Industrial Network Convergence

ホワイトペーパー
2014 年 11 月
工場統合ネットワーク
アーキテクチャの実装
ゾーンアーキテクチャによる
産業用ネットワーク集約の試み
工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
はじめに
ネットワークやコンピュータ、ストレージ、ソフトウェアの急速な進歩に伴うオートメーション
システムの価値向上により、製造部門や IT 部門は、工場と IT のデータを安全に統合する工場ネッ
トワークの見直しを迫られています。また工場ネットワークは、オートメーション機器の接続だ
けでなく、無線 LAN アクセスポイント、デジタル標識、ビデオ監視、エネルギーやビルディング
オートメーション用の機器など、オートメーション以外のデバイスの接続が必要になりつつあり
ます。この課題に取り組むため、IT ネットワークと制御ネットワークを統合するアーキテクチャ
と物理ソリューションの検討が、年々重要性を増しています。このホワイトペーパーでは『パン
ドウイット産業用ネットワーク構築ソリューション』がどのようにして産業オートメーションシ
ステムの信頼性、セキュリティ、安全性を向上させ、さらに最大 30% の導入コスト削減と最大
75% の導入時間短縮を実現できるかについて記述します。
業界内の動向と課題
これまで工場ネットワークとエンタープライズネットワーク(いわゆる IT ネットワーク)の間の
統合はほとんど行われてきませんでした。あるネットワークではデバイスレベルでフィールドバ
スプロトコルを使用し、別のネットワークではマシン間通信のために ControlNet を使用したりし
ています。またイーサネットや専用ネットワークなどで、レポート作成やデータ保存のために機
器をデータ記録装置やストレージに接続しています。その一方で、工場の各現場には、(そのほ
とんどがオフィス向けの 一般的なイーサネットを拡張した)別のネットワークを介し、ワークエ
リアから作業命令やタスク指示のためのアクセスが行われています。このような個々のネットワ
ークやネットワーク間を移動するデータは通常、それぞれの組織別に管理、保守され、コミュニ
ケーションはほとんどありません。その結果、製造システムの可視性、リアルタイム性は低く、
稼働状況レポートに関連する付帯的な作業、コスト、リスクの不整合および、多種多様なネット
ワークの保守コストが増加し、装置やネットワークインフラの標準化が不可能になり、頻繁なア
ップグレードと保守を必要とする複雑なプログラミングインターフェースが必要になるなどの事
態が生じています。
総合設備効率(Overall Equipment Effectiveness、OEE)を向上させ、工場全体の生産効率を最大化
するためには、工場ネットワークによるリアルタイムな設備の稼働状況の可視化が必要です。ラ
インの停止を必要とする新たな設備の導入をスムーズに実行するためには、立ち上げや切り替え
の時間を短縮する必要があります。さらに、デバッグやトラブルシューティングにかかる時間を
短縮することも必要です。また、ネットワークに精通したエンジニアは限定されるため、ネット
ワークのシンプル化が特に重要となります。
注目すべき最新の動向として、工場現場における イーサネット ノード数の急速な増加があります。
イーサネットはリアルタイム性を要求される領域にも広く採用されてきており、ドライブ、I/O デ
バイス、ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)、その他多くの装置間の通信を構成するデバ
イスレベルネットワークにおいてもイーサネットは標準的なものになりつつあります。工場の各
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工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
現場でイーサネット対応デバイスが増えるに伴い、付随するネットワークの管理が必要になり、
運用上の問題が生じます。従来イーサネットは IT 部門の管理領域であったため、これらのネット
ワークの構築は通常、IT 部門が担当しています。しかし、デバイスレベルのネットワークは設備
管理上不可欠なため、製造部門、生産技術部門が深く関わり、設備の稼働率に直接影響するバッ
クボーンネットワークについても多大な責任を負っていますが、イーサネットの技術や運用ノウ
