2001年のR&I格付け回顧

 NEWS RELEASE
No.2002-A-004
2002 年 1 月 28 日
2001年のR&I格付け回顧
12 法人の財投機関債に格付け
ストラクチャードファイナンス案件は 2 兆円弱に
格付投資情報センター(R&I)は、2001 年の格付け回顧をまとめました。2001 年には新たな格付け
対象として特殊法人などが発行する財投機関債の格付けを行いました。また、市場が広がっているスト
ラクチャードファイナンス案件は、非公表案件を含めると格付け対象は 1 兆 9000 億円(2000 年は 7000
億円)に達しました。住宅金融公庫の担保付き債券、フィッチとの共同案件、サービサー格付けなど新
しいスキームについても格付けを実施しました。
2001 年は厳しい経済環境を反映し、日本のソブリン格付けについては 3 月に AAA を据え置きながら
も、その方向性を下向きとしました。地方自治体が発行する債券である地方債の信用力にも総じて下向
きの圧力がかかっています。日本企業の格下げも前年の 44 社から 81 社へと大幅に増加しました(2001
年 12 月 27 日公表済み)。非居住者でも格下げが増加しました。
1.日本企業
長期優先債務格付けが格下げとなった企業は、事業環境が厳しさを増してキャッシュフロー創出力が
低下する中、有利子負債削減の原資となる土地や株式の価格が下落し、財務構成の改善が進まないケー
スが多い。
一方、格上げした企業を見ると、2000 年は情報技術(IT)需要回復の恩恵を受けた電気機器や合併・
統合による経営基盤の強化を織り込んだ銀行など一部の業種に偏っていたが、2001 年は業種が幅広く
分散した。業種を問わず事業の選択と集中による事業構造の転換、コスト削減、資産リストラを進める
ことで収益基盤を強化し、キャッシュフロー創出力と有利子負債のバランスが改善した企業の信用力が
向上している。企業の体質改善への取り組みの成否が信用力に大きく反映したと言える。
◇2001 年の格付け変更社数
格上げ
2001 年
2000 年
格下げ
2001 年
2000 年
42
21
18
81
5
12
20
21
3
44
5
7
長期優先債務格付け
製造業
非製造業(金融除く)
金融
合 計
保険金支払能力
10
7
4
21
2
5
9
4
15
28
3
6
非居住者
(注 1)1 年間で複数回格付けを変更した場合は 1 社として集計。
(注 2)被合併会社の合併による格付け変更を含む。
(注 3)保険金支払能力には op 格付けも含む。
(注 4)経営破綻で長期優先債務格付けが消滅した場合も格付けの変更としてカウントした。
*長期優先債務格付けとは、発行体の負うすべての金融債務について回収の程度を考慮する前の総合的な履行能力につい
ての R&I の評価である。この格付けは、原則として全ての発行体に付与される。個々の債券の格付けは、契約の内容等を
反映し、長期優先債務格付けを下回る、または上回ることがある。
*日本企業に対する 2001 年格付け実績のリリースを 2001 年 12 月 28 日に公表した。
格付投資情報センター 格付本部 〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町 3-8-1 TT-2 ビル
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会社
格付けは、債務履行の確実性の度合いを簡単な記号で投資家に投資情報として提供するものであり、債券やコマーシャルペーパー等の売買・保有を推奨するものではありません。
格付けは信頼すべき情報に基づいたR&Iの意見であり、その正確性及び完全性は必ずしも保証されてはいません。格付けは原則として発行者から対価を受領して行ったものです。
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〔製造業〕
製造業では、格下げが 2000 年の 20 社から 2001 年には 42 社に増加した。ブランドイメージが傷付
いた企業のほか、半導体市況の低迷、公共投資の削減など景気後退が鮮明となる中で幅広い業種で格下
げが相次いだ。格上げは 10 社と前年の 9 社から1社増えた。
自動車
ブランド、製品の信頼性が競争力に直結する自動車では、三菱自動車工業がリコール隠し問題でブラ
ンドイメージが大きく傷ついた結果、収益力・財務基盤の立てなおしは容易でないと判断され、BBBから BB+へ格下げとなった。
食品
製品の安全性に対して消費者が敏感に反応する食品では、雪印乳業が食中毒事件以後の売上高の落ち
