社会学概論 6.国家とグローバリゼーション

© K. HASEGAWA
社会学概論
6.国家とグローバリゼーション
2015.7.16 長谷川 公一 東北大学大学院文学研究科教授 k-­‐hase@m.tohoku.ac.jp
無断での引用・改変
・配布等を禁じます
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今年はなぜか9月に4連休
•  祝日法の改正で、祝日と祝日の間に1日平日がはさまれてい
る場合、その日は休日にすることになった(改正祝日法、2015
年から施行)。
9月19日(日)
9月21日(月) 敬老の日
9月22日(火) 休日に
9月23日(水) 秋分の日
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祝日の秘密
1月1日 元日
1月第2月曜 成人の日
2月11日 建国記念の日(「神武天皇即位の日」とされる。「紀元
節」
春分の日(「春季皇霊祭」)
4月29日 昭和の日(昭和天皇誕生日、「天長節」)
5月3日 憲法記念日(日本国憲法発布の日)
5月4日 みどりの日
5月5日 こどもの日
7月第3月曜 海の日 明治天皇が東北巡行から横浜港に戻っ
た日の7月20日「海の記念日」に由来する
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国家は何を祝わせているのか
9月第3月曜 敬老の日
秋分の日(「秋季皇霊祭」)
10月第2月曜 体育の日
11月3日 文化の日、明治天皇誕生日(「天長節」、「明治節」)
11月23日 勤労感謝の日(新嘗祭)
12月23日 天皇誕生日
—→テキスト p.324-5 Column 10-1
天皇制と関わりのない祝日は、便宜的に月曜などに移動
天皇制と関わりのある祝日は、日付を固定
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学校・工場・軍隊——国民化の装置
•  「変われば変わる世の中で、マアこの節はそのゴム人形も立
派な国民と成って、学問もすれば商工業も働き、兵士にすれ
ば一命を軽んじて国のためにも水火にも飛び込む。……これ
ぞ文明開化の賜物でしょう」福沢諭吉『福翁自伝』(1899年)
•  義務教育
1872年(明治5年) 学制発布
『学問のすゝめ』(1872年)
1875年(明治8年)には、現在なみの約2万4000校の小学
校が設置された。
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幕藩体制から中央集権的な国民国家へ
•  江戸時代 300あまりの藩に分割
(大名—→廃止 天皇制・立憲君主制に)
藩札—→廃止、統一通貨・円に
関所—→廃止 移動・居住・職業選択の自由)
•  明治維新 版籍奉還(1869年(明治2年))
廃藩置県(1871年(明治4年)) 全国が明治政府の直轄地に
3府302県から同年中に3府72県に
1889年に3府43県・北海道に
•  士族(武士)を武装解除して、1873年(明治6年)に国民皆兵・徴兵制を
施行
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ナショナリズムと国民国家
•  『想像の共同体』アンダーソン(1983年)
•  ナショナリズム・国民は「想像された共同体」(imagined communities)で
ある
多様な人びとを1つの「国民」に包摂していく過程
国民国家の形成
資本主義経済の成立、世界市場の成立
西欧列強による植民地化の危機
出版産業の登場
「同時性の体験」
天皇の巡幸(明治天皇・昭和天皇・今上天皇)
日清戦争(1894年)
日露戦争(1904年)
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近代国家の三要素
•  領土(国境) 境界の設定
•  国民 同化政策・国民化=均質化された「内部」へ
•  主権 軍隊(正統化された暴力の独占)
イデオロギー装置としての国家(アルチュセール)
近代化の側面
中間集団の脆弱化・解体
原子化された個人へ(「孤独な群衆」リースマン)
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〈全体社会=国民国家〉の変容
超国家は可能か
•  グローバル化=全球化(中国語での表記)
例. EU(欧州連合、European Union)
現在28ヶ国が加盟
EEC6ヶ国でスタート(1958.1.1)
1989.11.9 「ベルリンの壁」崩壊 (61年8月から)
1990.10.3 ドイツ再統一
1992.2.7 マーストリヒト条約調印
1993.11.1 EU発足
2002 統一通貨ユーロを導入
統一通貨、欧州議会、移動の自由 トルコ問題・ギリシア問題
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補完性原理 subsidiarity の原則
•  「問題はより身近なところで解決すべきである」という考え方。
•  「より下位の単位(例.個人・コミュニティ・市町村・県・国)で対
応できることはそこに任せ、そこが対応できない場合にはじめ
てより上位の単位が対応すべきである」という考え方。
•  EU統合の基礎となったマーストリヒト条約(1992年)では、国
家ができることは国家が行い、国家ができないことにはじめて
EUが関与するという原則(各国家の自治とEUとの補完性)。
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グローバル化・ナショナル化・ローカル化
•  「牛タン神話」はいつ・どのようにつくられたのか
•  名産品・ブランドはどこかの時点でつくられる
•  ナショナル化が進むと、かえって、ローカルなものが再発見・再
創出される
•  グローバル化が進むと、かえって、ナショナルなもの、ローカル
なものが意識されるようになる
例.イスラム原理主義、Cool Japan キャンペーン(前近代の江
戸的なものの再評価)
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グローバル化は何をもたらすのか
•  世界市場化(資本の移動、世界的な分業体制)
•  国際的な相互依存の拡大
•  市場主義の進展
——関税や商慣行等が参入障壁として批判される
•  弱肉強食的な、過度の競争へ
セキュリティ・ネットの解体へ
•  自国の文化・伝統をどう守るのか
•  「世界市民」的な意識は育つのか
•  健全なナショナリズムと不健全なナショナリズムの境界は?
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