ハウなどの知識や経験不足によるトラブルが多く発生しています。また、拡張性や運用状況の可
視化など、工場における将来のニーズにうまく対応できないネットワークになっているケースが
多く、信頼性や運用に関するリスクが生じています。
工場内のデバイスレベルでのイーサネット化の加速に加えて、製造システムや ERP、装置へのオ
ペレータのアクセス、工場内セキュリティシステムなどを実現するため、イーサネットが工場内
の隅々に拡張されるようになっています。ERP/セキュリティネットワークと制御ネットワークの
両方が同一ネットワーク上に存在する状況において、ネットワークアーキテクチャとその物理的
な構成の観点から、適正さにいくつかの疑問が生じます。適切なアーキテクチャが適用されてな
い場合、制御ネットワークが汚染され、潜在的な信頼性の問題やセキュリティの欠陥が攻撃対象
となるリスクが高まります。
次世代工場ネットワークの構築
工場ネットワーク全体を俯瞰する
効率的で、拡張性の高いスケーラブルな工場ネットワークを構築するための最初のステップとし
て、ネットワーク全体を包括的な視点から観察し、製造現場のデータをやりとりするソフトウェ
アやハードウェア、ネットワークに接続される重要なデバイス、そしてこれらの階層間にあるす
べての要素を理解する必要があります。これについては図 1 の ISA 95 モデルに図示します。工場
ネットワークでは、末端のデバイスの稼働時間はネットワーク自体の稼働時間より重要視されま
す。これらのデバイスの稼働率は、工場の稼働時間、しいては事業収益そのものに直結するため
です。このような末端のデバイスの稼働率は OEE(総合設備効率)を客観的に測定する重要な基
礎データであり、運用効率を向上させる指標にもなっています。
ネットワーク設計者が、経営と製造現場を繋ぐ標準化モデル ISA95 の手法で、ネットワーク全体
を俯瞰することにより、ネットワークスイッチ用のキャビネットに必要な拡張性について理解し、
現実的なインフラの構築が可能になります。これにより、バックボーン配線の設計をシンプル化
し、一貫性を持たせることができます。工場内のアーキテクチャを俯瞰的に理解することは、ア
ーキテクチャを構成するスイッチやその他のネットワーク機器の種類や配置などを検討する上で
非常に重要です。このようなネットワークの俯瞰ができれば、ネットワーク経由で転送されるト
ラフィックの種類や優先順位を考慮し、最も論理的なアプローチを用いたシステムの構築をする
ことができます。
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工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
図 1. このフレームワークは、ネットワーク構築における重要な最初のステップである、エンタープライズ
ゾーンと製造ゾーン間の論理的なレベルでの接続イメージを表しています。
ネットワークアーキテクチャ
工場全体にわたるネットワーク内のさまざまなノード間でどのタイプのデータがどのように伝送
されているかを理解し、それを明確にするために、工場のネットワークアーキテクチャを検討す
ることが重要になります。これはネットワーク全体の最適化に役立ちます。つまり、ネットワー
ク内の潜在的なセキュリティの欠陥を発見し、工場の拡大や変更、システムの更新、ネットワー
クへのデバイスの追加などに伴うネットワークの拡張をどのように実現するかの指針となります。
このアーキテクチャは、ネットワークインフラの構築に大きな影響を及ぼします。
生産現場でのイーサネット導入に必要な論理的なアーキテクチャを検討する場合、異なるネット
ワーク同士が完全に分離された状態から、工場全体にわたり完全に統合されたネットワークまで
の間に、いくつかのステップがあります。通常、工場環境では個々のネットワークが完全に分離
され、閉じたアーキテクチャが採用されています。この閉じたアーキテクチャでは、それぞれの
ネットワークが異なるハードウェアや異なる物理レイヤ上で動作するため、個々の生産現場と制
御室とのネットワークセグメントを超えた通信は存在しません。これは多くの場合、生産、管理
ネットワークのセキュリティと独立性を維持するためにネットワークの分断がなされてきたため
です。通常は生産現場のネットワークとエンタープライズネットワーク間を分離するために、制
御システムへの不正なアクセスを防ぐファイアウォールかゲートウェイが導入されます。
