インパクト投資の現状と展望(PDF形式: 1.01MB)

インパクト投資の現状と展望
参考資料7
ー J.P.モルガン社の調査結果より -
○インパクト投資とは、経済的利益を超えて、プラスのインパクトを創出することを目的としている投資である。
※インパクト投資は、(利潤最大化を目的とした)伝統的投資と(社会的インパクト最大化を目的とした)寄付の動機を一つにした新しいタ
イプの資本である。
その背景には、善意の寄付だけでは、世界のかかえる諸課題の解決に取り組むだけの資金規模に達することはない一方で、ビジ
ネスの原則や手法を取り入れることにより、イノベーションやスケールアップを図ることができると認識されてきたことがある。
(J.P. Morgan, the Rockefeller Foundation and the GIIN (2010,Nov))
※「インパクト投資(Impact Investment)」は、ロックフェラー財団が2007年にイタリアで行ったセミナーで初めて提唱された。翌2008年に、
インパクト投資に関する青写真が示され、その後、リーマンショックを契機に、資本主義経済への危機感が高まったことから、その
取組が世界中に広がっている。
特に、2013年6月に英国で開催されたG8サミットにおいて、キャメロン首相の呼びかけの下、インパクト投資をグローバルに推進
することを目的とした「G8社会的インパクト投資タスクフォース」が設置された(2015年8月に、社会的インパクト投資に関するグローバ
ル運営協議会(GSG)に改組)他、OECDが、2015年2月に、「Social Impact Investment: Building the evidence base」を公表している。
インパクト投資として管理している資産総額
2012年
2013年
2014年
362億USドル
460億USドル
600億USドル
2020年には、
4,000億USドル~1兆USドル
の投資が行われるという予想も
Note: This translation has been completed by the Japanese Government Cabinet Office, and the authors take no responsibility for the accuracy of the translation.
【インパクト投資の定義①(JPモルガンによる)】
○経済的利益を超えて、プラスのインパクトを創出することを目的として
いる投資
Investment intended to create positive impact beyond financial return
(出所)J.P. Morgan, The Rockefeller Foundation and the GIIN ( 2010, Nov) , Impact Investments: An Emerging Asset Class
資本を供給する
経済的利益を期待する
Provide capital
Expect financial returns
・現在、民間債務又は民間
出資で行われている取引
・市場が成熟するにつれて、
より公開でとりひきされる
投資機会が生じると期待
している。
・投資は少なくとも名目上は、原則とし
て、経済的利益が期待されるべき。
①寄付は除外。
②市場金利又は市場で打ち負かす
経済的利益が視野の範囲内。
意図をもって設計されたビジネス
プラスの社会的又は環境上のインパクトを生むこと
Business designed with intent・・・
To generate positive social and/or
environmental impact
・投資がプラスのインパクトをつくる意図で設計されている
ビジネス(ファンドマネジャー or 会社)
・このことが、意図せざるプラスの社会的又は環境上の結
果を有する投資と、インパクト投資を区別する。
・プラスの社会的又は環境上のインパクトは事業戦略の一
部であり、投資の成功部分として測定されるべきである。
【インパクト投資の定義②:その他の主なもの】
<最も広い定義>
■世界経済フォーラム(2013年)
インパクト投資とは、「別個の資産クラスというよりも、投資を決定する際のレンズである。」
<JPモルガンとほぼ同義>
■GIIN (Global Impact Investing Network)
「経済的利益と一緒に、社会的・環境上の便益を生むために、企業や組織、ファンドに対して行う投資」
■ロックフェラー財団(2007年):インパクト投資の用語の提唱者
「経済的利益と一緒に、社会的・環境上の便益を届けることを意図した投資」
※①社会的責任投資(SRI: マイナスのインパクト生む投資は止めるという考え方)や、 ②ベンチャーフィロンソロピー(社会的イン
パクトを重視するが、収益は求めないという考え方)の2つは、インパクト投資に含まれない。
<狭い定義>
■英国財務省(2013年)
「社会課題を克服するための革新的かつ持続的な手法を開発している社会的企業に対する投資」
■G8社会的インパクト投資タスクフォース
「社会課題を解決しながら経済的な利益も同時に生み出す投資行動」
Social impact investments are those that intentionally target specific social objectives along with a financial return
and measure the achievement of both.
