Cloudsat データから求めた雲・降水特性の統計解析 山本宗尚 *・樋口篤志・早崎将光 千葉大学環境リモートセンシング研究センター はじめに データ 全球の雲分布は,地球放射収支に対して大きな影響を及ぼす.さらに,雲種による放射特性の ・Cloudsat ・TRMM 違いにより,加熱・冷却効果が異なることから,雲種の精確な判別が重要である.従来,静止気 CPR (Cloud Profiling Radar) PR (Precipitation Radar) 象衛星に搭載された可視・赤外センサから得られたデータを用いた雲種判別が行われてきたもの 周波数:94 GHz 周波数:13.8 GHz の,雲頂高度や光学的厚さの情報のみの判別には限界があった.いっぽう,降雨タイプにより雨 水平・鉛直分解能 :1.3 km / 240 m 水平・鉛直分解能:5 km / 250 m 滴粒径分布が大きく異なることは古くから知られている.レーダによる精確な降水量推定のため, 軌道:太陽同期(毎日 01:30, 13:30 LT 頃) 軌道:太陽非同期(熱帯 2 日,中緯度 1 日 1 降水タイプの分類手法が発展し,熱帯降雨観測衛星(TRMM)では,降水の三次元分布から降雨 回程度) - 2B-GEOPROF タ イ プ を 推 定 す る ア ル ゴ リ ズ ム が 開 発 さ れ た.2006 年,雲 レ ー ダ(CPR)が 搭 載 さ れ た - PR 2A23 CPR の観測値と MODIS,ECMWF データ Cloudsat 衛星が打ち上げられ,雲の鉛直分布を得ることが可能となり,雲の内部構造を元にし 降水特性に関するパラメータを収録したもの. を組み合わせ,レーダ反射強度,有意なエコー た雲種判別が可能となった.本研究では,CPR による雲種判別の初期段階として,PR2A23 ア エコー頂高度データを使用. フラグ,雲の有無の鉛直分布を収録したもの. ルゴリズムを CPR に適用し,各パラメータ抽出の妥当性を検証した. - PR 2A25 - 2D-CLOUDSAT-TRMM 減衰補正を施したレーダ反射強度および降雨 Cloudsat と TRMM が 50 分以内に交差し 強度データを使用. た デ ー タ を 同 一 フ ァ イ ル に ま と め た も の. Cloudsat データによる雲・降水特性の抽出には,TRMM PR2A23 V-method のアルゴリズ Cloudsat の軌道方向に対する PR データを - VIRS(Visible / Infrared Scanner)1B01 ム (Awaka et al. 2007) を Cloudsat 2B-GEOPROF プロダクトのレーダ反射強度データに適 nearest neighbor 法で挿入している. 赤外(10.8μm)チャンネルから得られた輝 用した.ただし,2A23 の 0 ℃高度推定で用いられている地表面温度の気候値データの代わり 度温度データを使用. に JRA25 の鉛直気温・ジオポテンシャル高度データを用い,TRMMPR と Cloudsat CPR の 周波数の違いによる反射特性の違いを考慮して,一部パラメータ算出に際して閾値を変更した. 降水を伴わない雲 表 1 に 雲・降 水 特 性 パ ラ メ ー タ の 一 覧 と 変 更 点 を 示 す.両 者 の パ ラ メ ー タ の 比 較 に は 降水を伴う雲 2D-CLOUDSAT-TRMM プロダクトを,全球の統計解析には 2B-GEOPROF プロダクトを入 40 8000 力データとして用いた. 雲・降水特性の抽出方法 TRMM/PR rainFlag rainType freezH HBB stormH Cloudsat/CPR cloudFlag cloudType freezH HBB cloudH 変更点等 CPR Cloud mask から certain, possible を特定 V-method のみ適用.Zmax>15dBZ を convective JRA25 のデータを使用 freezH 1km,Zmax>10dBZ,上方への Z の減少率を下方修正 CPR Cloud mask を使用 Cloudsat から求めた雲・降水特性の全球分布 (a) 雲頂高度(日中通過) 30 6000 20 4000 Latitude [deg] 表 1:PR2A23 に対応する主な雲パラメータの一覧と変更点. Number of samples Cloudsat と TRMM の同時観測データ比較 2000 0 −20 −10 0 10 20 10 0 −10 −20 CPR Z at stormH [dBZ] 図 1 TRMM PR エコー頂高度での Cloudsat CPR レーダ反射強度の出現数分布. −30 −40 (c) 降雨頂高度(日中通過) 85 90 95 100 Frequency [%] 図 2 海 上 に お け る CPR の み(黒), CPR か つ PR(白)が 捉 え た 雲・ 降 水 ピ ク セ ル の 緯 度 別 出 現 頻 度. 積み上げ棒グラフで表示. 巻雲・積雲の抽出 20°S-20°N 20 6400 16 3200 12 1600 800 8 4 400 200 0 25 50 75 Frequency [%] 100 12800 6400 16 Altitude [km] (d) 降雨頂高度差(日中夜間) Altitude [km] (b) 雲頂高度差(日中夜間) 25°N-55°N 20 12800 3200 12 1600 800 8 4 400 200 0 25 50 75 100 Frequency [%] 図 6 熱帯(20 S-20 N,左)および北半球中緯度(25 N-55 N,右) 海洋における cloudH と地上までの雲ピクセル充足率の出現 数分布. 図 3 20072009 年 68 月の Cloudsat レーダ反射強度データから求めた (a) 日中通過の平均雲頂高度,(b) 平均雲頂高度の差(日 中夜間),(c) 日中通過の平均降雨頂高度,(d) 平均降雨頂高度の差(日中夜間)の分布. TRMM データから求めた雲・降水の日周変化 (a) IR 輝度温度の最小地方時刻 (b) PR 時間最大降水量の地方時刻 雲・降水特性抽出結果の事例 [km] 15 (a) TRMM /PR 12 (a) 降雨頂高度 / 雲頂高度の中央値(日中通過) (b) 降水を伴う雲の出現割合(日中通過) [dBZ] 40 35 9 30 6 25 3 20 0 図 4 19982003 年 68 月の TRMM 観測データから求めた (a) VIRS IR 最小輝度温度の地方時刻,(b) PR 最大降雨強度の 地方時刻(Yamamoto et al. 2008 Fig. 1). others conv. stra. 18 15 12 9 6 3 0 (b) Cloudsat / CPR 15 others conv. stra. 30 20 10 0 10 20 図 7 2007 年 9 月 1 日 19:25UTC 前後に 16 N 96 E 付近で交 差した (a) TRMM PR および (b) Cloudsat CPR のレーダ 反射強度(コンター),freezH および freezHJRA(点線), BBH(太実線),raintype および cloudtype(上部実線). 図 5 20072009 年 68 月に日中を通過した Cloudsat レーダ反射強度データから求めた (a) 雲頂高度に対する降雨頂高度の割合 の中央値,(b) 降水を伴う雲の出現割合. (mkyamamoto@faculty.chiba-u.jp)
© Copyright 2024 Paperzz