(ふなづみすうりょうじょうけん)以装船数量(重量)为准条件
35 陸揚数量条件(りくあげすうりょうじょうけん)以卸货数量(重量)为准条件
過不足認容条件(かふそくにんようじょうけん) 溢短装条款
取り決める(とりきめる)
决定、规定、商定
任意(にんい)
任意、随便、随意
許容する(きょようする)
容许、允许
適用する(てきようする)
适用、应用
概数(がいすう)
约数
目安(めやす)
标准、目标
漠然(ばくぜん)
含混、不明确
注文量(ちゅうもんりょう)
订购数量
最小限(さいしょうげん)
最小限度
限界(げんかい)
限度、极限
納期(のうき)
交付期、交货期
増減(ぞうげん)
增减
認める(みとめる)
认为、承认
緊急(きんきゅう)
紧急
最善(さいぜん)
最好
確約する(かくやくする)
约定、保证
定期(ていき)
定期
買い付け(かいつけ)
收购、买进
輸送(ゆそう)
运输
保管(ほかん)
保存、保管
価値(かち)
价值
適切(てきせつ)
适当、恰当
材料(ざいりょう)
材料
容器(ようき)
容器、器皿
施す(ほどこす)
施、施行
衛生(えいせい)
卫生
拒否する(きょひする)
拒绝、否决
油断する(ゆだんする)
疏忽大意
個装(こそう)
单件包装
内装(ないそう)
内包装
外装(がいそう)
外包装
輸送包装(ゆそうほうそう)
运输包装
デザイン
图案、设计、构思
湿気(しっき/しっけ)
湿气
衝撃(しょうげき)
冲击、冲撞
積み卸し(つみおろし)
装货和卸货、装卸
箱(はこ)
箱
桶(おけ)
桶
トレー
托盘
コンテナ
集装箱
コンテナバッグ
集装袋、集装包
裸荷(はだかに)
裸装货
36 ばら荷(ばらに)
散装、散装货
食糧品(しょくりょうひん)
粮食
車両(しゃりょう)
车辆
鋼材(こうざい)
钢材
覆い(おおい)
罩子、覆盖物、遮蔽物
縄(なわ)
绳、绳索
梱包する(こんぽうする)
打包、包装
標識(ひょうしき)
标记、标识、标志
識別(しきべつ)
识别
荷印(にじるし) / シッピング・マーク 发货标 志、唛 头
指示標識(しじひょうしき)
指示标志
警告標識(けいこくひょうしき) 警告标志
発送(はっそう)
发送、寄送、送出
混同(こんどう)
混同、混淆
運送人(うんそうにん)
承运人
荷受人(にうけにん)
收货人
バイヤー
买方、买家
取り扱う(とりあつかう)
办理、处理
荷扱い(にあつかい)
办理货物、装卸
壊れもの(こわれもの)
易碎物品
手鉤禁止(てかぎきんし)
禁用搭钩
放射線(ほうしゃせん)
射线、放射线
水濡れ(みずぬれ)
水湿
油紙(ゆし/あぶらがみ)
油纸
亜鉛(あえん)
锌、镀锌薄铁皮、白铁皮
旨(むね)
意思、意旨
37 第四章
1. 2.
3.
4. 価格条件
ポイント 取引条件:13 種類の価格条件 売買双方の義務
CIF、CFR と FOB との関係式
貿易上の計算:損益額 損益率 輸出商品の外貨兌換コスト
外貨兌換比率
コミッション、ディスカウントの算出
第一節
貿易慣習の発達の歴史
異民族との貿易の歴史は古く、西暦紀元前のフェニキアを中心とする地中海
沿岸諸国間の交易まで遡る。
その当時は、貿易商が荷物を運ぶ外航船の所有者であると同時に、貿易貨物
の所有者で、各貿易港(輸入港)でその土地の商慣習法に基づいた取引を行っ
ていた。そのうち各輸入港の商慣習に共通化が見られ、ローマ法時代の訴訟手
続きの制定、さらにイタリアのギルド組織の商慣習法がヨーロッパ大陸諸国に
普及した。 12 世紀から 14 世紀まで、フランスの北東部でイタリアが大陸諸国の商事紛
争を裁判していたが、その頃、英国でも判例法が芽生えた。16 世紀には、ス
ペイン、ポルトガル、英国が世界の海を制したが、18 世紀後半の産業革命後、
貿易海運が分離し始め、19 世紀に入り、現在の貿易慣習の基礎が作られた。 19 世紀に入り、交通、通信手段が発達し、契約の自由の原則も確立され、
運送業、保険業、金融業、貿易業などの各機関の分業化が行われた。ヨーロッ
パ大陸諸国に近代的統一国家が成立した時代である。各国は法体系を整備し、
国際契約の成立、履行、支払、紛争、仲裁、執行などの解釈が確立した。 FOB、CIF 貨物の所有権の移転は 19 世紀に確立したもので、1936 年にはイ
ンコタームズが制定され、現在に至っている。
第二節
インコタームズ
一、インコタームズ及び類型
インコタームズ(International Commercial Terms)とは、国際商業会議所(ICC) が輸出入取引に関して、定型的な取引条件、特に当事者間の費用負担の限界と
リスク負担の限界を定めた「貿易条件の解釈に関する国際ルール」である。1939
年に始めて定型的な貿易取引条件を取り決め、その後、1953 年、1967 年、1976
年、1980 年、1990 年、2000 年に修正、追加、改定が行われ、国際的商慣習(イ
ンコタームズ)として規定している。
これは、取引契約において貨物取引の場所、リスクの移転、所有権の移転、
運送の手配と運賃の負担区分、保険の手配と保険料の負担区分、輸出入の通関
38 手続きと税関の負担及びその他の経費負担などについて、売主と買主がどのよ
うに負担すべきかを国際的な統一ルールとして取り決めており、4類型 13 パ
ターンに分類している。(以下参照)
▲ E 類型:出荷地
EXW Ex Works(...named place)
工場渡し条件(指定地)
▲ F 類型:積み地
FCA Free Carrier(...named place)
FAS
運送人渡し条件(指定地)
Free Alongside Ship ( ...named port of
船側渡し条件(指定船積港)
shipment)
FOB Free On Board(...named port of shipment) 本船渡し条件(指定船積港)
▲ C 類型:F 類型+運賃(+保険料)
CFR
Cost and Freight ( ...named port of
運賃込条件(指定仕向港)
destination)
CIF
Cost, Insurance and Freight(...named 運賃保険料込条件(指定仕
port of destination)
向港)
CPT
Carriage Paid
destination)
CIP
Carriage and Insurance Paid To(...named 輸送費保険料込条件(指定
port of destination)
仕向港)
To(...named
port
of
輸送費込条件(指定仕向港)
▲ D 類型:揚げ地
DAF Delivered At Frontier(...named place)
国境持込渡し条件(指定地)
DES
Delivered Ex
destination)
Ship(...named
port
of 本船持込渡し条件(指定仕
向港)
DEQ
Delivered Ex
destination)
Quay(...named
port
of 埠頭持込渡し条件(指定仕
向港)
DDU
Delivered Duty Unpaid(...named port of 関税抜き持込渡し条件(指
destination)
定仕向港)
DDP DDP: Delivered Duty Paid(…named place of 仕向地持込渡し、関税込条
destination) 件(指定仕向地)
2000 年、インコタームズの改定より、売主と買主の合意によって電子デー
タ交換(EDI)システムによる電子メッセージで船荷証券をはじめ船積書類を代
替することが出来るようになった。コンテナにより輸送期間が大幅に短縮され、
B/L 到着前に貨物が到着することが多くなり、B/L 未着による貨物の引き取り
の支障、あるいは貨物を海上輸送中に売却したいなどの問題を解決するため、
39 EDI メッセージで船積書類を代替し、取引を迅速に出来るようになった。
また、コンテナ輸送、複合一貫輸送、近距離海上輸送における道路輸送車輌
や鉄道貨車を用いた RO/RO 輸送、航空輸送などの実態に合わせ、これらの輸送
に対応できるように、FCA などの記号を制定した。
二、インコタームズの共通解釈
インコタームズは、A 売主と B 買主の責任と義務を 10 項目に区分しており、
以下の共通事項がある。
A 売主の義務
B 買主の義務
A1:契約に合致した物品の提供
A2:許可認可及び手続き
A3:運送及び保険契約
A4:引渡し
A5:リスクの移転
A6:費用の分担
A7:買主への通知
A8:引渡しの証拠、運送書類
A9:検査―包装―荷印
A10:その他の義務
B1:代金の支払い義務
B2:許可認可及び手続き
B3:運送及び保険契約
B4:引渡しの受け取り
B5:リスクの移転
B6:費用の分担
B7:売主への通知
B8:引渡しの証拠、運送書類
B9:物品の検査
B10:その他の義務
三、インコタームズの取引条件
1. EXW: Ex Works(…named place)工場渡し条件
EXW は、売主の営業所(工場、作業所、倉庫等)で適正な輸出梱包をし、荷
印などを付し、貨物を買主に引き渡せる状態で、運送人に引き渡したときにリ
スクが移転する。リスク移転時点以後の運賃及び保険その他一切の費用は買主
が負担する。
2.FCA: Free Carrier(…named place)運送人渡し条件
FCA のリスクは運送人に貨物が引き渡された時点で売主から買主に移転す
る。売主は、輸出通関を行い、運送人に引き渡す義務がある。リスク移転後の
運賃、保険、その他一切の費用は買主が負担する。
この取引条件は、複合一貫輸送を含めて,あらゆる輸送形態に適用できる。
運送人とは、鉄道、道路、海上、航空、内陸水路輸送、または、これらの輸
送形態の結合による複合一貫輸送を履行する者、またそれを手配する者を言う。
輸出者の費用負担とリスク負担の限界は、貨物がこうした運送人または運送手
配人の管理下に置かれた時点である。
3.FAS: Free Alongside Ship(…named port of shipment)船側渡し条件
FAS は両当事者が合意した輸出港で、輸入者が指定した船舶の船側に、埠頭
または艀船に輸出者が貨物をつけた時点で、輸出者の貨物引渡しが完了する。
輸出者の費用とリスク負担の限界は本船船側までである。
2000 年に改定されたインコタームズでは売主が輸出入認可及び通関手続き
を行う義務があると規定している。
FAS は海上輸送または内陸水路輸送にのみ適用できる。
40 4.FOB: Free on Board(…named shipment)本船渡し条件
FOB は、輸出者が指定した船積み港で、輸入者が指定した船舶輸出者が貨物
を船積みし、その貨物が本船の手すりを越えたとき、輸出者が引き渡しが完了
したことを意味する取引条件である。売主が輸出許可及び輸出通関手続きを行
う義務がある。輸出者の費用負担の限界は本船の積込費用までであり、リスク
負担の限界は輸出港の本船の手すりまでである。
FOB は海上輸送または内陸水路輸送にのみ適用できる。
RO/RO 輸送やコンテナのように、本船の手すりが取引実務上の役立たない時
は、FCA を適用するほうが適切である。
5.CFR(旧 C&F)Cost and Freight(…named port to destination)運賃込
み条件
CFR のリスクの移転時点及び輸出の許可ならびに輸出通関手続きは FOB と同
じである。ただし、売主は指定仕向港までの運賃を負担する。保険の負担区分
は FOB と同じである。
RO/RO 輸送やコンテナのように、本船の手すりが取引実務上役立たない時は、
CPT を適用するほうが適切である。
6.CIF: Cost, Insurance and Freight(…named port of destination)運賃
保険料込み条件
CIF のリスクの移転時点は FOB と同じである。FOB に海上運賃と海上保険を
加算した取引条件である。買主または被保険利益を有する者が保険会社に対し
て直接求償できる条件を売主が付保し、保険証券などを提供する必要がある。
最低の保険金額は、売買契約 CIF 金額での 10%増を契約表示通貨で付保する。
10%増付保するのは輸入業者の利益を確保するためである。
RO/RO 輸送やコンテナのように、本船の手すりが取引実務上役立たない時は、
CIP を適用するほうが適切である。
7.CPT: Carriage Paid to(…named place of destination)運送費込み条件
CPT のリスクは輸入者が指定した場所または地点で運送人に貨物が引き渡
された時点で売主から買主に移転する。輸出者が仕向地までの運賃を負担する。
輸出者の引渡し義務はその運送人または運送を手配することを約束した者に
貨物を引き渡した時点で完了したことになる。運送人とは、鉄道、道路、海上、
航空、内陸水路輸送またはこれらの輸送形態の結合による複合一貫輸送を履行
する者、またそれを手配する者を指す。
8.CIP: Carriage and Insurance Paid to(…named place of destination)
運送費保険料込み条件
CIP は輸送費のほかに、輸入者が指定した場所、または地点までの保険を輸
出者が手配し、保険料を負担する。輸出者の費用負担の限界は輸入者の指定場
所または地点までで、危険負担の限界は運送人に引き渡した地点となる。
9.DAF: Delivered at Frontier(…named place)国境持込み条件
DAF は陸続きの国境の指定された地点または場所で、輸出者が輸入者に貨物
を引き渡すことにより、引渡し義務が完了するというものである。輸出者は輸
出承認の取得及び輸出通関手続きを行う義務がある。輸出者の費用負担とリス
ク負担は国境の指定された地点までである。
この条件は、鉄道またはトラックによる道路輸送をする場合に適用される。
仕向港において行われる場合は DES または DEQ を適用すべきである。
41 10.DES: Delivered Ex Ship(…named port of destination)本船持込み条
件
DES のリスクは指定仕向港における本船船上で買主に移転する。リスク移転
時点までの運賃と保険は売主が負担し、リスク移転後のすべての費用は買主の
負担である。
売主は輸出許可及び輸出通関手続き、その他の国を通過するのに必要な一切
の通関手続きを行う必要があり、買主は輸入国に関する輸入の許可と通関手続
きを行う義務がある。
11.DEQ: Delivered Ex Quay(…named port of destination)埠頭持込み条
件
DEQ のリスクは指定仕向港の埠頭において移転する。売主が指定仕向港まで
の運賃及び保険を負担し、リスク移転後のそれらの経費及び一切の費用は買主
が負担する。
売主は輸出許可及び輸出通関手続き、その他の国を通過するのに必要な一切
の通関手続きを行う必要があり、買主は輸入国に関する輸入の許可と通関手続
きを行う義務がある。
輸入貨物が埠頭から他の場所に移される場合は、そのリスクと費用を売主の
負担にする DDU または DDP 条件を適用すべきである。
12.DDU: Delivered Duty Unpaid(…named place of destination)仕向地持
込み渡し条件(関税抜き)
DDU は輸出者のリスク負担の限界を DES や DEQ よりもさらに延長したもので、
輸入国内の指定場所で荷物を輸入者に引き渡して、引渡し義務を完了する。
売主は輸出許可及び通関手続きおよびその他の国を通過するのに必要な一
切の通関手続きを行い、買主は輸入国に関する輸入の許可と通関手続きを行い、
関税を支払う義務がある。
この取引条件は、売主が輸入通関を行わず、また関税を支払わないで、仕向
国内で貨物を引き渡す条件である。運送手段の制限はない。
13.DDP: Delivered Duty Paid(…named place of destination)仕向地持込
み渡し条件(関税込み)
DDP のリスクの限界は DDU と同じである。異なる点は輸入の許可及び通関手
続きを売主が行い、関税などの費用を負担する義務があるという点である。運
送手段の制限はない。
EXW が輸出者が負担する義務が最小であるのに対し、DDP は最大の義務を負
担する。
42 四、改正アメリカ貿易定義
貿易取引条件に関しては、国々の法規、判例、商慣習によりその解釈に相違
があることがある。アメリカには 1919 年に制定された独自の貿易に関する規
定があったが、1941 年にこれが改正された。
「改正アメリカ貿易定義」
(Revised
American Foreign Trade Definitions,1941)と言われ、アメリカ国内で取引
条件用語を統一している規則である。
この改正アメリカ貿易定義には、6 種類の貿易条件が制定されている。
(1)現地渡し(Ex point of origin)
(2)船側渡し(FAS)
(3)運賃込み(C&F)
(4)運賃保険料込み(CIF)
(5)埠頭渡し(Ex Dock)
(6)FOB(6 種類)インコタームズの FOB(e)に相当するアメリカの FOB 取引
条件は「FOB Vessel(named port of shipment)」である。
それ以外 5 種類の FOB は港での引き渡しではなく、アメリカ国内の出荷地に
おける国内指定地点での引渡しを想定している。FOB(a)、FOB(b)、 FOB(c)、
FOB(d)はインコタームズの FCA(Free Carrier)に相当する。FOB(f)はインコタ
ームズの DEQ、DDU、DDP に相当する。
従って、アメリカと取引する場合には、この点に留意し、貿易条件の混乱を
避けるため、輸出入契約の一般取引条件に「インコタームズ 2000 適用」など
43 明示すべきである。
事例:
アメリカのある輸出商社がイタリアの輸入商と CIF 建ての輸出契約を結ん
だが、貸物を積んだ船舶が海上で遭難し、目的港以外で積荷および船体を担保
で修理した。目的港に到着したものの船主が修理費を支払えなかったため、修
理業者は積荷および船体を競売して修理費を回収、輸入業者は貸物を引き取れ
なかった。
輸入業者は、すでに船積書類と引替えに貸物代金を支払い済みなので、アメ
リカの裁判所に貸物代金の返還訴訟を提訴した。
アメリカ裁判所は、「輸出者は、目的港に向け出港する船に貸物を積むこと
を約束したので貨物の所有権と危険は輸出港の船上で輸入者に移る」という判
決を下し、出港後の事故に対して輸出者の責任はないとして、訴えを退けた
五、CIF、CFR と FOB の関係式
CIF 価格、CFR 価格と FOB 価格の関係式は次の通り組み立てられる。
海上運賃 Ocean Freight は F と略する
海上保険 Marine Insurance は I と略するが、保険金額は通常、CIF 価格に
希望利益 10%を加算して保険をつける。
CFR=FOB+F
FOB=CFR―F
CIF=FOB+F+I
FOB=CIF―F―I
CFR=CIF×[1-保険料率×(1+超過保険率)]
FOB=CIF×[1-保険料率×(1+超過保険率)]-F
CIF=(FOB+F)/[1-保険料率×(1+超過保険率)]
CIF=CFR/[1-保険料率×(1+超過保険率)]
六、契約書における取引条件の表記方法
US$100per KG.C.I.F.Yokohama.
US$100per KG.F.O.B.Tianjing.
第三節 輸出損益率などの算出方法
一、輸出損益率の計算
取引をする際には、前もって損益を計算する。貿易会社は一般的に、輸出商
品の損益率、外貨の兌換コスト、外貨兌換の比率などを計算し、その数字で、
黒字化赤字化を判断する。
1.輸出商品の損益額
輸出商品の損益額=輸出商品販売の正味価格(人民元)―輸出商品の原価
出口商品的盈亏额=出口销售人民币净收入-出口总成本
例:ある商品の輸出総金額は 8000 ドル、運賃は 300 ドル、商品の購入原価
44 は 53000 人民元、当日の為替レート 1 ドルを 8.05 人民元とすると、この商品
の損益額はいくになるか。
(8000 ドル-300 ドル)×8.05 元-53000 人民元=8985 人民元
この商品の輸出後の利益は 8985 人民元である。
2.輸出商品の損益率
輸出商品の損益率
=(輸出商品販売の純総収入人民元―商品の価格―諸経費)÷輸出総
金額(人民元)×100%
出口商品盈亏率=(出口销售人民币净收入—出口总成本)÷出口总成本×100%
例:ある商品の輸出総金額は 8000 ドル、商品の購入原価は 54500 人民元、
当日の為替レート 1 ドルを 8.05 人民元とすると、この商品の損益率はいくら
になるか。
(8000 ドル×8.05-54500 人民元)÷54500 人民元=18%
この商品の輸出損益率は 18%である。
3.輸出商品の外貨兌換コスト
輸出商品の外貨兌換コスト=輸出総金額(人民元)÷輸出商品の外貨収
入(ドル)
出口商品换汇成本=出口总成本÷出口销售外汇净收入(美圆)
例:ある商品の輸出総金額は 8000 ドル、航空運賃は 305 ドル、商品の購入
原価は 54500 人民元、諸経費は 2220 人民元とすると、この商品の外貨兌換コ
ストはいくらになるか。
(54500 人民元+2220 人民元)÷(8000 ドル-305 ドル)
=7.37 人民元/ドル
この商品の外貨兌換コストは 7.37 人民元/ドルである。
4.原料輸入、商品輸出の場合の外貨収益率
商品輸出の外貨収益率=(商品輸出の外貨収益―原料輸入の外貨金額)
÷原料輸入の外貨金額×100%
出口创汇率=(成品出口外汇净收入-原料外汇成本)÷原料外汇成本×100%
例:ある商品は原料を輸入してで生産する。輸入原料は 6300 ドル、輸出総
金額は 7500 ドルとすると、この商品の輸出後の外貨収益率はいくらになるか。
(7500 ドル-6300 ドル)÷6300 ドル×100%=19%
この商品の外貨収益率は 19%である。
二、コミッション、ディスカウントの算出
1.コミッション
コミッションとは、売主が一定金額の手数料を仲介人や買主に支払うことで
ある。コミッションを契約書に明記する場合と明記しない場合がある。コミ
ッション込み金額の計算方法は次の通りである
コミッション込み金額=正味価格÷(1-コミッション率)
含佣价=净价÷(1-佣金率)
45 例:正味価格は US$97.00、コミッション率 は 3%、どのようにオファーする
か。
コミッション込み値段=97.00 ドル÷(1-3%)
=100.00 ドル
契約書におけるコミッションの表記方法:U.S.$100.00per Doz.C.I.F.C3%
London.
2.ディスカウント
ディスカウントとは売主が買主に一定金額の割引をすることである。ディス
カウント金額は次の通り計算する。
ディスカウント金額=総金額×ディスカウント率
折扣金额=发票金额×折扣率
例:インボイスの総金額は 10,000 ドル、ディスカウント率 5%とすると、
ディスカウント金額はどのように計算するか
ディスカウント金額=10,000 ドル×5%
=500 ドル
契約書におけるディスカウントの表記方法:U.S.$100per KG F.O.B. London
Less discount 5%.
第四節
価格政策
一、価格政策
わが国は輸出入商品の価格を制定するとき、「公平、合理」の政策を取って
いる。そして、国際市場の類似商品の価格を考慮し、相手国、地区の政策に、
購入及び販売の意図を考慮して、価格を制定する原則を守っている。
新製品を外国へ売り込む場合には、まず、外国における最終販売価格が設定
されなくてはならない。外国の市場に同類商品が出回っていない独創な新製品
の場合には、できるだけ上層吸収価格政策をとるべきである。これは類似商品
が出回る以前に、高価格を設定して市場の上層階級を吸収し、将来の価格競争
に備える政策である。
その販売しようとする商品の受け入れに抵抗が予想されたり、あるいは類似
品が早期に出回ると予測される場合には、低価格を設定して、短期間に大量の
製品を市場に浸透させる市場浸透価格政策を採用すべきである。
二、取引通貨
貿易取引は、国際的に流通している通貨で決済をしなければならない。外国
為替とは、輸出入、運賃保険料などの貿易収支、株式投資、国債購入、利子配
当などの資本など、国際間の資金の収支など、それぞれの国の通貨を現金で受
け取ることではなく、銀行の支払指図によって資金を移動させる方法である。
一国の通貨(例えば中国元)と他国の通貨(例えばドル)との交換比率が外国
為替相場である。
外国為替は休日を除き、毎日変動するので、輸出入契約が成立してから決済
までの間の為替変動は売上金額や、為替手形決済金額の増減に大きな影響を与
46 え、為替損益が発生することになる。
この為替損益を避けるためには、取引上、力のあるほうの通貨を採用するほ
うがよい。最も多く使われている通貨は基軸通貨である米ドルである。貨幣用
語は正確に U.S.$(米・ドル)など正しい表示をする必要がある。
応用文書
(1)見積り依頼書
内蒙古対外貿易総公司
御中
東京三井物産株式会社
セーターの見積り依頼について
下記の商品について、お見積りください
1.品名:カシミヤ・セーター
2.数量:3000 枚
3.受渡期日:成約後三ケ月内
4.価格条件:船積み港大連港渡し、5%のコミッション込み値段
以上
(2)見積書
東京三井物産株式会社
営業部長 林様
拝啓 貴社ますますご繁栄のこととお喜び申しあげます。
見積り依頼についての貴書拝見いたしました。いつも、お引き立てをいただ
き厚くお礼を申しあげます。
次の通り、ご回答申しあげます。
敬具
記
1.品名:カシミヤ・セーター
2.数量:3000 枚
3.受渡期日:成約後三ケ月内
4.価格条件:USD35.00/PC FOBC5% 大連港
以上
内蒙古対外貿易総公司
単語
フェニキア
地中海(ちちゅうかい)
外航船(がいこうせん)
遡る(さかのぼる)
ギルド
芽生える(めばえる)
腓尼基
地中海
外国间航运船舶
追溯
(中世纪欧洲)行会
发芽
47 出荷地(しゅっかち)
发货工厂
積み地(つみち)
装运地
揚げ地(あげち)
目的地
EXW: 工場渡し条件
工厂交货价(指定地点)
FOB: 本船渡し条件
装运港船上交货价(指定装运港)
FCA: 運送人渡し条件
货交承运人(指定地点)
FAS: 船側渡し条件
装运港船边交货价(指定装运港)
CFR: 運賃込み条件
成本加运费价(指定目的港)
CIF: 運賃保険料込み条件
成本、保险费加运费价(指定目的港)
CPT: 運送費込み条件
运费付至(指定目的地)
CIP: 運送費保険料込み条件
运费、保险费付至(指定目的地)
DAF: 国境持込み条件
边境交货价(指定地点)
DES: 本船(ほんせん)持込み条件
船上交货价(指定目的港)
DEQ: 埠頭(ふとう)持込み条件
码头交货(指定目的港)
DDU: 仕向地(しむけち)持込み渡し条件(関税抜き)
未完税交货价(指定目的地)
DDP: 仕向地持込み渡し条件(関税込み)
完税后交货价(指定目的地)
支障(ししょう)
障碍
限界(げんかい)
界限、范围
2000 インコタームズ
《2000 年国际贸易术语解释通则》
複合一貫輸送(ふくごういっかんゆそう)
多式联运
艀(はしけ)
驳船
手すり(てすり)
船舷
加算(かさん):
加成
超過保険率(ちょうかほけんりつ)
保险加成率
損益額(そんえきがく):
盈亏额
外貨兌換(がいかだかん)コスト:
换汇成本
輸出総金額
出口总成本
輸出商品の外貨収益
出口销售外汇收入
外貨兌換比率 (がいかだかんひりつ)
出口换汇率
為替レート(かわせ)
汇率
損益率(そんえきりつ)
盈亏率
コミッション
佣金
ディスカウント
折扣
割引(わりびき)
减价、折扣
正味価格(しょうみかかく)
净价
仲介人(ちゅうかいにん)
中间人
訴え(うったえ)
诉讼
退ける(しりぞける)
驳回
出回る(でまわる)
上市、充斥
上層吸収価格(じょうそうきゅうしゅう)
采取高价(政策)
市場浸透(しじょうしんとう)
市场渗透
株式(かぶしき)
股份
投資(とうし)
投资
48 国債(こくさい)
購入(こうにゅう)
利子(りし)
配当(はいとう)
通貨(つうか)
売上金額(うりあげきんがく)
支払(しはらい)
指図(さしず)
基軸(きじく)
為替損益(かわせそんえき)
カシミヤ・セーター
国债、国库券
购买
利息
分配
通货、(法定)货币
销售额
支付
指示、吩咐
支柱、中心
外汇损益
羊绒衫
49 第五章 国際貨物輸送
ポイント
1.輸送手段:海上運送 コンテナ輸送 航空輸送 複合一貫輸送
2.受け渡し:納期 受渡場所 船積の方式 分割積み 積替え
3.関連書類:船荷証券 インボイス 保険証券 包装明細書
第一節
輸送手段
運送は国際取引において重要な一環である。運送時間、危険性また運賃など
を考慮した上で適切な運送方式を選ばなければならない。輸送方法は、利用さ
れる輸送機関により、海上運送、航空輸送、鉄道輸送、複合一貫輸送などに分
けられる。近年来、輸送方式を問わずコンテナの使用が普及し、コンテナ輸送
は国際貨物輸送において主要なものとなっている。
一、海上物品運送(Sea Shipment)
海上運送は船舶輸送のことで、安価で大量の貨物を長距離運ぶ際に常用され
る。国際取引において、海上運送が最も多く利用される輸送方法である。他の
輸送手段と比べて、海上運送は、①一回の輸送で大量の貨物を安く運べる②鉄
鉱石や石炭、自動車、原油などを運ぶ際、専用船が使える便利なコンテナ輸送
が普及しているという利点がある。ただ、海上運送はさまざまなリスクにさら
され、危険性も他の輸送方式より高い。
1.海上物品運送の方法
海上物品運送には定期船輸送と傭船輸送がある。
①定期船輸送(Liner Shipment)
定期船(liner:ライナー)を利用する輸送を定期船輸送という。定期船とは、
定期航路に就航し、定められた寄港地を定められた日程に従って航行している
船舶のことである。定期船には、コンテナ貨物専用のコンテナ船と、コンテナ
を積むことができない在来船があり、主要な定期航路にはコンテナ船が投入さ
れている。定期船輸送の貨物は主に工業製品や半製品である。
②傭船輸送(用船輸送)(Shipment by Chartering)
傭船輸送は、傭船契約に基づき船舶の一部または全部を運送用のために借り
入れて貨物を運送する輸送方法をいい、その船を傭船或いはチャーター船とい
う。傭船は一般的に不定期船である。不定期船(tramper:トランパー)とは、
鉄鉱石、石炭、穀物、砂糖、塩、木材、原油など、大量に取引されるバラ積の
商品を海上運送の需要に応じ、随時、傭船契約(Charter Party)に基づいて
運行されるものである。
国際取引において利用される傭船形式は裸傭船(Bareboat Charter)、定期
傭船(Time Charter)、航海傭船(Voyage Charter)の三種類がある。船舶所有者
が船舶を艤装せず、乗組員なしで傭船者に貸し渡すのを裸傭船という。定期傭
船とは、船舶所有者が一定期間、船舶の全部を乗組員付きのまま相手方に貸し
50 切り、船長を相手方の指示下に置くという船舶の使用方法である。それに対し
傭船者が特定区間の輸送のため、船舶の全部、または一部を船舶所有者からチ
ャーターする方法を航海傭船という。国際貿易で採用される傭船方法は主とし
て航海傭船である。
また、船舶の借用状況により全部傭船と一部傭船に分けることもできる。船
舶の一部だけを利用する場合を一部傭船というが、それに対して船舶の全部を
借り入れて利用する方法を全部傭船と呼ぶ。
2.海上運送契約
国際取引において海上運送を採用する場合、物品運送契約を結ぶのが一般的
な方法である。海上物品運送契約には「個品運送契約」と「傭船契約」がある。
①個品運送契約
小口貨物の取引は、個品運送契約により行われることが多い。個品運送契約
の場合、主として定期航路を利用して貨物を運送する。この場合、荷主は船会
社からもらう配船表(Sailing Card;Shipping Schedule)を調べ、適当なライ
ナーがあれば、船腹申込みをする。船会社は荷主の申込みを受け、船腹原簿
(Space Book)に記載することによって運送契約が成立する。
②傭船契約
傭船契約は、一般的に、不定期船市場において取り交わされる契約であり、
「他人の船舶を自己のために所定の用船料を支払い、お互いの責任を定め、一
定の約束の下に借用する」契約のことである。傭船契約は、その目的と内容に
より、航海傭船契約、定期傭船契約、裸傭船契約に分けられる。
3.海上運賃
①定期船運賃
定期船には同盟船と盟外船がある。同盟船とは、世界各国の特定の海運会社
が組織した運賃同盟に属するもので、特定航路ごとに独占的な協定運賃が設定
されている。この同盟に属さず、独自の運賃、サービスで運行されるのが盟外
船である。海上運賃は同盟船と盟外船で料率が異なるうえ、国別、仕向地別に
レートが決められ、また、経済事情によって料金改定が行われるので、海上運
賃の算出に際しては、船会社に事前に料金を確認したほうがよい。
同盟船と盟外船は運賃計算上で大きく異なっている。同盟船を使用する場合、
輸出者は同盟との間で契約を結び、盟外船に船積をしないことを約束すること
により、同盟から優遇措置として安い運賃を提供される。しかし、盟外船を使
用する場合の運賃は同盟船と異なり、荷主と船会社との間で自由に設定される。
両者の違いを下表に示す。
定期船運賃
同盟船の場合――運賃は運賃同盟により設定される
同盟と荷主が契約で独占使用条項を約束する
同盟が荷主に安運賃を提供する
盟外船の場合――船会社と荷主が自由に運賃を設定する
51 同盟船や盟外船を問わず、定期船の運賃は「ライナー·ターム(バース·ター
ム)」といわれ、積込費用と陸揚費用が海上運賃に含まれている。
定期船の海上運賃の単位は貨物によって異なり、貿易実務では「重量建て運
賃」、「容積建て運賃」、「重量または容積建て運賃」、「従価建て運賃」など
がよく使われる。運賃算定に重要な単位として重量トン( Weight Ton)と容
積トン(Measurement Ton)があり、重量トンを用いて算出された運賃を「重
量建て運賃」といい、容積トンを用いて算出される運賃を「容積建て運賃」と
いう。また、定期船の運賃表には「重量または容積建て(Weight or Measurement
Basis: W/M)」と記される貨物が多く、この場合、船積貨物の重量と容量を検
量し、どちらか金額の大きいほうを採用する。金、銀、宝石などの高価品は、
商品の価格を基準にする「従価建て運賃(Ad Valorem Freight)」が適用され
る。また、貨物の重量容積が極めて小さく運賃トンに達しない場合には一件当
たりの最低運賃(Minimum Freight)が規定されるのが一般的である。
以上は定期船輸送の基本運賃であり、実際には、基本運賃のほかに、情況や
貨物自身の性質等により割増料が徴収される場合がよく見られる。即ち割増運
賃(Surcharges)のことである。割増運賃には「重量品割増料」、
「嵩高品割増料」、
「長尺物割増料」、
「危険物割増料」、
「燃料割増料」、
「通貨割増料」、
「滞船割増
料」などがある。
②不定期船運賃
不定期船の場合、用船者と海運会社は自由交渉により運賃を決める。国際取
引の中で、積込費用と陸揚費用が海上運賃に含まれるかどうかにより、不定期
船運賃はバース·ターム、F.O.(Free Out)、F.I.(Free In)、F.I.O(Free In
and Out)に分けられる。具体的な費用分担は下表のとおりである。
分類
費用分担
バース・ターム 積込費用、陸揚費用は海運会社が負担する
F.O.
積込費用は海運会社が負担するが、陸揚費用
は用船者が負担する
F.I.
