当社がご提案する「電気抵抗増大材を用いた新・抵抗溶接技術」 1. 新技術の骨子; ① 抵抗溶接(スポット溶接)の時、鋼板はすぐ熱溶着してしまい、電気抵抗が低 下する。 ② そのため溶接される鋼板間のなじみ性がよくなり溶接部の電気抵抗が下が るため、大電流で充分な通電時間を与えないと必要な発熱が得られず満足 な溶接点が得られない。 ③ 当社は従来の電気抵抗増大材を用いたスポット溶接技術を進化させたシー ズを持っており、下記の新技術をご提案する。 ④ 従来の技術はバインダーにアルミナ粉末を混ぜて鋼板の間に塗布し、2枚の 鋼板間の電気抵抗を増大させ、溶接点を発熱させることを意図していた。 ⑤ 当社は新しいバインダーとアルミナ、シリカなどのナノ粉末による電気抵抗増 大材を開発している。これらのナノ粉末は溶接時の接触抵抗を増大させるこ とが出来るばかりでなく、溶接後にナノ粉末が両鋼板中に熱拡散し溶接点の 異物とならず、溶接強度を増大させることが可能である。 ⑥ ご要望により新しい電気抵抗増大材をご試験いただければ幸いである。 ⑦ 従来の旧技術発表時には、ナノテクノロジーが発達しておらず、大きな粒径 のアルミナ粉末が用いられていたので、上記の効果は期待できなかったと思 われる。今回溶接点の強度の増大と溶接の省エネルギーを図る。 2. 図面 当社がご提案する「電気抵抗増大材を用いた新・抵抗溶接技術」 3.詳細説明 本新技術の背景、内容、効果の一例は次の通りである。 (背景) 望まれていた各種亜鉛めっき鋼板への効率的なスポット溶接法および溶接点 のモニタ法 近年、自動車、家電製品、屋外設置機器の広範な分野で、耐食性に優れている亜 鉛めっき鋼板、あるいは高耐食性・高強度・軽量という特徴を兼ね備えた亜鉛めっき 高張力鋼板などをスポット溶接して使用するようになっている。これらの鋼板は優れ た機能を有しているが、スポット溶接を行う際には大きな電力を加えないと良好な溶 接ができない。この原因としては、 (1)鋼板表面層の亜鉛が下地の鋼よりも柔らかなため、溶接される鋼板間のなじみ性 が良くなり、接触面積が増大する、 (2)亜鉛自体の導電性が高いことにより溶接部の電気抵抗が上がらず、そのため大 電流で十分な通電時間を与えないと必要な発熱が得られず、満足な溶接点が形成さ れない、という点が挙げられる。 そのため、これらの鋼板をスポット溶接する際は、裸鋼板を溶接する時に比べて、 溶接時の電流を 25~50%増加させたり、通電時間を 50~100%増加させるなどの方法 により対応していたが、消費電力が大きくなり、それに伴う大きな発熱のため電極の 損耗が激しくなる、などの問題があった。 また、裸鋼板では、スポット溶接における溶接点の良否の判定に溶接電極間の全 抵抗値(電極自体の抵抗、鋼板の抵抗および接触界面の抵抗の和)の変化を測定す る方法が採用されている。しかし亜鉛めっき鋼板では過度の発熱により、電極の摩耗 や溶接している鋼板の温度上昇が激しく、鋼板部分の電気抵抗が大きく変化してしま うため、抵抗値の変化による溶接の良否判定はできなかった。このため、各種亜鉛 めっき鋼板の溶接点の良否の判定は、被検体を抜き取り、タガネを使用して剥離試 験を行う方法によるものが主流であった。この判定方法では不良部が発見された場 合、生産ラインをいったん止め、問題ない溶接点が発見されるまで全ての接着点の 剥離試験を行うため、作業に時間がかかるなどの問題があった。このため、これら鋼 板に対し良好な溶接を行うと同時に溶接の良否を判定できる溶接法の開発が待望さ れていた。 