休地を活用し ダチョウの飼育事業に進出

大東建設株式会社
休地を活用し
ダチョウの飼育事業に進出
リフォーム・リニューアル
大東建設株式会社(山形県西村山郡朝日町)
No.03-06-01 / 038
遊休地の有効利用が可能で、初心者でも比較的容易に飼育ができることから、ダチョウ飼育をスタートした大東建
設(株)。すでに事業化して8年を迎えるが、ユニークな事業がマスコミで取り上げられるなど同社の知名度は向上した。
中心となる食肉事業では、地元有名ホテルに納入しており、最近ではバッグや靴などの高級皮革製品や肌乳液や石
鹸などのコスメ製品にも事業にも進出。平成 16 年度は、事業開始した8年前の2倍の売上を記録した。
環 境 分 野
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取組の概要
背景・経緯
北海道など寒冷地でもダチョウ飼育できることを新
聞で知り興味を持った社長が、平成9年9月に日本家
農
農林
林水
水産
産業
業
禽学会大会のダチョウに関するシンポジウムに参加し
たことが、事業取組のきっかけである。当時は全国で5
件の飼育事例しかなかったが、以下の理由でダチョウ
の飼育に取組むことを決意した。
①ダチョウは思ったより簡単に飼える。高齢者でも問
題なさそうである。
②飼育には広い土地が必要だが、地元には休耕田、
荒廃農地などの遊休土地が多い。
福祉・介護
パドックでのダチョウの放牧
③試食した肉もなかなかいけるので、商売になる。
当初、ダチョウは県条例で危険な動物に指定されていたため、それを通常の農地に入れる は農地
法違反となった。また、飼育場の柵も高さ3∼4メートルの猛獣用の頑強な柵を要求された。このままで
は事業化の大きな支障となるので、何回も県に陳情してダチョウの生態を説明し、平成 13 年についに
指定から外してもらうことができた。また、飼育ができるようになっても近隣の食肉処理場は家畜用で
あり、家畜ではないダチョウの処理はできないことが分かり、結局自前で建設して許可を受けることに
した。飼育において大変なのは、幼鳥期の管理である。特に生まれて 40 日間は自然では生存率が1割
そ の 他
未満といわれる時期で、清潔な発生器の中でのきめ細かい温湿度管理が必要となる。この管理が難
しく、初めのうちは失敗して何羽も死なせてしまった。また、種鳥の栄養管理も重要であるが、連続して
卵を産ませ続けると、発生率の悪い小さい卵となってしまうことが分かり、以後インターバル管理をす
ることにした。販売に関しては、ダチョウ肉がまだ馴染みがないため、頻繁に試食会などを開催して普及
させるために努力している。しかし、まだ大量に生産しているわけではないので、比較的廉価な内蔵だ
けを大量に欲しいなどと言われても、なかなか対応できない状況である。また、皮革製品は高級なもの
となるが、ブランド力がないので苦労している。
新分野進出事例集 vol.2
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遊休地を活用しダチョウの飼育事業に進出
取組の概要
休耕田、遊休荒廃農地、廃校跡地などの遊休地を活
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用した飼育場(パドック)でダチョウを飼育し、飼育したダ
チョウは、食肉処理場で食肉解体処理し、肉・肉加工品、
皮革製品、健康雑貨品として販売している。また、一部
のダチョウは種鳥として成長させて産卵させ、卵は販売
または孵化させて幼鳥とする。取組開始当時ダチョウは
県条例で危険な動物に指定されていた。現在は指定か
ら外れているが、家畜としては認められていないので、ニ
ワトリ同様の
パドックのダチョウ
環 境 分 野
扱いとなっている。従って当初の飼育場は周囲を猛獣用の頑強な柵(檻)で囲ったものだったが、今は跳
び越えない程度の簡単な柵である。ダチョウは元来アルファルファ等の牧草を主食とするが、6ヶ月を過
ぎた成鳥であれば野菜くずや食品製造副産物(おから、りんご、米ぬか等)をエサとして利用できる。逆
に6ヶ月までの生育期では、初生雛、3ヶ月まで、6ヶ月までと段階ごとにエサの配合を変えるなどきめ細
かい管理が必要となる。生育期のエサは家畜飼料工場で専用に配合されたものを購入している。飼育
するダチョウはオーストラリア等から幼鳥で輸入する場合が多いが、一部は孵化場にて孵化させ初生雛
の段階から育てている。通常は生後 12∼15 ヶ月で食肉処理を行い、製品となる。自社で開設した食肉
農
農林
林水
水産
産業
業
処理場は、(有)山形朝日オーストリッチ産業センターとして別会社化しており、近県の飼育者からの処