積込費用は用船者が負担するが、陸揚費用は
海運会社が負担する
F.I.O
積込費用、陸揚費用は用船者が負担する
二、その他の輸送手段
1.コンテナ輸送(Container Transportation)
コンテナとは、鉄製、アルミ製などの、貨物のユニット化を目的とする輸送
容器である。コンテナは陸・海・空の異なった運送機関で共通に使用でき、戸
口から戸口への一貫輸送を可能にする。コンテナ輸送の場合、荷造りを簡素化
しスピード化でき、盗難の危険も少なく、また経費節減にも役立つ。具体的に、
下記のような利点がある。
①ドア・ツー・ドアの一貫輸送が可能である。
②荷役の機械化で荷役率が向上する。
③在来船は雨濡れの問題があるが、コンテナ化で雨天などにおいても荷役作
業が可能となり、停泊日数が短縮できる。
④コンテナは反復利用が可能であるため、輸出運賃コストの軽減ができる。
52 ⑤輸出包装が簡素化でき、経費が大幅に節約できる。
コンテナのサイズは、ISO の規格で、8×8×20(20 フィートコンテナ)及び
8×8×40(40 フィートコンテナ)が一般的であるが、その具体的な寸法は下
記のとおりである。
20フィート
40フィート
長さ(mm)
5,892-5,934
12,052-12,062
幅 (mm)
2,331-2,354
2,342-2,362
高さ(mm)
2,246-2,263
2,367-2,389
幅 (mm)
2,340-2,342
2,345-2,300
高さ(mm)
2,134-2,154
2,265-2,272
内 容 積
(立方米)
30.0-31.0
66.5-68.1
自
(KG)
2,320-1,600
3,410-2,900
18,000-18,720
27,070-27,580
内側寸法
扉開口寸法
重
最大積載重量 (KG)
コンテナの種類は、使用目的により、乾燥貨物用コンテナ、断熱コンテナ、
冷凍コンテナ、保冷コンテナ、通風コンテナなどがある。また、コンテナ貨物
は、コンテナ一個を満たす FCL 貨物(Full Container Load Cargo)と一個を
満たすに足りない LCL 貨物(Less than Container Load Cargo)に分類される。
コンテナ貨物は CY(コンテナ・ヤード:Container Yard)或いは CFS(コンテ
ナ・フレート・ステーション:Container Freight Station)で受け渡しをする。
CY はコンテナを船舶に積み卸しする場所で、CFS は貨物をコンテナに詰めたり
出したりする場所をいう。CL の場合は輸出者が空コンテナを借り受け、コン
テナ詰めを行って、CY に搬入する。LCL の場合は、貨物を CFS に搬入する。
2.航空輸送(Air Transportation)
近年来、国際航空輸送は中国の経済拡大、国際交流の活発化に伴い、輸送需
要の増大を背景に順調な伸びを示した。他の輸送手段と比べて航空輸送は下記
のような利点がある。
①運賃は高いが、安全に速く、定時に運べる
②緊急性に対応できる
③梱包も簡素化でき、物流費が削減できる
航空輸送は運賃が割高であるが、その最大のメリットである「スピード」を
活かし、運賃負担能力のある高額商品や、緊急輸送が必要な生鮮貨物等の取引
でよく利用される。
3.複合一貫輸送(Combined Transportation)
複合一貫輸送とは一つの運送契約のもとで、海上輸送、陸上輸送、航空輸送
という輸送手段のうち二つ以上を組み合わせて、貨物を目的地まで輸送するこ
とである。コンテナの普及により、陸海空の運送手段の組み合わせによる複合
一貫輸送が容易になった。これにより、運送は輸出国の発送地から輸入国の最
終引渡地まで一貫して行われる。複合運送人は荷主に対して複合運送証券を発
行し、全区間に渡る貨物運送上の危険に対して責任を負う。
53 第二節
受け渡し
国際取引において売主には物品を引き渡す義務がある。また、それに対して
買主には、引渡受領が義務づけられている。受け渡し条項は売買契約の主要条
項として、受け渡しの場所、方法、納期などを明記しなくてはならない。
一、納期
納期は、即ち貨物引渡しの時期であり、海上運送の場合、通常船積時期を指
し、品質、価格、数量等とともに契約の基本条件である。例えば、FOB、CIF、
CFR という貿易条件で成り立つ契約では、一旦売主が船積して関連書類を買主
に渡せば、引渡義務を履行したと認められるので、「引渡」と「船積」との区
別がなく、納期と船積時期も完全に一致する。納期或いは船積時期を定める方
法として、下記のようなものがある。
1.期間を定める
貿易実務では主としてこの方法を利用する。この場合、契約に定められた期
間内のいずれかの日に貨物を引き渡せばよい。具体的に、下記のようなものが
ある。
①単月積
「2004 年 7 月積」
「船積は 2004 年7月中とする(7月1日より7月 31 までの期間に船積す
る)」
②連月積
「船積は 2004 年 3 月下旬より同年 6 月末までとする」
③期限日
「船積は 2004 年 3 月 27 日までとする」
④何日以内(起算日を指定)
「受注後 35 日以内に船積すること」
「信用状受領後 35 日以内に船積すること」
2.合理的な期間
契約で明白な納期を定めていない場合、契約締結後の合理的な期間内に貨物
を引き渡すことになる。例えば、やむを得ない場合、「即納」、「直積み」、「で
きるだけ早く船積すること」などを使うこともあるが、情況に応じ合理的な期
間で引渡義務を履行しなければならない。ただ、以上の三つの言い方は非常に
曖昧で紛争を引き起こしやすいため、避けたほうがよい。
二、受け渡しの場所
受け渡しは一定の場所で行わなければならない。国際取引において受け渡し
に関する規定は費用分担や危険移転などと関係があるため、売買両者間で合意
に達しなければならない。受け渡しの場所に関しては、契約に規定してあれば、
契約に従えばよいが、契約に規定がない場合は、商慣習に従う。「国際物品売
買契約に関する国連条約」では、下記のように規定している。
「売主が物品を他の特定の場所で引き渡すことを要しない場合には、売主の
引渡義務は、次の通りとする。
54 (a)売買契約が物品の運送を予定する場合には、買主に送付のため物品を第
一の運送人に交付すること。
(b)前号が該当しない場合において、契約が、特定物、又は、特定の在庫品
中から抽出されるべき又は製造若しくは生産される不特定物に関するもので
あり、かつ、契約締結時に、両当事者が、物品が特定の場所に存在し又はそこ
で製造あるいは生産されることを知っていた場合には、その場所で物品を買主
の処分に委ねること。
(c)その他の場合には、契約締結時において売主が営業所を持っていた場所
で、物品を買主の処分に委ねること。」
三、船積の方式
海上物品運送において船積は重要な一環であるため、その方式を契約に明記
する必要がある。
1.分割積み(Partial Shipment)
船積方法には一括船積と分割積みがある。一回だけで取引貨物を全部船積す
ることを一括船積といい、商品の数量と船腹の容量の関係から何回かに分けて
船積することを分割積みという。売買契約には、船積の方法が一括船積である
か、分割積みであるか、明記しなくてはならない。
2.積替え(Transhipment)
一般的には、本船は積出港より仕向港に直航するか、または、他の寄港地を
経て仕向港に着くが、何らかの原因により貨物を他の船舶に積替えて輸送する
場合も生じる。このような場合は、費用の増加、受け渡しの延期などの争議が
起こりやすい。これらの紛争を避けるには、
「目的港へ輸送する途中、積替(ト
ランスシップ)をすることはできない」と契約書に明記し、積み替えを拒否す
ることができる。英語の場合では、
「Transhipment is not allowed」或いは「D
irect shipment is essential」と明記する。
第三節
貨物運送関連書類
一、船積書類(Shipping Document)
海上運送の場合、船積みが完了し運賃の支払い後、船会社は船荷証券を発行
する。輸出業者は船積みが完了後、船積書類をそろえて輸出決済手続きに入る。
信用状統一規則では船積書類について詳しく定めており、船積書類は次のよう
なものがある。
①船荷証券(B/L:Bill of Lading)
②インボイス(Invoice)
③海上保険証券(Marine Insurance Policy)
④包装明細書(Packing List)
⑤原産地証明書(Certificate of Origin)
⑥検査証明書(Inspection Certificate)
⑦その他信用状などに要求されている書類
この中で、船荷証券、インボイス、保険証券と、包装明細書は重要書類とし
て必ず提出しなければならないが、その他の書類は付属的なもので必要に応じ
55 て出すことになる。
1.船荷証券(Bill of Lading)
後で論じるので、ここでは省略する。
2.インボイス(Invoice)
インボイスは売買契約の条件を正当に履行したことを、売主が買主に証明す
る書類で、商品名、数量、品質、建値、単価、金額等積み出しに関する一切の
重要事項を記載してある。インボイスは輸入地においては通関手続上、不可欠
となる重要書類であり、単に商品の明細書であることにとどまらず、手形金額、
保険価格等を算定する基礎ともなる。インボイスには領事用、通関用と商業用
のものがあるが、記載要領は同じである。その中で、商業用インボイス(商業
送り状ともいう)は輸出者が輸入者に宛てた出荷案内書と価格計算書を兼ねる。
3.保険証券(Insurance Policy)
保険証券は保険会社より発行され、損害填補条件などが明記されているもの
で、海上運送の場合は海上保険証券を指す。
4.包装明細書(Packing List)
包装明細書はパッキングリストともいい、輸出者により作成され、商品の包
装、数量、重量などを記載する。
5.原産地証明書(Certificate of Origin)
原産地証明書は商品が当該国の製造品であることを証明するもので、輸入者
の要求により輸出者が作成する。原産地証明書は一般的に地元の関係部門に申
請し、発行してもらう。原産地証明書用紙には「輸出者名、買主名、商品の数
量、内容、価格、原産地荷印」などが記載される。L/C には、よく次のような
言葉で原産地証明書が要求される。
「Certificate of Origin in duplicate issued by Chamber of Commerce and
Industry.」
6.検査証明書(Certificate of Inspection)
検査証明書とは、船積品質条件を採用する場合、実際に船積時の品質が条件
通りのものであったということを輸出者が輸入者に対し証明するものである。
この証明は権威ある第三者機関によるものでなければならない。
二、船荷証券(Bill of Lading: B/ L)
船主が荷主から貨物託送の申し込みを引き受け、荷物を受け取った際、その
受け取りを確認して発行する証書を船荷証券という。
1.船荷証券の特質
船荷証券は国際取引において広く使われ、次の三つの特質を持っている。
①Receipt for the goods:船積貨物の受取証明書及び引換証明書
②Document of title:貨物の所有権を示す権利証券
③Evidence of contract:輸送契約を証明する書類
2.船荷証券の要件
一般的には各船会社はそれぞれ独自の船荷証券を作成する。しかし、その記
載内容は基本的に同じである。信用状統一規則では、船荷証券に関して次の要
件を備えていることを条件としている。
①運送人の名称
②運送人(或いは指定代理人)または船長(或いは代理人)の資格を表示し、
56 署名または認証があること
③船積されたことを示していること(船荷証券の発行日が船積日となる)
④船積予定船舶などの表示がある場合、予定ではなく、積込済みの月日を付
記することにより証明されていること
⑤船積港と異なる受取地の場合は、信用状で定められた船舶の名称と船積港
を付記すること
⑥船積港と異なる受取地または陸揚港と異なる最終仕向地が示されている
場合でも、信用状に定められた船積港および陸揚港を示していること
3.船荷証券の種類
①船積船荷証券(Shipped B/L)と受取船荷証券(Received B/L)
国際取引に際して、荷主が契約の貨物を運送人に渡し船積みされた後、船積
みが完成したことを証明するものとして、運送人(船主)より発行される船荷
証券を船積船荷証券という。
船積船荷証券と異なり、荷為替取組関係で船荷証券を早く入手したい場合に、
停泊中または未着の船舶への積込みを予想し、運送人の指定場所、つまり本船
停泊場所以外(例えば、船会社指定の倉庫等)の場所で積込み前に運送人が貨
物を受けとった時に発行される船荷証券は受取船荷証券である。
一言で言えば、船会社が貨物の受取りを認証するものを受取船荷証券、船積
みを認証するものを船積船荷証券という。船積船荷証券は船積後発行されるが、
受取船荷証券は船積前に発行される。
②無故障船荷証券(Clean B/L)と故障付船荷証券(Foul B/L)
船積した貨物の包装や数量等について不完全なところがあり、そのことにつ
いて摘要(Remarks)が記載されたものを故障付船荷証券(Foul B/L)といい、
故障付き船荷証券は、信用状で特に許容していない限り、銀行は買取を拒絶す
る。逆に、良好な状態で申告数量通り積み込まれ、証券面に摘要がつかないも
のを無故障船荷証券(CleanB/L)という。
現行の荷為替決済では、為替銀行は故障付船荷証券の買い取りを拒絶するこ
とから、本船受取書やドック·レシートに故障摘要が記載された場合には、荷
送人は直ちに補償状を船会社に提出して、故障付船荷証券の代わりに無故障船
荷証券を発行してもらうこととなる。
③記名式船荷証券(Straight B/L)と指図式船荷証券(Order B/L)と無記名式
船荷証券(Open B/L、Blank B/L)
記名式船荷証券とは、船荷証券の荷受人欄に輸入者や銀行など特定人の名前
を記載している船荷証券をいう。流通性の低い船荷証券であるため、あまり利
用されていない。
指図式船荷証券とは船荷証券の荷受人欄に、「to order」、「to order of
shipper」などと記載された船荷証券をいい、証券の裏面に白地裏書すること
により、権利を移転させることができる。
無記名式船荷証券は荷受人の欄に特定人を記載せず、或いは「Bearer(持参
人)」と記載される船荷証券であり、裏書なしに譲渡と貨物引取りが可能なた
め、リスクが大きくあまり利用されていない。
④直航船荷証券(Direct B/L)と積替船荷証券(Transhipment B/L)
直航船荷証券とは、船積した本船が船積港から直接陸揚港まで運送する場合
の船荷証券をいい、積替船荷証券とは、最終仕向地に至る途中港で、本船から
57 荷を卸し、第2船で残りの区間を接続運送することが予定されている船荷証券
のことである。
⑤通し船荷証券(Through B/L)
通し船荷証券とは、二つ以上の異なる運送機関によって運送され、それら運
送機関の間に、陸と陸、海と海、海と陸などの通し連絡運送契約が締結されて
いる場合に、最初の運送人が全運送路に対して発行する船荷証券である。証券
を発行する運送人は自社の運送区間における貨物の損傷にしか責任を負わな
い。
⑥ 流 通 可 能 船 荷 証 券 ( Negotiable B/L ) と 流 通 不 可 能 船 荷 証 券 (Non
Negotiable B/L)
通常の船荷証券は譲渡性があり流通可能船荷証券といわれるが、これに対
し、受取船荷証券に船会社の責任者の署名がない船荷証券や、譲渡の禁止文
言のある船荷証券などは譲渡ができないので、流通不可能証券である。
⑦複合運送船荷証券(Combined Transport B/L)
複合運送船荷証券は、貨物の荷受地から荷渡地まで、陸海空の少なくとも二
つ以上の輸送手段によって運送される場合に、複合運送人が発行する証券であ
る。複合運送人は複合運送全区間において責任を負う。この点において通し船
荷証券とは異なる。
⑧遅延船荷証券(Stale B/L)
信用状の指定期限より遅れて提出された船荷証券を遅延船荷証券と言う。
⑨略式船荷証券(Short Form B/L)とロングフォーム船荷証券(Regular B/L
または Long Form B/L)
ロングフォーム船荷証券とは、裏面に運送約款の全文が記載されている船荷
証券のことである。これに対して、船会社の事務手続き簡素化のため運送約款
の一部を省略し、最低必要事項のみを記載した船荷証券が発行されるようにな
り、略式船荷証券という。
三、その他の貨物運送関連書類
国際取引において、海上運送を採用する場合、一般的に、船会社より船荷証
券が発行される。以上は主としてそれに関して論じたが、実際の取引では、海
上運送の他に航空輸送、鉄道輸送、郵便小包などの輸送手段もあり、「航空貨
物運送状」、
「鉄道貨物運送状」
、
「小包郵便物受領書」などさまざまな書類が交
換される。
航空輸送の場合、航空貨物運送状(Air Waybill)は重要な書類である。航
空貨物運送状は、航空会社と荷主との間で運送契約が成立していることを証明
する証拠証券で、航空会社より荷主に対して発行するものである。航空貨物運
送状は単に運送契約と貨物受取を証明するもので、船荷証券のような権利証券
ではなく、流通性もない。また、航空貨物運送状は貨物の所有権を証明する書
類ではないため、それをもって貨物を受領することはできない。荷受人は船会
社から受け取る「着荷通知」で貨物を受領する。
また、鉄道輸送、郵便小包の場合は、それぞれ貨物運送状(Waybill)、小包
郵便物受領書(Parcel Receipt)などの書類が交換されるが、いずれも航空貨
物運送状と同じく、船荷証券のような権利証券ではないため、譲渡不可能なも
のである。
58 国際貨物輸送に関する応用文例
●契約では、取消不能信用状を受取後1ヶ月以内に船積されることになってお
りますが、まだ船積のご連絡をいただいておりません。
●弊社の顧客の要望に応えるためにも、3月 25 日に東京を出航する「平和」
丸にこの商品を船積していただきたくお願い申し上げます。
単語
海上運送(かいじょううんそん)
複合一貫輸送(ふくごういっかんゆそう)
海上物品運送(かいじょうぶっぴんうんそう)
安価(あんか)
鉄鉱石(てっこうせき)
専用船(せんようせん)
リスク
定期船輸送(ていきせんゆそう)
傭船輸送(ようせんゆそう)
定期船(ていきせん)/ライナー
不定期船(ふていきせん)
航路(こうろ)
寄港地(きこうち)
半製品(はんせいひん)
在来船(ざいらいせん)
船員(せんいん)
傭船/用船(ようせん)
裸傭船(はだかようせん)
定期用船(ていきようせん)
航海用船(こうかいようせん)
艤装する(ぎそうする)
借用する(しゃくようする)
船長(せんちょう)
貸切り(かしきり)
チャーター
個品運送(こひんうんそう)
傭船契約(ようせんけいやく)
小口貨物(こぐちかもつ)
配船表(はいせんひょう)
船腹申込み(せんぷくもうしこみ)
船腹原簿(せんぷくげんぼ)
59 海洋运输
国际多式联运
海洋货物运输
廉价
铁矿石
专用货船、专用船
危险、风险
班轮运输
租船运输
班轮
不定期船、航线不定船
航线
停靠港、停泊港
半成品、半制成品
一般货船、常规货船
船员、海员、水手
租船、用船
光船租船
期租船
程租船
为船舶航行备妥设备及供应
借用、租用
船长
包租
租用、包租
零担运输、按宗运输
租船合同
小件货物、零担货
船只调度表
货舱申请、船位申请、订舱
货舱底账、订舱簿
取り交わす(とりかわす)
用船料(ようせんりょう)
海上運賃(かいじょううんちん)
定期船運賃(ていきせんうんちん)
同盟船(どうめいせん)
盟外船(めいがいせん)
運賃同盟(うんちんどうめい)
独占(どくせん)
協定運賃(きょうていうんちん)
料率(りょうりつ)
レート
改定(かいてい)
ライナー·ターム/バース·ターム
積込み(つみこみ )
重量建て(じゅうりょうだて)
容積建て(ようせきだて)
従価建て(じゅうかだて)
重量トン(じゅうりょうトン)
容積トン(ようせきトン)
宝石(ほうせき)
高価品(こうかひん)
最低運賃(さいていうんちん)
基本運賃(きほんうんちん)
割増料(わりましりょう)
徴収する(ちょうしゅうする)
割増運賃(わりましうんちん)
嵩高品(かさだかひん)
長尺物(ちょうじゃくぶつ)
滞船(たいせん)
F.O.
F.I.
F.I.O
アルミ
荷造り(にづくり)
盗難(とうなん)
節減(せつげん)
荷役(にやく)
雨濡(あめぬれ)
雨天(うてん)
停泊(ていはく)
軽減(けいげん)
FCL 貨物(FCL かもつ)
LCL 貨物(LCL かもつ)
CY
交换、互换
船舶租金、租船费
海洋运费
班轮运费
同盟船
非公会船、非公会定期船
运费同盟
独占、垄 断
公会运价、协定运费
费率
费率、比率、比例
改定、重新规定
班轮条件
装货、装东西
按重量计算
按容积计算
按价格计算
重量吨
容积吨、尺码吨
宝石
高价物品、贵重货物
最低运费
基本运费、基本运价
附加费、额外费用
征收
附加运费
轻泡货
超长货
滞船、船舶滞期
船方不管卸货费
船方不管装货费
船方不管装卸费
铝
包装、捆包
盗窃、失盗
节减、节省
装卸货物
雨损
雨天
停泊
减轻、减少
整箱货
拼箱货
集装箱堆场
60 CFS
集装箱集散站
詰める(つめる)
装、装入
増大(ぞうだい)
增多、增大、增加
好調(こうちょう)
顺利、情况很好
物流費(ぶつりゅうひ)
物流费用
削減(さくげん)
削减、缩减
寄与する(きよする)
有用、有助于、奉献
メリット
优点、长处
活かす(いかす)
活用
生鮮貨物(せいせんかもつ)
新鲜货物
組み合わせる(くみあわせる)
搭配、配合、交叉在一起
受領(じゅりょう)
接受、领 取
納期(のうき)
交货 日期
船積時期(ふなづみじき)
装船日期
起算(きさん)
起算
受注(じゅちゅう)
接受订货
即納(そくのう)
立即交货、立即交纳
直積み(じきつみ)
直接装船、马上装运
危険移転(きけんいてん)
风险转移
運送人(うんそうにん)
承运人
特定物(とくていぶつ)
特定物
在庫品(ざいこひん)
库存
処分(しょぶん)
处分、处理
委ねる(ゆだねる)
委托
分割積み(ぶんかつつ
分批装货
一括船積(いっかつふなづみ)
一次装船
積替え(つみかえ)
转运
本船(ほんせん)
该船、本船、载货船只
積出港(つみだしこう)
装货港、装运港
仕向港(しむけこう)
目的港
延期(えんき)
延期
導く(みちびく)
引导、导致
目的港(もくてきこう)
目的港
船荷証券(ふなにしょうけん)
提单
揃える(そろえる)
凑齐、备齐
インボイス
发票、发货单
商業用インボイス/商業送り状(しょうぎょうおくりじょう)商业发票
海上保険証券(かいじょうほけんしょうけん) 海运保险单
包装明細書(ほうそうめいさいしょ)/パッキング・リスト 包装清单、装箱单
原産地証明書(げんさんちしょうめいしょ)
产地证、产地证明书
検査証明書(けんさしょうめいしょ)
检查证明书、检验证
手形金額(てがたきんがく)
票据金额 、汇票金额
出荷案内書(しゅっかあんないしょ)
装运通知书
地元(じもと)
当地、本地
61 託送(たくそう)
托运
受け取る(うけとる)
收、领
引換え(ひきかえ)
交换
所有権(しょゆうけん)
所有权
権利証券(けんりしょうけん)
物权凭证
要件(ようけん)
要件、必要条件
指定代理人(していだい
)
授权代理人
付記する(ふきする)
附记、附注
船積船荷証券(ふなづみふなにしょうけん)
已装船提单
受取船荷証券(うけとりふなにしょうけん)
备运提单
荷為替(にがわせ)
押汇、货汇
未着(みちゃく)
未到、未运到、未送到
無故障船荷証券(むこしょうふなにしょうけん) 清洁提单
故障付船荷証券(こしょうつきふなにしょうけん)不清洁提单
摘要(てきよう)
摘要、提要
買取(かいとり)
议付、结汇
為替銀行(かわせぎんこう)
汇兑银行
本船受取書(ほんせんうけとりしょ)
大幅收据
ドック·レシート
码头收据
補償状(ほしょうじょう)
赔偿保证书
記名式船荷証券(きめいしきふなにしょうけん) 记名提单
指図式船荷証券(さしずしきふなにしょうけん) 指示提单
無記名式船荷証券(むきめいしきふなにしょうけん) 不记名提单
荷受人(にうけにん)
收货人
白地裏書(しらじうらがき)
空白背书
持参人(じさんにん)
票据的持有人、持票人
譲渡(じょうと)
转让、让与
直航船荷証券(ちょっこうふなにしょうけん)
直达提单
積替船荷証券(つみかえふなにしょうけん)
转船提单、转运提单
通し船荷証券(とおしふなにしょうけん)
联运提单、全程提单
損傷(そんしょう)
损伤
流通可能船荷証券(りゅうつうかのうふなにしょうけん)可转让提单
流通不可能船荷証券(りゅうつうふかのうふなにしょうけん)不可转让提单
複合運送船荷証券(ふくごううんそうふなにしょうけん)多式联运提单
荷受地(にうけち)
收货地
荷渡地(にわたしち)
交货地
複合運送人(ふくごううんそうにん)
多式联运承运人
遅延船荷証券(ちえんふなにしょうけん)
过期提单
略式船荷証券(りゃくしきふなにしょうけん)
简式提单
ロングフォーム船荷証券 (ロングフォームふなにしょうけん)全式提单
運送約款(うんそうやっかん)
运输条款
運送状(うんそうじょう)
运单、发运单
受領書(じゅりょうしょ)
收据、收单
着荷通知(ちゃくにつうち/ちゃっかつうち)
到货通知
62 第六章
海上保険
ポイント
1.海上保険:海上危険 海上損害 単独海損 全損 分損 共同海損
2.保険約款:中国保険約款 協会約款 新協会約款 免責危険
3.保険実務:保険条項 付保期間 保険求償 予定保険 保険証券
国際取引は始めから終わりまでさまざまな危険にされされており、危険防止
と損害補償のために、取引当事者が保険をつけるのが一般的な方法である。保
険には、物に対する危険、相手国の国情や企業の信用に対する危険或いは投資
などの資金に対するリスク、及び製造物に対する責任のリスクをカバーするも
のがある。一般に、①企業の信用や第三者の行為に対する危険は政府の貿易保
険でカバーし、②運送途上の貨物に対する危険は海上保険(Marine Insurance)、
航 空 貨 物 保 険 ( Aviation Cargo Insurance ) ま た は 陸 送 保 険 ( Inland
Transportation Insurance)でカバーし、③製造物そのものから生じる責任に
ついては製造物責任保険でカバーする。
貿易保険は、貿易取引において海上保険などの対象とならない損失を填補し、
輸出入取引や海外投資において生ずる取引上の信用危険(相手の破産など)と
非常危険(相手国の戦争など)をカバーするので、取引の保証或いは取引の保
険といわれる。
国際貿易の運送保険には輸送方式により陸送保険、航空貨物保険、海上保険
等に分けられるが、海上保険が最も中心的である。海上保険とは航海に伴う貿
易貨物の滅失、損傷などの運送中のリスクをカバーする保険である。
製造物責任保険は製造業者が生産した製造物の使用或いは消費によって引
き起こされた生命や身体の被害や財産上の損害についての賠償責任をカバー
する保険である。
本章では、主として海上貨物保険を論じる。
第一節
海上危険
一、海上保険の担保危険
海上運送中さまざまなリスクが伴うが、海上保険はそのすべてをカバーする
ことはできない。貿易実務では、保険会社が担保する危険は主に「一般的海上
保険」と「付加危険」の二種類である。
1.一般的海上危険(Perils of Sea)
一般的海上危険は海難ともいい、海上運送に伴うさまざまな危険を指すが、
そ れ を さ ら に 分 類 す る と 、 自 然 災 害 (Natural Calamities) と 不 測 事 故
(Fortuitous Accidents)の二種類がある。自然災害とは、自然界の破壊力によ
る災難のことをいい、雷、悪天候、地震、洪水、波ざらい、火山爆発等がある。
不測事故とは、海上運送中に偶然に起こる危険のことを指し、沈没、座礁、火
災、流氷、衝突、船舶の行方不明等がある。
63 2.付加危険(Extraneous Risks)
一般的海上危険は主として海固有の危険である。一般的海上危険と異なり、
外部からの原因による危険は付加危険といわれる。付加危険には一般的付加危
険と特殊付加危険とがあり、前者は窃盗、雨濡、汚損、破損、漏損、かび損な
ど、後者は戦争、ストライキ、不着などがある。
二、海上損害(Maritime Loss)
海上運送途中、海上危険によって生じた被保険物の損害、消滅及びその他の
費用は海上損害といわれる。海上損害はその損失の程度から全損と分損に分け
られ、分損には、共同海損と単独海損の区別がある。
1.全損(Total Loss)と分損(Partial Loss)
全損とは、被保険物がまったくその形態を滅失し、或いは全部その用をなさ
ないようになることである。全損と異なり、保険者の担保した危険によって生
ずる被保険物件の部分的な損害は分損である。全損には、現実全損(Actual
Total Loss)と推定全損(Constructive Total Loss)がある。現実全損は保
険対象物のすべてが損失した場合をいい、推定全損とは、保険対象物が全滅に
達していなくても、回収や修復などの費用が貨物現有の価値を超える場合の損
失をいう。推定全損の場合は委付という手続きにより、全損として保険金が支
払われる。
2.共同海損(General Average)と単独海損(Particular Average)
①共同海損(G.A.)
共同海損は、海上運送において固有に発達した制度であり、船と貨物の安全
を確保するために、故意かつ合理的に異常な犠牲が払われたり、異常な費用が
支出された場合に、その損害と費用を利害関係者全体において分担することで
ある。共同海損は主に自然災害と不測事故によって発生するが、もちろん、付
加危険により生じる場合もある。しかし、原因は何であれ、共同海損は船舶及
び積荷に「共同の危険」があるとき、その救済措置によるものでなければなら
ない。共同海損範囲内の損失と費用は損害があるかどうかを問わず、積荷の所
有者、船舶所有者及び船舶運行者など利害関係者全体で分担する。例えば、船
舶が座礁した場合、①船舶を浮かせるために貨物の一部を廃棄する②船舶を救
助する、などの費用・損害が発生する。このように、船舶と貨物が共同の危険
から免れるために発生した費用・損害は、共同海損と称して船舶・貨物の所有
者が共同して分担することとなる。
共同海損の原則は、ヨーク・アントワープ規則(York-Antwerp Rules)に規定
されている。ヨーク・アントワープ規則は共同海損に関する統一的国際規則で、
1877 年に制定され、その後、修正を経て、現在は 1994 年ヨーク・アントワー
プ規則に至っている。ほとんどの 船荷証券(B/L)や用船契約書では共同海損の
精算に関しては、ヨーク・アントワープ規則に従うことが規定されている。
②単独海損(P.A.)
海上輸送途中、個々の貨物に発生した損害は通常、荷主の単独の損害となり、
単独海損と呼ばれる。例えば、航海中、火事で焼失した積荷は単独海損となる。
64 第二節
海上保険約款
保険を引き受ける者は保険会社であり、保険をつける者は付保者であり、損
害の填補を受ける者は被保険者である。海上運送において事故が生じた場合、
保険会社はそのすべての損害を補償するわけではなく、契約に明記された保険
条件に基づいて責任を負う。保険条件が異なれば、填補範囲も異なるため、契
約書には保険条件を明記しなければならない。
わが国の輸出入業務において、貨物に海上保険を掛けるとき、主に中国人民
保険公司の中国保険約款を利用するが、情況に応じてロンドン保険業者協会が
設定した「協会貨物約款」を利用する場合もある。
一、中国保険約款(CIC:China Insurance Clause)
中国人民保険公司の海上運送貨物保険には、「単独海損不担保」、「単独海損
担保」、
「オール・リスク」という三つの基本条件が設定されている。また、基
本条件のほかに、「追加保険条件」と「特別追加保険条件」を定めている。
1.単独海損不担保(FPA)
単独海損不担保は「分損不担保」とも言われ、共同海損及び全損の場合はこ
の保険で填補されるが、貨物のうち一部が損害を受けた単独海損の場合は、特
定分損を除き原則として填補されない。
2.単独海損担保(WA/WPA)
単独海損担保は「分損担保」とも言い、FPA が担保する全損と共同海損はも
ちろん、一部の損害を受けた単独海損もカバーされる保険条件である。
3.オール・リスク(All Risks :A/R )
オール・リスクは全危険担保とも呼ばれる。FPA と WA が担保する危険のほ
かに、一般的付加危険による全損と分損も担保できる。
上記の各基本約款の填補範囲は下記のとおりである。
事故・損害の種類
A/R
W/A
FPA
(オールリスク担保) (分損担保) (分損不担保)
自然災害(荒天、落雷、
津波、地震、洪水等)に
よりもたらされた損害
○
○
△
輸送用具の座礁・沈没
○
○
○
輸送用具の衝突
○
○
○
火災・爆発
○
○
○
積込み・積卸し
○
▲
▲
貨物救護による損害防
止・軽減費用
○
○
○
海難により発生した特別
費用
○
○
○
共同海損
○
○
○
65 上記以外の外来的な要因
による偶然な事故の損
害・費用
○
○
●
○担保される△全損の場合のみ担保
▲梱包一個毎の全損のみ担保
●特約がある場合に担保
4.追加保険条件(Extraneous Risks)
中国保険約款には 11 種の追加保険条件が規定されているが、この 11 種の追
加保険条件は FPA と WA に含まれていないため、追加保険料を支払うことによ
りこれらの危険を担保することができる。追加保険条件は単独に付保すること
はできず、上記の基本条件に加えて付保するしかない。ただ、A/R はこの 11
種の危険をカバーしているため、さらに付保する必要はない。追加保険条件は
下記のようなものがある。
①盗難・抜荷・不着損害(Theft、Pilferage and Nondelivery)
②雨淡水ぬれ損(Fresh Water Rain Damage)
③漏損(Risk of Leakage)
④不足損害(Risk of Shortage)
⑤混雑汚染(Risk of Intermixture & Contamination)
⑥鈎損(Risk of Hook Damage)
⑦破損、破砕(Risk of Clash & Breakage)
⑧味·匂いなどの混ざり合い(Risk of Odour)
⑨汗・むれ損(Damage caused by Sweating & Heating)
⑩包装破損(Loss of Damage caused by Breakage of Packing)
⑪さび損(Risk of Rusting)
5.特別追加保険条件(Special Extraneous Risks)
保険条件には、特別追加保険条件というものもあり、「引渡不着」、「輸入税
危険」、
「デッキ危険」、
「引受拒絶危険」、
「戦争危険」、
「ストライキ危険」など
を含む。上記の 11 種の追加保険条件と同様に、特別追加保険条件も単独で付
保することができず、三つの基本条件に加えて付保しなければならない。
二、ロンドン保険業者協会の「協会貨物約款」
世界各国の海上保険実務では、主としてロンドン保険業者協会が設定した
「協会貨物約款」を利用している。
「協会貨物約款」には、 1963 年のものと 1982 年のものがある。
1.協会貨物約款(1963 年 I.C.C.)
1963 年にロンドン保険業者協会(Institute of London Undewriters)が設
定した「協会貨物約款(Institute Cargo Clauses I.C.C.)」には、A/R、WA、
FPA の三つの基本約款がある。
①ALL Risks(A/R)条件(オール・リスク担保条件)
②WA(With Average)条件(分損担保条件)
③FPA(Free from Particular Average)条件(分損不担保条件)
上記の各基本約款の填補範囲は、下記のとおりである。
主要事故
基本条件
66 A/R W.A F.P.A
火災・爆発
○ ○
○
輸送用具の沈没・座礁
○ ○
○
輸送用具の衝突・脱線・転覆
○ ○
○
荒天遭遇による潮濡れ
○ ○
△
雨・雪等による濡れ
○ ×
×
汗濡れ
○ ×
×
盗難・抜荷・不着
○ ×
×
破損・まがり・へこみ
○ ×
×
漏出・不足
○ ×
×
汚染・混合
○ ×
×
共同海損
○ ○
○
○:担保する
×:担保されない(ただし、特約がある場合は除く)
△:分損の場合に支払われない
2.新協会貨物約款(1982 年 I.C.C.)
1983 年 4 月 1 日からロンドン市場では、新協会貨物約款が全面的に使用さ
れている。もともと新約款の制定により旧約款の使用を停止する予定であった
が、旧約款の利用希望が依然として多いため、現在でも両約款は並行して使わ
れている。新約款の保険条件は(A)・(B)・(C)の三つが基本約款である。
(A)条件
1963 年I.C.C All Risks条件に対応する填補内容で、基本的には
一切の危険を負担する。
(B)条件
1963 年I.C.C WA条件に対応する填補内容で、担保危険としては
火災、爆発、座礁、沈没、転覆、衝突、地震、噴火、雷、海水、湖水または、
河川の水の侵入などが列挙されている。
(C)条件
1963 年I.C.C FPA条件に対応する填補内容で、担保危険としては
火災、爆発、座礁、沈没、転覆、衝突等が列挙されている。
各基本約款の填補範囲は、下記のとおりである。
危険の具体例
基本条件
(A) (B) (C)
火災・爆発
○ ○ ○
船舶・艀の座礁・乗揚・沈没・転覆
○ ○ ○
陸上輸送用具の転覆・脱線
○ ○ ○
船舶・艀・輸送用具の水以外の他物との衝突・接触
○ ○ ○
避難港における貨物の荷卸し
○ ○ ○
67 地震・噴火・雷
○ ○ ×
共同海損の犠牲
○ ○ ○
投荷
○ ○ ○
波ざらい
○ ○ ×
海水・湖水・河川の水の船舶・艀・船艙・輸送用具・
コンテナ・保管場所への侵入
○ ○ ×
積込み・荷降ろし中の海没・落下による梱包 1 個ごとの全損 ○ ○ ×
上記以外の一切の危険
○ × ×
○:担保される ×:担保されない。
また、(A)・(B)・(C)の三つの基本約款のほかに、協会戦争約款、協会スト
ライキ約款と悪意損害危険約款も設置されている。
3.免責危険
中国保険約款と協会約款にはともに免責危険が規定されている。旧協会約款
は、免責危険が各約款に記述されていないので分かりにくいため、問題の解消
を企図して新約款が制定された。形式や表現に相違はあるものの、新旧約款に
おいて内容の実質的な違いはない。新協会約款で定めている免責危険は A、B、
C 三条件が共通のものがあり、一般免責約款(General Exclusions Clause)
として列挙されている。具体的には下記のものがある。
①被保険者の故意の不法行為に起因した損害
②保険の目的の通常の漏損、重量・容量の不足損および通常の自然消耗
③梱包または梱包の準備の不完全、不適切により生じた損害
④保険の目的の固有の性質および瑕疵
⑤遅延損害(原因の如何を問わず)
⑥船舶の船主、管理者、用船者または運航者の倒産または財政上の債務不履
行から生じる滅失、損傷または費用
⑦一人または複数の人の悪意ある行為による保険の目的の全体または一部
に対する意図的損傷または意図的破壊
⑧原子核分裂もしくは原子核融合またはその他の同種の反応または放射能
もしくは放射性物質を利用した一切の兵器の使用によって生じる滅失、損
傷または費用
第三節
海上保険の実務
一、保険の手配
国際間の貿易取引において、売手と買手のどちらが貨物海上保険を手配すべ
きかは、売買契約の条件によって決定されることになる。例えば、主な海上運
送における取引条件を簡単に表すと以下のようになる。
取引条件
売主
買主
FOB
船積み原価(Cost)で売る
CFR
本船を手配し、船積み原価(Cost)+ 保険の手配を行う
68 本船と保険の手配を行う
運賃(Freight)で売る
CIF
本船、保険を手配し、船積み原価
本船と保険の手配は必要
(Cost)+ 運 賃 (Freight)+ 保 険 料
ない
(Insurance)で売る
(詳細については国際商業会議所によって発表されているインコタームズ
2000(Incoterms 2000)の取引条件が規定されている)
二、保険金額と保険料
付保金額は保険の対象となる金額で、事故の時、保険者が填補責任を負う金
額の最高額を言う。通常 CIF 金額の 110%で計算する。110%とするのは、期
待利益として 10%の超過保険をかけることが一般的だからである。保険金額
と保険料は下記の計算によって求められる。
保険金額=[貨物金額(C)+海上保険料(I)+海上運賃(F)]×110%
保険料=保険金額×保険料率
三、保険期間
保険期間とは保険者の損害担保の責任をいつからいつまでにするかという
ことである。国際取引の実務では通常、保険期間に関して具体的な期日を定め
ない。一般的には「船積港において本船に船積された時から通常の経路を経て、
仕向港で安全に陸揚げされるときまで」を付保し、これ以外の付保は特別約款
として追加する。ただし、船積と陸揚げは通常の方法で行うことを前提とし、
通常の方法でない場合、損害が生じても填補されない。
1.倉庫間約款
倉庫間約款は国際取引中よく利用され、輸出地の指定地点(一般的に倉庫を
指す)より輸入地の指定地点(一般的に倉庫を指す)までの危険をカバーする。
海上運送において倉庫間約款を採用した場合、輸出地の倉庫から船積港まで、
または輸入地の仕向港から倉庫までの区間もカバーされるので取引の安全性
が高い。
2.輸出 FOB 保険
日本では「輸出 FOB 保険」の制度がある。輸出 FOB 保険の対象となるものは、
輸出契約が FCA、FAS、FOB、CFR、CPT および DAF 契約による輸出貨物である。
保険期間は工場または倉庫出荷から運送人に引き渡すまで(FCA)、本船船側に
運搬するまで(FAS)、本船積込みまで(FOB、CFR、CPT)、及び国境の特定地点
まで(DAF)の国内運送期間である。
四、予定保険(Provisional Insurance)
保険を付保するには、危険開始時までに船積日、本船名、船積数量など必要
な情報を保険会社に正確に通知しなければならない。しかし、輸出入に関わら
ず、必ずしも輸送開始時までに付保手続きをすべて完成できるとは限らない。
付保手続き完了前に、万一貨物に損害が生じても自己負担となるほかならない。
このような状況を避けるために、保険条件をあらかじめ取り決めた上で、輸送
69 の概略を保険会社に伝え付保する予定保険の概念が導入された。予定保険の段
階では保険の内容は確定していないため、輸送の情報が把握できた段階で改め
て保険会社に通知し、保険を確定させる手続きをする必要がある。
予定保険には個々の輸送ごとに付保する「個別予定保険」と特定の貨物を包
括的に対象とする「包括予定保険」とがあるが、個別予定保険は特殊な輸送な
どに限定的に用いられるだけで、通常は包括予定保険を採用する。
五、保険求償
輸入貨物が海上輸送中、海難その他の事故によって損害をこうむった場合、
輸入者は次のような処置を取ることができる。
①輸出者の責任による貨物の破損、汚損(例えば、包装の不備による液体の
流出など)の場合、輸出者へのクレームになる。
②輸出者へのクレームにならない場合は、速やかに保険会社に通知するとと
もに、必要な書類を提出する。
保険求償において、下記のような書類が必要である。
①保険金請求書 ②保険証券
③インボイス
④重量証明書
⑤船荷証券
⑥運送人宛求償状
⑦運送人回答状
⑧海難証明書
⑨検査報告書
⑩パッキングリスト ⑪L/C
保険求償の場合、通知が非常に重要である。通知が遅れると、①保険会社は
その損害が保険期間中に発生したかどうか認定が困難になる②第三者への損
害賠償請求権を失う恐れがある③貨物を長時間放置することで損害の範囲が
拡大し、保険金の支払いが増加するなどの可能性もあるため、速やかな処置が
必要である。
1.保険証券
保険証券とは、保険者が保険契約の要項を記載し、保険契約者に交付する証
券で、保険契約の証明となるものである。海上保険の場合、海上貨物保険証券
(Marine Insurance Policy:ポリシー)を指す。海上貨物保険証券は、売主
が付保した場合、売主によって当該保険証券が裏書きされて買主に送られる。
L/C に記載があれば、買取書類として銀行経由で買主に送られる。裏書きによ
り、保険請求権は保険申込者から、証券の保持者(輸入者)に移る。船社から
引き取った貨物に事故があった場合、輸入者は保険会社に連絡して保険求償手
続きを行う。この求償処理には、保険証券の他、インボイス、船荷証券などが
必要である。
2.船荷証券
船荷証券とは、船主が荷主から貨物託送の申し込みを引き受け、荷物を受け
取った際、その受け取りを確認して発行する証書のことである。
(第五章参照)
海上保険に関する応用文例
●全危険担保で送り状額の一割増しの金額に対して海上保険をかけ、その保険
証券は船積書類に添付していただきますようお願いいたます。
●全危険担保を付保していただくようお願いいたします。また当社の負担で戦
70 争危険とストライキ危険も付保してくださいますようお願いいたします。
●今回の取引は広州での本船渡し価格で履行されますので、海上保険は貴社に
付保していただくことになります。貨物が広州で船積されたらご連絡いたしま
す。
単語
損害填補(そんがいてんぽ)
製造物(せいぞうぶつ)
カバーする
貿易保険(ぼうえきほけん)
海上保険(かいじょうほけん)
航空貨物保険(こうくうかもつほけん)
陸送保険(りくそうほけん)
製造物責任危険(せいぞうぶつせきにんきけん)
填補する(てんぽする)
海外投資(かいがいとうし)
信用危険(しんようきけん)
破産(はさん)
非常危険(ひじょうきけん)
滅失(めっしつ)
製造業者(せいぞうぎょうしゃ)
引き起こす(ひきおこす)
被害(ひがい)
財産(ざいさん)
担保危険(たんぽきけん)
海上危険(かいじょうきけん)
付加危険(ふかきけん)
海難(かいなん)
自然災害(しぜんさいがい)
不測事故(ふそくじこ)
自然界(しぜんかい)
破壊力(はかいりょく)
災難(さいなん)
雷(かみなり)
悪天候(あくてんこう)
地震(じしん)
洪水(こうずい)
波ざらい(なみざらい)
火山爆発(かざんばくはつ)
沈没(ちんぼつ)
座礁(ざしょう)
71 损害赔偿
产品
补偿、抵补
贸易保险
海运保险
航空运输货物保险
陆运保险
产品责任险
填补、补充、弥补
海外投资
信用风险
破产
非常险
消失、灭失
制造业者
引起、引发
受害、被害
财产
承保的风险
海上风险
附加风险
海难、海险
自然灾害
意外事故
自然界
破坏力
灾害、灾难
雷
坏天气、恶劣天气
地震
洪水
浪击落海
火山爆发
沉没
触礁
流氷(りゅうひょう)
衝突(しょうとつ)
行方不明(ゆくえふめい)
一般的付加危険(いっぱんてきふかきけん)
特殊付加危険(とくしゅふかきけん)
窃盗(せっとう)
汚損(よごれそん)
破損(はそん)
漏損(もれそん)
鈎損(かぎそん)
かび損(かびそん)
ストライキ
不着(ふちゃく)
海上損害(かいじょうそんがい)
被保険物(ひほけんぶつ)
消滅(しょうめつ)
全損(ぜんそん)
分損(ぶんそん)
共同海損(きょうどうかいそん)
単独海損(たんどくかいそん)
全滅する(ぜんめつする)
現実全損(げんじつぜんそん)
推定全損(すいていぜんそん)
回収(かいしゅう)
修復(しゅうふく)
委付(いふ)
保険金(ほけんきん)
故意(こい)
異常(いじょう)
犠牲(ぎせい)
支出する(ししゅつする)
利害関係者(りがいかんけいしゃ)
積荷(つみに)
救済措置(きゅうさいそち)
廃棄する(はいきする)
救助する(きゅうじょする)
免れる(まぬがれる)
ヨーク・アントワープ規則
焼失する(しょうしつする)
付保者(ふほしゃ)
補償する(ほしょうする)
中国保険約款(ちゅうごくほけんやっかん)
協会貨物約款(きょうかいかもつやっかん)
単独海損不担保(たんどくかいそんふたんぽ)
72 流冰、浮冰
冲突、冲撞
去向不明
一般附加险
特殊附加险
偷窃
污损
破损、破碎
漏损
钩损
霉损
罢工
未到、提货不着
海损、海上损失
被保险货物
消失、消灭
全损
部分损失
共同海损
单独海损
全部灭失
实际全损
推定全损
回收
修复、修理
委付
保险金
故意
异常
牺牲
支出
利害关系人
装货、载货、装载的货物
救济措施
废弃、废除
救助
逃避
约克-安特卫普规则
烧毁、烧掉
投保人
补偿、赔偿
中国保险条款
协会货物(保险)条款
平安险
単独海損担保(たんどくかいそんたんぽ)
水渍险
オール・リスク
一切险
追加保険条件 (ついかほけんじょうけん)
附加保险、追加保险
特別追加保険条件(とくべつついかほけんじょうけん)特别附加险
津波(つなみ)
海啸
荒天(こうてん)
暴风 雨的天气、恶劣天气
落雷(らくらい)
雷击
盗難・抜荷・不着損害(とうなん・ぬきに・ふちゃくそんがい)
偷窃、提货不成
雨淡水ぬれ損(あめたんすいぬれそん)
淡水雨淋险
不足損害(ふそくそんがい)
短量险
混雑汚染(こんざつおせん)
混杂玷污险
破損・破砕(はそん・はさい)
破损破碎险
味·匂いなどの混ざり合い(あじ・においなどのまざりあい) 串味险、变味险
汗・むれ損(あせ・むれそん)
受潮受热险
包装破損(ほうそうはそん)
包装破裂险
さび損(さびそん)
锈损险
引渡不着(ひきわたしふちゃく)
交货不到险
輸入税危険(ゆにゅうぜいきけん)
进口关税险
デッキ危険(デッキきけん)
舱面险
引受拒絶危険(ひきうけきょぜつきけん)
拒收险
戦争危険(せんそうきけん)
战争险
ストライキ危険(ストライキきけん)
罢工险
脱線(だっせん)
脱轨、出轨
転覆(てんぷく)
翻倒、倾覆
潮濡れ(しおぬれ)
潮湿损伤
まがり
弯、弯曲
へこみ
凹下、瘪
汚染(おせん)
污染
混合(こんごう)
混合、混杂
漏出(ろうしゅつ)
漏出、泄出
噴火(ふんか)
火山喷发
海水(かいすい)
海水
侵入(しんにゅう)
侵入
艀(はしけ)
舢板、驳船
乗揚(のりあげ)
触礁、搁浅
避難港(ひなんこう)
避难港
投荷(なげに)
抛弃货物、抛货
船艙(せんそう)
船舱、货舱
海没(かいぼつ)
货物落海
悪意損害危険(あくいそんがいきけん)
恶意损害险
免責危険(めんせききけん)
免责风险、除外风险
一般免責約款(いっぱんめんせきやっかん)一般免责条款、一般除外责任条款
不法行為(ふほうこうい)
不法行为
73 起因する(きいんする)
自然消耗(しぜんしょうもう)
瑕疵(かし)
原子核(げんしかく)
分裂(ぶんれつ)
融合(ゆうごう)
放射能(ほうしゃのう)
兵器(へいき)
保険金額(ほけんきんがく)
保険料(ほけんりょう)
最高額(さいこうがく)
保険期間(ほけんきかん)
経路(けいろ)
特別約款(とくべつやっかん)
倉庫間約款(そうこかんやっかん)
輸出 FOB 保険(ゆしゅつ FOB ほけん)
船側(せんそく)
予定保険(よていほけん)
改めて(あらためて)
個別予定保険(こべつよていほけん)
包括予定保険(ほうかつよていほけん)
保険求償(ほけんきゅうしょう)
被る(こうむる)
不備(ふび)
液体(えきたい)
流出(りゅうしゅつ)
写し(うつし)
求償状(きゅうしょうじょう)
L/C 認定(にんてい)
保険証券(ほけんしょうけん)
保険請求権(ほけんせいきゅうけん)
保持者(ほじしゃ)
増し(まし)
74 起因
自然消耗
瑕疵
原子核
分裂、裂变
融合、聚变
放射能
兵器
保险金额
保险费
最高额
保险期间
路径、途径
特别约定条款
仓至仓条款
出口 FOB 保险
船边、船舷
预约保险、预定保险
再次、另行、重新
逐项预约保险
总括预约保险
保险索赔
遭受、蒙受
不完备
液体
流出、外流
副本、抄件
索赔书 信用证
认定
保险单
保险金索赔权
持有人
追加、加多、增加
第七章
決済
ポイント
1.手形 並為替 逆為替
2.荷為替手形による決済方法
3.荷為替手形と船積書類
4. 信用状決済の流れ 信用状取引の留意事項
第一節
外国との決済方法
貿易決済の方法(種類)はいくつかあり、外国為替による資金の流れは「並
為替」と「逆為替」に大まかに区別される。貿易取引(いわゆる外国との輸出
入取引)は通常「逆為替」が、貿易外取引(貿易取引以外のもの)は「並為替」
が用いられる。概観しておくと下図の通り分類できる。
一、手形
国際間の貿易取引における代金決済は、ほとんど為替手形によって行われて
いる。並為替で振り出された手形には約束手形(Promissory Note)、為替手形
(Bill of Exchange or Draft)、小切手(Check or Cheque)などがある。
1.約束手形
約束手形は、その発行者(振出人)が一定の金額の支払いを約束する形式の
手形である。支払い約束を本体とするため、振出人が支払人に宛てて一定金額
の支払いを委託する「為替手形」とは本質的に異なる。振出人が手形の発行者
であるとともに、主たる債務者となって為替手形の引受人と同一の義務を負い、
特に支払人の存在を必要としない。
2.為替手形
発行者(振出人)が第三者(支払人)あてに一定の金額を受取人、またはそ
75 の指図人に支払う旨を委託する形の手形である。
第三者に対して支払いを委託する点で、振出人が自ら支払うべき旨を約束す
る「約束手形」と本質的に異なる。
振出人は手形の発行者ではあるが、本来、支払わなければならない者ではな
く、支払人が引受け又は支払いを拒絶したとき償還義務を負う者に過ぎない。
支払人は、振出人から支払いの委託を受けているだけで、そのままでは手形上
の義務を負う者ではなく、自ら引受けという手形行為をした際に手形の主たる
義務者(引受人)となる。従って、支払人が引受けをするまでは、手形の主たる
義務者は存在せず、支払人が支払い又は引受けを拒絶した際に、振出人が償還
義務を負うので、その信用によって手形は流通性を与えられる。為替手形は送
金又は代金取立ての手段として利用される。
3.小切手
振出人が支払人である銀行に宛てて一定金額の支払いを委託する一覧払い
の有価証券である。小切手は、現金支払いの煩雑さと危険を避けるため、あら
かじめ銀行に預金しておき、この預金を支払いに充てるものであり、経済的機
能が著しい。
二、並為替
並為替とは、送金人から受取人に資金を送金する方法で、送金為替とも呼ば
れる。為替の取り組み及び送付と資金の流れは同一方向になる。
輸出業者
輸入業者
3
輸出地銀行
1
2
輸入地銀行
上記図の流れを解説すると、1.輸入業者は輸入地銀行に送金を依頼する。2.