生産現場にイーサネットネットワークを導入する際に、堅牢な物理トポロジと組み合わせること
で、信頼性の高いネットワーク統合が可能になります。前世代的なネットワーク設計では、独自
設計のゲートウェイによって異なるネットワーク間のデータ共有は可能であるものの、専用ネッ
トワーク化されており、エンタープライズネットワークから完全に切り離されていました。しか
し、この古典的な手法では、個別のサーバーやストレージが必要であり、それぞれ個別の保守作
業が必要となるため、運用・保守面で問題が生じています。一見シンプルな発想のように思えま
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工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
すが、VDI、HMI、監視カメラなどの新しいネットワーク対応システムが出現するたびに、専用配
線もしくはバックボーン配線の敷設が新たに必要になるため、拡張性が低くコストがかかり、導
入が困難になります。ネットワークの敷設と保守に関連する作業の増加に加え、この従来型アー
キテクチャでは、工場ネットワークの複数の領域間でデータ共有が制限されるという大きな欠点
があります。企業全体にわたって運用効率と可視性を向上させるためには、データの統合を安全
かつ効率的に可能にする効果的な次世代アーキテクチャが必要になります。その次世代アーキテ
クチャでは、求められる稼働率、品質、および規則に対する管理レポートを作成する上で、作業
の統合や簡素化が求められます。
統合ネットワーク
個別のネットワークを集約し、シンプル化する試みがさまざまな形式で行われてきました。その 1
つとして、論理的に異なるネットワークを物理的に同じ光ファイバーバックボーンに共存させる
方法があります。このネットワークトポロジでは、同じ配線と IDF(中間配線盤)によるインフラ
を使用して 2 つの完全に異なるネットワークを実装します。このケースでは、同じ配線路とネッ
トワークラック内に配線が収容されてはいますが、それぞれのネットワークが使用する実際の機
器や配線は別のものになります。この方法でネットワークを構成しても、機能をセグメントに分
割するために個別のスイッチが必要になるため、スイッチの効率的な使用にはつながりません。
このため、一般には仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)が使用され、スイッチのグループ
全体にわたる効率的なトラフィックのセグメント化を可能にします。ただし、このどちらのトポ
ロジでも、単純な配線その他の設定ミスによって工場ネットワークセキュリティレイヤが迂回さ
れるリスクが生じ、工場ネットワーク内に重大なセキュリティホールが発生する原因になります。
課題への回答
これらのセキュリティホールのリスクが新しいアーキテクチャの開発を後押しし、標準に基づく
イーサネットを使用したセキュリティ対策と工場内ネットワークの集約、シンプル化につながり
ました。工場全体にわたる集約されたイーサネット アーキテクチャ(論理ネットワークアーキテ
クチャ)は、ロックウェルオートメーション社とシスコ社によって開発され、さらに『パンドウ
イット 産業イーサネット物理インフラ リファレンスアーキテクチャ デザインガイド』により、物
理レイヤまで拡張されました。これらのドキュメントは、工場ネットワークの実装、保守、およ
び拡張に関する課題に対処するのに役立つように、多数の個別工場ネットワークを 1 つのネット
ワークに統合するためのモデルとして提案されています。このアーキテクチャでは、VLAN を使
用して、レイヤ 2 とレイヤ 3 ネットワーク層の間のトラフィックを効率的にセグメント分割しま
す。ただし、すべての管理トラフィックが非武装地帯(DMZ)レイヤの下にとどまるのに対して、
エンタープライズゾーンで必要な情報はすべて、エンタープライズシステムと製造システム間の
直接のトラフィックが許可されず、DMZ 内のサーバーを経由してアクセスされます。統合アーキ
テクチャは統合物理レイヤに配備できるため、このアーキテクチャの実装は物理レイヤの構築方
法に大きな影響を及ぼします。統合物理レイヤによって、バックボーン配線、配線経路、装置フ
レーム、CPU リソースの実装および関連する人件費の総所有コストを削減することができます。