■インパクト投資の市場規模予測(2010年から今後10年間、5分野のみ)
J.Pモルガン社(2010)では、新興市場におけるBoPビジネスのうち、5分野(①住宅、②水資源、③健康、④
教育、⑤金融サービス)の潜在的な市場の大きさを推計している。
上記5分野の市場規模予測を集計すると、2010年から2020年の10年間における
(1)潜在的な収益機会は、
1,830億USドル~6,670億USドル
(2)潜在的に投下される資本は、 4,000億USドル~1兆USドル
になると見込んでいる。
注)「BoP (Bottom of Pyramid)」:年間所得が、2002年の購買力平価(PPP)ベースで、3000ドル以下の低所得
層のことである。発展途上国を中心に、世界人口の約7割(40億人)程度いると言われている。
(表1) 今後10年間に5分野のBOPビジネスに投資される潜在的な規模
分
野
住 宅: 供給可能な郊外住宅
水資源: ローカルコミュニティに対するクリーンな水
健 康: 肉体的な健康
教 育: 初等教育
金融サービス: マイクロファイナンス
潜在的に投下される資本
潜在的な収益機会
2,140~7,860億USドル
1,770~6,480億USドル
54~130億USドル
29~70億USドル
4~20億USドル
1~10億USドル
48~100億USドル
26~110億USドル
1,760億USドル
推計せず
(出所)J.P. Morgan, The Rockefeller Foundation and the GIIN ( 2010, Nov) , Impact Investments: An Emerging Asset Class
■インパクト投資家に対する調査(2014年実績・2015年目標)
■J.Pモルガン社は、2010年11月から毎年、世界中のインパクト投資家に対して、実施した投資額と来年の目標等につい
て、調査を実施している。
■最新の調査は、2015年5月に公表された「Eyes on the Horizon: The Impact Investor Survey」で、5回目である。同
調査は、①1,000万USドル以上のインパクト資産を管理しているか、②5つ以上の異なったインパクト取引を
しているインパクト投資家を対象に実施している。
[1]調査対象の特徴
① 146団体 (前年調査時より 17%増) :約半数の60団体が、10年以上のインパクト投資経験あり。
② 調査対象の本社の78%が、北米又は西・北・南欧にある。先進国に本社を置いている投資家が、90%の資本を管
理しているものの、管理している資産の48%は新興市場にある。
③ 約半数(57%)の団体が、ファンド・マネージャーであり、残りが、財団法人・金融機関・開発金融機関等の資産所
有者である。
北米
図1:本部の所在地
(構成比%:計146団体)
西・北・南欧
4
ラテン・アメリカ
図2:インパクト投資の組織形態
(構成比%:計146団体)
1
5
3 2
財団法人
5
サブサハラアフリカ
東・東南アジア
ファンドマネージャー
01 1
3
7
その他
6
42
9
金融機関
南アジア
単一の本社無し
開発金融機関(DFIs)
オセアニア
年金基金/保険会社
中東・北アフリカ
東欧・ロシア・中央アジア
36
ファミリー・オフィス
57
18
[2]投資活動と資産配分
① 2014年に、106億ドルのインパクト投資がコミットされ、2015年には、122億ドルの投資を行うことを目指している。
② インパクト投資を行う動機付けについて調査したところ、1)責任、2)効率性、3)クライアントからの要求の3つが上
位を占めている。
③ 調査対象の半数以上(55%)が、「市場水準の経済的利益」を目指している。
(表2) インパクト投資の数と規模
2014年実績
(図3) 目標としている経済的利益
2015年目標
数(146団体)
100万USドル
数(145団体)
100万USドル
平均値
37
72
44
85
中央値
7
合
計
5,404
10
10,553
8
6,332
18
14
12,241
(表3) インパクト投資に資本を配分する動機付け
27
55
ランク
スコア
1
80
インパクト投資は、責任ある投資家にとっては、コミットメントの一部である。
2
69
インパクト投資は、インパクトの目標を達成するためには、効率的な方法である。
3
54
クライアントからの要求に対応している。
市場水準
4
38
インパクト投資は、セクターと地域の成長のためには、露見を得る機会を提供している。
市場水準以下:市場水準近傍
5
24
インパクト投資は、他の投資機会と比較して、魅力的である。
6
6
必要条件を満たすために、インパクト投資行っている。
7
6