輸入地銀行は輸出地銀行に支払いを指図する。3.輸出地銀行は輸出業者に代金
を支払う。
並為替には銀行為替と郵便為替による決済方法がある。
銀行為替は通常の貿易関係での決済に利用されるが、決済手段として、小切
手 送 金 ( Demand Draft=D/D )、 銀 行 為 替 を 郵 便 で 送 る 郵 便 送 金 ( Mail
Transfer=M/T)、銀行為替を電信で送る電信送金(Telegraphic Transfer=T/T)
の方法がある。
郵便為替は通常、貿易外支払いや小口の取引決済、個人の送金などで利用さ
れている。郵便為替の送金方法には、為替を組んで送金する為替送金、相手の
口座に振り込む振込為替、自分の口座から相手の口座に振り替える振替などが
ある。急ぐ場合、電信で送金できるようになっている。
三、逆為替
逆為替とは、輸出者が自ら荷為替手形を輸入者宛に振り出し、代金を輸出者
76 側から取り立てる為替決済方法を言う。逆為替で振り出された為替手形に船積
書類を添付するものを荷為替手形(Documentary Bill)、添付されない裸手形
(Clean Bill)がある。輸出者は荷為替手形を取り組み、荷為替手形の取立て
を取立銀行に依頼し、取立銀行は輸入者より手形代金の取立てを行一連の荷為
替手形の流れる方向と資金の流れる方向が逆になっているので逆為替という。
輸出業者
1
輸入業者
2
4
3
7
買取銀行
5
6
取立銀行
上記図の流れを解説すると、1.輸出業者は買取銀行に荷為替手形を呈示す
る。2.買取銀行は輸出代金を支払う。3.買取銀行は取立銀行に荷為替手形と
船積書類を送付する。4.取立銀行は輸入業者に荷為替手形を呈示する。5.輸
入業者は取立銀行に輸入代金を支払う。6.輸入業者は取立銀行から船積書類
を受領する。7.銀行間は決済の取立てをする。
逆為替方式には、信用状付荷為替手形決済による方法と信用状なしの荷為替
手形決済による方法がある。
1.信用状付荷為替手形決済
荷為替手形とは船積書類の添付された手形である。荷為替手形が信用状に基
づいて振り出された場合に、信用状付荷為替手形となる。この方法は外国との
貿易取引においては信用状を基本にして決済が行われるので、外国貿易の決済
手段として最も一般的に利用されている。
2.信用状なしの荷為替手形決済
信用状なしで、荷為替手形だけで決済する場合には、支払いに対する銀行の
保障がなく、危険率が高いため、取引相手が信用できる場合に限られる。しか
し、信用状開設の手数料や経費が不要という長所がある。信用状なし荷為替手
形決済には、支払渡し(D/P)、引受渡し(D/A)などの方法がある。
第二節
荷為替手形による決済方法
通常の貿易取引に関する決済は荷為替手形の発行により決済される。この荷
為替手形決済方式は(1)信用状による手形の決済、(2)信用状なしの支払渡
し(D/P)と引受渡し(D/A)手形による決済がある。
一、信用状による手形決済
77 外国との取引では売買契約をしていても、現金前払いでない限り、輸出者に
は決済が終わるまで支払いの保証がない。信用状はこうしたそうした危険性を
避けるため、輸入者に代わって銀行が一定期間、一定金額の支払いを保証する
保証状である。これにより輸出者は安心して取引することができる。
貿易取引に利用される信用状は荷為替信用状で、輸入者の依頼により輸入地
の銀行が、自行または輸入者を手形上の支払人として、輸出者に対して荷為替
手形を取り組むよう指図し、輸出者あてに発行する。買取銀行は輸出者が提出
した信用状に定められた船積み種類を審査し、信用状条件に合致していれば、
手形を買い取る。しかし、銀行自ら船積貨物を検査したり売買契約に介入する
わけではなく、決済上の種類取引をするにすぎない。信用状の流れは第四節で
解説する。
二、D/P と D/A
信用状なし決済は D/P(Documents against Payment 支払渡し)と D/A
(Documents against Acceptance 引受渡し)に分けられる。信用状なし決済
は、信用状がないため、代金回収に対するリスクが大きい。
D/P 手形決済は支払人が手形の支払いを行うと同時に、付属船積書類を引き
渡す条件のものである。従って、一覧払い(At Sight)の手形は D/P 条件の手
形である。
D/A 手形決済は支払人が期限付き荷為替手形を引き受けると同時に、付属船
積書類を引き渡す条件のものである。期限付き手形のほとんどは D/A 手形決済
である。
第三節 荷為替手形と船積書類
一、荷為替手形
輸出代金決済の一般的方法として、信用状の有無にかかわらず、荷為替手形
を作成し、銀行に取立依頼をする。貿易決済に使用する手形は、配達の事故や
遅延などを防ぐために2通作成する。
第 1 券(First Bill of Exchange)には船積書類の正本各一部ずつ、第2券
(Second Bill of Exchange)には船積書類の副本各一部ずつ添付する。為替
手形の記入要領は次のとおりである。
①手形の番号。②振出地、振出日。③手形の金額、数字で記入する。④手形
支払期限。手形は一覧払いの場合は At sight という形で結ぶ。手形はが一覧
後60日払いであれば At 60 days after sight と記入する。⑤手形買取銀行。
⑥手形の金額、文字で記入する。⑦輸入者。名宛人、支払人と同一である。⑧
から⑩信用状付荷為替手形の場合は、信用状発行銀行名、信用状の種類、番号
及び発効日を記入する。振出人は輸出者である。
78 Bill of Exchange
No AB-9958
(手形番号)①
For US$250,000 (手形金額)③
Tokyo
Jul 30-1992(振出日)②
At xxxxx (手形支払期限)④ sight of this First Bill of Exchange(Second of
the same
Tenor and date being unpaid)pay to :THE ZENKOKU BANK ,LIMITED(振込銀行)⑤ or order
sum of
SAY US DOLLARS TWO HUNDRED FIFTY THOUSAND ONLY(手形金額)⑥
Value received and change the same to account of GEORGE,WASHINGTON INC NEW YORK,NY,
10048.USA
(輸入者名)⑦
drawn under
AMERICA BANK NEW YORK (L/C
発行銀行)⑧ Letter of Credit No. ABC-5033 (L/C発行番号)⑨ dated June 30,1992
(L/C発行日)⑩
To, U.S.A BANK
TOKYO JAPAN
名宛人(手形の支払人)
印紙
NIPPON MANUFACTURING CO.LTD.
(振出人の署名)
Signed
二、船積書類
輸出者は船積が完了し、船積書類と輸出申告書がそろった段階で、取引銀行
あるいは買取銀行に手形の買取を依頼する。
手形の買取手続きには次の必要書類をそろえる。信用状付荷為替手形の場合
は、信用状に記載されている必要書類をすべてそろえなければならない。
1.為替手形(Bill of Exchange)
2.信用状(L/C)
3.船積書類(Shipping Documents)
船荷証券 (Bill of Lading)、保険証券(Marine Insurance Policy)、
送り状 (Customs Invoice)、包装明細書(Packing List)
4.関連書類
原 産 地 証 明 書 ( Certificate of Origin )、 検 査 証 明 書 ( Inspection
Certificate)
第四節
信用状
外国との取引は国内での取引と異なるため、売買契約をしていても決済が終
わるまで支払いの保証がない。そこで、輸入者に代わって、信用のある者が支
払いを保証してくれれば安心して取引が行え、取引も安定して進んでいく。信
用状はこのような役割を果たすものである。
信用状(L/C:Letter of Credit)とは、輸入地の銀行が輸入者に代わって
一定期間、一定金額の支払いを保証する保証状である。これがあれば、たとえ
輸入者が代金を支払えなくなっても、L/C の発行銀行が支払うので、輸出者は
79 安心して貨物を船積できる。
国際商業会議所(ICC)では、信用状の取り扱いや解釈が国によって異なる
ことから起こる問題を処理するため、1933 年「荷為替手形信用状に関する統
一規則及び慣例」を制定し、各国の銀行は、これに従うことになっている。
「荷
為替手形信用状に関する統一規則及び慣例」は普通「信用状統一規則」と呼ば
れ、1951 年、1962 年、1974 年、1983 年、1993 年に改定が重ねられ、現在で
は国際的取引ルールとなっている。
また、
「信用状統一規則」では、
「信用状取引においては、すべての関係当事
者は、書類の取引を行うものであり、その書類がかかわる物品、役務またはそ
の他の行為の取引を行うものではない」と規定している。信用状統一規則は信
用状取引の一条件として活用されている。
一、信用状の当事者
輸出者、輸入者、開設銀行、通知銀行、買取銀行は信用状の主な当事者であ
る。
1.L/C 開設依頼人(Applicant):買主(輸入業者)が輸入地の銀行に L/C
の開設を依頼する。買主を L/C 開設依頼人と呼ぶ。
2.L/C 開設銀行(Issuing Bank):輸入地の銀行は買主の依頼を受けて L/C
を開設し輸出地の銀行へ送る。この輸入地の銀行を L/C 開設銀行と呼ぶ。
3.L/C 通知銀行(Advising Bank)
:L/C の到着を売主に通知する。この銀行
を L/C の通知銀行と呼ぶ。
4.信用状受益者(Beneficiary)
:L/C の宛先である輸出者をいう。L/C によ
る支払い確約の利益を受ける者である。
5.買取銀行(Negotiation Bank):買取銀行は売主からの買取依頼を受け、
書類と手形が L/C の条件と合致していれば、手形と書類を買取る。売主から買
取った手形と書類を L/C 開設銀行に送り、同時に、売主に支払った手形代金の
払い戻しを要求する。
6.確認銀行(confirmed bank)
:信用状に確認を与える銀行で、万一、信用
状の発行銀行が倒産したり、支払い不能になっても、確認銀行が支払いを保証
する。
二、信用状の種類
L/C は、以下のように、いくつかの種類に分類される。それ以外にもあるが、
通常は、以下の信用状が日常の貿易業務で利用されている。
1.取消可能信用状(Revocable L/C)と取消不能信用状(Irrevocable L/C)
信用状が発行された後、関係当事者の同意なく、取り消したり、内容の変更
ができないのが取消不能信用状である。反対に、発行銀行が受益者に対し事前
の通知なしに、随時変更または取消を行うことができるのが取消可能信用状で
ある。
取消可能信用状(Revocable L/C)であるか、取消不能信用状(Irrevocable
L/C)であるか、それを明示しなければならない。表示がない場合は取消不能
信用状とみなされる。
2.確認信用状(Confirmed L/C)と無確認信用状(Unconfirmed L/C)
80 確認信用状とは、発行銀行がその取消不能信用状の信用度を高めるために、
別の銀行にその信用状を確認させるもので、万一発行銀行が倒産したり支払い
不能になっても、確認銀行が支払いを保証するものである。信用度の低い発行
銀行や、外貨不足の特定国を除き、通常は取消不能信用状のみで十分である。
別の銀行がこの確認を加えていない信用状を無確認信用状という。
3.一覧払い信用状(At Sight L/C)とユーザンス信用状(Usance L/C)
一覧払い信用状は、手形の提示を受けた時点で決済が行われるものである。
それに対し、ユーザンス信用状は、手形一覧後 30 日、60 日などのように、支
払いを猶予する期限付きのものである。
4.譲渡可能信用状(Transferable L/C)
譲渡可能信用状は、第一の受益者が、支払い、引き受けもしくは買い取りな
どを授権された銀行に対して、信用状の全部または一部を、1者または2者以
上の第二の受益者が使用できるように要求することができる信用状である。こ
の場合、その旨を信用状面に「Transferable」と記載する。
5.回転信用状(Revolving L/C)
取引者との間で、同一種類の商品の取引が継続的に行われる場合に、取引の
たびに信用状を開設するのは輸入者にとって不経済である。そこで、有効期間
を長くし、その期間中は信用状金額の範囲内で何度でも買い取りをできるよう
にしたものが回転信用状である。
6.同時開設信用状(Back to Back Credit)
求償貿易を相互に厳格に履行するために用い、A 国と B 国の双方で開設され
る信用状は、同額で相殺できるものでなければ有効とならないことを条件とし
ている。
この場合、その旨明記しなければならない。
三、信用状の内容
信用状の中身はほとんど定型化されている。通常、次の項目は必須である。
1.信用状の種類、取消不能の信用状か、一覧払い信用状か、信用状番号や
日付
2.受益者(普通は輸出者)、通知銀行、発行依頼人(通常は輸入者)、信用
状金額
3.船積期限、信用状有効期限
4~6.必要船積種類と各必要通数など
インボイス、パッキングリスト、B/L、保険証券
7.商品明細、貿易条件、船積地、仕向地、分割船積や積替えなどの条件
8.開設銀行の支払保証文言
9.信用状統一規則適用文言
81 The FIRST MARINERS BANK 30 Fifth Ave ,Seatle,USA 取消不能信用状 ① IRREVOCABLE DOCUMENTARY LETTER OF CREDIT No,SS0001 Datee of Issue: May 23,2001 L/C 番号と発行日 ② Beneficiary 受益者=輸出者 Advising through 通知銀行 LBT’S­KUN TRADE,CO.,INC., Hachinohe ,Japan Applicant 発行依頼人=輸入者 MARINE IMPORTING CO.,INC., Seatle,USA ③ Latest Date for Shipment June 30,2001 船積期限 ④
⑤
⑥
⑦
Dear Sir(s), In accordance with instructions received from the Applicant we hereby issue in your favour this letter of credit which is available by negotiation for your drafts in duplicate at sight drawn on us for the CIF invoice value,accompanied by the following docments: Full set of clean on board Shipping Company’s Bill of Lading to order of shipper and Blank endorsed, marked notify: S.S.S.Seattle and freight prepaid.B/L 3 通 Insurance Policy or Cretificate in duplicate,endorsed in blank for the invoice value of the goods plus 10 percent covering marine and War Risks.保険証券2通 Shipment of goods Acorns made in Aomori Hakkouda,as per Sales Contact Trading terms 貿易取引条件 Partial shipment 分割積み ⑨
Expiry Date of Credit July 10,2001 L/C 有効期限
Signed Invoice in triplicate. 署名済みインボイス3通 Packing list in triplicate. パッキングリスト3通 輸入貨物 ⑧ The AOHACHI BANK,LTD., Aomori,Japan Credit Amount L/C 金額 US $ 4,500.00(US Dollors Four Thousand Five Hundred Only) No.0001 dated May 21,2001 CIF Seattle シアトル向け CIF 船積地は八戸、
Shipment from Hachinohe to Seattle 仕向港はシアトル Prohibited 禁止
This credit is available with any bank by negotiation. オープン信用状 This letter of credit shall be subject to the Uniform Customs and Practice fir Documentary Credit 1993 The FIRST MARINERS BANK Signature 82 四、信用状決済の流れ
輸出者は船積が終わると、代金回収のため、為替手形と信用状条件と合致す
る船積書類一式を用意する。この輸出手形を買取銀行に提出して買取を依頼す
る。通常、買取銀行と通知銀行は同じ銀行で、買取銀行は信用状と船積種類を
点検して、問題がなければ、輸出代金を輸出者に支払う。
買取後、買取銀行は手形と船積書類を銀行に送付し、銀行間の決済手続きに
よって、代金を回収する。信用状発行銀行は信用状開設依頼人(通常は輸入者)
に手形を呈示して、手形代金の支払いと引替えに、船積書類を引き渡す。輸入
者は、受け取った船積書類をもとに船会社から輸入貨物を引き取る。
信用状の流れは次の図の通りである。
1.輸入者は輸入地銀行に信用状の発行を依頼する。2.発行銀行は通知銀行
を経由して受益者である輸出者にを信用状発行する。3.信用状を受け取った
通知銀行は受益者にその旨を通知する。4.受益者(輸出者)は信用状の条件
どおりに貨物を輸出し、船積書類 B/L と引替える。5.輸出者は為替手形に船
積書類を添えて、買取銀行に買取を依頼する。買取銀行は信用状条件と船積書
類をチェックし、その条件と一致していたら、受益者に代金を支払う。6.買
取銀行は為替手形と船積書類を発行銀行に送付し、手形代金の支払いを受ける。
83 7.信用状開設銀行は手形を依頼者(輸入者)に呈示して、代金の支払いと引
替えに船積書類を引き渡す。8.輸入者は船積書類を船会社に提出し、引替え
に輸入貨物を受け取り、輸入取引は完了する。
五、信用状取引の留意事項
輸出者は信用状を受け取ってから、直ちに信用状の内容、条件などをチェッ
クしなければならない。注意点は以下のいくつかがある。
1.信用状条件と契約条件のチェック
信用状開設銀行、通知銀行、為替買取銀行は売買契約や船積に関係がなく、
書類審査だけが義務付けられているので、輸出者は信用状受領後、信用状の条
件と契約の条件が一致しているかどうかをチェックしなければならない。
(1)開設銀行の信用度の確認。信用状は取り消し不能が原則であるが、信用
状発行銀行が倒産すれば、支払保証はなくなってしまうため。こうした恐れが
ある場合は、確認信用状を要求すべきである。
(2)商品の品名、品質、等級、包装、価格、総額は契約と一致しているかど
うか、船積期限は契約通りであるかどうか、分割船積(Partial Shipment)、
積替え(Trans Shipment)の可否の確認。「信用状統一規則」の規定により、
信用状に特約がない場合は、分割船積と積替えが許される。紛争を避けるため
に、信用状に明確に規定したほうがよい。信用状の期限は船積終了後、為替手
形、船積書類などを整備に時間の余裕があるかどうか確認し、輸出者は信用状
の有効期限内、船積後 21 日以内に、買取銀行に買取を依頼しなければならな
い。
契約と異なる場合、受益者である輸出者は直ちに輸入者に対して、信用状条
項の変更(Amendment)を要求しなければならない。
2.信用条件と船積書類の整合性
荷為替信用状による取引では、荷為替手形の買取にあたり、買取銀行は信用
状規定の船積書類の内容を確認し、書類の形式、字句、内容が信用状の文言と
厳密に一致しているかどうかを確認のうえで買取に応じることが義務付けら
れている。もし不一致(Discrepancy=ディスクレ)があれば、買取銀行は原則
として荷為替手形を買取らない。細かいことであっても、手形買取拒否の理由
となり得るため、船積書類の厳密なチェックが必要である。
信用状で要求している書類はすべて揃っているか、必要な通数が揃っている
か、内容に漏れはないか、ミスタイプはないか、各条項は条件とすべて一致し
ているか、適正な印章、サインがあるかなどをチェックしなければならない。
応用文例
信用状開設の要請
拝啓
貴我双方 3 月 2 日付注文書第 85 号でご注文いただきました品は来月 5 月中
旬に発送を予定していますので、一覧払い、当社を受益者とする総額 20 万ド
ル、取消不能の信用状を開設していただきますようお願い申し上げます。
84 敬具
信用状の改正の要請
拝啓
LC3301 番の信用状によりますと直行船積とし、積替えは認められないと規
定されております。実は、貨物が予想以上に多く、スペースが取れない状態と
なっております。
このため、荷渡しが遅れ、契約期日には間に合わなくなる恐れがございます
ので、信用状を積み替え可能に訂正していただきたく、お願い申し上げます。
敬具
単語
決済(けっさい)
外国為替(がいこくかわせ)
並為替(なみかわせ)
逆為替(ぎゃくかわせ)
概観(がいかん)
前払い(まえばらい)
後払い(あとばらい)
荷為替手形(にがわせてがた)
裸手形(はだかてがた)
手形(てがた)
小切手(こぎって)
振出人(ふりだしにん)
支払人(しはらいにん)
委託する(いたくする)
旨(むね)
拒絶(きょぜつ)
償還義務(しょうかんぎむ)
約束手形(やくそくてがた)
為替手形(かわせてがた)
償還(しょうかん)
義務(ぎむ)
煩雑(はんざつ)
銀行為替(ぎんこうかわせ)
荷為替信用状(にがわせしんようじょう)
荷為替(にがわせ)
口座(こうざ)
振込(ふりこみ)
振り替える(ふりかえる)
引受人(ひきうけにん)
前払い(まえばらい)
85 结算
外汇、国外汇兑
顺汇
逆汇
概况、梗概
预付
后付
跟单汇票
光票
票据
支票
出票人
付款人
委托
意思、要点
拒绝
偿还义务
本票
汇票
偿还
义务
繁杂、复杂
银行汇兑
跟单信用证
押汇
银行帐号
存入
转帐
承兑人
预付货款
D/P 手形
D/A 手形
ユーザンス
期限付き手形(きげんつきてがた)
支払期日(しはらいきじつ)
満期日(まんきじつ)
外貨建て(がいかだて)
手形振出地(てがたふりだしち)
手形振出日(てがたふりだしび)
手形振出人(てがたふりだしにん)
手形作成日(てがたさくせいび)
依頼人(いらいにん)
受益者(じゅえきしゃ)
割引(わりびき)
信用状(しんようじょう)、L/C
取立銀行(とりたてぎんこう)
開設銀行(かいせつぎんこう)
通知銀行(つうちぎんこう)
買取銀行(かいとりぎんこう)
確認銀行(かくにんぎんこう)
取消可能信用状(とりけしかのうしんようじょう)
取消不能信用状(とりけしふのうしんようじょう)
一覧払い信用状(いちらんばらいしんようじょう)
ユーザンス信用状
猶予(ゆうよ)
譲渡可能信用状(じょうとかのうしんようじょう)
回転信用状(かいてんしんようじょう)
同時開設信用状(どうじかいせつしんようじょう)
求償貿易(きゅうしょうぼうえき)
相殺(そうさつ)
呈示(ていじ)
荷為替手形信用状に関する統一規則及び慣例
整合性(せいごうせい)
積替え(つみかえ)
スペース
86 付款交单
承兑交单
宽限期
远期汇票
支付日期
票据到期日
用外币为计价单位
出票地
出票日
出票人
票据做成日
申请人、委托人
受益人
贴现、打折、减价
信用证
托收银行
开证银行
通知银行
议付银行、偿付银行
保兑银行
可撤销信用证
不可撤销信用证
即期信用证
远期信用证
延期、缓期
可转让信用证
循环信用证
对开信用证
易货贸易
抵消
出示
跟单信用证统一惯例
一致性
转船
舱位
第八章
紛争の解決
ポイント
1.クレーム:違約行為 違約責任 損害賠償 違約金
2.不可抗力:意外事故 範囲 分類 包括的表現 列挙主義
3.紛争の解決:和解 調停 仲裁 訴訟 承認と執行
売買契約が成立した時点から、履行の段階に入る。売買双方ともに契約どお
りに履行すれば問題はないが、万一トラブルが生じた場合、当事者としてはど
のように対応すればいいかが問題になる。国際取引では多方面において紛争や
クレームが多発するので、ここでは紛争解決に関する問題を検討してみる。
第一節
クレーム
一、トラブルとクレーム
トラブルとは、英語の「Trouble」、
「Dispute」の意味で、国際取引の中で起
こる一切の紛争はすべてトラブルと言える。クレームとは英語の「Claim」の
音訳で、トラブル発生後、損失を蒙った契約の一方の当事者が違約側に権利の
回復や損害賠償を請求することを言う。クレームはその内容によって、貿易ク
レーム(Trade Claim)、運送クレーム(Transportation Claim)、保険クレーム
(Insurance Claim)の三つに分けられる。貿易クレームは売買当事者間に起こ
るクレームであり、運送クレームと保険クレームはそれぞれ荷主が運送業者或
いは保険会社に対して提起するものである。国際取引において、クレームとは
一般的に貿易クレームを指すので、本章では、主として貿易クレームを紹介す
る。
二、違約行為と違約責任
契約を締結した双方が契約どおりに履行すれば、トラブルが発生しないので
当然クレームも発生しない。クレームの提起は違約行為があることを前提とし
ている。一般的には契約当事者に違約行為があれば、違約責任を負わなければ
ならない。国によっては違約責任に関する規定も異なるので、国際取引上では
十分注意を払う必要がある。
1.「国際物品売買契約に関する国連条約」における規定
ウィーン売買条約は、売主または買主の契約違反に対し、代替品引渡しを含
む履行請求、代金減額、損害賠償、契約解除などの救済手段を認めているが、
87 代替品引渡し請求及び契約解除については、原則として、「重大な契約違反
(Fundamental Breach)」があった場合にのみ求めている。条約の第 25 条では
下記のように「重大な契約違反」を定義している。
「当事者の一方による契約違反は、その契約の下で相手方が期待するのが当
然であったものを実質的に奪うような不都合な結果をもたらす場合には、重大
なものとする。ただし、違反をした当事者がそのような結果を予見せず、かつ、
同じ状況の下でその者と同じ部類に属する合理的な者もそのような結果を予
見しなかったであろう場合を除く。」
次のケースを見よう。
A 社と B 社は T103 型商品について売買契約を結んだ。B 社は貨物を受領して
検査したところ、商品が T103 型ではなく T104 型であることに気づいた。B 社
はどうすればいいか。
上記のケースでは、A 社が引き渡した貨物は契約と一致していないので、契
約目的の達成は困難であり、すでに「国際物品売買契約に関する国連条約」が
規定する「重大な契約違反(Fundamental Breach)」になるので、B 社は損害
賠償ないし解約などの権利が与えられる。
2.「中華人民共和国契約法」における規定
中国の契約法でも、違約行為について詳しく定めている。
「当事者の一方が契約義務を履行せず、または約定通りに履行しなかった場
合は、履行の継続、救済措置の採用、または損害の賠償等の違約責任を負わな
ければならない。」
「品質が約定に適合しない場合は、当事者の約定に従い違約責任を負わなけ
ればならない。違約責任に関しての約定がなく、または約定が不明確で、本法
律第 61 条の規定によっても確定できない場合は、被害者の標的物の性質及び
損失程度に応じ、修理、交換、やりなおし、返品、価格または報酬の減額など
の違約責任を合理的に選択して相手方に請求することができる。」
「当事者の一方が契約義務を履行せず、または約定通りに履行しなかった場
合、その義務の継続履行または救済措置を講じた後も、相手方になお損失があ
る場合は、その損失を賠償しなければならない。」
三、貿易クレームの内容
1. 品質・数量に関するクレーム
品質不良(Inferior Quality)、品質相違(Different Quality)、不完全包
装(Bad Packing)、破損(Breakage)、着荷不足(Shortage)等。
2.貨物受渡しのクレーム
船積相違(Different Shipment)、船積遅延(Delayed Shipment)等。
3.価格、決済に関するクレーム
L/C の開設遅延等。
88 4.マーケット・クレーム(Market Claim)
国際取引において、さまざまな原因で市場価格の低落が生じる。この場合、
買主が自己の損失を補うために、売主にクレームを提起することがある。いわ
ゆるマーケット・クレームのことである。取引中、クレームの問題とするに足
りない細やかなことについても、買主は売主に対して不当なマーケット・クレ
ームを提起する場合が多いため、売主は特にこの問題に注意する必要がある。
四、貿易クレームの原因
クレームを引き起こす違約行為はどちらにあるかによって、貿易クレームは
「売主によるクレーム」、
「買主によるクレーム」に分けられる。しかし、どち
らによるものにしても、その原因としては、一般的に次のことが考えられる。
①信用調査の不備
②法制上の相違
③度量衡や規格の相違
④貿易知識の欠如
⑤契約条件の不明確
⑥手続き上の不注意
⑦輸送上の危険
⑧相場の変動
⑨言語の相違
⑩その他の原因
五、クレーム条項と違約金条項
クレームの事前対策として輸出入契約に「クレーム条項」或いは「違約金条
項」を明記するのは一般的なやり方である。一般的には、前者だけで済むが、
機械設備などの大口取引の契約なら、
「クレーム条項」のほかに「違約金条項」
を明記する場合もある。
1.クレーム条項(Discrepancy and Claim Clause)
クレーム条項では、一方が違約した場合、他方が損害賠償を請求できると明
記する以外に、クレームの依拠、請求期限、賠償の方法、金額、費用分担など
を明記する必要がある。損害賠償は事前に金額を定められず、損害の実情によ
って決めるのが一般的である。
クレーム条項の例を一つ見よう。
「貨物が到着後、もし買主が貨物の品質或いは重量に対して異議がある場合、
日本の商品検査機関の発行する検査報告書により、船が日本の港湾に到着後
30 日以内に売主へ提出することができる。もし売買双方のいずれか一方が不
可抗力でない原因により、本契約書に規定されている各項目を履行せず、相手
側に損失を蒙らせたとき、相手側は状況を見てクレームを出すことができる。
その賠償の金額は売買双方が協議した上で決定する。」
2.違約金条項
違約金条項は罰金条項(Penalty Clause)とも呼ばれ、契約に違反した側が
その罰として相手方に定額の金銭を支払うことを定める契約の一項目である。
当事者間で約束された金額を「違約金」或いは「罰金」と呼ぶ。
違約金額の規定は通常契約金額の何割かといったように一定の金額を定め
89 る。また最高額を規定するのが一般的である。違約金条項に関する規定は国に
よって違うから、相手国の法律が通じない場合、わが側が輸出側の契約には違
約金条項を設置しないほうが良い。
3.「損害賠償金」と「違約金」との違い
一般的には、損害賠償は実損がないと、無理に請求しても認められない。そ
れとは反対に、損失がなくても、相手側に違約行為さえあれば、違約金は請求
できる。
六、クレーム処理中の注意事項と対策
1.被害側は次のことに注意する必要がある
①相手に違約行為があるかどうか、また、当方の損失は相手側の違約行為に
よるものであるかどうか、確かめておく必要がある。もし船舶会社或いは保険
会社の責任であれば、契約の相手側にクレームを提起することはできない。
②クレームの請求は契約で定めた期限内に提起すること。契約で定めていな
い場合、法律で定めた期限内に提起することに注意する。
③クレームの金額を合理的に決めること。また、必要な書類を準備すること。
2.加害側はクレームを提起された場合、次のことに注意すべきである
①当方は違約したか、相手側に損失があるか、また相手側の損失は当方の違
約行為によるものかどうか。
②相手側のクレーム請求は期限内であるか、また、書類が全備しているかど
うか。
③明らかに当方の責任であれば、相手側と協議する上で、できる限り賠償金
額を減らすこと
3.クレームの解決方法
クレームの解決方法には、司法的方法と非司法的方法がある。これは第三節
で紹介することにする。
第二節 不可抗力(Force Majeure)
一、不可抗力の概念
天災、戦争、暴動、伝染病、火災、ストライキ、政府の政策や法令による商
品の輸出入禁止など、当事者に責任のない事由により、契約履行が不能となる
事態を「不可抗力」と言う。不可抗力の概念から、次のことがわかる。
①意外事故が契約締結後に発すること
②損害は契約当事者自身の過失と粗忽によるものではないこと
③意外事故が双方のコントロールできない災難であること
不可抗力と認められれば、当事者の責任が免除され、契約を続けて履行する
90 か、それとも解除するか、不可抗力がもたらす影響の軽重によって決める。
二、不可抗力の範囲と分類
不可抗力は、通常必要と認められる注意や予防方法を尽くしても防止し得な
い外部から生じた障害を言い、自然力から生じたものと社会力から生じたもの
との二種類がある。前者には、たとえば、水害、火災、地震、大雪などがあり、
後者には、戦争、政府の禁令などがある。具体的な内容は次の表に示す。
不可抗力
内容
自然力から生じたもの
地震、台風、洪水、火災、流行病等
社会力から生じたもの
戦争危険
軍用機、軍艦による攻撃、外敵の
襲撃・占有、戦争に似た状態
内乱危険
暴動、叛乱、敵対行為等
政府の行為
輸出入禁止、港湾空港閉鎖等
労働争議
ストライキ、工場閉鎖等
一般的には、不可抗力は、以上のようなものを含んでいるが、国によって規
定が異なるので、その範囲も大いに違う。自然力から生じた意外事故について
は各国でほぼ同じ観点を持ち、一般的に不可抗力と認められる。しかし、社会
力に起因する意外事故に対する規定はかなり違うので、国際取引において、十
分注意する必要がある。例えば、アメリカでは、一般的に、自然力から生じた
災害を不可抗力と認めるが、社会力から生じたものを認めていない。
三、不可抗力条項
不可抗力に関するトラブルを避けるために、契約には不可抗力条項を明記す
るのが一般的である。その内容としては、不可抗力の範囲、効果、処理の原則、
方法、通知の期限、意外事故の証明書類、書類発行機構などがある。その中で、
不可抗力の範囲についての規定は最も重要であり、実務では下記の三つの表し
方がある。
①包括的表現
不可抗力事由を包括的に規定する方法である。
例:「不可抗力事由により船積遅延ないし船積不能の場合、売主はこれに対
して責任を負わない」
②列挙主義
列挙主義とは不可抗力事由を一つずつすべて挙げて明確に書き出すことで
ある。
例:「地震、火災、戦争、洪水、暴風雨により船積遅延ないし船積不能の場
合、売主はこれに対して責任を負わない」
③包括的表現と列挙主義の併用
91 例:「戦争、地震、洪水、暴風雨或いは他の不可抗力事由により船積遅延な
いし船積不能の場合、売主はこれに対して責任を負わない」
第三節 紛争の解決方法
国際取引中、トラブルやクレームが生じた場合の解決方法として、司法的方
法と非司法的方法の二種類がある。非司法的方法には、いわゆる和解、調停、
仲裁のことをさすが、司法的方法は訴訟のことをさす。
一、和解(Amicable Settlement)
和解とは、当事者間の話し合いによってトラブルやクレームを解決する方法
である。和解という解決方法は、トラブル、クレーム解決の最も合理的且つ望
ましい方法であり、国際取引におけるほとんどのトラブルやクレームはこの方
法で解決される。しかし、和解での解決は強制力がなく、一方が執行しない場
合、解決には至らない。
二、調停(Mediation)
調停とは、紛争当事者間による調停付託の合意に基づいて、当事者が選んだ
調停人が双方の主張を聞き、双方ともに認められる解決案(調停案)を出して、
トラブルやクレームを解決する方法である。調停による解決は当事者間の調停
合意が必要である。しかし、実際には調停機構、調停人の選定によって利害が
反対するかもしれないから、調停合意の達成が極めて困難である。また、調停
が合意され、調停案が出されても法律上の強制力がないので、受け入れられな
ければ解決に至らない。
三、仲裁(Arbitration)
トラブルやクレームが生じた場合、仲裁条項或いは仲裁付託契約に基づき、
公正な第三人である仲裁人によって仲裁案を出して紛争を最終的に解決する
方法を仲裁と言う。
1.仲裁合意――仲裁条項と仲裁付託契約
貿易クレームをはじめ、国際的商事紛争を仲裁によって解決するためには、
その前提として当事者間の仲裁合意が必要であり、その規定は次の二つの方法
がある。
①紛争が生じたときは仲裁により解決するという「仲裁条項」を契約条項の
ひとつにする。
②契約に仲裁条項がない場合は、紛争発生後、当事者がその紛争を仲裁によ
り解決するという「仲裁付託契約」を締結する。
2.仲裁条項と仲裁付託契約の内容
①仲裁範囲:どのような内容を仲裁の範囲に入れるかを明記しなければなら
92 ない。
②仲裁場所:仲裁場所の選定はどの国の仲裁規則を採用するかに関わってく
るので、できるだけ自国で仲裁を行うように努力すべきである。
③仲裁機関:仲裁機構には、臨時仲裁機構と常設仲裁機構とがある。
④仲裁人の選定:公正な仲裁人を選ぶことが重要である。
⑤仲裁規則:仲裁条項或いは付託契約に、どの国(地域)、どの仲裁機関の
仲裁規則を適用するかを明記する必要がある。国際商事仲裁において一般的に
は、仲裁地の規則を採用するが、仲裁地以外の他の国(地域)の仲裁機関の規
則を採用することも法律上認められている。
⑥仲裁判断の効力:一般的には、仲裁判断が最終的なもので、当事者が不服
であって法廷に提訴することはできない。しかし、国際商事仲裁の実践から見
れば、法廷に提訴することを許している国がある。ただし、法廷では、仲裁判
断全体を審査するのではなく、仲裁の手続き形式上に違法行為があるかどうか
を審査するに過ぎない。
⑦仲裁費用の分担:一般的には敗訴側が仲裁費用を負担するが、仲裁庭が実
情をみて費用分担を決めることもできる。
仲裁条項の例:
「契約履行におけるすべての紛争は双方で協議の上解決する。
協議によって解決不能の場合は仲裁を提起する。仲裁は中国で行い、中国国際
貿易促進委員会対外貿易仲裁委員会の仲裁手続規則を採用する。仲裁者の人選
は双方が同意した上で決める。仲裁の裁決は最終的な決定である。仲裁費用は
敗訴側が負担する。」
3.外国仲裁判断の承認と執行
仲裁判断の承認、執行に関しては、ほとんどの国が加盟しているニューヨー
ク条約が重要である。この条約の加盟国間では、一定の要件を満たせば、仲裁
判断の承認、執行が許容される。一般的には、仲裁より訴訟のほうがその承認
と執行に関してもっと厳しく制限されているので、国際取引上、仲裁が最も多
く選択される。
四、訴訟(Suit)
国際取引において起こる紛争が和解、調停、仲裁のいずれによっても解決で
きない場合は、訴訟が紛争解決の最終的手段となる。訴訟とは、裁判所の判決
によってトラブルやクレームを解決する方法である。
しかし、国際取引から生じた紛争を訴訟で解決するための国際裁判所という
ものは存在しない。従って、国際的紛争でも国内訴訟と同様に自国の裁判所に
提訴するか、または相手国の裁判所に提訴することによって解決するほかない。
それぞれのメリットとデメリットは次のとおりである。
項
目
メリット
自国での裁判
相手国での裁判
裁判官、弁護士は法例、判 勝訴の判決を得た場
93 例、商習慣を熟知している。 合の強制執行は容易
である。
デメリット
勝訴の判決を得ても、相手 自国の法令および判
方が自国に財産がなければ 例を熟知している裁
強制執行は不可能である。 判官を期待できない。
現地の有能な弁護士
を探すのに苦労する。
外国裁判所の判決は、その国の主権の行使であり、他国で直接執行すること
はできないため、被告の国の裁判所に提訴して執行を認める判決を得る必要が
ある。とはいえ、外国判決の承認には承認する国家の主権や自国民保護などの
問題が絡むので、いずれの国でも外国の判決に対しては厳しく、判決を認めな
い場合や、認めても執行に制限を設ける場合がほとんどである。
単語
回復(かいふく)
恢复
違約責任(いやくせきにん)
违约责任
ウィーン売買条約(ウィーンばいばいじょうやく)维也纳公约
(《联合国国际货物销售合同公约》的简称)
重大な契約違反(じゅうだいなけいやくいはん) 根本性违约
奪う(うばう)
剥夺、夺取
部類(ぶるい)
部类、种类
約定(やくじょう)
约定、规定
標的物(ひょうてきぶつ)
标的物
遣り直し(やりなおし)
重新做、返工
返品(へんぴん)
退货
講じる(こうじる)
讲授、谋取、采取
不良(ふりょう)
不好、不良
マーケット・クレーム
压价要求
低落(ていらく)
低落、降低
補う(おぎなう)
弥补
度量衡(どりょうこう)
度量衡
不明確(ふめいかく)
不明确
相場(そうば)
行市 行情 市价
変動(へんどう)
波动、变动
違約金(いやくきん)
违约金
罰金(ばっきん)
罚金
大口取引(おおぐちとりひき)
大宗货物交易
94 港湾(こうわん)
協議する(きょうぎする)
定額(ていがく)
実損(じっそん)
当方(とうほう)
司法(しほう)
港湾
协议、协商、磋商
定额
实际损失
这方、我方
司法
天災(てんさい)
暴動(ぼうどう)
伝染病(でんせんびょう)
事由(じゆう)
過失(かしつ)
粗忽(そこつ)
コントロール
軽重(けいじゅう)
尽くす(つくす)
障害(しょうがい)
自然力(しぜんりょく)
社会力(しゃかいりょく)
水害(すいがい)
大雪(おおゆき)
禁令(きんれい)
台風(たいふう)
流行病(りゅうこうびょう)
内乱(ないらん)
軍用機(ぐんようき)
軍艦(ぐんかん)
攻撃(こうげき)
外敵(がいてき)
襲撃(しゅうげき)
占有(せんゆう)
叛乱(はんらん)
敵対(てきたい)
閉鎖(へいさ)
労働争議(ろうどうそうぎ)
効果(こうか)
包括的表現(ほうかつてきひょうげん)
列挙主義(れっきょしゅぎ)
書き出す(かきだす)
天灾、自然灾害
暴动、暴乱
传染病
事由
过失
疏忽
控制
轻重
尽力、竭尽全力
障碍
自然力量
社会力量
水灾、涝灾
大雪
禁令
台风
流行病、时令病
内乱
军用飞机
军舰
攻击、袭击
外敌
袭击
占领、占有
叛乱
敌对
封锁、关闭、封闭
劳动争议
效果、后果
总括式表达
列举主义
摘录、摘抄、写出来
95 暴風雨(ぼうふうう)
併用(へいよう)
和解(わかい)
調停(ちょうてい)
仲裁(ちゅうさい)
訴訟(そしょう)
暴风雨
合用、并用、同时使用
和解
调停
仲裁
诉讼
話し合い(はなしあい)
商量、商议、商谈
強制力(きょうせいりょく)
强制力
執行する(しっこうする)
执行
付託(ふたく)
托付、委托
解決案(かいけつあん)
解决方案
調停案(ちょうていあん)
调停方案
利害(りがい)
利害、利弊
仲裁条項(ちゅうさいじょうこう)
仲裁条款
仲裁付託契約(ちゅうさいふたくけいやく)
提请仲裁的合同
仲裁機関(ちゅうさいきかん)
仲裁机构、仲裁机关
臨時(りんじ)
临时
常設(じょうせつ)
常设
仲裁規則(ちゅうさいきそく)
仲裁规则
国際商事仲裁(こくさいしょうじちゅうさい) 国际商事仲裁
仲裁判断(ちゅうさいはんだん)
仲裁裁决
不服(ふふく)
不服、存在异议
法廷(ほうてい)
法庭
提訴する(ていそする)
起诉
審査する(しんさする)
审查
敗訴側(はいそがわ)
败诉方
裁決(さいけつ)
裁决
加盟する(かめいする)
参加、加盟
ニューヨーク条約
纽约公约
《承认与执行外国仲裁裁决公约 》的简称
裁判所(さいばんしょ)
法院
メリット
优点、长处
デメリット
缺点、短处
裁判官(さいばんかん)
法官
弁護士(べんごし)
律师
判例(はんれい)
判例
熟知する(じゅくちする)
熟知、精通
勝訴(しょうそ)
胜诉
96 判決(はんけつ)
強制執行(きょうせいしっこう)
主権(しゅけん)
行使(こうし)
被告(ひこく)
絡む(からむ)
判决
强制执行
主权
行使
被告
牵涉、牵扯、纠缠
97 第九章
輸出入商品の検査と通関
ポイント
1.商品検査制度:プロセス 法定検査 検査の免除
2.輸出入通関:通関手続き 輸出入申告 税関の審査
3.関税と税率:最恵国税率、協定税率、特恵税率、普通税率
第一節
商品検査制度
中国輸出入商品検査法は 1989 年に施行され、2002 年に改定された。輸出入
商品は輸出入商品検査法に基づき、商品検査が行われる。国家出入境検査検疫
局(SAIQ)が統一管理を行い、各地方の出入境検査検疫局(CIQ)は各地域で
管理と実施にあたっている。対象商品は検査商品目録や法令で定められている。
対中輸出製品には、「中国製品品質法」と製品別「強制認証制度」が適用され
る。2005 年 12 月 1 日から 改定後の「輸出入商品検査法実施条例」が施行さ