込みを合理化で補い切れない見通しとなったことで BBB から BB+へ 2 ノッチの格下げとなった。また、
狂牛病問題で牛肉、ギフト商品の売り上げが激減した日本ハム(現在の格付けは A+)
、伊藤ハム(同 A)
などハム・ソーセージメーカー4 社を格下げ方向でレーティング・モニターに指定した。
電機・通信
大手電機、通信機メーカーを中心に格下げが 7 社となった。半導体市況が低迷する中、固定費を中心
とするコスト削減が追い付かない。松下電器産業を AAA から AA+、富士通を AA から AA-、東芝、NEC
を AA-から A+へ格下げした。また、AA の日立製作所を格下げ方向でレーティング・モニターに指定
した。
建機
公共投資の削減、民間建設需要の長期低迷の影響を受け、最終ユーザーである国内建設業者の購買意
欲が落ち込んだ。これに対応するため系列レンタル会社へ販売先をシフトした結果、建機メーカーの資
産効率が大きく落ち込んだ。今後も最終ユーザーの新車購入意欲が低調に推移する可能性が強く、海外
市場の開拓・深耕も新車の主要市場である欧米の景気減速と海外大手との競争激化の影響を受けること
などから、コマツを A+から A-、新キャタピラー三菱を A-から BBB+、日立建機を A-から BBB へ格下
げした。
◇業種別格付け変更状況(2001 年 1 月∼12 月)
格上げ
格下げ
格上げ
製造業
10
42
非製造業
13
農林・水産
0
1
建設
2
食品
1
1
卸売業
1
パルプ・紙
0
2
小売業
2
化学
2
7
不動産
0
医薬品
1
2
陸運
0
ゴム
0
1
空運
1
窯業
1
0
サービス
1
鉄鋼
1
2
非鉄金属
1
2
(金融機関)
金属製品
0
2
銀行
0
機械
0
7
証券
0
電気機器
0
7
その他金融 1
輸送用機器
1
5
損保
3
精密機械
0
3
生保
2
その他製造業 2
0
(注 1)ノンバンクは金融機関に含む。生保は op 格付け含む。
ホールディングカンパニーの格付けを含む。
格下げ
44
3
2
11
1
3
0
1
11
1
2
4
5
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〔非製造業(金融を除く)
〕
金融を除く非製造業では、2001 年は格上げ 7 社、格下げ 21 社となった。大手スーパーをはじめ、卸
売・小売業での格下げが目立った。また過当競争を繰り広げる家電量販店は大幅な格下げとなった。建
設・不動産では住宅関連を中心に格下げし、鉄道に対する格下げも続いた。
卸・小売業
格上げが 3 社に対して格下げは 13 社。9 月に経営破綻したマイカルは、6 月に長期優先債務格付けを
BBB-から BB-へ、長期債を B+へ引き下げた(なお,経営破綻時に長期優先債務格付けは消滅、長期債は
CC となった)
。12 月にはダイエーを BB-から B+へ格下げした。積極的な出店投資の回収が進まず、財
務面での負担が重荷となっているベスト電器を BBB から BB+へ 2 ノッチ、財務基盤が弱く、店舗競争
力も低下しているマツヤデンキを BB から B へ 3 ノッチ格下げした。外食でも、王将フードサービス
(BBB-から BB-に変更したうえで、レーティング・モニターを継続)などを格下げした。
総合商社では、事業環境悪化の影響を強く受けると判断した丸紅(現在の格付けは BBB+)、ニチメン
(同 BBB-)
、日商岩井(同 BB)を格下げ方向でレーティング・モニターに指定した。
他方、経営立て直し策によって、財務・収益体質の改善が進みつつあることを評価し、ニッセンを
B+から BB-へ、バローを BB+から BBB-へ格上げした。
建設・不動産
格下げが 4 社となり、格上げの 2 社を上回った。住宅需要の先行き不透明感が強まる中で、収益力・
キャッシュフロー創出力の早期改善が望みにくいことを反映し、エス・バイ・エルが BBB から BB、ナ
ショナル住宅産業が A+から A へそれぞれ格下げとなった。有利子負債の大幅な減少により、財務構成
が改善されつつある大成建設は BBB から BBB+への格上げとなった。
〔金融〕
銀行
大規模な再編で事業基盤の再構築を目指した大手銀行だが、統合時の想定をはるかに上回る不良債権
処理負担に立ちすくんでいる。大手銀行は間接金融と株式持合いの中核にあるため、日本経済の構造的
な矛盾が集中する。過剰債務企業処理の過程で相当な負担が見込まれるだけでなく、自己資本に対して
過大な株価変動リスクにさらされている。全国銀行の不良債権処分損は 7 期連続でコア業務純益を上回
っており、クレジットコストを利ざやで吸収できない状態が続いている。事業法人向け貸出市場の縮小