ポートフォーリオを多様化させるために、インパクト投資を提供している。
市場水準以下:資本保蔵に近い水準
[2]投資活動と資産配分(続き)
④ 調査対象の全団体で、インパクト投資として、計600億USドルの資産を管理している。
⑤ このうち、ファンドマネージャーが63%を管理している。なお、団体数では5%を占めているに過ぎない開発金融機
関(DFIs)が、全資産の18%を管理している。
⑥ 企業への直接投資が、全資産の74%を占めており、間接投資は20%に過ぎない。
⑦ 地域別でみると、先進国が半分、発展途上国が残り半分と様々な地域で実施されている。
⑧ セクター別でみると、1)住宅(27%)、2)マイクロファイナンス(16%)、3)金融機関(除くマイクロ)(11%)、4)エネル
ギー(10%)、5) ヘルスケア(5%)、5) 食料・農業(5%)で、投資が実施されている。
⑨ 形態別でみると、民間債務(40%)、民間出資(33%)の2つが占める割合が高い。メザニンの占める割合は、8%で
ある。ソーシャル・インパクト・ボンドのような成果報酬支払型の占める割合は、0.2%程度である。
⑩ 事業段階別でみると、1) スタートアップ段階(3%)、2) ベンチャー段階(6%)、3) 成長段階(28%)、4) 成熟段階
(民間)(52%)、5) 成熟段階(公共関連)(11%)となっており、 3)成長段階以降が全体の91%を占めている。
北米
図4:インパクト投資の地域別分布
(総資産額=600億USドル)
サブサハラアフリカ
6
ラテン・アメリカ
3 2
6
40
6
オセアニア
公的債務
3 2
6
40
8
公的出資
実物資産
10
11
その他
その他
中央・北アフリカ
5
メザニン
東・東南アジア
南アジア
0.2
民間出資
東欧、ロシア、中央アジア
西・北・南欧
図5:インパクト投資の形態別分布
(総資産額=600億USドル)
民間債務
0.2
現預金
11
14
成果報酬支払(例:SIBs)
33
[3]将来に向けて計画している資産配分
① 地域別でみると、 サブサハラアフリカ、東・東南アジア、ラテンアメリカへの投資を増やす予定であるという回答が
多い。
② セクター別でみると、エネルギー、食糧・農業、ヘルスケア、教育への投資を増やす予定であるという回答が多い。
その一方で、現在、高いウェイトを占めているマイクロファイナンスの分野への投資については、多様化するという
観点から、減少させる予定であるという回答が多い。
図6 来年に向けて計画しているポートフォリオの変化
エネルギー
38
食料・農業
38
ヘルスケア
38
教育
33
金融サービス(除くマイクロ)
23
住宅
21
マイクロファイナンス
20
水資源
16
IT
15
インフラ
13
製造
12
生息地保護
9
芸術・文化
-20
-10
減少予定
評価開始中
維持する
増加予定
5
0
10
20
30
40
50
60
70
80
[3]将来に向けて計画している資産配分 (続き)
③ 手法別にみると、民間債務と民間出資を増やす予定であるという回答が多い。また、現在ウェイトが低いメザニンや
成果報酬支払型(例:SIBs)を増やす予定であるという回答がその次に続く。
図7 来年に向けて計画している金融手法の変化
民間債務
32
民間出資
31
メザニン
21
成果報酬支払型(例SIBs)
13
公的債務
6
不動産
6
現預金
3
公的出資
-20
-10
減少予定
2
0
10
20
30
40
50
評価開始中
60
維持する
70
増加予定
80
90
[4]市場の発展とパイプライン
① インパクト投資家は、2013年と比較して、2014年には、市場の成長を促す要因として考えられる幾つかの指標(投
資家同士の連携、投資機会の利用可能性、インパクト評価の標準化の利用、トラックレコードを持った中間支援組織
の数等)に進捗がみられたと回答している。
② その一方で、インパクト投資産業界が今後成長するにあたり挑戦だと挙げている点としては、1)リスクとリターン
の変動をまたがる適切な資本の不足、2) トラック・レコードを持った質の高い投資機会の不足を挙げる投資家が多い。
表4 インパクト投資産業が今後成長するに当たっての挑戦
ランク
スコア
1
193
リスクとリターンの変動をまたがる適切な資本の不足
2
174
トラック・レコードを持った質の高い投資機会の不足
3
115
既存投資の困難
4
97
インパクト投資について話す共通の方法の不足
5
87
投資家や資産運用会社のニーズを満たすようなイノベーティブな取引やファンドの構造の不足
6
76
製品とパフォーマンスに関する研究とデータの不足
7
67
不十分なインパクト測定手法
8
57
関連のスキルを有している投資専門家の不足
[4]市場の発展とパイプライン (続き)