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工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
統合された工場ネットワークの実現
制御室を超えて工場現場全体にわたるイーサネットネットワークの構築においては、ほとんどの
場合、そのネットワークの物理的な実装が最も困難です。ただし、綿密に計画、構造化された物
理ネットワークが実現した施設であれば、イーサネットが製造環境内で拡張されるに従って、ま
た統合アーキテクチャが工場内の適切な場所に配置されるに従って、運用効率を向上させ、成長
の機会を十分に活用できるようになります。
フラットなネットワークの拡張
セキュリティに加えて、ネットワークの将来的な、計画的および予定外の拡張を考慮する必要が
あります。工場を取り巻く環境はさまざまです。ある施設では将来の拡張の十分な余裕があった
り、別の施設では、製造ラインの頻繁な撤去、再構築が発生したり、マシンに追加されるイーサ
ネット対応デバイスの数だけが増加したりすることがあります。成長の可能性があるにしても、
工場マネージャは通常、現時点ではまだ不要な高価なインフラを導入して将来の成長のために多
額な先行投資を行うことよりも、工場ネットワークの構造を慎重に検討することを選択する傾向
があります。
工場全体に分散したネットワークの、将来の拡張性に役立つ最も重要な考え方として、「トポロ
ジ」が挙げられます。ゾーンネットワークトポロジは、管理対象のネットワークスイッチが工場
全体にどのように分散しているかを示し、スイッチが制御室内など一か所で集中管理されている
フラットなネットワークと対比されます。図 2 に示すゾーンレイアウトは、管理対象のネットワ
ークスイッチをオートメーションセルまたはプロセススキッド内の末端のデバイスに近い位置に
分散させます。このアプローチでは、ネットワークは工場現場のモジュール式のレイアウトに対
応できるため、工場の拡張、変更に従って、ネットワークインフラを工場とともに体系的に対応
させることができます。このような設計と実装によって、ネットワークへのビルディングブロッ
クアプローチによるシンプル化、およびモジュール式の工場レイアウトへの対応が可能です。
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工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
図 2. ゾーンアーキテクチャを使用した工場ネットワークレイアウトによって、配線の削減、ネットワークトラ
フィックのセグメント化によるネットワーク耐障害性の向上、ネットワーク冗長性の機能の向上、将来の拡張コ
ストの削減が実現できます。
工場のネットワークはほとんどの場合、「製造部門所有の」ネットワークと、「IT 所有の」ネッ
トワークとは明確に区別されています。これらの 2 つのネットワークが機能的に分離しているた
め、ネットワークの総合的、全体的な視点が妨げられ、ネットワークの問題の解決を困難にする
要因となっています。このアプローチでは、ネットワークの IT の部分には一般的な 19 インチラ
ックマウントスイッチがよく利用されますが、たいていは熱、機械的な衝撃、振動、湿気、ほこ
りなどから十分に保護されていないラック内に設置されています。厳しい環境で一般的なグレー
ドの機器を使用しようとして、このように IDF エンクロージャーが工場のフロアで使用される状
況はよくあります。ほとんどの場合、IT 部門がネットワークを製造現場付近で何とか管理しよう
とするとこのようなことが起こります。一方で、エンタープライズネットワークのトラフィック
が製造トラフィックに干渉しないようにするため、製造エンジニアはファイアウォールを設置し、
ネットワークは「制御」が優先されます。
製造側の近くでネットワークを管理するための 1 つの方法として、プログラマブルオートメーシ
ョンコントローラー(PAC)をブリッジとして使用して、制御情報を強制的にブリッジの片側に
留め、エンタープライズトラフィックがもう一方の側に留まるようにする方法があります。ただ
し、この方法では特有の境界線が生じ、製造機器から直接収集可能な稼働や評価指標に関する情
報の取得が妨げられます。最新の産業用ネットワーク設計では、PAC を使ったブリッジではなく、
「適切な」産業用スイッチの利用が推奨されます。
この設計手法は、すべての産業用スイッチが同じように設計されているわけではないため、簡単
