Mr. Bassman (ベースマン列伝) Vol.1 ジャズにおいてベース弾きとは、 縁の下の力持ち、 水先案内人といったやや日陰の存在。 おまけに、 ウッドベースなら持ち運びも大変・・・。 だが、 黙々とベースをウォーキングさせ、 バンドをスイングさせることに魂を注ぐベースマンが、 一度化けの皮を剥ぐともの凄い名演・名盤が 生まれるのだ。 このコーナーでは、 そんなジャズ ・ ベースマンの偉業を称えるとともに、 ジャズ ・ ベースの素晴らしさを伝えていきたい。 Leroy Vinnegar 【リロイ ・ ヴィネガー】 Profile 1928 年 7 月 13 日、 インディアナ州インディアナポリス生まれ。 独 学でピアノを学び、 45 年にピアニストとしてキャリアをスタートし、 48 年にべーシストに転向。 地元インディアナポリスで、 ウエス、 モ ンク、 バディのモンゴメリー兄弟等と共演。 52 年に友人でべーシス トのイスラエル ・ クロスビーの紹介でシカゴに移り、 ジュニア ・ マン スと " ビー ・ ハイブ " で、 ビル ・ ラッソと " ブルーノート " で活動し、 チャーリー ・ パーカー、 レスター ・ ヤング等と共演を果たす。 50 年 代半ばにロサンゼルスに拠点を移し、 アート ・ テイタムのトリオに 参加。 その後もスタン ・ ゲッツ、 テディ ・ エドワーズ、 シェリー ・ マ ン等とのセッションをはじめ、 LA を中心に活躍し、 50~60 年代のウ エスト ・ コースト ・ ジャズを代表する売れっ子べーシストとなる。 64 年 3 月には、 “ 四大ドラマーの競演 (DRUM BATTLE)” と題する コンサートで、 マックス ・ ローチ、 シェリー ・ マン、 フィリー ・ ジョー ・ ジョーンズ、 ロイ・へインズ、 ハワード・マギー、 チャーリー・マリアー ノ、 秋吉敏子等のメンバーと初来日を果たす。 70~80 年代にかけ ては、 体調を崩すなど活動休止期間があったが、 86 年からのポー トランド移住を機に、 92 年にレコーディング復帰。 その後は、 晩年 までライヴやレコーディング活動を精力的に行なう。 95 年には、 オ レゴン州より 5 月 1 日を “ リロイ・ヴィネガーの日 ” として認定され、 オレゴン ・ ジャズ ・ ソサエティーのホール ・ オブ ・ フェイム第 1 号と なる。 52 年以降、 800 以上ものレコーディングに参加。 身の丈は 約 190 センチ。 ウォーキング・ベースの名手と称され、 " ザ・ウォー カー " のニックネームで親しまれた。 1999 年 8 月 3 日、 心臓発作 のため、 オレゴン州ポートランドにて死去。 享年 71 歳。 Photo by Howard Morehead ウォーキング ・ ベースの職人 “ ザ ・ ウォーカー ” ≪リロイ ・ ヴィネガーからの手紙≫ 晩年、 ポートランドに住むリロイ ・ ヴィネガーからもらった手紙にはこう書かれてあった。 「ベースを弾く上で大切なこ とは、 自分のまわりの音をよく聴くということ。 そして、 ベース ・ ソロにこだわらないことだ。 ベースという楽器は、 バン ドになくてはならないもので、 ベースを取っ払ってしまったら、 大切なフィーリングを失うことになる」 「君に言うことがで きるたったひとつのことは、 自分の音、 まわりの音をよく聴けということだ」 ・・・と。 この後者の言葉は、 若かりし頃シカゴで切磋琢磨するリロイ ・ ヴィネガーに、 チャーリー ・ パーカーがかけた言葉と 同じだ。 1995 年、 その手紙の住所を頼りに、 憧れのベースマンに会うためにポートランドを訪ねた。 あの笑顔とグロー ブのような大きな手は一生忘れない。 50~60 年代の全盛期から年を重ね、 丸みを帯び枯れた味わいの生のベースを 耳にし、 生のリロイ ・ ヴィネガーに一度でもお目にかかれただけでも幸せものだ。 それから 4 年後の 1999 年 8 月、遂に人生のウォーキングは途絶えたが、あのワン・アンド・オンリーなベースは永遠。 天国でもきっとあのいぶし銀のウォーキングを聴かせてくれていることだろう。 ≪動くリロイ ・ ヴィネガー≫ ≪ロックなリロイ ・ ヴィネガー≫ リロイ ・ ヴィネガーの演奏シーンを映像で見たいなら、 The Hampton Hawes All Stars 名義のアルバム 『Live At Memory Lane』 の映像がお薦め。 1970 年 LA でのライブ を収めたものだが、 妬けに栄える青と黄色の派手な民族衣 装のような服装を身に纏ったリロイのベースが野太くウォー キングする貴重な記録。 