③ 政府の政策としては、信用保証の供与や、税額控除又は補助金が役に立つという回答が多い。
④ 国レベルの政策としては、「社会的インパクト」についてより明確な定義を行うことや、投資家がインパクト投資の分
野に迅速に移行できるように、関連規則を見直すことを指摘する意見もあった。特に、新興市場では、資本移動につい
ての制限があることから、こうした規制の見直しを求める声が強い。
※インパクト投資を促進するために、政府として取り得る政策としてどのようなものがあるのかについては、
G8社会的インパクト投資タスクフォースが、検討を行い、2014年9月に報告書を公表している。
“Policy Levers and Objectives: Explanatory note for Governments” (Social Impact Investment Taskforce, Sep. 2014)
表5 政府の様々な政策のうち、役に立つと認識されているもの
ランク
スコア
1
225
信用保証の供与 (例:保証、第一次損害(First-Loss)
2
184
投資家に対する税額控除・補助金
3
126
投資家に対する技術支援
4
124
投資の申込みに関する一貫性のある明確に定義された規制
5
111
行政機関による共同投資
6
52
インパクト投資による投資先からの調達
[5]業績と出口
① 調査対象の投資家は、インパクトと経済的利益の双方とも、おおよそ当初の予想通りの業績を示していると回答
している。
② インパクトが、当初の予想を上回っているのは全体の27%、当初の予想通りが71%であるのに対して、当初の予
想を下回っているのは、2%に過ぎない。経済的利益が、当初の予想を上回っているのは、全体の14%、当初の予想
通りが78%であるのに対して、当初の予想を下回っているのは、全体の9%である。
図8:過去3年分の調査結果
(%)
① インパクトに関する業績
② 経済的利益
(%)
30
25
27
25
20
20
21
20
16
15
15
14
10
10
11
9
9
5
5
0
14
2
2012年
当初の予想を上回る
2
1
2013年
0
2014年
当初の予想を下回る
2012年
当初の予想を上回る
2013年
2014年
当初の予想を下回る
[5]業績と出口(続き)
③ 出口(Exit)を迎えた直近の年について質問したところ、回答のあった71団体のうち、2013年以降と回答したのは55
団体と全体の7割を占めている。
④ 内訳をみると、マイクロファイナンスが17団体、金融サービスとヘルスケア、食糧・農業が各々9団体であった。
図9 民間出資のエグジットの年 (計77)
35
図10 民間出資のエグジット(セクター別) (計76)
32
30
25
21
20
15
10
5
1
3
5
7
6
2
0
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年)
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
17
13
9
9
9
8
4
2
2
2
1
0
0
0
[5]業績と出口(続き)
⑤ 出口の大半は、戦略的又は金融上の買手に売却することで行われた。また、投資が行われてからで出口を迎えるま
でに要した時間は、大多数が5年以上であった。
⑥ 出口のリスクを回避するために、民間出資の50%以上が、投資条項に、「売却参加権(tag along)」「売却強制権
(drag along)」が含まれている。
※「売却強制権」:大口株主が保有株式を売却するときは、少数株主も取引に参加して、企業に株式を売却する権利のこと。これに
より、少数株主の権利が保護される。
「売却強制権」:大口株主が保有株式を売却するときは、少数株主は取引に参加するこを強制される。これにより大口株主の権利
が保護される。
図12 出口リスク/流動性リスクを回避するために使われている条項
図11 民間出資をしてから出口までの期間 (計66)
(%)
28
30
25
80
20
常に/ほぼ常に
9
25
11
7
6
8
40
6
5
20
0
0
1-2年
2-3年
3-4年
4-5年
5年以上
全く
34
34
81
44
66
55
22
1年未満
時々
12
60
15
10
100
売却参加権
売却強制権
プット・オプション
19
0
ショットガン条項
[6]インパクトに関する業績管理
① 99%の団体が、IRISと連携した標準化された指標等を通じて、投資に対する社会的/環境上の業績を測定して
いる。その際にどのような指標を採用しているかについては、多様である。
② 大多数の団体は、ターゲットとしている母集団に対して、製品やサービスを売却したり、雇用を提供することによっ