は必至だが、新たな収益源の開拓も進んでいない。8 月には 4 大金融グループのうち三菱東京フィナン
シャルグループ以外の三井住友銀行を AA-から A+、みずほフィイナンシャルグループ、UFJ グループ
を A+から A、あさひ銀行を A から BBB+へ格付けを一斉に引き下げた。
9 月には大和銀行とあさひ銀の統合合意を受け両行の格付けをレーティング・モニターに指定した。
地方銀行については、2 月に福岡銀行を AA-から A+、福岡シティ銀行を A-から BBB+に格下げした。
シティ銀については、さらに 2001 年 3 月決算で大幅な赤字に陥ったことを受けて 6 月に BBB-に格下
げ。11 月には、同行に対する公的資金注入が決まった。地方経済はこれまで、安い地価や人件費を武器
に「日本の工場」としての役割を果たしてきた。しかしこうした地位は今や中国に取って代わられ、地
方の疲弊、空洞化は急速に進んでいる。地方経済を支えてきた公共事業の縮小もあって展望は一段と見
えにくくなっている。ペイオフ解禁も銀行間の信用力格差を拡大しよう。2001 年の格下げは 2 行にと
どまったが 2002 年 1 月 7 日、地銀格付けの見直し着手を公表している。
生命保険
2000 年 10 月の千代田生命保険、協栄生命保険の経営破綻に続き、2001 年 3 月には東京生命保険が
破綻した。保険契約者はそれまで積み立てた責任準備金の少なくとも 90%を保護されるが、予定利率の
引き下げなど何らかの不利益を被ることは避けられないため、格付けを B から CCC に変更した。
株価急落の影響や、歴史的低金利の長期化による逆ざや問題の深刻化など、大手生保の経営環境も深
刻さを増している。相次ぐ生保の破綻を受け、経営内容に不安のある生保に対し顧客による選別も一段
と厳しくなってきた。これらを踏まえ、9 月に住友生命保険、朝日生命保険、三井生命保険の大手 3 社
の格付けを引き下げた。
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一方、破綻生保の再出発の動きも出てきた。千代田生命は、世界的な保険・金融グループである米
AIG の 100%子会社となった。8 月にはこの AIG スター生命保険に対し、AIG グループの高い信用力
を反映して AA+と格付けした。
損保系生保の格付け取得の動きも相次いだ。損保市場の自由化が急速に進み、収益拡大が難しくなる
なかで、大手損保にとって生保事業の重要性が高まっている。三井住友海上きらめき生命保険、あいお
い生命保険、日本興亜生命保険の 3 社について、親会社との経営の一体性や今後の中核事業としての生
保子会社の位置付けを評価し、親会社と同一の格付けである AA+、AA-、AA-をそれぞれに付与した。
損害保険
苦境が続く金融業界のなかで、損保各社は高い信用力を維持してきたが、保険料率自由化後の損害率
上昇や業界再編の進展、海外再保険取引に伴う多額損失の発生など、変化の大きな年だった。
経営環境の急速な変化を受け、損保再編は一気に進んだ。再編第一陣となった日本興亜損害保険とあ
いおい損害保険をともに AA-に、10 月に合併した三井住友海上火災保険を AA+に格付けした。11 月に
は、ミレア保険グループの結成で合意していた東京海上火災保険、朝日生命保険など 4 社が生保事業に
ついて統合計画の見直しを発表。朝日生命は 2002 年 3 月をメドに東京海上の生保子会社に新契約業務
を譲渡し、統合の前倒しを検討している。このため、ミレア保険グループ各社の格付けをレーティング・
モニターに指定した。
11 月 22 日には、中堅損保の大成海上火災保険が海外再保険取引による損失発生で経営破綻した。大
成火災を含め 3 社で発生した損失は、会社自身も直前まで正確な取引状況を把握していないという、極
めてずさんなリスク管理体制に起因するもので、業界全体の信用も大きく傷ついた。破綻に至った大成
火災の長期債を A-から CCC に格下げ(長期優先債務格付けは消滅)するとともに、同じく多額の損失
が発生した日産火災海上保険とあいおい損害保険、日産火災と合併予定の安田火災海上保険を格下げ方
向でレーティング・モニターに指定。損保各社のリスク管理体制について調査を進めている。
証券
2001 年は株式相場が大幅に下落し、証券会社にとって厳しい 1 年だったが、証券市場は中長期的に
みて成長の余地が大きいと考えている。金融機関の業際間の垣根が低くなり顧客争奪戦が激化している
なかでも、大手証券については今後も競争力を維持できるという基本認識に変わりはない。もっとも、