れる。新条例の施行に伴い、1992 年 10 月 7 日に国務院が承認し、同月 23 日
に元国家輸出入商品検査局が公布した条例は廃止される。新条例は 6 章 63 条
で、総則、輸入商品の検査、輸出商品の検査、監督管理、法律責任、附則から
なる。
改定前の商品検査法は、商品検査の内容は商品の規格、数量、重さなどの商
業的条項を含むと定めていたが、改定後の商品検証法は輸出入商品に対し、統
一的な認証制度を実行し、合格評定のプロセスは標本抽出、検査、評価、検証
および合格保証、登録、認可、批准および各項の組合せを含んでいるが、商品
の規格、数量、重さなどの商業的条項を含まないと定めている。
また、改正後の商品検査法は、人類の健康と安全、動植物の生命と健康、環
境保全、詐欺防止、国の安全を守る原則に基づき、国の商品検査部門が輸出入
商品検査を実行しなければならない商品の目録を制定、調整すると定めている。
一、輸出入商品検証のプロセス
国家質量監督検査検疫総局が「検査実施輸出入商品種類表」を制定し、この
種類表に属する商品は質量監督検査検疫局の検査(品質、規格、数量、重量、
梱包、安全、衛生)を受けなければ通関および中国国内で販売、使用すること
ができない。
輸出商品の検査は各地の出入境検査検疫局(CIQ)に申請し、「輸出商品検
査依頼書」と契約書、信用状、生産工場検査書などの関連書類を提出し、商品
検査検疫局が書類審査をしたうえで、検査の依頼を受理する。受理後、抽出し
た標本を検査し、分析する。商品が合格した場合、輸出の通関が認められる。
輸入商品の検査は二種類に分けられる。一つは「検査実施輸出入商品種類表」
に属する商品で法定検査を受けなければならない。もう一つは、「検査実施輸
98 出入商品種類表」に属さない商品で商品検査検疫局に検査を必ずしも依頼する
必要はない。
二、法定検査
商品検査機構で法定検査される商品の範囲は以下の通りである。
①商品検査機構検査実施輸出入商品種類表に属する商品
②衛生検査の実施が必要な輸出食品
③検疫の実施が必要な輸出動物製品
④輸出危険物の包装容器性能検査と使用検査
⑤腐敗・変質しやすい食品、冷凍品を運搬する船倉、コンテナなどの適性検
査
⑥他の法律、法令及び関連国際条約で商品検査が定められている輸出入商品
三、検査の免除
国家質量監督検査検疫総局の検査免除規定に適合し、許可を得た場合は検査
が免除される。サンプル、贈物、販売目的でない展示品と他の非貿易性物品に
ついては、関係部門の証明書を持参すれば検査が免除される。
四、品質許可制度
安全・衛生などに係わる重要な輸出入商品に対しては、輸入商品安全品質許
可制度及び輸出商品品質許可制度を適用する。商品検査機構に許可書の申請を
し、受領されなければ商品を輸出入できない。輸出商品品質許可制度が適用さ
れるものは 9 種類あり、輸入商品安全品質許可制度が適用されるものは 47 種
類がある。
五、衛生登記制度
中国国内で輸出食品を生産・加工・保存する工場・倉庫は商品検査機構の審
査を受け、衛生登録、或いは衛生登記証を取得しなければ、その業務に従事す
ることはできない。
六、外国投資企業輸入商品についての検査
外国投資企業が輸入する自用品については、その企業自ら検査することが必
要である。合弁・合作企業の輸入商品については、法定検査と安全衛生に関係
するものを除き、その企業独自で検査する。外国投資企業の現物出資としての
設備、実物、及び合弁企業が外国側出資者に依頼して輸入する設備、実物につ
いては、商品検査機構に検査及び価値査定を申請する。
第二節
輸出入通関
貨物は輸出検査、輸出包装、荷印の刷込みが終わり次第、輸出通関をするた
めに輸出港の保税地域に搬入される。保税地域は輸出入貨物の検査や審査を行
うために、税関が指定し監視している地域である。輸出貨物を保税地域に搬入
すると同時に、税関で輸出申告手続きを行い、輸出許可が下りると通関が完了
99 する。
輸入通関については、輸入業者は通関業者に船積書類を渡し、陸揚げと輸入
通関を依頼する。通関が完了し、輸入関税および消費税の支払い後、貨物を引
き取ることができる。
一、輸出申告
1.申告事項
貨物を輸出しようとする者は、税関に輸出申告書を提出し、輸出申告をしな
ければならない。輸出申告書に記載する事項を申告事項と呼び、次のような項
目である。
①貨物の記号・番号・品名・数量及び価格
②貨物の仕向地並びに仕向人の住所(居所)及び氏名(名称)
③貨物を積み込む予定の船舶(航空機)の名称(登録記号)
④貨物の蔵置場所
⑤その他参考となるべき事項
2.必要な書類
輸出申告は、必要事項を記載した「輸出申告書」を税関長に提出すること
により行うが、輸出申告書の添付書類として、契約書とインボイスが必要とな
る。また、場合によっては、次の書類が必要となる。
①包装明細書
②輸出関係法令の許可・承認証等
③関税の軽減、免除又は払い戻しに関連して輸出申告の際、特定の書類の
提出を必要とされている貨物については、その書類
④輸出免税を受ける貨物については、輸出されたことを証明する申請書等
二、輸入申告
1.申告事項
外国貨物を輸入しようとする者は、税関に輸入申告をしなければならない。
輸入申告は、輸入申告書を税関に提出することにより行われる。この輸入申告
書に記載する申告事項には、次のような項目がある。
①貨物の記号・番号・品名・数量及び価格
②貨物の原産地及び積出地並びに仕出人の住所(居所)及び氏名(名称)
③貨物を積んでいた船舶(航空機)の名称(登録記号)
④貨物の蔵置場所
⑤その他参考となるべき事項
2.必要な書類
輸入申告は、必要事項を記載した「輸入申告書」を税関長に提出することに
より行うが、輸入申告書のほかに次の書類の提出が必要となる。
①契約書
②インボイス
③船荷証券(航空運送状)
④保険料明細書
⑤運賃明細書
⑥包装明細書
100 そのほかに、貨物の種類により、次の書類が必要となる。
①他法令の許可・承認証等(植物防疫法などの関税関係法令以外の法令によ
る許可・承認が必要な貨物の場合)
②特恵原産地証明書(特恵関税の適用を受けようとする場合)
③減免税明細書(減免税の適用を受けようとする場合)
三、税関審査
輸出入にかかわらず、税関で輸出入貨物の検査を行うのが一般的であるため、
税関に輸出入申告をし、税関の検査が必要とされる貨物については必要な検査
を受け、輸出入の許可を受けなければならない。この税関検査は、社会悪物品
の流入・流出を阻止し、貿易の秩序を維持するとともに、関税等の適正な徴収
を確保することを目的に行われる。具体的には、次のような観点から、輸出入
申告の内容と現品との同一性の確認が行われる。
①覚醒剤・麻薬、拳銃等の社会悪物品やコピー商品などの不正商品といった
輸出入が禁じられている物品がないか。
②食品衛生、植物防疫などの観点から、輸出入に関して行われている各種法
規制に基づいて必要な手続きがとられているか。
③原産地を偽ったり、誤認させたりする表示がなされていないか。
④適正な納税申告がなされているか。
第三節
関税と税率
一、関税
「中国税関輸出入税則」(2005 年版)によると、関税品目総数は、7,550
品目となっていて、貨物の物流に基づき、輸入関税と輸出関税に分けられる。
輸入関税の徴収は、自国の製品生産、販売を保護することが目的である。1991
年からは、段階的に関税率を引き下げており、WTO 加盟に伴い 2002 年 1 月 1
日より平均関税率は以前の 15.3%から 2003 年末に 11%に引き下げられ、2004
年に 10.4%、さらに 2005 年には 9.9%に引き下げられた。
1.税率
中国の輸入関税は複税制に属し、4種類の異なる税率を採用している。輸入
関税は「税関輸出入税則」(2005年版)に基づき、「最恵国税率」、「協定税
率」、「特恵税率」、「普通税率」に分類される。
①最恵国税率は、WTO メンバー国、あるいは中国と関税互恵協定を結んでい
る国・地域からの輸入品 2,414 税目(2005 年版)に適用され、2003 年の平均
最恵国税率は 11%である。また、暫定最恵国税率は、最恵国税率が適用され
る国・地域の輸入商品を対象とし、2005 年には 200 種以上の輸入商品に最恵
国暫定税率が適用された。日本からの輸入品に対しての課税は最恵国税率が適
用される。
②協定税率は、中国が参加し関税優遇条項を含む地域貿易協定のメンバー国
からの輸入品に適用される。バンコク協定の5カ国(韓国、インド、スリラン
カ、バングラデシュ、ラオス)の902税目が対象となる。
③特恵税率は、中国と特殊な優遇関税協定を結んでいる国・地域に適用され
101 る。バングラデシュからの20税目の輸入品が対象となる。
中国大陸は、香港・マカオと「経済・貿易関係緊密化協定(CEPA)」を締結
したことにより、2004年1月1日より、原産地が香港、マカオである273税目の
製品に対しゼロ関税を実施している。2006年1月1日までに上記の273税目以外
の輸入貨物に対しゼロ関税を実施する。それは、地域間のFTAに相当する。
④普通税率は、上述の 3 区分に当たらない国・地域からの輸入品に適用され
る。
2.関税計算の方法
関中国の関税は、従価税、従量税および両者を併用する複合税がある。
①輸入関税
従量税の課税基準は、重量・面積・長さ・容積・数量などである。
輸入品関税税額=単位ごとの税額×輸入数量
ビール、ビデオカメラなどの税目の商品は、従量税や複合税に適用される。
従価税の課税基準は、輸入品の関税価格である。
輸入品関税税額=関税価格×関税率
関税価格は、取引価格をもとに税関によって確定され、輸入品が着岸するま
での輸送費、その他の費用、保険費を含む。取引価格が確定できない場合、税
関によって、同様商品の取引価格や類似商品の取引価格、国内販売価格からの
差引、価格計算(コスト+利潤+費用+輸送費+保険費)、またはその他の合
理的方法に準じて確定される。
②輸出関税
従量税の課税基準は、重量・面積・長さ・容積・数量などである。
輸出品関税税額=単位ごとの税額×輸出数量
従価税の課税基準は、輸出品の関税価格である。
輸出品関税税額=関税価格×関税率
関税価格は、取引価格をもとに税関によって確定され、輸出品が離岸するま
での輸送費、その他の費用、保険費を含む。取引価格が確定できない場合、税
関によって、同様商品の取引価格や類似商品の取引価格、価格計算(コスト+
利潤+費用+輸送費+保険費)、またはその他の合理的方法に準じて確定され
る。
③課税基準
輸入は CIF 価格、輸出は FOB 価格で計算する。
二、関税以外の諸税
税関が徴収する関税以外の税目として、輸入増値税、消費税、船舶トン税が
ある。
1.輸入増値税
輸入増値税は 1994 年 1 月 1 日から実施されている。次に挙げる輸入品の税
率は 13%である。
①食糧、食用植物油、水道の水、暖房、冷気など
②図書、新聞、雑誌
③飼料、化学肥料、農薬、農機具など
④金属鉱物と非金属鉱物製品
⑤国務院が定めたその他の品物
102 上記の輸入品以外の輸入品の税率は 17%である。
2.消費税
「消費税暫定条例」(1994 年 1 月 1 日から実施)に基づき、中国国内で生産
と委託加工を行う会社および個人、当該条例に規定される消費品を輸入する会
社および個人は、消費税の納入が義務づけられている。消費税は従価税率また
は従量税率で納税額を計算する。
3.船舶トン税
船舶トン税は、外国船舶、外資企業が賃貸した外国籍船舶および中国国内の
合弁企業の船舶が、中国の港の施設を利用する際に徴収する税であり、従量に
基づき税額を計算する。
三、諸税の免除と還付
1.関税が免除・還付される商品
①関税額が 50 人民元以下の貨物
②商業価値のない広告品のサンプル
③外国政府、国際組織が無償寄付した物資
④通関する前に損失した貨物
⑤出入国船舶、航空機が積載した使用燃料、物資、飲食品
⑥AIDS 治療用の輸入薬物
2. 輸入増値税の免除
下記の輸入品は輸入増値税が免除される。
①農業生産者が販売する農業製品
②中古図書
③科学研究、科学実験または教育用の輸入メーター、機械
④外国政府、国際組織による無料援助輸入品、設備など
⑤外国が寄贈、返還した文物
3.「外商投資プロジェクトの非免税輸入商品目録」以外の商品
「外商投資企業指導目録」(2002 年 3 月 11 日修訂)の奨励類に該当し、技術
譲渡する投資項目に関して、投資総額内で自家用設備を輸入する場合、「外商
投資プロジェクトの非免税輸入商品目録」で明記した商品以外は、関税と輸入
増値税が免除・還付される。外国政府リースと国際金融組織リース項目で輸入
した自家用設備および加工貿易で外商が提供した価格のない輸入設備は、「外
商投資プロジェクトの非免税輸入商品目録」で明記した商品以外は、関税と輸
入増値税が免除・還付される。
4.外商投資企業が調達した国産設備
自家用設備を中国国内で調達する場合、上述の外商投資企業の輸入自家用設
備の免税制度と同じ要件で、調達した国産設備の増値税が還付される。
5.外商投資企業設備の輸入
「外商投資企業指導目録」(2002 年 3 月 11 日修訂)の許可類に該当し、製
品がすべて輸出される新規外商投資プロジェクトで設備を輸入する場合、輸入
関税と輸入増値税が先に徴収され、輸出を開始してから 5 年間毎年 20%ずつ
還付される。
6.保税地域内製品の輸出
保税地域内のインフラと生産用機械、設備、新規投資用物資、生産管理設備、
103 燃料、生産用車輌、交通用具と事務用品、および輸出製品を生産するために輸
入した原材料、部品、包装物資、貯蔵積換貨物などは、輸入関税と増値税が免
除または保税される。保税地域内の企業が生産・加工した製品の輸出は、輸出
関税と増値税が免除・還付される。
7.輸出奨励製品
国が輸出を奨励するために、輸出製品の増値税を還付する制度がある。輸出
製品は、国の輸出奨励品目、一般品目、国の輸出制限品目などに分けられる。
2004 年 1 月 1 日以降、還付率はそれぞれ 17%、13%、11%、8%、5%、0%の
6 段階とされた。
単語
目録(もくろく)
廃止する(はいしする)
附則(ふそく)
標本(ひょうほん)
抽出する(ちゅうしゅつする)
登録(とうろく)
認可(にんか)
批准(ひじゅん)
腐敗(ふはい)
変質する(へんしつする)
船倉(せんそう)
許可書(きょかしょ)
業務(ぎょうむ)
従事する(じゅうじする)
合弁(ごうべん)
合作(がっさく)
現物(げんぶつ)
査定(さてい)
税関(ぜいかん)
監視する(かんしする)
申告手続き(しんこくてつづき)
消費税(しょうひぜい)
申告事項(しんこくじこう)
仕向地(しむけち)
仕向人(しむけにん)
居所(きょしょ)
承認証(しょうにんしょう)
軽減(けいげん)
払い戻し(はらいもどし)
輸出免税(ゆしゅつめんぜい)
積出地(つみだしち)
仕出人(しだしにん)
目录
废止、停止、废除
附则
标本
抽出、提取
登记、注册
认可、许可
批准
腐坏、腐烂
变质
船舱
许可证、执照
业务
从事
合资
合作
实物、现货
审定、评定、核定
海关
监视、监管
申报手续
消费 税
申报事项、申报内容
目的地
收货人
住址、居所
核准书
减轻、减少
退还、返还
出口免税
装运地点
发货人
104 減免税(げんめんぜい)
現品(げんぴん)
覚醒剤(かくせいざい)
麻薬(まやく)
拳銃(けんじゅう)
防疫(ぼうえき)
偽る(いつわる)
納税申告(のうぜいしんこく)
品目(ひんもく)
輸入関税(ゆにゅうかんぜい)
輸出関税(ゆしゅつかんぜい)
課税(かぜい)
税率(ぜいりつ)
複税制(ふくぜいせい)
最恵国税率(さいけいこくぜいりつ)
協定税率(きょうていぜいりつ)
特恵税率(とっけいぜいりつ)
普通税率(ふつうぜいりつ)
互恵協定(ごけいきょうてい)
税目(ぜいもく)
暫定(ざんてい)
地域貿易協定(ちいきぼうえききょうてい)
バンコク協定(バンコクきょうてい)
FTA
従価税(じゅうかぜい)
従量税(じゅうりょうぜい)
複合税(ふくごうぜい)
関税価格(かんぜいかかく)
取引価格(とりひきかかく)
差し引く(さしひく)
増値税(ぞうちぜい)
船舶トン税(せんぱくトンぜい)
農機具(のうきぐ)
鉱物(こうぶつ)
国務院(こくむいん)
中古(ちゅうこ)
メーター
援助(えんじょ)
寄贈(きぞう)
返還する(へんかんする)
文物(ぶんぶつ)
減税(げんぜい)
委託加工(いたくかこう)
賃貸する(ちんたいする)
105 减免税
现货、实物
兴奋剂、刺激物
麻药、毒品
手枪
防疫
冒充、假冒
纳税申报
品目、品种
进口关税
出口关税
课税、征税
税率
复合税制
最惠国税率
协定税率
特惠税率
普通税率
互惠协定
税目
暂定
区域性贸易协定
曼谷协定
自由贸易协定
从价税
从量税
复合税
完税价格
交易价格、成交价格
扣除、抵补、相抵
增值税
船舶吨税
农业机械、农具
矿物
国务院
半新半旧
仪表、测量器
援助
捐赠、赠送
返还
文物
减税
委托加工
出租、出赁
還付(かんぷ)
積載する(せきさいする)
プロジェクト
該当する(がいとうする)
リース
インフラ
積換貨物(つみかえかもつ)
偿还、退还
装载
项目
相当、符合
出租、租赁
基础设施
转运货物
106 第十章
世界貿易機関(WTO)の概要
1.
2.
3.
4.
ポイント
GATT と WTO の概念、区別
WTO の基本原則、役割
中国と WTO
WTO 貿易体制のメリット
一、戦後の自由貿易体制と GATT
1929 年の世界恐慌後、植民地を持っていた先進資本主義諸国は、ブロック
経済体制をつくり、恐慌からの回復を目指した。その結果、世界貿易が縮小し
植民地を持たなかった日本やドイツを経済的に追い詰め戦争に走らせる要因
となったとの反省から、1944 年国際貿易の拡大を目指すブレトンウッズ体制
がスタートした。このブレトンウッズ体制によって IMF(国際通貨基金)と
IBRD(国際復興開発銀行=世界銀行)が、遅れて 1947 年 GATT(関税および貿易に
関する一般協定)が作られ、国際貿易の拡大を通じた経済成長を目指すアメリ
カ主導の IMF=GATT 体制が確立することになる。
GATT(General Agreement on Tariffs and Trade)(関税および貿易に関す
る一般協定)は関税や貿易障壁を軽減し自由・無差別の国際貿易の推進するた
め 1947 に設立された。ITO(国際貿易機関)設立の構想が挫折し、その代替機
関として設立された経緯から GATT は正式な国際機関ではなく、あくまで通商
と貿易に関する自発的な国際規約にすぎない。GATT では各ラウンドごとに交
渉が進められていった。
1.GATT の基本的性質
① 貿易無差別の原則。加盟国は最恵国待遇と内国民待遇を与えられる。
② 輸入/数量制限は認められない。特殊事情がある場合に限って、関税化が
認められる。
③ 国際貿易問題はできる限り協議によって進める。
④ 関税と非関税障壁を軽減するために交渉をし、その結果を条約文書に収
める。
2.GATT 発展の段階
GATT の初期の交渉では、「モノ」(=工業産品)やそれに関する関税引き下
げが対象であったが、64~67 年のケネディラウンドではダンピング問題、73
~79 年の東京ラウンドで非関税障壁も対象になり、86~94 年のウルグアイラ
ウンドでは農作物問題や知的所有権、サービス分野へ拡大され、以後、WTO へ
その精神が受け継がれた。
107 二、WTO(世界貿易機関)
WTO(World Trade Organization)は 1994
年マラケシュ会議で合意され、
「関税と貿
易に関する一般協定」(GATT)を吸収し、
1995 年1月1日に設立され、世界貿易秩
序を維持する国際組織として発足した。
WTO は三つの協定、つまり関税と貿易に関
する一般協定(GATT)、サービス貿易に関
する協定(GATS)と知的所有権(TRIPS)によって構築されている。WTO は世界
の貿易ルールを規定、維持する超国家的な国際経済立法と司法機関としての性
格を持ち、いかなる国の経済立法も WTO のルールに抵触することができない。
WTO は経済グローバル化の産物であり、経済グローバル化の制度的保障でも
ある。WTO は国際通貨基金(IMF)
、世界復興開発銀行(通称世界銀行)とともに、
世界経済の制度的枠組みとして、貿易、金融と開発を規定している。
WTO が発足するまでに、GATT は協定発効の 1948 年以後の 47 年間において、
関税削減と非関税障壁撤廃などの面で、多くの成果を挙げた。WTO の条約加盟
国も最初の 23 か国から 140 か国(2000 年 11 月 30 日現在)まで拡大し、世界の
貿易拡大と貿易自由化には重要な役割を果たしている。
WTO の本部はジュネーブで、WTO の最高レベルの意思決定機関は閣僚会議で
あり、少なくとも2年に1回開催される。
三、WTO の役割
WTO は永続的な国際組織であり、各国は WTO 協定を批准するため法的責任が
生じる。GATT は主に「モノ」を交渉の対象としていたのに対し、WTO はサービ
ス・知的所有権なども対象になる。
WTO 協定が国内法に優先するため、WTO 加盟国は国内法令や行政手続きを各
協定に整合化させなければならない。また、紛争処理方法も全会一致ですすめ
ていく「コンセンサス方式」から、1 ヶ国でも提案があれば処理を進めていく
「ネガティブコンセンサス方式」が採用されたため、貿易上の対抗措置が採り
やすくなった。
2000 年から WTO の新しいラウンドを開催するために、1999 年 11 月アメリカ
のシアトルで WTO 閣僚会合が開催されたが、先進諸国と開発途上国の対立やシ
アトルに結集した NGO(非政府組織)の圧力によって閣僚会合で合意が得られ
ず、新しいラウンドの立ち上げは中断されている。現在 2001 年中の新ラウン
ド立ち上げに向けて、各国の交渉が進んでいる。ただし、農業分野とサービス
分野に関してはすでに交渉が開始されている。
WTO は、国家間貿易についての世界的なルールを扱う唯一の国際機関である。
108 WTO の主要な機能は、貿易が可能な限り円滑に、予測可能に、そして自由に行
われる流れることを確保することである。
WTO により、消費者や生産者は、製品、部品、原材料及びサービスの確実な
供給とより広範な選択肢を享受でき、また、生産者や輸出者にとっては、外国
市場が開放され続けることが保障されている。
その結果、さらに希望に満ち、平和で予測可能な経済世界が実現する。WTO
での決定は一般的に全加盟国のコンセンサスによりなされ、そして、それらは
各加盟国の国会で批准される。貿易摩擦は WTO の紛争解決手続きに移され、そ
こでは協定と約束の解釈、そして当該国の貿易政策をそれらに整合的なものに
することをいかにして確保するかに焦点が当てられる。このようにして、貿易
紛争が政治的、軍事的紛争に拡大する危険を減らしている。WTO の体制は貿易
障壁を削減することにより、人々と国々の間の障害もその他の障壁も打破して
いるのである。
この体制は、多角的貿易体制と呼ばれており、その中心が WTO 協定である。
この協定は世界の多くの貿易国により交渉、署名され、各国の国会で批准され
たものであり、国際的な商取引の法的な基本的ルールである。基本的に、これ
らは加盟国の重要な貿易上の利益を保障する契約である。さらに、この協定は、
万人の利益のため、各国の貿易政策を協定の範囲内にとどめるよう政府を制限
する。
WTO 協定は各国政府により交渉、署名されたものであるが、その目的は、モ
ノ及びサービスの生産者、輸出者、輸入者が営業活動を行うことを助けること
にある。WTO の目標は、加盟国の人々の福利厚生の向上である。
四、中国と WTO
中国は GATT の発起国であったが、1949 年 10 月 1 日、中華人民共和国が設
立した後、様々な政治的、歴史的要因により、長期間にわたって空席のままと
なった。その後中国は、1986 年 7 月 11 日に GATT 条約国地位の復帰を申請し
たが、それ以後、GATT 復帰と WTO 加盟に向けての交渉に、15 年もの歳月歳月
を要した。1999 年 11 月 15 日、米中間で WTO 加盟についての最終的な二国間
交渉の合意が達した。中国の WTO 加盟の最大の障害はクリアされ、事態は加速
的に進展した。2001 年 11 月 10 日、中国の WTO 加盟は WTO によって正式に承
認された。一ヶ月後の 12 月 11 日から、中国の人民代表大会の批准を得て、中
国は正式に WTO の加盟国となった。
WTO 加盟は中国にとって利点も弊害もあるが、全体的に見れば利点の方が弊
害よりも多い。
1.WTO では差別をしないことを原則に、多角的、平等互恵の貿易環境を獲
得できる。
2.国際経済の新秩序確立に建設的な役割を果たすことができる。
3.改革開放の促進。
4.WTO の紛争解決メカニズムを利用して、メンバー間の経済紛争を平等に
解決できる。
中国は、2001 年 11 月の WTO(世界貿易機関)加盟以来、対外開放を大いに
加速したが、心配されていた国内産業への大きな影響もなく、現在まで中国経
済は堅調な伸びを見せてきた。また、国際経済での平等な貿易環境を獲得する
109 など、多くの恩恵を受けている。しかし、一方で、中国に厳しい試練と圧力を
もたらしたことも事実であり、産業構造の変化に伴う失業問題、地域格差など
の問題が浮上してきた。
中国の WTO の加盟は世界貿易及び世界経済にとって重要な意味を持ってい
る。同時に、中国自身が WTO 加盟後、比較的順調に社会変革を進め、新たな透
明な市場メカニズムが形成され、国内外の企業が着実に発展し、その中で多く
の社会的困難も解決されている。
五、WTO の基本原則と紛争解決の手続き
1. 基本原則
GATT は貿易に関する様々な国際ルールを定めているが、その基本原則は、
貿易制限措置の削減、貿易の無差別待遇(最恵国待遇、内国民待遇)である。
(1) 貿易制限措置の削減
貿易を制限する措置には、関税のほかにも輸入の禁止や数量制限など様々な
措置があるが、ガットはこれらの貿易制限措置を関税に置き換えることて、そ
の他の措置を原則的に禁止した。その上で、各国の交渉により関税を徐々に引
き下げていくことにより、より自由な貿易を可能にしようとしている。
(2) 貿易の無差別待遇(最恵国待遇、内国民待遇)
GATT のルールでは、いずれかの国の産品に与える最も有利な待遇を、他の
全ての締結国の同種の産品に対して、即時かつ無条件に与えることになってい
る。例えば、ある国に対して関税率を引き下げた場合、すべての国に対しても
同様に関税率を引き下げなければならない。このように、ある国に対して貿易
上最も有利な待遇を与えた場合、他の国にも同じ待遇を与えなければならない
という原則を「最恵国待遇」の原則という
また、GATT のルールでは、輸入品に対して適用される国内税や国内法令に
ついて、同種の国内産品に対して与える待遇より不利でない待遇を与える。例
えば、国内製品には安い国内税を課す一方で、同種の輸入品には高い国内税を
課すような差別待遇を禁止している。このように、外国の産品にも国内産品と
同様の待遇を与える(輪入品にのみ不利な措置をとることを禁止する)という
原則を「内国民待遇」の原則という。
この両者の原則により、貿易に関する差別待遇を撤廃し、より自由な貿易を
可能にしようとしている。
110 2.紛争解決の手続き
六、WTO 貿易体制のメリット
WTO とその貿易体制がもたらす利益は、私達のポケットマネーと私達が使う
モノやサービスから、より平和な世界に至るまで、多岐に及んでいる。その中
にはよく知られているものもあるが、あまり知られていないものもある。
111 ここでは WTO の多角的貿易体制がもたらす利益の幾つかに焦点を当てるが、
全てが完璧であるということを主張する訳ではない。また全てが完璧であれば、
更なる交渉を行いルールを改定する必要はない。また、全ての人が WTO の全て
の事柄に同意していると主張する訳でもない。そうでないことこそが、多角的
貿易体制を維持することの最も重要な理由の一つなのである。WTO は各国が貿
易問題に関した相違点を解決するための場でもある。
このように、多角的貿易体制が存在する方が存在しないよりも良いという多
くの関連する理由がある。以下はその中から 10 項目を採り上げたものである。
1.多角的貿易体制は平和の促進を助ける。
2.紛争は建設的に取り扱われる。
3.規律は人々の生活をより楽にする。
4.より自由な貿易は生活の費用を軽減させる。
5.多角的貿易体制は製品の量と選択肢を増やす。
6.貿易は所得を増加させる。
7.貿易は経済成長を刺激する。
8.基本原則は生活をより効率的にする。
9.政府は政治的働きかけから守られる。
10.多角的貿易体制は清廉な政府を育成する。
単語
恐慌(きょうこう)
恐慌、惶恐
回復(かいふく)
恢复
縮小(しゅくしょう)
缩小
植民地(しょくみんち)
殖民地
追い詰め(おいつめ)
追逼
経緯(けいい)
经过、原委
受け継ぐ(うけつぐ)
继承
障壁(しょうへき)
障碍、隔阂
軽減(けいげん)
减轻
世界貿易機関(WTO)
世界贸易组织
IMF(国際通貨基金)
国际货币基金组织
IBRD(世界銀行)
世界银行
GATT(関税および貿易に関する一般協定)(ガット)
关税与贸易总协定
構想(こうそう)
设想、构思
挫折(ざせつ)
挫折、失败
代替(だいたい)
代替
ブロック
阵营、同盟
ブレットンウッズ
布雷顿森林体制 、固定汇率制
ラウンド
圆桌(会议)回合
ケネディラウンド
肯尼迪回合
ダンピング
倾销
最恵国待遇(さいけいこくたいぐう)
最惠国待遇
112 内国民待遇(ないこくみんたいぐう)
非関税障壁(ひかんぜいしょうへき)
抵触(ていしょく)
枠組み(わくぐみ)
発足する(ほっそく)
発効(はっこう)
削減(さくげん)
会合(かいごう)
結集する(けっしゅう)
選択肢(せんたくし)
享受(きょうじゅ)
打破する(だは)
試練(しれん)
地域格差(ちいきかくさ)
ウルグアイラウンド
マラケシュ
ジュネーブ
グローバル
コンセンサス方式
ネガティブコンセンサス方式
メリット
立ち上げる
クリア
弊害(へいがい)
撤廃する(てっぱい)
メカニズム
パネル
復帰(ふっき)
即時(そくじ)
撤廃(てっぱい)
多岐(たき)
完璧(かんぺき)
113 国民待遇
非关税贸易壁垒
抵触、触犯
框架、结构、轮廓
出发、动身
生效
消减
集会、聚会
集结、集中
多项选择
享有、享受
打破、破除
考验
地域差别
乌拉圭回合
马拉喀什
日内瓦
全球的、世界规模的
意见一致表决
只要不被全员否决就获通过
好处、有利点
起来、着手
清除
弊端、弊病
取消、撤销
机制、机构
纠纷处理委员会
恢复
当时、立即
取消、撤销
多方面、复杂
完善、完美
第十一章
取引の書類
ポイント 1.取引各段階の書類リスト 2.意向書、契約書の様式、主要内容、一般条項 3.書類の作成
貿易取引は外国との取引であるので、国内の通常の取引よりも、大量の書類
を必要とし、より証拠性や確実性が要求される。また、代金決済の方法として
為替取引が多用される。
次の表は貿易取引の進行に従って使用される書類を示したものである。こ
こに示したうち、実際に使用する書類は一部であるが、貿易の基礎理論として
これらの書類を認知した上で、船積、通関など各段階に応じて必要な書類を正
しく作成しなければならない。
第一節
書類のリスト
交渉段階で必要な書類
輸出のとき
●交渉(Negotiation)
引合状(Inquiry, Sales letter)
資料(Brochure)(ブロウシャー)
カタログ(Catalog)
仕様書(Specification, Manual)
説明書(Instruction)
オファーシート(見積書)
(Offer sheet)
プロフォーマインボイス
(Proforma invoice)
●契約(Contract)
販売契約書(Sales contract)
(Sales note)
(Sales confirmation)
114 輸入のとき
引合状(Inquiry)
資料(Brochure)
注文書(Order sheet)
(Purchase order)
(Confirmation of Order)
出荷準備段階で必要な書類
輸出のとき
輸入のとき
●信用状開設から船積準備(Shipping preparation)
輸入割当状(I/Q=Import Quota)
信用状(L/C=Letter of credit)
輸入承認状(I/L=Import Licence)
輸入関係融資申込書
海上保険申込書
信用状開設依頼書
(Insurance application)
(Application for opening letter of
credit)
為替予約
海上保険申込書
(Exchange contract)
(insurance application)
船腹申込書
船腹申込書
(Cargo space application)
(Cargo space application)
評価申告書
115 輸出通関・船積み・買取りの段階で必要な書類
116 輸出のとき
●通関前(Shipping preparation)
輸出許可 承認申請書(E/L=Export Licence)の申請
輸出取引承認申請書(E/L=Export Licence)の申請
輸出検査申請書
デザイン認定証明書
●通関(Customs clearance)から船積み(Shipping)
送り状(Invoice)
包装明細書(Packing list)
輸出報告書(Export report)
輸出許可.承認証.輸出取引承認書.輸出検査証.デザイン認
定証明書
船積み依頼書(Shipping instruction)
輸出申告書(Export declaration)
カタログコピー
●船積書類(Shipping documents)をとり揃える
送り状(invoice)
包装明細書(Packing list)
船荷証券(B/L=Bill of Lading)
または航空運送状(Air waybill)
小包み郵便物受領書(Parcel post receipt)
保険証券(insurance policy)
原産地証明書(Cert. Of origin)
税関用送り状(Customs invoice)
領事送り状(consular invoice)
検査証(Inspection cert.)
分析証明(Analysis cert.)
検疫証明(Quarantine cert.)
重量 容積証明書(Weight cert. Measurement cert.)など
●船積案内(Shipping advice)
船積案内書(Shipping advice)とそのほかの書類
●買取り(Negotiation of documentary bill)
手形(為替手形)(Draft=Bill of Exchange)
輸出荷為替手形買取依頼書
(Application for the nego. Of docu. Bill.)
念書(L/G=Letter of Guarantee.)
輸入通関・引き取り・決済の段階で必要な書類
117 輸入のとき
●貨物到着(Arrival of cargo)
確定保険申込書
貨物到着通知(Arrival notice of cargo)
船荷証券到着前貨物引取保証依頼書
(Application for issuing of L/G of L/I <L/G=Letter of
Guarantee, L/I=Letter of Indemnity>)
航空貨物引渡指図書発行依頼書
(Application for issuing Release order)
●輸入通関(Import-customs clearance)
輸入通関依頼書
送り状(仕入書)(Invoice)
包装明細書(Packing list)
船荷証券または保証状 補償状
(B/L=Bill of Lading)または(L/G or L/I)
航空貨物引渡指図書(Release order)
運賃証明書(Freight debit note)
保険料証明書(Insurance debit note)
輸入承認証(I/L=Import Licence)
検査証,許可証
原産地証明書(Cert. Of origin)
注文書(Order sheet)
値段表,カタログコピーなど
関税等納付 領収書
輸入(納税)申告書
●輸入代金決済または手形引受(Payment of acceptance)
貨物保管預り証書(T/R=Trust Receipt)
為替手形または約束手形
(Draft=Bill of exchange, Promissory note
第二節
意向書
契約書
118 意向書
2005 年 11 月 6 日
香港にて
中国深セン国際経済技術合作公司(甲)と日本東京三高株式会社(乙)は、
平等互恵の原則に基づき、友好的に協議の上、青山公園町 5 番地に合弁でレス
トランを建設する件について、友好的に相談し、次の意向に達した。
一、レストラン敷地面積は約 225 平方メートル、建築面積は約 800 平方メー
トル、投資総額は約 100 万ドルとする。甲、乙双方は各 50%の出資義務を負
う。
二、甲は土地使用権を以て出資とし、乙は現金で出資をする。
三、意向書に署名後、甲、乙双方は早急に設計図を作成し、甲は施工に関す
る一連の手続きを中国政府に行う責任を持つ。
甲:___________
乙:__________
代表者:
代表者:
(表面)
契
約
119 書
売方:
契約番号:
契約期日:
買方:
成約地:
売主
(以下「甲」という)と買主
いう)との間に、つぎのとおり売買契約を締結する。
1.品名、品番、規格
2.数量
(以下「乙」と
3.単価
総額:
5.船積期間:
6.船積港及び仕向港:
7.支払条件:
8.信用状受益者:
9.商品検査:
売
(裏面)
主
買
契約書条項
120 主
4.金額
売買両方は下記の条項に基づいて本契約の締結に同意する。
第一条 支払方法:買い方は本契約書に定められた船積月の始まる 15 日前に、
売り方の同意した銀行を通じて、取消不能、譲渡可能、分割可能、一覧
払信用状を開設するものとし、その代金受取有効期限は船積後 15 日間
とし、中国において満期となる。もし船舶の事情により売り方が期日通
り船積出港できない場合、買い方はその信用状を自動的に更に 15 日間
効力延長することに同意する。また、分割輸送および貨物の積替えも認
められるものとする。
第二条 包装と荷印:いずれも売り方が通常行う輸出包装と輸出表記により荷
印を刷り込む。
第三条 船積条件:(1)売り方は輸出貨物の船積終了後 48 時間以内に、契約番
号、品名、数量、送り状金額および船名を電報にて買い方へ通知する。
(2)売り方は毎回船積準備する数量の 5%に相当する量を増減する権利
を有する。その差額は契約価格により清算する。(3)輸送船は売り方が
手配する。もし買い方が本契約の規定通り信用状を開設しなかった場合、
売り方は船積を拒絶するか、あるいはそれ相応に船積期限を延期するこ
とができる。このために生じた一切の費用と損失はすべて買い方が負担
する。
第四条 保険条件:中国人民保険の約款(ストのリスクを含まない)に基づい
て売り方は送り状送金額の 110%に当たるオール・リスクおよび戦争の
保険を付す。
第五条 商品検査:A.中国商品検験局から発行された品質検査と重量検定証明
書をもって荷渡の根拠とする。ただし、買い方は貨物が仕向港に到着し
た後検査を行う権利を有する。この場合、再検査の費用は買い方が負担
する。B.中国商品検験局の証明書を付さない(契約書第九条の規定によ
る)
。
第六条 書類:売り方は支払銀行へ下記書類を提出しなければならない。送り
状正本一通、副本二通、無故障船荷証券正本三通、副本四通、保険証券
正本一通、副本二通、輸出商品品質検査証明書および重量鑑定証明書正
本各一通、副本二通。
第七条 買方が本契約が規定する期間内に信用状を開設しなかったため本契
約が履行不能となった場合は、売り方は契約を解除する権利を有し、売
り方がこれにより被った損失は、買い方が賠償責任を負うものとする。
これに反し、売り方が契約通り貨物を引渡す事ができなかった場合は、
不可抗力の場合を除き、売り方が損失を賠償するものとする。
第八条 不可抗力:不可抗力の事故により期日通り荷渡しできない場合は、売
り方は荷渡しの延期、もしくは一部の荷渡し延期をするか、あるいは本
契約全部を解除することができる。但し、売り方は買い方に対して、中
国国際貿易促進委員会の発行した事故発生を証明する文書を手渡しし
なければならない。
第九条 クレームおよび賠償請求:貨物が仕向港に到着した後、もし買い方が
貨物の品質、重量あるいは数量に対して異議がある場合は、日本の商品
検査機関の発行する検査報告書(検査費用は買い方負担)により、船が
日本の港湾に到着後 30 日以内に売り方へ提出することができる。ただ
121 し、自然災害による損失、または船主あるいは保険会社側の責任範囲内
の損失は、売り方に賠償を要求しないこととする。
第十条 商事仲裁:本契約の履行中、あるいはこれに関連して発生した一切
の紛争は、この契約に調印した双方で協議の上、友好的に解決する。も
し契約調印の双方が協議によっても解決不能の場合は、仲裁は被告の所
在国で行われる。もしそれが中国であれば、中国国際貿易促進委員会対
外貿易仲裁委員会が該委員会の仲裁手続規則に基づき仲裁を行なう。も
し日本であれば、日本国際商事仲裁協会が該協会の仲裁手続規則にもと
づき仲裁を行なう。仲裁者の人選は、日本国際商事仲裁協会の仲裁者名
簿に記載されている者と限らないが、中華人民共和国国籍、日本国籍を
有する者、または双方が同意した第三国国籍を有する者でなければなら
ない。仲裁の裁決は最終的な決定とみなし、本契約書に調印した双方は
いずれもこれに服従すべきものとする。双方はそれぞれ本国政府の同意
を得て、相手方が仲裁業務を執行するために、またその人員の往来に一
切の便宜を与えて、かつその安全を保証する。仲裁費用は、仲裁委員会
において別途決定のある場合以外は敗訴側において負担する。
本契約書は正本二通を作成し、双方各一通を所持する。本契約で使用された
中国語、日本語は同等の効力を有する。
第三節
出荷、通関及び決済段階の書類
一、託送依頼書
122 輸出業者が運送引受人に貨物の託送を依頼する書類である。
外运编号:
委托你公司承运以下货物,请出运后向我方
(我指定方)收取费用。
委托方(盖章)
SHIPPER(发货人)
联系人:
CONSIGNEE(收货人)
Dated on:
NOTIFY PARTY(通知人)
TEL:
PLACE
OF
DELIVERY
预备船名、船
预配箱:
L/C 装期
L/C 效期
期:
(目的港)
MARKS
NO OFP'KGS
DESCRIPTION
(标记、号码) (件数、包装) OF GOODS (货
物)
GROSS
DIMENSION
MEASUREMENT
WEIGHT(Per
(长*高*宽)
尺码(立方
each
P'KGS)
米)
(每件重量)
TOTAL:P'KGS
B/L 份数
KGS
M
运费方式(预付/到付):
准/不准分批
准/不准
转船
L/C 要求
特别条款:
货物存放地
货妥日期
联系人: TEL:
自送 我库/ 车站/ 码
自送/货物公司派车进
头
港
是/否危险品
性
国际危规号
能
海运付款人
外汇帐号
TEL:
中文名称及地址:
邮编:
人民币付款人名称:
帐号及开户行:
地址:
TEL:
此我
实配船名:
部司
B/L
分填
W:
航次:
件数
M:
箱量
备注:
邮编
海运费:
包干费:
货运拼箱
由制
二、本船受取書
荷為替取組関係で船荷証券を早く入手したい場合に、船積前に、運送人の指
定場所での引渡、つまり本船停泊場所以外(船会社指定の倉庫、コンテナフレ
123 ート、ステーション等)の場所で運送人が貨物を受けとった時に発行される船
荷証券のことである。
中国外轮代理公司 CHINA OCEAN SHIPPING AGENCY 收货单 MATE’S RECEIPT 装单号码
日期
S/O# Date 船名
航次
S.S. Voy 托运人 Shipper 受货人 Consignee 通知 Notify 标记及号码 件数 Marks and Number Quantity 海关编号 Customs Ves. # 装往地点 Destination 货名 Description of Goods 重 Weight 量
净 Net 毛 Gross 尺
码 Measure ment 合计
共重 Total: Total: 上 开 完 好 货 物, 业 已 收 妥 无 误 Received on board the above mentioned goods in good order and condition 装入何舱 Stowed 实
收 Received 理货员签名 Tallied By 大
副 Chief Officer 三、為替手形
輸出業者が輸入業者に宛てて、一定の日(満期日または支払期日)に一定の
金額(手形金額)を受取人に支払うよう委託する有価証券である。
124 Bill of Exchange
No
(手形番号)
(振出日)
For
(手形金額)
At
(手形期限) sight of this First Bill of Exchange(Second of the
same Tenor and date being unpaid )pay to :
(輸入地銀行)
or
order the sum of
(手形金額)
value received and
change the same to account of
drawn under
(L/C発行銀行)
Letter of Credit No.