て、投資によるインパクトを達成しようと探求している。
③ 各団体とも、アウトプットとアウトカムを測定することに高い重要性を置いている。
④ 大多数の団体は、自分達のミッションの一部であるという理由で、インパクトに関する業績を追跡している一方で、
2/3近くの団体は、このような情報のビジネス上の価値が非常に重要であると信じている。
⑤ インパクト測定に関する独自のチームを持っているのは、調査対象の20%のみである。
図13 投資先の社会的/環境的業績をどうやって測定しているか。
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
図14 インパクト測定の様々なタイプの重要性
非常に重要
87
85
60
44
2
等
の
標
準
社
測会
定的
し環
て境
い的
な業
い績
を
/
と
評
価
を
通
じ
て
フレー
定
性
的
な
話
を
通
じ
て
GIIRS,GRI
ムワーク
IRIS
と
連
通携
じし
てた
指
標
を
独
自
の
指
標
を
通
じ
て
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1
12
2
24
5
11
51
86
14
42
33
28
28
72
33
ア
ウ
ト
プ
ッ
ト
を
測
定
12
18
ア
ウ
ト
カ
ム
を
測
定
業
績
を
すベ
るン
チ
ー
ク
と
付
加
性
を
測
定
す
る
31
25
貢
献
度
を
測
定
す
る
30
33
6
業
績
を
貨
幣
換
算
す
る
幾分重要
図15 社会的/環境的業績を追跡する理由
(%)
(計143団体)
100
図表16 社会的/環境的業績管理の責任
(%)
100
6
90
90
10
32
80
3
80
70
27
70
60
60
50
図17 社会的/環境的業績の管理が直面して
いる挑戦
(計145団体)
53
50
20
44
94
49
45
40
40
49
53
41
30
65
30
57
67
20
27
10
ミ
ッ
シ
ョ
ン
の
一
部
で
あ
る
あ
る
と
信
じ
て
い
る
こ
の
よ
う
な
デ
ー
タ
が
ビ
ジ
ネ
ス
上
の
価
値
が
上
コ
ミ
ッ
ト
し
て
い
る
ス
テ
ー
ク
ホ
ル
ダ
ー
に
報
告
す
る
こ
と
を
契
約
対
外
的
な
プ
レ
ッ
シ
ャ
ー
が
強
く
な
っ
て
い
る
38
10
38
30
28
20
16
14
標
準
化
さ
れ
た
報
告
ノ
フ
レ
ー
ム
ワ
ー
ク
の
不
足
ベ
ス
ト
プ
ラ
ク
テ
ィ
ス
を
理
解
す
る
こ
と
の
不
足
0
0
社
会
的
/
環
境
的
業
績
を
理
解
す
る
こ
と
は
、
20
投資チームに責任がある
独自のチームを設置してい
る
その他
非常に重要
幾分重要
重要でない
投
資
先
の
能
力
不
足
イ
ン
パ
ク
ト
に
貢
献
で
き
る
能
力
コ
ス
ト
標
準
化
さ
れ
た
指
標
の
不
足
6
質
の
高
い
ス
タ
ッ
フ
の
不
足
厳しい挑戦
緩やかな挑戦
挑戦ではない
(参考) インパクト評価に関する過去の調査結果(抜粋)
第2回調査
(2011年12月)
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
インパクト評価
44
0
経済的利益
29 30
19
20
22
15
0-30日
31-60日
61-90日
91-120日
121-150日
151-180日
180日以上
8
8
37
半年毎
四半期毎
毎月
ファンドマネージャーが資金調達するにあたってのインパクト評価の役割
0
4
14
4
12
20
33
年に1回
第3回調査
(2013年1月)
事業計画を受け取ってから、取引を終了するまでの所要時間
インパクトと経済的利益の評価の頻度
(%)
16
第4回調査
(2014年4月)
Yes 全投資家に必要
第三者による格付けの活用
Yes 全ての潜在的投資家に対
して
9
Yes 幾人かの投資家に必要
Yes 多くの投資家に必要
17
No 必要ではないが興味あり
Yes もし利用可能なら、評価す
る
No 重要ではない
No 考慮しない。
確信がない
49
36
55
[7]リスクと損失保護
① インパクト投資家が資産のポートフォリオを考える際に、1)ビジネスモデル実行リスク/マネジメント・リスク、2) 流動
性リスク/出口リスク、3) カントリーリスク/為替リスクをリスクとして多く指摘している。
② ダウンサイドリスクを管理するために、34%が、損失準備金や保証といった損失保護がついた取引に参加している。