日興コーディアルグループは子会社である日興アセットマネジメントが運用するマネー・マネージメン
ト・ファンド(MMF)が元本割れし、顧客の信頼が揺らいでいるため 12 月 5 日にレーティング・モニ
ターに指定した。
リテールに依存した収益構造となっている準大手以下の証券会社は大手に比べ競争力が見劣りする
が、4 大金融グループとの関係を強めることで経営基盤を強化する動きが目立つ。つばさ証券が UFJ キ
ャピタルマーケッツ証券と、国際証券が東京三菱証券などと合併することで合意しており、それぞれレ
ーティング・モニターに指定して見直し作業を進めている。
ノンバンク
消費者金融業界ではアイフルによるライフ買収、三洋信販によるマイカルカード(現ポケットカード)
買収など、大手による信販・クレジットカード会社の大型買収が相次いだ。いずれも事業領域と顧客層
の拡大が期待されるが、事業計画や資本政策を検討した結果、アイフルの A-を維持し、財務に与える影
響がより大きい三洋信販を A から A-に格下げした。
リース業界では各社の事業基盤の強弱、親会社の信用力や親会社グループにおける位置付けの高低な
どによって信用力格差が拡大する傾向が続いたが、R&I の格付け対象企業は概ね従来の信用力を維持し
た。メーカー系リース会社では、親会社のコア事業に密接に関わり、支援能力の高いリース子会社はグ
ループ内での位置付けも高まっている。こうした点を反映し、リコーリースを A-から A に格上げした。
日立キャピタルは親会社である日立製作所の見直しに併せ、格下げ方向でレーティング・モニターに指
定している。
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◇日本企業の格付け分布状況(2001 年 12 月末現在)
格付け(長期優先債務格付け)01 年
00 年
格付け(保険金支払能力)
AAA
17
18
AAA
AA+∼AA−
82
90
AA+∼AA−
A+∼A−
261
262
A+∼A−
BBB+∼BBB−
250
270
BBB+∼BBB−
BB+∼BB−
61
69
BB+∼BB−
B+∼B−
8
9
B+∼B−
CCC+∼CCC−
1
0
CCC+∼CCC−
合計
680
718
合計
(注 1)格付け分布は年末時点。
(注 2)保険金支払能力格付け分布は op 格付けを含む。
01 年
1
9
8
5
1
0
0
24
00 年
1
5
8
4
2
0
4
24
2.財投機関債
R&I は新東京国際空港公団、日本政策投資銀行をはじめとして、2001 年に 12 法人の財投機関債の格
付けを公表した。財投機関債とは、特殊法人などの財政投融資(2001 年 4 月以降は財政融資)資金を
使って事業を行う機関(財投機関)が発行する、政府保証のない公募債券で、2001 年度中に 20 機関が
総額 1 兆円強を発行する計画だ。R&I では財投機関債の格付けにあたって「政府との一体性」と「事業
体としての債務返済能力」を相互に関連付けて評価し、総合的に判断している。
財投機関債は財投改革の一環として新たに導入された。財投機関は国の政策の執行機関であるがゆえ
に、元になる政策の優先順位や政策目的の達成度合い、経済・社会的諸条件の変化によって財投機関の
政策上の位置付けが変わる可能性がある。R&I では「発行体となる財投機関と政府との関係は変化する
可能性がある」ということを基本認識とし、将来の政策上の重要性を考慮し、現時点で想定しうるリス
クを格付けに織り込んでいる。
財投機関債の発行と並行して、特殊法人改革が進んでいる。2001 年 12 月には「特殊法人等整理合理
化計画」が閣議決定され、2006 年 3 月までの集中改革期間内の実施に向けて今後、法改正を含む必要
な手続きが行われる。事業や制度、組織が変わるという意味では政府との一体性が議論の対象になるが、
ただ、今回結論が出た特殊法人については、R&I が格付けの過程でリスクとして織り込んできているた
め、格付けを変更する必要性は小さいと判断している。閣議決定で改革の結論が先送りとなった政府系
金融機関、新東京国際空港公団については今後の議論の行方を見守り、格付けで想定した認識を変更す
る必要があれば格付けに反映していく。
◇R&I の財投機関債格付け(2001 年 12 月末現在)
法人名
格付け
初回公表日
新東京国際空港公団
AA−
2001 年 4 月 23 日
水資源開発公団
AA
2001 年 6 月 11 日
運輸施設整備事業団
AA−
2001 年 6 月 11 日
日本政策投資銀行
AAA
2001 年 6 月 25 日
社会福祉・医療事業団
AA
2001 年 7 月 23 日
日本鉄道建設公団
AA
