メモ 統計グラフと質的データの要約 第7回:多重クロス集計表における第3の変数 多重クロス集計表の第3の変数および交互作用を理解できる 下川敏雄 山梨大学 大学院医学工学総合研究部 1 第3の変数とその影響の分類(1):擬似的な関係 ある,調査で「高血圧の人ほど年収が高いという」という研究成果が与え られた. 高血圧 高い 高くない 計 年収 (700万円) 以上 未満 385 240 625 2,115 2,260 4,375 700万円以 上の割合 合計 2,500 2,500 5,000 0.154 0.096 高血圧の人は年齢が高いほど多い.また,年収も一般的には年齢が高いほ ど高い.この事例の年齢のように実際には目標(年収)に影響を与える要因を 第3の変数という. 高血圧 年齢が高い ほど高血圧 の人が多い 年収 第3の変数 (擬似的な関係) 年齢が高いほ ど一般的に年 収も多い 年齢 2 メモ 擬似的な関係を多重クロス集計表で評価する 年齢層 高血圧 メモ 年収 (700万円) 以上 未満 合計 20-29歳 高い 高くない 計 15 (0.05) 60 (0.05) 75 (0.05) 285 (0.95) 1,140 (0.95) 1,425 (0.95) 300 (1.00) 1,200 (1.00) 1,500 (1.00) 30-39歳 高い 70 (0.10) 630 (0.90) 700 (1.00) 高くない 80 (0.10) 720 (0.90) 800 (1.00) 計 150 (0.10) 1,350 (0.90) 1,500 (1.00) 高い 300 (0.20) 1,200 (0.80) 1,500 (1.00) 高くない 100 (0.20) 400 (0.80) 500 (1.00) 計 400 (0.20) 1,600 (0.80) 2,000 (1.00) 40-49歳 各年齢層で高血圧に関係なく年収700万円以上の割合は一定である. すなわち,高血圧と年収には関係なく,年齢層という第3の変数(年齢が高 いと高血圧が多くなる,年齢が高いと年収が多い)によって,見かけの連関 関係が認められた.このように,原因と結果のそれぞれに第3の変数が影響 を与えることで見かけの連関が認められることを擬似的な関係という. 3 第3の変数とその影響の分類(2):媒介的な関係 ある調査で,性別と自動車事故経験の有無が調査された.その結果,男性 のほうが女性よりも多く事故に遭遇していた.男性のほうが乱暴な運転を するからだろうか... 性別 男性 女性 計 事故経験 あり なし 合計 1,075 690 1,765 4,000 4,000 8,000 2,925 3,310 6,235 事故経験 ありの割合 0.269 0.172 一般に男性のほうが自動車を運転する機会は多い.また,自動車を運転す るほど事故に遭遇するリスクはあがる. 性別 一般に男性の ほうが自動車 を運転する機 会が多い 自動車事故 第3の変数 (媒介的な関係) 自動車を運転 するほど事故 に遭遇するリ スクは高い 走行距離 4 メモ 媒介的な関係を多重クロス集計表で評価する メモ 走行距離 多い 少ない 性別 事故経験 あり なし 合計 男性 女性 計 1,050 (0.30) 558 (0.31) 1,608 (0.30) 2,450 (0.70) 3,500 (1.00) 1,242 (0.69) 1,800 (1.00) 3,692 (0.70) 5,300 (1.00) 男性 25 (0.05) 女性 132 (0.06) 2,068 (0.94) 2,200 (1.00) 計 157 (0.06) 2,543 (0.95) 2,700 (1.00) 475 (0.95) 500 (1.00) 各走行距離で性別に関係なく事故経験の割合は一定である(走行距離 が多いほど事故経験の割合が高い). すなわち,性別と事故経験には関係なく,走行距離と事故経験に連関性が 認められた(走行距離が多いと事故経験の割合が高い).このように,原因と 結果のあいだに媒介となる変数(媒介変数)が影響を与えることで見かけの 連関が認められることを媒介的な関係という. 5 交互作用とは何か この3重クロス集計表は2種類の映画の満足度を性別毎に集計したものである. 性別 男性 女性 種類 満足度 面白い 計 面白くない 映画A 342 (0.722) 132 (0.278) 474 (1.000) 映画B 239 (0.486) 253 (0.514) 492 (1.000) 計 581 (0.601) 385 (0.399) 966 (1.000) 映画A 215 (0.491) 223 (0.509) 438 (1.000) 映画B 382 (0.696) 167 (0.305) 549 (1.000) 計 597 (0.605) 390 (0.395) 987 (1.000) ■ 男性における映画Aの満足度の割合は0.722である. 男性のほうが高い ■ 女性における映画Aの満足度の割合は0.491である. ■ 男性における映画Bの満足度の割合は0.486である. 女性のほうが高い ■ 女性における映画Bの満足度の割合は0.696である. このように,2個の変数の関連パターンが第3の変数 (性別) によって 異なることを交互作用という. 6 メモ 映画B このデータでは,右のよう な交互作用になった. 性別に よる違い 女性 交互作用 男性 性別に よる違い 交互作用 性別に よる違い 映画ジャンル による違い 満足度 交互作用なし 映画ジャンル 性別に による違い よる違い 満足度 映画A 性別に よる違い 性別に よる違い 映画ジャンル による違い 満足度 交互作用のパターン 交互作用あり メモ 映画A 映画A 7 男性 女性 映画B 男性 女性 映画B
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