(L/C発行番号)
(輸入署名)
dated
(L/C発行日)
To,
印紙
(振出人の署名)
名宛人(手形の支払人)
四、海上保険申込書
海上保険は船舶及びそれによって運送されている貨物を保険の目的とし、海
上危険すなわち海難又は航海に関する事故によって生ずる損害を補填する保
125 険である。海上保険は船舶保険と貨物保険に分けられる。 THE PEOPLE’S INSURANCE COMPANY OF CHINA Head office: BEIJING Established in 1949 INSURANCE POLICY POLICY NO. THIS POLICY OF INSRANCE WITNESSES THAT THE PEOPLE’S INSURANCE COMPANY OF CHINA (HEREINAFTER CALLED “ THE COMPANY”) AT THE REQUEST OF (HEREINAFTER CALLED “ THE INSURED”) AND IN CONSIDERATION OF THE AGREED PREMIUM PAID TO THE COMPANY BY THE INSURED UNDERTAKES TO INSURE THE UNDERMENTIONED GOODS IN TRANSPORTATION SUBJECT TO THE CONDITIONS OF THIS POLICY AS PER THE CLAUSES PRINTED OVERLEAF AND OTHER SPECIAL CLAUSES ATTACHED HEREON. MARKS & NOS QUANTITY TOTAL AMOUNT INSURED PREMIUM AS ARRANGED PER CONVEYANCE S.S. DESCRIPTION GOODS OF AMOUNT INSURED RATE AS ARRANGED (VESSEL NAME) SLG. ON OR ABT FROM TO CONDITIONS CLAIMS, IF ANY, PAYABLE ON SURRENDER OF THIS POLICY TOGETHER WITH RELEVANT DOCUMENTS IN THE EVENT OF ACCIDENT WHEREBY LOSS OR DAMAGE MAY RESULT IN A CLAIM UNDER THIS POLICY IMMEDIATE NOTICE APPLYING FOR SURVEY MUST BE GIVEN TO THE COMPANY’S AGENT AS MENTIONED HEREUNDER: CLAIM PAYABLE AT/IN DATE ADDRESS: 23 Zhongshan Dong Yi Lu, Shanghai, China. Cable: 42001 Shanghai 五、インボイス(送り状)
インボイスは売り主が買い主宛てに、売買契約を正当に履行したことを証明
するために作成する約定品の出荷案内書、約定品の明細書、価格計算書及び代
126 金請求書を兼ねるもので、輸入国では荷受及び通関の際に使用される重要な書
類である。 COMMERCIAL INVOICE SELLER INVOICE NO. INVOICE DATE L/C NO. DATE ISSUED BY BUYER SHIPPING MARK
NAME OF GOODS
CONTRACT NO. DATE FROM TO SHIPPED BY PRICE TERM QUANTITY
UNIT PRICE
AMOUNT TOTAL TOTAL AMOUNT IN WORDS: TOTAL GROSS WEIGHT: TOTAL NUMBER OF PACKAGES: ISSUED BY SIGNATURE 六、包装明細書
包装明細書はインボイスの記載内容を補足するために、包装ごとの内容を記
載した書類である。
127 中国五金矿产进出口公司广东分公司
装箱单 CHINA NATIONAL METALS & MINERALS EXP AND IMP CORP. KWANGTUNG BRANCH PACKING LIST INVOICE NO.: MARKS INVOICE DATE: DESCRIPTION OF GOODS QUANTITY NET WEIGHT GROSS WEIGHT MEASUREMENT CHINA NATIONAL METALS AND MINERALS EXP AND IMP CORP., KWANGTUNG BRANC, PO BOX 23, KWANGCHOU, PEOPLES REPUBLIC OF CHINA SIGNATURE 七、原産地証明書
原産地証明書は貨物の産地国または製造原地を証明する書類である。たとえ
ば、輸出入両国間に関税率の協定があり、輸入者が一般の基本税率よりも低い
128 協定税率の適用を受けるための証拠書類として使用される。 ORIGINAL Exporter (full name and address) Consignee address) (full name Means of transport and route Certificate No. CERTIFICATE OF ORIGIN OF PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA THE and For certifying authority use only Destination port Marks and Description of H.S. Number of goods, number and Code packages kind of packages Quantity Weight or Number and date of invoices Declaration by the exporter Certification The undersigned hereby declares that the It is hereby certified that the declaration above details and statements are correct: by the exporter is correct. that all the goods are produced in China and that they comply with the Rules of Origin of the People’s Republic of China. (Place and date) (Place and date) Signature and stamp of authorized Signature and stamp of certifying signatory authority 八、輸入商品検証の依頼書
中国各地の輸出入商品検験検疫局(CIQ)に輸入商品検査の合格評定を依頼
するための書類である。
129 中华人民共和国出入境检验检疫
入境货物报检单
报检单位(加盖公章):
编号 ___________
报检单位登记号:
发 货 人
联系人:
电话:
报检日期:___年__月__日
(中文)
(外文)
收 货 人
(中文)
(外文)
货物名称(中/外文)
H. S. 编
产地
码
数/重量
运输工具名称号码
贸易方式
合同号
信用证号
货物总值
包装种类及数量
货物存放地点
用
途
到货日期
启运地
集装箱规格、数量及号码
合同、信用证订立的
标记及号码
检验检疫条款或特殊要求
需要证单名称(划“V”或补填)
品质证书
植物检疫证书
重量证书
随附单据(划“V”或补填)
检 验 检 疫 费
总金额
(人民币元)
兽医卫生证书
计费人
健康证书
卫生证书
收费人
动物卫生证书
报检人郑重声明:
领 取 证 单
1 本人被授权报检。
日期
2 上列填写内容正确属实,货物无伪造或冒用他人的厂名、
标志、认证标志,并承担货物质量责任。
签名:_________
签名
九、船荷証券(B/L)
船荷証券は揚地において、運送人が運送品を本船へ受け取ったことを証する
受取証である。これに裏書し、渡すことにより運送品の所有権を移転すること
130 ができる有価証券すなわち権利証券である。 BILL OF LADING SHIPPER B/L NO. CARRIER CONSIGNEE COSCO CHINA OCEAN SHIPPING (GROUP) CO. NOTIFY PARTY PLACE RECEIPT OF OCEAN VESSEL VOYAGE NO. PORT LOADING OF PLACE DELIVERY ORIGINAL PORT DISCHARGE MARKS NOS. KINDS PKGS. OF Combined LADING OF Transport & DESCRIPTION G.W.(kg) OF OF GOODS BILL OF MEAS (m 3 ) TOTAL NUMBER OF CONTAINERS OR PACKAGES (IN WORDS) FREIGHT REVENUE & TONS CHARGES PREPAID AT RATE PAYABLE AT PER PREPAID COLLECT PLACE AND DATE OF ISSUE NUMBER OF ORIGINAL B/L LOADING ON BOARD THE VESSEL DATE BY 十、通関依頼書
輸出業者は輸出しようとする貨物を港周辺の保税地域に運び込み、税関に申
告し、許可を受ける一連の税関手続きをしなければならない。通関依頼書とは
131 輸出申告を行う際に必要な書類で、輸出しようとする貨物の品名、数量、価格、
申告者の住所、氏名、その他必要事項を記載しなければならない。
中华人民共和国海关出口货物报关单
预录入编号:
海关编号:
出口口岸
备案号
出口日期
申报日期
经营单位
运输方式
运输工具名称
提运单号
发货单位
贸易方式
征免性质
结汇方式
许可证号
运抵国(地区)
批准文号
成交方式
合 同 协 议 件数
号
集装箱号
指运港
境内货源地
运费
保费
包装种类
杂费
毛重(公斤) 净重(公斤)
随付单据
生产厂家
标记唛码及备注
项号 商品编号
价 币制 征免
商品名称、规格型号
数量及单位
最终目的国(地区)单价 总
税费征收情况
录 入 员 兹声明以上申报无讹并承担法 海关审单批注及放行日期(签
录入单位
律责任
章)
报关员
单位地址
申报单位(签章)
邮编
电话
填制日期
审单
审价
证税
统计
查验
放行
十一、輸入ライセンス
「輸出入貿易管理規定」に基づき、一部の物資の輸出入は国の許可を受けな
ければならない。許可を受けなければならない品目は数が多く、細かく指定さ
132 れており、それら指定されている品物を輸出入する場合は、事前に国の関係部
門に許可書を申請しなければならない。
中 华 人 民 共 和 国 进 口 许 可 证 IMPORT LICENCE OF THE PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA No.
1. 进口商:
Importer
2. 收货人:
Consignee
3. 进口许可证号:
Import license No.
4. 进口许可证有效截止日期:
Import license expiry date
5. 贸易方式:
Terms of trade
8. 出口国(地区):
Country/Region of exportation
6. 外汇来源:
Terms of foreign exchange
9. 原产国(地区):
Country/Region of origin
7. 报关口岸:
Place of clearance
10. 商品用途:
Use of goods
11. 商品名称:
Description of goods
商品编码:
Code of goods
12. 规格型号 13. 单位 14. 数量 15. 单价 16. 总值 17. 总值折美元
Specification Unit
Quantity Unit Price Amount Amount in USD
18. 总 计
Total
19. 备 注
Supplementary details
20. 发证机关签章:
Issuing authority s stamp & signature
21. 发证日期:
License date
对外贸易经济合作部监制
単語
引合状(ひきあいじょう)
询价单
133 カタログ
商品目录
仕様書(しようしょ)
做法说明书
説明書(せつめいしょ)
说明书
オファーシート
报价单
見積書(みつもりしょ)
估价单
プロフォーマインボイス
形式发票
輸入割当状(ゆにゅうわりあてじょう)
进口配额单
輸入承認状(ゆにゅうしょうにんじょう) 进口许可书
融資申込書(ゆうしもうしこみしょ)
融资申请
信用状開設依頼書(しんようじょうかいせついらいしょ)
信用证开证申请
為替予約(かわせよやく)
外汇预约
船腹申込書(せんぷくもうしこみしょ)
船舱预订单
海上保険申込書(かいじょうほけんもうしこみしょ)
海上保险申请
評価申告書(ひょうかしんこくしょ)
评估报告
デザイン認定証明書(にんていしょうめいしょ)
图案认定证明
重量(じゅうりょう)
重量
容積(ようせき)
容积
送り状(おくりじょう)
发货单
包装明細書(ほうそうめいさいしょ)
包装明细单
航空運送状(こうくううんそうじょう)
航空运单
受領書(じゅりょうしょ)
收据
保険証券(ほけんしょうけん)
保险单
原産地証明書(げんさんちしょうめいしょ)原产地证明书
税関用送り状(ぜいかんようおくりじょう)海关发票
領事送り状(りょうじおくりじょう)
发票
検査証(けんさしょ)
查验单
分析証明(ぶんせきしょうめい)
分析证明
検疫証明(けんえきしょうめい)
检疫证明
念書(ねんしょ)
担保书、保函
貨物到着通知(かもつとうちゃくつうち) 到货通知
通関依頼書(つうかんいらいしょ)
报关委托书
保証状(ほしょうじょう)
保证书
補償状(ほしょうじょう)
赔偿书
運賃証明書(うんちんしょうめいしょ)
运费单
保険料証明書(ほけんりょうしょうめいしょ)保费单
船荷証券(ふなにしょうけん)
海运提单
許可証(きょかしょ)
许可证
納付(のうふ)
缴纳
領収書(りょうしゅうしょう)
收条、收据
申告書(しんこくしょ)
报告、申报
ライセンス
许可证
134 付録1
国際物品売買契約に関する国連条約
135 (ウィーン売買条約)
(1980 年 4 月 10 日ウィーンにて採択、1988 年 1 月 1 日発効)
前文
この条約の当事国は、国連総会の第 6 特別会期において採択された新国際経
済秩序の樹立に関する決議の広範な目的を銘記し、平等と相互の利益を基礎に
した国際貿易の発展は、国家間の友好関係を促進する重要な要素であることを
考慮し、国際物品売買契約を規律し、異なった社会、経済及び法律制度を斟酌
した統一準則を採択することは、国際貿易における法的障害を除去するのに貢
献し、かつ、国際貿易の発展を促進するであろうとの見解の下に、次の通り合
意した。
第Ⅰ部
適用範囲および総則
第Ⅰ章
適用範囲
第 1 条【条約の一般的適用基準】
(1)この条約は、営業所が異なる国にある当事者間の物品売買契約につき、次
の場合に適用する。
(a)これらの国が、いずれも締約国である場合、又は、
(b)国際私法の準則が、ある締約国の法の適用を導く場合。
(2)
当事者がそれぞれ異なる国に営業所を持つ事実は、その事実が、契約か
らも、契約締結時以前の当事者間でのいかなる取引又は当事者によって開示さ
れていた情報からも判明しない場合には、無視するものとする。
(3)当事者の国籍及び当事者又は契約の民事的若しくは商事的性格は、この条
約の適用性を決定するにあたって考慮しないものとする。
第 2 条【適用除外となる売買】
この条約は次の売買には適用しない。
(a)個人、家族又は家庭で使用するために購入された物品の売買。ただし、売
主が契約締結時以前において、その物品がかような使用目的で購入されたこと
136 を知らず、かつ、知るべきでもなかった場合を除く。
(b)競売。
(c)強制執行その他法令に基づく売買。
(d)株式、持分、投資証券、流通証券及び通貨の売買。
(e)船舶、艦船、ホーヴァークラフト及び航空機の売買。
(f)電力の売買。
第 3 条【「売買」の間接的定義】
(1)物品を製造又は生産して供給する契約は、売買として扱う。ただし、その
物品を注文した当事者が、その製造や生産に必要な材料の重要な部分の供給を
引受けている場合はこの限りでない。(2)この条約は、物品を提供する当事者
の義務の支配的部分が、労働その他役務の提供よりなる契約には適用しない。
第 4 条【適用対象となる実体法的範囲】
この条約は、売買契約の成立並びに売買契約から生ずる売主及び買主の権利
及び義務のみを規律する。この条約中に別段の明示の規定がある場合を除き、
この条約は、殊に次の事項には関与しない。
(a)契約若しくはその条項又は慣習の有効性。
(b)売買の対象となった物品上の権原について契約が及ぼす効果。
第 5 条【人的損害についての適用除外】
この条約は、それがいかなる者に対してであれ、物品が原因となって生じた
人の死亡又は身体の傷害についての売主の責任には適用しない。
第 6 条【任意規定性】
当事者は、この条約の適用を排斥することができ、また第 12 条に服するこ
とを条件として、この条約のいずれの規定についてもその効果を排除し又は変
更できる。
第Ⅱ章
総則
第 7 条【条約の解釈原則、規定欠缺の場合の処理】
(1)この条約の解釈にあたっては、その国際的性格並びにその適用における統
一及び国際貿易における信義の遵守を促進する必要性が顧慮されるべきもの
とする。
137 (2)この条約により規律される事項で、条約中に解決方法が明示されていない
問題については、この条約の基礎にある一般原則に従い、またかかる原則がな
い場合には、国際私法の準則により適用される法に従って解決されるべきもの
とする。
第 8 条【当事者の陳述その他の行為の解釈と意図、客観的意思の尊重】
(1)この条約の適用上、当事者の陳述その他の行為は、相手方がその意図を知
り又は知らないはずはあり得なかった場合には、その意図に従って解釈される
べきものとする。
(2)前項が適用され得ない場合には、当事者の陳述その他の行為は、相手方と
同じ部類に属する合理的な者が同じ状況の下でしたであろう理解に従って解
釈されるべきものとする。
(3)当事者の意図又は合理的な者がしたであろう理解を決定するにあたっては、
交渉経過、当事者が当事者間で確立させている慣行、慣習及び当事者の事後の
行為を含め、関連する一切の状況に適切に考慮されるべきものとする。
第 9 条【慣習及び慣行の尊重】
(1)当事者は、合意している慣習及び当事者間で確立させている慣行に拘束さ
れる。
(2)別段の合意がない限り、当事者は、暗黙のうちに、両当事者が知り又は当
然知るべきであった慣習で、国際貿易において関連する特定の取引分野で同じ
種類の契約をする者に広く知られ、かつ、通常一般に遵守されているものを、
当事者間の契約又はその成立に適用することにしたものとして扱う。
第 10 条【「営業所」の定義】
この条約の適用上、
(a)当事者が複数の営業所を持つ場合には、営業所とは、契約及びその履行に
最も密接な関係を有する営業所を指すものとし、この判断に当たっては、契約
締結時以前において両当事者に知られ又は予期されていた事情が考慮されな
ければならない。
(b)当事者が営業所を持たない場合には、その常居所を営業所とみなす。
第 11 条【契約方式自由の原則】
138 売買契約は、書面によって締結又は立証されることを要せず、また方式につ
いてその他のいかなる要件にも服さない。売買契約は、証人を含めいかなる方
式によっても証明することができる。
第 12 条【書面性の例外的要求】
売買契約、合意によるその変更若しくは解消又は申込、承諾若しくはその他
の意思の表示が書面以外の方法で行われ得ることを認める第 11 条、第 29 条又
はこの条約第II部のいかなる規定も、いずれかの当事者がこの条約第 96 条
の規定に基づく宣言を行った締約国に営業所を持つ場合には適用されない。当
事者は、本条の効果を排除し又は変更できない。
第 13 条【書面の意味】
この条約の適用上、
「書面」には電報及びテレックスが含まれるものとする。
第Ⅱ部
契約の成立
第 14 条【申込の間接的定義】
(1)一又は複数の特定の者に向けられた契約締結の申入れは、それが十分明確
であり、かつ、承諾があった場合には拘束されるとの申込者の意思が示されて
いるときは、申込となる。申入れは、物品を示し、かつ、明示又は黙示に数量
及び代金を定め又はその決定方法を規定している場合には、十分明確なものと
する。
(2)不特定の者に向けられた申入れは、申込の単なる誘因として扱う。ただし、
申入れをした者が異なった意向を明瞭に示している場合はこの限りでない。
第 15 条【申込の効力発生時期】
(1)申込は、被申込者に到達した時にその効力を生ずる。
(2)申込は、たとえ取消不能のものであっても、申込の撤回通知が申込の到達
前又はそれと同時に被申込者に到達する場合には、撤回し得る。
第 16 条【申込の取消可能性とその制限】
(1)契約が締結されるまで、申込は取消すことができる。ただし、この場合に
は、被申込者が承諾の通知を発する前に取消の通知が被申込者に到達しなけれ
139 ばならない。
(2)しかしながら、申込は、次のいずれかの場合には、取消すことができない。
(a)申込が、承諾期間の設定その他の方法により、取消不能のものであること
を示している場合。
(b)被申込者が、申込を取消不能のものであると了解したのが合理的であり、
かつ、被申込者がその申込に信頼を置いて行動している場合。
第 17 条【拒絶による申込の失効】
申込は、たとえそれが取消不能であっても、その拒絶通知が申込者に到達し
た時は、その効力を失う。
第 18 条【承諾、その効力発生時期、申込の承諾期間】
(1)申込に同意する旨を示す被申込者の陳述その他の行為は、承諾とする。沈
黙又は反応のないことは、それだけでは承諾とみなされることはない。
(2)申込に対する承諾は、同意の意思表示が申込者に到達した時にその効力を
生ずる。同意の意思表示が、申込者の定めた期間内に申込者に到達しないとき、
また期間の定めがない場合においては、申込者が用いた通信手段の迅速性を含
め取引の状況を十分に勘案した合理的な期間内に到達しないとき、承諾は効力
を生じない。口頭による申込は、特段の事情がある場合を除き直ちに承諾され
なければならない。
(3)しかしながら、申込の内容よりみて、又は当事者間で確立された慣行若し
くは慣習の結果として、被申込者が申込者への通知をすることなく、物品の発
送に関する行為や代金の支払等の行為を行うことにより同意を示すことがで
きる場合には、その行為が行われた時に承諾としての効力が生ずる。ただし、
その行為が前項に規定した期間内に行われた場合に限る。
第 19 条【申込の条件付承諾】
(1)承諾の形をとっているが、付加、制限その他の変更を含んでいる申込に対
する回答は、申込の拒絶であり、反対申込となる。
(2)しかしながら、承諾の形をとった申込に対する回答が、付加的条件や異な
った条件を含んでいても、申込の内容を実質的に変更するものでない場合には、
申込者が不当に遅滞することなくその相違に口頭で異議を述べ又はその旨の
通知を発しない限り承諾となる。申込者が異議を述べない場合には、契約の内
容は申込 0 内容に承諾中に含まれた修正を加えたものとする。
140 (3)付加的条件又は異なった条件であって、特に代金、支払、物品の品質及び
数量、引渡の場所及び時期、一方当事者の相手方に対する責任の限度、又は、
紛争の解決方法に関するものは、申込の内容を実質的に変更するものとして扱
う。
第 20 条【申込の承諾期間の計算方法】
(1)申込者が電報又は書簡中で定めた承諾期間は、電報の発信を依頼した時点
又は書簡に示された日付、またかかる日付が示されていない場合においては封
筒に示された日付から起算する。申込者が電話、テレックスその他の瞬時的通
信手段によって承諾期間を定めたときは、その期間は、申込が被申込者に到達
した時点から起算する。
(2)承諾期間中の公の休日又は非取引日も期間の計算に算入する。ただし、期
間の末日が、申込者の営業所所在地の公の休日又は非取引日にあたるため、承
諾の通知が期間の末日に申込者に配達され得ない場合には、期間はこれに次ぐ
第一の取引日まで延長される。
第 21 条【遅延した承諾】
(1)遅延した承諾といえども、申込者が有効な承諾として扱う旨を遅滞なく被
申込者に口頭で通告し又はその旨の通知を発した場合には、承諾としての効力
を有する。
(2)遅延した承諾を含む書簡その他の書面が、通常の通信状態であれば適切な
時期に申込者に到達したであろう状況の下で発送されたことを示していると
きは、申込者が遅滞なく被申込者に対して申込が既に失効していたものとして
扱う旨を口頭で通告するか、又はその旨の通知を発しない限り、遅延した承諾
であっても承諾としての効力を有する。
第 22 条【承諾の撤回】
承諾は、その撤回通知が、承諾の効力が生じたであろう時よりも前又はそれ
と同時に、申込者に到達すれば、撤回できる。
第 23 条【契約の成立時期】
契約は、申込に対する承諾がこの条約の規定に従って効力を生じた時に成立
する。
141 第 24 条【意思表示等の「到達」の定義】
この条約第II部の適用上、申込、承諾の宣言、その他の意思の表示が相手
方に「到達」した時とは、相手方にそれが口頭で伝えられた時、又はその他の
方法で相手方に個人的に若しくは相手方の営業所又は郵便送付先に、また相手
方が営業所も郵便送付先をも有しない場合においては相手方の常居所に配達
された時とする。
第Ⅲ部
物品売買
第Ⅰ章
総則
第 25 条【「重大な契約違反」の定義】
当事者の一方による契約違反は、その契約の下で相手方が期待するのが当然
であったものを実質的に奪うような不都合な結果をもたらす場合には、重大な
ものとする。ただし、違反をした当事者がかような結果を予見せず、かつ、同
じ状況の下でその者と同じ部類に属する合理的な者もかかる結果を予見しな
かったであろう場合を除く。
第 26 条【解除の際の通知の要求】
契約解除の宣言は、相手方に対する通知によってなされた場合にのみ効力を
有する。
第 27 条【通信伝達上のリスクの配分】
この部に別段の明示の定めがない限り、当事者が、通知、要求その他の通信
を、この部の規定に従い、かつ、状況に応じた適切な方法で行ったときは、通
信の伝達過程において遅滞や誤りが生じたり、またそれが到達しなくとも、そ
の当事者はその通信をしたことに依存する権利を失わない。
第 28 条【特定履行と法廷地法】
当事者が、この条約の規定に従って相手方の義務の履行を要求することがで
きる場合であっても、裁判所は、この条約の適用のない類似の売買契約ならば
それ自体の法の下で同様の判決をするであろう場合でなければ、特定履行を命
ずる判決を与える必要はない。
142 第 29 条【合意による契約の変更及び契約の解消】
(1)契約は当事者の合意のみで変更又は解消できる。(2)書面による契約が、合
意による変更又は解消は書面によるべき旨を定めるときは、その他の方法で合
意により変更又は解消することはできない。ただし、当事者は、自己の行動に
対して相手方が信頼を置いた限度において、この定めを援用する事ができない
場合があり得る。
第Ⅱ章
売主の義務
第 30 条【売主の一般的義務】
売主は、契約及びこの条約の定めるところに従い物品を引き渡し、それに関
する書類を交付し、かつ、物品上の権原を移転しなければならない。
第Ⅰ節
物品の引渡及び書類の交付
第 31 条【引渡の場所】
売主が物品を他の特定の場所で引き渡すことを要しない場合には、売主の引
渡義務は、次の通りとする。
(a)売買契約が物品の運送を予定する場合には、買主に送付のため物品を第一
の運送人に交付すること。
(b)前号が該当しない場合において、契約が、特定物、又は、特定の在庫品中
から抽出されるべき又は製造若しくは生産される不特定物に関するものであ
り、かつ、契約締結時に、両当事者が、物品が特定の場所に存在し又はそこで
製造あるいは生産されることを知っていた場合には、その場所で物品を買主の
処分に委ねること。
(c)その他の場合には、契約締結時において売主が営業所を持っていた場所で、
物品を買主の処分に委ねること。
第 32 条【運送手配に関連する義務】
(1)売主が、契約又はこの条約の規定に従って、物品を運送人に交付した場合
において、物品が荷印、運送書類その他の方法によりその契約の目的物として
明確に特定されていないときは、売主は、物品を特定した託送通知を買主にし
なければならない。
(2)売主が物品の運送を手配しなければならない場合には、売主は、状況に照
らして適当な運輸手段により、かつ、かような運輸にとって通常の条件で、所
定の場所までの運送に必要な契約を締結しなければならない。
143 (3)売主が、物品の運送につき保険を付すことを要しないときでも、買主の要
求があるときは、売主は、買主が保険を付すのに必要な入手可能な情報を全て
買主に提供しなければならない。
第 33 条【引渡の時期】
売主は、次に掲げる時期に物品を引き渡さなければならない。
(a)期日が契約によって定められ又は確定し得る場合には、その期日。
(b)期間が契約によって定められ又は確定し得る場合には、買主が特定の日を
選択すべき事情がない限り、その期間内のいずれかの日。
(c)その他の場合には、契約締結後の合理的期間内。
第 34 条【書類の交付】
売主が、物品に関する書類を交付しなければならない場合には、契約で定め
られた時期、場所及び方式に従って、その交付をしなければならない。交付す
べき時期より前に売主が書類を交付したときは、売主は、その時期まで、買主
に不合理な不便又は不合理な出捐をもたらさない限り、書類の適合性の欠缺を
治癒することができる。ただし、買主は、この条約に定められたところに従い
損害賠償を請求する権利を失うことはない。
第Ⅱ節
物品の契約適合性及び第三者からの請求
第 35 条【物品の契約適合性】
(1)売主は、契約で定めた数量、品質及び記述に適合し、かつ、契約で定める
方法に従って容器に収められ又は包装された物品を引き渡さなければならな
い。
(2)当事者が別段の合意をしている場合を除き、物品は、次の要件を充たさな
い限り、契約に適合していないものとする。
(a)記述されたのと同じ種類の物品が通常使用される目的に適していること。
(b)契約締結時において売主に対し明示又は暗黙のうちに知らされていた特
定の目的に適していること。ただし、状況からみて、買主が売主の技量及び判
断に依存しなかった場合又は依存することが不合理であった場合を除く。
(c)売主が買主に見本又はひな型として示した物品の品質を有すること。
(d)その種類の物品にとって通常の方法により、またかような方法がないとき
は、その物品を保存し保護するのに適切な方法により、容器に収められ又は包
装されていること。
144 (3)契約締結時において、買主が物品のある不適合を知り又は知らないはずは
あり得なかった場合には、売主は、その不適合について前項(a)号から(d)
号の下での責任を負わない。
第 36 条【適合性要求の時点と危険負担】
(1)売主は、危険が買主に移転した時に存在した不適合につき、契約及びこの
条約の定めるところにより責任を負う。たとえその不適合がその後になっては
じめて判明した場合でも同様である。
(2)売主は、前項に規定した時より後に発生した不適合であっても、それが売
主による何らかの義務の違反に起因する場合には、その不適合につき責任を負
う。この義務の違反には、一定の期間物品が通常の目的若しくはある特定の目
的に適するという保証又は一定の品質若しくは特性を保持するという保証の
違反が含まれる。
第 37 条【期日前の引渡と不適合の治癒】
売主が、引き渡すべき期日前に物品を引き渡した場合には、売主は、その期日
まで、買主に不合理な不便又は不合理な出捐をもたらさない限り、欠けている
部分を引き渡し若しくは数量の不足を補い、又は引き渡された不適合の物品を
取り換え若しくは引き渡された物品における不適合を治癒することができる。
ただし、買主は、この条約に定められたところに従い損害賠償を請求する権利
を失うことはない。
第 38 条【買主の物品検査義務】
(1)買主は、その状況に応じ実際上可能な限り短い期間のうちに、物品を検査
し又はその検査をさせなければならない。
(2)契約が物品の運送を予定する場合には、検査は、物品が仕向地に到達した
後まで延期し得る。
(3)買主が、検査のための合理的な機会を有しないまま運送中の物品の仕向地
を変更し又は物品を転送した場合であって、売主が、契約締結時において、か
かる変更又は転送の可能性を知り又は知るべきであったときは、検査は、物品
が新たな仕向地に到達した後まで延期し得る。
第 39 条【不適合の通知義務、瑕疵担保期間】
145 (1)買主が、物品の不適合を発見し又は発見すべきであった時から合理的期間
内に、売主に対し不適合の性質を明確にした通知を与えない場合には、買主は
物品の不適合に基づいて援用し得る権利を失う。
(2)いかなる場合においても、物品が買主に現実に交付された日から遅くとも
2 年以内に、買主が売主に前項の通知を与えないときは、買主は物品の不適合
に基づいて援用し得る権利を失う。ただし、この期間制限が約定の保証期間と
両立しない場合はこの限りでない。
第 40 条【売主が不適合を知っていた場合の例外】
物品の不適合が、売主の知り又は知らないはずはあり得なかった事実で、か
つ、売主がそのことを買主に対して明らかにしなかった事実に関連するときは、
売主は、第 38 条及び第 39 条の規定を援用することができない。
第 41 条【追奪担保一般】
売主は、買主が第三者の権利又は請求の対象となっている物品を受領するこ
とに同意した場合を除き、その権利又は請求から自由な物品を引き渡さなけれ
ばならない。ただし、これらの権利又は請求が工業所有権その他の知的財産権
に基づくものであるときは、売主の義務は第 42 条によって規律される。
第 42 条【第三者の知的財産権に係わる追奪担保の特則】
(1)売主は、工業所有権その他の知的財産権に基づく第三者の権利又は請求で
あって、契約締結時において売主がそれを知り又は知らないはずはあり得なか
ったものから自由な物品を引き渡さなければならない。ただし、その権利又は
請求が、次に掲げる国の法律の下での工業所有権その他の知的財産権に基づく
場合に限る。
(a)契約締結時において、物品がある国で転売され又はその国で使用されるこ
とが、両当事者により予期されていた場合には、物品が転売又は使用されるそ
の国の法律。
(b)その他の場合には、買主が営業所を持つ国の法律。
(2)前項の売主の義務は、次の場合には適用しない。
(a)契約締結時において買主がその権利又は請求を知り又は知らないはずは
あり得なかった場合、又は、
146 (b)その権利又は請求が、買主の提供した技術設計、デザイン、混合法その他
の指定に売主が従った結果生じた場合。
第 43 条【追奪担保に関する通知義務、売主が知っていた場合の例外】
(1)買主が、第三者の権利又は請求を知り又は知るべきであった時から合理的
期間内に、売主に対しその権利又は請求の性質を明確にした通知を与えない場
合には、買主は第 41 条又は第 42 条の規定を援用する権利を失う。
(2)売主は、第三者の権利又は請求及びその性質を知っていたときは、前項の
規定を援用することができない。
第 44 条【通知懈怠への例外的救済】
第 39 条(1)項及び第 43 条(1)項の規定にかかわらず、買主は、定められた通
知を行わなかったことにつき合理的説明を与え得るときは、第 50 条に基づき
代金を減額し、又は、得べかりし利益の喪失を除き、損害の賠償を請求するこ
とができる。
第Ⅲ節
売主による契約違反に対する救済
第 45 条【救済方法一般】
(1)売主が契約又はこの条約に定められた義務のいずれかを履行しない場合に
は、買主は次の救済を求めることができる。
(a)第 46 条から第 52 条までに規定された権利を行使すること。
(b)第 74 条から第 77 条までの規定に従い損害賠償を請求すること。
(2)買主が損害賠償を請求する権利は、それ以外の救済を求める権利の行使に
よって失われることはない。
(3)買主が契約違反に対する救済を 4 める場合に、裁判所又は仲裁機関は売主
に猶予期間を与えてはならない。
第 46 条【特定履行、代替品引渡又は修理の要求】
(1)買主は、売主に対してその義務の履行を要求することができる。ただし、
買主がこの要求と両立し得ない救済を求めている場合はこの限りではない。
(2)物品が契約に適合していない場合には、買主は代替品の引渡を要求するこ
とができる。ただし、その不適合が重大な契約違反を構成し、かつ、その要求
が、第 39 条の下での通知の際又はその後合理的な期間内になされたときに限
147 る。
(3)物品が契約に適合していない場合において、全ての状況から見て不合理で
ないときは、買主は売主に対してその不適合を修理によって治癒することを要
求できる。修理の要求は、第 39 条の下での通知の際又はその後合理的な期間
内になされなければならない。
第 47 条【履行のための付加期間の付与】
(1)買主は、売主による義務の履行のために、合理的な長さの付加期間を定め
ることができる。
(2)その期間内に履行しない旨の通知を売主から受け取った場合でない限り、
買主はその期間中契約違反についてのいかなる救済をも求めることができな
い。ただし、これにより買主は履行の遅滞について損害賠償を請求する権利を
失うことはない。
第 48 条【売主による不履行の治癒】
(1)第 49 条に服することを条件として、売主は、引渡期日後であっても、不合
理な遅滞を招くことなく、かつ、買主に不合理な不便又は買主の前払い出費に
つき売主から償還を受けるについて買主に不安を生ぜしめずになし得る場合
には、自己の費用によりその義務のあらゆる不履行を治癒することができる。
ただし、この場合でも、買主はこの条約に定められた損害賠償を請求する権利
は失わない。
(2)売主が買主に対して履行を受け入れるか否かにつき問合わせをした場合に
おいて、買主が合理的な期間内にそれに応答しないときは、売主は、その問合
わせの中で示した期間内に履行することができる。この期間中、買主は、売主
による履行と両立し得ない救済を求めることができない。
(3)一定の期間内に履行を行う旨の売主の通知は、買主にその選択を知らせる
ようにとの前項の下での問合わせを含むものと推定する。
(4)(2)項又は(3)項の下での売主の問合わせ又は通知は、買主が受け取らない
限りその効果を生じない。
(i)買主がその違反を知り又は知るべきであった時。
(ii)第 47 条(1)項に基づき買主が定めた付加期間が経過した時、又 6 売主が
その付加期間以内に義務の履行をしない旨を売主が宣言した時。
(iii)第 48 条(2)項に基づき売主が示した付加期間が経過した時、又は買主
が履行を受け入れない旨を宣言した時。
148 第 49 条【買主による契約解除権の発生・消滅要件】
(1)買主は、次のいずれかの場合には、契約を解除することができる。
(a)契約またはこの条約に基づく売主の義務のいずれかの不履行が、重大
な契約違反を構成する場合。
(b)引渡の不履行の場合であって、第47条第1項の規定に基づき買主が
定めた付加期間内に、売主が、商品を引き渡さない場合、またはこの期間内に
引渡をしないことを売主が表明した場合。
(2)しかしながら、売主が商品をすでに引き渡している場合においては、次に
掲げる時期に契約を解除しないときは、買主は解除権を失う。
(a)引渡の遅滞を理由とする場合は、買主が引渡のなされたことを知った
時以後の合理的期間内。
(b)引渡の遅滞以外の違反を理由とする場合は、次に掲げるいずれかの時
以後の合理的期間内。
(i)買主がその違反を知りまたは知るべきであった時。
(ii)第47条第1項の規定に基づき買主が定めた付加期間が経過した
時、またはその付加期間以内に義務の履行をしないことを売主が表明した時。
(iii)第48条第2項の規定に基づき売主が示した付加期間が経過した
時、または買主が履行を受け入れないことを表明した時。
第 50 条【代金の減額】
物品が契約に適合していない場合には、代金が既に支払われていると否とに
かかわらず、現実に引き渡された物品の引渡の際の価値が契約に適合する物品
ならばその時に有していたであろう価値に対する割合に応じて、買主は代金を
減額することができる。ただし、売主が第 37 条又は第 48 条に従ってその義務
の不履行を治癒した場合や、それらの規定 5 従った売主による履行の受け入れ
を買主が拒絶した場合には、買主は代金を減額することができない。
第 51 条【一部不履行の場合の処理】
(1)売主が物品の一部のみを引き渡した場合又は引き渡された物品の一部のみ
が契約に適合している場合には、第 46 条から第 50 条までの規定は、不足して
いる部分又は適合していない部分について適用する。
(2)引渡が完全にはなされなかったことや契約に適合してなされなかったこと
149 が、その契約の重大な違反となる場合に限り、買主は契約全体の解除を宣言す
ることができる。
第 52 条【期日前の履行、数量超過の引渡】
(1)売主が定められた期日前に物品を引き渡す場合には、買主は引渡を受領す
るか引渡の受領を拒絶するかの自由を有する。
(2)売主が契約で定めるよりも多量の物品を引き渡す場合には、買主は引渡を
受領するか超過分の引渡の受領を拒絶するかの自由を有する。買主が、超過分
の全部又は一部の引渡を受領した場合には、契約価格の割合でその対価を支払
わなければならない。
第Ⅲ章
買主の義務
第 53 条【買主の一般的義務】
買主は、契約及びこの条約の定めるところに従い、物品の代金を支払い、か
つ、物品の引渡を受領しなければならない。
第Ⅰ節
代金の支払
第 54 条【代金支払義務の内容】
買主の代金支払義務には、契約又は関連する法令の定めるところに従って、
支払を可能にするための措置をとること及びそれに必要な手続きを遵守する
ことを含む。
第 55 条【代金未定の場合の処理】
契約が有効に締結されているが、明示又は黙示により代金を定めていないか
又はその決定方法を規定していないときは、当事者は、別段の事情がない限り、
契約締結時にその取引と対比し得る状況の下で売却されていた同種の物品に
つき一般的に請求されていた代金に暗黙の言及をしているものとして扱う。
第 56 条【重量に従った代金の決定】
代金が物品の重量に従って定められるべき場合において、その趣旨が明確で
ないときは、正味の重量によって決定するものとする。
第 57 条【支払場所】
150 (1)代金を他の特定の場所で支払うことを要しない場合には、買主はそれを次
の場所で売主に支払わなければならない。
(a)売主の営業所、又は、
(b)物品又は書類の交付と引換えに代金を支払うべきときには、その交付が行
われる場所。
(2)契約締結後に売主が営業所を変更したことにより生じた代金支払に付随す
る費用の増加は、売主の負担とする。
第 58 条【支払の時期】
(1)代金を他の一定期日に支払うことを要しない場合には、契約及びこの条約
の定めるところに従い売主が物品又はその処分を支配する書類を買主の処分
に委ねた時に、買主は代金を支払わなければならない。売主は、その支払を、
物品又は書類の交付のための条件とすることができる。
(2)契約が物品の運送を予定する場合には、売主は、代金の支払と引換えでな
ければ物品又はその処分を支配する書類を買主に交付してはならないとの条
項を付して、物品を発送することができる。
(3)買主は、物品を検査する機会を有するまでは、代金を支払うことを要しな
い。ただし、当事者間で合意された引渡又は支払の手続が、買主が検査の機会
を持つことと両立する場合はこの限りでない。
第 59 条【履行期到来と売主からの催告の不要】
買主は、契約及びこの条約により定められた日又は確定し得る日に、代金を
支払わなければならず、売主側は、いかなる要求をすることも、いかなる方式
を遵守することも必要でない。
第Ⅱ節
引渡の受領
第 60 条【引渡受領義務】
買主の引渡受領義務の内容は、次の通りとする。
