北海道に適した花による良好な住環境づくりへ ●この釧路地方にトリカブトの自生種はあるのでしょうか? 工 藤 あると思います。ただ、トリカブトは全草毒ですから、これを公 共で使うっていうのは結構難しいです。私も以前、自分の公園で秋 にやっぱりトリカブト使いたいなあと思って入れたり、あるいは自 然からのタネを増やして植えたりしましたけど、やっぱりオープン の区画には使えないですね。何かあると困りますから、『入っちゃ 行けません』というロープがあって、樹林があるその下ぐらいにそ こから眺めて下さい、という場面にしか使えませんでした。 ●外来種について、セイタカア ワダチソウが北海道では 大々的に拡がっていることに より、生態系が崩れるのは、 次の世代に対して申し訳な いので、それも含めてお聞き したいのですが? ●一年草と宿根草のお話を 聞いたのですが、宿根草 と多年草って、また別にな るのですか?違いについ て教えてください。 工 藤 おっしゃるとおりです。今、危惧されているのが帰化植物と言われている もの、これは大体農作物から入っているものが多いです。セイタカアワダチ ソウもそうですが、付着してきたというか輸入した作物の中に種が入ってい たということで、飛び火して自然に拡がったというものが多いのです。 今はまだ見受けられてはいませんが、危惧しているのは園芸的な種類から の帰化植物化。そっちの方が怖い。気候が合いますから、外来のそういう園 芸植物をやっぱり入れてしまうんですね。それが自然に飛び火するっていう のは往々にして十分あり得ますから、その辺のモラルが必要ですね。 先ほど自分が言ったことと多少、矛盾していますが、その地域に合う植物、 「ここに合う植物の仲間の園芸品種を植えれば非常に合う」と言ったことと、 「危険だよ」って言うことは、裏腹ですね。だから使う場面というのは非常 に注意しないといけない。それとそれが拡がりやすいものか、どうかの検証 が必要です。特にこういう国立公園、道立公園も含めて自然が、ある意味、 原生林的なものが近くにあるところで、そういうものを使うっていうのは、 やはり避けた方が絶対いいと思います。おっしゃるように、自分達が後世の 悪者になります。景観と言いながら、そういう帰化植物化する植物を海外か ら入れて、それが元に拡がったということになりますので、それはやっぱり モラルとして、セレクトしないといけないとは思いますね。 ちょっと難しいところがあります。北海道っていうのは自然がそばにある から。だから、なるべくこのそばの近い方には園芸的な場面というのはやっ ぱり僕は不必要・・・極端に言えば、作らない方がいい。そういう線引きを するとか、危険性のないところで、人工的な景観作りをするとか、そういっ た線引きは必要かなと思いますね。 工 藤 植物学的には“一年性植物”と“多年性植物”と言います。多年草と宿根草の違いっていうのは、これは 園芸的な違いです。熱帯の暑さに耐えられて、寒さに耐えられなくて枯れてしまう。ゼラニウムとかあります よね。一年中育つ熱帯とか亜熱帯とかの。こういうものが多年草といいます。 宿根草というのは特に温帯で育つ植物で、冬になれば通常枯れて根だけで生きています。だけど本来植物学 的には宿根草も多年草と言った方が正解。宿根草と言っているのは、これ園芸的な呼び方で、正確には一年性 植物と多年性植物、この2つに分けて考えていいと思います。 梅 木 一年草というのは花ができて種ができるまで最低一年かかりまして、種ができたら一年が終わってしまうと いう感じだと思うので、多年・宿根草というのはその地で外で残るものという風に考えることができます。 つまりゼラニウムなどはここで当たり前に宿根草と言いますが、東京では宿根草と言わず、一年草扱いです。 そしてベコニアとかペチニア等、私たちが一年草だと思っているものは、実は多年草なんです。多年草だけれ ど一年草扱いというものもあります。 だからどこまで覚えるといってもガーデニングマスターの試験以外には出てこないので、多年草の中に宿根 草がある、と考えるといいと思います。家の中で、条件さえ合えば2年以上生きているものが多年草で、その 中のその土地に合うのが宿根草っていう感じでしょうか。その方が混乱しないと思います。一般的な考え方は そういう風です。 23 北海道に適した花による良好な住環境づくり へ 今回セミナーに参加された方々から、多くの意見 や感想をいただきました。 