特 ポーランド大使館 別 会 員 ニ ュ ー ス 題に対応していかなければならない。 GHGをほとんど排出しない原子力エネルギーは、 EU目標達成に効果的であるとして、ポーランドは、 エネルギー部門での新たな政策 ―― ポーラ ンドにとっての挑戦、日本にとってのビジネ スの可能性―― 発電所の建設が決まっており、国内最大の電力供給 現在、ポーランドのエネルギー部門は、エネルギ 会社ポーランド・エネルギー・グループが投資する ー需要の高まり、天然ガス・石油資源の国外依存、 予定である。今後の研究で原子力エネルギーが有用 エネルギー生産と輸送インフラの改善、そして環境 だと認められれば、さらなる発電所の建設が見込ま 問題に対する責務など、多くの課題を抱えている。 れる。原子力産業の導入に当たっては、法律の見直 こうした課題の解決に向けて策定されるポーランド し、人材育成、建設地の選定などが最重要課題であ の新しいエネルギー政策は、日本企業に対して幅広 り、ポーランドの行政機関および企業は、日本の企 いビジネスの可能性をもたらすだろう。 業や研究機関との協力関係構築に大きな関心をもっ 石炭資源が豊富なポーランドでは、自国で産出さ 2009年1月13日に原子力エネルギー開発を法律で 制定した。2020年までに少なくとも1カ所の原子力 ている。 れる無煙炭および褐炭が主な発電燃料であり、発電 EUのエネルギー政策により、ポーランドにも今後 量の約95%を石炭火力が占める。ほかのEU加盟国と 10年間でエネルギー効率の大幅改善が義務づけられ 比較しても、エネルギー資源の輸入に過度に依存し ている。ポーランドのエネルギー集約度(GDP1単 ているわけではないが、天然ガスと石油はそれぞれ 位当たりのエネルギー消費量)は10年前と比較して 約70%、95%超を輸入しているため、ポーランドの 30%改善したものの、EU諸国平均と比べて2倍の低 エネルギー部門にとって、技術、原材料、燃料供給 効率である。経済発展に伴う新技術の導入により、 の多様化の実現が大きな政策目標となっている。 ポーランドは特に電力の消費を大きく伸ばしてきた。 2012年、EUの気候変動・エネルギー政策の新パッ こうした事情からも、エネルギー効率の向上という ケージが導入される。この新しい政策パッケージは、 狙いは、現在の政府における優先事項のひとつとな 石炭発電の割合がヨーロッパで最大のポーランドの っている。 今後の発電事情に、大きな影響を与えると見込まれ ている。 ポーランドの新エネルギー政策案において政府が 特に重点をおいているのは、再生可能エネルギーの ポーランドが2012年以降の取り組みで自国の温室 開発とエネルギー輸入依存度の低下である。再生可 効果ガス(GHG)排出削減義務を果たすには、発電 能エネルギー産業は、大抵、顧客の近くにある小規 技術の大幅な改良が必要である。石炭ベースの新技 模発電所で行われるため、地域のエネルギー安全保 術開発にはEUの支援も期待されている。石炭のガス 障や送電ロスの補完という観点からみると、大変有 化・液体化を経済的に実現できれば、将来的に大き 益なエネルギー資源となる。そのうえ、再生可能エ な可能性をもたらす技術となるだろう。 ネルギー資源は低開発地域に賦存することが多く、 二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術も、今後大い 低開発地域の発展にもつながるとされている。すで に期待されるところだが、現時点でCCSは、工業分 に再生可能エネルギーへの投資急増がみられる一方、 野で広範囲に活用される段階になく、今後の研究が ポーランドにおいてこれらの資源が活用される余地 待たれている。政府は、EU資金を利用して、GHGゼ はまだ十分にあるというのが現状である。 ロ排出の試験発電所を2カ所建設する予定である。 ポーランドのエネルギー部門の近代化と発展は、 ポーランドの発電施設はほとんどが40年以上前に 再生可能エネルギー、CCS、エネルギー効率化、石 建設されており、ほかのEU諸国よりも発電効率が 炭関連技術、原子力エネルギーという数多くの分野 10%も低い。設備近代化や送配電システムの整備も で、豊かな経験や優れた技術、そしてノウハウをも 必要で、新しいエネルギー政策で政府はこうした課 つ日本企業にとって、幅広いビジネスの可能性をも 2009.5 1 特 別 会 員 ニ ュ ー ス たらすことが期待される。これらの分野で日本は揺 るぎないリーダーシップを発揮しており、ポーラン ドは、パートナーとしての日本の企業および行政機 関による協力に大きく期待している。 2009年3月末、ポーランド経済省の代表、またエ ネルギー部門の35人の経営者のミッションが来日し、 日本のパートナーとエネルギー部門での今後の協力 の可能性と展望について意見交換し、討論を行った。 クリーンコール技術(CCT)、石炭ガス複合発電 (IGCC) 、CCS、原子力エネルギー、エネルギー効率 化、再生可能エネルギーの分野は、今後の協力関係 において最も展望が見込まれる分野となるだろう。 今回のミッションの来日は、今後のエネルギー部門 でのより身近なビジネス協力を支えていく政府間の 対話への道を開いたといえるだろう。 お問い合わせは、駐日ポーランド共和国大使館 経 済部(T E L :0 3 - 5 7 9 4 - 7 0 2 0 、E - m a i l :t o m a s z . kuczynski@msz.gov.pl)まで。 2009.5 2
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