③ インパクト投資家にとっては、出口の際に、投資先の優先順位や活動が、当初の目的やミッションからシフトしている
かもしれないリスクをどうやったら避けることができるかが重要であると考えている。
表6 インパクト投資のポートフォリオへのリスク
ランク
図18 2014年に損失保護のついたインパクト投資を行ったかどうか。
スコ
ア
Yes
1
258
ビジネスモデルの実行リスク/マネジメント・リスク
2
132
流動性リスク/出口(Exit)リスク
3
115
カントリー・リスク/為替リスク
4
106
市場需要リスク/競争リスク
5
98
資金調達リスク
6
91
マクロ経済リスク
7
34
認識リスク/評価リスク
34
66
No
[7]リスクと損失保護(続き)
④ 第一次損失準備金 (First-loss reserve)と債務保証が、損失保護の最も一般的な形態である。
⑤ しかし、損失保護は、インパクト投資にとって本質的なものではない。
図20 損失保護の重要性
図19 インパクト投資のポートフォリオへのリスク
40
30
57
60
29
25
40
21
20
20
10
4
43
39
7
0
0
第1次損失準備金
債務保証
劣後債
その他
不可欠なもの
特定の取引の際に必要
あるといいが、マストではない
無関係
[8]技術支援
① 調査対象の73%の団体が、投資先に対して、技術支援を提供している。
② 最も一般的な技術支援は、一般管理支援である。投資先の企業に対して、業務管理やインパクト評価の分野を改善
させるために、こうした技術支援は行われている。
③ こうした技術支援に対しては、様々なところから資金提供が行われている。
④ 技術支援の多くは、投資期間を通じて実施されている。
図21 技術支援の活用
図22 技術支援に対する資金提供
89
100
100
63
63
61
44
50
44
81
80
60
40
0
27
24
20
19
12
7
0
一般管理
会計/財務システム
産業特定のスキルの増進
インパクト評価
HRやその他の内部政策
製品開発
図23 技術支援の活用段階
120
100
80
60
40
20
0
96
43
投資期間中
デューデリ後、投資前
29
デューデリ前
インパクト投資の一部
財団法人
外国政府
複数の政府
投資先の政府
国際援助組織
[9]仲介市場
①
②
③
④
⑤
ファンドマネージャーが資金調達を行った額は、2014年 47億USドル(実績)、2015年 71億USドル(目標)である。
ファンドは、様々なところから資金調達を行っているが、その中でも、金融機関の占める割合が大きい。
クローズド・エンド型ファンドが最も魅力的であり、ファンド・オブ・ファンドは魅力に欠けている。
調査対象の55%が、初めてのファンドマネージャーに投資している。
投資家は、1)インパクトへのコミットメント、2)ネットワーク、3)投資スキル、4)運用経験を考慮して、投資する
ファンドマネージャーを決定している。
表8 ファンドへの投資家
合計(80)
先進国に本部
(56)
新興国に本部
(22)
金融機関
32%
35%
10%
表7 資金調達額
2014年実績
2015年目標
平均値
9,000万USドル
1億900万USドル
年金基金/生命保険
19%
21%
4%
中央値
2,200万USドル
5,000万USドル
開発金融機関(DFI)
18%
11%
74%
合 計
47億200万USドル
70億8,200万USドル
ファミリーオフィス
13%
13%
9%
小売投資家
8%
10%
0%
財団法人
5%
6%
2%
ファンド・オブ・ファンド
2%
2%
0%
寄付金
1%
2%
0%
その他
1%
1%
0%
100%
380億ドル
100%
100%
合計
図24 インパクト投資家が関心を持っているストラクチャー
強い関心
100
14
27
80
幾分関心
無関心
29
49
39
60
47
55
40
37
47
20
27
16
14
持株会社のような投資ビークル
ファンド・オブ・ファンド
0
クローズ・エンド型ファンド
オープン・エンド型ファンド
図25 ファンドマネージャーを決定する際のカギとなる考慮事項(2014年調査)
本質的
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
2
19
2
17
2
0
24
0
33
2
17
59
79
79
74
67
で
の
運
用
36
に
な
る
と
い
う
市
場
機
会
最
初
に
動
く
こ
と
が
有
利
17
融
面
でに
の対
コす
ミる
ッ
ト
額の
金
7
著
名
な
家
のや
参
加
LPs アンカー
経
験
10
52
GP
と
目
標
の
26
ファンド
ネッ
スキル トラック
レコード
トワーク