には実現できません。非管理型スイッチを製造エンジニアが多用する場合、ネットワークに接続
されている機器に通信障害が起きることがあります。通常、非管理型スイッチはネットワーク全
体の拡張性をほとんど考慮せずに配置されるため、ポート数の少ないスイッチが工場全体に散在
してしまいます。非管理型スイッチではトラフィックを効率的にルーティングできないにもかか
わらず、ネットワーク内のすべてのノードにトラフィックをブロードキャストするため、ネット
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工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
ワークにかかる負荷が増大します。ポート数の少ないスイッチが多数あり、ゾーンまたは連結ポ
イントに敷設するアップリンクケーブルの本数が増えるため、インフラ内のレイアウトに問題が
発生します。つまり、ポートに対する需要が増加するにつれ、配線の実装が困難になっていきま
す。
ゾーンの物理アーキテクチャ
効果的で効率的な管理や拡張を容易にする、工場ネットワークアーキテクチャの計画について述
べます。
最初に、イーサネット接続が必要なオートメーションセルまたはプロセス制御システムをサブシ
ステムに分割することをお勧めします。このサブシステム内では、ノード間の相互通信が膨大で
あるか、各ノードが近い場所に配置されるようにします。このようにサブシステムに分割するこ
とによって、将来オートメーション化のレベルによりノードが追加される可能性があるかどうか
を識別することができます。これは、各セルで予測される将来のニーズを満たすシステムのサイ
ズを決定する最も有効な方法であるため、各オートメーションのレベルで実行されることが重要
です。工場においては、Common Industrial Protocol (CIP ) テクノロジーで動作する産業用管理
TM
型スイッチを組み込んだゾーンシステム (図 3 参照) をセルまたはスキッドの設計に組み込むこ
とが有効です。
図 3. パンドウイットの統合ネットワークゾーンシステムは、配備までの時間を 75% 短縮します。 1
オートメーションセルに対応可能な産業用ゾーンシステムを使用してネットワークを構築する手
法には、大きな利点がいくつかあります。工場ネットワークの拡張、変更は通常、オートメーシ
ョンまたは関連する工場システムの拡張、変更に直接結び付いています。そのためゾーンシステ
ムは、プロジェクトの計画や実行、ネットワークインフラ実装ための期間を短縮し、製造、 IT チ
ームが物理レイヤを管理するために必要な作業を削減できます。またこれにより、オートメーシ
ョンシステムにネットワークの「可視化」を組み込み、運用状況をリアルタイムに表示したり、
イーサネット制御ネットワークに接続されている制御システムの潜在的な問題を監視したりする
ことも可能になります。産業用スイッチを使用すると、パフォーマンスを最大にするために最も
1
完全な産業ネットワークシステムを設計、調達、および組み立てるために必要な作業を評価する内部の定期調査に基づい
ています。
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工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
重要なトラフィックが優先されます。次に、動画トラフィックなど、時間の制約が最も大きい通
信に、高い優先順位が付けられます。
Voice Over IP (VOIP) ネットワーク、ERP 端末、および工場内無線 LAN に対しては、一般的なグ
レードのイーサネットスイッチエンクロージャーを組み合わせたシステムの実装にあたり、設計
上の配慮を適切に行う必要があります。キャビネットには、少なくとも環境保護のための NEMA
(National Electrical Manufacturers Association、米国電機製造者協会) 規格 4 のほか、使用時の温
度変化やスイッチの熱放出に対応した冷却機能を備えているものを選択する必要があります。工
場環境に粉塵が多いと、一般的なグレードのスイッチ内のファンでは障害が発生することがある
ため、ネットワークダウンタイムを避けるには、フィルターや頻繁なメンテナンスが必要になり
ます。このようなシステムでは、配線の変更で問題が発生したり、デバイスの冷却エアーフロー
が妨げられたり、ネットワークのトラブルシューティングがほぼ不可能になることがあるため、