理委託にも対応している。現在は委託分を含めて年間 400 羽程度の処理である。
ダチョウ肉は低カロリー、低コレステロールのヘルシー食品として
主に近隣の料理屋、旅館、ホテル等へ販売している他、一部は地
元のハム工場でサラミに加工している。皮革は地元の工場でバッ
グ、靴(オーダーメイド)、小物などに加工し、デパートの展示会な
福祉・介護
どで販売している。また、脂肪分は提携工場で精製してクリームや
乳液状に加工して、肌荒れ防止などの健康雑貨品として、道の
駅、温泉場、駅構内の売店などで販売している。皮革製品は高価
なものとなるので販売数は少ないが、クリームや乳液は評判が良
いので拡販を進めている。なお、現在は種鳥飼育場1カ所(休耕田
利用)、飼育場兼展示圃1カ所(学校跡地利用)であるが、平成 15
年からは地元農家への飼育委託を本格化して地場産業へと育
てていく考えである。
そ の 他
現在はまだ製品としての数量が少ないので、肉は主に近隣の
ダチョウの生肉(上)と加工製品(下)
料理屋、旅館、ホテル等へ販売し、皮革製品は地元デパートの展示会等での販売、クリームや乳液も地
元の道の駅、温泉場、駅構内売店等での販売となっている。
飼育方法によって、肉質や種鳥としての能力が大きく変わるので、エサの種類、配合などきめ細かい
管理で品質を高めることが差別化のポイントである。
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財団法人建設業振興基金
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ダチョウの各種革製品
ダチョウの脂質を使った石鹸とクリーム類
環 境 分 野
実施体制
前述のシンポジウムに参加して、ダチョウの飼育に取組むことを考えた社長は、その場に居合わせた
輸入業者に数羽の雛鳥と有精卵 30 個を注文した。雛鳥が届くまでの間、社内での受け入れ態勢を整
えた。担当常務を決めるとともにダチョウの飼育担当として農学部出身者1名を採用し、隣県で始まって
いた飼育場を視察した。また、孵化場及び初生雛飼育場を建設し、孵卵器など必要な設備を購入した。
雛鳥の到着の後、今度は種鳥を輸入することとし、休耕田を利用したパドック作りを始めた。当時ダチョ
の後、輸入したダチョウを飼育しながら、担当常務を中心に食肉処理場の建設計画、各種製品化及び
販売方法の検討などを進めた。平成 13 年、食肉処理場の開設に会わせて、食肉処理と販売を目的に
別会社(有)山形朝日オーストリッチ産業センターを立ち上げた。現在センターの職員は4人で、うち2名
は当初から関わっている担当常務及び担当者の兼務である。繁忙時には親会社から数人を応援に出
農
農林
林水
水産
産業
業
ウは県条例で危険な動物に指定されていることが分かり、保健所の指導で頑強な柵を張り巡らした。そ
せる体制にしている。なお、社外の体制としては平成 13 年に各地のダチョウ飼育業者による事業協同
組合が設立され、情報交換やエサの共同購入などの活動を始めている。
福祉・介護
平成9年に取組を決めた直後、社長および担当者が、宮城県の飼育場を視察見学した。また、飼育研
修として平成 10 年7月に中国、同9月には北海道に担当者を派遣した。平成 11 年7月には担当者をア
メリカに派遣して、食肉処理技術を研修させた。翌 12 年には担当者を皮革製品開発の講習会に参加
させた。取組決定直後に採用した飼育担当者は、地元の農業後継予定者であったが、新しい事業に意
欲があった。別会社で新たに採用した2名も地元出身者である。
また平成9年にはオーストリッチ産業をサポートするために日本オーストリッチ協議会(JOC)が設立さ
れていたので、その会員となり事業化検討当初から様々な問題の解決策についてアドバイスを受けた。
また、協議会主催の先進国視察などにも積極的に参加した。その後、平成 13 年には各地のダチョウ飼
そ の 他
育業者による事業協同組合が設立され、各地の家畜飼料工場、食品加工工場などと提携を進めてい
る。地域振興を進める県や町との連携も進めており、町おこしのイベントや祭りなどで取り上げてもらっ
ている。
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2.ここ2年間の状況
事業開始当初の売り上げは外部業者からの処理委託が約 300 羽で 600 万円、自社分の製品販売
で 5∼600 万円であったが、徐々に売り上げを伸ばし、平成 16 年度で約 1500 万円に達した。山形グラ
ンドホテルやホテルキャッスルなど、地元で有名なホテルのレストランメニューに加えられたり、小学校の