適
切
な
投
資
セクター
インパクト
を
測
定
し
、
達
成
目
標
の
地
域
で
の
強
い
5
オプション
48
22
す
る
こ
と
トに
つ
い
て
コ
ミ
ッ
どちらかと言えば
投
資
無関心
[10]過去5年間のインパクト投資市場への評価
調査対象のインパクト投資家は、インパクト投資市場に対して、楽観的な見方を示している。
① インパクト測定の実践は、非常に改善している。
② 政府は、よりアクティブな役割を果たしている。
③ インパクト投資産業は、より「市場水準の経済的利益が見込める投資」の方向に向かっている。
④ インパクト投資産業は、より競争的になっている。
⑤ 企業家/投資機会の質は改善している。
⑥ インパクト投資の取引には、著しいイノベーションが含まれている。
図26 過去5年間におけるインパクト投資産業への評価
強く同意
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
5
33
44
20
58
19
は
著
し
く
改
善
し
て
い
る
イ
ン
パ
ク
ト
測
定
の
執
政
どちらでもない
1
8
10
0
7
1
10
26
33
27
22
49
45
52
52
16
16
14
15
産
業
は
な、
っよ
てり
い競
る
争
的
に
著案
し件
いを
構
ま
築
れ
す
る
る
が際
見に
込、
イノベーション
/
企
は業
改家
善
さ投
れ資
て機
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るの
質
0
6
17
やや同意
の利
方益
向が
に見
向込
かま
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よ
り
市
場
水
準
の
経
済
的
を
果
た
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に
な
っ
て
やや不同意
9
36
41
政
府
は
よ
り
活
発
な
役
割
11
3
利市
向益場
にし水
向か準
か見以
っ込下
てめの
いな経
るい済
方的
強く不同意
[参考]過去の調査結果:インパクト投資の数と規模
第5回調査(2015年5月公表)
2014年実績
インパクト投資として管理している資産総額
2012年
2013年
2014年
362億USドル
460億USドル
600億USドル
2015年目標
数
(146団体)
100万USドル
数
(145団体)
100万USドル
平均値
37
72
44
85
中央値
7
合
計
10
5,404
10,553
第4回調査(2014年4月公表)
2013年実績
数
(125団体)
100万USドル
数
(124団体)
100万USドル
平均値
39
85
52
102
中央値
6
7
20
合
計
13
4,914
10,619
第3回調査(2013年1月公表)
投資開始以降
2014年目標
2012年見込み
2013年目標
数
(88団体)
100万USドル
数
(89団体)
100万USドル
数
(88団体)
100万USドル
平均値
199
411
29
91
32
104
中央値
35
111
7
25
10
25
合 計
17,552
36,181
2,570
8,011
2,792
9,074
6,419
12,687
8
6,332
14
12,241
(参考文献)
J.P. Morgan, The Rockefeller Foundation and the GIIN ( 2010, Nov) , Impact Investments: An Emerging Asset Class
https://www.jpmorganchase.com/corporate/socialfinance/document/impact_investments_nov2010.pdf
J.P. Morgan and the GIIN ( 2011, Dec) , Insight into the Impact Investment Market: An in-depth analysis of investor
perspectives and over 2,200 transactions
https://www.jpmorganchase.com/corporate/socialfinance/document/Insight_into_the_Impact_Investment_Market.pdf
J.P. Morgan and the GIIN ( 2013, Jan) , Perspectives on Progress: The Impact Investor Survey