2001 年 8 月 7 日
国際協力銀行
AAA
2001 年 8 月 8 日
日本育英会
AA−
2001 年 9 月 11 日
農林漁業金融公庫
AA
2001 年 9 月 13 日
日本私立学校振興・共済事業団
AA
2001 年 9 月 28 日
公営企業金融公庫
AAA
2001 年 11 月 5 日
帝都高速度交通営団
AA
2001 年 11 月 16 日
(注)2002 年 1 月に中小企業金融公庫を AA+、都市基盤整備公団を A+に格付け。
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3.地方債
地方自治体の発行する債券、借入金である地方債の信用力に総じて下向きの圧力が強まっている。地
方債を公募発行する 28 団体のうち大阪市の格付け、財務ランクと京都府、京都市の財務ランクを引き
下げた。引き上げたのは神奈川県の財務ランクのみ。神奈川県の変更は交付税増額で一息ついたに過ぎ
ない。日本経済が深い闇から抜け出す道筋は見えず、格付けを維持した残りの自治体も財政の余裕度は
押しつぶされる傾向にある。過去の景気対策に伴う公共投資などが響き債務残高は高水準が続く。各自
治体とも歳出削減に取り組むが財政状況の改善につなげるのは容易でない。
2001 年は地方債を取り巻く環境の変化を象徴する動きが多かった。ひっ迫する国の財政再建のため
首相が交付税減額を表明し、総務省は 28 団体一律に設定している公募地方債の発行条件を市場実勢に
合わせて変更する検討に入った。国も地方も民間資金の支えなくして財政は回らず、市場からの信認維
持に腐心する表れだ。財政危機の続く大阪府が 8 月に発表した財政再建計画は自力再建がいかに難しい
かを印象づけた。12 月には市場で自治体との一体性が強いとみられてきた北海道住宅供給公社が金融機
関に金利減免を要請した。制度の枠組みを変えることなく、日本全体の財政構造に走り始めた亀裂を修
復するのは難しい。国・地方の財政制度がどう変化し、地方債の評価にどう響くか見守る。
◇2001 年に発表した公募地方債格付け
16 都道府県
北海道
宮城県
茨城県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
新潟県
長野県
静岡県
愛知県
京都府
大阪府
兵庫県
広島県
福岡県
Op 格付け
AA-op
AAop
AAop
AA+op
AA+op
AA+op
AAop
AA+op
AAop
AA+op
AAop
AA+op
AA-op
AA-op
AA+op
AAop
財務ランク
e+
d+
c
c+
d+
b+
d+→c
c+
d
c
d+
b→c+
e
d
c
d+
12 政令市
札幌市
仙台市
千葉市
横浜市
川崎市
名古屋市
京都市
大阪市
神戸市
広島市
北九州市
福岡市
Op 格付け
AA+op
AA+op
AA+op
AAop
AAop
AAop
AA-op
AAop→AA-op
AA-op
AAop
AA+op
AA-op
財務ランク
B
B
c+
c+
c+
c+
d+→d
d→e+
E
d+
B
d+
4.非居住者・ソブリン
2001 年の非居住者格付けの変更は 17 件。このうち、格上げ件数は 5 件と 2000 年とほぼ並ぶ一方、格
下げは前年の 7 件から 12 件に増えた。格上げした 5 件はいずれも欧州のソブリン銘柄。ロシア向けの
輸出が好調なウクライナは、経済指標が大幅に改善し、CCC+から B-に格上げした。このほか、欧州連
合(EU)加盟に向けて構造改革が進んだスロバキア共和国(および中央銀行)を BB+から BBB-に、財
政健全度が増したアイルランドとスウェーデンをそれぞれ AA+から AAA に格上げした。
格下げ 12 件のうち 5 件は内需下支えのために財政赤字の拡大傾向が続く中国のソブリンと、中国銀
行などの金融機関。米系では業績の低迷が続くゼロックスと、オフバランス取引を駆使した大規模な粉
飾決算などから 12 月に経営破綻したエンロンの大幅な格下げが目立った。欧州では住宅ローン取り扱
いをめぐり、金融機関の競争が激化したことなどから収益が悪化しているフランス中央住宅金融公庫を
AA から AA-に、また 9 月の米国での同時多発テロでさらに業績が悪化したスカンジナビア航空の格付
けを 2 年連続で下げた。中東では財政再建のめどが立たないレバノンを BB+から BB に格下げした。
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格付けは信頼すべき情報に基づいたR&Iの意見であり、その正確性及び完全性は必ずしも保証されてはいません。格付けは原則として発行者から対価を受領して行ったものです。