新分野進出事例集 vol.2
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遊休地を活用しダチョウの飼育事業に進出
学校給食にも加工品が採用されるなど、ダチョウ肉や加工品の消費拡大に向けたPRが徐々に浸透し
てきている。当初から人気の高いダチョウオイルを使った化粧品や石鹸は年齢別のモニター調査を行っ
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て品質をさらに高めるとともに、地元特産のリンゴを組み合わせた新製品の開発などにも取り組んでい
る。これらの商品はインターネットで販売されるほか、地元テレビ局の通販商品としても宣伝された。
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取組の成果、本業への影響
事業としての直接的な効果はまだ決して大きなものとはいえないが、間接的な成果として、協議会や
事業協同組合を通じて人脈が増えたことが大きい。ダチョウの飼育委託を目的とした「朝日町ダチョウ
クラブ」が県と朝日町の支援により組織され、リンゴ生産農家三戸が飼育を始めるなどダチョウ産業を
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地場産業として定着化させる試みも進められるなかで、指導的な役割を担っている。また国内初のダチ
ョウ専用の食肉処理場の所有していることから、北海道など遠方からの商談や視察も多い。
一方、公共土木事業中心の本業の業績は大きく落ち込んでいるのが現状であり、本業への負担を取
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業
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り除き、早期に事業を軌道に乗せていくことが課題となっている。
現在の課題と今後の展望
飼育に関する課題は、冬の寒さと雪である。幼鳥の生育にはある程度の気温が必要であり、また雪に
よる作業効率の低下も著しい。これに対しては南半球のオーストラリアなどの業者と連携して幼鳥飼育
期間を調整することなどを考えている。
販売面に関しては、ダチョウ肉の良さをどうアピールしていくかが大きな課題である。今はまだ物珍し
さもあって、地元の特産物的に扱っているが、低カロリー・低コレステロールであっさり味という特徴を生
かして、例えば病院食、介護食などへの利用促進や学校給食への利用などが徐々に進められている。
昨年の鳥インフルエンザ事件の際には注文が大きく増えたものの、まだまだ食卓に定着したものとなっ
ていない。行政の支援の下で、消費拡大に向けた取組みをさらに進めていきたいと考える。
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そ の 他
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財団法人建設業振興基金
大東建設株式会社
事業者プロフィール
会社概要
代表者名
代表取締役社長 佐藤 俊實(69 才)
所在地
山形県西村山郡朝日町
会社創業時期
S23 年 12 月
業 種
■総合工事業(土木、建築)
主要受注先
−
建設業許可番号
建設業許可番号:山形県知事(特 14)第200117号
役職員数
51 人(うち建設業従事 約 36 人)
資本金額
25 百万円
直近年度の売上高
886 百万円(平成 15 年度)
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会社名(団体名)
新分野・新市場への取組又は先進的な取組の概要
■農林水産業
■物品販売
■その他(ダチョウ飼育)
取組の類型
■新製品の開発
■遊休地の活用
事業の段階
■事業展開段階(既に展開している)
取組体制
■自社単独(別会社設立)
■組合組織活用
工業所有権の有無
■取得は考えていない
農林水産業
取組分野
福祉・介護
問い合せ先
会社名(団体名)
大東建設株式会社
担当者氏名(役職)
鈴木 敏夫(常務取締役)
所在地
〒990-1442 山形県西村山郡朝日町大字宮宿 777-1
電 話
0237-67-3101
eメール
daitoo@crocus.ocn.ne.jp
URL
http://www.asahi-ost.co.jp/
新分野進出事例集 vol.2
そ の 他
平成 17 年 6 月 27 日現在
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