北海道といたしましては、これらの声を参考にし ながら、花を活かした良好な景観づくりに関する取 り組みを進めていきたいと思います。 ご協力、大変ありがとうございました。 ○ 花を活かした景観づくりの問題点・課題 ☆ 地域にあった植栽が大切だと思います。 ☆ 国立公園内での景観は観光地としての立場や環境省 との連携が大切。住民のみんなが色々な立場で具体的 に事を知ることがより良いまちづくりにつながる。 ☆ 花苗や土・肥料の購入調達について、各自の負担もあ る程度出てくるかもしれませんが、限度があると思う ので、できる人が決まってしまうと思います。 ☆ 地域の特色を感じる庭づくりのため、その地方独自の 花木の利用とその知識への一般の方々への周知。 ☆ 公共の場の花は植えっぱなしで、その後の管理がどう しても、手薄になる気がします。 ☆ 景観づくりは個人の価値観であり、過度に誘導される のもどうか?と思うことがある。 ☆ 老齢化に問題があるかな、と感じます。 ☆ 外来園芸草が自然界に飛火し、後世に大きな影響をあ たえるというショッキングな話を聞きました。 ☆ 自然とどうマッチさせるかが、いつも悩みです。 ☆ 街に花を飾るとがきれいで人が見てもいいと思う。 ☆ 必要、良いと思う植物でも街路などでは、交通安全上 問題となり植栽できないこと。 ☆ 地域の特性を生かしていない。市内どこに行っても、 ほぼ同じ園芸種であり、単調に思えます。 ☆ 市町村単位で活動する時に住民ごとの温度差を感じ ることがあります。 ☆ 維持管理費などの費用の問題がある。 ☆ 住民個々の意識が必要、盛り上げが必要。 ☆ 統一するところがないので、たくさんあるグループが それぞれ活動していて重複していることがある。 ☆ 花だけに視点をおかずに、風景・建物・街の営みと連 携し、心地よい景観をつくりたいと思いますが、住民 の意識の統一に向けては、容易ではないと感じます。 ○ その問題点・課題解決に必要なこと ☆ 花に初めて接する方もいるので、とっかかりをやさ しく私にもできるんだというきっかけ作りから、町 の皆が関心を持ち、楽しく笑顔ですることが必要。 ☆ 住民に対しては、楽しみを共有できる事からネット ワークづくりが必要だと思います。 ☆ 申請可能な補助や助成金の情報を教えて欲しい。 ☆ 見本となるスポットの開示が必要。公園がその役割 を担えれば..と思います。 ☆ 多くの人々に対して種々機会をとらえて、地域の花 に対する興味、愛着を喚起することが必要であり、 例えば、焼肉パーティ、ゴミ拾いボランティア等イ ベント込みで行うことも良いと思う。 ☆ 外来種を必要以上に持ち込まないこと。 ☆ 少しの予算を花と木にふり分ける努力が必要。 ☆ 勉強し工夫して出来る様、学習の場、等が必要。 ☆ まず、地域を知る事。植物の特性等を知った上でデ ザイン、管理を行うことが必要。 ☆ 自治体方針と積極性。フラワーマスター等の地道な 活動が必要だと思います。 ☆ 各グループを統括するところがあったら、と思う。 ☆ 街路の花も宿根草を取り入れて、ローメンテナンス 低予算にし、年々少しずつ増やしていく気持ちで大 事に育てて欲しい。 ☆ 町内会を利用して町単位で考えたらいい、と思う。 ☆ ここからの一歩がなく季節が終わる。打ち合わせの 場などを行政で設けてはどうでしょうか。 ☆ 景観のために、特に他に迷惑を与えていないのに私 有財産に規制までかける方向に進まないように。 ☆ 行政と協力しながら、花のための人づくりをするこ とが必要だと思います。 ○ セミナーへの感想や道への意見要望 ☆ 大変楽しめました。改めて勉強になりました。北海道の植栽を考えるのに良いセミナーだったと思います。 ☆ 工藤先生の北海道の可能性、花に元気をもらうためのお話、原生林・自然林の多様性、世界に誇れる北海道のお 話に、再確認させて頂きました。具体的に土壌のお話をすぐに役立たせて頂きます。 ☆ 梅木先生の実践で、あまり見かけない宿根草や実演が見れて、楽しいセミナーでした。 ☆ まちづくりセミナーなど、定期的に、持ち回りでも各地で開催してほしいです。買える花も持ってきて欲しい。 ☆ 工藤先生の「園芸植物が野生化する問題」はもっと勉強したいと思いました。田園風景がより豊に見えるような 景観づくりを考えたいと思っており、そのヒントになりました。 ☆ ガーデンブームであるのは良いが、世界的に見ても美しい国の保全保護を前提とした景観まちづくりを望みます。 ☆ 講演+実技でメリハリのあるセミナーで良かった。フラワーマスターとしてレベルアップのためにも有効でした。 ☆ やはり北海道の自然と合う植栽の勉強や住宅内での新しい技法等も楽しめる講習を続けて頂ければ、嬉しいです。 ☆ 我が家では緑の木もあるが、少し混みすぎて気になっていましたが、講演を聞いて、緑と色彩を上手に取り入れ ての庭づくりが必要と思いました。自然を生かしての景観づくりが、よくわかりました。 ☆ 私たちの町の花の種類がマリーゴールド、サルビア等でマンネリ化している。花を変えてみたいと思いました。 ☆ 寄せ植えの基本やポイント等がわかりやすく良かった。街路樹や花壇等を管理、造る上で学ぶ事ができました。 ☆ 先日、工藤先生のバラの本を求めたばかりでしたので、うれしく拝聞させていただきました。 ☆ 私は外部からの刺激があまりなく自分なりに毎年続けています。最近は、鉢植えよりバラに少し力を入れてきま した。今日の講演は、私の中で「そうか、そうだったのか」とか、何かまた頑張ろうと力になりました。管内で 今日の様なこと開いて下さると、参加も出来て良かったので、これからもやって欲しいです。 ☆ 情報と交流も得られ、主催者の配慮が表れていると思います。本当に楽しく意義のあるセミナーでした。 24 北海道に適した花による良好な住環境づくり 25 へ 北海道に適した花による良好な住環境づくり へ 釧路に行く前は、あまりに緑の濃いアイルランドの影響で、緑ぼけと言うか、緑の使 い方の質の違いに多少落ち込んでいました。でも元気回復しました。 夕張からの石勝樹海ロードに続く山深い夕張山地、高速で一気に十勝に入ると開 ける雄大な農村景観、先に広がる釧路湿原を予感させる釧路国道に続く海浜原野、 そして阿寒の針広混交林の深い森。非常に多彩、多様な景観、唯一無二のもので す。欧米にはない、いや世界でもこれだけ多様な緑景観はない。本来的な原生林や 自然景観だけでなく、二次的な景観さえも含めて他にはない、非常に質の高い財産と 思います。 ガーデンアイランド北海道って、文字通りそう思う。ありのままの姿がそうなのであ って、どこそこのガーデンが多いからってことでは決してない。今ある場面をどう生か すか、それがいちばんと思います。 釧路、また行きたいです。すごーくファンになりました。(工藤敏博) 釧路地方はスカッと晴れて気持ちのいいお天気でした。 道中の庭を見てご本人の庭も見て、ゆっくりとした時間を素晴らしい大自然の中で 過ごさせてもらいました。 やはり、釧路周辺は北海道の中でも素晴らしいところだと思います。この度は助 手席でしたので、周囲をじっくり観察して楽しませていただきました。 講習会は70人の定員に100人の方が集まりました。 今回は釧路、十勝、網走の三支庁のフラワーマスターさん中心にこのブログを見 てきた下さった方や空知からの参加もありました。参加者のみなさま、つたない話を 聞いてくださり、ありがとうございました。(梅木あゆみ) (編集後記) このセミナーを通じて、 改 めて 花と 緑への 関 心 の深さがわかりました。 ひ とり ひと りの花 と 緑 へ の地 道な 活動が 街 並 み を変 えて いくこ と が できます。皆さんの手に よ る素 晴ら しい街 並 み が 生ま れて くるこ と を 期待します。(J.T) 花に関して何も知らない者 が不安になりながら、企画した セミナーでした。講師の話を聞 く参加者の真剣なまなざしや アンケート結果を見て「やっ て、よかった~!!」とほっとし ました。工藤さん、梅木さん、 参加してくれた皆さん、ありが とうございました。(K.K) この仕事を通して「まち」に おける花と緑の魅力や大切さ を再発見するとともに、「良好 な景観」が住民や訪れた人の心 を癒し、豊かにするということ に改めて気づきました。地域に 対する自己意識も高まり、自分 の住む釧路がますます好きに なりました。(Y.T) <発行> 釧路支庁 産業振興部 建設指導課 まちづくり TEL(0154) 43-9194 平成22年3月 この記録集の内容に関する質問などは 釧路支庁建設指導課までお願いします。 26
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