(a)売主による引渡を可能にするため買主に合理的に期待され得る全ての行
為を行うこと、及び、
(b)物品を引き取ること。
第Ⅲ節
買主による契約違反に対する救済
151 第 61 条【救済方法一般】
(1)買主が契約又はこの条約に定められた義務のいずれかを履行しない場合に
は、売主は次の救済を求めることができる。
(a)第 62 条から第 65 条までに規定された権利を行使すること。
(7)第 74 条から第 77 条までの規定に従い損害賠償を請求すること。
(2)売主が損害賠償を請求する権利は、それ以外の救済を求める権利の行使に
よって失われることはない。
(3)売主が契約違反に対する救済を求める場合に、裁判所又は仲裁機関は買主
に猶予期間を与えてはならない。
第 62 条【特定履行の要求】
売主は、買い主に対して代金の支払、引渡の受領、その他の買主の義務の履
行を要求することができる。ただし、売主がその請求と両立し得ない救済を求
めている場合はこの限りではない。
第 63 条【履行のための付加期間の付与】
(1)売主は、買主による義務の履行のために、合理的な長さの付加期間を定め
ることができる。
(2)その期間内に履行しない旨の通知を買主から 6 け取った場合でない限り、
売主はその期間中契約違反についてのいかなる救済をも求めることができな
い。ただし、これにより売主は履行の遅滞について損害賠償を請求する権利を
失う事はない。
第 64 条【売主による契約の解除】
(1)売主は、次のいずれかの場合には、契約の解除を宣言することができる。
(a)契約又はこの条約に基づく買主の義務のいずれかの不履行が、重大な契約
違反となる場合。
(b)第 63 条(1)項に基づき売主が定めた付加期間内に、買主が代金支払義務若
しくは物品の引渡受領義務の履行を怠る場合、又は買主がその期間内にその義
務を履行しない旨を宣言した場合。
(2)しかしながら、買主が代金を既に支払っている場合においては、次に掲げ
る時期に契約の解除を宣言しない限り、売主は解除を宣言する権利を失う。
152 (a)買主による遅延した履行については、売主が履行のなされたことを知る前。
(b)遅延した履行以外の買主による違反については、次に掲げるいずれかの時
以後の合理的期間内。(i)売主がその違反を知り又は知るべきであった時。
(ii)第 63 条(1)項に基づき売主が定めた付加期間が経過した時、又は買主が
その付加期間内に義務の履行をしない旨を宣言した時。
第 65 条【売主による目的物の指定】
(1)契約上、買主が物品の形、寸法その他の特徴を指定すべき場合において、
合意された期日又は売主からの要求を受領した後の合理的期間内に買主がそ
の指定をしないときは、売主は、自己が有し得る他のいかなる権利も損なうこ
となしに、自己が知っている買主の必要性に従って、自らその指定をすること
ができる。
(2)売主が自らその指定をする場合には、売主は買主に対してその詳細を通知
するとともに買主がそれと異なる指定をなし得るための合理的期間を設定し
なければならない。買主が、かかる通知を受領した後、設定された期間内に異
なった指定をしない場合には、売主のした指定が拘束力を持つ。
第IV章
危険の移転
第 66 条【危険移転後の物品の滅失毀損と代金支払義務】
危険が買主に移転した後に物品が滅失又は毀損しても、買主は代金支払義務
を免れない。ただし、その滅失又は毀損が売主の作為又は不作為による場合は
この限りでない。
第 67 条【運送を予定する場合の危険移転時期】
(1)売買契約が物品の運送を予定する場合において、売主が特定の場所で物品
を交付することを要しないときは、売買契約に従って買主への送付のため物品
が第一の運送人に交付された時に、危険は買主に移転する。売主が特定の場所
で物品を運送人に交付しなければならないときは、物品がその場所で運送人に
交付されるまで、危険は買主に移転しない。売主が物品の処分を支配する書類
を保持する権限を与えられていても、この事実は危険の移転に影響を及ぼさな
い。
(2)しかしながら、買主への危険の移転は、物品が荷印、運送書類、買主に対
する通知又はその他の方法により、契約の目的物として明確に特定されるまで
は生じない。
153 第 68 条【運送途上にある物品の売買と危険移転時期】
運送途上にある物品が売買されたときは、契約締結時から、危険は買主に移
転する。ただし、状況によっては、運送契約を表象する書類を発行した運送人
に物品が交付された時からの危険を買主が引き受けている場合もあるものと
する。しかしながら、売買契約締結時に、物品が既に滅失又は毀損していたこ
とを売主が知り又は知るべきであった場合において、そのことを買主に対して
明らかにしなかったときは、その滅失又は毀損は売主の負担となる。
第 69 条【その他の場合の危険移転時期】
(1)第 67 条及び第 68 条が該当しない場合には、危険は、買主が物品を引き取
った時に、また買主が適時に物品を引き取らない場合には、物品が買主の処分
に委ねられ、かつ、引渡を受領しないことにより買主が契約に違反した時から、
買主に移転する。
(2)しかしながら、売主が営業を営む以外の場所で買主が物品を引き取らなけ
ればならない場合には、引渡の履行期が到来し、かつ、物品がその場所で買主
の処分に委ねられていることを買主が知った時に、危険は移転する。
(3)契約が、その当時特定されていなかった物品に関するものであるときは、
契約の目的物として明確に特定されるまで、物品は買主の処分に委ねられてい
ないものとして扱う。
第 70 条【売主による重大な契約違反と危険負担との関係】
売主が重大な契約違反を行なった場合には、第 67 条、第 68 条及び第 69 条
の規定は、買主がその違反を理由として求め得る救済を損なうものでない。
第Ⅴ章
第Ⅰ節
売主及び買主の義務に共通する規定
履行期前の契約違反及び分割履行の契約
第 71 条【履行の停止】
(1)契約締結後に、次に掲げるいずれかの事由により、相手方がその義務の重
要な部分を履行しないであろうことが判明した場合には、当事者は自己の義務
の履行を停止することができる。
(a)相手方の履行能力又はその信用状態の著しい劣悪。
(b)契約履行の準備又はその実行における相手方の行動。
154 (2)前項に規定した事由が明らかになる前に、売主が、物品を既に発送してい
る場合には、たとえ物品を取得し得る証券が買主の手許にあるときでも、売主
は物品が買主に交付されるのを妨げることができる。本項は、売主と買主相互
間での物品をめぐる権利のみに関係する。
(3)物品の発送後か否かにかかわらず、履行を停止した当事者は、相手方に対
して履行を停止した旨を直ちに通知し、かつ、相手方がその履行につき適切な
保証を提供したときは、履行を継続しなければならない。
第 72 条【履行期前の契約解除】
(1)相手方が重大な契約違反を侵すであろうことが契約の履行期日前において
明瞭である場合には、当事者は契約の解除を宣言することができる。
(2)時間が許す場合には、契約の解除を宣言しようとする当事者は、相手方が
その履行につき適切な保証を提供し得る機会を与えるため、合理的な通知を与
えなければならない。
(3)前項の要件は、相手方がその義務を履行しない旨を宣言している場合には
適用しない。
第 73 条【分割履行の契約における違反】
(1)物品を分割して引き渡す契約において、いずれかの分割部分についての一
方の当事者の何らかの義務の不履行が、その分割部分について重大な契約違反
となる場合には、相手方はその分割部分につき契約の解除を宣言することがで
きる
。(2)いずれかの分割部分についての一方の当事者の何らかの義務の不履行が、
将来の分割部分につき重大な契約違反の発生を推断させるのに十分な根拠を
相手方に与える場合には、相手方は将来に向かって契約の解除を宣言すること
ができる。
ただし、この宣言は、合理的な期間内になされる場合に限る。
(3)買主がある引渡について契約の解除を宣言する場合において、既になされ
た引渡又は将来の引渡がその引渡と相互に依存関係にあるために、契約締結時
において両当事者により予期されていた目的のためにそれらを用いることが
できなくなったときは、買主は同時にそれらの引渡についても契約の解除を宣
言をすることができる。
第Ⅱ節
損害賠償
155 第 74 条【損害賠償の範囲についての一般原則】
一方の当事者の契約違反に対する損害賠償は、得べかりし利益の喪失も含め、
その違反の結果相手方が被った損失に等しい額とする。この損害賠償は、違反
をした当事者が契約締結時に知り又は知るべきであった事実及び事項に照ら
し、契約違反から生じ得る結果として契約締結時に予見し又は予見すべきであ
った損失を超え得ないものとする。
第 75 条【契約解除後に代替取引がなされた場合】
契約が解除された場合において、合理的な方法で、かつ、解除後合理的な期
間内に、買主が代替品を購入し又は売主が物品を他に売却したときは、損害賠
償を請求する当事者は、契約代金と代替取引における代金との差額及びさらに
それ以上の損害があるときは第 74 条に基づく損害賠償を請求することができ
る。
第 76 条【契約解除後に代替取引がなされなかった場合】
(1)契約が解除された場合において物品に時価があるときで、損害賠償を請求
する当事者が第 75 条の下での購入又は他への売却を行っていないときは、そ
の当事者は契約で定められた代金と解除時における時価との差額及びさらに
それ以上の損害があるときは第 74 条に基づく損害賠償を請求することができ
る。ただし、損害賠償を請求する当事者が物品を引き取った後に契約を解除し
たときは、解除時における時価に代えて物品を引き取った時における時価を適
用するものとする。
(2)前項の適用上、時価とは、物品の引渡がなされるべきであった場所におけ
る支配的な価格とする。ただし、その場所に時価がない場合には、合理的に代
置して参考とし得る他の場所における価格を時価とし、その際は物品の運送費
用の差を適切に加味するものとする。
第 77 条【契約違反の相手方に課せられる損害軽減業務】
契約違反を主張しようとする当事者は、得べかりし利益の喪失も含め、違反
から生ずる損失を軽減するためその状況下で合理的な措置をとらなければな
らない。当事者がかかる措置をとることを怠った場合には、違反をしている相
手方は、損害賠償から、軽減されるべきであった損失額の減額を請求できるも
のとする。
156 第Ⅲ節
利息
第 78 条【利息の支払を受ける権利】
当事者が延滞している代金その他の金銭の支払を怠る場合には、相手方は、
その金銭への利息の支払を受ける権利がある。ただし、このことは第 74 条に
基づく損害賠償の請求を妨げるものではない。
第Ⅳ節
免責
第 79 条【自己の支配を越えた障害発生による不履行】
(1)当事者が自己の負担するいずれかの義務の不履行につき、それが自己の支
配を越えた障害によるものであり、かつ、その障害を契約締結時に考慮に入れ
ておくことも、その障害又はその結果を回避又は克服することも合理的にみて
期待され得なかったことを証明したときは、その不履行についての責任を負わ
ない。
(2)当事者の不履行が、契約の総体又はその一部を履行するために使った第三
者の不履行によるときは、当事者は次の場合にのみ免責される。
(a)当事者が前項の規定に基づけば免責され、かつ、
(b)当事者が使った第三者も、その者に前項の規定が適用されれば免責される
であろう場合。
(3)本条に規定する免責は、障害が存在する期間効力を有する。
(4)不履行に陥った当事者は、相手方に対して、障害及び、その自己の履行能
力への影響につき、通知を与えなければならない。不履行に陥った当事者が障
害を知り又は知るべきであった時から合理的期間内に、その通知が相手方によ
り受け取られない場合には、当事者は、通知不受領の結果として生ずる損害に
ついて賠償責任を負う。
(5)本条は、いずれの当事者についても、この条約に基づく損害賠償請求以外
の権利を行使することを妨げるものではない。
第 80 条【自己の作為、不作為に起因する相手方の不履行】
当事者は、相手方の不履行が自己の作為又は不作為の結果として生じた場合
には、相手方の不履行をその限りにおいて主張することができない。
第Ⅴ節
解除の効果
157 第 81 条【契約上の義務からの解放とその限度、原状回復義務】
(1)契約の解除は、損害賠償義務を除き、両当事者を契約上の義務から解放す
る。解除は、契約中の紛争解決のための条項や、契約の解除があった場合の当
事者の権利義務を規定するその他の契約条項には影響を及ぼさない。
(2)契約の総体又はその一部を既に履行している当事者は、相手方に対して、
自己がその契約の下で既に供給し又は支払ったものの返還を請求することが
できる。当事者双方が、返還しなければならない場合には、それらの履行は同
時に行われなければならない。
第 82 条【原状回復不能のため解除や代替品引渡要求が許されない場合】
(1)買主が物品を受け取った当時と実質的に同等の状態でその物品を返還でき
ない場合には、買主は、契約の解除を宣告する権利や、売主に代替品の引渡を
要求する権利を失う。
(2)前項は、次の場合には適用しない。
(a)物品を返還できないことや物品を受け取った当時と実質的に同等の状態
でそれを返還できないことが、買主の作為又は不作為によるものでない場合。
(b)物品又はその一部が、第 38 条に規定する検査の結果として毀滅又は劣化
した場合。
(c)買主が不適合を発見し又は発見すべきであった時より前に、物品又はその
一部が通常の営業過程で買主により売却され又は通常の用法で消費若しくは
改変された場合。
第 83 条【解除や代替品引渡要求が許されない場合と他の救済方法】
前条に従い契約の解除を宣言する権利や売主に代替品の引渡を要求する権
利を失った買主といえども、契約及びこの条約に基づいた全ての他の救済を求
める権利は保持する。
第 84 条【利息の支払、得た利益の返還】
(1)売主が代金の払戻しをなすべき場合には、代金の支払がなされた日からの
利息も支払わなければならない。
(2)買主は、次の場合には、物品又はその一部から得た全ての利益を、売主の
ものとして計算しなければならない。
(a)買主が、物品又はその一部を返還しなければならない場合。
(b)物品の全部又は一部を返還すること又は物品を受け取った当時と実質的
158 に同等の状態で物品の全部又は一部を返還することができないにもかかわら
ず、買主が、契約を解除し又は売主に代替品の引渡を要求した場合。
第Ⅵ節
物品の保存
第 85 条【受領遅滞と売主が物品の保存措置をとる義務】
買主が物品の引渡の受領を遅滞した場合、又は、代金の支払と物品の引渡が
同時に履行されるべきときで、買主が代金の支払いを怠った場合において、売
主が物品を占有し又は、その他の方法によりその処分を支配できるときは、売
主はその物品につきその状況下で合理的な保存措置をとらなければならない。
売主は、買主からその合理的費用の償還を受けるまでその物品を留置すること
ができる。
第 86 条【買主が物品を拒絶後にその保存措置をとる義務】
(1)買主が物品を受け取っている場合において、その物品を拒絶するため契約
又はこの条約に基づく権利を行使しようとするときは、買主はその物品につき
その状況下で合理的な保存措置をとらなければならない。買主は、売主からそ
の合理的費用の償還を受けるまでその物品を留置することができる。
(2)買主に宛てて送付された物品が仕向地で買主の処分に委ねられた場合にお
いて、買主がその物品を拒絶する権利を行使するときは、買主は売主のために
その物品の占有を取得しなければならない。ただし、代金の支払をすることな
く、かつ、不合理な不便又は不合理を出捐を伴うことなく占有を取得できる場
合に限る。この規定は、売主又は売主のために物品の管理権限を有する者が仕
向地にいる場合には適用しない。買主が本項に従い物品の占有を取得する場合
には、買主の権利及び義務については前項を適用する。
第 87 条【保存措置としての倉庫への寄託】
物品の保存措置をとらなければならない当事者は、その費用が不合理なもの
でない限り、相手方の費用で物品を第三者の倉庫に寄託することができる。
第 88 条【保存物品の売却】
(1)第 85 条又は第 86 条に基づき物品を保存しなければならない当事者は、相
手方による物品の占有の取得若しくはその取り戻し又は代金若しくは保存費
用の支払につき不合理な遅滞があるときは、何らかの適当な方法で物品を売却
159 することができる。ただし、相手方に対して、売却の意図につき、合理的な通
知が与えられたことを条件とする。
(2)物品が、急速に劣化しやすき場合、又はその保存に不合理な出捐を要する
場合には、第 85 条又は第 86 条に基づき物品を保存しなければならない当事者
は、物品を売却するため合理的な措置をとらなければならない。この場合には、
可能な限り、相手方に対して売却の意図につき通知が与えられるべきものとす
る。
(3)物品を売却した当事者は、売却代金から物品の保存及びその売却に要した
合理的な費用に等しい額を留めおく権利を有する。その残額は、相手方のもの
として計算しなければならない。
第Ⅳ部
最終条項
第 89 条【条約の寄託者】
この条約の寄託者として、国際連合事務総長を指定する。
第 90 条【他の条約等の国際的な合意との関係】
この条約は、既に発効し又は今後発効する国際的な合意であって、この条約
により規律される事項に関する規定を含むものには優先しない。ただし、契約
の両当事者がその合意の当事国に営業所を持つ場合に限る。
第 91 条【批准、受諾若しくは承認又は加入の必要性】
(1)この条約は、国際物品売買契約に関する国際連合会議の最終日に署名のた
め解放され、ニューヨークの国際連合本部において 1981 年 9 月 30 日まで全て
の国による署名のため開放する。
(2)この条約は、署名国により批准、受諾又は承認されなければならない。
(3)この条約は、署名のため解放された日から、署名国でない全ての国による
加入のため解放される。
(4)批准書、受諾書、承認書又は加入書は、国際連合事務総長に寄託するもの
とする。
第 92 条【条約第II部又は第III部に拘束されない旨の留保】
(1)締約国は、署名、批准、受諾、承認又は加入の時に、その国がこの条約第
II部に拘束されない旨、又は、その国がこの条約第III部に拘束されない
160 旨を宣言することができる。
(2)この条約の第II部又は第II部につき前項に基づいて宣言を行う締約国
は、その宣言の対象となる部が規律する事項については、この条約第 1 条(1)
項にいう締約国とみなされない。
第 93 条【連邦国家、多数法国による適用領域に関する留保】
(1)締約国が、複数の領域を有し、かつ、その国の憲法に従って、この条約が
扱っている事項に関し各領域で異なった法制が施行されている場合には、その
国は、署名、批准、受諾、承認又は加入の時に、この条約をその全部の領域又
は 1 部の領域にのみ適用する旨を宣言することができ、かつ、いつでも新たな
宣言により、前の宣言を変更することができる。
(2)前項の宣言は、寄託者に通告されるべきものとし、この条約の適用される
領域が明示されるべきものとする。
(3)本条の下での宣言の結果、この条約が締約国の 1 又は複数の領域に適用さ
れるが、それが全ての領域には及んでいない場合において、当事者の営業所が
その国にあるときは、その営業所がこの条約の適用される領域にない限り、こ
の条約の適用上、その営業所は締約国にはないものとみなす。
(4)締約国が(1)項の宣言をしない場合には、この条約はその国の全領域で適用
あるものとする。
第 94 条【共通法連合における適用制限に関する留保】
(1)この条約が規律する事項につき同一又は相互に密接な関係を持つ法令を有
する複数の締約国は、売買契約の両当事者の営業所がそれらの国に所在する場
合にはこの条約をその売買契約及びその成立については適用しない旨を、いつ
でも宣言することができる。この宣言は、共同で又はそれぞれ単独の相互主義
的な宣言により行うことができる。
(2)この条約が規律する事項につき、一又は複数の非締約国と同一又は相互に
密接な関係を持つ法令を有する締約国は、売買契約の両当事者の営業所がそれ
らの国に所在する場合にはこの条約をその売買契約及びその成立については
適用しない旨を、いつでも宣言することができる。
(3)前項の宣言の対象となった国がその後締約国となった場合には、その宣言
は、この条約がその新たな締約国について発効する日から、(1)項の下での宣
言としての効力を有する。ただし、新たな締約国がその宣言 9 加わるか又は単
独で相互主義的な宣言を行った場合に限る。
161 第 95 条【条約適用基準として国際私法を排斥する旨の留保】
いずれの国も、批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の時に、この条約
第 1 条(1)項(b)号に拘束されない旨を宣言することができる。
第 96 条【契約に書面性を要求する旨の留保】
その国の立法により、売買契約の締結又は立証が書面によりなされるべきこ
とを要求している締約国は、第 12 条に基づき、売買契約、合意によるその変
更若しくは解消、又は申込、承諾その他の意思の表示を書面以外の方法で行う
ことを認める第 11 条、第 29 条又はこの条約第II部のいかなる規定も、いず
れかの当事者がその国に営業所を持つ場合には適用しない旨を、いつでも宣言
をすることができる。
第 97 条【留保宣言の確認、留保の効力発生時期、留保の撤回】
(1)署名の時にこの条約に基づいてなされた宣言は、批准、受諾又は承認に際
してこれを確認すべきものとする。
(2)宣言及び宣言の確認は、書面によりこれを行い、かつ、正式に寄託者に通
告されなければならない。
(3)宣言は、それを行った国との関係においてこの条約が発効するのと同時に
効力を生ずるものとする。ただし、条約の発効後寄託者が正式の通告を受領し
た宣言は、寄託者がそれを受領した日から 6 箇月が経過した後の最初の月の初
日に効力を生ずるものとする。第 94 条の下での相互主義を条件とした複数の
単独宣言は、寄託者が、関連国間で対応する最後の宣言を受領した時から 6
箇月が経過した後の最初の月の初日に効力を生ずる。
(4)この条約の下での宣言を行った国は、寄託者に宛てた書面による正式の通
告により、その宣言をいつでも撤回することができる。この撤回は、寄託者が
通告を受領した日から 6 箇月が経過した後の最初の月の初日に効力を生ずる。
(5)第 94 条の下での宣言が撤回されたときは、その撤回が効力を生ずる日から、
同条の下でなされた他の国による相互主義的宣言の効果を停止させる。
第 98 条【他の一切の留保の禁止】
この条約中で明確に認められたもの以外の留保は一切認めない。
第 99 条【条約の発効時期、1964 年ハーグ条約の当事国との関係】
162 (1)この条約は、(6)項の規定に服することを条件として、第 92 条に基づく宣
言が含まれているものも含め第 10 番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書
が寄託された日から 12 箇月が経過した後の最初の月の初日に発効する。
(2)この条約の第 10 番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の後に、
批准、受諾、承認又は加入する国については、この条約は、適用を排除される
部を除き、(6)項の規定に従うことを条件をして、その国の批准書、受諾書、
承認書又は加入書が寄託された日から 12 箇月が経過した後の最初の月の初日
に発効する。
(3)1964 年 7 月 1 日ハーグにおいて作成された国際物品売買契約の成立につい
ての統一法に関する条約(1964 年ハーグ成立条約)及び 1964 年 7 月 1 日ハーグ
において作成された国際物品売買についての統一法に関する条約(1964 年ハ
ーグ売買条約)の一方又はその双方の当事国が、この条約を批准、受諾、承認
又は加入するときは、オランダ政府に通告することにより、その場合に応じ、
1964 年ハーグ成立条約及び 1964 年ハーグ売買条約の一方又はその双方を、同
時に廃棄しなければならない。
(4)1964 年ハーグ売買条約の当事国でこの条約を批准、受諾、承認又は加入す
る国が、第 92 条に基づきこの条約の第II部に拘束されない旨の宣言を行い
又は行っている場合には、その国は、批准、受諾、承認又は加入の時に、オラ
ンダ政府に通告することにより、1964 年ハーグ売買条約を廃棄しなければな
らない。
(5)1964 年ハーグ成立条約の当事国でこの条約を批准、受諾、承認又は加入す
る国が、第 92 条に基づきこの条約の第III部に拘束されない旨の宣言を行
い又は行っている場合には、その国は、批准、受諾、承認又は加入の時に、オ
ランダ政府に通告することにより、1964 年ハーグ成立条約を廃棄しなければ
ならない。
(6)本条の適用上、1964 年ハーグ成立条約又は 1964 年ハーグ売買条約の当時
国によるこの条約の批准、受諾、承認又は加入は、その国がそれらの条約につ
いてしなければならない廃棄の通告が効力を生ずるまでは効力を生じない。こ
の条約の寄託者は、この点についての必要な相互調整を確実にするため、1964
年条約の寄託者であるオランダ政府と協議しなければならない。
第 100 条【遡及的適用の禁止】
(1)この条約が契約の成立に適用されるのは、第 1 条(1)項(a)号に規定する締
約国の双方につき又は同項(b)号に規定する締約国につきこの条約が効力を
163 生じた日以後に契約締結のための申入れがなされた場合のみである。
(2)この条約が適用されるのは、第 1 条(1)項(a)号に規定する締約国の双方に
つき又は同項(b)号に規定する締約国につきこの条約が効力を生じた日以後
に締結された契約のみである。
第 101 条【条約又は第Ⅱ部若しくは第Ⅲ部の廃棄】
(1)締約国は、寄託者に宛てた書面による正式な通告により、この条約又はこ
の条約の第II部若しくは第III部を廃棄することができる。
(2)廃棄は、寄託者がその通告を受領してから 12 箇月が経過した後の最初の月
の初日に効力を生ずる。通告中で廃棄の効力発生につきより長い期間が指定さ
れている場合には、廃棄は、寄託者が通告を受領してからその期間が経過する
ことにより効力を生ずる。
付録2
中華人民共和国対外貿易法
第一章
164 総則
第 1 条 対外開放の拡大、対外貿易の発展、対外貿易秩序の維持保護、対外
貿易経営者の適法な権益の保護、社会主義市場経済の健全な発展を促進するた
め、本法を制定する。
第 2 条 本法は、対外貿易及び対外貿易に関連する知的財産権の保護におい
て適用する。本法にいう対外貿易とは、貨物の輸出入、技術の輸出入及び国際
サービス貿易を指す。
第 3 条 国務院対外貿易主管部門は、本法により全国の対外貿易業務を主管
する。
第 4 条 国家は統一された対外貿易制度を実行し、対外貿易の発展を奨励し、
自由な対外貿易秩序を維持保護する。
第 5 条 中華人民共和国は平等互恵の原則に基づき、その他の国家及び地区
との貿易関係を促進及び発展させ、関税同盟協定、自由貿易区協定等の地域経
済貿易協定を締結し又はこれに参加して、地域経済組織に参加するものとする。
第 6 条 中華人民共和国は対外貿易分野において締結又は参加する国際条
例、協定に基づき、その他の締約者、参加者に対し、最恵国待遇、内国民待遇
等その他の待遇を与え、又は互恵、対等の原則に基づく相手方に対し、最恵国
待遇、内国民待遇等の待遇を与えるものとする。
第 7 条 いかなる国家又は地区が貿易分野において中華人民共和国に対し
差別的な禁止、制限又はその他類似の措置を講じた場合でも、中華人民共和国
は実情に基づき当該国家又は当該地区に対し、相応の措置を講じることができ
る。
第二章
対外貿易経営者
第 8 条 本法にいう対外貿易経営者とは、本法により工商登記又はその他の
就業手続を行い、本法及びその他関連法律、行政法規の規定に基づき対外貿易
経営活動に従事する法人及びその他組織又は個人を指す。
第 9 条 貨物輸出入及び技術輸出入に従事する対外貿易経営者は、国務院対
外貿易主管部門又は国務院対外貿易主管部門が委託した機構において届出登
記を行なわなければならない。但し、法律、行政法規及び国務院対外貿易主管
部門が届出登記を不必要として規定する場合を除く。届出登記の具体的な方法
は、国務院対外貿易主管部門が規定する。対外貿易経営者が規定に基づき届出
登記の手続を行なわない場合、税関は輸出入貨物の通関申告検査通過手続を行
なわない。
第 10 条 国際サービス貿易に従事する場合、本法及びその他の関連法律、
行政法規の規定を遵守しなければならない。
対外工程請負又は対外労務提携に従事する単位は、相応の資質又は資格を備
えなければならない。具体的な方法は国務院が規定する
第 11 条 国家は、一部貨物の輸出入について国営貿易管理を実施すること
ができる。国営貿易管理が実施される貨物の輸出入業務は、授権を経た企業の
みが経営できるものとする。但し、国家が認可する分量の国営貿易管理貨物の
輸出入業務を授権されていない企業が経営する場合を除く。国営貿易管理を実
施する貨物及び授権されて経営する企業の目録については、国務院対外貿易主
165 管部門が国務院のその他の関連部門と共に確定、調整し、かつ公布するものと
する。
本条第1項の規定に違反し、国営貿易管理を実施する貨物を無断で輸出入し
た場合、税関はこれを通関させない。
第 12 条 対外貿易経営者は、他人からの委託を受け、経営範囲内でその対
外貿易業務を代行することができる。
第 13 条 対外貿易経営者は、国務院対外貿易主管部門の規定により、関連
部門に対し、その対外貿易経営活動の関連文書及び資料を提出しなければなら
ない。関連部門は提供者の商業秘密を保持しなければならない。
第三章 貨物輸出入及び技術輸出入
第 14 条 国家は、貨物及び技術の自由輸出入を許可する。但し、法律、行
政法規に別途規定がある場合を除く。
第 15 条 国務院対外貿易主管部門は、輸出入状況を監視測量する必要性に
基づき、一部の自由輸出入の貨物については輸出入自動許可を実施し、かつそ
の目録を公布することができる。
自動許可を実施する輸出入貨物については、荷受人、発送人が税関の通関申
告
第 16 条 国家は、次に列挙する要因に基づき、関連する貨物、技術の輸入
又は輸出を制限又は禁止することができる。
(1) 国家の安全、社会公共利益又は公共道徳を維持保護するため、輸入又は
輸出を制限する必要がある場合
(2) 人体の健康又は安全を保護し、動植物の生命又は健康を保護し、環境を
保護するため、輸入又は輸出を制限する必要がある場合
(3) 金又は銀の輸出入に関連する措置を実施するため、輸入又は輸出を制限
する必要がある場合
(4) 国内供給が不足し、又は枯渇する可能性がある国内資源を有効に保護す
るため、輸出を制限する必要がある場合
(5) 輸出先の国家又は地区の市場容量に限りがあり、輸出を制限する必要が
ある場合
(6) 輸出経営秩序に重大な混乱が生じるため、輸出を制限する必要がある場
合
(7) 国内の特定産業を確立、又は確立を早めるため、輸入を制限する必要が
ある場合
(8) いかなる形式における農業、牧畜業、漁業製品であっても、輸入を制限
する必要がある場合
(9) 国家の国際金融地位及び国際収支バランスを保証するため、輸入を制限
する必要がある場合
(10) 法律、行政法規の規定に基づく場合、その他輸入又は輸出を制限又は
禁止する必要がある場合
(11) わが国が締結又は参加している国際条約、協定の規定に基づき、輸入
又は輸出を制限又は禁止する必要がある場合
第 17 条 核分裂及び核融合物質又はこれら物質を誘導する物質に関連する
166 貨物、技術の 輸出入、並びに武器、弾薬又はその他軍事物資に関連する輸出
入について、国家はあらゆる必要な措置を講じ、国家の安全を維持保護するこ
とができる。
戦時において又は国際平和と安全を維保護するために、国家は、貨物、技術
輸出入分野においてあらゆる必要な措置を講じることができる。
第 18 条 国務院対外貿易主管部門は、国務院の関連部門と共同して、本法
第 16 条、第 17 条の規定により、輸出入を制限又は禁止する貨物、技術の目録
を制定、調整かつ公布しなければならない。
国務院対外貿易主管部門、又は国務院の関連部門と共同して、国務院の認可
を経て、本法第 16 条、第 17 条に規定する範囲内において、前項に規定する目
録以外の特定の貨物、技術の輸入もしくは輸出の制限又は禁止を臨時に決定す
ることができる。
第 19 条 国家が輸入又は輸出制限を行う貨物については割当、許可証等の
方法による管理を実施し、輸入又は輸出制限を行う技術については許可証管理
を実施する。
割当又は許可証管理を実施する貨物、技術については、国務院の規定により国
務院対外貿易主管部門又は共同する国務院の関連部門の許可を経ずして、輸入
又は輸出を行うことはできない。
一部の輸入貨物については関税割当等の方法による管理を実施することがで
きる。
第 20 条 輸出入貨物の割当、関税割当については、国務院対外貿易主管部
門又は国務院の関連部門により、それぞれの職責の範囲内において、公正、公
開、公平及び効果・効率の原則に基づき分配する。具体的な方法については国
務院が規定する。
第 21 条 国家は統一した商品合格評定制度を実施し、関連する法律、行政
法規の規定に基づき、輸出入商品について認証、検査、検疫を行うものとする。
第 22 条 国家は輸出入貨物について原産地管理を行う。具体的な方法は、
国務院が規定する。
第 23 条 文物、野生動植物及びその製品等について、その他の法律、行政
法規に輸出入禁止又は輸出入制限の規定がある場合、関連する法律、行政法規
の規定により処理するものとする。
第四章 国際サービス貿易
第 24 条 中華人民共和国は国際サービス貿易分野において、締結又は参加
する国際条約、協定中に行われた承諾に基づき、その他の締約者、参加者を市
場参入させ、内国民待遇を与える。
第 25 条 国務院対外貿易主管部門及び国務院の関連部門は、本法及びその
他の関連法律、行政法規により、国際サービス貿易について管理を行う。
第 26 条 国家は次に列挙する要因に基づき、関連する国際サービス貿易を
制限又は禁止することができる。
(1) 国家の安全、社会公共利益又は公共道徳を維持保護するため、制限又は
禁止する必要がある場合
(2) 人体の健康又は安全を保護し、動植物の生命又は健康を保護し、環境を
167 保護するため、制限又は禁止する必要がある場合
(3) 国内の特定のサービス業を確立、又は確立を早めるため、制限する必要
がある場合
(4) 国家の外貨収支バランスを保障するため、制限する必要がある場合
(5) 法律、行政法規の規定にその他制限又は禁止する必要がある場合
(6) わが国が締結又は参加している国家条約、協定の規定に基づき、その他
輸入又は輸出を制限又は禁止する必要がある場合
第 27 条 軍事に関連する国際サービス貿易及び核分裂又は核融合物質又は
これら物質を誘導する物質に関連するサービス貿易について、国家は国家の安
全を維持保護するため、あらゆる必要な措置を講じることができる。
戦時において又は国際平和と安全を維持するために、国家は貨物、国際サービ
ス貿易分野において如何なる措置をも講じることができる。
第 28 条 国務院対外貿易主管部門は国務院の関連部門と共同し、本法第 26
条、第 27 条及びその他の関連法律、行政法規の規定により、国際サービス貿
易の市場参入の目録を制定、調整、公布する。
第五章 対外貿易に関連する知的財産権の保護
第 29 条 国家は、関連する知的財産権の法律、行政法規に基づき、対外貿
易に関する知的財産権を保護する。
輸入貨物が知的財産権を侵犯し、かつ対外貿易秩序に危害を及ぼす場合、国務
院対外貿易主管部門は、権利侵害者が生産、販売する関連貨物の輸入を一定期
間禁止する等の措置を講じることができる。
第 30 条 知的財産権の権利者に、ライセンシーがライセンス契約における
知的財産権の有効性について疑義を申し出ることを阻止する、強制的な一括ラ
イセンスを行なう、ライセンス契約に排他的な返授条件を規定すること等の行
為の一つがあり、かつ対外貿易の平等な競争秩序に危害を及ぼす場合、国務院
対外貿易主管部門は、その危害を除去するため必要な措置を講じることができ
る。
第 31 条 その他国家もしくは地区が知的財産権保護の分野において中華人
民共和国の法人、その他組織もしくは個人に対して内国民等の待遇を与えない
場合、又は、中華人民共和国の出自による貨物、技術もしくはサービス及びそ
の提供者に対し充分に有効な知的財産権の保護を与えることができない場合、
国務院対外貿易主管部門は本法及び関連法律法規の規定に基づき、かつ中華人
民共和国が締結又は参加する国際条約、協定義務に基づき、当該国家又は当該
地域との貿易について必要な措置を講じることができる。
第六章 対外貿易秩序
対外貿易の活動においては、独占禁止に関する法律、法規の規定に違反し、
独 占行為を行ってはならない。
対外貿易経営活動における独占行為が、市場の平等な競争に危害を及ぼす場合、
168 独占禁止に関する法律、行政法規の規定に基づき処理するものとする。
前項の行為があり、かつ対外貿易秩序に危害を及ぼす場合、国務院対外貿易
主管部門は危害を除去するために必要な措置を講じることができる。
第 33 条 対外貿易経営活動において、不当に低廉な価格での商品販売、入
札における談合、虚偽の広告の発布、商業賄賂の贈収を行なってはならない。
対外貿易経営活動において不正競争行為が行なわれた場合、反不正競争に関す
る法律、行政法規の規定に基づき処理するものとする。
前項の違法行為があり、かつ対外貿易秩序に危害を及ぼす場合、国務院対外貿
易主管部門は当該経営者に対し、危害を除去するため関連する貨物、技術の輸
出入等を禁止する等の措置を講じることができる。
第 34 条 対外貿易活動において、次に列挙する行為があってはならない。
(1) 輸出入貨物の原産地マークの偽造、変造、
輸出入貨物原産地証書、輸出入許可証、輸出入割当証明もしくはその他の輸出
入証明文書の偽造、変造又は売買
(2) 輸出税還付金の詐取
(3) 密輸
(4) 法律、行政法規が実施を規定する認証、検査、検疫の回避
(5) 法律、行政法規規定に違反するその他の行為
第 35 条 対外貿易経営者は、対外貿易経営活動において、国家の外貨管理
に関する規定を遵守しなければならない。
第 36 条 本法の規定に違反し、対外貿易秩序に危害を及ぼす場合、国務院
対外貿易主管部門は社会に公告することができる。
第七章 対外貿易調査
第 37 条 対外貿易秩序を維持保護するため、国務院対外貿易主管部門は、
自ら又は国務院のその他関連部門と共同して、法律、行政法規の規定により、
次の列挙する事項について調査することができる。
(1) 貨物輸出入、技術輸出入、国際サービス貿易の、国内産業及びその競争
力に対する影響
(2) 関連国家又は地域の貿易障壁
(3) 法により反ダンピング、反補償又は保障措置等の対外貿易救済措置を講
じるべきか否かを確定するため、調査を必要とする事項
(4) 貿易救済措置を回避する行為
(5) 対外貿易における国家安全利益に関する事項
(6) 第 7 条、第 29 条第 2 項、第 30 条、第 31 条、第 32 条第 3 項、第 33 条
第 3 項の規定を執り行うため、調査を必要とする事項
(7) その他対外貿易秩序に影響を及ぼし、調査を必要とする事項
第 38 条 対外貿易調査の開始は、国務院対外貿易主管部門公告を公布する。
調査については、書面による質問、聴聞会招集、実地調査、委託調査等の方法
を講じることができる。
国務院対外貿易主管部門は、調査結果に基づき調査報告を提出するか、又は
処理裁定を作成し、かつ公告を公布する。
第 39 条 関連単位及び個人は、対外貿易調査について協力、支援をしなけ
169 ればならない。
国務院対外貿易主管部門及び国務院の関連部門及びその業務人員は対外貿
易調査を行い、これにより知りえた国家秘密及び商業秘密については守秘義務
を負う。
第八章
対外貿易の救済
第 40 条 国家は対外貿易調査結果に基づき、適当な貿易救済措置を講じる
ことができる。
第 41 条 その他の国家又は地域の製品について、正常価値を下回るダンピ
ング方法によりわが国の市場に輸入し、すでに確立している国内産業に実質的
な損害を与え、もしくは実質的な損害を与える恐れがあり、又は国内産業の確
立に実質的な妨害がある場合、国家は反ダンピング措置を講じて、この種の損
害もしくは損害の恐れもしくは妨害を除去し、又は軽減することができる。
第 42 条 その他の国家又は地域の製品について、正常価値よりも低廉に第
三国の市場へ輸出され、わが国のすでに確立している国内産業に実質的な損害
を与え、もしくは実質的な損害を与える恐れがあり、又はわが国が確立する国
内産業に実質的な妨害がある場合、国内産業からの申請に応じ、国務院対外貿
易主管部門は第三国政府と協議し、適切な措置を講じることを要求することが
できる。
第 43 条 輸入製品が直接又は間接的に受ける輸出国又は地域より与えられ
るいかなる形式の専門的補償についても、すでに確立している国内産業に実質
的な損害を与え、もしくは実質的な損害を与える恐れがあり、又は国内産業の
確立に実質的な妨害がある場合、国家は反補償措置を講じ、この種の損害もし
くは損害の恐れもしくは妨害を除去し、又は軽減することができる。
第 44 条 輸入製品の数量の増加により、同類の製品もしくは直接的な競争
関係にある製品を生産する国内産業に重大な損害を与え、又は重大な損害を与
える恐れがある場合、国家は必要な保障措置を講じ、この種の損害もしくは損
害の恐れを除去し、又は軽減することができ、かつ当該産業に対し必要な支援
を提供することができる。
第 45 条 その他の国家又は地域のサービス提供者がわが国において提供す
るサービスの増加により、同類もしくはそれと直接的な競争関係にあるサービ
スを提供する産業に損害を与え、又は損害を与える恐れがある場合、国家は必
要な救済措置を講じ、この種の損害もしくは損害の恐れを除去し、又は軽減す
ることができる。
第 46 条 第三国が輸入を制限することから、ある種の製品のわが国の市場
への輸入量が大量に増加し、すでに確立している国内産業に損害を与え、もし
くは損害を与える恐れがあり、又は国内産業の確立に妨害がある場合、国家は
必要な措置を講じ、当該製品の輸入を制限することができる。
第 47 条 中華人民共和国と経済貿易条約もしくは協定を締結もしくは共同
参加している国家もしくは地区が、条約、協定の規定を違反して、中華人民共
和国の当該条約もしくは協定に基づき享有する利益を喪失させしめ、もしくは
損失を与え、又は条約、協定の目的の実現を妨害した場合、中華人民共和国政
府は関連国家もしくは地区政府に対して適切な救済措置を講じるよう要求す
170 る権利を有し、かつ関連条約、協定に基づき関係する義務の履行を中止するこ
とができる。
第 48 条 国務院対外貿易主管部門は、本法及びその他関連する法律の規定
により、対外貿易の2カ国間又は多角的協議、折衝及び紛争の解決を行うもの
とする。
第 49 条 国務院対外貿易主管部門及び国務院の関連部門は、貨物輸出入、
技術輸出入及び国際サービス貿易の緊急事態対応体制を確立しなければなら
ず、対外貿易における突発的及び異常事態に対応し、国家の経済安定を維持保
護しなければならない。
第 50 条 国家は本法に規定する貿易救済措置を回避する行為について、必
要な反回避措置を講じることができる。
第九章
対外貿易の促進
第 51 条 国家は対外貿易発展戦略を制定し、対外貿易促進体制を確立し完
全なものとする。
第 52 条 国家は対外貿易発展の必要性に基づき、対外貿易サービスのため
の金融機構を確立し、完全なものとして、対外貿易発展基金、リスク基金を設
立する。
第 53 条 国家は輸出入貸付金、輸出信用保険、輸出税還付及びその他の対
外貿易促進の措置を講じ、対外貿易を発展させる。
第 54 条 国家は対外貿易の公共情報サービスシステムを確立し、対外貿易
経営者及びその他の社会公衆に対し情報サービスを行う。
第 55 条 国家は適当な措置を講じて対外貿易経営者の国際市場開拓を奨励