https://www.jpmorganchase.com/corporate/socialfinance/document/207350_JPM_Perspectives_on_Progress_2013-0107_1018749_ada.pdf
J.P. Morgan and the GIIN ( 2014, Apr) , Spotlight on the Market: The Impact Investor Survey
https://www.jpmorganchase.com/corporate/socialfinance/document/140502_Spotlight_on_the_Market.pdf
J.P. Morgan and the GIIN ( 2015, May) , Eyes on the Horizon: The Impact Investor Survey
https://www.jpmorganchase.com/corporate/Corporate-Responsibility/document/impact-investor-survey-2015.pdf
Note: This translation has been completed by the Japanese Government Cabinet Office, and the authors take no responsibility for the accuracy of the translation.
(参考)OECD (2015 Feb.) “Social Impact Investment – Building the Evidence Base ” における定義
○社会的インパクト投資とは、「ニーズのある受益者をターゲットにした、社会的分野における投資家と投資先との間の取
引」のことである。ターゲットとした受益者は、リスクを抱えた人々であるべきだし、提供される財は、公共と民間の良い点
をミックスしたものであるべきである。これらの取引は、しばしば、仲介者を使って行われる。取引における投資先は、社会
的なインパクトに関する公式な評価を提供するのと同様に、社会的な活動に関して、強制的な報告条項が記載されるべき
である。
○以下の7つの特徴を全て有していれば、その取引は、「社会的インパクト投資」に該当する。
①社会的なターゲットの分野 (Social Target Areas)、 ②受取人の背景 (Beneficiary context)、③財/サービス(Goods /
Service)、④配送組織の目的 (Delivery Org. Intent)、⑤社会的インパクトの測定可能性 (Measurability of social impact)、
⑥投資家の目的 (Investor Intent)、⑦経済的利益の期待 (Return Expectation)
特
徴
1.社会的なターゲットの分野
(Social Target Areas)
特徴の属性
典型的なフィロンソロフィー:
コミュニティ、文化、芸術
コアな社会的インパクト投資: 高齢者、障害者、健康、子ども・家族、公共秩序、
住宅、失業、教育・職業訓練
その他分野:
2.受取人の背景
(Beneficiary context)
リスクを抱えた人々:
リスクを抱えていない人々:
適格性
適格
農業、環境・エネルギー、水資源、金融サービス(含むマイクロファイナンス)、
ICT
社会的人口構造(年齢、家族形態、その他)
場所(条件不利、発展途上、先進)
所得
適格
不適格
特
徴
3.財/サービス
(Good / Service)
特徴の属性
公共性の程度:
※民間と公共の双方の性格を有している。
4.配送組織の目的
(Delivery Org. Intent)
公共
(社会的インパクト投資)
民間
適格性
不適格
適格
不適格
偶然な社会的成果
明確な社会的使命の目的
強制的な報告
対外的な資格又はラベル
法律で義務付けられた制限
不適格
不適格
適格
適格
適格
5.社会的インパクトの測定可能性
(Measurability of Social Impact)
測定しない
非公式な評価、価値がない
公式な評価、価値がない
公式な評価、価値がある
不適格
不適格
適格
適格
6.投資家の目的
(Investor intent)
偶然な社会的成果
文章で示された社会的目的
強制的な報告
法律で義務付けられた制限
不適格
不適格
適格
適格
7.経済的利益の期待
(Return expectation)
助成金
資本利益率
収益=<資本利益率
収益>資本利益率
不適格
適格
適格
不適格
※社会的な目的は、偶然の成果とは異なる。
※寄付は、フィロンソロフィーであって、投資で
はない。