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NEWS RELEASE
3 月に日本を含む主要 7 カ国(G7)各国の格付けを維持したが、日本以外の各国の格付けの方向性を
「安定的」とする一方で、日本の格付けの方向性は「下向き」とした。財政再建や金融システムの強化な
ど経済の抜本的な構造改革が遅れている。こうした改革に伴う痛みに耐えていくだけの経済・社会基盤
は備えていると判断しているものの、これまで大胆な改革を回避してきたコストが大きくなり、実現に
向けたハードルもますます高くなってきていることを格付けに反映した。
非居住者による円建て外債(サムライ債)の発行総額は、2000 年に過去最高の 2.2 兆円を記録したの
に対し、2001 年は 1.6 兆円にとどまった。この背景にはトルコやアルゼンチン(いずれも R&I の格付
けなし)の経済危機や、エンロンなど大手企業の経営破綻などで、サムライ債に対する警戒感が増した
ことがある。
R&I が新たに格付けしたサムライ債は 14 件(MTN を含めると 17 件)
。ソブリン発行体が 2000 年の 3
カ国から 2001 年は 6 カ国(ウルグアイ、南アフリカ、タイ、チュニジア、クロアチア、ブラジル)に
増加した。公的企業では韓国産業銀行、韓国コンテナ埠頭公団、国立経済社会開発銀行(ブラジル)の
3 件。いずれも BB から BBB レンジでの起債となった。一方、民間ではメリルリンチ、モルガン・スタ
ンレー、ベア・スターンズの米系金融会社 3 社およびドイツテレコム、ルノーが A から AA レンジで起
債した。
◇非居住者格付け動向
格 上 げ
格 下 げ
合 計
1999 年
23
20
43
2000 年
6
7
13
2001 年
5
12
17
◇非居住者発行額と新規格付け 出所:日本証券業協会、R&I
1999 年
2000 年
2001 年
サムライ債発行額
(単位:10 億円)
646
2,234
1,552
R&I 新規格付け社数*
8**
12**
17
* サムライ債、MTN、CP 含む。
**既存のサムライ債に格付けしたもの等を含めると 1999 年は 30 件、2000 年は 37 件、2001 年は同じ。
◇ソブリン格付け(2001 年 12 月末現在)
外貨建て
長期債務格付け
AAA
AA+
AA
AA−
A
A−
BBB+
BBB
BBB−
BB+
BB
BB−
B−
国 名
アイルランド、アメリカ合衆国、イギリス、オーストリア、
オランダ、シンガポール、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、
日本、ノルウェー、フィンランド、フランス、ルクセンブルグ
イタリア、オーストラリア、カナダ、スペイン、ニュージーランド、
ベルギー
台湾、ポルトガル
ギリシャ、香港
スロベニア、中国
チェコ、ハンガリー
韓国、チュニジア、ポーランド、マレーシア
インド、ウルグアイ、クロアチア、タイ、南アフリカ
スロバキア、フィリピン、メキシコ
モロッコ
レバノン
ブラジル
インドネシア、ウクライナ
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5.ストラクチャードファイナンス
2001 年に R&I が新規格付けを公表した資産担保証券などストラクチャードファイナンス案件
(ABCP
格付けを除く)は 92 件で、発行金額に置き直すと 1 兆円弱となった。対外公表をしない非公表案件を
含めると、約 350 件、約 1.9 兆円に達する。以下では、主に 2001 年に新規格付けした公表案件の中か
ら代表的案件や出来事をピックアップし、仕組みの概説や格付けの論点などについて整理した。
◇裏付け資産別発行実績(左円グラフ:発行金額ベース、右円グラフ:件数ベース)
その他(手形、PFI
等)
17%
売掛債権等
0%
その他(手形、PFI
等)
45%
CLO/CBO等
3%
CLO/CBO等
1%
リース/クレジット
46%
不動産/入居保証
金
23%
リース/クレジット
57%
売掛債権等
0%
不動産/入居保証
金
8%
住宅金融公庫の担保付き債券に格付け
2001 年は財投機関債の発行が始まった年であるが、財投機関の中には、住宅金融公庫のように仕組
みを駆使することによって自らの信用力を上回る(ノッチアップする)ことが可能な担保付き債券を発
行したところがあった。
住宅金融公庫は、ストラクチャードファイナンスで一般的な仕組みであるバンクラプシーリモート