ケーブルの接続と電源を慎重に管理する必要があります。エンクロージャーのドアの開閉によっ
てネットワークケーブルや電源ケーブルが挟まれたり、破損したり、引き抜かれたりすると、さ
らに問題が発生します。工場ネットワークにおいてはリスク管理の観点で、市販のスイッチの慎
重な配備と、工場フロアにネットワーク接続を導入しやすくするための工夫が必要です。
銅配線によるダウンリンク
光ファイバーによるバックボーン配線
図 4. 工場ネットワークの物理トポロジ
業界のベストプラクティスに基づく工場統合システム(図 4 参照)では、工場のネットワーク構
築の設計作業をシンプルにし、潜在的なリスクを回避するすることができます。実際に検証され
たシステムは、製造、IT のネットワークの管理性を向上させ、工場ネットワークの可視性と信頼
性を提供するだけでなく、個別に実装されたシステムよりはるかに迅速な構築が可能になります。
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工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
総所有コスト
ネットワークアーキテクチャの適切な計画、および設置には、ネットワークの拡張に関連するリ
スクに対処するための適切なステップが必要です。生産現場では、粉塵、湿気、温度などの環境
条件が装置の寿命や稼働率に悪影響を与える場合があります。イーサネット接続と伝送媒体の設
計は、制御システムネットワークの信頼性に影響を及ぼします。体系的な配線が行われないと、
成端が正しく行われない、または伝送基準に適合しないおそれがあります。工場システム内では、
ネットワークキャビネット内の単純なクロスパッチや光ファイバアップリンクケーブル上のデュ
プレックスの不一致のために、ネットワークが稼働不能になる場合があります。ネットワークシ
ステムの伝送媒体や構造を慎重に検討せずに、工場全体に分散した多くのネットワークを構築す
ると、不必要なコストやダウンタイムのリスクが増大します。
IP 集約の利点
EtherNet/IP など、イーサネットベースの標準的なテクノロジーへの移行や、統合アーキテクチャ
の実装には、組織全体にとっていくつかの利点があります。ネットワーク全体で業界標準のイー
サネットプロトコルを使用している場合は、制御ネットワーク間または工場内の部門間でデータ
を共有するために、高価なトランスレータやソフトウェアは必要ありません。イーサネットイン
フラ上にある、標準 IP ベースのロボットセルを、シリアルテクノロジーに基づく類似の制御シス
テムと比較すると、標準 IP ベースのテクノロジーを制御システムに使用できるため、少なくとも
実装コストを 15% 削減できます。
2
機能強化したセキュリティシステムやモビリティプラットフォームなどの将来的なニーズを導入
する場合、これらのテクノロジーを統合された工場ネットワークに容易に組み込むことができま
す。このように、将来の成長や新しいテクノロジーを実現するために拡張可能なネットワークを
簡単に構築できるため、従来の方法より総所有コストを最大 25% 削減することが可能になります。
2
産業用ネットワークのゾーントポロジおよび統合ソリューションの利点
米国電気通信工業会 (TIA) Fiber Optics LAN Section (FOLS) のゾーンベースのネットワークトポロ
ジモデルは、製造現場のゾーンネットワークの実装について、階層的なスター型ネットワークと
比較した場合の相対的なメリットを示しています。図 5 に示すように、ゾーンネットワークはセ
ルレベルのキャビネットを利用してセル内のイーサネット接続を管理し、光ファイバーアップリ
ンク経由で制御室または IDF に接続します。この例では、ゾーントポロジを使用したネットワー
クの配備によって、全体的な実装コストが 30% 削減されました。
2
3
標準 IP ベース制御による仮想ロボットセルモデルを使用して、フィールドバスまたは代替プロトコルと比較して算出さ
れた値。
3
この削減率は TIA の Fiber Optics LAN Section (FOLS) が開発したモデルによって算出された、ゾーンアーキテクチャの
使用率に基づいて提供されます。
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工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