し、対外投資、対外工程請負及び労務提携等多様な方法により、対外貿易を発
展させる。
第 56 条 対外貿易経営者は法により関連する協会、商会を成立し、参加で
きるものとする。
関連する協会、商会は法律、行政法規を遵守しなければならず、定款に基づき
その構成員に対し対外貿易に関連する生産、販売経営、研修等の分野における
サービスを提供し、協調及び自律作用を発揮し、法により関連する対外貿易救
済措置の申請を提出し、構成員及び業界の利益を維持保護し、政府の関連部門
に対し構成員の対外貿易に関する意見を報告し、対外貿易の促進活動を展開す
るものとする。
第 57 条 中国国際貿易促進組織は定款に基づき対外関係を展開するものと
する。展覧会の開催、情報、コンサルティングサービス及びその他の対外貿易
促進活動を提供するものとする。
第 58 条 国家は中小企業の対外貿易発展を支援し、促進する。
第 59 条 国家は民族自治地区及び経済未発達地区の対外貿易発展を支援し、
促進する。
第十章
第 60 条
法的責任
本法第 11 条の規定に違反し、無断で国営貿易管理の貨物の輸出入
171 を行った場合、国務院対外貿易主管部門又は国務院のその他関連部門は、5 万
元以下の罰金に処することができる。情状が深刻な場合、行政処罰決定の効力
が発生した日より 3 年間、違法行為者からの国営貿易管理貨物輸出入業務に従
事するための申請を受理せず、又は既に授けられたその他国営貿易管理貨物輸
出入に従事するための資格を取り消すことができる。
第 61 条 輸出入禁止の貨物を輸出入した場合、又は許可を経ず輸出入制限
の貨物を輸出入した場合、税関は関連する法律、行政法規の規定に基づき処理、
処罰する。犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を追及する。
輸出入禁止の技術を輸出入した場合、又は許可を経ず無断で輸出入制限の技
術の輸出入を行った場合、関連法律、行政法規の規定に基づき処理、処罰する。
法律、行政法規に規定がない場合、国務院対外貿易主管部門より是正を命じ、
違法所得を没収し、かつ違法による所得の同額以上 5 倍以下の罰金に処するも
のとする。違法による所得がない場合、又は違法による所得が 1 万元に満たな
い場合、1 万元以上 5 万元以下の罰金に処するものとする。犯罪を構成する場
合、法に基づき刑事責任を追及する。
前 2 項に規定する行政処罰決定が効力を発生した日又は刑事処罰判決が効
力を発生した日より、国務院対外貿易主管部門又は国務院のその他の関連部門
は、3 年間、違法行為者が提出する輸出割当もしくは許可証の申請を受理せず、
又は違法行為者に対し、1 年以上 3 年以下の期間において、関連する貨物又は
技術の輸出入経営活動に従事することを禁止することができる。
第 62 条 禁止された国際サービス貿易に従事した場合、または許可を経ず
制限されている国際サービス貿易に従事した場合、関連する法律、行政法規の
規定に基づき処罰するものとする。法律、行政法規に規定がない場合、国務院
対外貿易主管部門が是正を命じ、違法所得を没収し、かつ違法による所得の同
額以上 5 倍以下の罰金に処するものとする。違法による所得がない場合、又は
違法による所得が 1 万元に満たない場合、1 万元以上 5 万元以下の罰金に処す
る。犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を追及する。
国務院対外貿易主管部門は、違法行為者に対し、前項に規定された行政処罰
の決定の効力が発生した日又は刑事処罰判決の効力が発生した日より 1 年以
上 3 年以下の期間において、関連する国際サービス貿易経営活動に従事するこ
とを禁止できる。
第 63 条 本法第 34 条の規定に違反する場合、関連する法律、行政法規の規
定に基づき処罰するものとする。犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を
追及する。
国務院対外貿易主管部門は、違法行為者に対し、前項に規定された行政処罰
の決定の効力が発生した日又は刑事処罰判決の効力が発生した日より1年以
上3年以下の期間において、関連する対外貿易経営活動に従事することを禁止
できる。
第 64 条 本法第 61 条乃至第 63 条の規定に基づき、関連する対外貿易経営
活動に従事することを禁止された場合、禁止期間において、税関は国務院対外
貿易主管部門が法により下した禁止決定に基づき、当該対外貿易経営者の関連
輸出入貨物について通関検査通過手続を行なわず、外貨管理部門又は外貨指定
銀行は外貨決済、為替手続を行わないものとする。
第 65 条 法により対外貿易管理業務に責任を負う部門の職員が職務怠慢、
172 私利私欲に走り、又は職権を濫用して犯罪を構成した場合、法に基づき刑事責
任を追及する。犯罪を構成しない場合、法に基づき行政処罰を下すものとする。
法により対外貿易管理業務に責任を負う部門の職員が職務上の立場を利用し、
他人の財物を横領し、又は不法に他人の財物を受領し他人の利益を謀り、これ
が犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を追及する。犯罪を構成しない場
合、法に基づき行政処分を下すものとする。
第 66 条 対外貿易経営活動の当事者が、本法により対外貿易管理業務に責
任を負う部門が下した具体的な行政行為を不服とする場合、法により行政異議
申立を申請し、又は人民法院に行政訴訟を提起することができる。
第十一章
附則
第 67 条 軍用品、核融合及び核分裂物質又はこれら物質を誘導する物質に
関連する対外貿易管理及び文化製品等の輸出入管理については、法律、行政法
規に別途規定がある場合、その規定に従う。
第 68 条 国家は、辺境都市と国家の国境に隣接する辺境都市との間の貿易
及び辺境地帯の住民間の貿易について、臨機応変な措置を講じ、優遇、便宜を
与えるものとする。具体的な方法については、国務院が規定する。
第 69 条 中華人民共和国の単独関税区には本法を適用しない。
第 70 条 本法は 2004 年 7 月 1 日より施行する。
付録3
中華人民共和国契約法
(総則・売買契約)
173 第一章 一般規定
第 1 条(目的)
契約当事者の合法的な権利の保護、社会経済秩序の維持、社会主義近代化建
設を促進するために、本法を制定する。
第 2 条(適用対象)
本法にて称する契約は、平等的主体である自然人、法人、その他組織の間に
おける民事的権利義務関係の設立、変更、終了に関する協議である。婚姻、養
子縁組、親権等身分に関連する協議は、その他の法律の規定を適用する。
第 3 条(平等の原則)
契約当事者の法的地位は平等であり、当事者の一方は自分の意志を相手側に
強制してはならない。
第 4 条(不干渉の原則)
当事者は、法により自らの意志で契約を締結する権利を享有しており、いか
なる部門や個人も不法に干渉してはならない。
第 5 条(公平の原則)
当事者は、公平の原則にしたがって、各方の権利や義務を確定しなければな
らない。
第 6 条(誠実信用の原則)
当事者は、権利を行使し、義務を履行する際、誠実信用の原則に遵守しなけ
ればならない。
第7条(法律及び行政法規の遵守)
当事者は、契約の締結や履行の際に、法的法規を守り、社会の公共道徳を尊
重しなければならず、社会的経済秩序を乱し、社会の公共的利益を損害しては
ならない。
第 8 条(契約の履行義務)
法によって成立した契約は、当事者に対して法的拘束力を有するものとする。
当事者は約定にしたがい、自らの義務を履行すべきであり、無断で契約を変更
したり、解除してはならない。法によって成立した契約は、法律によって保護
されるものとする。
第二章 契約の締結
第 9 条(当事者の行為能力)
当事者は契約締結の際に、相応の民事的権利能力と民事的行為能力を有する
ものでなければならない。当事者は法により、代理人に契約の締結を委託する
ことができる。
第 10 条(契約の形式)
当事者は、書面方式、口頭方式及びその他の形をもって契約を締結すること
ができる。法律、行政の法規において、書面方式を採用することが規定された
場合には、書面形式を採用しなければならない。当事者の間で書面形式の使用
を定めた場合には、書面形式を採用しなければならない。
第 11 条(契約の書面方式)
174 方式とは、契約書、書簡及び電子データー(電報、テレックス、ファクシミ
リ、データー交換及び電子メールを含む)等記載された内容が形のあるものと
して表現される方式をいう。
第 12 条(契約の内容)
契約内容は当事者の約定によるが、通常下記の条項が含まれるものとする。
(1)当事者の名称または氏名、住所;
(2)目的;
(3)数量;
(4)品質;
(5)価格または報酬;
(6)履行期限、場所及び方式;
(7)違約責任;
(8)紛争の解決方法。
当事者は各種契約のモデルを参照して契約を締結することができる。
第 13 条(契約方式)
当事者は契約締結の際、申込、承諾の方式をとるものとする。
第 14 条(契約の申込)
申込は他人との契約締結の意思表示であり、当該意思表示は、次の規定に適
合しなければならない。
(1)内容の具体的確定。
(2)申込を受ける側の承諾を得て、申込者がその意思表示に拘束されること
が明示してあること。
第 15 条(申込の要請)
申込の要請は、自分に対して要求するよう他人に求める意思表示である。付
送価格表、競売公告、入札公告、株式募集説明書、商業広告等は申込要請とな
る。申込の規定に適合する商業広告は、申込とみなす。
第 16 条(申込の効力)
申込は、申込を受ける側に到達した時点から、その効力を生じるものとする。
電子データ方式による契約締結の場合、受取人が特定のシステムを指定して電
子データを受け取るときには、当該電子データが、当該特定システムに受信さ
れた時間を、到達時間とみなす。特定システムを指定していない場合、当該電
子データが受取人のいずれかのシステムに受信された最初の時点を、到達の時
点とみなす。
第 17 条(申込の撤回)
申込は撤回することができる。申込撤回の通知は、申込が申込を受ける側に
到達する前にまたは申込と同時に申込を受ける側に到達しなければならない。
第 18 条(申込取消の通知)
申込は取消することができる。申込取消の通知は、申込を受ける側が承諾の
通知を出す前に、申込を受る側に届かなければならない。
第 19 条(申込の取消)
下記にあげるいずれかに該当する事由があるときは、申込を取り消すことが
できないものとする。
(1)申込者が承諾期限を確定したとき、あるいはその他の方式で申込取消の
不可を明示したとき。
175 (2)申込を受ける側が、申込取消が不可能な理由があり、契約履行のための
準備をすでに開始しているとき。
第 20 条(申込の失効)
下記にあげるいずれかの事由があるときは、申込は失効となる。
(1)申込拒絶の通知が申込者に届いたとき。
(2)申込者が法にしたがい申込を取消したとき。
(3)承諾期限が終了し、申込を受ける側が承諾しなかったとき。
(4)申込を受ける側が、申込の内容について実質的な変更を行ったとき。
第 21 条(承諾)
承諾とは、申込を受ける側が申込に同意する意思表示である。
第 22 条(承諾の通知)
承諾は通知の方式で発しなければならない。但し、取引の慣習にしたがい、
または承諾行為を通じて承諾できると、申込で明示された場合は、この限りで
はない。
第 23 条(承諾の到達)
承諾は、申込が確定された期限以内に、申込者に届かなければならない。承
諾期限を確定していない場合、承諾は次の規定にしたがって通知しなければな
らない。
(1)対話の方式によってなされた申込の場合、即時に承諾をしなければなら
ない。但し、当事者に別途約定がある場合は、この限りではない。
(2)非対話の方式によってなされた申込の場合、承諾は合理的期限内に届け
なければならない。
第 24 条(承諾の期限)
書簡または電報によってなされた申込の場合、承諾の期限は書簡に記載され
た日付 または電報を発送した日より起算する。日付を記載していない書簡は、
書簡を郵送した消印日より起算する。電話、ファクシミリ等の高速通信方式に
よってなされた申込の場合、承諾期限は、申込が申込を受ける側に届いた時点
から起算する。
第 25 条(契約の成立)
契約は、承諾が効力を生ずる時点より、成立するものとする。
第 26 条(承諾の効力)
承諾は、通知が申込者に届いた時点において、効力を生ずるものとする。通
知が不必要な承諾の場合は、取引の慣習または申込の要請にしたがい承諾の行
為がなされた時点で、効力を生ずるものとする。電子データの方式によって契
約を締結する場合、承諾の到達時間は、本法第 16 条第 2 頃の規定を適用する。
第 27 条(承諾撤回の通知)
承諾は撤回することができる。承諾撤回の通知は、承諾通知が申込者に届く
前、または承諾通知と同時に申込者に届かなければならない。
第 28 条(承諾期限及び新規要約)
申込を受ける側が、承諾期限を過ぎて承諾を出したとき、申込者が適時に申
込を、受ける側に当該承諾の有能を知らせる場合を除き、新規申込とする。
第 29 条(承諾の有効性)
有効を知らせる場合を申込を受ける側が、承諾期限内に承諾を出し、通常の
状況においては、予定通り申込者に届くはずの承諾が、他の原因により、申込
176 者への到達が承諾期限を過ぎたとき、申込者が承諾期限の超過のため当該承諾
を拒否する旨を、適時申込を受ける側に知らせる場合を除き、当該承諾は有効
とする。
第 30 条(承諾内容と申込内容)
承諾の内容は、申込の内容と一致するものでなければならない。申込を受け
る側が、申込の内容に対して、実質的な変更を行った場合、新規申込とする。
契約の標的、数量、品質、代金または報酬、履行期限、履行場所と方式、違約
責任及び紛争解決方法等がかかわる変更は、申込内容に対する実質な変更であ
る。
第 31 条(申込内容の変更)
申込の内容に対して、非実質的な変更を行った承諾の場合、申込者が適時に
反対を表明し、あるいは申込に申込内容のいかなる変更も不可であると明示し
た場合を除き、当該承諾は有効とする。契約の内容は、承諾の内容を基準とす
る。
第 32 条(契約の成立と署名)
当事者が契約書の形式で契約を締結する場合、当事者双方が署名または捺印
した時点で、契約は成立する。
第 33 条(確認書の締結)
当事者が書簡または、電子データで契約を締結する場合、契約成立の前に、
確認書の締結を求めることができる。確認書に署名した時から契約は成立する。
第 34 条(契約成立の場所)
承諾が効力を発生する場所を、契約成立の場所とする。電子データ等の方式
で契約を締結した場合、受取人の主要営業地を契約成立の場所とし、主要営業
地がない場合、その常任地をもって契約成立の場所とする。当事者間で別途約
定がある場合は、その約定に従う。
第 35 条(契約成立場所と署名)
当事者が契約書の形式で契約を締結する場合、当事者双方が署名または捺印
を行った場所を契約成立の場所とする。
第 36 条(書面方式による契約と義務の履行)
書面方式による契約の締結を、法律、行政的法規によって定められ、あるい
は当事者間で約定している場合であっても、当事者は書面方式を取っていない
が、一方がすでに主要義務を履行し、相手側が受け入れた場合、当該契約は成
立する。
第 37 条(署名、捺印と義務の履行)
契約書の形式で契約を締結する場合、署名あるいは捺印の前に、当事者の一
方がすでに主要義務を履行しており、かつ相手側がそれを妥け入れているとき、
当該契約は成立する。
第 38 条(国による指令的任務と契約締結)
国が必要に応じ、指令的任務または国家の購入命令を発したとき、関連法人、
その他の組織間では、関連法律、行政法規において定められた権利や義務にし
たがって契約を締結しなければならない。
第 39 条(定型条項による契約)
定型条項を用いて契約を締結する場合、定型条項の提供側は、公平の原則に
したがい、当事者間の権利や義務を確定し、合理的方式によって、その責任の
177 免除あるいは制限に関する条項への注意を促し、相手側の要請にしたがって、
当該条項についての説明を行わなければならない。定型条項とは、当事者が反
復使用するために予め作成しておき、契約締結時に相手側と協議しない条項を
いう。
第 40 条(約款の無効)
約款に本法の第 52 条と第 53 条に定めた事由が生じた場合、あるいは約款の
提供側が自らの責任を免除し、相手側の責任を加重、又は相手側の主要権利を
排除したとき、当該約款は無効とする。
第 41 条(約款の理解と紛争処理)
約款の理解について紛争が生じたときは、通常の理解にしたがって解釈しな
ければならない。約款に対する解釈が二種類以上あった場合、約款提供側に不
利な解釈によらなければならない。約款と非約款が一致しない場合は、非約款
にしたがわなければならない。
第 42 条(当事者の損害賠償の責任)
当事者が契約締結の過程において下記の事由のいずれかにより、相手側に損
失を与えたときは、損害賠償の責任を負わなければならない。
(1)契約締結を手段として、悪質な協議を行ったとき。
(2)契約の締結に関連する重要事実を故意に隠し、又は虚偽の情報を提供し
たとき。
(3)その他の信義誠実の原則に違反する行為があったとき。
第 43 条(企業秘密の漏洩と不正使用)
当事者は契約締結の過程において知り得た企業秘密について、契約成立するや
否や、漏洩したり、不正に利用したりしてはならない。当該企業秘密を漏洩、
または不正に利用したことにより、相手側に損失を与えた場合は、損害賠償の
責任を負わなければならない。
第三章
契約の効力
第 44 条(契約の効力)
法に基づき成立した契約は,成立した時点で効力を発するものとする。法律
及び行政法規により契約の効力において許可、登録等の手続きを経なければな
らないと規定されている場合は、その規定に従う。
第 45 条(条件付契約)
当事者は契約の効力に対して、条件を付けることができる。効力発生条件付
の契約の場合、条件が成就した時点で効力を発するものとする。解除条件付の
契約は、条件が成就した時点で効力を失うものとする。当事者が自らの利益の
ために、条件の成就を不正に阻止した場合、条件は成就したものとみなされる。
条件の成就を不正に促進した場合、条件は成就していないものとみなされる。
第 46 条(期限付契約)
当事者は契約の効力に対し、期限を付すことができる。効力発生期限付きの
契約は、期限到来の時点で効力を発するものとする。終了期限付の契約の場合、
期限切れの時点で効力を失うものとする。
第 47 条(契約の追認)
民事行為能力制限者が締結した契約は、法定代理人の追認を経て、当該契約
178 は有効となる。但し、純粋に利益獲得のための契約、またはその年齢や知能、
精神的健康状況に適合した契約は、法定代理人の追認を受ける必要はない。相
手方は、1 ヶ月以内に追認する旨を法定代理人に催告することができる。法定
代理人が確答をなさなかった場合、追認を拒絶したものとみなす。契約が追認
される前に、善意の相手方は取消権を持つ。取消は通知の方式によって行わな
ければならない。
第 48 条(行為者と代理権)
行為者が代理権を有せず、また代理権を超え、あるいは代理権終了後に被代
理人の名義で締結した契約は、本人の追認を得なければ、本人に対して効力が
ないものとし、行為者が責任を負うものとする。相手方は、1 ヶ月以内に追認
する旨を本人に催告することができる。本人が確答をなさなかった場合、追認
を拒絶したものとみなす。契約が追認される前に、善意の相手方は取消権を持
つものとする。取消は通知の方式によって行わなければならない。
第 49 条(代理行為の有効性)
行為者が代理権を有せず、代理権限を超え、又は代理権終了後に、本人の名
義において契約を締結したとき、相手方が行為者の代理権を信ずるに足る理由
があった場合、当該代理行為は有効とする。
第 50 条(代表行為の有効性)
法人あるいはその他の組織における法定代表者や責任者が、権限を超えて契
約を締結した場合、相手側がその権限超を知り得たか知り得るべき場合を除き、
当該代表行為は有効とする。
第 51 条(処分権と財産の処分)
処分権のない者が他人の財産を処分したときにおいて、権利者の追認を得た
とき、または処分権のない者が契約締結後に処分権を取得した場合、当該契約
は有効とする。
第 52 条(契約の無効)
下記に挙げる事由の何かに該当するとき、契約は無効とする。
(1)一方が詐欺、強迫の手段を用いて契約を締結し、国家の利益を害したと
き。
(2)悪意により共謀し、国家、集団あるいは第三者の利益を害したとき。
(3)合法的な形で非合法的な目的を覆い隠したとき。
(4)社会の公共利益を害したとき。
(5)法律、行政法規における強制的規定に違反したとき。
第 53 条(契約の免責条項)
契約における下記の免責条項は無効とする。
(1)相手側に人身傷害をもたらしたとき。
(2)故意あるいは重大な過失により、相手側に財産の損失を与えたとき。
第 54 条(契約の変更及び取消請求)
下記にあげる契約について当事者の一方は、契約の変更あるいは取消を、人
民法院または仲裁機関に求める権利がある。
(1)重大な誤解によって締結された場合。
(2)契約締結時に著しく公平性を欠く時。
一方が詐欺、強迫的な手段によって、あるいは他人の弱みに付け込んで、相
手方に実際の意思に反する状況において契約を締結した場合、損害を被った側
179 は人民法院あるいは仲裁機関に契約の変更または取消を求める権利がある。当
事者が契約の変更を請求した場合、人民法院あるいは仲裁機関は契約を取消し
てはならない。
第 55 条(取消権の消滅)
下記にあげる事由の何れかに該当するとき、取消権は消滅する。
(1)取消権を有する当事者が、取消の事由を知り得たとき、あるいは知り得
るべき日より 1 年以内に取消権を行使しなかったとき。
(2)取消権を有する当事者が、取消の事由を知り得た後に、取消権を放棄す
る旨を明確に示し、あるいは自らの行為によって取消権を放棄したとき。
第 56 条(無効契約)
無効の契約あるいは取り消された契約は、初めから法的約束力をもたないも
のとする。契約の一部が無効となり、その他の部分の効力に影響しない場合、
その他の部分は依然有効とする。
第 57 条(契約の無効、取消と影響)
契約が無効、取消、あるいは終了とされた場合、契約において独立して存在
する紛争解決方法に関する条項の効力には影響しないものとする。
第 58 条(契約の無効及び財産の返還)
契約が無効、あるいは取消ときれた後、当該契約によって取得した財産は返
還しなければならない。返還できないもの、あるいは返還する必要のないもの
については、金額に換算して補償しなければならない。過失のある側は、相手
側にもたらした損失を賠償しなければならない。両方に過失があった場合は、
各自が相応の責任を負わなければならない。
第 59 条(悪意の共謀)
当事者の悪意による共謀で、国家、集団あるいは第三者の利益が損害された
場合、これによって取得した財産は、国家の所有に帰属し、あるいは集団、第
三者に返還する。
第四章 契約の履行
第 60 条(当事者の義務)
当事者は約定にしたがい、自らの義務を全面的に履行しなければならない。
当事者は、誠実信用の原則にしたがい、契約の性質、目的や取引の慣習によっ
て、通知、協力、秘密保持等の義務を履行しなければならない。
第 61 条(補充協議)
契約の効力発生後、当事者が品質、価格または報酬、履行場所などの内容に
ついて当事者間の約定がないかまたは約定が不明確な場合は、補充協議を行う
ことができる。補充協議が成立できなかった場合は、契約の関連条項または取
引の習慣にしたがって確定するものとする。
第 62 条(契約内容の確定)
契約の内容について、当事者の約定が不明権であり、本法第 61 条の規定に
よっても、なお、確定できない場合は、下記の規定を適用する。
(1)品質基準が不明確な場合は、国家基準、業界基準にしたがって履行する。
国家基準、業界基準のないものに対しては、通常基準あるいは契約の標的に一
致する特定の基準にしたがって履行するものとする。
180 (2)価格または報酬が不明確な場合は、契約締結時の履行地の市場価格にし
たがって履行する。法により、政府指定価格あるいは政府の指導価格で執行し
なければならないものについては、その規定にしたがって履行するものとする。
(3)金銭を給付する契約で履行地が不明確なときは、金銭の給付を受ける一
方の所在地を履行地とする。不動産を引き渡す契約では、不動産の所在地を履
行地とする。その他の目的においては、履行義務がある一方の所在地を履行地
とする。
(4)履行期限が不明確なときは、債務者は随時に履行でき、債権者は随時に
履行を請求できるが相手側に必要な期間を与えなければならない。
(5)履行の方式が不明確なときは、契約の目的を実現するために有利となる
方式に照らして履行する。
(6)履行費用の負担が不明権なときは、履行義務を負う一方が負担する。
第 63 条(標的物の価格)
政府指定価格または政府指導価格により行うときで、契約に定めた引渡期限
内で政府価格が調整されたときは、引渡時の価格により計算する。標的物の引
渡時期を遅延させ、価格が上昇したときは元の価格により行い、価格が下落し
たときは新しい価格により行う。標的物の取引時期または代金の支払時期を遅
延させ、価格が上昇したときは新しい価格により行い、価格が下落したときは
元の価格により行う。
第 64 条(債務の履行)
当事者間で債務者が第三者に対して債務履行することを約定しているとき
において第三者に債務を履行しない時、または約定通りに債務を履行していな
いときは、債務者は債権者に対して違約責任を負わなければならない。
第 65 条(違約責任)
当事者間で第三者が債権者に対して債務を履行することを約定していると
きにおいて第三者が債務を履行しないとき、または約定通りに債務を履行して
いないときは、債務者は債権者に対し違約責任を負わなければならない。
第 66 条(債務の履行請求)
当事者が相互に債務を負い、履行の順序を定めていないときは、同時に履行
するものとする。一方は、相手方が履行する前に相手方の履行請求を拒否する
権利を有する。一方は、相手方による債務の履行が約定通りになされていない
ときに、それに相応する履行請求を拒否する権利を有する。
第 67 条(履行請求に対する拒否)
当事者が相互に債務を負い、履行の順序が定められている時で、先に履行す
べき一方が履行していない時は、後に履行すべき一方はその履行請求を拒否す
る権利を有する。先に履行すべき一方による債務履行が約定通りになされてい
ないときに、後に履行すべき一方は、それに相応する履行請求を拒否する権利
を有する。
第 68 条(債務の履行中止)
先に履行すべき当事者は、確実な証拠をもって相手方に下記に挙げる事由の
一つがあることを証明できるときには、債務の履行を中止することができる。
(1)経営情況が著しく悪化しているとき。
(2)債務を免れるために財産や資金を移転、匿しているとき。
(3)信用を喪失または喪失する恐れがあるその他の事由があるとき。
181 (4)債務履行能力を喪失または喪失する恐れがあるその他の事由があるとき。
確実な証拠がなく、履行を中止した当事者は、違約責任を負わなければならな
い。
第 69 条(債務履行中止と契約解除)
当事者は本法律第 68 条の規定により履行を中止したときは、遅滞なく相手
方に通知しなければならない。相手方が適切な担保を提供したときには履行を
回復しなければならない。履行を中止した後に相手が合理的な期間内に履行能
力を回復せず、また適切な担保も提供しないときには、履行を中止した一方は
契約を解除することができる。
第 70 条(標的物の供託)
債権者が分社、合併、または住所変更をし、債務者に通知せず、これにより
債務の履行に困難が生じたときは、債務者は履行を中止し、または、標的物を
供託しておくことができる。
第 71 条(債務の繰上履行)
債務者は、債務者による債務の綾上履行を拒否することができる。但し、繰
上履行が債権者の利益を害しないときはこの限りではない。債務者による債務
の操上履行により増加した債権者の費用は、債務者が負担する。
第 72 条(債務の一部履行)
債権者は、債務者による債務の一部履行を拒否することができる。但し、一
部履行が債権者の利益を害しないときはこの限りではない。債務者による債務
の一部履行により増加した債権者の費用は、債務者が負担する。
第 73 条(債権者代位権)
債務者が期限の到来した債権の行使を怠ったことにより、債権者に損害を与
えたときは、債権者は自己の名義で債務者の債権を代位行使するよう人民法院
に請求することができる。但し、債務者の一身に専属する債権はこの限りでは
ない。代位権の行使範囲は、債権者の債権を限度とする。債権者が代位権を行
使する際に必要な費用は債務者が負担する。
第 74 条(詐害行為の取消権)
債務者が期限が到来している債権を放棄し、または、財産を無償で譲渡した
ことにより、債権者に損害を、与えたときは、債権者は債務者の行為を取り消
すよう人民法院に請求することができる。債務者が著しく不合理な安値で財産
を譲渡したことにより、債権者に損害を与え、且つ譲受人が当該事由を知って
いるときは、債権者も債務者の行為を取り消すよう人民法院に請求することが
できる。取消権の行使範囲は、債権者の債権額を限度とする。債権者が取消権
を行使する際に必要な費用は債務者が負担する。
第 75 条(取消権の行使)
取消権は、債権者が取り消し事由を知り得た日または知り得るべき日より 1
年以内に行使しなければならない。債務者の行為が発生した日より 5 年以内に
取消権を行使しないときは、当該取消権は消滅する。
第 76 条(契約義務の履行)
契約が効力を生じた後に、当事者はその姓名、名称の変更、または法定代表
者、責任者、担当者の変動を理由に契約義務を履行しないことがあってはなら
ない。
182 第五章 契約の変更と譲渡
第 77 条(契約の変更)
当事者は協議の一致により契約を変更することができる。法律および行政法
規により契約の変更に許可、登記などの手続を取らなければならないと規定さ
れているときは、その規定に従う。
第 78 条(契約変更の内容)
当事者が契約変更の内容に対して明確に約定していないときは、変更してい
ないことと推定する。
第 79 条(権利の譲渡)
債権者は、契約の権利の全部または一部を第三者に譲渡することができる。
但し、下記の事由の何れかに該当するときはこの限りではない。
(1)契約の性質により譲渡することができないとき。
(2)当事者の約定により譲渡することができないとき。
(3)法律の規定により譲渡を禁止しているとき。
第 80 条(権利の譲渡と通知)
債権者が権利を譲渡するときは、債務者に通知しなければならない。通知し
ていない当該譲渡は債務者に対する効力を有しない。債権者は権利譲渡の通知
を取り消してはならない。但し、譲渡人の同意を得たときはこの限りではない。
第 81 条(債権者の従的権利)
債権者が権利を譲渡するときは、譲渡を受ける側は債権に関わる従的権利を取
得する。但し、債権者自身に専属する従的権利はこの限りでない。
第 82 条(債務者の抗弁権)
債務者は、債務譲渡の通知を受領した後に、譲渡人に対する抗弁を譲受け人に
対して主張することができる。
第 83 条(債権の期限)
債務者は、債権譲渡の通知を受領した後に、譲渡人に対して債権を享受し、か
つ、債務者の債権が譲渡する債権より先にまたは同時に期限が到来するときは、
譲受人に対して相殺することを主張することができる。
第 84 条(契約義務の第三者への譲渡)
債務者は、契約義務の全部または一部を第三者に引き受けさせるときは、債
務者の同意をえなければならない。
第 85 条(義務の転移)
債務者が義務を移転させるときは、新債務者は旧債務者に対する抗弁を主張す
ることができる。
第 86 条(従的債務)
債務者が義務を移転させるときは、新債務者は主債務に関わる従的債務を負
わなければならない。但し当該従的債務が旧債務者自身に専属される場合はこ
の限りではない。
第 87 条(権利の譲渡、義務の転移と登記)
法律および行政法親により権利の譲渡や義務の転移において許可、登記など
の手続を行わなければならないと規定されているときは、その規定に従う。
第 88 条(契約義務の一括譲渡)
当事者の一方は、相手方の同意を得て自己の契約上の権利と義務を第三者に
183 一括譲渡することができる。
第 89 条(一括譲渡と適用法律)
権利や義務を一括譲渡するときは、本法律第 79 条、第 81 条から第 83 条、
第 85 条から第 87 条の規定を適用する。
第 90 条(合併と連帯債務)
契約を締結した後に当事者が合併したときは、合併後の法人またはその他の
組織が契約の権利を行使し、契約の義務を履行する。契約を締結した後に当事
者が分社したときは、債権者と債務者とが別に約定しているときを除き、分社
後の法人またはその他の組織が、契約上の権利と義務への連帯債権を有し、連
帯債務を負う。
第六章 契約の権利義務の終了
第 91 条(権利義務の終了)
下記に挙げる事由の何れかが発生したときは、契約上の権利義務が終了する。
(1)約定通りに債務が履行されたとき。
(2)契約が解除されたとき。
(3)債務が相互に相殺されたとき。
(4)債務者が法に基づき標的物を供託したとき。
(5)債権者が債務を免除したとき。
(6)債権と債務が同一人に帰したとき。
(7)法律の規定または当事者の約定により終了が定められているその他の事
由があるとき。
第 92 条(権利義務の終了後の義務)
契約の権利義務が終了した後に、当事者は誠実信用の原則に則り、取引慣習
に従ってく通知、協力、秘密保持等の義務を履行しなければならない。
第 93 条(契約の解除)
当事者は、合意により契約を解除することができる。当事者は、一方が契約
を解除する条件を約定することができる。契約解除の条件が成就したときに、
解除権を有する者は契約を解除することができる。
第 94 条(契約解除の事由)
以下に挙げる事由の何れかが発生したときは、当事者は契約を解除すること
ができる。
(1)不可抗力により契約の目的を達成できなくなったとき。
(2)履行の期限が満了する前に、当事者の一方が主な債務を履行しない旨を
明確に、または自己の行為によって表示したとき。
(3)当事者の一方が主な債務の履行を遅滞し、催告を受けた後にも合理的な
期間内に履行しないとき。
(4)当事者の一方が債務の履行を遅滞し、またはその他の違約行為により契
約の目的が達成できなくなったとき。
(5)法律で規定するその他の事由があるとき。
第 95 条(解除権の行使期間)
法律の規定または当事者の約定により解除権の行使期間が定められている
ときに、期間が満了しても当事者が行使しないときは、当該権利は消滅する。
184 法律の規定または当事者の約定により解除権の行使期間が定められていない
ときに、相手方の催告を受けた後、合理的な期間内に行使しないときは当該権
利は消滅する。
第 96 条(契約解除と通知)
当事者の一方が本法律第 93 条第 2 項、第 94 条の規定に基づいて、契約の解
除を主張する場合は、相手方に通知しなければならない。契約は通知が相手方
に到達した時点で解除される。相手方は異議があるときには、契約解除の効力
の確認を人民法院または仲裁機関に請求することができる。法律および行政法
親により契約の解除に許可、登記などの手続を行わなければならないと規定さ
れているときは、その規定に従う。
第 97 条(契約解除後の履行終了)
契約を解除した後に、履行されていないものは、履行を終了する。すでに履
行している契約については、履行の状況と契約の性質に応じて、当事者は現状
回復、その他の救済措置を要求することができ、且つ損害賠償を請求する権利
を有する。
第 98 条(権利義務の終了)
契約の権利義務の終了は、契約の中で定められている決済と精算に関する条
項の効力に影響しない。
第 99 条(債務の弁済期)
当事者は、相互に弁済期にある債務を負担し、当該債務の標的物の種類、品
質が同様であるときには、何れかの一方は自己の債務をもって相手方の債務と
相殺することができる。但し、法律の規定または契約の性質により相殺するこ
とができないときはこの限りではない。当事者が相殺を主張するときは、相手
方に通知しなければならない。通知は、相手方に到達した時点より効力が生じ
る。相殺には条件または期限を付してはならない。
第 100 条(標的物による債務)
標的物の種類、品質が異なる債務であっても、当事者双方が合意したときは、
相互に負担する債務を相殺することができる。
第 101 条(標的物の供託)
下記の事由の何れかに該当し、債務の履行が困難なときは、債務者は標的物
を供託することができる。
(1)債権者が正当な理由ないこ受領を拒否したとき。
(2)債権者が行方不明になったとき。
(3)債権者が死亡し、相続人が定められていないとき、または債権者が民事
行為能力を喪失し後見人が確定されていないとき。標的物が供託に通さず、ま
たは供託に過大な費用を要するときは、債務者は法に従い標的物を競売または
売却して取得した金額を供託することができる。
第 102 条(標的物の供託と通知)
標的物を供託した後に、債権者が行方不明になっているときを除き、債務者
は遅滞なく債権者または債権者の相続人、後見人に通知しなければならない。
第 103 条(供託費用)
標的物を供託中の毀損、滅失の危険は、債権者が負担する。供託期間中に標
的物から生じる収益は、債権者に帰する。供託費は、債権者が負担する。
第 104 条(供託の標的物の受取り)
185 債権者は随時、供託の標的物を受取ることができる。但し、債権者が債務者
に対し
弁済期にある債務を負うときは、債権者がその債務を履行せず、ま
たは担保を提供しなければ、供託部門は債務者の要求により供託の目的物の受
取りを拒絶しなければならない。債権者が供託物を受取る権利は、供託の日よ
り 5 年内に行使しないときは、消滅し供託の目的物は供託費用を差し引いた後
に国の所有に帰する。
第 105 条(債務の免除)
債確者が債務者の債務の一部または全部を免除したときは、契約の権利義務
の一部または全部が終了する。
第 106 条(同一人に帰する債権債務)
債権と債務が同一人に帰したときは、契約の権利義務は終止する。但し、第
三者の利益に関わるときはこの限りではない。
第七章
違約責任
第 107 条(履行の継続、救済措置)
当事者の一方が契約義務を履行せず、または約定通りに履行していないとき
は、履行の継続、救済措置の採用、または損害の賠償等の違約責任を負わなけ
ればならない。
第 108 条(違約責任の追及)
当事者の一方が契約義務を履行しない旨を明確に表明し、または自己の行為
によって表示したときは、相手方は履行期限が満了する前に違約責任を負うよ
うに請求することができる。
第 109 条(価格または報酬の支払)
当事者の一方が価格または報酬を支払わないときは、相手方はその価格また
は報酬の支払を請求することができる。
第 110 条(非金銭的債務の履行)
当事者の一方が非金銭債務を履行せず、または約定通りに非金銭債務を履行
していないときは、相手方は履行を請求することができる。但し、下記の事由
のいずれかに該当するときはこの限りではない。
(1)法律上または事実上において履行が不能であるとき。
(2)債務の標的物が強制履行に通せず、または履行に過大な費用を要すると
き。
(3)債権者が合理的な期間内に履行を請求しないとき。
第 111 条(約定による品質)
品質が約定に適合しないときは、当事者の約定に従い違約責任を負わなけれ
ばならない。違約責任に関しての約定がなく、または約定が不明確であり、本
法律第 61 条の規定によっても確定できないときは、被害者の標的物の性質及
び損失程度に応じ、修理、交換、やりなおし、返品、価格または報酬の減額な
どの違約責任を合理的に選択して相手方に請求することができる。
第 112 条(契約義務の不履行)
当事者一方が契約義務を履行せず、または約定通りに履行しなかったときに、
その義務を履行または救済措置を講じた後に、相手方になお損失があるときは、
その損失を賠償しなければならない。
186 第 113 条(損失の賠償額)
当事者一方が契約義務を履行せず、または約定通りに履行しなかったことで、
相手方に損失をもたらしたときは、損失の賠償額は違約によりもたらされた損
失に相当しなければならず、契約履行によって得ることのできる利益を含むこ
とができるが、契約に違反した一方が契約締結時に予見し、または予見し得た
契約違反による損失を超えてはならない。経営者が消費者に提供した商品また
はサービスに詐欺行為があったときは、「中華人民共和国消費者権益保護法」
の規定に従い損害賠償責任を負わなければならない。
第 114 条(賠償金額の計算方法)
当事者は、一方が違約したときに違約の程度に応じて相手方に一定金額の運
的金を支払うことを約定することができ、違約による損失への賠償金額の計算
方法を約定することもできる。約定した違約金が実損を下回るときは,当事者
は人民法院または仲裁機関に増加を請求することができ、約定の違約金が実損
を上回るときは、当事者は人民法院または仲裁機関に適当な減額を請
求することができる。当事者が履行遅滞についての違約金を定めているとき
は、違約方は違約金を支払った後に債務を履行しなければならない。
第 115 条(手付金の給付)
当事者は「中華人民共和国担保法」に基づき、一方が債権の担保として相手
方に手付金を給付することを定めることができる。債務者が債務を履行した後
に手付金は代金に充当し、または返還しなければならない。手付金を給付した
一方が約定された債務を履行しないときは、手付金の返還を請求することがで
きない。手付金を受領した一方が約定された債務を履行しないときは、手付金
の倍額を返還しなければならなし。
第 116 条(違約金と手付金)
当事者が違約金と手付金の両方を定めているときは、一方が違約したときに
相手方は違約金条項と手付金条項を選択して適用することができる。
第 117 条(不可抗力)
不可抗力により契約が履行できなくなったときは、不可抗力の影響に応じて、
責任の一部また、は全部を免除するが、法律で別に規定されているときはこの
限りではない。当事者が履行を遅滞した後に不可抗力事由が生じたときは、責
任を免除することはできない。本法律にいう不可抗力とは、予見できず、回避
且つ克服できない客観的状況をいう。
当事者の一方は不可抗力により契約を履行できなくなったときには、相手方
に与える損失を軽減させるため、速やかに相手方に通知しなければならない。
また、合理的期間内に証明を提出しなければならない。
第 119 条(損失拡大の防止)
当事者の一方が違約した後に、相手方は損失拡大を防止するため適切な措
置を講じなければならない。適切な措置を怠ったことによって、損失を拡大さ
せた損失につき賠償を請求することはできはい。当事者が損失の拡大を防止す
るために支出した合理的費用は違約方が負担する。
第 120 条(契約違反と責任)
当事者双方は契約に違反したときは、それぞれ相応の責任を負わなければな
らない。
第 121 条(第三者原因による違約)
187 当事者の一方はは第三者の責に帰すべき事由により違約したときといえど
も、相手方し違約責任を負わなければならない。当事者の一方と第三者との紛
争は法律の規定もしくは約定に従い解決する。
第 122 条(不法行為責任)
当事者の一方の違約行為により、相手方の人身、財産の権益が侵害きれたとき
は、被害者はこの法律に従って違約責任を、または他の法律に従って違約責任
を、または他の法律に従って不法行為責任を負わせることができる。
第八章
その他
第 123 条(他の法律による契約)
他の法律において契約に関する規定があるときは、それによる。
第 124 条(総則の適用)
この法律の細則またはその他の法律で明文規定のない契約については、この法
律の総則を適用し、またはこの法律の細則またはその他の法律に最も類似した
規定を参照することができる。
第 125 条(契約条項の理解)
当事者は契約条項の理解に異議があるとき、契約に使用する用語、契約の関
係条項、契約の目的、取引慣習および誠実信用の原則に照らして、その条項の
真意を決めなければならない。二種類以上の言語で締結する契約でそれらを同
等の効力と定めるものは、各言語の契約における用語を同じ意味と推定する。
