素朴な疑問 それまで優位にあった既存企業が、技術革新に対応できず 分断的技術 優れた企業がなぜ凋落するのか? 可能な説明要因 に凋落するのはなぜか? 半導体産業やハードディスクの例 経済学的説明:投資インセンティブが低い 経営者が愚かである 過去の大規模な投資(埋没費用) 投資インセンティブが相対的に低い 自ら新技術を手がけることで、旧技術の代替を早めてしま 過去の「しがらみ」に引きずられる • 情報にフィルター:技術の新しさに気づかない • 「生産性のジレンマ」 • 「顧客の声を聴く」 う可能性 製品「共 い」の可能性 • 新規参入企業に比べて既存大企業は技術革新に自ら投資するインセ ンティブが低い場合がある 組織論的説明:過去の「しがらみ」 技術の新しさに気づかない • 既存の組織構造が情報フィルターとなり、新技術への対応の妨げに なる 旧技術も進歩している • 新技術への転換を難しくする 生産性のジレンマ 生産性向上 • 短期間にライバルよりも速く経験を蓄積するには,他の用途に転用 できない専門化した労働者や設備・組織が必要 新しい市場ニーズや新しい技術への対応が困難に • 生産性向上の努力が柔軟性を犠牲にして行われる 真面目にコスト削減に取り組むほど、新技術に対応できな くなる 中核能力(コア=コンピタンス) 一旦獲得すると持続的競争優位の源泉 しかし、変化への対応力を低下させる • 能力にあわないものをさける • 能力を変革するには大きなコスト 「生産性のジレンマ」の例 マーケティング的説明:既存ユーザーとの関係 既存の主要ユーザー • ハイエンドで利益率が高い • 主要ユーザーが求めている機能尺度の点で劣るような新技術には消 極的に 真面目に「顧客の声を聴く」ほど、新しい「破壊的技術」 への対応が難しくなる 分断的イノベーションによる価値ネットワーク転換 イノベータのジレンマ • 既存企業が次世代のイノベーションに対応できなくなるメカニズム を説明 概念 • 「価値ネットワーク(value network)」 • 「分断的イノベーション(disruptive innovation)」 • 「持続的イノベーション(sustaining innovation)」 価値ネットワーク 全体システムと構成要素が「入れ子」状の階層構造を形成 する取引システム • 製品やサービスは、構成要素のネットワークから形成 • ハードディスク • 記憶装置としてコンピュータに組み込まれる:コンピュータの構成要素 • 全体システム:ディスク・ヘッド、モーター、制御ソフトウェアを構成要素 • 入れ子状 製品基本構造(製品アーキテクチャ) • 入れ子状製品市場 • ハードディスク・メーカー;モーターやディスクなど、外部の製造業者から部品購入 • コンピュータメーカー:市場を通じてハードディスク・メーカーと取引 ハードディスクの価値ネットワーク 同じ製品でも価値ネットワークは異なる 顧客が違うと、製品に対する要望も異なる • 14インチHD:1970年代後半に主力 • 大型汎用コンピュータ(メインフレーム)に用いられる 分断的イノベーション 従来にない製品属性で新しい価値を提供 • 従来にない新しい顧客価値を提供 従来の属性評価基準では価値を減じる • 従来尺度では品質水準(価値)が低下 • 8インチ・ドライブ:1970年代末 • メインフレームより小型なミニコンピュータに用いられる • 小型であるため、記憶容量も限られる • 14インチHD:1974年で約130MB • 8インチ:1970年末で10MBから40MB 顧客層を「分断」 • 記憶容量を犠牲にしても小型化を望む顧客 • 大容量化や単位当たりコストの低減を望む顧客 持続的イノベーション 漸進的な改良の積み重ね • 8インチHD 価値ネットワークの転換 分断的イノベーション:小型化 • 5.25インチ:デスクトップPC • メインフレーム・メーカーには支持されず • 大容量化や、記憶容量当たりコストの削減 • 小型化には関心がない • ミニコンピュータ・メーカーの支持を得る • 記憶容量を犠牲にしても、小型化を望む • 漸進的な改良効果の積み重ねによって、記憶容量が向上 • 記憶容量で14インチと 色なくなり、メインフレーム・メーカーの支持 を得る • 3.5インチ以下:ポータブルPCやノートPCに • 新しい性能評価基準:耐振動・衝撃性など 持続的イノベーション:記憶容量 • 一時的に低下した記憶容量を漸進的に向上させる !旧世代のドライブを市場から駆逐 イノベータのジレンマ 垂直的差別化の「落とし穴」 • イノベーションで地位確立 • 特定の価値ネットワークにおいて経験を積む • 有力顧客の声を聴く • 現在の有力顧客の需要に合わせて、資源や組織能力を蓄積 • 主要顧客の意見に忠実に従えば従うほど、分断的イノベーションがもた らす技術の世代交代には適応しにくくなる • 持続的イノベーションによる垂直的差別化に力を注ぐほど、他の価値 ネットワークへと転換することが難しくなる !ライバルによる水平的差別化への対応力が低下
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