図 5. フラットなネットワークとゾーンネットワークの比較。
製造システムの頻繁な変更やアップグレード、新しい製造装置の追加など、産業用ネットワーク
のパフォーマンスを、重要なオートメーションシステムが要求するレベルに維持することが困難
になる場合があります。信頼性と拡張性の高い工場ネットワークの構築を可能にするため、パンド
ウイットは、産業用スイッチ、電源、およびバックアップを事前に組み込んだ、完全に統合された
産業用ゾーンシステムを提供しています。このようなシステムは、TIA で推奨している構造化配線
インフラに準拠して設計され、厳しい工場環境でのパフォーマンスを確保できるように、テスト
および検証されています。構造化配線の実現とパンドウイットデザインサービスによって、ダウ
ンタイムのリスク軽減、およびネットワークインフラのシンプル化とインスタレーション期間の
短縮が可能になります。インスタレーションに関するベストプラクティスに基づいた一貫した設
計により、工場現場のネットワークアーキテクチャ全体の標準化が可能になり、パフォーマンス
が向上します。この標準化は、ネットワークトラブルの修復に要する平均修復時間 (MTTR) の改
善に役立ちます。
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工場統合ネットワークアーキテクチャの実装
結論
冒頭に述べた通り、マシンや工場全体にわたる情報や制御データを統合するため、ネットワーク
集約のニーズが高まり、この課題に対処するために、情報システムと制御システムを統合する、
検証済みのアーキテクチャとテスト済みの物理ソリューションの重要性が増しています。
ネットワーク集約には、工場現場に分散しているネットワークの必要性、動向、課題、および将
来性の理解が必要になります。パンドウイットは、高速で効率的、かつ単純なネットワークバッ
クボーンを構築する革新的な光ファイバー接続ソリューションを使用して、ネットワークを制御
室から産業用ネットワークのエンドポイントに展開、構築する作業を支援しています。パンドウ
イットの産業用統合ゾーンシステムは、信頼性の高い、安全な工場ネットワークを実装するため
のプロセスを大幅に軽減します。これらのシステムにより、実装までの時間が最大 75% 短縮され、
構築作業の効率が向上します。同時に、システムの総所有コストを 30% 削減できるアーキテクチ
ャを実現できます。
制御室を超え、工場現場全体にわたるネットワークの可視性を向上させるには、ネットワークを
さまざまな方法で観察する必要があります。パンドウイットは、情報と制御の統合が可能なイン
フラの構築に役立つ専門的なネットワーク評価、設計、および構築サービスを提供するアドバイ
ザリサービスにより、ユーザーの移行を支援します。
パンドウイットについて
パンドウイットは、顧客がシンプル化や、俊敏性と運用効率の向上を通して物理インフラを最適
化できるように支援する、最先端ソリューションのワールドクラスの開発者およびプロバイダで
す。パンドウイットの Unified Physical Infrastructure℠ (UPI) ベースのソリューションは、より洗
練されたビジネスの統合基盤を構築するために、通信、コンピューティング、電源、制御、およ
びセキュリティシステムを接続、管理、および自動化する機能を企業に提供しています。パンド
ウイットは、パフォーマンス、運用、および財務上の利点を向上させるように、用途別や業界別
に最適化された、柔軟なエンドツーエンドのソリューションを提供します。パンドウイットのデ
ィストリビューションパートナーのグローバルネットワークによるグローバルな製造、物流、お
よび電子商取引機能は、顧客のサプライチェーンのリスク軽減に役立ちます。業界大手のシステ
ムベンダとの強力なテクノロジーリレーションシップや、コンサルタント、インテグレータ、請
負業者が関与するパートナーエコシステム、さらにはそのグローバルスタッフ、および比類のな
いサービスとサポートによって、パンドウイットは価値あるパートナーとして信頼されています。
お問い合わせ先: パンドウイットコーポレーション日本支社
カスタマーサービス(注文・製品問い合わせ担当)
TEL:03-6863-6060
FAX:03-6863-6100
jpn-toiawase@panduit.com
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