(倒産隔離)な SPC(特別目的会社)や信託受益権を介しての真正売買・真正譲渡方式をとらずに、公
庫保有の住宅ローンプール信託受益権を担保に公庫自身が発行体として債券を発行した。当該担保付き
債券には AAA の当初格付けが付与されており、期中においても担保となる信託受益権の超過担保等を
理由に公庫自身の信用力からノッチアップが可能と R&I では考えている。
小泉政権のもとで特殊法人改革が進行しており、住宅金融公庫は他の特殊法人に比べて改革の議論が
進んでいるが、R&I では、住宅金融公庫という法人が消滅した場合でも、住宅ローン証券化支援を行う
独立行政法人に公庫債の債務が承継される場合は、独立行政法人にも会社更生法の適用がないことを理
由に引き続きノッチアップが可能と判断している(9 月 27 日公表「住宅金融公庫債券の格付けの視点
について」を参照のこと)
。
R&I・フィッチ初の共同格付け――大手信販会社ライフの証券化案件
2000 年 5 月に会社更生法適用を申請した大手信販会社ライフの個人向け債権を裏付け資産とする日
本最大の ABS(2450 億円)が 10 月に発行された。当案件には内外 4 格付機関の格付けを付与し、R&I
はフィッチと初の共同格付けを行った。ライフの再生に関しては、2000 年 10 月に大手消費者金融会社
のアイフルがスポンサーとして名乗りをあげ、2001 年 3 月に、複数の金融機関からノンリコースロー
ンによるつなぎ融資を受けた。本件はこのローンの対象資産及びその後発生した債権を証券化したもの
である。アイフルにとっては、証券化を出口戦略とした LBO(被買収企業の資産を担保とした資金調
達)になる。
裏付け資産は個品あっせん、総合あっせん、カードキャッシング及びカードローンの 4 種の債権。こ
の債権をもとに AAA から BBB までクラス分けされたシリーズ優先受益権が組成され、SPC に譲渡さ
れる。SPC では裏付け資産毎のシリーズ優先受益権を格付けごとに集約し、それを裏付けとする社債を
発行する。このため、最終的に発行体から発行されるノートはこの 4 種の債権を裏付けに発行されるこ
とになる。
通常、こういう大数アプローチによる証券化案件においては、単一の裏付け資産を裏付けとするケー
スが一般的だが、本件は複数の裏付け資産を裏付けとしている点で稀有な案件といえる。
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初のサービサー格付け
1999 年 2 月の「債権管理回収業に関する特別措置法」(サービサー法)施行により、従来弁護士にし
か認められていなかった債権回収業が民間業者(サービサー)にも開放された。9 月 1 日にはサービサ
ー法が改正施行され、サービサーの取り扱い可能債権の幅も広がっている。さらに日本経済における不
良債権処理問題への関心とあいまって、経済合理性に基づき不良債権からの回収を図るサービサーへの
注目度が高まり、その回収能力をどう評価するのかという点にも関心が集まった。
R&I は 6 月 25 日にサービサーの債権回収能力を 5 段階の新たな符号体系で評価する「サービサーの
評価手法について」を公表した。サービサーの回収能力が、不良債権の証券化案件の信用力やリターン
を大きく左右することから、サービサーの評価は投資情報としても極めて有用なものとなる。8 月には
サービサー格付け第 1 号案件として、消費者金融大手の三洋信販 100%子会社である三洋信販債権回収
(三洋信販サービサー)を、無担保債権スペシャルサービサーとして 5 段階評価の上から 2 番目である
SR2(優れている)と格付けした。
R&I ではサービサー評価にあたって、過去の債権回収実績だけでなく、債権回収の過程や人的資源を
重要視する。三洋信販サービサーのケースでは、無担保債権買取の際の厳格な社内査定プロセス、債務
者との信頼関係構築をもとに回収を行う独自の交渉術、親会社である三洋信販で豊富な債権回収経験を
もつ人材が在籍していること、などを評価している。
◇サービサー格付けの符号と定義
SR1
SR2
SR3
SR4
SR5
極めて優れている
優れている
十分である
やや劣る
劣る
〔主要分野の傾向〕
(1)リース料債権、割賦債権、手形、消費者ローン ABS の傾向
リース料債権の分野では、2000 年と同様に地方銀行のリース子会社の債権証券化に多数の格付けを
行ったほか、2001 年は合計して 40 件程の案件を格付けした。また、割賦債権の分野はオートローンを
中心に 50 件弱の案件に格付けを行っている。
特徴的な案件の一つとしては、メンテナンス特約付きのリース契約によるリース料債権を日本で初め