当社がご提案する「電気抵抗増大材を用いた新・抵抗溶接技術」 (内容) 電気抵抗増大材を用いることで良好なスポット溶接を実現 本新技術は、各種亜鉛めっき鋼板のスポット溶接において、重ね合わせた鋼板間 に電気抵抗増大材を配置して溶接性を向上させると同時に、溶接電極間の抵抗値を モニタすることで溶接と同時に溶接点の品質管理を行うものである。 本新技術によるスポット溶接は以下の通りである。まず、電気抵抗増大材(新バイ ンダーに エス・ジーケイのナノ・アルミナ粉末又はシリカ粉末を分散させたもの)を溶 接する鋼板の接合面に塗布する。鋼板間にある電気抵抗増大材は鋼板同士の接触 を保ちつつ板間の電気抵抗を高めるため、溶接部の合わせ面に発熱が集中し十分 な径のナゲットが形成され良好な溶接点を得る。このように、発熱が合わせ面の限ら れた領域に集中する結果、従来の 1/3 以下の通電時間で溶接でき、それに伴い消費 電力の低減や電極の劣化が抑制される。 また本新技術では、溶接時の発熱量が少ないことからナゲット形成に伴う鋼板間抵 抗の変化を正確に測定することが可能になる。このため、本新技術によるスポット溶 接における溶接点の良否判定は溶接点に電極間の抵抗値の変化をモニタする方法 で行う。さらにモニタの内容からナゲットの成長具合や溶接電極の磨耗具合が判断 できることから、適時に通電時間の延長、溶接電流増など溶接条件の制御や電極の 研磨が行え、ナゲットの大きさを一定水準以上に保つことができる。 (効果) 裸鋼板に比べて溶接性が劣る各種亜鉛めっき鋼板での利用 本新技術には次のような特徴がある。 (1) 各種亜鉛めっき鋼板の溶接において、溶接性が著しく向上し、短い通電時間で良 好な溶接点が得られる。 (2) 溶接と同時に全溶接点の溶接状態の管理ができるため、検査工程が省略できる と共に、適応制御による自動運転を可能とした。 (3) 電気抵抗増大材のバインダーとナノ粉末を選択することにより、溶接継手をウェ ルド・ボンディング(注 1)もしくはウェルド・シーリング(注 2)にすることができる。 本新技術により板厚 0.8mm の亜鉛めっき鋼板 2 枚合わせのスポット溶接に必要な 通電時間は、従来の約 12/60 秒から 4/60 秒以下まで減少した。また同板合わせで 電極寿命試験(一組の電極で連続打点)を行い本開発により得られた溶接品質モニ タの判定と、実際に切断しナゲット径を測定した結果とを比べたところ、モニタの判定 の正解率は新品の電極を使用した場合で 100%、再生した電極を使用した場合で 99.7%であった。 新技術の導入に当たっては電気抵抗増大材のコスト並びにその板間への配置の 当社がご提案する「電気抵抗増大材を用いた新・抵抗溶接技術」 ための費用等が必要となるが、一方で電気料、検査費用、仕上工数などの費用が削 減できるため、全体としてはコストダウンの可能性がある。従って、本新技術は自動 車、家電製品、屋外設置機器などの製造における各種の亜鉛めっき鋼板のスポット 溶接において広く利用が期待される。 (注 ウェルド・ボンディング:バインダーに接着剤を使用して溶接することにより、スポ 1) ット溶接と接着の併用継手とし、接合強度を上げる接合方法 (注 ウェルド・シーリング:バインダーにシール材を使用して溶接することにより、継 2) 手にシール機能を持たせ外部からの水の侵入などを防ぐ接合方法 以上です。 エス・ジー・ケイ有限会社 代表取締役 鈴木 建一 〒259-1211 神奈川県平塚市ふじみ野2―20-1 TEL;0463-58-2696 E-MAIL: ks@et-dot.com
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