各言語の契約における用語が異なるときは、契約の目的に沿って改作しなけれ
ばならない。
第 126 条(渉外契約)
当事者双方は契約に違反したときは、それぞれ相応の責任を負わなければな
らな渉外契約の当事者は契約紛争に適用する法律を選択することができる。但
し、法律に別段の定めがあるときはこの限りでない。渉外契約の当事者が選択
しないときは、契約と最も密接な関係のある国の法律を適用する。中華人民共
和国で履行すべき中外合弁経営企業契約、中外合作経営企業契約、中外合作自
然資源調査開発契約には中華人民共和国の法律を適用する。
第 127 条(違法行為の監督)
工商行政管理部門、及びその他の関係行政主管部門はそれぞれの権限範囲で
法律、行政法規の規定に従い、契約を利用して国家利益、社会公共の利益を害
する違法行為を監督し、処理する。犯罪にあたるときは、法に基づき刑事責任
を追及する。
第 128 条(和解と調停)
当事者は和解や調停により契約紛争を解決することができる。当事者に和解、
調停に依拠する意思がなく、または和解、調停されなかったときは、仲裁協議
に従って、仲裁機関に仲裁を申し立てることができる。渉外契約の当事者は中
国仲裁機構またはその他の仲裁機関に仲裁を申し立てることができる。当事者
は仲裁協議を締結せず、または仲裁協議が無効であるとき、人民法院に訴訟を
おこすことができる。当事者は法律上の効力を生じた判決、調停書を履行しな
ければならない。履行しないときは、相手方は人民法院に執行を申し立てるこ
とができる。
188 第 129 条(紛争の提訴、仲裁の申し立て)
海外商品の売買契約と技術輸出入契約に関わる紛争の提訴期間もしくは
仲裁申し立て期間は 4 年とし、当事者がその権利の侵害を知った日、もしくは
知り得た日から計算する。その他の契約に関わる提訴期間若しくは仲裁期限は、
関係法律の規定にしたがう。
第九章
売買契約
第 130 条(定義)
売買契約とは、売手が目的物の所有権を買手に移し、買手が代価を支払う契
約である。
第 131 条(売買契約の内容)
売買契約には、本法第 12 条の規定のほかに包装方式、検査基準や方法、決
済方式、契約に用いられる文字及びその効力などの条項を定めることができる。
第 132 条(目的物)
売買の目的物は、売手の所有であり、売手が処分する権利を有するものでな
ければならない。法律、行政的法規によって譲渡が禁止され、制限されるもの
については、その規定に従うものとする。
第 133 条(目的物の所有権)
目的物の所有権は、目的物が引き渡された時点から移転する。但し、法律に
別途定められ、または当事者間に別途約定がある場合はこの限りではない。
第 134 条(代金の未支払)
当事者は、売買契約において、買手が代金未払、またはその他の義務を履行
しない場合、目的物の所有権は売手に属する旨を、売買契約に定めることがで
きる。
第 135 条(所有権移転の義務)
売手は、買手に目的物を交付し、または目的物を受け取るための書類の交付
を行い、目的物の所有権移転の義務を履行しなければならない。
第 136 条(関連書類)
売手は、約定または売買の慣習にしたがい、買手に目的物を受け取るための
書類以外の関連書類と資料を交付しなければならない。
第 137 条(知的所有権の売買)
知的所有権を有するコンピュータ・ソフトなどの目的物を売却する場合、法
律に別途定められ、または当事者間に別途約定がある場合を除き、当該知的所
有権は買手に属するものではない。
第 138 条(目的物の引渡期間)
売手は定められた期限に従い目的物を交付しなければならない。引渡期間が
定められたものに対し、売手は当該引渡期間内の何れかの期間において交付す
ることができる。
第 139 条(引渡期間の別途規定)
当事者間が目的物の引渡期限を定めていないとき、または約定が不明確の場
合は本法第 61 条、第 62 条第 4 項の規定を適用するものとする。
第 140 条(引渡時)
目的物が契約の締結前にすでに買手に占有された場合、契約の効力発生時を
189 引渡の時とする。
第 141 条(引渡場所)
売手は定められた場所において、目的物を引渡さなければならない。当事者
が引渡の場所を定めていない場合または約定が不明確であり、本法第 61 条の
規定によっても、なお確定できない場合は下記の規定を適用する。
(1)運送を要する目的物の場合、売手は、目的物を第一者である運送業者に
引渡し買手に引渡すようにしなければならない。
(2)運送を要しない目的物の場合、売手と買手が契約締結時に、目的物があ
る場所にあることを知っていた場合、売手は当該場所にて目的物を引渡さなけ
ればならない。目的物がある場所にあることを知らなかった場合、売手が契約
を締結した時点の営業地にて、目的物を引渡さなければならない。
第 142 条(目的物の毀損、滅失)
目的物の毀損、滅失の危険については、目的物が引渡される前は売手が負担
し、引渡されたあとは買手が負担する。但し、法に別途規定があり、あるいは
当事者に別途約定がある場合は、この限りではない。
第 143 条(買手の原因)
買手の原因により、目的物が約定の期限まで引渡しできなかった場合、買手
は約定違反の当日から、目的物の毀損、滅失の危険を負わなければならない。
第 144 条(買手の危険負担)
売手が運送業者に引き渡した、運送途中の標的物を売却する場合、当事者に
別途約定がある場合を除き、毀損、滅失の危険は、契約成立の時点から買手が
負担するものとする。
第 145 条(買手の責任)
当事者間で交付場所を定めていないときまたは約定が不明確であり、かつ本
法第 141 条第 2 項に規定する運送を要する目的物に関しては、売手が目的物を
第一者の運送者に交付したあとの、目的物の毀損、滅失の危険は買手が負担す
るものとする。
第 146 条(買手の受取拒否)
売手がにしたがい、または本法第 141 条第 2 項第 2 号の規定にしたがい、目
的物を引渡場所に置いたが、買手が約定に違反し、これを受け取らなかった場
合、目的物の毀損、滅失の危険は、約定を違反した当日から、買手が負うもの
とする。
第 147 条(目的物に関する資料の処理)
売手が約定にしたがい、目的物に関連する書類と資料を交付しなかった場合
は、目的物の毀損、滅失の危険の移転には影響しないものとする。
第 148 条(目的物の品質)
目的物の品質が品質基準に適合しないことにより、契約の目的が実現できな
かった場合、買手は目的物の受取を拒絶するかまたは契約を解除することがで
きる。買手が目的物の受取を拒絶しまたは契約を解除した場合、目的物の毀損、
滅失の危険は売手が負うものとする。
第 149 条(売手の違約責任)
目的物の毀損、滅失の危険を買い手が負う場合であって、売手の債務履行が
約定に符合しないことに対する、買手は売手の違約責任を追及する権利を有す
る。
190 第 150 条(売手の義務)
売手は、すでに引渡した目的物に対し、第三者が買手にいかなる権利も主張
しないことを保障する義務がある。但し、法律に別途定めのある場合はこの限
りではない。
第 151 条(売手の義務)
買手が契約を締結する時に、売買の目的物に対する第三者の所有権の存在を
知り得たときまたは知り得るべきとき、売手は本法第 150 条に規定する義務を
負わないものとする。
第 152 条(代金の支払拒否)
買手が確かな証拠をもって、第三者の目的物への権利主張の可能性を証明し
た場合、相応する代金の支払いを取り止めることができる。但し、売手が適当
な担保を提供した場合は、この限りではない。
第 153 条(品質基準と説明の一致)
売手は、定められた品質の基準にしたがい目的物を交付しなければならない。
売手が目的物に関する品質の説明を提供した場合、引渡される目的物は、当該
説明の品質基準に合致しなければならない。
第 154 条(目的物の品質)
当事者間に目的物の品質に対する約定がないとき、または約定が不明確であ
り本法第 61 条の規定によっても、なお確定できない場合は、本法第 62 条 1
項の規定を適用する。
第 155 条(売手の違約責任)
売手が引渡した目的物が、品質の基準に適合していない場合、買手は本法第
111 条の規定にしたがい相手方に違約責任を求めることができる。
第 156 条(包装方式)
売手は約定された包装方式にしたがい目的物を引渡さなければならない。包
装方式について約定がない、または約定が明確でない場合、本法第 61 条の規
定によっても、なお確定できない場合は、通常の方式による包装を行わなけれ
ばならない。通常の方式がない場合は、目的物を十分保護できる包装方式にし
なければならない。
第 157 条(検査期)
買手は、目的物を受け取るとき、約定の検査期間内に検査を行わなければな
らない。検査期間について約定がないものについても、適時検査を行わなけれ
ばならない。
第 158 条(約定による検査期間)
当事者に検査期間に関する約定があるとき、買手は検査期間内に目的物の数
量や品質に関する約定条項との相違を売手に知らせなければならない。買手が
知らせを怠った場合、目的物の数量や品質は、約定に適合するものとみなす。
当事者間に検査期間に対する約定がない場合、買手は目的物の数量や品質に関
する約定との相違を発見し得る、または発見し得るべき合理的期間内に、売手
に知らせなければならない。買手が合理的期間内において、あるいは目的物を
受け取った日から 2 年以内において、売手に知らせなかった場合、目的物の数
量や品質は、約定に適合するものとみなす。但し、目的物に品質の保証期間が
あった場合は、品質の保証期間を適用し、上記 2 年の規定は適用しないものと
する。売手が、提供した目的物が約定に適合しないことを知り得たとき、また
191 は知り得るべきとき買手は上記 2 項で定める通知時間の制限を受けないもの
とする。
第 159 条(約定の代金)
買手は、約定の金額の代金を支払わなければならない。代金について約定が
ないとき、または約定が不明確である場合、本法第 61 条、第 62 条の第 2 項の
規定を適用する。
第 160 条(代金の支払場所)
買手は、約定の場所に代金を支払わなければならない。支払場所について約
定のないとき、または約定が不明確であり本法第 61 条の規定によっても、な
お確定できない場合、買手は売手の営業地にて支払わなければならない。但し、
約定された支払代金が、目的物の交付、あるいは目的物の引き取り書類の交付
を条件とする場合は、目的物の交付地,あるいは目的物の引取書類の所在地に
て支払うものとする。
第 161 条(支払期間)
買手は、約定期間内に代金を支払わなければならない。支払期間に対する約
定がないとき、あるいは約定が不明確であり本法第 61 条の規定によっても、
なお確定できない場合、買手は目的物、あるいは目的物の引取書類を受け取る
と同時に代金を支払う。
第 162 条(目的物の過剰交付)
売手が標的物を過剰交付した場合、買手は過剰交付された部分を受け取るか、
断ることができる。買手が、過剰交付された部分を受け取った場合は、契約価
格にしたがい、代金を支払うものとする。買手が過剰交付された部分を断る場
合は、適時に売手に知らせなければならない。
第 163 条(目的物による収益)
目的物を交付する前に目的物によって生じる収益は売手の所有に帰属し、交付
された後に生じる収益は買手の所有に帰属する。
第 164(主体物と付属物)
契約を解除する場合、契約解除の効力は付属物にも及ぶものとする。目的物
の付属物が約定に適合しないことにより、契約が解除される場合、解除の効力
は主体物には及ばないものとする。
第 165 条(分離交付)
示的物が複数で、その中の一つが約定に連合しない場合、買手は当該物につ
いて、解除することができる。但し、当該物と他の物との分離によって、目的
物の価値が明らかに損害される場合、当事者は複数の物について、契約を解除
することができる。
第 166 条(複数回による引渡)
売手が目的物を複数回に分けて引渡す場合、売手がその中の一回分の標的物
を引渡さないとき、または引渡したものが約定に適合しないため、当該標的物
が契約の目的を実現できない場合、買手は当該目的物にする契約を解除するこ
とができる。売手がその中の一回分の目的物を引渡さないとき、引渡したもの
が約定に適合しないため、他の目的物の契約目的を実現できない場合、買手は
当該一回分の目的物及びその他の目的物について契約を解除することができ
る。買手がその中の一回分の目的物を契約解除し、当該目的物とその他の目的
物が相互依存関係にあるものであれば、すでに交付されたもの、または交付さ
192 れていないその他の目的物について、解除することができる。
第 167 条(分割払い)
分割払いの買手の、期限切れの未払い代金が全部代金の五分の一に達した場
合、売手は買手に、代金全額の支払いを求めるか、契約を解除することができ
る。売手が契約を解除する場合、買手に当該目的物の使用費を請求することが
できる。
第 168 条(見本による取引)
見本により取引きを行う当事者は、見本を封印保存すべきであり、見本の品
質に対し説明しなければならない。売手が交付する標的物は、見本及びその説
明に示す品質と同じのものでなければならない。
第 169 条(見本と実物の基準)
見本により取引きを行う買手は、見本に隠れた暇癖があることを知らない場
合、交付された目的物が、たとえ見本と同じであっても、売手が交付した目的
物の品質は、依然として同種類物の通常基準に適合するものでなければならな
い。
第 170 条(試用売買)
試用売買を行う当事者は、目的物の試用期間について約定することができる。
試用期間について約定がないとき、または約定が不明確であり本法第 61 条の
規定によっても、なお確定できない場合は、売手が確定する。
第 171 条(試用期間)
試用売買を行う買手は、試用期間内に目的物を購入することができるものと
し、購入を拒絶することもできる。試用期間が満了した後に買手が標的物を購
入するか否について態度を示さない場合、購入するものとみなす。
第 172 条(入札売買)
入札募集、入札売買を行う当事者の権利と義務及び入札募集、入札の手順な
どは、関連法律、行政的法規の規定に従って行う。
第 173 条(競売)
競売の当事者の権利と義務及び競売の手順などは、関連法律、行政法規の規
定に従って行う。
第 174 条(規定の有無)
法律が、その他の有償契約に対して規定がある場合、その規定に従うべきで
あり、規定のない場合は売買契約の関連規定を参照するものとする。
第 175 条(物々交換)
当事者が物々交換、目的物の所有権の移転について約定する場合、売買契約
の関連規定を参照するものとする。
第十章 電気、水、ガス、熱力供給
第 176 条(定義)
電気供給契約とは、電気供給者が電気使用者に電気を供給し、電気使用者が
電気代金を支払う契約をいう。
第 177 条(電気供給契約の内容)
電気供給契約内容には、電気供給方式、品質、時間、電気使用容量、住所、
性質、測定方法、電気価格、電気代金の決済方法、電気供給設備のメンテナン
193 ス責任などの条項が含まれる。
第 178 条(契約の履行場所)
電気供給契約の履行場所は、当事者の約定にしたがう。当事者間に約定がな
いとき、または約定が不明確な場合、電気供給設備の財産権の分離境界線を履
行場所とする。
第 179 条(供給者責任)
電気供給者は、国家の定める電気供給品質基準及び規定にしたがい、安全に
電気供給を行わなければならない。電気供給者が国家の定める電気供給品質基
準及び規定通り安全に電気供給を行わず、電気使用者に損失をもたらした場合
は、損害賠償の責任を負わなければならない。
第 180 条(施設の点検義務)
電気供給者は、電気供給施設に対し計画的に点検修理し、臨時的点検修理を
行い、法により電気を制限、または電気使用者の違法行為によって電気供給を
中断する必要が生じたとき、国家の関連規定にしたがい予め電気の使用者に知
らせなければならない。あらかじめ電気使用者に通知せず、停電によって電気
使用者に損失を与えた場合、その損害賠償の責任を負わなければならない。
第 181 条(自然災害など原因による停電の処理)
自然災害等の原因により停電した場合、電気供給者は国家の関連規定にした
がい、直ちに応急修理を行わなければならない。それを怠って、電気使用者に
損失を与えた場合は、損害賠償の責任を負わなければならない。
第 182 条(代金の支払)
電気使用者は、国家の関連規定と当事者間の約定にしたがい、適時に電気代
金を支払わなければならない。電気使用者が期限を過ぎても電気代金を支払わ
ないときは、約定により違約金を支払わなければならない。催告された後も、
電気使用者が合理的期限内に電気代金と違約金を支払わない場合、電気供給者
は、国が定める手順にしたがい電気の供給を中止することができる。
第 183 条(電気の安全使用)
電気使用者は国家の関連規定及び当事者の約定にしたがい、電気の安全使用
に努めなければならない。電気使用者が国家の関連規定及び当事者の約定にし
たがい電気を安全に使用しないで電気供給者に損失を与えたときは、損害賠償
の責任を負わなければならない。
第 184 条(水、ガス、熱力の供給)
水の供給、ガスの供給,熱力の供給契約いては、電気供給契約の関連規定を
参照するものとする。
第十一章
贈与契約
第 185 条(定義)
贈与契約とは、贈与者が自らの財産を受贈者に無償で与え、受贈者が受贈与
の意思を表示する契約をいう。
第 186 条(贈与の取消)
贈与者は、贈与財産の権利が転移される前に贈与を取り消すことができる。
救災、貧困に対する支援等社会公益、道徳義務の性格を有する契約、または公
証手続きを行った後の贈与契約については前項の規定を適用しない。
194 第 187 条(登録義務)
贈与財産は、法にしたがい登録等の手続きを行う必要がある場合、関連手続
きを行なければならない。
第 188 条(救済、貧困者への支援)
救済、貧困支援等の社会公益、道徳義務性格を有する契約、または公証手続
きを行った後の贈与契約において、贈与者が財産を贈与しない場合、受贈者は、
財産の交付を求めることができる。
第 189 条(受贈者の毀損、滅失)
贈与者の故意あるいは重大過失により、贈与される財産が毀損、滅失した場
合、贈与者は損害賠償の責任を負わなければならない。
第 190 条(受贈者の義務)
贈与には、義務を伴うことを前提にすることができる。贈与に義務をつけた
場合、受贈者は約定にしたがい義務を履行しなければならない。
第 191 条(贈与者の責任)
贈与される財産に瑕癖があるとき、贈与者は責任を負わないものとする。義
務をつける贈与については贈与される財産に瑕癖があるとき、贈与者は義務の
範囲内において、売手と同様の責任を負うものとする。贈与者が故意に瑕癖の
あることを知らせず、または瑕庇のないことを保証することにより受贈者に損
失を与えたときは、損害賠償の責任を負わなければならない。
第 192 条(贈与の取消)
受贈者に下記に挙げる事由が生じたとき、贈与者は贈与を取り消すことがで
きる。
(1)贈与者または贈与者の近親に著しい損害を与える場合。
(2)贈与者に対し扶養の義務があるにもかかわらず、それを履行しない場合。
(3)贈与契約に定められた義務を履行しない場合。
贈与者の取消権は、取消の原因を知り得たとき、または知り得るべき日から
1 年以内に行使するものとする。
第 193 条(取消権)
受贈者の違法行為により贈与者が死亡し、または民事的行為能力を失った場
合、贈与者の承継人や法定代理人は贈与を取り消すことができる。贈与者の承
継人または法定代理人の取消権は、取消の原因を知り得たとき、または知り得
るべき日より 6 ヶ月以内に行使するものとする。
第 194 条(取消権所有者)
取消権所有者が贈与を取消す場合、受贈者に対し贈与財産の返還を求めるこ
とができる。
第 195 条(贈与義務の不履行)
贈与者の経済的状況が著しく悪化し、その生産経営または家庭生活に影響を
及ぼす場合、贈与義務を履行しなくてもよいものとする。
第十二章
借款契約
第 196 条(定義)
借款契約とは、借款人が貸付人より借款し、期限内に返済し、且つ利息を支
払う契約をいう。
195 第 197 条(書面による契約)
借款契約は書面方式を採用する。但し、自然人の間で別途借款に対する約定
があるときはこの限りではない。借款契約の内容には借款の種類、貨幣の種類、
用途、金額、利息、期限及び返済方法等の条項が含まれる。
第 198 条(担保の提供)
借款契約を締結するとき貸付人は、借款人に担保の提供を求めることができ
る。担保については「中華人民共和国担保法」の規定に従うものとする。
第 199 条(事実の開示)
借款契約を締結するとき、借款人は貸付人の要請にしたがい、借款に関連す
る業務活動及び財務状況などに関する真実を開示しなければならない。
第 200 条(借款の利息)
借款の利息は、あらかじめ元金の中から差し引いてはならない。あらかじめ
元金から利息を差し引いた場合、実際の借款金額にしたがい、借款を返済し、
利息を計算しなければならない。
第 201 条(提供期日)
貸付人が、約定の期日、金額通り借款を提供せず、借款人に損失を与えたと
きは、損害賠償の義務を負う。借款人が、約定の期日、金額通り借款を受け取
らなかった場合は、約定の期日、金額通り利息を支払わなければならない。
第 202 条(使用状況の監査)
貸付人は約定にしたがい、借款の使用状況を検査、監督することができる。
借款人は、約定にしたがい、貸付人に財務会計表等資料を、定期的に提供しな
ければならない。
第 203 条(借款の支給停止)
借款人が、定められた借款の用途と異なる目的に借款を使用したとき、貸付
人は借款の支給を停止し、借款の繰上回収または契約解除を行うことができる。
第 204 条(貸付利息の上限、下限)
貸付業務を行う金融機構における貸付の利息は、中国人民銀行の定める貸付
利息の上限あるいは下限にしたがって決めなければならない。
第 205 条(利息の支払)
借款人は約定の期限通り、利息を支払わなければならない。利息の支払い期
限に関する約定がないとき、または約定が不明確であり、本法第 61 条によっ
ても、なお確定できず、借款期間が 1 年末満の場合は、借款返済時に合わせて
に支払わなければならない。借款期間が 1 年以上の場合は、1 年満期毎に支払
わなければならず、残りの期間が 1 年未満の場合は、借款返済時に合わせてに
支払わなければならない。
第 206 条(借款の返済)
借款人は定められた期限通り、借款を返済しなければならない。借款の返済
期限に対して約定がないか、約定が不明確であり、本法第 61 条によっても、
なお確定できない場合、借款人は随時に返済することができる。一方貸付人は、
合理的期限以内に返済するよう、借款人に対し催告することができる。
第 207 条(期限切れ後の利息)
借款人が定められた期限に借款を返済しなかったときは、約定または国家の
関連規定にしたがい、期限切れ利息を支払わなければならない。
第 208 条(繰上が返済)
196 借款人が、借款を繰上返済する場合、当事者間に別途約定のある場合を除き
実際の借款期間に発生する利息を支払わなければならない。
第 209 条(返済期限の延長)
借款人は、返済期限が満了する前に、貸付人に延期を求めることができる。
貸付人の同意があるときは延期できるものとする。
第 210 条(自然人による借款契約)
自然人の間の借款契約は、貸付人が借款を提供した時点より効力を発する。
第 211 条(利息の支払)
自然人の間の借款契約で利息の支払いについて約定がないときまたは約定
が不明確な場合は、利息を支払わないことと見なす。自然人の間の借款契約に、
利息の支払いについて約定がある場合、借款の利息は家の借款利息の制限に関
する規定に違反してはならない。
第十三章
賃貸借契約
第 212 条(定義)
賃貸借契約とは、賃貸人が賃借物を貸借人に交付使用させ、収益を得るもの
であり、賃借人が貸借料を支払う契約をいう。
第 213 条(契約内容)
賃貸借契約の内容には、賃貸借物の名称、数量、用途、賃貸借期限、賃借料
及びその支払期限と方法、賃貸借物のメンテナンス等に関する条項が含まれる。
第 214 条(契約期間)
賃貸借期間は 20 年を超えないものとし、20 年を超える場合超過期間は無効
とする。賃貸借期限が満了した後に当事者は継続的に賃貸借契約を締結するこ
とができる。但し、約定の賃貸借期間は継続締結の日より 20 年を超えないも
のとする。
第 215 条(6 ヶ月以上の契約)
賃貸借期間が 6 ヶ月以上の場合、契約は書面形式を採用しなければならない。
当事者が書面方式を取っていないものは、定期の賃貸借とみなさない。
第 216 条(用途の保持)
賃貸人は、約定にしたがい賃貸物を賃借人に交付し、賃借人は借用期間中に
賃借物に関する約定に適合する用途を保持しなければならない。
第 217 条(賃貸借物の使用方法)
賃借人は、約定にしたがい賃借物を使用しなければならない。賃借物の使用
方法に対する約定がないときまたは約定が不明確であり本法第 61 条の規定に
よっても、なお確定できない場合は、貸借物の性格にしたがって使用しなけれ
ばならない。
第 218 条(貸借物の損傷)
賃借人は定められた方法、貸借物の性格にしたがって貸借物を使用し、賃借
物に損傷をもたらしたときは損害賠償の責任を負わないものとする。
第 219 条(損害賠償)
貸借人は、定められた方法、貸借物の性格にしたがわずに賃借物を使用し、
賃借物に損傷をもたらした場合、賃貸人は契約を解除し、損害賠償を求めるこ
とができる。
197 第 220 条(メンテナンスの義務)
賃貸人は、賃貸物のメンテナンスの義務を履行しなければならない。但し、
当事者に別途約定があるときは、この限りではない。
第 221 条(賃貸人の対応)
貸借人は、賃借物のメンテナンスを必要とするとき、合理的期間内にメンテ
ナンスを行うよう賃貸人に求めることができる。賃貸人がメンテナンスの義務
を履行しなかった場合、貸借人は自らメンテナンスを行うことができる。その
費用は賃貸人の負担となる。賃貸物のメンテナンスの対応により貸借人の使用
に差し支えがあったときは貸借料を減らすか、貸借期間を延長しなければなら
ない。
第 222 条(貸借物の保管)
貸借人は賃借物を適切に保管しなければならない。不適切な保管により貸借
物に毀損、滅失が生じたときは損害賠償の責任を負わなければならない。
第 223 条(賃借物の改修)
賃借人は、賃貸人の許可を得て貸借物に対し改修を行い、物を増設すること
ができる。貸借人が賃貸人の許可を得ずに、賃借物に対して改修を行い、物を
増設したとき、賃貸人は、原状の回復や損害賠償を貸借人に求めることができ
る。
第 224 条(第三者への貸与)
貸借人は、賃貸人の許可を得て貸借物を第三者に転貸しすることができる。
貸借人が第三者に転貸しした場合、賃借人と賃貸人との間の賃貸借契約は、引
き続き有効であり、第三者が貸借物に損失を与えた場合は、貸借人が損失を賠
償しなければならない。貸借人が賃貸人の許可を得ずに、賃借物を第三者に転
貸ししたとき、賃貸人は契約を解除することができる。
第 225 条(賃借物による収益)
賃借期間に賃借物を占有し、使用することによって得られる収益は、賃借人
の所有となる。但し、当事者間に別途約定がある場合はこの限りではない。
賃借人は定められた期限に賃借料を支払わなければならない。支払期限につ
いて約定がないときまたは約定が不明確であり、本法第 61 条の規定によって
も、なお確定できず、貸借期間が 1 年末満のときは賃借期間終了時に支払わな
ければならない。
第 227 条(貸借料の遅延)
賃借人は正当な理由なしに賃借料を支払わないときまたは遅延したとき、賃
貸人は合理的期間内に支払うよう賃借人に求めることができる。貸借人が期限
が過ぎても支払わない時、賃貸人は契約を解除することができる。
第 228 条(第三者からの権利の主張)
第三者が権利を主張することにより貸借人が賃借物を使用できず、収益が得
られない場合、賃借人は貸借料の減額を求めるかまたは貸借料を支払わなくて
もよいものとする。第三者が権利を主張する場合、貸借人は適時賃貸人に知ら
せなければならない。
第 229 条(所有権の変動)
賃借物が、貸借期間において所有権の変動が生じたときは、賃貸借契約の効
力に影響しないものとする。
第 230 条(賃貸家屋の売却)
198 賃貸人が賃貸家屋を売却する場合、売却前の合理的期間内に貸借人にその旨
を知らせなければならないものとし、賃借人は同等の条件において優先的に購
入する権利を有するものとする。
第 231 条(賃借物件の毀損、滅失)
賃借人に帰属しない事由により賃借物の一部あるいは全部が毀損、滅失した
場合、貸借人は貸借料の減額を求めるかまたは貸借料を支払わなくてもよいも
のとする。貸借物の一部あるいは全部が毀損、滅失し、契約の目的が達成でき
ないとき賃借人は契約を解除することができる。
第 232 条(賃貸借期限の別途規定)
当事者間に賃貸借期限について約定がないかまたは約定が不明確であり、本法
第 61 条の規定によっても、なお確定できない場合は不定期賃貸借とみなす。
当事者は随時契約を解除できる。但し、賃貸人が契約を解除しようとするとき
は、合理的期限内に賃借人に知らせなければならない。
第 233 条(貸借人の安全及び健康)
賃貸物が、貸借人の安全や健康に危険を及ぼすとき、たとえ貸借人が、契約
締結時に当該貸借物が品質不良を知り得た後の物件であっても賃借人は依然、
随時契約を解除することができる。
第 234 条(賃借人の死亡)
賃借人が家屋の賃借期間において死亡した場合、生前に共同居住をしていた
者は、元の賃貸借契約に基いて当該家屋を貸借することができる。
第 235 条(貸借物の返還)
賃貸借期間終了後、賃借人は貸借物を返
還しなければならない。返還された貸借物の使用後の状態は、約定または貸借
物の性格に適合しなければならない。
第 236 条(賃借期間の終了)
賃借期間終了後、貸借人が賃借物を継続して使用し賃貸人も異議を申し立て
ない場合、元の賃貸借契約は引き続き有効となる。但し、賃貸借期限は不定期
とする。
第十四章
融資賃貸借(フフイナンス・リース)契約
第 237 条(定義)
融資賃貸借契約とは、賃貸人が、貸借人の売手及び、賃貸物に対する選択に
したがい貸借物を購入して貸借人に提供し、貸借人は貸借料を支払う契約をい
う。
第 238 条(内容)
融資賃貸借契約の内容には、賃貸借物の名称、数量、仕様、技術的性能、検
査方法、賃貸借期限、賃借料の構成及び支払い期限と方法、貨幣の種類、貸借
期間終了後の賃借物の帰属等の条項が含まれる。融資賃貸借契約は、書面方式
を採用しなければならない。
第 239 条(売手の義務と賃借人の権利)
賃貸人が、貸借人の選択した売手、賃貸物に基づき貸借人と締結した売買契
約に対して、売手は約定にしたがい貸借人に標的物を交付しなければならない
ものとし、賃借人は標的物の受領に関連する売買人の権利を享有するものとす
199 る。
第 240 条(賃貸人、売手、貸借人の義務)
賃貸人、売手、貸借人は、売手が売買契約の義務を履行しない場合には賃借
人が弁償を求める権利を行使できる旨を約定に盛り込むことができる。賃借人
が弁償を求める権利を行使するとき、賃貸人は協力しなければならない。
第 241 条(契約内容の変更)
賃貸人は、賃借人の売手、賃貸物に対する選択に基づき締結した売買契約に
おいて、賃借人の同意を得ずに賃借人に関する契約内容を変更してはならない。
第 242 条(所有権)
賃貸人は貸借物の所有権を有する。貸借人が破産した場合、貸借物は破産財
産に属さないものとする。
第 243 条(賃貸借料)
融資賃貸借契約の賃借料は、当事者間に別途約定がある場合を除き、賃借物
購入の際の大部分、あるいは全部のコスト及び貸出人の合理的利益に基づいて
決めなければならない。
第 244 条(賃貸人の責任)
賃借物が約定または使用目的に適合しないとき賃貸人は責任を負わないも
のとする。但し、貸借人が賃貸人の技能を頼りに賃借物を確定した場合、また
は賃貸人が貸借物の選択に関与した場合はこの限りではない。
第 245 条(貸借物の占有及び使用)
賃貸人は、貸借人の賃借物の占有及び使用を保証しなければならない。
第 246 条(第三者への人身傷害)
貸借人が賃借物の占有期間において、賃借物が第三者に人身傷害や財産の損
害をもたらしたとき賃貸人は責任を負わないものとする。
第 247 条(賃借物の保管及び使用)
賃借人は、貸借物を適切に保管し、使用しなければならない。
第 248 条(貸借料)
貸借人は、約定にしたがい賃借料を支払わなければならない。賃借人が催告
を受けた後、合理的期限までに賃借料を払わないとき、賃貸人は、賃借料の全
額支払いを、貸借人に求めるかまたは契約を解除し、賃貸物を回収することが
できる。
第 249 条(賃借料の部分的返還)
当事者間に、貸借期間終了後、賃借物は賃借人の所有になると約定し、しか
も賃借人が大部分の賃借料をすでに支払ったが、貸借料の残額を支払能力がな
くなり、賃貸人がそれが原因で契約を解除し、賃貸物を回収したが、回収され
た貸借物の価値が貸借人の未納貸借料及びその他の費用を上回る場合、貸借人
は賃借料の部分的返還を求めることができる。
第 250 条(賃貸借物の帰属)
賃貸人と貸借人は、賃貸借期間終了後の貸借物の帰属について、約定するこ
とができる。賃貸借物の帰属について約定がないときまたは約定が不明確であ
り、本法第 61 条の規定によっても、なお確定できない場合、賃貸借物の所有
権は賃貸人に属するものとする。
第十五章
請負契約
200 第 251 条(定義)
請負契約とは、請負人が発注者の要求に基き作業を完成し、作業の成果を交
付し、発注者は報酬を支払う契約をいう。請負には加工、注文制作、修理、複
製、測定、検査等の作業が含まれる。
第 252 条(契約内容)
請負契約の内容には、請負の標的、数量、品質、報酬、請負方式、材料の提
供、履行期限、検収基準及び方法等の条項が含まれる。
第 253 条(請負人の義務)
請負人は自己の設備、技術及び労働力によって、主要作業を完成しなければ
ならない。但し、当事者に別途約定のある場合は、この限りではない。請負人
が請け負った主要作業を第三者に渡して完成させたときは、第三者によって完
成された作業成果について発注者に対する責任を負わなければならない。発注
者の許可を得ていない場合、発注者は契約を解除することもできる。
第 254 条(請負人の責任)
請負人は、その請け負った補助的作業を第三者に渡して完成させることがで
きる。請負人がその請け負った補助的作業を第三者に渡して完成させた場合、
当該第三者によって完成された作業成果については、発注者に責任を負わなけ
ればならない。
第 255 条(発注者による検査)
請負人が材料を提供する場合、請負人は約定にしたがい材料を選定使用し、発
注者の検査を受けなければならない。
第 256 条(請負人による検査)
発注者が材料を提供する場合、発注者は約定にしたがい材料を提供しなけれ
ばならない。請負人は発注者が提供した材料に対し適時検査を行い、約定に適
合しないものを発見したときは、取替え、補充またはその他の解決措置をとる
よう適時に発注者に知らせなければならない。請負人は、発注者が提供する材
料を勝手に取り替えたり、修理の必要のない部品を取り替えてはならない。
第 257 条(発注者の責任)
請負人は、発注者が提供する図面や技術が不合理であることに気付いたとき、
適時に発注者に知らせなければならない。発注者が回答を怠ったことにより請
負人が損失を被ったとき、発注者はその損失を賠償しなければならない。
第 258 条(請負作業の要求変更)
発注者が途中で請負作業への要求を変更し、請負人に損失を与えたときは、
損失を賠償しなければならない。
第 259 条(発注者の協力)
発注者の協力を要する請負作業の場合、発注者には協力の義務がある。発注
者が協力の義務を履行しないことにより、請負作業が完成できなかった場合、
請負人は、合理的期限内に義務を履行するよう発注者に催告し、履行期限を延
長することができる。発注者が期限が過ぎても履行しないとき、請負人は契約
を解除することができる。
第 260 条(発注者の監督検査)
請負人は作業期間において発注者の必要な監督検査を受けなければならな
い。発注者は、監督検査のために請負人の正常な作業を妨げてはならない。
201 第 261 条(作業成果の交付)
請負人が作業を完成した場合、発注者に作業成果を交付し、必要な技術的資
料及び品質に関する証明を提出しなければならない。発注者は当該作業成果に
対する検収を行わなければならない。
第 262 条(品質の要求)
請負人によって完成された作業成果が、品質の要求に適合しない場合、発注
者は請負人に、修理、やり直し、報酬の減額、損失賠償等の違約責任を求める
ことができる。
第 263 条(報酬の支払)
発注者は約定の期限にしたがい報酬を支払わなければならない。報酬の支払
期限について、約定がないかまたは約定が不明確であり、本法第 61 条の規定
によっても、なお確定できない場合、発注者は、請負人が作業成果を交付する
ときに支払わなければならない。作業成果の一部が交付された場合、発注者は
それに対応する報酬を支払わなければならない。
第 264 条(留置権)
発注者が請負人への報酬や材料費等の代金を支払わなかった場合、請負人は、
完成した作業成果に対し、留置権を享有する。但し、当事者に別途約定がある
場合はこの限りではない。
第 265 条(作業成果の保管)
請負人は、発注者が提供する材料及び完成した作業成果を適切に保管しなけ
ればならない。不適切な保管によって毀損、滅失が生じた場合は、損害賠償の
責任を負わなければならない。
第 266 条(秘密保持)
請負人は、発注者の要求にしたがい秘密を保持しなければならない。発注者
の許可なしに複製品を造ったり技術資料を盗用してはならない。
第 267 条(共同請負人)
共同請負人は、発注者に対し連帯責任を有するものとする。但し、当事者に
別途約定がある場合はこの限りではない。
第 268 条(契約の解除)
発注者は請負契約を、随時解除することができる。請負人に損失を与えた場
合は、その損失を賠償しなければならない。
第十六章
建設工事契約
第 269 条(定義)
建設工事契約とは、請負人が工事建設を行い、発注者が代金を支払う契約を
いう。建設工事契約には、工事調査、設計、施工契約が含まれる。
第 270 条(書面方式)
建設工事契約は、書面方式を採用しなければならない。
第 271 条(入札募集と活動)
建設工事の入札募集、及び入札活動は、関連法律の規定にしたがい公開、公
平、公正でなければならない。
第 272 条(発注者の義務)
発注者は、代表請負人と建設工事契約を締結することができるものとし、ま
202 たは調査者、設計者、施工者それぞれと調査、設計、施工請負契約を締結する
ことができる。発注者は一つの請負人によって完成できる建設工事を、複数の
部分に解体して、複数の請負人に発注してはならない。代表請負人あるいは調
査、設計、施工の請負人は、発注者の許可を得た上に自ら請け負った一部の作
業を、第三者に渡し、完成させることができる。第三者は、その完成した作業
成果に対し代表請負人または調査、設計、施工請負人と共に、発注人に対し連
帯責任を負うものとする。請負人は、その請け負った建設工事全体を、第三者
に下請けさせ、または全体の建設工事を解体してそれぞれ第三者に下請けさせ
てはならない。請負に相応しい資質条件を持たない部門に、工事を分けて下請
けさせることを禁ずる。工事を分けられた部門が、その請け負った工事をさら
に他者に下請けさせることを禁ずる。建設工事の主体構造の施工は、必ず請負
人自ら完成させなければならない。
第 273 条(重大な建設工事)
国家の重大な建設工事に関する契約は、国の定める手順及び国が認可する投
資計画、実行可能性研究(フィージビリティ・スタディ)報告書に基いて締結
しなければならない。
第 274 条(調査、設計契約の内容)
調査、設計契約の内容には、関連基礎資料と文書(概略予算を含む)の提出
期限、品質に対する要求、費用及びその他の協力条件等の条項が含まれる。
第 275 条(施工契約の内容)
工契約の内容には、工事範囲、建設期間、中間交付工事の開工、竣工時間、
工事品質、工事価格、技術資料の交付時間、材料及び設備供給の責任、費用の
交付と決済方法、竣工後の検収など条項が含まれる。アフターサービスの範囲
及び品質保証期間、双方による相互協力等の条項が含まれる。
第 276 条(監督制度)
建設工事において監督制度を導入する場合、発注者と監督者との間に、書面
方式による監督委託契約を締結しなければならない。発注者と監督者の権利と
義務及び法律責任は、本法の委託契約及びその他の関連法律、行政法規の規定
に従わなければならない。
第 277 条(品質検査)
発注者は、請負人の正常な作業に支障を与えない状況において、随時、作業
の進捗情況、品質に対する検査を行うことができる。
第 278 条(隠蔽工事)
隠蔽工事の場合、請負人は隠蔽の前に発注者に検査するよう知らせなければ
ならない。発注者が適時検査しなかった場合、請負人は工事期間を延期し、施
工の停止及び時間のロスの発生により被った損失について賠償を求める権利
がある。
第 279 条(工事の検収)
建設工事の竣工後、発注者は施工図面及び説明書、国が発布した施工検収に
かかわる規範及び品質検査基準に基づき、適時検収を行わなければならない。
検収に合格した場合、発注者は約定にしたがい代金を支払い、当該建設工事を
接収しなければならない。建設工事は、竣工後の検収に合格してはじめて、使
用に交付しなければならない。検収を行っていないまたは検収に不合格となっ
た建設工事は使用に交付してはならない。
203 第 280 条(調査、設計費)
調査、設計の品質が要求に適合せず、または期限通り調査、設計の文書を提
出せず、工期に遅れ、発注者に損失を与えた場合、調査者、設計者は引き続き
調査、設計を補完しなければならないものとし、または調査、設計費を減らす
か徴収を免除し、かつ損失を賠償しなければならない。
第 281 条(工事の品質)
施工人の原因により、建設工事の品質が約定に適合しない場合、発注者は施
工人に対し合理的期限内において無償で修理し、またやり直し、改築を求める
権利がある。修理またはやり直し、改築後それによって交付期限が遅れた場合、
施工人は違約責任を負わなければならない。
第 282 条(人身及び財産への損害責任)
請負人の原因により、建設工事が合理的使用期限内において、人身及び財産
に損害を与えた場合、請負人は損害賠償の責任を負わなければならない。
第 283 条(工事期間の延期)
発注者が約定された時間と要求にしたがって、原材料、設備、場所、資金、
技術使用を提供しなかった場合、請負人は工事期間を延期することができる。
請負人は施工停止及び時間のロスにより被った損失について賠償を求める権
利がある。
第 284 条(工事の途中停止及び停止)
発注者の原因により施工途中で建設が停止し、延期された場合、発注者は措
置を講じて損失を補うかまたは損失を減らすものとする。これによって発生す
る工事の停止、時間のロス、逆運送、機械設備の移動、材料や資材の在庫増な
ど請負人にもたらす損失および実際に発生する費用を賠償しなければならな
い。
第 285 条(計画の変更)
発注者の計画変更、提供する資料が不正確であるため、または期限通り必要
な調査、設計作業など条件を提供しないことにより、調査、設計のやり直し、
作業停止、または設計修正をする場合、発注者は、調査者、設計者が実際に消
耗した作業量にしたがって、費用を増やさなければならない。
第 286 条(約定による代金の支払)
発注者が約定通り代金を支払わなかった場合、請負人は、合理的期限内に代
金を支払うよう、発注者に催告することができる。発注者が期限を越えても支
払わない場合、建設工事の性格上金額換算、競売に通さない建設工事を除き、
請負人は発注者と協議の上、当該建設工事を金額で換算し、処理することがで
きる。または当該工事を法に基き競売できるよう人民法院に申し立てることが
できる。建設工事の代金は、当該工事の金額換算あるいは競売の代金から優先
的に受け取ることができる。
第 287 条(その他)
本章に定めのない規定については、請負契約の関連規定を適用する。
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