て証券化した「ディーエフ・ツー・ファンディング特定目的会社」債が挙げられる。NEC グループの
コンピューターなどに対する保守サービスの履行能力が評価ポイントとなるが、NEC の長期優先債務
格付けは現時点で A+であり、保守サービスの履行能力に問題はない。しかし、将来において保守サー
ビスの提供が困難になった場合、保守サービスの不履行を理由としてリース料債権の回収率が低下する
可能性は否定できない。
手形債権の証券化では、1999 年 11 月のトステムが保有する手形債権の証券化をはじめとして、公表、
非公表合わせて 20 先超のオリジネーターの証券化を手掛けてきており、案件数は 2001 年だけでも 100
件を超えている。案件は年々増加傾向にあるうえ、スキームの多様化、案件組成期間の短縮化が進んで
いる。また、消費者金融債権の証券化では、上記ライフのほかに 11 月にはレタスカード、12 月には三
洋信販が保有する債権の証券化を格付けした。
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(2)CMBS と PFI 格付け
CMBS(商業用不動産向けローン担保証券)では、3 月にスターインベストメント特定目的会社が発
行する A 号および B 号特定社債を格付けした。オリジネーターである不動産の賃貸・売買仲介業を営
むスターツとその連結子会社が保有していた 3 件の賃貸マンションを裏付け資産としており、各特定社
債の発行金額は保守的な物件の換価価値に目標格付け別の LTV を乗じた金額の範囲内にある。
8 月にはフォレスター特定目的会社(フォレスター)の第1回特定社債を格付けした。フォレスター
は「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」(旧 SPC 法)に基づき設立されている。大手
スーパーのイオン(旧ジャスコ)は、1999 年 9 月から 2000 年 8 月にかけてフォレスターの特定約束手
形による借入金をもって、順次、計 5 件のショッピングセンターを建設してきた。本案件はその特定約
束手形を特定社債にリファイナンスするために組成されている。特定社債の元利金支払いは、基本的に、
フォレスターがイオンから受け取る賃料収入およびイオンと締結したトータルリターンスワップ契約
に依存する。
他にも、千葉県稲毛区に所在するショッピングセンター(ワンズモール)からの賃料収入を実質的な
裏付け資産とする「ゼルコヴァ・プロパティー・ファイナンス・インク」債を 9 月に格付けしている。
PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)では、神奈川県立保健医療福祉大学 PFI 事業に
関わる事業主体(エスピーシー・ピーエフアイ神奈川一株式会社)に対する協調融資について格付けし
た。R&I のプロジェクトファイナンス・PFI 事業に対する格付けは、2000 年 11 月の金町浄水場常用発
電 PFI モデル事業に続いて 2 件目である。
(3)資産担保証券のデフォルトと格付けの変更
大手スーパーのマイカルが 9 月 14 日に東京地方裁判所に民事再生法にもとづく再生手続開始の申し
立てを行った影響で、マイカルの信用力に依存する「クレジットリンク型」の資産担保証券の格付けを
マイカルと同様、CC に下げた。また、マイカル債を組み込んだ 4 発行体の CBO のうち、2 発行体の
CBO の格付け維持をする一方で、残りの 2 発行体の CBO については格下げした。CBO ごとに残存年
数やマイカル債の組み入れ比率などが異なるため、格付けに格差を設けた。
その他、中堅ホームセンターのベターライフが 1 回目の手形不渡りを出した後の 3 月 19 日に大阪地
方裁判所に民事再生法の適用申請を行ったことをきっかけに、ベターライフ債を組み込んでいた CBO
も格下げしている。
◇2001 年発表の R&I ストラクチャードファイナンス・クライテリア一覧
2 月 20 日公表「RMBS の格付け手法について」
3 月 2 日公表「日本版 REIT の格付け手法について」
3 月 23 日公表「CBO のモニタリング手法について」
6 月 25 日公表「サービサーの評価手法について」
10 月 15 日公表「証券化案件におけるスワップ・カウンターパーティーの適格基準」
11 月 12 日公表「ローンの格付け手法について
−ストラクチャード・ファイナンスを中心に−」
11 月 30 日公表「シンセティック CDO 格付け時の論点について」
以上
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