ハンプトン ・ ホーズのブルージー なピアノも最高で、ソニー・クリス、テディ・エドワーズ、ハリー・ スウィーツ ・ エディソンに、 ジョー ・ ターナーも登場するノリ ノリ&白熱のセッションが楽しめる。 必見の価値あり! ジャズ ・ シーンで引っ張りダコだったリロイ ・ ヴィネガーは、 ロック ・ シーンにおいても意外な大物アーティストの名盤に 登場している。 演奏は地味だが、 ドアーズの名盤 『太陽を 待ちながら』(1968)での 1 曲、「スパニッシュ・キャラバン」や、 ヴァン・モリソンのアルバム 『セント・ドミニクの予言』 (1972) での 1 曲、「オールモスト・インディペンデンス・デイ」 で、ベー スを弾いていることはあまり知られていない。 また、 盟友テ ディ・エドワーズのアルバム『Mississippi Lad』(1991)では、 あのトム ・ ウェイツとも共演している! The Walker 18 Leroy Walks! Leroy Vinnegar Sextet (Contemporary S7542) Leroy Walks Again!! Leroy Vinnegar Quintet (Contemporary S7608) Leroy Vinnegar (b), Victor Feldman (vib), Gerald Wilson Leroy Vinnegar (b), Teddy Edwards (ts), Freddy Hill (tp), (tp), Teddy Edwards (ts), Carl Perkins (p), Tony Bazley (ds) Victor Feldman (p, vib), Mike Melvoin (p), Roy Ayers (vib), Ron Jefferson, Milt Turner (ds) � ��� �����聴���名演 � ������ �����真髄! 1992 年以降から晩年まで、 ライヴ盤を含め精力的にソロ ・ アルバムをリリースしたが、 70~80 年代に録音されたアルバム 『Glass Of Water』、 『The Kid』 等は、 現在も入手困難な状態。 亡�盟友��� ������� � ��� 捧��名曲収録�渋�二枚目 � �歩������曲� ��� ��������歩���� LV's Leader Album Jazz's Great "Walker" Leroy Vinnegar Trio (Collectables: COL 7158) Leroy Vinnegar (b), Mike Melvoin (p), Bill Goodwin (ds) 1. Doing That Thing 2. You'd Be So Nice To Come Home To 1. Walk On 2. Would You Like To Take A Walk 3. On The 1. Hard To Find 2. Down Under 3. I'll String Along With 3. If I Should Lose You 4. The Love Nest 5. Kick, Laugh, Sunny Side Of The Street 4. Walkin' 5. Walkin' My Baby You 4. Subway Grate 5. Restin' In Jail 6. Motherland 7. For Crawl 6. Persuasion 7. They Say It's Wonderful 8. Bees Back Home 6. I'll Walk Alone 7. Walkin' By The River Carl 8. Wheelin' And Dealin' Sees 「東のポール ・ チェンバース、 西のリロイ ・ ヴィネガー」 と謳われた 50 年代のジャズ ・ シーン。 ウェスト ・ コーストを代表するベー スマン、 ウォーキング ・ ベースの職人、 リ ロイ ・ ヴィネガーの " 黒 くて 太 い " 名盤。 アルバム 1 曲目の 「ウォーク ・ オン」 が録 音された 57 年 7 月 15 日の前日、 奇しくも、 東の地ではチェンバースの名盤 『ベース ・ オン ・ トップ』 が録音されていた。 2 人の 名がクレジットされたジャズの名盤の数を見 れば、 その偉業は一目瞭然。 「ウォーク ・ オン」 のイントロを聴いた瞬間、リロイのベー スが低く重く太く力強く、 スピーカーを歪ま せ、時々スキップしながらこちらに迫り来る。 " ザ ・ ウォーカー "、 リロイ ・ ヴィネガーの 1st リーダー ・ アルバム。 1957 年録音。 LV's Support Album リロイの 2nd リーダー作となる本作リリース を前にして、 『リロイ ・ ウォークス!』 で哀 愁に満ちた存在感をみせたカール ・ パーキ ンス (p) が、 不慮の交通事故でこの世を 去った。 その亡き盟友に捧げたリロイのオ リジナル 「フォー ・ カール」 は、 殊更胸に 染みるハイライト ・ ナンバー。 悲しみを乗り 越え歩き続けるリロイのベースには、 無闇 に手数が多いベースとは比較にならない力 強さ、 ジャズの魂を感じる。 1st でもいぶし 銀の輝きを放ったテディ ・ エドワーズ、 ビク ター ・ フェルドマンも好演。 カールの後釜、 マイク ・ メルボインのピアノもいい。 1st の インパクトに勝るとも劣らない、 リロイの ウォーキングの真髄と作曲センスを一段と 印象付ける渋い作品。 1962~63 年録音。 トリオで挑んだリロイの 3rd リーダー作。 こ れ以降、 70 年代初頭までリーダー作は途 絶える。 エレキ ・ ベースの台頭や音響技術 の発達で、 ガット弦と生音でブイブイいわせ ていた往年のベースマン達が、 徐々に時代 の波に乗り遅れていくこの時期。 スタンダー ドを交え、 珍しく自身のベースを主張するリ ロイが、 “ ザ ・ ウォーカー ” としての輝きを 放つ。 マイク ・ メルボインのピアノがバラー ドからアップテンポなナンバーまで、 時に甘 く、 時にスインギーに華を添える。 「ドゥーイ ング ・ ザット ・ シング」 はリロイが晩年も好 んで演奏した自作曲。 シンプル ・ イズ ・ ベ ストな 「イフ・アイ・シュッド・ルース・ユー」、 リロイの自己主張が聴ける 「ザ ・ ラヴ ・ ネ スト」 も最高! 1964 年録音。 ジャズ ・ クルセイダーズ名義のアルバム 『Live At The Lighthouse '66』 等も捨て難いが、 何せ 800 以上ものレコーディングに参加したリロイ。 悩みに悩んだ末、 この 6 枚を厳選! My Fair Lady Shelly Manne & His Friends ( ビクターエンタテイメント : VICJ-2076) Introducing Carl Perkins ( サウンドヒルズ : FSCD-2009) 名作ミュージカル 『マイ ・ フェア ・ レディ』 の曲を綴ったジャズ史に輝くベストセラー 作品。 シェリー ・ マン (p)、 アンドレ ・ プレビン (ds) とのトリオ盤。 リロイにとっ ても代表作の 1 枚。 1956 年録音。 カール ・ パーキンスが残したの唯一のリ ーダー作。 リロイとローレンス ・ マラブル (ds) を従えたトリオ盤。 哀愁に満ちたカ ールのピアノとリロイの太く重いウォーキ ングとの相性は抜群。 1955~56 年録音。 Dexter Blows Hot And Cool Dexter Gordon ( フレッシュ ・ サウンド : FSR1601CD) Saturday Morning Sonny Criss (Xanadu) カール ・ パーキンス (p) をフューチャー したデクスターの渋い名盤。 ジャケットも これぞジャズな 1 枚。 「クライ ・ ミー ・ ア ・ リバー」 は必超!渋すぎるのか、 未だ 裏名盤的扱いなのが残念。1955 年録音。 ソニー ・ クリスいぶし銀の 1 枚。 70 年代 中期のリロイのベースが聴け、 バリー ・ ハリスの味のあるピアノもいい。 タイトル 曲 「サタデイ ・ モーニング」 のアルトの 響きが何とも哀愁を誘う。 1975 年録音。 Sonny Rollins And The Contemporary Leaders ( ビクターエンタテイメント: VICJ-60244) Estate Kunihiko Sugano (Cheetah Records, 1990) ロリンズがリロイ、 バーニー ・ ケッセル、 ハンプトン ・ ホーズ、 シェリー ・ マン等、 ウエスト ・ コーストの名手たちを従え吹き まくる快作。 そして、 当然の如く、 リロイ のベースも歩きまくる。 1958 年録音。 日本が誇る名ジャズ ・ ピアニスト、 菅野 邦彦の作品。 プロデュースは NY で活躍 する中村照夫が担当。 80 年代のリロイ のベースが聴ける貴重な 1 枚。 入手困 難だが、 聴く価値は充分! The Walker 19
© Copyright 2024 Paperzz